古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

 古村治彦です。

 2021年5月29日に最新刊『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)を発売しました。最初から孤軍奮闘、自力で皆さんに本の存在を知っていただくしかない状況です。不貞腐れている時間はありません。矢尽き刀折れるまで続ける所存です。

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悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

 大統領選挙終了後からバイデンの大統領就任式の間、そして、現在までトランプ支持者の中でささやかれているのは、「米軍の出動」「米軍の蹶起」である。簡単に言えば、クーデターである。クーデターのためには、兵士だけでは駄目だし、将官だけでも成功しない。縦(階級)と横(部隊数や人数)の広がりが必要である。そして、クーデターを起こすには、大義名分、自分たちの行動を正当化するための理由付けが最重要だ。

 アメリカ軍の内部にどれだけのトランプ支持者がおり、その人々がネットワーク化されて、その階層も上は大将中将から下は二等兵まで幅広くなっているのか、そうしたことは分からない。しかし、「クーデターが必要だ」と考えている人からそれは必要ないとと考える人まで、トランプ支持者が米軍内にいるのは確かだ。軍関係者は共和党支持者が多いと言われている。これまでもこのブログでご紹介してきたが、共和党支持者内のトランプ支持者の割合は高い。そこから敷衍すれば、米軍内のトランプ支持者の数は多いということが推測される。

 米軍幹部や民主党は、米軍内のトランプ支持者を追い出そうとしている。そのために調査をするとしている。米軍の軍人や関係者がどのような思想を持とうがそれは自由だ。それを表面に出さないで、上官の命令に従って粛々と責任を果たしていれば何の問題もない。この表面上は問題のない軍人(トランプ支持の考えを持つ)たちが、スリーパーのように思えるのだろう。ひとたび、何か起これば、この人たちが立ち上がるということを恐れているのだろう。

 調査の範囲が退役軍人にも広がっているというのは、トランプ支持の集会を企画したり、参加したりしている人たちの多くに退役軍人たちがいることを示している。この人たちは、全く軍務や軍の訓練を経験していない一般の人々とは、組織力、行動力、武器使用能力において雲泥の差がある。この人たちの動きを縛りたいということも軍の意向としてあるのだろう。しかし、軍関係のトランプ支持者の全貌を完全に掌握することは不可能だ。そうなれば、軍の最高幹部や民主党は常にスリーパーの影に怯えねばならないことになる。

(貼り付けはじめ)

退役准将が、軍隊内にいる狂信的なトランプ支持者たちを根絶やしにする必要があると発言(Retired brigadier general says Trump loyalists in military need rooting out

ジョフ・コルヴィン筆

2021年1月8日

https://fortune.com/2021/01/08/trump-support-military-capitol-coup-attempt/

連邦議事堂進入事件によって、政権移行に伴って起こると考えられる暴力事件において米軍の将兵の関与があるのではないという疑問が出て来ている。今回の暴動に対してトランプ大統領は現役の将兵を派遣しなかった。州兵はワシントン市長ムリエル・バウザーの要請によって、マイク・ペンス副大統領が命令を出して、それで派遣されたものだ。トランプ大統領は2020年12月の段階で、大統領執務室において、選挙結果を覆すために米軍を使用する可能性について話し合いを持ったと報道されている。この会議に出席したのは、トランプ大統領の初代の国家安全保障問題担当大統領補佐官だったマイケル・フリン退役陸軍中将だった。フリンはテレビ番組に出演し、「トランプ大統領は米軍の能力を利用し、選挙結果が接戦となっている各州に派遣し、選挙をやり直させることができる」と発言した。連邦議事堂進入事件の3日前、存命中の国防長官経験者10名は連名で、『ワシントン・ポスト』紙に論説を発表し、「選挙をめぐる争いを解決するために米軍を関与させること」に反対すると表明した。

これから何が起きるかについて、本誌はトーマス・コルディッツとインタヴューを行う。コルディッツは退役陸軍准将である。コルディッツは陸軍士官学校とイェール大学経営学部で教鞭を執っている。また、ライス大学ドアー記念ニューリーダーズ研究所の運営責任者も務めている。

