古村治彦です。
新型コロナウイルス感染拡大が続くアメリカで支持を集めているのは最前線での司令官である各州知事や市長たちだ。特に感染拡大の規模が大きいニューヨーク州では、アンドリュー・クオモ知事の支持率が高くなっている。民主党にとっては4年後の大統領選挙の重要な候補者となるだろう。
アンドリュー・クオモ(Andrew Cuomo、1957年-、62歳)は2011年からニューヨーク州知事を務めている。1997年からは二期目のビル・クリントン政権で住宅・都市開発長官を務めた。父であるマリオ・クオモ(Mario Cuomo、1932-2015年、82歳で死去)1983年から1994年までニューヨーク州知事を務めた。
アンドリューは、ジョン・F・ケネディ元大統領の姪で、JFKの弟ロバート・ケネディ元司法長官の娘であるケリーと結婚していたが後に離婚している。クオモ家はニューヨーク民主党の名門ということになる。マリオ・クオモはレーガン大統領が席巻した1980年代のアメリカ政治において民主党の大物として存在感を示した。2015年1月1日に亡くなったが、その時のことを本ブログでも紹介している。
http://suinikki.blog.jp/archives/19838549.html
連邦政府やトランプ大統領の対応を手厳しく批判し、ホワイトハウスやトランプ大統領から罵られているグレッチェン・ウィットマー(Gretchen Whitmer、1971年―、48歳)は2019年からミシガン州知事を務めている。それまではミシガン州で検察官を務め、後にミシガン州下院議員、ミシガン州上院議員を務めた。カリフォルニア州のゲヴィン・ニューサム知事を筆頭に民主党系の州知事たちは早めの対応を行った。しかし、以下の記事にあるように、アメリカ南部に多い共和党系の知事たちは、トランプ大統領と同様に対応が後手に回った。
民主党系の知事たちが行っているのは実態把握と思い切った施策、補償だ。日本でもそれを目指して実施しようとしているが、州知事たちほど徹底しているとは言えない。日本でも成功していると評価されているのは検査を徹底して実態把握を行った和歌山県のケースだ。
リーダーの資質はなかなか分からないものだ。立派な経歴や平時での立派な業績は緊急時には役に立たないことが多い。しかし、緊急事態に強いというアピールはするが、解決策を自ら考えられず、無茶な目標設定をして、自分の責任を下に押し付けて、無理難題を押し付けるだけで成功とする日本的リーダー像ということもここでもう終わりにしなければならない。今回の出来事で私たちはリーダーとはどうあるべきか、ということを考える機会を得たということになる。
日本には「責任を取ればいいというものではない」と放言する指導者がいる。自分の失敗を下にかぶせて自分はのほほんとしている、信頼を損なうことをしておいて店として恥じない指導者がいる。そうした中でクオモ知事は「責めるなら自分を責めて欲しい、私が責任者だ」と述べた。これだけの指導者を日本人はついに得ることはできなかった。それは私たちが常に指導者や責任について考えこず、旧態依然としたパワーハラスメント型の指導者像しか持ち得てこなかったからだ。その不幸は、上は国政、下は日常の仕事や生活の面にまで貫かれている。日本は不幸な国である。
(貼り付けはじめ)
各州の知事たちがコロナウイルス感染拡大への対応で評価を高め、トランプ大統領をしのいでいる(Governors win high marks for coronavirus response, outpacing Trump)
リード・ウィルソン筆
2020年4月2日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/state-watch/490825-governors-win-high-marks-for-coronavirus-response-outpacing-trump
アメリカ国民は、全米で21万6000人以上の感染者が出ているコロナウイルス感染拡大への対応で州の対応をリードする州知事たちに高い評価を与えている。
同時に、各種世論調査によると、トランプ大統領に対する考えを変えるアメリカ国民の数はより少ないということも分かってきた。大統領は連邦政府のコロナウイルス感染拡大への対応について毎日新しい情報を発信するために提示に記者会見を行っている。いくつかの調査の結果によると、各州の知事たちが物資の供給と支援の不足について警告を発するようになり、連邦政府の対応に対して不満を抱くアメリカ国民の数は増えている。
AP通信に依頼されてナショナル・オピニオン・リサーチ・センターが実施した世論調査の結果では、アメリカ国民の57%が自分たちの住む州の州政府によるウイルス感染拡大への対応について評価しているということが分かった。一方、連邦政府の対応について評価したのは38%にとどまった。
それぞれの州で知事たちの多くは毎日メディアと住民向けに記者会見を行っているが、そのために評価が高まっている。
マーケット大学法科大学院が先週実施した世論調査によると、ウィスコンシン州に住む有権者の65%がトニー・エヴァース知事(民主党)の仕事ぶりを評価しており、1カ月でその数字が14ポイントも増加した。エヴァースのパンデミックへの対応を76%の有権者が評価しているという結果が出た。同時に、トランプ大統領の支持率は48%で1カ月前に比べて変化はなかった。そして、大統領のウイルス感染拡大への対応を評価したのは51%にとどまった。
