古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

 古村治彦です。

 

 私が以前ご紹介しましたように、民主党内部は今、分裂状態にあります。内部闘争と言ってよいでしょう。それが激化しています。その理由は来年の選挙です。来年はアメリカ大統領選挙が実施され、そちらに注目が集まっていますが、同時に連邦上院議員の一部、州知事の一部、そして連邦下院議員全員の選挙が実施されます。

 

 連邦上院議員は6年に1度、州知事は4年に1度、選挙が実施されます。連邦下院議員は2年に1度選挙が実施されます。現在連邦下院議員を務めている人々は2018年11月3日の選挙(中間選挙)で当選し、2019年1月から任期が始まった人々です。新人で当選した人々は連邦下院議員になって7カ月ほど経過しただけのことですが、もう次の選挙について心配をしなくてはならない、ということになります。これはヴェテランでもそうですが、連邦下院議員は選挙がすぐにやってくるので、資金的、精神的、肉体的にかなりの消耗を強いられます。まず自分の所属する党の予備選挙で勝ち、本選挙で勝たねばなりません。

 

 また2年に1度選挙があるということで、挑戦者がどんどん出てくるということになります。現職が共和党議員だった場合、共和党内から予備選挙で挑戦する人が出てきますし、本選挙では民主党の候補者と戦うことになります。長期間に連続で当選しているような人には挑戦者は出にくいですが、それでも、多選批判が選挙区内であるような場合には、盤石だと思われていた人もあっさり予備選挙で負けたり、本選挙で負けてしまったりということが起きます。

 

 連邦下院の議長(Speaker)や多数党(Majority)、少数党(Minority)の院内総務(Leader)や幹事(Whip)になる、連邦下院の党指導部を形成するような議員は長年当選を重ねて、選挙に強い議員たちということになります。そこまでいかない連邦下院議員は4期か5期(8年から10年)務めたら引退して別の仕事(議会関係のロビイストなど)に就く場合があります。また、連邦上院議員や州知事を目指すこともあります。


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 このブログでもご紹介しているアレクサンドリア・オカシオ=コルテス(Alexandria Ocasio=CortezAOC、1989年―、在任:2019年―)は、2016年のアメリカ大統領選挙で、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)の選挙運動に参加し、それが機縁となって、2018年の中間選挙で、連邦下院議員ニューヨーク第14選挙区で選挙に挑戦することになりました。そして、2018年6月の民主党の予備選挙で、10期連続当選、次はいよいよ連邦下院議長だと言われていたジョセフ・クローリーを大差で破り、民主党の候補者となり、11月の本選挙でも大差をつけて当選、という大番狂わせを演じました。選挙資金は数百万円、クローリーはウォール街の金融機関などからの献金数億円でしたが、かえってこのことが選挙区の有権者の怒りを買ってしまったという結果になりました。

 

 AOCの選挙戦を支えたのは、ジャスティス・デモクラッツ(Justice Democrats)という組織です。この組織は2016年の米大統領選挙に出馬したサンダースの考えを拡大しようという目的で同年に設立された組織で、自分たちの考えに賛成している人々を選挙に立候補させて当選を目指すという活動を行っています。


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2018年の中間選挙では、AOCの他、アリゾナ州第3選挙区のラウル・グリジャルヴァ(Raúl Grijalva、1948年―、在任:2013年―)、カリフォルニア州第17選挙区のロウ・カンナ(Ro Khanna、1976年―、在任:2019年)、マサチューセッツ州第7選挙区のアイアナ・プレスリー(Ayanna Pressley、1974年―、在任:2019年―)、ミシガン州第13選挙区のラシーダ・トレイブ(Rashida Tlaib、1976年―、在任:2019年―)、ミネソタ州第5選挙区のイルハン・オマル(Ilhan Omar、1982年―、在任:2019年―)、ワシントン州第7選挙区のプラミラ・ジャヤパル(Pramila Jayapal、1965年―、在任:2017年―)といった人々がジャスティス・デモクラッツの支援を受けて連邦下院議員に当選しました。