トランプと軍部との間の関係についての現在のあなたの考えをお聞かせください。

私が大変懸念しているのは、軍隊の中に強力なトランプ支持が長年にわたり存在してきたということです。軍隊に属する人々が保守的、もしくは極めて保守的になる権利は認められています。しかし、軍隊内のトランプ支持者たちは、1月6日の事件について、本来は米軍が可及的速やかに行うべきものであった壮挙だと考えています。トランプ支持者たちが軍隊から排除されている限りはそのようなことは起きません。ですから、彼らの排除は必要なことなのです。私たちは本の数名の人たちの話をしているのではありません。私たちは国防総省全体に数千名は存在する人たちの話をしているのです。これらの人々の多くは自分たちの主張を隠そうともせずに発信し続けるでしょう。特にSNSで発信するでしょう。これは反乱であり、国家に対する犯罪です。米軍の最高幹部たちには、反乱は素晴らしい、もしくは合法だと考える人間たちや秘かにそうした考えを持つ人間たちをいかなる理由があろうとも、排除しなければならない責務があります。

■議事堂進入事件のような状況に関連する軍の原理とは何ですか?

米軍は、民警団法(Posse Comitatus Act・訳者註:1878年の連邦法で、国内の治安維持に陸軍、空軍、州兵を動員することを禁じたもの)によって統制されています。米軍は、アメリカ市民やアメリカの国土に対峙するような使い方はできないのです。法執行目的のために使用することができないのです。米軍統合参謀本部議長マーク・ミリー大将が、とランプ大統領や周辺が望んだ、米軍の選挙執行活動やその他の活動は不可能だと公式に発表した理由はここにあります。

政権移行に関しては、米軍将兵は誰が大統領になるにしてもその過程に介入しない義務を有しています。米軍の将兵はアメリカ合衆国憲法を支持し、擁護するという宣誓を行っています。アイゼンハワー大統領時代には、米軍の将官が投票を行うことさえ良くないことだと考えられていたほどです。米軍の将官が私的な空間で政治的な発言ができるようになったのはつい最近のことです。将官たちはもちろん投票に行きます。しかし、将官として、政治的に中立であることを保つ責任があり、自分たちの責務を果たす際には政治的中立であることが求められます。その中にはSNSで部下や他の人たちに対して政治的な発言をしないことも含まれます。将官として、自身の好き嫌いを発言することは命令を下すことに等しい行為となるからです。

陸軍在職中に投票はしましたか?

私はキャリアを通じて投票に参加しました。そのほとんど全てが不在者投票でした。私の部下たちは、私が誰に投票したか、私の政治的な考えはどのようなものかを知ることはなかったと思います。軍務に就いている期間、私たちには個人の信条を表明する自由はありません。そして、私たちのために働いている人たちもそのようなことをしないように求められています。これが軍隊にいる人間がいかにして政治的な動きに近づくかということの内容なのです。

士官たちにはリベラルな考え、保守的な考え、それ以外の考えを持つ自由があります。しかし、現在軍隊の内部にあるのは、カルトに近いものです。反乱にはいくつかの段階があり、それは国内で起きるテロリズムです。連邦議事堂の窓を登っていて銃撃された女性は空軍に12年間在職した退役軍人でした。私は彼女がこのような馬鹿げた行為を行うに至った時間は短いものではない、一夕一朝に形成されたものではないと考えます。ですから、今回の事件は重要なのです。

=====

連邦議事堂進入事件発生後、数千名の将兵がワシントンDCに派遣されている中、国防総省はアメリカ軍内の過激主義について捜査する(Pentagon probes extremism in U.S. military as thousands of troops guard D.C. after Capitol riot

ケヴィン・ブリューインガー、アマンダ・マシアス筆

2021年114

CNBC

https://www.cnbc.com/2021/01/14/pentagon-probing-extremism-in-us-military-after-capitol-riot.html

主要なポイント

・10名以上の民主党所属の連邦上院議員たちが国防総省に対して、米軍内の白人優越主義(white supremacy)の拡大について調査すべきだと主張した。

・ドナルド・トランプ大統領の支持者たちがアメリカ連邦議事堂に進入する事件を起こした時、数千名の州兵がワシントンを防衛していた。

・エミリー・レイニー陸軍大尉は心理作戦に参加していた。ブラッグ基地の司令部が、レイニー大尉の暴動への関与について調査していることを認めた後、レイニーは陸軍から退職した。

