古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

 古村治彦です。

 

 8月上旬に体調を崩し、入院をし、退院をしましたが体調がすぐれず、本ブログの更新が出来ませず、大変申し訳ございません。8月下旬には元のように更新してまいりたいと考えております。今しばらく御猶予をいただきますよう、よろしくお願いいたします。

 

 さて、私の仲間である六城雅敦氏のデビュー作が発売となります。タイトルは『隠された十字架 江戸の数学者たち』というものです。私も名前だけは知っている関孝和をはじめとする和算家(わさんか、江戸時代に生きた日本人数学者たち)は自分たちだけで数学を発達させたのではなく、潜入してきたローマ・カトリック教会の宣教師たちから数学を習っていたのだ、というこれまでの歴史の定説を覆すものです。

kakusaretajuujikaedonosuugakushatachi001
隠された十字架 江戸の数学者たち

 

 ぜひ手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

 

(貼り付けはじめ)

 

推薦文 副島隆彦 

 

 江戸時代に、日本独自の天才数学者たちが出現した。和算家と呼ばれる。

 

 彼らは西洋の数式(アラビア数字とアルファベットを使う)がない時代に、漢数字による算術だけで、現在の高等数学である微分積分(解析学)の初期レベルにまで到達していた。

 

 彼らは一体、どういう人たちだったのか。

 

 今から400年前(1600年代)に、日本人はどのようにして、西洋数学の高度な内容を習得して、生来の、ずば抜けた頭脳で、西洋数学と共振(シンクロナイズ)できたのか。

 

 この本の著者は、ところが、「和算」(日本独自で発達した数学)なるものを認めていない。それでもなお、本の進行上、仕方なく和算(家)というコトバを使っている。

 

 江戸時代の日本人の天才たちは、潜入してきたキリスト教(天主教)のローマ・カトリック教会(就中、イエズス会、耶蘇会)の宣教師(バテレン)たちから、当時世界最高の、天文学(暦づくりにどうしても必要だった)と、数学(代数学と幾何学)を、修得した。天文学から、解析学が生まれたのである。

 

 イエズス会の司教クリストヴァン・フェレイラ(1580~1650)は、ヨーロッパでグレゴリオ暦を、1582年に作ったクラヴィウスの弟子である。グレゴリオ暦を1500年ぶりに、カエサル暦(シーザー暦)から改暦できたことで、プロテスタントに対するカトリックの権威が再び戻った、とまで賞讃された。そのクリストファー・クラヴィウス(1538〜1612)の弟子のフェレイラが、日本宣教師(バテレン、パードレ、ファーザー、神父)としてやって来て、布教した。そして捕まり、拷問に遭って、転向(コンヴァージョン)した(1633年)。この事件は、ヴァチカン(ローマ教会の総本山。ローマ法皇がいる)をひどく驚かせた。

 

 普通の信者たちとは異なり、宣教師(神父)の場合、棄教はない。死ぬだけである。神父には転向(改宗)はないのである。一体、何が起きたのか。ローマ教会は、そのフェレイラの弟子であった、ジュゼッペ・キアラたちに命じて現地の日本へ探索に行かせた。

 

 だが、キアラも捕らえられ、転向した(1643年)。

 

 彼らの決死の日本潜入と、これとまったく同時代に、ガリレオ・ガリレイが、1633年に、2度目の宗教裁判にかけられて、「地球は太陽を周回している」という真実を、主張することを禁圧されて沈黙させられている。

 

 イタリアで先生と弟子の関係であった、当時のヨーロッパでもずばぬけた知能を持っていた、このフェレイラとキアラは、辺境の地の日本で拷問の苦しみに耐えられないで転向した、のではない。真実は、当時、世界で最先端のサイエンス(近代学問)、すなわち、太陽中心説(地動説)の運動法則を知っていた。だから棄教したのだ。もはやローマ・カトリック教会の愚かな教義(ドグマ)など信じていられなかった。そのことを日本という東アジアの地で自覚した。

 

 この新説は、この本の著者、六城雅敦君による創見である。遠藤周作氏の有名な小説『沈黙』(1966年作)が、欧米白人の知識人層の間にもたらした衝撃に対して、これが日本人の側からの最新の回答である。

 

 この本の著者が、到達したこの地点は、これまでの日本の歴史数学者たちの、江戸の和算家たちについての研究の上に、打ち建てられた、大きな成果である。

 

