古村治彦です。
2021年5月29日に最新刊『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)を発売しました。最初から孤軍奮闘、自力で皆さんに本の存在を知っていただくしかない状況です。不貞腐れている時間はありません。矢尽き刀折れるまで続ける所存です。
大統領選挙終了後からバイデンの大統領就任式の間、そして、現在までトランプ支持者の中でささやかれているのは、「米軍の出動」「米軍の蹶起」である。簡単に言えば、クーデターである。クーデターのためには、兵士だけでは駄目だし、将官だけでも成功しない。縦(階級)と横(部隊数や人数)の広がりが必要である。そして、クーデターを起こすには、大義名分、自分たちの行動を正当化するための理由付けが最重要だ。
アメリカ軍の内部にどれだけのトランプ支持者がおり、その人々がネットワーク化されて、その階層も上は大将中将から下は二等兵まで幅広くなっているのか、そうしたことは分からない。しかし、「クーデターが必要だ」と考えている人からそれは必要ないとと考える人まで、トランプ支持者が米軍内にいるのは確かだ。軍関係者は共和党支持者が多いと言われている。これまでもこのブログでご紹介してきたが、共和党支持者内のトランプ支持者の割合は高い。そこから敷衍すれば、米軍内のトランプ支持者の数は多いということが推測される。
米軍幹部や民主党は、米軍内のトランプ支持者を追い出そうとしている。そのために調査をするとしている。米軍の軍人や関係者がどのような思想を持とうがそれは自由だ。それを表面に出さないで、上官の命令に従って粛々と責任を果たしていれば何の問題もない。この表面上は問題のない軍人(トランプ支持の考えを持つ)たちが、スリーパーのように思えるのだろう。ひとたび、何か起これば、この人たちが立ち上がるということを恐れているのだろう。
調査の範囲が退役軍人にも広がっているというのは、トランプ支持の集会を企画したり、参加したりしている人たちの多くに退役軍人たちがいることを示している。この人たちは、全く軍務や軍の訓練を経験していない一般の人々とは、組織力、行動力、武器使用能力において雲泥の差がある。この人たちの動きを縛りたいということも軍の意向としてあるのだろう。しかし、軍関係のトランプ支持者の全貌を完全に掌握することは不可能だ。そうなれば、軍の最高幹部や民主党は常にスリーパーの影に怯えねばならないことになる。
(貼り付けはじめ)
退役准将が、軍隊内にいる狂信的なトランプ支持者たちを根絶やしにする必要があると発言(Retired brigadier general says Trump loyalists in military need
rooting out)
ジョフ・コルヴィン筆
2021年1月8日
https://fortune.com/2021/01/08/trump-support-military-capitol-coup-attempt/
連邦議事堂進入事件によって、政権移行に伴って起こると考えられる暴力事件において米軍の将兵の関与があるのではないという疑問が出て来ている。今回の暴動に対してトランプ大統領は現役の将兵を派遣しなかった。州兵はワシントン市長ムリエル・バウザーの要請によって、マイク・ペンス副大統領が命令を出して、それで派遣されたものだ。トランプ大統領は2020年12月の段階で、大統領執務室において、選挙結果を覆すために米軍を使用する可能性について話し合いを持ったと報道されている。この会議に出席したのは、トランプ大統領の初代の国家安全保障問題担当大統領補佐官だったマイケル・フリン退役陸軍中将だった。フリンはテレビ番組に出演し、「トランプ大統領は米軍の能力を利用し、選挙結果が接戦となっている各州に派遣し、選挙をやり直させることができる」と発言した。連邦議事堂進入事件の3日前、存命中の国防長官経験者10名は連名で、『ワシントン・ポスト』紙に論説を発表し、「選挙をめぐる争いを解決するために米軍を関与させること」に反対すると表明した。
これから何が起きるかについて、本誌はトーマス・コルディッツとインタヴューを行う。コルディッツは退役陸軍准将である。コルディッツは陸軍士官学校とイェール大学経営学部で教鞭を執っている。また、ライス大学ドアー記念ニューリーダーズ研究所の運営責任者も務めている。