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この連邦下院議員たちは「進歩派(Progressives)」と呼ばれていますが、日本風に言えば「バーニー・サンダース派」ということになります。この議員たちはジャスティス・デモクラッツの考え、もっと言えばバーニー・サンダースの考えである国民皆保険「メディケア・フォ・オール(Medicare for All)」や最低時給15ドル、学費ローンの帳消し、公立大学の無償化、グリーン・ニューディールの実現のために活動を行っています。

 

 このジャスティス・デモクラッツ、進歩主義派の議員たちと争っているのが民主党内部の主流派です。そして、現職の連邦下院議員たちです。この文章の前の方でも書きましたが、連邦下院議員は選挙ばかりで議席を守ることは大変なことです。お金集めも大変、いつも挑戦者の影におびえ、有権者の風向き一つで今までの努力が水の泡ということになります。それに対して、ジャスティス・デモクラッツは各選挙区で自分たちの考えに賛成する人たちを民主党の予備選挙に立候補させてきます。現職議員たちは、いつ自分が無名の新人AOCに敗れたジョセフ・クローリーみたいになるか、次の連邦下院議長と呼ばれるところまで10期連続当選という実績を積み重ねたクローリーがあっさり負けてしまった様子を見ていますから、ジャスティス・デモクラッツと進歩主義派に警戒感を持っています。

 

 現職議員たちは、民主党連邦議会活動・選挙運動委員会(Democratic Congressional Campaign CommitteeDCCC)という組織を結成しています。この組織は現職の議員たちの再選を進めるための組織で、ジャスティス・デモクラッツと争いになるのは当然のことです。

 

 こうした動きに対して、今年5月、バラク・オバマ前大統領がヨーロッパで行った講演会で、「銃殺隊(firing squads)を動き回らせるな」という言葉を使って、進歩主義派とジャスティス・デモクラッツをけん制しました。民主党の現職議員の落選運動のようなことをするなと批判しました。オバマ大統領は今でも民主党内で隠然たる力を持っており、今回の大統領選挙ではジョー・バイデン前副大統領を支援するものと見られています(まだ正式に発表していません)。これに対して、AOCをはじめとする進歩主義派とジャスティス・デモクラッツはバイデン攻撃、その裏にあるオバマ攻撃を激化させています。「オバマ時代が良かったなんて幻想だ」という論法で攻撃を仕掛けています。


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 進歩主義派は連邦下院民主党執行部とも対立しています。国境の不法移民問題について、民主党が過半数を握る連邦下院は収容所の不法移民の子供たちの処遇を改善するための予算案を可決しましたが、共和党が過半数を握る連邦上ンではこの予算案が否決されました。上下両院は妥協し、国境警備に関する予算を増額することで合意しましたが、子供たちの処遇には予算は使われないということになりました。

 

この妥協に、AOC、アイアナ・プレスリー、ラシーダ・トレイブ、イルハン・オマルの新人女性議員たちが反対を表明しました。この4名は「分隊(Squads)」と呼ばれています。この4名が連邦下院のナンシー・ペロシ議長と対立しています。ペロシや民主党多数派からすると、進歩主義派の政策は過激すぎて実行不可能、もし実行すると行き詰って有権者の支持を失い、選挙に負けてしまうということになります。


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 この状況の中、トランプ大統領が4名の議員を名指しはしていないものの、「自分たちの出身国の政府は危機的状況にあるのだから、それらの国々に帰れ」という趣旨のツイートを投稿しました。AOCは母親がプエルトリコからの移民、トレイブはパレスティナ系、プレスリーはアフリカ系ですが、全員アメリカで生まれています。ということは、生まれながらにアメリカ市民ということになります。オマルはソマリア難民としてアメリカに入国し、後にアメリカ市民となっています。

 