木曜日、国防総省の内部調査部門は、先週のアメリカ連邦議事堂に対する進入事件の後、米軍内の過激主義者たちと白人優越主義者たちを排除するために、当局は十分な対策を行っていないと発表した。

数千名の州兵、そのうちには武装した者たちもいたが、彼らがトランプ大統領の支持者たちによる1月6日の議会進入事件の前に、ワシントンの防衛のために派遣されていた。今回の捜査はこの派遣を受けて、今月になって開始された。

国防総省は将官クラスの間での過激主義を排除するために可能な方策は全て実施していると主張したが、今回の内部調査部門の発表はその後になされたものだ。

司法当局は水曜日のジョー・バイデン大統領の就任式で更なる暴力行為がなされる可能性を認めその対処を準備している。司法当局の幹部たちは、過激主義者たちが全国の各州議事堂を攻撃目標にしていることについて懸念を持っている。また、インターネット上では、人々がトランプ支持の集会を組織しようとしている。

プログラムの観察と評価を担当する、アメリカ軍副監察官キャロライン・ハンツは書簡の中で次のように述べている。「今回の捜査の目的は、「国防総省と米軍部隊が、現役の職員や将兵が白人優越主義、過激主義、犯罪ギャングのイデオロギーや原理に参加したり、主張を展開したりすることを禁止している政策と手続きを、どれほど実行しているのかを見極めるものである」。

ハンツは、監察官局は「監督と評価が進めば、目的を見直し、範囲を拡大する可能性がある。そして、私たちは更なる目的の追加や見直しについて国防総省最高幹部たちからの提案を受け考慮することになるだろう」。

民主、共和両党の連邦議員たちは、連邦議事堂進入事件についての捜査を実施し、司法当局による対応を行うように求めている。

木曜日の午後、コネチカット州選出のリチャード・ブルーメンソール連邦上院議員が率いる10名以上の民主党所属の連邦上院議員たちは、米軍内の白人優越主義の拡大を調査するように求めた。

議員たちが米軍監察官代理シーン・オドネルに宛てた書簡の中で次のように述べられている。「米軍上層部内の白人優越主義と過激なイデオロギーの問題は新しいものではない。しかし、連邦議事堂進入事件は、即座に警戒を強めねばならないということを示している」。

書簡では、進入に参加した、もしくは暴力事件が起きる前に近くで開かれていたトランプ支持の集会に参加した、そのような人々の中に、退役軍人、もしくは現役の軍人たちが多数確認された、と記載されている。

議員たちは次のように書いている。「白人優越主義イデオロギーの拡散は米軍にとって危険であり、アメリカの民主政治体制が必要としている安全な軍と市民社会との関係に亀裂が入っている」。

国防総省の諜報部門責任者ゲイリー・リードは水曜日に次のような文章を発表している。「国防総省に在職する我々は、国防総省から過激主義を排除するためにあらゆる手段を採っている。国防総省は米軍関係者全員に対して、優越主義、過激主義、犯罪に関わるギャングやそれらのイデオロギーに積極的に関与することを厳しく戒めている」。

月曜日、タミー・ダックワース連邦上院議員(イリノイ州選出、民主党)は国防長官代理クリス・ミラーに対して、現役のもしくは退役した軍関係者たちが暴動事件に参加したかどうかを調査するように求めた。

ダックワースは、捜査当局によって軍関係者が特定された場合、ミラーは「これらの人々について、統一軍事裁判法(Uniform Code of Military Justice)に基づいて、責任を果たさせるために適切な行動を取らねばならない」と発言した。

ダックワースは州兵の陸軍中佐で退役したが、現役中はイラクに派遣された経験を持つ。ダックワースは「素晴らしい軍律を守るためには、アメリカ軍内に入り込み、我が国の安全保障を脅かしている過激主義者たちを排除することが必要なのである」と述べた。

アメリカ陸軍の心理作戦に関与していたエミリー・レイニー陸軍大尉は月曜日、ブラッグ基地の司令部が彼女の暴動への関与について調査していることを認めた後の月曜日、辞表を提出した。

