古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。よろしくお願いします。


 古村治彦です。


 今回は、礫川全次著『史疑 幻の家康論』(批評社、2000年)を皆様にご紹介いたします。この本は、友人から貰った本の中に入っていたので入手したものです。また、『史疑』という本については、師である副島隆彦先生からお話を伺っていて、名前は知っていました。そして、『史疑』を基にして、副島先生は独自の徳川家康論を構築され、『闇に葬られた歴史』(PHP研究所、2013年)として刊行されました。


 村岡素一郎著『史疑 徳川家康事蹟』という本は、1902(明治35)年に徳富蘇峰主宰の民友社という出版社から出版された本です。その後、絶版となり、世の中から忘れ去られていたのですが、1958(昭和33)年に作家の南條範夫が古本屋で発見し、それを基にして、「願人坊主家康」という小説を書きました。また、『史疑』を基にして1986(昭和61)年、隆慶一郎が唯一の長編小説である『影武者家康』という小説を書いています。また、村岡素一郎の孫である榛葉英治(直木賞受賞作家)が『史疑』を口語訳した本を出しています。榛葉英治は、『史疑徳川家康』(雄山閣、1963年)という本も出しています。



 この『史疑 幻の家康論』は、『史疑徳川家康事蹟』を紹介した本です。著者であ礫川は、『史疑』という本について、①徳川家康の入れ替わり説の提示、②徳川家康が当時の卑賤な身分の出身であるという説の提示、③貴賤交代論の本であることの、3つのポイントで、この『史疑』は重要な本であると書いています。


 礫川の展開する主張で重要なのは、『史疑』が「貴賤交代論の書である」という点です。貴賤交代論というのは、「それまで社会を支配していた人々と、虐げられてきたもしくは卑しいとされていた人々が交代する。歴史はその繰り返しだ」と言うものです。そして、礫川は、この『史疑』で村岡素一郎は、徳川家康の出身が当時卑賎とされた身分であったことを指摘して、明治新政府の顕官たちの出自もまた卑賤なものであった、ということを指摘しているのだと主張しています。加えて、この貴賤交代論のために、『史疑』が言わば「禁書」として扱われてきた、出版元の民友社の徳富蘇峰さえも「禁書」として扱うことに協力したのだと主張しています。


 この部分は、「明治天皇すり替え説」「伊藤博文の出自は忍者説」と並んで、これからもっと調査が進められるべき(しかし調査が進むことはないだろうと思われる)、幕末から明治にかけての歴史の重要なテーマです。


 私たちが本やインターネットで見ることができる、松平家の家系図では「清康―広忠―家康」の順になっています。そして、家康の生母は水野忠政(尾張国知多郡の豪族)の娘、於大(おだい)の方となっています。於大の方は広忠と離縁させられ、久松俊勝と再婚しました。家康の異父弟たちは松平の性を与えられ、家康の家臣となったということです。

 しかし、『史疑』の中で、村岡素一郎は次のような論を展開しています。

(1)家康は駿府宮の前町生まれ。
(2)父親は諸国を放浪していた江田松本坊、母親はささら者の娘である於大、その母は於万
(源応尼)。ささら者は、戦場などでの雑用を行う人々であった。
(3)家康は祖母に養育され、仏門に入っていた。
(4)しかし、あることで破門され寺を飛び出し、放浪しているところを又右衛門という悪漢に捕まり、銭5貫で願人坊主であった酒井常光坊に買い取られる。
(5)家康(この時は世良田二郎三郎元信と名乗っていた)は19歳の時に駿府にいた松平家から今川家へのの人質であった竹千代(父は松平元康となっている)を誘拐し、遁走。祖母の源応尼は処刑された。世良田は家康の父江田松本坊の出身地の地名。
(6)家康は竹千代を尾張の織田家に引き渡そうとするなどの計略を用いた。
(7)「森山崩れ」という事件が起きる。松平元康が家臣に斬殺される。
(8)家康(このときは元信)が「元康の嗣子である竹千代君を奉侍している。竹千代君を奉じて岡崎城に入城したい」と言って岡崎城に入り込む。
(9)元康の死は秘密にされ、元信が元康の代わりをする。
(10)織田との和議が成立し、元康(元信が入れ替わった)は「松平蔵人家康」と改名。竹千代は信康と改名。
(11)家康時代になり、古くからの家臣が松平家から脱落していく。
(12)1566年に苗字を松平から徳川に改姓。
(13)1572年に家康、正室である築山殿と嫡子・信康を武田家との内通の容疑で殺害。


