古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

 古村治彦です。

 今回は『21世紀の戦争論 昭和史から考える』をご紹介したい。「歴史探偵」半藤一利氏とロシア専門家佐藤優氏の対談である。ロシア(旧ソ連)の行動原理について佐藤氏が述べ、それを半藤氏が昭和史に当てはめて敷衍して解釈していくという流れになっている。
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21世紀の戦争論 昭和史から考える ((文春新書))

 半藤氏にはノモンハン事件やソ連の満州侵入に関する著作もあり、ソ連の行動について自分なりにも調査研究を重ねてきたが、佐藤氏との対談で腑に落ちることが多かったようだ。

 ロシア(旧ソ連)は目的のためには感傷的にも感情的にもならずに人命など考慮に入れることなく、最短距離を突き進む。これを合理的という。ロシア(旧ソ連)の行動、私たち日本人には不可解な行動もそうした合理的な行動であり、目的を持って行なっている。また、ロシア人の行動原理として、「中間地帯・緩衝地帯がなければ大きな不安に襲われるのでそれを確保することに躍起となる」というものがあることを佐藤氏は指摘している。ヨーロッパで言えば東欧諸国、アジアで言えば中国や北朝鮮、アフガニスタンの共産化を目指したのもイデオロギーというよりもロシア人の行動原理が主な理由であるようだ。スターリンとしては北海道北部を独立・傀儡化させ、日本との間に緩衝地帯を作りたいと考えていたが、それは実現しなかった。そのためにスターリンは意趣返しの意味もあり、日本人のシベリヤ抑留を行なったというのが佐藤優氏の見方だ。

 『21世紀の戦争論』の中身を簡単に振り返っておく。

 細菌戦のための人体実験を行なった731部隊について最初に取り上げられている。ロシア(旧ソ連)は終戦直後に関係者たちを尋問し、既に情報を得ている。その最大の情報は731部隊の細菌戦や人体実験について昭和天皇は知っていた、直接指示があったということだ。これは最大の対日カードとして現在まで温存されている。ロシアあるいは中国が731部隊に関する主張を行なう際には日本側に何か要求があるということになる。

 大日本帝国の陸海軍は1905年に終了した日露戦争以降、大きな戦争をせずに過ごすことができた。その期間は約30年だ。20代前半で少尉任官した若者も順調に出世をしていれば、少将や中将になっている頃だ。もちろん陸軍士官学校や海軍兵学校出身者が全員少将以上になれるわけではない。大部分は大佐くらいで退役となる。実戦がないので戦闘で手柄を上げて出世するということは起きない。

こうした状況で少将以上まで出世をするのは徹底して間違いを犯さない官僚的人間と言うことになる。陸軍士官学校や海軍兵学校での成績が良く、陸軍大学校や海軍大学校に進める人たちであり、勉強秀才から冷徹で手続きに瑕疵を残さない官僚と言うことになる。そうした官僚的人間はこれまでの戦略や戦術には強いであろうが、実際に自分たちが決定を下すと言うことになると果たして強いのかというとどうもそうではない。

 官僚的人間ばかりが出世した日中戦争から太平洋戦争の日本の陸海軍の失敗は、官僚的自分たちによる責任を回避できる組織作りの故であったと半藤・佐藤両氏は結論づけている。両者が詳しいノモンハン事件についてみてみれば、見通しの甘さと情報不足のために、現場の日本軍将兵は奮戦したが惨敗。その責任はしかし司令官が取るのではなく、現場指揮官たちが死をもって取ることになった。生き残った現場指揮官クラスは軒並み自決を強要された。作戦の立案と指導に当たった参謀の服部卓四郎や辻政信は一時期左遷されたが、太平洋戦争直前に復活した。失敗を隠蔽し、失敗を教訓としない日本軍は最終的に解体の憂き目に遭った。

 失敗から学ばず、官僚的組織を作り、上層部が責任を回避するというのは現在の日本でも行なわれる組織作りの特徴ということになる。これを繰り返している限り、日本全体は徐々に、ゆっくりとしたカーブを描きながら落ちていく。

(終わり)

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 古村治彦です。

 今回は、副島隆彦先生の最新刊『本当は恐ろしいアメリカの思想と歴史』(秀和システム、2020年3月26日発売)をご紹介する。これは、アメリカ思想の歴史をユニテリアニズムから読み解くというものだ。

 以下に、まえがき、目次、あとがきを掲載する。

 是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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本当は恐ろしいアメリカの思想と歴史 フリーメイソン=ユニテリアンは悪魔ではなく正義の秘密結社だった!

