古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。よろしくお願いします。

 古村治彦です。

 

 今回は少し遅くなりましたが、日米首脳会談の直前に発表された論稿をご紹介します。

 

ドナルド・トランプ大統領の選挙中の様々な発言、「在日米軍の撤退」「日本の核兵器保有を容認」、といったことで、日本側が、日米関係、日米同盟に関して疑心暗鬼になっている(いた)ことは知られていました。そこで、日本の年金資金と新幹線をアメリカに差し出すことで、トランプ政権の歓心を買おうという決定を行いました。

 

 そして、首脳会談を迎え、トランプの上機嫌な行動に、安倍晋三首相も安心したのか、しまりのないニヤケ顔に終始していました。それはそうでしょう。首脳会談は、国益がぶつかり合う場所であり、厳しい交渉の場所です。掴み合い寸前ということだってあるでしょう。日ソ国交回復交渉の過程で、漁業交渉のためにモスクワのクレムリン宮殿に乗り込んだ河野一郎農水相はブルーガーニンと怒鳴り合いの交渉をしましたが、交渉は成立し、日ソ交渉は進展しました。それなのに、最初から相手が望むものをそのまま持っていて差し出すというガキの使いに対して、「やぁやぁよく来た」と笑顔で対応するのは当然です。子供の頃に近所にお使いに行くと、お店のおかみさんから雨やらジュースやらをもらった経験は多くの皆さんは持っておられるでしょう。安倍首相は対等な交渉相手ではなく、子供のお使いとしか扱われませんでした。

 

 ここまでしたのですが、読売新聞によると、アメリカ政府の高官は日本側に対して、「次はこんなに甘くはないからな」と捨て台詞を吐いたということです。年内のトランプ訪日も決まりましたが、ここではどんなお土産をお持たせしてお帰り願わねばならないのか、恐ろしいほどです。

 

 日米同盟、日米安保条約は、米軍の日本駐留が主目的であって、日本防衛は二の次です。しかし、そうした本質を隠し、「アメリカ軍が日本を守って下さるのだからありがたい、だから様々な嫌なことは甘受しなくてはいけない(しかし、東京の自分たちには見えないようにして地方に押し付けて、金をくれてやればよい)」ということでここ数十年、やってきました。しかし、トランプ政権出現で、これまでの日米同盟が変質してしまうと慌てているのは、日本側です。ここ数十年、金さえ払い続けたら(自分のカネではなく税金)、楽しい良い思いをしていた、自分たちの生活の基盤が脅かされるという感覚に捉われているようです。

 

最近読んだ記事の中でなるほどと思わされたタイトルが、「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」とは、「アメリカの覇権を再び偉大に(Make American Hegemony Great Again)」ではない、というものでした。アメリカが世界の警察官であることを止めるとは、アメリカ軍を世界各地から撤退させるということです。このアメリカの覇権に寄りかかって生きてきた日本側のエスタブリッシュメント(支配者層)は、アメリカの覇権の衰退に慌てていると言えます。

 

 そして、アメリカの経済が持ち直して、アメリカが自身を回復したら、再び覇権主義的な動きを取り戻すのかもしれないということなのか、日本から積極的に投資をして、アメリカの景気を上向かせ、雇用を増大させようということで、年金資金と新幹線を差し出すことになりました。しかし、アメリカ側はそれは当然の貢物として受け取るだけで、日本に何も見返りを与えませんでした。日米安保に関して、これまでと同じ内容を繰り返すだけでした。

 

 アメリカの世界における立ち位置が変化する中で、日本もまた変化していかねばなりませんが、その発想が現在の日本側のエスタブリッシュメントにはないようです。そして、たとえ変化しなくては、という思いはあっても考えつくのは、新発想でもなんでもなくて、昔ながらの従属か、それではなければ自大です。

 

 私は今回の日米首脳会談を見ながら次の言葉を思い出していました。

 

 「狡兎死して走狗烹らる」(必要なときは重用されるが必要なくなればあっさり排除される)

 

 アメリカの立場が変われば、日本はどうなるか分かりません。ですから、弱い立場にある以上、変化を敏感に感じ取って、先回りで変化するくらいでなければ、生き残ることはできません。しかし、その危機を察知するための生存本能に基づいた機能が致命的に欠如してしまっているようです。


 私もまた日本国民として、煮られてしまうのでしょう。私は自民党の候補に投票したことは人生で一度としてありませんでしたが、それでも、日本国民としてこの運命を享受しなければと思っています。ちょっと大きく書き過ぎましたが。

 

(貼りつけはじめ)

 

日米同盟はトランプ大統領の下で生き残れるのか?(Can the U.S.-Japan Alliance Survive Trump?

