古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。よろしくお願いします。




アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12


 

 昨日、2014年4月27日に鹿児島第二区の補欠選挙の投開票が行われました。投票率は45.99%で、前回(2012年)に比べて14.56%も減りました。以下のウェブサイトをご参照ください。

http://www.pref.kagoshima.jp/ka01/kensei/senkyo/senkyokekka/20140427/documents/38831_20140427213107-1.pdf

 

 選挙の結果は次の通りになりました。私が予想した通り、金子氏対打越氏が10対7となりました。金子氏対それ以外の候補者の票の比率は10対9となりました。私は、今回の補選の結果は、「自民党が鉄板の第二区で、ここまで接戦となってしまったのは金子氏の苦戦、打越氏の善戦、自民党に信認を与えたものではない」と結論付けます。投票結果については以下のウェブサイトをご参照ください。

http://www.mbc.co.jp/2014hosen/

 

①金子万寿夫(自民党)66,360

②打越明司(無所属) 46,021 

③有川美子(新党ひとりひとり) 5,858  

④三島照(共産党) 5,507 

⑤松澤力(幸福実現党) 1,823   

⑥碩利昭(無所属) 1,152   

 

 打越氏は薩摩半島で金子氏に勝利しました。鹿児島市南部、指宿市、南九州市の一部で金子氏に勝利しました。これは大変に重要なことです。一方、金子氏は出身地の奄美で大勝利を収めました。打越氏は薩摩半島で3万5492票、奄美地区で1万699票、金子氏は薩摩半島で2万5339票、奄美地区で3万1021票という内訳になります。

 

●鹿児島市

打越明司 20,561―金子万寿夫 17,211

 

●指宿市 開票終了

打越明司 11,599―金子万寿夫 6,084

 

●南九州市

打越明司 3,342― 金子万寿夫 2,044

 

●奄美地区

打越明司 10,699― 金子万寿夫 31,021

 

薩摩半島で投票した人は6万9404名、奄美地区で投票した人は5万8527名となります。奄美地区の投票率の高さは奄美の存在感の源泉となっています。奄美は選挙結果で自民党に奉仕することで、補助金などを得るということで、このブログでも書きましたが、「選挙は生活」なのです。大島郡(奄美市以外)の投票率は10%以上下がっても約66%、奄美市は50%台です。一方、人口で言えば圧倒的なはず(1.5倍ほどの差)の薩摩半島地区は投票率が元々低く、今回の補選の鹿児島市地区は32.79%です。有権者の3人に2人強も投票に行っていないということになります。

 

 鹿児島二区は、都市部の鹿児島市南部、温泉で有名な観光地・指宿、お茶や畜産が盛んな南九州市、本土とは文化(沖縄に近い、琉球弧と言います)や経済構造が違う奄美地区で構成されているので、大変複雑です。しかし、奄美地区の存在感が大きいために、薩摩半島の方には不満があることが投票結果から推測されます。鹿児島二区の構成については考え直す必要があると考えます。

 

 投票結果に見てみると、新党ひとりひとりの有川氏が、共産党の三島氏を上回ったことが大きいと思います。有川氏は鹿児島南部で三島氏に差をつけました。三島氏は出身地の奄美で有川氏を上回りました。有川氏が3位に入ったことは、鹿児島二区での戦い方を示唆していると思います。それは、奄美でついた差を大票田である鹿児島市で詰める、もしくは逆転するというものです。

 

 今回の選挙結果について、自民党の機関紙である産経新聞は、自民党に対する信任、安倍首相に追い風といった評価を下しているようですが、私はそう思いません。この鹿児島二区は地方政治まで含めて、自民党鉄板、野党不毛の選挙区です。そこで圧勝できなかったということはそれだけで、逆風であり、「敗北」であったと言えると思います。

 

(終わり)





 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12

 

 古村治彦です。

 