(貼り付けはじめ)

  はじめに

 この本を読むと、あなたは、大きく歴史が分かるだろう。ヨーロッパとアメリカのこの500年間の歴史が、鷲づかみするように分かる。

 欧州と米国のこの500年間が、私たち人類(人間)の世界の歴史を引っ張ってきた。私たちは欧米白人の近代文明に引きずられて生きてきた。

 明治(1868年)からこっちの日本の知識層は、ヨーロッパの文物(ぶんぶつ)を取り込むことで必死だった。イギリス、フランス、ドイツ、イタリアの文学と思想を翻訳し輸入することに疲れ果てるほど全身全霊を打ち込んだ。

 ところが、アメリカの研究をほったらかした。アメリカはヨーロッパの後進国だろ、と軽く見た。そのことが、その後の日本の文化の成長に影を落とした。現在は、これほどに強くアメリカの影響と圧力を受けていながら。テレビのニューズはアメリカの表面を映すだけだ。

 ヨーロッパとアメリカの2つをガシッとつないで、私たちに大きく分からせてくれる本がない。粗(あら)っぽくていいから私たちは、欧と米を結合させて、大きくその全体像で理解したいのである。

 このことに私はずっと不満だった。だから、私はこの本で、まずヨーロッパの恐ろしい国王たちの姿を次々と印象深く描いた。私たちが名前ぐらいは知っている有名な王様と、政治家たち数十人に光(スポット)を当てて、どこまでも分かり易く、「ああ、そういうことだったのか」と読者に思ってもらえることを目指した。

 そして〝チューダー朝の恐ろしい王たち〟から逃げ出して北アメリカに渡って植民(コロナイズ)した、初期のプロテスタントたちを描くことから第1章を始める。

「本当は恐ろしいアメリカの思想と歴史」なのである。冒頭のヨーロッパで断頭される王と王妃の絵、に戻って再度じっくり見てください。ここに凝縮される欧米白人500年の歴史の真実なのである。

 覆(おお)い隠されている事実がたくさんある。だから私たち日本人に大きな「ああ、本当はそういうことだったのか」の真実が伝わらないのだ。私は、一冊の本に書き込めるだけを書いてこの本に載せた。これでもかなり舌足(したた)らずだ。あんまりにも突拍子(とっぴょうし)もないことを、前後の脈絡(コンテクスト)なしで書くと、眉唾(まゆつば)ものだと思われるから、普通に知られている当たり前のことも、そば粉のつなぎのように、各所に入れてある。