■トランプと軍部との間の関係についての現在のあなたの考えをお聞かせください。
私が大変懸念しているのは、軍隊の中に強力なトランプ支持が長年にわたり存在してきたということです。軍隊に属する人々が保守的、もしくは極めて保守的になる権利は認められています。しかし、軍隊内のトランプ支持者たちは、1月6日の事件について、本来は米軍が可及的速やかに行うべきものであった壮挙だと考えています。トランプ支持者たちが軍隊から排除されている限りはそのようなことは起きません。ですから、彼らの排除は必要なことなのです。私たちは本の数名の人たちの話をしているのではありません。私たちは国防総省全体に数千名は存在する人たちの話をしているのです。これらの人々の多くは自分たちの主張を隠そうともせずに発信し続けるでしょう。特にSNSで発信するでしょう。これは反乱であり、国家に対する犯罪です。米軍の最高幹部たちには、反乱は素晴らしい、もしくは合法だと考える人間たちや秘かにそうした考えを持つ人間たちをいかなる理由があろうとも、排除しなければならない責務があります。
■議事堂進入事件のような状況に関連する軍の原理とは何ですか?
米軍は、民警団法(Posse Comitatus Act・訳者註:1878年の連邦法で、国内の治安維持に陸軍、空軍、州兵を動員することを禁じたもの)によって統制されています。米軍は、アメリカ市民やアメリカの国土に対峙するような使い方はできないのです。法執行目的のために使用することができないのです。米軍統合参謀本部議長マーク・ミリー大将が、とランプ大統領や周辺が望んだ、米軍の選挙執行活動やその他の活動は不可能だと公式に発表した理由はここにあります。
政権移行に関しては、米軍将兵は誰が大統領になるにしてもその過程に介入しない義務を有しています。米軍の将兵はアメリカ合衆国憲法を支持し、擁護するという宣誓を行っています。アイゼンハワー大統領時代には、米軍の将官が投票を行うことさえ良くないことだと考えられていたほどです。米軍の将官が私的な空間で政治的な発言ができるようになったのはつい最近のことです。将官たちはもちろん投票に行きます。しかし、将官として、政治的に中立であることを保つ責任があり、自分たちの責務を果たす際には政治的中立であることが求められます。その中にはSNSで部下や他の人たちに対して政治的な発言をしないことも含まれます。将官として、自身の好き嫌いを発言することは命令を下すことに等しい行為となるからです。
■陸軍在職中に投票はしましたか?
私はキャリアを通じて投票に参加しました。そのほとんど全てが不在者投票でした。私の部下たちは、私が誰に投票したか、私の政治的な考えはどのようなものかを知ることはなかったと思います。軍務に就いている期間、私たちには個人の信条を表明する自由はありません。そして、私たちのために働いている人たちもそのようなことをしないように求められています。これが軍隊にいる人間がいかにして政治的な動きに近づくかということの内容なのです。
士官たちにはリベラルな考え、保守的な考え、それ以外の考えを持つ自由があります。しかし、現在軍隊の内部にあるのは、カルトに近いものです。反乱にはいくつかの段階があり、それは国内で起きるテロリズムです。連邦議事堂の窓を登っていて銃撃された女性は空軍に12年間在職した退役軍人でした。私は彼女がこのような馬鹿げた行為を行うに至った時間は短いものではない、一夕一朝に形成されたものではないと考えます。ですから、今回の事件は重要なのです。
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連邦議事堂進入事件発生後、数千名の将兵がワシントンDCに派遣されている中、国防総省はアメリカ軍内の過激主義について捜査する(Pentagon probes extremism in U.S. military as thousands of troops
guard D.C. after Capitol riot)
ケヴィン・ブリューインガー、アマンダ・マシアス筆
2021年1月14日