火曜日に出された声明の中で、陸軍は、FBIと協力して、先週の暴動の参加者の中に陸軍と何らかの関係を持つ人間がいるかどうかを特定するとしている。

陸軍報道官はEメールでの声明の中で、「暴力、市民的不服従、平和への反抗といった活動は、統一軍事裁判法、もしくは州法、連邦法によって罰せられることになるだろう」と書いている。

ワシントンに2万人規模の州兵が派遣されている中、国防総省監察部による調査が行われるということが明らかにされた。この数は現在、イラク、シリア、アフガニスタンに派遣されている米軍将兵の合計数よりも多くなっている。

派遣された軍隊の一部は連邦議事堂警備部とバイデンの就任式を支援する目的を持っている。これらの将兵は武装している。

安全保障上の理由から、州兵部隊と国防総省の幹部たちはどの程度の数の将兵が武装するかどうか、大統領就任式の後に将兵が武装するかどうかを明らかにしていない。

国防総省のある幹部は火曜日、記者団に対して、ワシントンの各行事を支援するために派遣されている州兵の更なる背景調査を行う予定だと発言した。

軍隊が連邦議事堂に多数派遣されている中、ホワイトハウスはトランプ大統領からの声明を発表した。その内容は一期目で終わる大統領の任期期間中に海外に派遣されている米軍章への数を削減するというものだった。

トランプは2016年の大統領選挙で「中東における馬鹿げた終わりのない戦争を止める」と訴えていた。トランプは声明の中で「アメリカ軍はアフガニスタンに19年間も駐屯している」と述べた。

トランプは更に「同様に、イラクとシリアにおける危険度はこれまでで最低となっている。私は終わりのない戦いを終えるためにこれからも努力を続けていく」と述べた。

トランプは加えて、「我が国の軍隊を再建し、軍務に就いている勇敢な男性と女性を支援することは私の無上の光栄だ」と述べた。

ホワイトハウスから米軍の撤退のプレスリリースが出された後すぐにトランプ大統領の声明が出された。トランプ大統領は声明と同じくらいの長さのメッセージを頻繁にツイッターに投稿してきた。トランプ大統領は暴動に対する最初の反応に続き、声明という形で自身の主張を発表している。

連邦議事堂を人々が包囲する直前にホワイトハウスの外で開かれていた集会で、トランプ大統領は、大統領選挙は「盗まれた」と謝った主張を展開していた。連邦下院において民主党と共和党の一部が投票して、トランプ大統領が反乱を使嗾したとして、弾劾を可決した後、トランプ大統領はヴィデオメッセージで暴動参加者たちを非難した。

トランプは水曜日夜に発表したヴィデオメッセージにおいて、「私の真の支持者の中に、政治に関連する暴力を支持する人など一人もいない」と述べた。トランプ支持者たちがトランプ支持の集会からやがて連邦議事堂に移動し、暴動に参加したことについて、自分の発言は適切だったとトランプ派主張している。

民主党側はトランプの有罪に向けて動いており、連邦上院における選挙で大統領の座から引きずり降ろしたいとしている。連邦上院多数党(共和党)院内総務(Senate Majority Leader)のミッチ・マコーネル連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)は、弾劾裁判はトランプがホワイトハウスを去る前までに結審することは不可能だと述べた。これが意味するところは、裁判はバイデン政権成立直後までかかる、ということである。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 2021年5月29日に発売しました最新刊について、担当編集者からもっと頑張って宣伝するようにと発破をかけられました。出版社がどのような宣伝をしているのか全く分かりませんが、私はできることが限られておりますので、自分が利用している媒体を使ってお知らせをするしかできません。

ですので、ブログ記事の冒頭にてご紹介させていただくスタイルをしばらく継続いたします。「もう飽きたよ」「見づらい」という方には申し訳ありませんが、本が売れるかどうかは次の出版につながるかどうか、ということにも関連しますので、しつこくやります。また、ブログは無料で公開していますが、このスタイルが良いのか、宣伝媒体としての力がないのではないかと考える場合には閉鎖も含めて検討したいと思います。