 

ローラ・ローゼンバーガー筆

2017年2月9日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2017/02/09/can-the-u-s-japan-alliance-survive-trump/

 

懸念、不安、混乱、困惑。先週、これらは、私が東京で日本政府関係者と専門家たちと会って言われた言葉だ。彼らはトランプ政権の外交政策に対する姿勢とそれが日本にとってどのような影響を及ぼすかを理解しようと努めていた。

 

彼らはドナルド・トランプ大統領の選挙期間中、もしくは過去30日間の発言内容について懸念を持っている。トランプはアメリカと各国の同盟関係と日本を批判した。日本政府関係者と専門家たちは、トランプが同盟の価値を理解できるかどうか、疑問を持っている。

 

日本政府関係者と専門家たちは、トランプの取引を基礎とする姿勢に懸念を持ち、トランプが経済と貿易の問題を安全保障を結びつけるだろうという恐怖心を持っている。同盟関係を人質にし、アメリカが日本の安全保障に参加するかどうかをはっきりさせないのではないかと考えている。

 

日本政府関係者と専門家たちは、トランプの「アメリカ・ファースト!」が何を意味するのか、特にアジア・太平洋地域におけるアメリカの関与にとってどういう意味を持ち、影響を与えるのか、アメリカの指導力と存在がこれからも継続するのかどうか、について憂慮している。

 

日本政府関係者と専門家たちは、アメリカは、世界の安全保障、繁栄、安定を長年支えてきた国際秩序と海洋法に対する関与を止めてしまうのではないかと心配している。現在、安倍首相は既存の国際秩序と海洋法の維持のために大きな投資をしているが、これは中国の台頭に備えるためでもあるのだ。

 

日本は、アメリカの撤退後に残された空白を埋めるために中国が進出してくることを懸念している。中国の習近平国家主席は世界経済フォーラムで行った演説で、中国をグローバライゼーションが進んだ世界における指導者だと形容した。

 

アメリカの核の傘によって提供されている日本も覆われている抑止力や共通の敵に対する抑止力を含む、日米両国の協力と信頼についての明確な理解に基づいて日米同盟は存在している。しかし、トランプ政権がこうした理解を持っていないために予測不可能な動きをするのではないかと日本側は懸念を持っている。トランプのツイッターでの発言に困惑している。

 

彼らは、トランプ政権の内部で誰が力と影響力を持っているのか、誰の発言が重要なのかということを知りたがっている。

 

日本で話をした人々に対して、安心させる言葉や説明をするための言葉を私は持ち合わせなかった。彼らはトランプの型破りな外交姿勢に困惑していた。トランプは、政権の目的や戦略を明確にする前に「一つの中国」政策を放棄するという脅しをかけたし、オーストラリアのターンブル首相との間で不必要ないさかいを起こしたりした。

 

しかし、日本にとっての唯一の選択肢は、日米同盟を機能させようとすることだ。アメリカとの同盟は、日本が大きな脅威だと考えている、攻撃的な、台頭しつつある中国に対する防波堤となる。他方、日本にとっての最大の脅威は、アメリカが日本を見捨てて中国と交渉をしてしまうことだ。トランプの対中姿勢はいまだに明確になっていない。また、日本政府関係者の多くは、トランプが台湾を交渉材料にするという考えを気軽に実行するかもしれないと憂慮している。しかし、トランプが経済問題について強硬な姿勢を取り、タカ派的である点は、日本政府を安心させ、「中国の攻勢に対して、日米同盟に基づいてアメリカがそれを押しとどめる役割を果たしてくれるかもしれない」という希望を持たせている。

 

現在のところ、日本政府は疑いつつの楽観主義を採っている。彼らは、安倍晋三首相がトランプとの間で個人的な信頼関係を形成し、トランプが長年持ってきた日本に対するマイナスの考えを払拭することができるに違いないと考えている。そして、トランプに対して、事実と数字を使って日米同盟の重要性を説明すれば、トランプを納得させられるという希望を持っている。

 

ジェイムズ・マティス国防長官が2月の第一週の週末に日本を訪問した。日本政府は、アメリカが引き続き日米安全保障条約に基づいて日本の防衛に関与してくれることを確認し安堵した。アメリカの関与には、日本が施政権を持ち、中国が領有権を主張している(Japanese-administered, Chinese-claimed)尖閣諸島への日米安保条約の適用や地域に対するアメリカの関与を維持するといったことが含まれる。しかし、これは最低限のラインに過ぎない。マティスの訪問と発言は重要な出来事であったが、多くの日本人はマティスはトランプの考えを述べたものなのか、疑問に思っており、金曜日からの日米首脳会談がより重要さを増している。

 

日本政府は、その重要性が分かっているために、会談に備えて、トランプについて、個人的な面や世界観を含むあらゆる角度から徹底的に研究をしている。彼らは現実的な思考をしており、TPPが既にお流れになっていること、そして、その代わりにトランプの掲げる政策、特にインフラ整備を支えることにある二国間の経済協力に関する提案を行わねばならないことを理解している。日本側は、トランプが日本に更なる防衛面での負担増加を強く求めてくることに対して準備をしている。また、新しい武器システムに関する協力の提案も受け入れる準備をしている。一方で、トランプに対して、日本の貢献と日本の貢献によってアメリカが享受している利益に関する様々な事実を示して理解を促そうとしている。また、彼らは安倍首相がトランプとの個人的な関係を構築するための計画を練っている。その中には、ゴルフも含まれている。