 私は、この村岡素一郎の徳川家康に関する主張については副島先生から数年前に口頭で説明を受けました。その時は、私の頭の悪さもあって、内容を理解できないままでした。しかし、今回、『史疑 幻の家康論』を読んでみて、なるほどその内容を理解することができました。この話は、当たり前の話ですが学校で習う歴史には出てきませんし、驚くべき内容で、「想像の産物」と片付けたくなるものです。

 しかし、私も資料が乏しい戦後史の研究をしていますと、ある本の一節、ある人がぽろっと言った一言から真実の断片がちらりと姿を見せていることを発見したという経験があります。村岡素一郎も『駿府政事記』という本を読んでいて、家康が家臣たちにある日、「自分は若い時に又右衛門という悪者に五貫文で売られて酷い目に遭った」と話したという一節からインスピレーションを得て、『史疑』としてまとめられることになる研究を始めています。私は自分の個人的な経験、直観から村岡素一郎の説は無視できないものであると思います。

 『史疑 徳川家康事蹟』は元々生硬な漢文で書かれており、読みにくいものだそうです。それを著者村岡素一郎の孫である榛葉英治が口語訳を出しています。それらを読むにあたり、まず入門編として、この『史疑 幻の家康論』を読むと理解が進み、有意義であると思います。

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12


 古村治彦です。



 今回は、オバマ大統領によって新しく駐日大使に任命されたキャロライン・ケネディ氏について考えたことをお知らします。



 キャロライン氏は、故ジョン・F・ケネディ元米大統領の長女として誕生し、「華麗なる」ケネディ家の一族です。アメリカには王族も貴族もいませんが、ケネディ家は米民主党系の名家であり、言ってみれば「王侯貴族」なのです。



 王侯貴族ですから、現実政治に本気で関わろうとすると、実力者たちから痛い目に遭います。ジョン・F・ケネディ元大統領、弟のロバート・ケネディ元司法長官は暗殺、そのまた弟のエドワード・ケネディ元上院議員は、マサチューセッツ州選出の連邦上院議員ではありましたが、スキャンダルに見舞われ、大統領になることはありませんでした。上院議員は、日本の昔で言えば殿様(大名)みたいなものですから、殿様くらいにはならせてもらいますが、それ以上を目指すと物理的に、もしくは政治的に殺されることになります。



 キャロライン氏の弟はジョージ・ケネディというハンサムな男性で、『ジョージ』という雑誌を創刊して、そのすぐ後に結婚式に向かう途中に飛行機事故で結婚相手とともに死亡してしまいました。この悲劇についても色々な噂話がありました。



 キャロライン氏はしかし、ケネディ家の「長女」としてケネディ家を支える存在のようです。そのケネディ氏は今度バラク・オバマ大統領から駐日大使に任命されました。これは言ってみれば、オバマ大統領による日本へのご褒美とも言えるものです。オバマ大統領は安倍晋三首相を嫌っていると言われてきましたが、どうも何か裏取引があったようです。そして、そのご褒美が東京オリンピック招致成功とキャロラインの駐日大使就任と言うことができるでしょう。


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オバマ大統領とキャロライン・ケネディ

 私が2012年に出した著作『アメリカ政治の秘密』で書いた通り、アメリカの日本管理路線は、ジョン・F・ケネディ大統領から始まりました。そして、ケネディが日本に送り込んできたのが、「元祖ジャパンハンドラー」であるエドウィン・O・ライシャワーでした。このハーヴァード出身者コンビが日本管理路線を完成させました。



 そして時が流れ50年後に、再びケネディ家が日本に関わろうとしています。しかし、キャロライン氏が裏の汚い仕事をするわけではないでしょう。表向きの、建前の、綺麗な「アメリカ」を日本人にアピールすることになるでしょう。裏の汚い仕事をするための人材がジャパンハンドラーズなのですから。



 私たちはこれからマスコミ(テレビ局と新聞社)で、キャロライン氏の華麗な生活を見せられ、「日米同盟の重要性」を「再教育」されることになるでしょう。このように書くとどぎついですが、あくまで綺麗なものとして、です。



(新聞記事転載貼り付けはじめ)