マーケティング・リソース・グループが実施した世論調査の結果では、ミシガン州知事グレッチェン・ウィットマー(民主党)の仕事ぶりへの評価は60%にまで高まった。評価しないと答えたのは22%にとどまった。ミシガン州は大統領選挙の激戦州であるが、ここでウィットマーの支持率はトランプ大統領の支持率の数字に比べて15ポイントも高いという結果が出た。ウィットマー知事が連邦政府からの支援の欠如について不満を述べた際、トランプ大統領はウィットマーについて「ミシガン州のあの女」と否定的に述べた。
ニューヨーク州では、州在住の有権者3分の2がアンドリュー・クオモ知事(民主党)は素晴らしい仕事をしていると評価している。シエナ・カレッジの実施した世論調査で、クオモ自身にとってこれまでで最高の数字を記録した。87%の有権者がウイルスをコントロール下に置くためにクオモ知事が行っている仕事を評価すると答えた。一方、トランプ大統領の仕事を評価すると答えたのは41%にとどまった。
ボールドウィン・ウォレス大学、オークランド大学、オハイオ・ノーザン大学が実施したヨロ調査の結果によると、オハイオ州に住む有権者の80%が、マイク。デワイン知事(共和党)のウイルス感染拡大を止めるための行動を評価しているが、トランプ大統領の仕事を評価していると答えたのは58%にとどまった。
ニューハンプシャー州の有権者の約75%、民主党支持の有権者の61%も含まれているが、クリス・スヌヌ知事(共和党)の対応を評価していると答えた。しかし、トランプ大統領の仕事を評価すると答えたのは41%にとどまった。ニューハンプシャー大学の世論調査の結果で明らかとなった。
カリフォルニア大学サンディエゴ校政治学部長のサッド・コウシアーは次のように述べている。「深刻な自然災害の後に私たちが良く目にしている状況と同じで、各州の知事たちは広範な支持を集めています。それはCOVID-19への政府の対応において知事たちが顔となっているからです」。
それぞれの州で実施した世論調査の結果では、ワシントン州知事ジェイ・インスリー(民主党)、ペンシルヴァニア州知事トム・ウルフ(民主党)、ノースカロライナ州知事ロイ・クーパー(民主党)の行った対応を60%以上の州の有権者は支持している。ワシントン州とペンシルヴァニア州では、トランプ大統領の支持率は40%台で、ノースカロライナ州では53%が大統領の感染拡大への対応を評価すると答えた。
専門家たちは、素早くかつ決然と行動した知事たちは有権者に対して、この状況で有権者を最優先にしているという印象を与えているが、連邦政府はそうではない、と指摘している。
マーケット大学の世論調査担当者チャールズ・フランクリンは次のように述べている。「感染拡大についての懸念と不安が拡大している時期、明確な行動は強力な肯定的な反応を生み出します。ホワイトハウスはその行動とメッセージの点で、より明確さを失っていました」。フランクリンはエヴァース知事の支持率の急上昇を発見した。
知事たちは、連邦政府レヴェルの政治家や役人に比べてより党派性が薄いと見られるという点でも優位性を持っている。有権者はアメリカの首都倭信徒でのトランプ政権と民主党が過半数を握っている連邦下院との間の争いに比べて、州都での党派争いについてはあまり認識をしていない。
各州政府は連邦政府に比べて、有権者からの信頼を得ている。特に極度に党派分裂が激しくなっている時代である現在、州政府の方が信頼されている。トランプ大統領は記者会見をして高い視聴率を稼ぎだしているが、ファクトチェックが必要な不正確な情報が記者会見で出てくることで、信頼を損なうことになっている。
グリンネル・カレッジの世論調査はアイオワ州を拠点とする世論調査専門家アン・セルザーが実施した。この世論調査の結果では、72%が自分たちの住む州の知事たちは情報の信頼できる発信元であると答えている。トランプ大統領を信頼できる情報の発信元だと答えたのは46%にとどまった。
トランプ大統領の支持率は通常であれば40%台中盤であったが、ここ数週間で50%に近い水準にまで上がっている。アメリカ人は危機の時期には大統領を中心にしてまとまる。しかし、トランプ大統領は過去の大統領に比べて党派分裂の激しい、党派性の強い大統領である。911事件の後、民主党支持者たちがジョージ・W・ブッシュ大統領を中心にしてまとまったようには、トランプ大統領の場合にはいっていない。
前述のコウシアーは次のように語っている。「州知事たちは党派で見られることが少ないのです。今回の危機が起きる前でも、知事たちは反対党を支持する有権者たちから支持を受ける傾向がありました。特に現在の大統領になってからはそうです。有権者たちは元々州知事たちへの信頼を持っていたのです」。
このポイントは、知事の中には選挙に何とか当選した人たちでも現在高い人気を誇っている人たちがいる、自身の所属政党を支持していない有権者からも人気を得ている、ということで明らかになっている。ウィスコンシン州のエヴァース知事、ニューハンプシャー州のスヌヌ知事、ノースカロライナ州のクーパー知事といった人たちは、選挙は接戦で、何とか勝利した。それが今や高い人気を誇っている。