=====

はじめに

第1章 17世紀の王殺し(レジサイド)とピューリタニズムの真実

  イギリスに戻って清教徒革命に参加したピルグリム・ファーザーズがいた

  「リパブリーク」(共和政)とは、王様の首を切り落とせ!ということ

  ユニテリアン=フリーメイソンがアメリカをつくった

  丘の上の町

  メソジストとはどういう宗派(セクト)か

  誰がアメリカ独立革命戦争の資金を出したか

  アメリカに渡ったキリスト教諸派のセクト分析

  「会衆派」がユニテリアンの隠れ蓑

  指導者がいない「会衆派」

  社会福祉の運動になっていったオランダ改革派

  本当はユニテリアンとカルヴァン派の間に激しい闘いがある

  バプテスト系の人たち

  「非戦」思想のメノナイトとクエーカー

  「ペンシルヴァニア・ダッチ」と呼ばれる人々のルーツ

第2章 アメリカ史を西欧近代の全体史から捉える

  全体像で捉える能力がない日本のアメリカ研究

  カルヴァン派とユニテリアンは対立した

  カルヴァン派はユダヤ思想戻り

  ピルグリム・ファーザーズという神話

  現代につながる王政廃止論

  ピューリタンの中心部分がユニテリアン

  アメリカ独立戦争を戦ったのはユニテリアン

  アメリカとフランスのリパブリカン同盟

  啓蒙思想としてはホッブズが一番正直

  「自由」とはユダヤ商人たちの行動

  ヴァイマールはユダヤ商人を入れて繁栄した

  なぜ「近代」がオランダから始まったか

  ゲーテ小論

  偉大な皇帝だったカール5世

  ブルボン朝の初代王、アンリ4世は賢く生き延びた苦労人

  男女の愛への讃歌が民衆に受けた

  「ケンカをやめよう」と言ったモンテーニュとモンテスキュー

第3章 アメリカから世界思想を作ったエマーソン

  すべての世界思想はエマーソンに流れ込み、エマーソンから流れ出した

  環境保護運動、ベジタリアン運動の祖もエマーソン

  エマーソンは過激な奴隷解放論者は容れなかった

  土地唯一課税の理論をつくったヘンリー・ジョージ

  社会主義思想までもユニテリアン=フリーメイソンから生まれた

  アメリカ独立戦争は成功した革命

自己啓発の生みの親までエマーソン

  日本にキリスト教を輸入した人々もユニテリアンだった

  ガンディ(ガンジー)の偉さは、イギリスに抵抗し、かつ日本に組しなかったこと

  チャンドラ・ボースの死の真実

 

第4章 フリーメイソン=ユニテリアンは正義の秘密結社だった

独立軍は弱かった

ユニテリアンとフリーメイソンは表裏一体

ハミルトンとジェファーソンの違い

=====

あとがき

 この本の最大の発見(のちのちの、私の業績)は、カルヴァン派(長老派)と呼ばれるキリスト教プロテスタントの大きな宗派(セクト)と、ユニテリアンの区別をつけたことだろう。どちらもピューリタンたち(清教徒革命)と言うけれど、どう違うのか。長いこと分からなかった。

 ようやく私は、この大きな謎を解いた。日本人としては初めてで、日本への初理解(初上陸)となる。カルヴァン派のすぐそばに居るのに、もっと先鋭な活動家たちで、革命(革新)運動(すなわち王政廃止論)の中心の者たちが、ユニテリアン派だったのである。つまり、ユニテリアンは、「神の存在を疑う(もう、これまで通り信じるわけにはゆかない)」すなわち、理神論 deism にまで到りついたヨーロッパの過激派たちだったのだ。

私はこの本を途中まで書いてきて、ようやく、この中心に横たわる疑問にはっきりと解答(ソルーション)を出すことができた。この本を書く途中で、私はこの疑問(謎)を佐藤優氏に「カルヴァン派とユニテリアンはどう違うのか」と執拗にぶつけた。彼の助言にも助けられて、それでようやく大きな解(根=こん。答)を得た。

 

 この本全体は、ユニテリアンという、キリスト教の一派なのだが、現在ではそこから追い出されたと言うか、かなり外(はず)れてしまった人々について書いた。ユニテリアンからヨーロッパの社会改善(改革)運動が生まれた。貧しい人々を救(たす)けようという社会福祉活動となり、そして社会主義者(ソシアリスト)の革命家(レヴォルーショナリー)の群れまでが生まれたのだ。マルクスとエンゲルスが「空想的(ユートピアン)」と呼んだ人々だけでなく、カール・マルクスたち過激思想家たち自身が、ユニテリアンから生まれ、派生したのである。

その100年前の、フランス革命の革命指導者(ロベスピエールらルソー主義者)もまた、全員ユニテリアン=フリーメイソンであった。そして、それと完全に同時代のアメリカ独立(革命)戦争(アメリカ建国)の指導者たち、フランクリン、ワシントン、ジェファーソンたちも全員ユニテリアン(フリーメイソンリー)である。そして何と、その150年前の1620年からの「メイフラワー号」のピルグリム・ファーザーズのアメリカへの初上陸の指導者たちも全員、ユニテリアンであった。驚くべき大きな真実である。

時代に先進する人たちを描くことがこの本の中心だ。ユニテリアン Unitarian とは何者か。この改革派知識人、活動家たちの動きが、欧米近代500年間の最先端での動きだったのだ。この「ユニテリアンをなんとか理解する」という太い一本の鉄棒をガツンと欧米の500年に突き刺すことで、欧米近代(モダン)の歴史の大きな真実をついに捜(さぐ)り出した。

アメリカの独立戦争(1776年、独立宣言。建国)、その150年前の アメリカ入植以来の話、そして現在から150年前の エマーソン(マルクスと同時代のアメリカ思想家)を中心に置いた。ヨーロッパ、とくにイギリス、フランス、ドイツをアメリカと連結させた。

日本で初めてここにユニテリアンという中心軸を一本通した。そうすることで大きな理解が、私の脳(頭)の中で出来上がった。岩穴を掘り進むように苦心して書いた。たいした知識もないのに、真っ暗闇の中で、私は自分の筆の鏨(たがね)(掘削道具)で掘って、ガツガツと書き進んだ。すべてを語り尽くさなければ気が済まない。