 

しかし、私は彼らの試みに関してその効果を疑問視している。事実や数字でトランプ政権を説得できるか疑問だ。こうした事実を重要視しないかもしれないし、日米同盟について、お金の問題にとどまらず、同盟そのものについての疑問を持ち出すことも考えられる。そして、アメリカが各国との同盟関係から利益を得ているのかという根本的な疑問を持ち出すこともあり得る。そして、首脳同士の個人的な関係があったとしても、同盟諸国を安心させ、敵を抑止するために必要な予測性と明確性を欠いているトランプ政権の同盟に対する取扱いには危険が存在する。

 

こうした逆風の中、日本側が出す最初の一手は効果を発揮する可能性が高い。安倍首相はトランプと個人的な信頼関係を構築することができるかもしれない。ホワイトハウスは、対中政策の達成のためには、強力な日米同盟の存在が必要不可欠であること、日本が大きな貢献をしている日米同盟からアメリカが利益を得ていることに気付く可能性が高い。このように認識することができれば、それはアメリカにとって素晴らしい事となるだろう。

 

しかし、日本政府側では、特定にアメリカの政策や関与についてだけでなく、あらゆる面から疑問を持っている。日本側は、日米関係の性質そのものに疑念を持ち、現在のような日米関係が永続するのかどうかを不安に思っている。アメリカはこれまでの70年間と同じ形の指導者としてこれからも君臨するのだろうか?アメリカは安定のための勢力、海洋法の守護者、友人にとっては頼りになり、敵にとっては恐怖となる、頼りになり行動を予測できる同盟国であり続けるだろうか?2015年、安倍首相はアメリカ連邦議会上下両院合同会議で演説をし、その中で、日米同盟を「希望の同盟」と呼び、日米が「しっかりと手を携えて世界をよりよく、より暮らしやすくするために努力する」と述べた。安倍首相は、同盟について、「常に私たちが共有する法の支配や人権と自由の尊重という価値観を重視する」ものだとも述べた。こうした同盟感をアメリカも持っているのだろうか?

 

日米同盟の根幹となる考え方などは何とか存続するように思われるが、トランプの外交政策のために、日米同盟に関するより広範な戦略的考え方は動揺しているように見える。トランプはアメリカのアジアからの撤退、国際秩序の軽視、国際環境を整えているルールを基盤としたアプローチに対する低評価を掲げている。しかし、より狭い定義を基礎とする同盟関係は、トランプの外交政策が引き起こす混乱によって傷つけられるのだろうか? それとも、アメリカがアジア地域で直面している様々な挑戦についてそれらを明確にすることだけで十分なのだろうか?

 

アメリカは、日本がアジア地域においてより大きな役割を果たすように促すために、大きな投資を行ってきている。しかし、日本のアジアにおける役割とはあくまでアメリカとの関係を基礎としているものであり、それに依存している。アメリカは、北朝鮮の核兵器とミサイル開発プログラムに対峙するために、日本と韓国、それぞれとの強固な関係を必要としている。 韓国内の政治の激動に直面して米韓同盟もまた動揺している面もある。アメリカは、中国に国際ルールを守らせるために、地域的な枠組みや機構を必要としている。そして、南シナ海と東シナ海における中国の攻勢をチェックするためにより同盟関係やパートナー関係を強化しなければならない。そして、アメリカはアジア地域の大国との同盟関係との関係を強化し、中国の攻勢に対して武力で対抗できるようにする必要がある。アメリカが退場した場合、これらの国々の対中姿勢はどの様なものとなるだろうか?

 

日本政府関係者がこれらの大きな疑問について答えを持っているのかどうか明確ではないし、トランプとの関係を築くことに失敗した場合の次の計画を持っているかどうかも不明だ。アメリカが退場した後に出来る空白を埋め、アジア地域における指導的な役割を果たす準備をしているとも思えない。また、中国と韓国との関係をどのようするのかと伊考えもはっきりしていない。

 

金曜日のトランプ・安倍会談には多くの注目の目が注がれることになるだろうが、私たちは、トランプのこれまでにはない外交政策によって日米同盟は影響を受けることないということが見えた場合でも、今回の首脳会談を「成功」と結論付けることは控えるべきだろう。日米同盟にとっての本当の試練はまだ姿を見せていないのだから。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)













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 古村治彦です。

 