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

  民主党進歩主義派(ポピュリズム派)を代表する4名の女性連邦下院議員たち(「スクアット(The Squad)」と呼ばれている)に対する非難決議案が連邦下院に提出された。この4名については拙著でも取り上げている。その理由は、アメリカとイスラエルをテロ組織タリバンとハマスと同列に並べるような発言をしたこと、テロ攻撃を擁護するかのような発言を行ったこととされている。提出したのはいずれも共和党所属の下院議員たちだ。
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左からAOC、プレスリー、オマル、タリーブ
 イスラエルに関してとなると、アメリカ政界では過剰とも言える反応が出る。それは、「イスラエル・ロビー(Israel Lobby)」と呼ばれる、親イスラエル系の組織や団体が資金や動員力を使って、アメリカの政治家たちを脅し上げているからだ。これによって、イスラエルが行う行為をアメリカが正当化するということになる。「反イスラエル」というレッテル貼りをされると、選挙では勝てない。また、ナチスと同じくらいに悪い人間ということにされる。

 アメリカ国内でも「Jストリート」のような穏健で、イスラエルに対しては是々非々の、手厳しい姿勢を取っている、ユダヤ系アメリカ人団体もあるが、全体としては、なんでもイスラエル擁護、イスラエル国内のユダヤ人たちよりも強硬な姿勢を取るユダヤ系アメリカ人たちが多くいる。

 ビビ・ネタニヤフ首相が退陣、ということが起き、イスラエルで政権交代が起きた。こうした時期に、連邦下院で、イスラエルに対して厳しい姿勢を取っているとされる議員たちに対する非難決議案が出されたというのは、これら2つの出来事は関連していると考えねばならない。中東和平、パレスチナ和平で、イスラエル・ロビーやイスラエル国内の強硬派を置き去りにして、アメリカが主導して何らかの妥協を行うことをけん制する目的があるのだろうと考えられる。

しかし、そもそもバイデン政権にとっての主要政策は、対中、対露政策であり、中東政策の重要性は下がっていると思われる。そのことにイスラエルは危機感を持っていることだろう。その危機感がアメリカ国内のイスラエル・ロビーに伝わり、連邦議員たちを動かしているという構図になっていると考えられる。

(貼り付けはじめ)

連邦下院共和党が「スクアッド」を非難する決議案を提出(House Republicans introduce resolution to censure the 'Squad'

マイケル・シューネル筆

2021年6月14日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/558280-house-republicans-introduce-resolution-to-censure-omar-ocasio-cortez-tlaib-and?fbclid=IwAR3zP3fqVrmT1SsKFY-Jj1foReDjFZa_ADKdiTCrjreuqwoEw8veizvQg3Y

共和党所属の連邦下院議員3名は月曜日、民主党所属の連邦下院議員であるイルハン・オマル(Ilhan Omar、ミネソタ州選出)、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(Alexandria Ocasio-Cortez、ニューヨーク州選出)、ラシダ・タリーブ(Rashida Tlaib、ミシガン州選出)、アヤンナ・プレスリー(Ayanna Pressley、マサチューセッツ州選出)に対する批判決議案を提出した。その理由は4名の議員たちは「テロリスト組織を擁護し、アメリカ各地での反ユダヤ攻撃を誘発した」というものだ。

決議案を提出したのは、マイク・ウォルツ(Mike Waltz、フロリダ州選出、共和党)、ジム・バンクス(Jim Banks、インディアナ州選出、共和党)、クラウディア・テニー(Claudia Tenney、ニューヨーク州選出、共和党)の3名だ。時に「ザ・スクアッド(The Squad 訳者註:部隊という意味)」と呼ばれる4名の議員たちは多くの事件を引き起こしている。最も最近批判を集めているのはオマルで、タリバンとハマスというテロ組織の戦争犯罪とアメリカとイスラエルの戦争犯罪を同列に並べた発言が攻撃を受けている。
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テニーとバンクス
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ウォルツ

決議案は更に、4名の下院議員がイスラエルを「アパルトヘイト国家(apartheid state)」と呼んだとし、タリブに関しては、イスラエル政府がパレスチナ人たちに対して「民族浄化(ethnic cleansing)」を行っていると発言したとしている。