 この「それぞれの国に帰れ」という言葉は極めて短絡的で、思考停止を伴う言葉です。それをアメリカ大統領が簡単に使う時代になったのか、という嘆息が出てしまいますが、これによって、民主党は一致団結して、トランプ大統領に対峙するということになりそうです。共和党の一部からも批判の声が出ていますが、はっきりと「人種差別的だ」という声もありますが、「そんなことを言うべきではなかった」というはっきりしない批判の声が多いです。

 

 共和党は自由貿易を標榜している政党ですが、トランプ大統領は関税の引き上げや相手国に管理貿易を求めるなど、自由貿易に反する政策を実施しています。加えて、共和党の金城湯池となっている地方の農業州は、米中貿易戦争の結果、中国への農産物輸出が減少していることに不満を持っています。トランプ大統領の米中貿易戦争に声援を送っていたのが民主党の連邦議員たちということを考えると、ここに大きな捻じれが起きているということになります。しかし、共和党側にはトランプ大統領を大っぴらに批判できないという忸怩たる思いがあります。

 

 ここにポピュリズム(一般有権者がワシントンの政治に怒りを表明して自分たちの代表を送り込む)を入れて考えると、民主共和両党で、ポピュリズムによる大きな捻じれが起きていると言うことが出来ます。人々の怒りがそれぞれ民主共和両党に及び、どちらの主流派にも相容れない過激な考えが党内で大きな勢力となりつつあるということになります。このポピュリズムに対する警戒感はアメリカでも日本でも根強く、特に反体制を気取ったエリートたちに多く見られる特徴があるように思います。

 

 トランプ大統領の4名の議員たちに対する言葉は、ポピュリズムに内包される差別主義、排外主義を示す言葉ですが、それをかけられたのがやはりポピュリズムを体現する議員たちであるということが興味深い点です。私から見れば、どちらも同根ということになります。

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 選挙にお金がかかるのはアメリカでも同じです。今回は、2019年第2四半期(4月から6月まで)の寄付金についての記事をご紹介します。

 

 民主党予備選挙で先頭走者、フロントランナーになっているジョー・バイデン前副大統領は2150万ドル(約23億円)を集めたということです。一方、期待の若手、新星ピート・ブティジェッジ・インディアナ州サウスベンド市長は約2500万ドル(約27億円)を集めたということです。

 

 バイデンの立候補表明は4月末でしたので、実質的に2か月ちょっとでの数字ですが、それでも3月までは泡沫候補扱いだったブティジェッジに寄付金の数字で負けているのは驚きです。4月から5月にかけて、バイデンが独走状態になるという記事がたくさん出ていましたが、その中には、ヒラリー・クリントン元国務長官に多額の献金をした、大口献金者たちが満を持してバイデンにお金を出している、という記事もありましたので、私としては2500万ドル以上、3000万ドルくらいは集まっていると思っていました。

 

 それが2000万ドル台そこそこ(この数字も凄いですが)、というのはバイデンの力は大したことは無いということを示していると私には思えてなりません。大口献金者や企業からの献金を断り、個人献金にこだわっているバーニー・サンダースが第一四半期と同じ1800万ドル(約19億円)を集めていることも明らかになっていますから、バイデンの「大したことなさ」が際立ってしまいます。サンダースは2019年だけで3600万ドルを集めたことになりますから、これは大したもので、選挙戦も積極的に展開できるでしょう。

 

 バイデン選対は大企業や大口献金者からの献金は受け取っていないとし、1件当たりの平均献金額は49ドルだと発表していますが、ブティジェッジの場合、平均額は47ドルであり、ほぼ同じです。そうなると、ブティジェッジの方が献金者数、献金件数が多いということになって、バイデンが各種世論調査で支持率独走状態であるということも、献金数、献金額に反映されていないということになります。

 