 2014年4月23日、アメリカのオバマ大統領が来日しました。ビル・クリントン元大統領以来の国賓待遇での来日ということになりました。オバマ大統領は日本、韓国、マレーシア、フィリピンの4か国歴訪アジアツアーを行う予定です。昨晩は、東京にあるミシュランの三つ星を獲得した超高級寿司屋の「すきやばし次郎」本店で非公式の、安倍晋三首相とオバマ大統領、キャロライン・ケネディ駐日米大使、佐々江賢一郎駐米日本大使が夕食会を開きました。

 

 オバマ大統領は来日にあたり、日本の読売新聞のインタビューに書面で答える形で、尖閣問題などについて、発言しています。その内容な日本だけでなく、欧米でも注目されて、メディアは記事にしています。フィナンシャル・タイムズ紙(Financial Times)もその一つです。

 

 フィナンシャル・タイムズ紙の記事の中で紹介された、オバマ大統領の発言や米政府の意向についてポイントフォームで紹介します。記事の中には次の6つのポイントが紹介されています。

 

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①東シナ海にあり、日中間で争っている尖閣諸島は日米安全保障条約によってカヴァーされている。

 

②オバマ大統領はアメリカの大統領で初めて、尖閣諸島は日米の防衛同盟の一部に含まれることを認めた。

 

③オバマ大統領は読売ン新聞に対して書面で次のように回答した。「アメリカの政策は明確だ。尖閣諸島は日本によって行政が行われている。従って、日米安全保障条約第5条の適用範囲内にある。私たちは、尖閣諸島における日本の行政を行う、一方的な試みには反対する」

 

④アメリカはここ数年で政治的に激しい闘争の対象となっている尖閣諸島の主権を巡る争いでは中立である。しかし、尖閣諸島を行政的にコントロールしているのは日本であると認めている。オバマ大統領の前に複数のアメリカ政府高官が尖閣諸島は日米安全保障条約に含まれると発言している。

 

⑤オバマ大統領は、「争いは、威嚇と強制ではなく、対話と外交によって解決される必要がある」と発言した。

 

⑥また、オバマ大統領は、「日本が国際的な安全保障の維持においてより大きな役割を果たしたいという希望を持っていることを熱烈に歓迎するものだ」とも発言している。

 

⑦最後にオバマ大統領は次のように発言している。「私は、日本の安倍晋三首相が日本の国防力を強化し、私たちアメリカとの間で軍事面における協力関係を深化させようと努力していることを賞賛する。その努力には、集団的自衛(collective self-defense)の行使に関する既存の制限を見直そうとしている試みも含まれる」

 

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 オバマ大統領がアメリカの大統領で初めて、「尖閣諸島が日米安保条約第5条の対象になる」と明言しました。この種の発言はヒラリー・クリントン前国務長官もしていたので、いまさらといった感は否めませんが、日本の一部には「勝利」と捉え評価する動きがあるようです。日米安全保障条約第5条の条文は以下の通りです。

 

「第五条 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

  前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。」

 

 日本が行政的に管理している尖閣諸島は日米安全保障条約の対象に含まれるというのは、考えてみれば当たり前の話です。日本の保守派は、この名言を中国に対してのヘッジとして使おうとしていると思われます。「尖閣に軍隊を送ったら、自衛隊だけでなく、米軍も出てくるんだぞ」ということだと思います。しかし、アメリカ軍は本当に出てくるのかどうか、たかだかいくつかの無人島を守るために危険を冒すだろうかという疑問は残ります。それは、クリミア半島をめぐるウクライナとロシアの争いとロシアの併合の事態の推移を見ていると、果たしてどうなのだろうかという思いに駆られます。

 

 更に、「主権に関する争いにはアメリカは関与しないので、日中で話し合いで解決して欲しい、軍事力での解決は望まない」というのは、一番の無理難題です。主権争いに関してアメリカは関与しないということになると、中国は、「尖閣諸島の主権は中国にある」ということを証明するために、沿岸警備隊のパトロールを増やすことになるでしょう。そうなれば、偶発的な事件や事故が起きて、物理的な衝突が起きるということも考えられます。

 