 今回は、2017年2月16日に発売となる『天皇とは北極星のことである』(斎川眞・副島隆彦著、PHP研究所、2017年)をご紹介します。


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天皇とは北極星のことである


 この本は、『天皇がわかれば日本がわかる』(斎川眞著、ちくま新書、1999年)に新たな内容を加えた内容になっています。著者の斎川眞先生は副島隆彦先生と早稲田大学法学部の先輩・後輩として古くからのお付き合いのある方で、副島先生とお酒を飲みながらの、談論風発の中で、この本の構想は出来上がっていたということです。

 

 斎川眞先生は日本法制史という、日本の法や政府形態の歴史の研究者です。

 

 今上天皇が生前退位(譲位、abdication)の希望を表明したというニュースを受けて、私たちは、私たちが生きる現代と天皇という地位や職責について考えなくてはならなくなりました。そうした中で、「天皇とは何か」「そもそも日本とは何か」ということを考えねばならなくなりました。

 

 この本は、天皇について、私たちが知るべき知識を数多く与えてくれ、私たちが考えるにあたっての材料を与えてくれます。

 

 以下に目次と副島先生によるあとがきを掲載します。

 

『天皇とは北極星のことである』、ぜひお読みください。

 

(貼りつけはじめ)

 

天皇とは北極星のことである 目次

 

 

序文││副島隆彦  1

 

日本の建国  5

 

天皇号の秘密  15

 

第一部 ● 天皇という称号

 

第一章  「天皇」とは、「北極星」のことである  32

 

「天皇」という言葉の意味  32

 

第二章 「王、皇帝」の称号は、臣下が献上したものである  38

 

君主の称号  38

 

新羅の君主号 48

 

第三章 日本の天皇号はいつから使われたか、『日本書紀』には書いていない  54

  

日本の天皇号  54

 

天皇号の献上は史料にない  57

 

『日本書紀』が主張するものは何か  60

 

「天皇」号は、いつ使われ始めたか  62

 

「天皇」とは北極星のことである  66

 

「天皇」号は、六世紀終わりから七世紀初めにかけて献上された  68

 

第四章  天皇について「歴史学」として確実に言えること  88

 

倭の五王 88

 

第五章 天皇の地位を保証する「天壌無窮の神勅」  101

 

天皇統治の正当性  101

 

天壤無窮の神勅  103

 

第六章 天皇にはなぜ「姓」がないのか  111

 

なぜ天皇には姓がないのか  111

 

第二部 ● 中国と日本

 

第一章 冊封体制」とは何か  122

 

皇帝が統治する国が帝国である  122

 

「冊封体制」という言葉は昭和三十七年に生まれた  124

 

冊封体制というシステムについて  126

 

なぜ冊封体制というシステムが存在するのか 130

 

第二章 冊封体制とは、中華帝国の世界秩序のことである  140

 

中華帝国は東アジアの宗主国である  140 

 

中華帝国の政治の論理  143

 

第三章 天命思想とは、王朝交替の思想である  155

 

王朝交替の思想  155

 

第四章 日本は、中華帝国に朝貢して、世界史に登場した  159

 

世界史への登場  159

 

倭の女王卑弥呼は外臣である  165

 

第五章 遣隋使・遣唐使は、中華帝国の官職・爵号はいらないと伝えた  171

 

冊封秩序からの離脱  171

 

第六章 日本という国名は、律令体制に伴ってあらわれる  184

「日本」の国名はいつから使われたのか  184

 

「日本」の国名は方位によってつけられた  185

 

第三部 ● 「中華帝国」のようになりたくて律令を作った

 

第一章 日本は、中華帝国のような国家になりたかった  192

 

設計図と技術者  192

 

先進国の法制度の導入――法の継受  194

 

第二章 遣隋使や遣唐使の本当の目的  204

 

律令の法典編纂  204

 

第三章 なぜ律令体制を作りたかったか  212

 

「天皇」は日本の王  212

 

第四章 律令国家は、行政指導・官僚統制型の国家である  224

 

行政指導・官僚統制型国家  224

 

第五章 結論 そして、国家の枠だけが残った  231

 

名分論は天皇と律令体制に行き着く  231

 

江戸時代まで存続する官位と称号  236

 

おわりに――斎川眞  243

 

あとがき――副島隆彦  255 

 

=====

 

あとがき

今からもう二十年前の一九九七年のことである。私は、大学の先輩で日本法制史(ほうせいし)学者である、斎川眞(さいかわまこと)氏に、この本を書くように強く勧めた。そして二人で酒を酌み交わしながらこの本を書き進めた。斎川氏は、本来なら、早稲田大学法学部の日本法制史の教授になるべき人だった。

 

この本は、日本法制史学というマイナー(少数派)の学会からの画期的な業績である。振り返って、思い起こせば、私はこの本の書名を『天皇とは北極星のことである』にすべきだとちくま書房の編集部に、執拗(しつよう)に求めた。初めからそのように考え、そのように再三強く要望した。ところが、編集部が、どうしても『天皇がわかれば日本がわかる』にすると言って聞かなかった。「それならそれで仕方がない。しかし、後々きっとこの本の重要性が認められる時代がきます。そのときは『天皇とは北極星のことである』という書名に戻して出版し直します。いいですね」「わかりました。それでいいですよ」と編集部から言質(げんち)を取っている。この件は斎川眞氏も了解している。