 討論会の前後で支持率を上げた、カマラ・ハリスとエリザベス・ウォーレンへの献金額も伸びていくでしょうから、トップ5(バイデン、サンダース、ハリス、ウォーレン、ブティジエッジ)の戦いは激化していくでしょうが、それ以外の候補者たちの戦いはどんどん苦しくなっていくでしょう。

 

 2回目の討論会は2019年7月30日と31日にミシガン州デトロイトで実施されます。参加条件は1回目とあまり変わりません。20名が討論会に参加できます。3回目は9月12日と13日に実施されますが、参加条件は厳しくなり、2019年6月28日から8月28日の間に実施される各種世論調査で2%以上の支持率を4回取るか、8月28日までに13万人以上の献金者から献金を集めるか、20州以上の州から一つの州で400名上々の献金者から献金を集めるか、というものです。これだと20名の参加者は望めないので、討論会の登壇者の数は減ることになるでしょう。

 

 2ダース分の候補者が出ていますが、人気が下位の候補者たちは7月、8月が勝負ということになるでしょう。バイデンはこれから数字を上げていかねば思わぬ形で足をすくわれてしまうことも考えられます。

 

(貼り付けはじめ)

 

バイデンは第2四半期で2150万ドルを集めた(Biden raises $21.5M in second quarter

 

ジュリア・マンチェスター筆

2019年7月3日

『ザ・ヒル』

https://thehill.com/homenews/campaign/451547-biden-raises-215m-in-second-quarter

 

ジョー・バイデン前副大統領の選挙対策本部は水曜日、2019年第2四半期で2150万ドルの政治献金を集めたと発表した。

 

 

バイデン選対は献金の97%は草の根の献金者たちからのもので、25万6000名の献金者が43万6000件以上の献金を行った。1件当たりの献金額は49ドルだと選対は発表した。

 

 

バイデンの選対は、ロビイスト、PAC、化石燃料産業からの寄付を受け取っていないと報告した。

 

バイデン選対は、2019年第一四半期のどの候補者よりも多額の政治献金を第二四半期で集めと自画自賛している。一方、インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジは献金額の合計でバイデンを上回った。ブティジェッジ選対は2019年第二四半期で約2500万ドルを集めた。

 

ブティジェッジ選対は40万以上の献金者たちから大統領選挙のための献金を受けたと発表した。1人当たりの平均献金額は47ドル42セントとなった。ブティジェッジとバイデンは共に今年4月に選挙運動を正式にスタートさせた。

 

ブティジェッジ選対に多額の献金が寄せられているというのは、ブティジェッジにとって素晴らしいニュースだ。ほんの数か月前まで、ブティジェッジはアメリカ全土では比較的無名の存在であった。2019年第一四半期でも700万ドルしか集めることが出来なかった。

 

バイデン選対は献金の総額を発表することで、多くの立候補者がひしめき合っている民主党予備選挙での更なる支持を求め、先週の一回目の討論会でのボロボロのパフォーマンス後でも全国規模の各種世論調査で支持率トップを維持したいと考えている。

 

バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は1回目の討論会の後支持率を下げ、選挙戦の行く末に疑問の声が上がっている。先週の討論会の後、3つの世論調査の結果が発表され、サンダースはバイデン、カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)の後塵を拝する結果となっている。

 

政治資金の面から見ると、サンダースはブティジェッジとバイデンの後を追っていることが明らかになった。2019年第二四半期でサンダース派1800万ドルを集めた。

 

サンダースの選対幹部たちは、サンダースは大口献金者たちからの献金を避けていると強調し、大口献金者や民主党の有力者たちに媚びるつもりは一切ないと述べた。

 

ブティジェッジとバイデンは共に先週の討論会の後に複数の資金集めイヴェントに出席している。

 

=====

 

ブティジェッジは2480万ドルを集め、前の四半期から数字を3倍に伸ばした(Buttigieg raises $24.8 million, tripling haul in previous quarter

 

モーガン・グスタルター筆

2019年71

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/451119-buttigieg-raises-248-million-tripling-haul-in-previous-quarter