 江戸の和算家の中で、関孝和だけは、今も多くの日本人にその名が知られている。だが関孝和の他に、20人の優れた大数学者たち、がいたのである。この本は、彼らの業績を追いかけてその全体を捉え、網羅している。3839頁の1枚の表にその全体像が示されている。

 

 キリスト教思想の圧倒的な強さに恐れをなし、そこから逃げるために、国を厳しく閉じて鎖国(アイソレーション)政策をしていた江戸時代の260年間に、日本独自に発達した数学があったのである。

 

 和算(江戸期の数学)は、円周率「3・141592……」、三角関数、平方根(ルート)、立方根、対数(ロガリズム)計算で、西洋数学にほとんど負けないだけの正確さを有していた。この5つは、その後の西欧の幾何学(ジオメトリー)と代数(アルジェブラ)の合体の計算法である。

 

 そして級数(無限に続く式と、その繰り返し)において、算木なるものを使って、何千回もの計算を繰り返すことで解(答)を求めた。

 

 日本人の和算家たちがやったことが、現在のコンピュータでやっていることにつながる。現在xの2乗、3乗でも、係数(すなわち  ax2  +  bx  +  c  の式のうちの、a, b, c のこと)を、抜き出して計算する。これは現代の行列演算(マトリックス)である。これを1640年代に、関孝和と建部賢弘は、できたのである。前出したジュゼッペ・キアラから、江戸の茗荷谷の切支丹屋敷の幽閉場で直接、教えを受け、習ったからだ。

 

 この西洋人の大秀才から学習したことで、天文計算(暦作り)が、その後、日本人だけで出来るようになった。

 

 円周率を、建部賢弘はなんと小数点以下42桁まで求めた。このことで、当時の世界基準の数学に追いついていた。このときの級数(シリーズ)の考えが、微分積分(解析学)の土台となっている。

 

 レオンハルト・オイラー(1707~1783)という、スイス人の数学者がいる。彼は解析学の大家だった。解析学の創立者であるライプニッツの、後継ぎのような人だ。

 

 ところが、オイラーは、なんと、無限(インフィニット)を否定した。無限というのは、数式では、私たちが高校で習ったとおり、1、2、3、4…と書いて、あとに「…」と書く。これが無限(大)だ。このあと、私のような文科系人間は、高校生のときに、数学で落ちこぼれた。そして文科系という、自然の普通なコトバの世界だけで生きた。

 

 ところが、無限(大、あるいは小)など無いのだ、とオイラーは、言った。この世界は、どこまでも果てしなく続く数直線ではない。そうではなくて、もう一度、ぐるっと回って、円(球)になる。オイラーはこのようにも考えた。なんと、この考え(思想)は、「ギリシアの思想に戻れ」と言った、フリードリヒ・ニーチェ(1844~1900)の思想と同じだ。これを日本では、「永劫回帰」( return to forever ,  ewige Wiederkunft )という。

 

 これ(この思想)が、何のことか分からず、私たち日本の文科系の知識人は、知ったかぶりで「永劫回帰」と何も分からないまま、有り難がって使ってきた。数学の世界の、あの「サイン、コサイン」の円運動だ。これを、展開すると三角関数になる。これは、今も高校一年生に教えている。この知識が天文学(暦)や、物理学の初歩の物体の動きになっている。このことを、日本の江戸の数学者(和算家、遊歴算家)たちは分かっていた。

 

 本当は、「永劫回帰」(この世は、永遠に繰り返すこと)とは、毎年、必ず植物は花を咲かせて、果実をつくる、ということなのだ。人間もまた、これである。生命は次々と生まれ、死に、そしてまた生まれる。これらの現象を見つめ、大きく、世界、宇宙(アウター・スペイス)を理解しようとするときに、理科系の人間(数学、物理学が分かっている人たち)と文科系の人間の橋渡し(共同理解)ができる。

 

 江戸時代の日本人の、少数だが天才の和算家たちの高い能力があったので、日本は、幕末になって西洋人(ヨーロッパ人)に対抗できた。19世紀の西欧の最先端の数学と物理学をその書物から習得できた。佐久間象山と弟子の吉田松陰と、福澤諭吉も天才だから、20歳で物理学(窮理学。大砲術のための弾道計算と爆薬の調合としての)まで出来た人だ。このために、日本は欧米列強(ヨーロピアン・アンド・アメリカン・パウアズ)に占領、領土の割譲、植民地支配されることなく、そのあとの明治の産業近代化で、一気に遅れを挽回して、きわめて短期間で最先端の水準に達した。

 