 それが、果たしてどれぐらいの意味を持つか。なんて、もう言ってられない。私は本当に、恐ろしい重要な真実がたくさん分かってきた。

この本は、人類史の全体像を縦、横、奥行きで立体化させて、つかまえようとしている。

その時、他の国(主要国)はどのように動いたか。その内部の対立はどうだったのか。この相互連関を書き並べる。登場人物は、その時代の王様と権力者たちだ。

彼ら西洋の王様の名前が次々にたくさん出てくると、日本人の読み手は混乱して、「訳(わけ)が分からん。イギリス国王ジョージ3世と言われてもなあ」となる。ここで私も苦しむ。ヨーロッパの王様の名前など、一読したぐらいでは誰も分からない。区別もつかない。だから私は今も苦しい。

それでも、どの国でも、その時の30年間の、一人の国王(権力者)のご乱行と事件の数々は、その国の人々には、自分の人生に関わる大変なことだったのだ。だが、次の時代の人々は、もうそれらを忘れ去る。そして、目の前の自分たちの事件と問題に翻弄され、振り回される。

 私は、ここに、新しい手法(文体=スタイル、あるいは文章の序列=オーダー)を作る技術での、革新(イノヴェイション)を、何としても発見し開発しなければならなかった。これが大変なことだ。

ほんの75年前の敗戦まで、日本人は、心底そして頭のてっぺんから昭和天皇のことを崇高なる現人神(あらひとがみ)であると信じ込んでいたのである。そして、1946年に、裕仁(ひろひと)天皇は、「(私も)人間(です)宣言」をしたのである。人間なんてこんなもので、わずか数十年で、集団的に、どんな思想にでも切り変わってゆく。愚かで弱い生き物なのだ。

 明治天皇絶対体制は、神国(しんこく)日本の伝統から作られたのではない。そうではなくて大英帝国(イギリス)が作ったのだ。自分たちの英国王は、神聖体(ホウリー・ボディ)であり、霊的(れいてき)存在である。そのように英国国教会(アングリカン・チャーチ)を創った(ヘンリー8世が1534年、ローマ・カトリック教会から分裂)時に出来た考え(思想)である。今、イギリスに労働党(レイバー・パーティ)を中心に「王政廃止論」が盛り上がっている。「自分たちのイギリスは、今も王と貴族たちを上に載せている、世界で一番遅れた国だ」とブツブツ言っている。こういう世界最先端の課題も日本人に教えなければ、私の役目は済まないのだ。

 こういう、過去と現在をグサグサと(縦横無尽に)縫い合わせる文体(スタイル)を、私は開発(開拓)しようとして必死なのである。

 一冊の本は、本当に分かりやすく、大きな柱に向かって全体を組み立てなければいけない。「ただの世界史の本」みたいなものを私が書くわけがない。それでは読者が喰いついてくれない。私が中公文庫の『世界の歴史』(30巻)のまとめ直しみたいなことをやっても、無意味だ。簡潔にたった一冊で、大きな流れをスパッと「ああ、そういうことだったのか」と、読み解いてみせることに意味がある。「お前の勝手な考え、思いつきに過ぎない」と言われても構わない。この出版不況のさ中で、出版社と書店がどんどん廃業、倒産、潰(つぶ)れている。大きな火の玉を投げつけなければ、お客様に対して失礼だ。書き手はもっともっと客(本の読者)に奉仕しなければいけない。

 

 最後に。この本もまた、本当にドイツ語とフランス語がスラスラと読めて書ける有能な編集者である小笠原豊樹氏との合作である。大きな思考(思想)の鉄骨は私が組み立てた。細かいあれこれの表記や事実関係の訂正は小笠原氏がやってくれた。この国は、出版社の編集者(エディター)たちの才能と苦心、労力に対してほとんど報いることのない、無惨な国である。

 これらの現実を、精一杯、全身で受け留めることだけして、我慢しながら、歯を喰いしばって、最高級知識を分かり易く知的国民にお裾分けする任務を、私は死ぬまで果たす。

 

 2020年3月5日

 

                                    副島隆彦

(貼り付け終わり)

(終わり)
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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側