 

民主党の大統領選挙予備選挙候補者ピート・ブティジェッジは月曜日、2020年大統領選挙の選挙対策本部は2019年第二四半期で約2500万ドルの献金を集めたと発表した。この数字は2019年第一四半期で集めた献金額の3倍以上となっている。

 

37歳のインディアナ州サウスベンド市長ブティジェッジはツイッター上に投稿したヴィデオ映像の中で、40万以上の献金者が合計で2480万ドルを献金したと述べた。

 

2019年第二四半期の献金額の合計は第一四半期で集めた700万ドルの3倍以上の数字となっている。700万ドルという数字も、比較的無名で、その時期には正式に出馬宣言をしていなかった候補者としては大変な数字である。

 

ブティジェッジ選対は声明の中で、第一四半期に比べて献金者の数が2倍以上に増加したと発表した。

 

発表では、ブティジェッジへの献金は全米の全ての州と自治州からなされており、一人当たりの平均額は47ドル42セントであることが明らかにされた。

 

ブティジェッジ選対は、選対には現在2260万ドルの資金があることも併せて発表した。

 

ブティジェッジに対する政治献金の急増は、先週マイアミで行われた討論会の2晩めに登場した後に発表された。

 

政治献金の総額が発表されたのは、今年6月後半にサウスベンド市で白人警察官が黒人男性を射殺する事件が起きて、ブティジェッジが選挙運動から離脱を余儀なくされた後に発表された。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 ブログがおよそ1カ月ぶりの更新となります。6月中は昨日開催されました「副島隆彦の学問道場」の定例会の運営準備と共に私の講演の準備を進めながら、別の仕事のための準備、更に体調不良もあり、ブログを更新することが出来ませんでした。

 

 昨日の講演は反省点が多く、更に改善と綿密な準備を高いレヴェルで行わねばならないということを痛感しました。このブログをお読みいただいている方でご出席いただきました皆様には御礼を申し上げます。ありがとうございます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 

 昨日は定例会開催中にアメリカのドナルド・トランプ大統領が朝鮮半島の非武装地帯を訪問し、アメリカ大統領で初めて北朝鮮領域内に入った大統領になりました。「ツイッターの記事を読んで驚いた」と言いながら、北朝鮮の金正恩委員長も姿を見せたことで、本当の意味で世界の注目を集めました。大阪で開催され、安倍晋三首相が議長役を務めたG20のことなどどこかに吹き飛んでしまいました。

 

 トランプ大統領は、米中貿易戦争の深刻化を防ぐために、とりあえずこれ以上の攻撃と報復を取り止めようということで中国の習近平国家主席と合意をし、米朝関係ではとりあえず良い関係は続いているという姿を見せるために、北朝鮮の金正恩委員長と良好な関係をアピールしようということで合意をしていたということになります。部下たちがやり過ぎてしまったことを引き戻す、状況をこれ以上悪化させないということを、行ったものと思います。

 

 そのために手足となったのは、ホワイトハウスの中、ジャレッド・クシュナーとイヴァンカ・トランプ両上級補佐官だったと思います。思い返してみれば、ジャレッド・クシュナーがまずヘンリー・キッシンジャーと関係を結び、そこからトランプ大統領に紹介し、大統領選挙期間中にトランプ候補(当時)とキッシンジャーが極秘に会談を持ちました。そう考えると、今回はホワイトハウスのこのラインが働いて、キッシンジャーの助演を受けながら、状況を悪化させないということが実現したものと思います。

 

 目を日本に転じれば、日本政府は、安倍晋三首相が韓国に経済制裁を科す、そして文在寅大統領と少しの時間でも話をするということを行いませんでした。徴用工問題での報復だそうですが、相手との交渉を行わず、すぐに懲罰的な処置を行うというのは、戦前の日本と何ら変わりません。近衛文麿首相は日中戦争不拡大を希望しながら、周囲に引きずられ、最後には「暴戻支那を膺懲す(暴支膺懲)」とばかりに過酷な和平条件提案を行い(とても和平案とは言えない内容)、中華民国政府側の態度を硬化させましたし、「爾後国民政府を対手にせず」という声明まで出しました。この時の近衛首相の誤った判断が最終的に日本を亡国に導きました。安倍首相の行動様式はこの時のそっくりです。