ウォルツはプレスリリースの中で次のように述べている。「アメリカの緊密な同盟国であるイスラエルに対するハマスによるテロ攻撃を公の場で擁護し、危険な言葉遣いで全米各地での反ユダヤ攻撃を誘発している連邦議員たちの存在から目を背けることはできない」

バンクスも同様の声明を発表し、その中で、4名の議員たちは繰り返し、アメリカとアメリカに近い同盟諸国を侮辱してきた、と述べている。

最近、批判を浴びたのは、オマルが先週の連邦下院外交委員会での公聴会の席上、アントニー・ブリンケン国務長官に対して、アフガニスタンにおけるタリバンとアメリカ軍による犯罪についての国際刑事裁判所による捜査について質問した際に、ガザをめぐる紛争でのハマスとイスラエルについても同様の質問を行ったことだ。

オマルは、ブリンケンに対する質問の件についてヴィデオ撮影した弁明をツイートした。そして、次のようにツイートした。「人道に対する罪の被害者全てに対して説明責任と正義をもたらす必要がある。私たちは、アメリカ、ハマス、イスラエル、アフガニスタン、タリバンによる考えられないレヴェルの残虐行為を目撃している。私はブリンケン国務長官に対して、このような人々が正義を求めるためにはどこに向かうべきかという質問を行った」。

ソマリア難民のオマルは連邦議員に選ばれた最初のイスラム教徒女性2名のうちの1名である。オマルは、アメリカとイスラエルをテロ組織と同列に並べた発言をしたのではないということを明確にしようと努力を続けている。

オマルは声明の中で次のように述べた。「月曜日、私はアントニー・ブリンケン国務長官に対して、国際刑事裁判所によって現在も継続されている捜査について質問した。ここで明確にしておきたい。私たちの質疑応答は国際刑事裁判所が捜査している個別の事件についての説明責任についてであった。ハマスとタリバンとアメリカとイスラエルとの間の道徳上の比較を行うことが目的ではなかった」

オマルに対する批判が高まる中、先週、連邦下院議長ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)と連邦下院民主党指導部は、稀なケースであるが、共同で声明を発表した。この声明は拡大していく論争と攻撃を鎮める目的を持っていた。しかし、声明では、「民主政治体制国家とテロリズムに関与する諸組織(ハマスとタリバン)を同列に扱うという過ちを犯し」、また、「偏見を助長し、平和と安全保障の未来に向かう進歩を損ねる」としている。

日曜日、ペロシはCNNの「ステイト・オブ・ザ・ユニオン」に出演し、ペロシは連邦下院民主党指導部に対して、オマルを「叱責しないように」求め、オマルは「連邦下院にとって重要なメンバー」であると発言した。

今年2月、別の非難決議案が民主党によって出され、この決議案は可決した。評決は党派のラインに沿って行われた。この決議によって、マージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員(ジョージア州選出、共和党)から連邦下院の各委員会からの排除が決定された。その理由は、グリーンが陰謀論と人種差別的な主張、民主党の政治家たちに対する暴力を支持してきたというものだった。

本誌はオマル、AOC、タリブ、プレスリーにコメントを求めた。

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 古村治彦です。

 2021年5月29日に発売開始となった最新刊『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)は絶賛発売中です。是非お読みください。

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悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

 2000年代にアメリカに留学していた時期、良く音楽を聴いていた。車の運転中には、ラジオをつけてFMの音楽番組を聞いていた。そこではその当時、アメリカで流行していた曲が流れていた。私はベタだと言われてしまうが、Maroon 5Coldplayが好きになった。

 そうした中で、グウェン・ステファニ(Gwen Stefani、1969年-、51歳)という女性シンガーを知った。日本のポップカルチャーに傾倒し、「原宿(Harajuku)」「かわいい(kawaii)」「ハローキティ(Hello Kitty)」といった私でもなじみがある言葉を使った歌や、日本のポッポカルチャー、女子高生文化などを取り入れたミュージックヴィデオを作成していた。当時、びっくりもしたが、日本のポップカルチャーを好きになるアメリカ人のアーティストという存在には違和感はなかった。その描き方にはかなり違和感があったが。