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 古村治彦です。

 新型コロナウイルス感染拡大は世界的な規模で危機的状況を作り出している。アメリカ国内も中国や日本を馬鹿にしていたが、今やプロスポーツは中止、選挙も延期などと影響が出ている。有名人が手を洗う動画を投稿し、「皆さん、しっかり手を洗いましょう」という呼びかけを行っている。手洗いうがいに関しては、日本の方が勝っているだろう。

 そうした中で、新型コロナウイルスを「ブーマー・リムーヴァー(boomer remover)」というスラングで呼ぶことがアメリカのインターネット上では流行しているそう。「ブーマー」とは「ベイビー・ブーム世代」、日本で言えば「団塊の世代」だ。戦後すぐ生まれから15年後くらいの間の世代ということになる。1946、47年から1964年くらいまでに生まれた人々であり、年齢で言えば55歳から74歳くらいまでを指す。

 「リムーヴァー」は除去剤という意味だ。ペンキやインク、マニキュアを剥がす液体などがリムーヴァーという。「ブーマー・リムーヴァー」とは「ベイビー・ブーム世代を除去するもの」という意味になる。新型コロナウイルスについてはその特徴として、高齢者になるほど重症化リスク、致死率が高いということが知られている。若者の重症化リスク、致死率が低い。これで「人口が多い高齢者だけを除去する(殺す)ウイルス」ということになる。何とも嫌な言葉である。しかし、現在の先進国が抱える、世代間の不公平感を示す言葉ともなっている。

 私のある知人は、「この新型コロナウイルスって高齢者しか死なないなんて、財務省からしたら最高じゃない?社会保障関連予算がどんどん増える中で年寄りだけが減るんだから。財務省にしたら万歳しながら、“社会保障改善ウイルス”と呼びたいんじゃないの」と冷酷に述べていた。これは、超高齢社会(高齢者が人口に占める割合が3割弱)の中で、税金と社会保障費で約5割の負担が重い中で、高齢者たちはバブルも経験して、逃げ得をしようとしている、という現役世代は不平不満を持っているということを示している。
 下の記事で言えば、ミレニアル世代とは20代中盤から30代後半までの人々、Z世代は18歳から20代中盤を指す。日本で言えば、団塊ジュニア世代は、アメリカで言えばX世代と呼ばれている。

 日本ではメディアの報道もあり、高齢者も新型コロナウイルスの危険性を理解し、行動を抑えている人々が多いように思う。しかし、以下の記事で紹介されているのは、アメリカでは、ベイビー・ブーム世代の高齢者が危険性を理解せず、子供たち世代の説得も聞き入れないで生活を抑制的にしないことで、子供たち世代が苛立っているということだ。ベイビー・ブーム世代の高齢者について「話が通じなくて、知識がない」という認識を持つ若い人たちが多くなっているということも紹介されている。この点は興味深い。

 社会が危機的状況に陥ると様々な事象が出てくるが、新型コロナウイルス感染拡大とともに「ブーマー・リムーヴァー」という言葉も拡大しているというのは、先進国の行き詰まり感をよく示しているものだと思う。

(貼り付けはじめ)

寒気がするコロナウイルスに関するインターネット上のスラング「ブーマー・リムーヴァー」は、ミレニアル世代の人々をより怖い世代だと考えさせるだけの効果しかない(Morbid ‘boomer remover’ coronavirus meme only makes millennials seem more awful

ハンナ・スパークス筆

2020年3月19日

『ニューヨーク・ポスト』紙

https://nypost.com/2020/03/19/morbid-boomer-remover-coronavirus-meme-only-makes-millennials-seem-more-awful/

コロナウイルスの爆発的流行に対する新しいスラングが出て来ているが、それは嫌な思いをするが、寒気がするほど実態を表している言葉だ。それは、「ブーマー・リムーヴァー(boomer remover)」だ。

この虚無的なキャッチフレーズは、投稿型ソーシャルサイト「レディット(Reddit)」で拡散されて、全てのSNSプラットフォームでも拡散されている。特に知識が豊富なミレニアル世代の人々の間で広がった。こうした人々は、COVID-19ウイルスはベイビー・ブーム世代、もしくは55歳から75歳までの人々に狙いを定めているように見えるという事実を取り上げている。

疾病コントロール・予防センターのデータによると、アメリカ国内ではコロナウイルス感染関連で入院している患者の40%が54歳よりも若い人々であるという事実はある。しかし、今回の疾病がより年齢の高い人々にとってより厳しいものとなるということも事実だ。コロナウイルス関連での死者の80%が65歳以上である。