●「「父も訪日を望んでいた」ケネディ新大使が日本到着」



朝日新聞電子版 201311151612

http://www.asahi.com/articles/TKY201311150167.html



 米国の新しい駐日大使に就任するキャロライン・ケネディ氏(55)が15日午後、成田空港に到着した。



 キャロライン氏は1963年に暗殺されたジョン・F・ケネディ元大統領の娘。空港内の記者会見場に夫を伴って現れ、「父は米国大統領として初めて訪日することを望んでいた。日米両国の緊密な関係強化に取り組めることは、私にとって特に名誉なことだ」と声明を読み上げた。数週間以内には子どもたちも合流するという。



 キャロライン氏はハーバード大卒業後、弁護士資格を得て、非営利の活動や慈善事業にかかわってきた。環太平洋経済連携協定(TTP)交渉や沖縄県の米軍基地問題といった課題について、日米両政府のパイプ役を果たすことが期待されるが、政治や外交の実務に携わった経験がなく、外交手腕は未知数とされる。



 日本とのかかわりについては過去のインタビューで、20歳の時に広島を訪れ「より良い平和な世界の実現に貢献したいと願うようなった」と話している。また、「仕事をしたい国として、日本以上の国は思いつかない」といい、女性の地位向上や日米の若者の交流に取り組みたいという。



 出国前の12日に駐米大使公邸で開かれた記者会見では、改めて「日米の同盟や相互理解が深まるよう全力を尽くす」と抱負を述べていた。



(新聞記事転載貼り付け終わり)

(終わり)




新米駐日大使キャロライン・ケネディ氏の日本国民へのメッセージ。


幼い日のキャロライン氏にインスピレーションを受けてできた曲「スゥイート・キャロライン」。今ではボストン・レッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークで流される曲となりました。ボストンを代表する曲。ケネディ家がボストンの「王家」であることを示しています。ライバルのニューヨーク・ヤンキースの本拠地ではフランク・シナトラの「ニューヨーク、ニューヨーク」が流されます。イタリア系のマフィアと関係があったシナトラの曲。ニューヨークを象徴しています。

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 古村治彦です。


 今回は、楠木誠一郎著『石原莞爾 「満洲国」建国を演出した陸軍参謀』(PHP研究所、2002年)を皆様にご紹介します。

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石原莞爾

 この本を手に取ったのは全くの偶然で、本を処分したいという友人から貰ってきたたくさんの本の中にあった一冊です。石原莞爾については、「満州事変を画策し、満州国建国を実現した人物」「世界最終戦論、日米による世界戦争を目指し、そのために日本がアジアを主導することを目指した異色の軍人」ということしか知りませんでした。


 この本は、石原莞爾が小説仕立てになっており、1928年に関東軍参謀になって以降、特に1931年から1932年の満州事変のほとんどのページを割いています。石原の人生のハイライトが満州事変から満州国建国にあるのでこれは当然のことと言えましょう。


 私は、デモクラシーを信奉する人間として、そして政治学を勉強した人間として、石原莞爾の行動を容認することはできません。どのような思想や考えを持つのも個人として自由ですが、軍人として武力を持って人間が、国家の掣肘を離れて、独自の考えで行動するのは許されません。また、文中にも出てくるのですが、彼は何かあると「統帥権干犯」を持ち出しますが、自分が行っていることが統帥権干犯、命令不服従であるという意識はありません。

 英雄譚を喜んで読むのは楽しいことだし、大きな構想を持つ人間には魅力を感じます。しかし、その手段が間違っていたということについては批判を加えねばなりません。軍人は政治に興味を持つべきではないし、その点で周囲から見て「そこまでやらなくても」というくらいに自制をしなければならないと考えます。現在でもこれは変わらないと思います。これは親族から数名の帝国軍人将官を出した人間としてもそう思います。

何か大きな発見があるとか、新しい解釈がこの本でなされているのではありません。主要な登場人物である板垣征四郎や本庄繁との会話でストーリーが進められ、その合間にト書きのようにその時の状況やが書かれています。そして、著者の楠木が忖度したのであろう感情(怒りや喜び、諦観など)が書き連ねてあります。その点で、この本は小説と言うことができます。しかし、美文調でもなく、また吉村昭のような徹底的な記録文学という訳でもない、中途半端さもまた感じられてしまいます。


それでも読者は様々な理由で本を読みます。満州事変についてとってりばやく知りたい人、難しい言い回しや無味乾燥な歴史書が苦手な人たちにとっては読みやすいし、小説仕立てになっていることで大まかなところを掴むためには手ごろだと思います。

(終わり)

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