 それに較べて、中国は、ヨーロッパ列強による残酷な領土割譲と、支配に屈服した。中国の天才級の知識人たちが、西洋数学と物理学を鋭く摂取しなかったからだ。

 

 この本では、和算家(江戸の数学者)たちが、どのように、世界水準の知識を取り込んだかを、ずーっと説明している。このとき、和算家たち自身が、人間平等主義とヒューマニズムという良い面を内包する人類の先端思想であるキリスト教(隠れキリシタン)に、多くが密かになっている。隠れキリシタンであった和算家たちは、隠された十字架を、しっかりと胸元で握りしめていた人々である。

 

 そして、なんと、激しくキリシタン弾圧をした幕府の高官、隠密でありながら、自らも密かにキリスト教を理解した人物がいた。ここに井上政重という、複雑で重要な人間が登場する。関孝和たち、ごく少数の精鋭の少年たちを、茗荷谷の小日向にある切支丹屋敷で、キアラに引き合わせ、西洋数学を習わせた。本書は、この井上政重に重要な光を当てている(第2章)。

 

 井上筑後守政重は、大目付(大名たちを厳しく取り締まる。幕府の秘密警察長官)よりも、さらに、上の宗門改役(キリシタン禁圧の最高責任者)であった。長崎奉行よりもずっと格が上である。彼は20年間に渡り、江戸と長崎を、半年ごとに往復して、3代将軍家光に、直接、宣教師(バテレン)たちの動きと、当時の世界の、最新の動きを逐一、説明したのである。井上政重は、残虐な宗教弾圧者として映画『沈黙』(2016年、マーティン・スコセッシ監督)では描かれている。このアメリカ製の最近作には、日本製の、篠田正浩監督作の『沈黙』(1971年作)がある。この映画もすばらしい。巨匠マーティン・スコセッシは、ローマ教会の監視と疑念の下で、慎重に、巧妙に、この45年ぶりのリメイク作品を作った。

 

 井上政重は、もっと奥の深い、味わい深い人間であった。そのことを本書は上手に浮かび上がらせた。後の和算家たちの多くが、隠れキリシタンでありながら、公儀隠密(国家情報部員)であった事実に、今の私たちは驚く。

 

 多くの国の、最も優れた国家登用人材は、国家情報部員(国家のスパイ)になる運命にあるのだろう。そして彼らは敵国ともつながる二重スパイになる。

 

      *  *  *

 

 私が、著者と共にこの本の全文を細かく精査した。だから安心して読んでください。著者の六城雅敦君と、私の共著と呼んでいい本である。

 

 普通、出版物に、「監修者」と入れてあると、だいたい有名な著者の名前貸しである。その有名著述家は、その本に対してまったく何もやっていないことが多い。ヒドい場合は、その本を、読んでさえいないことが多い。それがこの30年ぐらいの、売らんかな、の日本の出版業界の「監修者」なるものの実態である。そろそろ、業界が襟を正して、恥を知って、名前貸しだけの悪習をやめるべきである。真面目な読者(本当の本読み)には、すでにバレている。

 

  2019年8月5日

副島隆彦 

 

=====

 

『隠された十字架 江戸の数学者たち』◆ 目 次

 

推薦文 副島隆彦

 

第1章 本当は伴天連が教えた江戸の「和算」

 

中国数学から西洋数学への乗り換え

「西洋神術」としての江戸時代の数学

「数」に目覚めて世界の広さを知る

江戸時代は武士も庶民も計算に熱中した

そろばんが普及したのは江戸時代中期以降

割り算ができることが武士エリートの入り口

武士に必要な素養は「六芸」、特に「数」であった

秘密裏に匿われていた宣教師がもたらした「数学」

隠れキリシタンの「算聖」関孝和と弟子の建部賢弘

鎖国下でも続いていた〝西洋神術〟への信仰と信頼

暦の発布は国家の実権を知らしめること

 

第2章 和算を築いた男たち ―― ジュゼッペ・キアラと関孝和

 

初めて西欧と「知」で渡り合った井上政重

三代将軍家光の政権を担ってきたブレーン

西洋の軍事技術、科学・医学に精通していた〝百学の巨人〟井上政重

井上政重は徳川家直轄の隠密(忍者)集団の棟梁

外交・貿易での暦問題

南北朝時代に暦では明帝国の冊封国に自動的になっていた!

天文学と物理学から発展した数学という〝記述言語〟

数学は忍者必須の忍術でもある

数学にはイスラム系とキリスト教系がある

プロテスタントへのカトリックの反撃の結果が日本布教へとつながった

織田信長殺しのキリシタン大名のネットワーク

井上政重による弾圧の実体

井上政重の生い立ち

なぜフェレイラに続いてキアラは棄教したのか?