 

 「世界が注目する大阪でのG20」「議長国日本の存在感」「議長役である安倍首相のかじ取り」などという国内向けプロパガンダ報道から脱してみれば、日本は、国際政治を舞台や映画にたとえてみれば、道化役、脇役、端役であって、中心的な役割を演じる俳優ではありません。

 

 6月30日の講演で私はアメリカ大統領選挙についてお話をしました。アメリカ大統領選挙の状況は大きく見れば、共和党はドナルド・トランプ大統領への一本化、民主党は予備選挙に向けての討論会と選挙運動が進行中だがジョー・バイデン前副大統領が独走、という状況で安定しています。バーニー・サンダースの人気が下降気味、エリザベス・ウォーレンとカマラ・ハリスが持ち直す、ピート・ブティジェッジは横ばいということで、これら以外の候補者たちは人気とお金がない順番でどんどん撤退していくことになります。

 

 先週、民主党の候補者たちによる1回目の討論会が2夜連続、2時間ずつ実施されました。24名の立候補者中、20名が討論会への参加資格をクリアし、10名ずつが登壇しました。参加資格は2019年1月以降に実施された世論調査の中で、1パーセントの支持率を3回獲得すること、もしくは6万50000名以上の人に政治献金をしてもらうこと、これ以外には1つの州で200名以上の献金者を獲得し、それが20州以上にわたること、というものがありました。

 

 出席者たちの中で、人気上位の人たちは揚げ足を取られないようにしながら、的確に発言する(発言時間はやはり人気上位の人たちの方が長かったようです)というアウトボクシング的な戦い方でした。人気がない候補者たちは割り込んで発言をしたり、自分の言いたいことを言ったり、与えられた時間を1秒でもオーバーして話をしようとどん欲な姿勢を見せましたが、それがかえって焦っているという印象を与えました。

 

 私が注目していたトゥルシー・ギャバ―ド連邦下院議員は1回目の討論会に出席し、クリティカルヒットを当てました。アフガニスタンへの米軍の駐留問題で、ティム・ライアン連邦下院議員の支持論に真っ向から堂々と反論し、ギャバ―ドはイラクとアフガニスタンで従軍した経験を持っているので、説得力の発言を行いました。ライアンは顔を真っ赤にして慌てて反論しましたが、その姿が見苦しく、ライアンの浮上はなくなったと言えます。

 

 ピート・ブティジェッジも無難にこなしました。現在、彼が抱えている大きな問題は、市長を務めているサウスベンド市で白人の警察官が盗難事件を起こした黒人男性を射殺した事件です。サウスベンド市警察における黒人警察官の割合が6%と低いこと、以前、ブティジェッジが警察本部長を務めていた黒人警察官を更迭したこと、もあって、これが攻撃材料とされました。数人の無名候補者たちがこの機会だとばかりに嫌味たらしく話しかけていましたが、ブティジェッジは毅然とした態度で反省の弁を述べていました。

 

 今回の大統領選挙民主党予備選挙で人気上位10位内に入るような政治家たちはそれぞれ素晴らしい特徴を持っていて、人気が出るべくして出た人たちなのだと改めて認識ました。同じ連邦上院議員や連邦下院議員を務めていても人気が出ないのは、魅力がない、話し方が下手、頭の回転が悪いということになるのだということも良く分かりました。それでも、日本の政治家たちに比べれば、魅力があり、話が上手、頭の回転は格段に速いということになります。

 

 7月に入って落ち着きましたので、これからブログの更新を再開したいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

(終わり)

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