 

この「天皇=中国からもらって来た王(おう)の呼称」のことについて、私、副島隆彦の体験談を以下に少し書く。

 

私は、一九九八年に中国を旅行した。この時に、北京で以下の体験をした。それは、北京城(紫禁城[しきんじょう]。天安門広場の北側)に行った時のことだ。そこに大きな、「太和(たいわ)殿」という正面の大門があって、ここに「太和」という言葉が使われている。「太和(たいわ)」は「始まり(初原)の平和」という意味だが、「大和」と同じだ。

 

この時、そうか、「大和」というのは、「大きな平和」という意味だろう。英語で言えばgrand peace「グランド・ピース」だ。この「大きな平和、秩序即ち大和を喜ぶ」という東アジアの歴代の支配者(皇帝)たちの支配観をここで理解した。そして、それを日本に持ってきて、奈良の「やまと」という地名にかぶせた。「大和」を「やまと」とむりやり読むことにしたのだと分かった。どこをどう解釈しても、「大和」は、語源学(etymology エティモロジー)からは「やまと」とはならない。「やまと」は「山門」である。長門(ながと)と同じ素朴な日本製漢字である。奈良盆地に山門国(やまとこく)があったのである。

 

ベルナルド・ベルトルッチ監督の映画『ラスト・エンペラー』(一九八七年作)の中に、清(しん)朝最後の皇帝・愛新覚羅溥儀溥儀(アイシンカクラフギ)(プーイー)が、宦官(かんがん)(ユーナック)たちまとめて二〇〇〇人ぐらいを一斉に退職させるシーンがあった。溥儀が免職される宦官たちを眼下に集めて、故宮の城郭から眺め下ろす場面だった。ここで使われた、実際の北京城の中の城塞の中の前の広場に私が立った時、通訳の中国人(なかなかの知識人だった)が、石で敷かれた地面を指さしながら「こちらの溝は、武官=将軍たちが、皇帝から死を賜(たまわ)る時(首を斬られる時)に流れた血を流す溝です。それと平行して走るこちらの溝は、文官(ぶんかん)=マンダリンたちが死を賜る時に血を流す溝です」と言って、敷石の上の地面の細い溝を指し示して

くれた。このことが今も思い出される。

 

次の日に、私は北京市の南五キロぐらいの小高い丘に行った。ここが中国で初めての世界文化遺産に登録(一九八〇年)された「天壇(てんだん)公園」である。「天壇」は国宝級の施設である。観光名所として今も有名な場所だ。私が行った時はまだ、草ぼうぼうの平たい台形地だった。その真ん中(中心)に、大理石で敷き詰めた広い円形の舞台があった。直径で二〇メートルぐらいはある真円形の壇である。そして「この台の上には、皇帝しか上がれませんでした。ここの中心で、中国の歴代の皇帝たちは、天文(てんもん)を実行しました。星占い(占星[せんせい])をしたのです。そこでまつりごと(政)を行った。中国の歴代の皇帝には宗教はありません。皇帝たちはここで当時の天文学に従って、その年の運勢、吉凶を占う占星を行いました」。このように中国人通訳ははっきりと説明した。今、日本人が、ここに行けば、聞く方に知性と教養があれば私と全く同じことを学ぶだろう。

 

それが、この本の斎川氏の文章の中に出てくる「円丘(えんきゅう)」のことである。本書三三ページに「昊天上帝(こうてんじょうてい)とは、冬至(とうじ)に圜丘(えんきゅう)(円形の丘[おか]のこと。王が冬至に天[てん]を祭る丘)に於(お)いて祀(まつ)る所の天皇大帝(てんこうたいてい)なり」とある。この円丘がまさしく私が行った天壇公園である。

 

ここで、「中国の歴代皇帝には、宗教はない。天文学で政治を行った」という一行は、大変重要である。日本人は、大きな意味での中国という国を分かっていないのだ。

 

日本最古の寺である四天王寺(してんのうじ)(大阪)と、法隆寺( 斑鳩寺[いかるがでら]。奈良)の両方に残っている、今も古式の儀式の舞(まい)で使う衣装は、「中国の皇帝から拝領した」と公言されていて完全に中国の古式の宮廷舞踊である。その衣装の背中の部分には、龍(りゅう)の絵柄(中国皇帝の象徴)と大きな七つの点で北斗七星(ほくとしちせい)( 北辰[ほくしん]ともいう。より正確には、八つ目の星が重なって存在する)が描かれている。

 

あれやこれや大きく関連させて推理すると、こういうことが分かってくる。四天王寺と法隆寺は兄弟寺であり、どちらも蘇我(そが)