州知事の中には、ウイルスの感染拡大を阻止するために医療衛生関係の役人たちが実施を求めた劇的な方法を採用することを控えた知事たちもいる。フロリダ州、ジョージア州、ミシシッピ州の知事たちは全員共和党に所属しているのであるが、水曜日になってようやく州民たちに対して在宅することを命じた。その数週間前にはカリフォルニア州のゲヴィン・ニューサム知事(民主党)は全米で最初にこのような徹底した方策を実施した知事となった。
しかし、各種世論調査によると、このような思い聞いた方策は多くの人々の考えから外れたものではないということが分かった。NORCとAP通信の共同世論調査の結果では、アメリカ国民の4分の3以上が人々に在宅することを求め、バーやレストランの閉店を支持している。80%以上のアメリカ国民が海外からアメリカに入国した人々の強制的な隔離、人々の集まりの制限、学校の休校措置を支持している。
フランクリンは、悲劇的なパンデミックから経済の落ち込みが起きるということが明らかになれば、状況は変化するだろうと指摘している。有権者たちは決定的な行動を取っている知事たちを支持している。
フランクリンは次のように述べている。「死者数が増加し、同時に経済に対する警鐘が鳴り響く中で、人々の意見がどのように変化するかを予測することは困難です。しかし、現在のところ、知事たちは正しいことをしていると見られています」。
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バイデンはウィットマーを副大統領候補として考えていることを認める(Biden
confirms he's considering Whitmer for VP)
タル・アクセルロッド筆
2020年4月1日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/campaign/490570-biden-confirms-hes-considering-whitmer-for-vp
ジョー・バイデン前副大統領は今週、ミシガン州知事グレッチェン・ウィットマー(民主党)について、自身が大統領選挙の民主党候補者となる場合に副大統領候補に指名する可能性を持つ女性の一人であり、その可能性について考慮していることを認めた。
バイデンは既に女性を副大統領候補にすると明言し確約している。木曜日の夜、ウィットマーについてここ数か月、副大統領候補に指名する可能性について考慮していると発言した。しかし、同時にバイデンは10名ほどの女性たちについて可能性について考慮しているとも述べた。
バイデンはMSNBCの番組に出演し、司会者のブライアン・ウィリアムズに対して次のように語った。「ウィットマー知事を候補者リストに加えたのは2か月前のことです。彼女はそのままリストに残り続けています。いいですか、ブライアン、私は今、副大統領候補になりうる人物のバックグラウンドチェックを行う組織を構成する準備をしています。この組織は4月中旬までに作ります。4月の第2週か3週までにはできます」。
バイデンは続けて次のように述べた。「私は大統領になる準備ができていると考えている女性たちについて考えてきました。そして、私はこうした人たちと協力して仕事を進めることができるし、こうした人々も喜んで協力してくれると思います。こうした女性は6人から10人いますよ」。
ウィットマーは民主党の政治家として人気を急上昇させているスターだ。2018年にミシガン州知事に就任した。これまでバイデンの副大統領候補として考えられていた。ウィットマーは11月にトランプ大統領を倒すために民主党がどうしても奪還しなければならないミシガン州を運営している。そして先月ミシガン州で予備選挙が実施される前にバイデン支持を表明した。バイデンはミシガン州でサンダースに2桁の差をつけて圧勝した。
ウィットマーは全米のマスコミから関心を集め、民主党や民主党支持の有権者からの拍手喝采を受けたのは、ウィットマーがトランプ大統領のコロナウイルスの全国的感染拡大に対して批判を行い、彼女の発言に対してホワイトハウスが叱責を行ったからだ。
バイデンはウィットマーを擁護する内容の声明を発表した。その中で次のように述べた。「今回のパンデミックで、ドナルド・トランプはリーダーシップを放棄することで国家を危機に直面させているが、グレッチェン・ウィットマー知事はミシガン州の各家庭のために勇敢に戦い続けている。ドナルド・トランプはウィットマー知事からいくつかのことを学ぶことができる。スピードが大事、細部が大事、そして、人々が大事、ということだ」。この声明が出たことで、ウィットマーが民主党の副大統領候補になるのではないかという憶測が更に出るようになっている。
ウィットマー以外にも、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)、カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)、エイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)、ヴァル・デミングス連邦下院議員(フロリダ州選出、民主党)とジョージア州下院少数党(民主党)院内総務を務めたステイシー・エイブラムスなどがバイデンの副大統領候補として名前が挙がっている。
(貼り付け終わり)
(終わり)
アメリカ政治の秘密
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側