 オバマ大統領の発言があったからと言って、尖閣問題がすぐに解決することはなく、それどころか、かえって日中間の衝突の危険性が高まったのではないかとすら思えてしまいます。

 

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

Financial Times April 23, 2014 11:14 pm

 

Barack Obama says disputed islands covered by Japan pact

 

By Geoff Dyer in Washington

 

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/cf6f8304-cb2e-11e3-ba9d-00144feabdc0.html?siteedition=intl#axzz2zkzvOKF9

 

President Barack Obama and Japanese Prime Minister Shinzo Abe depart Sukiyabashi Jiro sushi restaurant in Tokyo, Wednesday, April 23, 2014. Opening a four-country swing through the Asia-Pacific region, Obama is aiming to promote the U.S. as a committed economic, military and political partner, but the West's dispute with Russia over Ukraine threatens to cast a shadow over the president's sales mission.

 

President Barack Obama has said the islands in the East China Sea disputed by Tokyo and Beijing are covered by the US-Japan defence treaty as he sought to use the first day of a trip to Asia to reassure anxious allies in the region.

 

In an interview with a Japanese newspaper, Mr Obama became the first sitting US president to acknowledge that his country considered the islands – which Japan calls the Senkaku and China the Diaoyu – to be part of the defence alliance between Washington and Tokyo.

 

His comments were clearly designed to show support for Japan, Washington’s most important ally in the region, but immediately prompted an angry response from China which says the US is trying to encircle it.

 

The policy of the United States is clear – the Senkaku islands are administered by Japan and therefore fall within the scope of Article 5 of the US-Japan Treaty of Mutual Co-operation and Security,” Mr Obama said in written responses to the Yomiuri Shimbun newspaper. “And we oppose any unilateral attempts to undermine Japan’s administration of these islands.”

 

Mr Obama is spending a week in the region, visiting Japan, South Korea, Malaysia and the Philippines. His trip comes at a time of considerable uncertainty in the region about US staying power, which has been prompted by the president’s public reverse over military action in Syria, defence budget cuts and political gridlock that caused Mr Obama to cancel an Asian trip last year.

 

The US says it is neutral in the sovereignty dispute over the islands, which have become the subject of an increasingly tense political battle in recent years, but recognises that Japan has administrative control. Mr Obama’s comments come after several senior officials said the islands were covered by the treaty.

 

Referring to China, which has used coastguard ships and aircraft to reinforce its sovereignty claims, Mr Obama said: “Disputes need to be resolved through dialogue and diplomacy – not intimidation and coercion.”

 

The comments generated strong criticism in China. A commentary by the official Xinhua news agency said changes to the US-Japan alliance were part of “a carefully calculated scheme to cage the rapidly developing Asian giant”.

 

Qin Gang, a spokesman for the Chinese foreign ministry, said the US-Japan alliance was an agreement forged during the cold war, and China was “firmly opposed to putting the islands” under the treaty.

 

Mr Obama also used the interview to give a carefully worded endorsement of the Japanese government’s plans to modernise its military and to loosen some of the political and constitutional limits on its operations.

 

We have enthusiastically welcomed Japan’s desire to play a greater role in upholding international security,” he said.

 

I commend [Japanese] Prime Minister [Shinzo] Abe for his efforts to strengthen Japan’s defence forces and to deepen the co-ordination between our militaries, including by reviewing existing limits on the exercise of collective self-defence.”

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)