氏(中国華僑系)の一族の生活拠点である。聖徳太子とは誰か?聖徳太子は蘇我入鹿(いるか)だ。入鹿その人である。入鹿大王(おおきみ)である。当時の最高権力者だった蘇我馬子大王(おおきみ)の子である。

 

本書は、日本における「天皇」という称号の成立について、歴史文献(史料)「にのみ」基づいて論じたものである。これが、本書の特徴である。

 

斎川氏は日本法制史の学者である。日本法制史という分野の学問は、法学部に属し法学の基礎研究の一分野であり、日本の過去の法律を研究対象にする、法についての歴史学である。

 

ふつう法律学というのは、現在の法律を研究するので、法制史などという古くさい学問があることを、知らない人が多い。法制史学者というのは、日本全国に僅かに一〇〇人くらいであり、筆者もその一人である。

 

法制史は、学問としては厳格なものであるが、この学者の数から想像できるとおり、法学部のなかでは、ほとんど人気のない傍流の学問である。「天皇」とは、もともとは、「王(おう)」や「皇帝(こうてい)」と同じ、中国の君主の称号である。称号というよりは、位(

くらい)と言ったほうが、わかりやすいであろう。

 

紀元五七年に中国の後漢(ごかん)王朝の光武帝(こうぶてい)から「漢委奴国王(かんわぬこくおう)」という金印をもらった倭(わ

)の奴(ぬ)国や、三世紀に魏(ぎ)王朝から「親魏倭王(しんぎわおう)」という称号をもらった邪馬台国(やばたいこく)の卑弥呼(ひめこ)(ヒメミコだ)や、五世紀(西暦四〇〇年代)の魏(ぎ)晋(しん)南北朝の南朝国である宋王朝から「倭国王」に任命された「倭の五王」のことは、よく知られている。

 

ここからわかるように、日本の政治支配者(君主)の称号(位)は、「王」であった。しかも、この「王」とは、中国が日本に与えた称号であった。

 

「天皇(てんおう)」という称号(位)は、この「王」という称号(位)に取って代わったものである。王から天皇に変更されたのは、七世紀初め(西暦六一〇年頃)推古(すいこ)天皇(女帝)のときであった。

 

この「天皇」という称号(位)は、中国王朝から与えられたものではなく、自分たちで勝手につかったものである。七世紀初めに推古朝の役人たちが、「天皇という、この立派な称号をどうかおつかい下さい」と、王に献上したものである。

 

斎川氏が本書(三八ページ)で書いている如く、この「天皇」という称号は、前述したとおり、「王」という称号に代わる称号である。このときからずっと、日本の君主の称号は「天皇」である。当然のことだが、この称号は現在も生きつづけている。

 

「天皇」は、「皇帝」と同格の君主の称号であるが、日本の天皇は、実際は、皇帝ではなかった。十六世紀のおわりに来日した、イエズス会のロドリゲスという人物は、『日本語小文典(下)』(池上岑夫訳、岩波文庫、一五九ページ)のなかで、つぎのように言っている。

 

 

「日本の国王は、皇帝に相当する名をいくつも使っているが、中国人は、これを嗤(わら)っている。その理由は、中国の国王は、中国内外に、王の称号を持つ者を何人も従えているから、まさしく皇帝であるが、日本の国王は、そのような王を従えていないか

ら、ただの国王であって、皇帝ではないからである」(『日本語小文典』、読みやすくするため、訳文をすこしかえた)

 

 

このとおり、外側から見れば、比較によってすぐに真実が明らかになる。このロドリゲスの理解が、世界から見た冷徹な日本理解である。だから、日本は、ずっと王制の国なのである。日本が、六世紀に、この日本列島に立て籠もって、中国風の律令国家を作り上げると決めたときからずっと、日本は、「天皇」を君主とする王制の国である。当然、現在もそうである。日本国憲法の第一章(第一条│第八条)は「天皇」である(『天皇がわかれば日本がわかる』「あとがき」)。

 

以上のとおりです。本を読む喜びを知っている人は賢明な人だ。大きな真実を知ることで、人間は真に賢くなる。

 

なお、北極星という星は果たして存在するのか、という問題がある。厳密に天文学(アストロノミー)の分野では、北極星(The Polar Star[ザ・ポーラー・スター])という特定の恒星(こうせい)は存在しない。現在の北極星は、こぐま座α星のポラリス Polarisである。古代からずっとあの星が北極星だ、ということになっている星は変わる。そして別の星(スター)になる。地球の地軸の歳差(さいさ)運動(首ふり運動)によって約二万六千年の周期で別の星が北極星となる。現在の天文学では、北極星はPole Star(ポールスター)(北極の方向にある星)と書く。古代の人々は、かすかにこのことに気づいていた。現在の私たちで、あの星が北極星だと見分けられる人は、空気の澄んだところで天体望遠鏡で星の観察をしている人たちだけだろう。

 

最後に、この本が完成するまでに、PHP研究所の大久保龍也氏の真摯なお誘いと指導をいただいた。著者二人の感謝の気持ちを表明します。

 