このような状況の中で、「ブーマー・リムーヴァー」は現在、インターネット上で流行語(trending meme)となっている。

しかし、アメリカ政府の医療関係の役人たちは、感染数の「カーヴを緩やかに」するために全ての年代の人々は家に留まるように求めている。若い人々の多くは、ベイビー・ブーム世代に属する両親や祖父母の世界規模の健康上の危機に対する無気力なアプローチを取るように感じている。

成人した人々からすれば高齢の人々の思慮のない行動が懸念材料となる。

フリードリッヒ・エイジェンシーの出版エージェントをしているルーシー・カールソンは心配しながら次のようにツイッター上で書いている。「糖尿病を持っているベイビー・ブーム世代の親に町中に行かないように止めるために説得するベストなアドヴァイスは何?電話で怒鳴ってしまうのは私の流儀ではないのだけれど」。

別の不満を持っているミレニアル世代のある人は次のようにツイートした。「70歳になるおふくろに、同世代が集まる行為を全部やめるように言う前に、若い人たちがコロナウイルスをブーマー・リム―ヴァ―と呼んでいるようだよ、と言ってやったんだ」。

『ニューヨーカー』誌のマイケル・シュルマン記者はツイッター上に、「ベイビー・ブーム世代の親たちが自分たちよりもコロナウイルスについて真剣に捉えていない」ことを教えて欲しいと投稿したところ、似たような状況にあって苛立っている子供世代から1500以上もの返事が返ってきた。こうした人々の中には、高齢の親戚がフロリダに休暇に行くと言って説得を聞き入れてくれない、いつも通りに教会に行くと言い張る、101歳になる両親に会いに行くのが悪いことなのかと食って掛かるといったエピソードが紹介されている。

ミレニアル世代はまだ家族として高齢者を心配しているところがあるが、Z世代の人々は高齢者に対してより敵対的な態度を取っている。

ツイッターユーザーのBW・カーリンはSNS上の議論を踏まえながら、「中学校の生成をしている親戚がいるのだけど、生徒たちはコロナウイルスを“ブーマー・リムーヴァー”と言っているんだって」とツイッター上に投稿している。

昨年、Z世代とミレニアル世代の人々は、高齢者に対する怒りを「分かったから、ブーマー世代(OK, boomer)」というキャッチフレーズを作ることで表現した。このベイビー・ブーム世代を馬鹿にする否定的な表現は、55歳以上の人々について話が通じず、何も知らないと若い人々が考えていることを示している。

しかし、ブーマー・リムーヴァーというより強い意味を持つ表現は更に先に進んだものと言えるだろう。

この言葉に対して批判的なある人物は次のようにツイートしている。「ハハハ、ブーマー・リムーヴァーか。これにはあなたの家族や愛する人、それに有名人や政治家も含まれる。こうした人々は若い人たちを常に助けてきた。彼らの政治的な考え方は未熟だ」。

別の人物は次のように不満を表明している。「#BoomerRemoverというタグをつけている奴らについて簡単に言うと次のようになる。これまで“ダメ”と言われたこともなく、共感や責任感を教えられたこともない甘やかされた子供ちゃんたちだ。誰も相手なんてしない。どれだけでも甘やかされたいんだろう。そして実際に甘やかされている」。

今週初め、『フィナンシャル・タイムズ』紙のラナ・フォールハー記者はこの流行している言葉の政治的な文脈からの分析を行った。

フォールハーは次のように書いている。「若い人々はコロナウイルスを“ブーマー・リムーヴァー”と呼んでいる。これは現在、社会全体に共感が欠けているということを反映している。しかし、同時に若い世代が年齢の高い世代に対して持っている漠然とした政治的な怒りも反映している」。

しかし、他の人たちはこうした論争を和らげようと努めている。ベイビー・ブーム世代の中には、十代の時に世代間の戦いを戦い抜いた人たちがいる(性的革命、ヴェトナム戦争への抗議活動、ビートルズ)と主張している人々がいる。

ヴィデオ作家ジャック・セイントは次のように書いている。「コロナウイルスを“ブーマー・リムーヴァー”と呼ぶ十代は恐ろしい。しかし、これがどのように誤っているかを教えようとしている人々は、十代がどんな人たちで何を考えているかを知らなければならない」。

結局、高齢者たちのコロナウイルス関連死を笑っている世代は、現在、春休みでフロリダの海岸に集まっている人々なのである。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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