 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



「習近平は団派のようなライバル派閥の人々をわきに追いやることに成功しているのか?」という疑問よりも、もっと重要な疑問は、「習近平が権力を拡大し、絶大な力を持つことは彼自身にとって良いことなのか?」という疑問である。中央全面深化改革領導小組を例に採れば、この機関は共産中国史上最大の高度な意思決定機関だと言える。この機関には4名の中国共産党中央政治局常務委員が参加し、主席と副主席を務めている。それ以外に、10名の中央政治局委員が参加している。中央全面深化改革領導小組は良く練られた構成となっている。これによって、習近平は、経済、行政、社会、文化の各方面の諸改革の将来に向けた道筋を直接監督することができるのである。(Finance.Sina.com[北京]、2014年1月24日;BBC中国語放送、2013年12月30日;ドイチェ・ヴェレ中国語放送、2013年12月30日)また、習近平は意思決定において明確な上意下達の命令系統を、中央全面深化改革領導小組を通じて持つことになるだろうと予測されている。第18期中国共産党中央委員会三中全会において示された文書には、諸改革の秩序だった実行について次のように書かれている。「私たちは、状況全体に責任を持ち、様々な部門を調和させるという党の中核的な機能を発達させねばならない」。習近平は中国共産党の最高機関が改革の様々な側面に責任を持つようにすると決意した。しかし、習近平の決意は、李克強が強調した、経済における官僚の介入の度合いの削減と「市場と社会の創造的な力の促進」を妨げるもののように考えられる。( China News Service、2013年11月17日;Caijing.com[北京]、2013年7月13日)

 

 ここで出てくる疑問は、習近平とつながりがある人々の質と能力はどうなのか、というものだ。習近平は自分の派閥に人を集め結束させることに腐心しているようである。従って、側近たちを昇進させる際に、職業上の能力よりも個人的な忠誠心を重視しているように見える。例えば、昨年陳希が中国共産党中央組織部のナンバー2に任命されたことについて考えてみる。陳希は才能あふれる工学の専門家であり、1990年代前半にはスタンフォード大学の客員研究員をしたこともある、陳希はキャリアの大半を清華大学で過ごした。2000年代の7年間は清華大学党委員会書記を務めた。また国務院教育部と中華科学技術協会に勤務していた経験もある。しかし、陳希は人事と組織に関する経験に欠けている。更に興味深いのは、陳希は沈躍躍(Shen Yueyue、1957年~)と交代して組織部副部長に就任したという事実だ。56歳の沈躍躍は陳希よりも若いだけでなく、人事や人材管理についてより知識を持っているのだ。沈躍躍は胡錦濤前国家主席の派閥に属しており、1998年から2002年にかけて浙江省と安徽省で組織部の幹部を経験している。そして、2003年から2013年まで中国共産党中央組織部副部長を務めたのだ。陳希の昇進は、習近平が大学の同級生に対して、人事の専門家であり、誰を政府内に入れるかの門番役である趙楽際の手助けをして欲しいと望んだ結果だと結論付けるのは難しいことではない。習近平派の利益にそぐわないと思われる人物は中央組織部の推薦を受けられずに昇進が難しくなるということになるのだ。(Radio Free Asia、2013年4月30日;大公報、2013年4月18日)江沢民と胡錦濤の組織哲学と同じく、習近平は 彼の最も信頼する人物を中国共産党中央組織部や中国共産党中央宣伝部のような「重要な機関」に配している。江沢民の時は曽慶紅、胡錦濤の時は李源潮が中国共産党中央組織部長となった。彼ら2人は上司である江沢民と胡錦濤にとって掛け替えのない助言者であった。

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沈躍躍

 

 2013年11月の第18期中国共産党中央委員会三中全会で採択された文書の重要性を説明しつつ、習近平は「改革を包括的に深化させることはシステム工学的に言えば、複雑なことである」と指摘している。彼は次のようにも発言している。「必要なことは、トップがデザインをし、包括的に計画を立て計算することだ」。国営の中国新聞は更に次の世に書いている。「習近平の中央全面深化改革領導小組の主席就任は、この機関が充分な権威を持ち、決定がスムーズにかつ有効に行われるということを担保している。習近平はこのような方法で既得権益からの抵抗と妨害を排除しようとしているのだ」。(中国新聞、2013年12月31日;New Beijing Post、2013年11月14日習近平の正統性を更に強化し、人気を高めるために、習近平と彼の側近たちは、「国家主席は改革の速度を加速させるために権力を掌握しつつある」ということを示していかねばならない。彼らといえども毛沢東流の権力の事故強化スタイルから逃れることはできないのだ。

 

(終わり)



 

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