二〇一七年一月

副島隆彦

 

(貼りつけ終わり)
 


(終わり)







アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22

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 古村治彦です。  

 2017年2月11日、日米首脳会談がワシントンDCのホワイトハウスで行われました。その後、フロリダ州の高級リゾート(トランプ所有)で夕食会が行われ、その翌日にはゴルフを行うということです。  トランプや日本政府のツイッターやフェイスブック上では、安倍晋三首相と仲良さげに写っている写真が掲載されています。トランプが10数秒間安倍首相と握手をしている様子もテレビで流されました。  

 アメリカの雇用を生み出すために、「日米成長雇用プログラム」で、日本の年金を差し出すことは安倍首相の訪米前には既に決定していますが、資金の行先はどうも、アメリカ国内の高速鉄道(新幹線)の建設になりそうです。トランプ大統領は、中国や日本の高速鉄道に言及し、アメリカでも建設を進めたいと発言しました。日本の投資で新幹線を建設することは、どれほど買い叩かれるかは分かりません。  

 以下にご紹介する論文は、保守系のシンクタンクの研究員が書いたものです。内容は、簡単に言うと、「日本は、トランプ政権にとって役立つことを証明しなければならない」「アメリカの国益にかなう存在にならねばならない」というものです。  お金の面でも、そして、外交・軍事の面でも「最前線」に立つ国家となることが、日本にとっての賢い選択だということですが、日本の国益については全くと言ってよいほど、考慮されていません。この点はアメリカ人の研究者が考えることではなく、日本の政治家が考え、行動すべきですが、安倍首相のこびへつらった、浮ついたニヤケ顔の写真を見ていると、そんなことを求めるのは不可能なのだという気持ちにさせられます。

(貼りつけはじめ)

日本はいかにしてトランプと「一緒に」勝利できるか(How Japan Can ‘Win’ With Trump)

ダニエル・トゥワイニング筆
2017年2月2日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2017/02/02/how-japan-can-win-with-trump/

日本の安倍晋三首相は、11月に諸外国の首脳の中で最も早くトランプと会談を行った。2月3日、ジェイムズ・マティス国防長官は新国防長官初めての外国訪問として、日本を訪問する。こうした一連の動きは、日本政府がトランプ政権の外交・安全保障政策において重要な役割を果たすことになると示唆している。しかし、日本政府の高官たちは、トランプの興味をそそるために、日米同盟関係の協力について明確にするために賢くならねばならない。日本はこれができる稀有な立場にある。日本は、アメリカ国内、海外における日米共通のゴールをトランプが達成できるように貢献ができる方法は数多くある。

第一に、トランプ大統領は、日米同盟の価値に懐疑的になっているが、日本は、アメリカにタダ乗りしているのではなく、同盟国のお手本として、太平洋の平和を維持するために負担を分担していることを示さねばならない。日本は、沖縄に駐留している米軍に対する予算的な援助を行っている。その結果、米軍はカリフォルニア州に駐屯するよりも安い経費で沖縄に駐留できている。日本は現在まで国防予算を増加させ続けており、自国の防衛のためだけではなく、アメリカの防衛のために、洗練された軍事能力を持った部隊を展開させている。その一例として、北朝鮮のミサイルに対する防衛における協力が挙げられる。日本は、アメリカの同盟諸国、インドや東南アジア諸国、NATOとの軍事的な協力関係を拡大し続けている。これらの同盟諸国はアメリカ軍との協力を行えるように軍事能力を強化している。日本はアメリカ軍の地球規模での展開を支援している。それには中東やアフガニスタンにおける展開も含まれている。

第二に、より強力な同盟国としての日本は、トランプの最終的な目標である、アメリカを「再び偉大にする」ことに貢献できる。トランプは、力を増大させつつある新興大国からの挑戦を受けつつある中で、アメリカの力と影響力を増大させたいとしている。中国とロシアは同盟国をほとんど持っていないし、その力は限定的だ。そして、アメリカと、アメリカと競争している国々との間の違いは、アメリカは地球を覆う同盟諸国のネットワークを持っている点だ。ある国が偉大な力を持つということは、その国従う国にとっては重要であり、日本をはじめとする多くの国々は、アメリカとパートナーになりたいと望んでいる。アメリカとの同盟に対する日本の継続的な支援は、アジアにおけるトランプの目標達成をより容易にすることだろう。トランプのアジアにおける目標は、中国のアジア地域の支配を阻止することである。日本が同盟関係に貢献することで、アメリカは有利な立場に立ち、ライヴァル諸国に対して比較優位の立場に立てるのだ。