CNBC
https://www.cnbc.com/2021/01/14/pentagon-probing-extremism-in-us-military-after-capitol-riot.html
●主要なポイント
・10名以上の民主党所属の連邦上院議員たちが国防総省に対して、米軍内の白人優越主義(white supremacy)の拡大について調査すべきだと主張した。
・ドナルド・トランプ大統領の支持者たちがアメリカ連邦議事堂に進入する事件を起こした時、数千名の州兵がワシントンを防衛していた。
・エミリー・レイニー陸軍大尉は心理作戦に参加していた。ブラッグ基地の司令部が、レイニー大尉の暴動への関与について調査していることを認めた後、レイニーは陸軍から退職した。
木曜日、国防総省の内部調査部門は、先週のアメリカ連邦議事堂に対する進入事件の後、米軍内の過激主義者たちと白人優越主義者たちを排除するために、当局は十分な対策を行っていないと発表した。
数千名の州兵、そのうちには武装した者たちもいたが、彼らがトランプ大統領の支持者たちによる1月6日の議会進入事件の前に、ワシントンの防衛のために派遣されていた。今回の捜査はこの派遣を受けて、今月になって開始された。
国防総省は将官クラスの間での過激主義を排除するために可能な方策は全て実施していると主張したが、今回の内部調査部門の発表はその後になされたものだ。
司法当局は水曜日のジョー・バイデン大統領の就任式で更なる暴力行為がなされる可能性を認めその対処を準備している。司法当局の幹部たちは、過激主義者たちが全国の各州議事堂を攻撃目標にしていることについて懸念を持っている。また、インターネット上では、人々がトランプ支持の集会を組織しようとしている。
プログラムの観察と評価を担当する、アメリカ軍副監察官キャロライン・ハンツは書簡の中で次のように述べている。「今回の捜査の目的は、「国防総省と米軍部隊が、現役の職員や将兵が白人優越主義、過激主義、犯罪ギャングのイデオロギーや原理に参加したり、主張を展開したりすることを禁止している政策と手続きを、どれほど実行しているのかを見極めるものである」。
ハンツは、監察官局は「監督と評価が進めば、目的を見直し、範囲を拡大する可能性がある。そして、私たちは更なる目的の追加や見直しについて国防総省最高幹部たちからの提案を受け考慮することになるだろう」。
民主、共和両党の連邦議員たちは、連邦議事堂進入事件についての捜査を実施し、司法当局による対応を行うように求めている。
木曜日の午後、コネチカット州選出のリチャード・ブルーメンソール連邦上院議員が率いる10名以上の民主党所属の連邦上院議員たちは、米軍内の白人優越主義の拡大を調査するように求めた。
議員たちが米軍監察官代理シーン・オドネルに宛てた書簡の中で次のように述べられている。「米軍上層部内の白人優越主義と過激なイデオロギーの問題は新しいものではない。しかし、連邦議事堂進入事件は、即座に警戒を強めねばならないということを示している」。
書簡では、進入に参加した、もしくは暴力事件が起きる前に近くで開かれていたトランプ支持の集会に参加した、そのような人々の中に、退役軍人、もしくは現役の軍人たちが多数確認された、と記載されている。
議員たちは次のように書いている。「白人優越主義イデオロギーの拡散は米軍にとって危険であり、アメリカの民主政治体制が必要としている安全な軍と市民社会との関係に亀裂が入っている」。
国防総省の諜報部門責任者ゲイリー・リードは水曜日に次のような文章を発表している。「国防総省に在職する我々は、国防総省から過激主義を排除するためにあらゆる手段を採っている。国防総省は米軍関係者全員に対して、優越主義、過激主義、犯罪に関わるギャングやそれらのイデオロギーに積極的に関与することを厳しく戒めている」。
月曜日、タミー・ダックワース連邦上院議員(イリノイ州選出、民主党)は国防長官代理クリス・ミラーに対して、現役のもしくは退役した軍関係者たちが暴動事件に参加したかどうかを調査するように求めた。
ダックワースは、捜査当局によって軍関係者が特定された場合、ミラーは「これらの人々について、統一軍事裁判法(Uniform Code of Military Justice)に基づいて、責任を果たさせるために適切な行動を取らねばならない」と発言した。