 最近、ステファニがある雑誌のインタヴューに応じ、その中で、「文化盗用(cultural appropriation)」や「アジア人蔑視のミストレルショー」といった批判を受けていたと述べ、自分は文の交換(trade)を行ったのだと反論していた。
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 ミストレルショーとは白人の俳優が顔を黒く塗ってアフリカ系の人々に成りすまして見下しながら演じるという演劇、ショーであり、これが19世紀のアメリカで流行した。背の低い白人はアジア系に扮して、「ミカド」などと称していたこともあったらしい。

 アジア系アメリカ人女性がステファニの歌唱やメイクについて、「現代のミストレルショーだ」と批判したこともあったらしい。

 このことで思い出されるのは、私が子供の頃に顔を黒く塗って、アメリカのジャズというのか、アメリカ風の歌を歌うグループが存在したことだ。この人たちはアフリカ系アメリカ人を蔑視する意図はなく、尊敬を込めて、「あの人たちのようになりたい」ということで、そのような扮装をしたのだろうと推測される。しかし、途中でそのような扮装を止めたので、抗議があったということだろう。私が子供の頃は抱っこちゃん人形というものもあった。現在に比べて、人種について日本では知識が広がっていなかったということなのだろう。

 文化には常に歴史が付きまとう。そうなると、どうしても反感や違和感が出てくる。どこで折り合いをつけるかだが、政治的な正しさ(political correctness)と野放図の間でうまくバランスを取っていくしかない。

(貼り付けはじめ)

グウェン・ステファニは長年にわたる文化の盗用という批判に対して自己弁護を行う(Gwen Stefani defends herself against longtime cultural appropriation claims

サラ・ポラス筆

2021年5月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/blogs/in-the-know/in-the-know/555784-gwen-stefani-defends-herself-against-longtime-cultural

歌手のグウェン・ステファニは、『ペイパー・マガジン』誌との最新のインタヴューで、彼女はキャリアを通じて日本文化を盗用してきたという批判について語った。

ステファニは彼女の「ハラジュク・ガールズ(Harajuku Girls)」について、「私たちが私たちの様々な文化を買ったり、売ったり、交換したりしなかったら、現在の文化が持つ美しさは得られなかったと思うわ」と述べた。ハラジュク・ガールズは4名の日本人少女によるグループだ。ハラジュク・ガールズは、「ホーラバック・ガール(Hollaback Girl)」のヒットで知られるステファニのツアーに出演し、メディアにも一緒に出ている。

解散したバンド「ノーダウト」のヴォーカルだったステファニは自身のステージ上でのパフォーマンスの中で、ハラジュク・ガールズがどれほど彼女の意識を高めるかについて説明した。彼女のパフォーマンスは日本に大きな影響を受けているとステファニは述べた。

ステファニはペーパー誌に次のように語った。「私は少女たちのグループと一緒にツアーをしたいと考えていました。私はそうしたことをしたことがなかったので。そして少女たちは日本人が良いと思っていました。それがハラジュク・ガールズなんです。なぜならこうした少女たちが私は大好きだから。彼女たちは私の友達なんです。夢が実現するならば、私は原宿に行ってライブをして、歩き回りたいんです」。

2005年、コメディアンのマーガレット・チョウはステファニの考えを批判し、事務・クロウ法時代(Jim Crow era)のアメリカで流行したミンストレル・ショー(minstrel shows)と同じだと述べた。

チョウは自身のウェブサイトでハラジュク・ガールズについて次のように書いた。「そうしたものを私は好きになりたいし、素晴らしいものだと考えたいが、それができるとは思えない。私が言いたいのは、特定の人種に対するステレオタイプは時にかわいいもののように感じられるということだ。ミンストレル・ショーであることを指摘することで人々に嫌な思いをさせたいのではない」。

チョウは続けて、「私は、日本の女子中高生の制服は、顔を黒く塗ることと同じことだと考えている」と書いた。

ステファニは2016年にホワイトハウスでの公式晩餐会でライブを行った。ステファニは日本のスタイルを自身の音楽とファッションに取り入れてきた。音楽オーディション番組「ザ・ヴォイス」の審査員を務めたステファニはペーパー誌に対して、自分の決断について次のように自己弁護した。「私たちはお互いに学んでいます。お互いの文化を共有しています。お互いに高め合っています」。

ステファニは続けて「これらのルールが私たちをどんどん分断しているのが現状です」と述べた。

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