 第三に、日本の指導者たちは、新たにワシントンにやって来た支配者たちに対して、「日本は貿易における脅威などではなく、根本的に経済協力者である」ということを理解できるように手助けをしなければならない。日本はアメリカに対する投資を行う外国としてはトップグループに入っている。アメリカ国内で年間販売される日本車約400万台のうちの約75%は北米で生産されている。日本の自動車メーカーは、トランプが守ろうとしている給料の高い製造業の仕事に数多くのアメリカ人を雇用している。 現在の日本は1980年代の「日昇る」日々の時のような、アメリカにとっての輸出に関して脅威ではなくなっている。日本ではなく、中国によるアメリカ企業の買収はアメリカの国家安全保障にとってリスクとなる。日本企業と日本の資本は、トランプがアメリカの有権者に約束した、アメリカの復活にとって重要な存在となる。それは、アメリカと日本の経済活動はその大部分は、伝統的な貿易の流れよりも、国内における生産と投資から生まれているものであるからだ。

4番目に、トランプがアメリカの経済成長のために始めようとしている米国内のエネルギー革命を日本は支援できる。日本はエネルギーに関してほぼ輸入に依存している。今年の1月初旬に、アメリカから初めて輸出された液体化された天然ガスを積んだ船が日本に到着した。伝統的な石油と天然ガスの生産、更には新技術の利用によるシェール・ガスや「タイト」オイルの生産が進むことによって、北米におけるエネルギー生産能力は、アメリカ市場の吸収力を超えるものだ。国内のエネルギー生産を促進するためには、海外市場への輸出が重要となる。現在のところ、日本は中東のリスクを抱える原産国からのエネルギー供給に依存している。そのような日本にとって、アメリカからのエネルギー輸出は、安定供給と政治的なリスクがないという利点がある。

エネルギーにおける日米協力によって、日米の経済と安全保障を確実にするためにウィン・ウィン関係を構築することができる。 トランプはTPPからの離脱を表明した。これはアメリカにとって不幸なことであった。こうした中で、アメリカのアジアの経済に対する関与において、日本は重要な存在となる。これが第五の点である。TPPは、日米間の貿易・投資の自由化がその中核にあった。その中にはアメリカが得意とするサーヴィス、農業、ディジタルといった分野が含まれている。 トランプはアメリカの重工業製品の輸出を即することに注力している。実際、アメリカの経済の生産高の80%以上がサーヴィス産業と「ソフトウェア」が生み出したもので、中国やそのほかの発展途上国がより低いコストで生産している「ハードウェア」産業が占める割合は20%以下なのだ。アメリカはサーヴィス部門では年間4000億ドルの貿易黒字を計上している。トランプ政権は、TPPの中のアメリカの経済競争力を支援する部分を抜き出し、TPPによっても残されていた相違点を解消するために、日本と二国間交渉を行うだろう。

第六の点として、トランプ政権下で新たな状況を迎える米ロ関係において、日本は要素の一部となるだろう。安倍首相はロシアのウラジミール・プーティン大統領との間で、日露関係をリセットしようとしている。これによって、第二次世界大戦以来の北方領土をめぐる争いに決着をつけたいとしている。アメリカと同様、日本にとっては、ユーラシアを支配し、ユーラシア大陸の沿岸部に存在する自由主義諸国に脅威することになる中露同盟の形成を阻止することが重要な国益となる。トランプが純粋に、アジアにおける中国の台頭をけん制するための関係を築くためにロシアとの関係を改善したいと望むならば、日本はこの試みのための、重要なパートナーとなるだろう。

第七の点として、トランプは明らかに中国との間の競争的な関係に直面している。この状況下で、活性化された日米同盟は、アメリカに有利な立場をもたらす。そして、中国にとってはアメリカと直接対峙するにあたって、日本も考慮に入れねばならず、状況が複雑化する。安倍首相率いる日本は、アジアにおける覇権を主張する中国の野心に対峙している。この点で、日本は、アメリカと同じ目標を持つ、最前線に立つ国家ということになる。アメリカは、中国が影響圏を拡大することで、経済成長著しいアジア地域における経済と軍事的なアクセスを制限されてしまい、利益を失ってしまうことになる。 日本政府の高官たちは、トランプが日本に何の相談もなく中国と交渉をして、日本の国益を損なう合意をするのではないかという不安を感じている。その中には台湾の安全保障問題も含まれる。トランプ政権は、現在のアジアの海洋秩序を維持する、南シナ海の公海における支配権を求める中国の野心をけん制し、民主諸国家と中国に懸念を持つヴェトナムのような国々のためにアジア地域の軍事バランスを強化するといった目的のために、日本とより緊密に協力するという賢い選択をすることになるだろう。

古くからのアメリカの同盟諸国の多くは、自分たちに価値を置かない、大事にしてくれないと感じているアメリカの政権との交渉の先行きに絶望している。日本のような重要な同盟国にとっての賢い行動とは、トランプ政権の外交政策と経済政策における優先事項の解決にとって重要な存在となることだ。そのためにアメリカとの間の緊密な関係を維持し、アメリカにとっての価値を増やすことができるということを示すべきだ。

(貼りつけ終わり)

 (終わり)




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