ダックワースは州兵の陸軍中佐で退役したが、現役中はイラクに派遣された経験を持つ。ダックワースは「素晴らしい軍律を守るためには、アメリカ軍内に入り込み、我が国の安全保障を脅かしている過激主義者たちを排除することが必要なのである」と述べた。
アメリカ陸軍の心理作戦に関与していたエミリー・レイニー陸軍大尉は月曜日、ブラッグ基地の司令部が彼女の暴動への関与について調査していることを認めた後の月曜日、辞表を提出した。
火曜日に出された声明の中で、陸軍は、FBIと協力して、先週の暴動の参加者の中に陸軍と何らかの関係を持つ人間がいるかどうかを特定するとしている。
陸軍報道官はEメールでの声明の中で、「暴力、市民的不服従、平和への反抗といった活動は、統一軍事裁判法、もしくは州法、連邦法によって罰せられることになるだろう」と書いている。
ワシントンに2万人規模の州兵が派遣されている中、国防総省監察部による調査が行われるということが明らかにされた。この数は現在、イラク、シリア、アフガニスタンに派遣されている米軍将兵の合計数よりも多くなっている。
派遣された軍隊の一部は連邦議事堂警備部とバイデンの就任式を支援する目的を持っている。これらの将兵は武装している。
安全保障上の理由から、州兵部隊と国防総省の幹部たちはどの程度の数の将兵が武装するかどうか、大統領就任式の後に将兵が武装するかどうかを明らかにしていない。
国防総省のある幹部は火曜日、記者団に対して、ワシントンの各行事を支援するために派遣されている州兵の更なる背景調査を行う予定だと発言した。
軍隊が連邦議事堂に多数派遣されている中、ホワイトハウスはトランプ大統領からの声明を発表した。その内容は一期目で終わる大統領の任期期間中に海外に派遣されている米軍章への数を削減するというものだった。
トランプは2016年の大統領選挙で「中東における馬鹿げた終わりのない戦争を止める」と訴えていた。トランプは声明の中で「アメリカ軍はアフガニスタンに19年間も駐屯している」と述べた。
トランプは更に「同様に、イラクとシリアにおける危険度はこれまでで最低となっている。私は終わりのない戦いを終えるためにこれからも努力を続けていく」と述べた。
トランプは加えて、「我が国の軍隊を再建し、軍務に就いている勇敢な男性と女性を支援することは私の無上の光栄だ」と述べた。
ホワイトハウスから米軍の撤退のプレスリリースが出された後すぐにトランプ大統領の声明が出された。トランプ大統領は声明と同じくらいの長さのメッセージを頻繁にツイッターに投稿してきた。トランプ大統領は暴動に対する最初の反応に続き、声明という形で自身の主張を発表している。
連邦議事堂を人々が包囲する直前にホワイトハウスの外で開かれていた集会で、トランプ大統領は、大統領選挙は「盗まれた」と謝った主張を展開していた。連邦下院において民主党と共和党の一部が投票して、トランプ大統領が反乱を使嗾したとして、弾劾を可決した後、トランプ大統領はヴィデオメッセージで暴動参加者たちを非難した。
トランプは水曜日夜に発表したヴィデオメッセージにおいて、「私の真の支持者の中に、政治に関連する暴力を支持する人など一人もいない」と述べた。トランプ支持者たちがトランプ支持の集会からやがて連邦議事堂に移動し、暴動に参加したことについて、自分の発言は適切だったとトランプ派主張している。
民主党側はトランプの有罪に向けて動いており、連邦上院における選挙で大統領の座から引きずり降ろしたいとしている。連邦上院多数党(共和党)院内総務(Senate Majority Leader)のミッチ・マコーネル連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)は、弾劾裁判はトランプがホワイトハウスを去る前までに結審することは不可能だと述べた。これが意味するところは、裁判はバイデン政権成立直後までかかる、ということである。
(貼り付け終わり)
(終わり)
アメリカ政治の秘密
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側