なぜ井上政重が重用されたのか?

幾何学そして平方根の計算から和算は始まる

関孝和が挑戦し、建部賢弘が完成させた円周率と三角関数

謎の和算家、高原吉種の名に秘められた暗号

江戸時代から明治初期に活躍した和算家たちの系統グループ

 

第3章 和算家たちの系譜とグループ

 

京都・慶長天主堂グループ

切支丹屋敷グループ

新井白石 徳川家宣の侍講

井上政重に続く隠れた系統がある(箕作一族)

大坂グループ

天文学で功績を挙げた高橋至時と伊能忠敬

幕末ではエリート層の対立へ

大砲が輸入されたとしても使いこなせないという問題

 

第4章 日本近代化の原動力となった江戸の数学者たち

 

蘭学とは当時の「ヨーロッパ最先端の神学」である

坂本龍馬は土佐藩主の命で軍艦操練所に派遣されていた

適塾と蕃書調所で学んだ数学者・大村益次郎

蕃書調所のその後

榎本武揚が開陽丸で運び出したのは幕府の数学蔵書

天才を生み出せない官僚機構への失望

 

第5章 数学が神となる時代へ

 

「庶民の和算」と「科学としての和算」

学問体系は西洋的自然観から生まれた

数学は発見されたのか? 発明されたのか? という大問題

経済学・会計学も数学的関係性を抜き出した自然科学だ

歴史学者が見通す未来と直面する難題

金儲けの精神はユダヤ思想のratio(ラチオ)である

色即是空、空即是色とは

時間も距離も重さもない世界が無の世界

いまの数学世界を俯瞰する

 

あとがき

参考文献

 

=====

 

あとがき

 

 私の名字、六城は珍しい名前である。だが古い由緒はない。

 

 家系を辿ると仙台藩(伊達家家臣)に行き着く。私の曾祖父は下級藩士(足軽頭)の家に生まれた。江戸時代までは石川という姓を名乗っていたそうである。仙台藩は慶応4(1868)年の戊辰戦争に際して、幕府側として薩長と戦った。

 

 明治維新後は、仙台藩は解体され、元藩士は逆賊という烙印で、ちりぢりとなり、再就職はたいへん難儀した。そのため、元仙台藩士たちは、離ればなれになっていても、連絡を絶やさずに協力し合ったそうだ。私のご先祖も、混乱した明治初期に、そうやって生き抜いた。

 

 仙台藩の13代藩主、伊達慶邦が明治7(1874)年に亡くなる。その際に、「元藩士の誇りとして仙台藩への忠義を忘れまじ」、という決意で、ご先祖が名字を六城と改名した。

 

 藩主が亡くなると、すぐに埋葬するのではなく、青葉城下の小さな廟(祠)の中で暫くは塩漬けされて安置されたそうだ。家臣や城下の町民が、藩主を偲ぶためだ。この廟があった場所が、六城という地名である。出自を言わなくても、仙台藩士ならわかる符牒(暗号)のようなものだ。

 

 明治元年生まれの曾祖父は、仙台から福島、千葉と流浪し、土木水道工事の小役人として暮らした。計算が得意で、土木測量の技術を身につけていたからだ。その息子(祖父、明治25年生まれ)も仙台藩の伝手で陸軍仙台幼年学校に入り、陸軍士官の道を歩むこととなった。

 

 祖父は、仙台藩に連なる家系の石原莞爾と同級生であった。本来なら出世コースのはずなのだが、祖父が言うには、命令するのも、されるのも大嫌いだった。軍人として砲隊を率いて行軍演習をするも、さっさと終わらせて、祖父の部隊は料亭で宴会をしたという。陸軍は、このような兵隊にまったく不向きな祖父を、実働部隊から外した。

 

 祖父は東京帝国大学で砲弾の弾道計算を学んだ。陸軍は祖父を数学研究のため、大正15年に、ドイツのカールスルーエに留学させた。帰国後、千葉の佐倉駐屯所の砲兵隊長を最後に軍を大戦前に定年退職(40歳)し、その後は軍人恩給で暮らした。

 

 大戦後は恩給もなくなり、東京の私立大学の付属高校教員となった。軍人上がりながら、生徒には人気があったらしく、教え子たちで家はいつもにぎやかだった。そして静かに生涯を終えた。

 

 いや、実はまったくそうではない。

 

 明るくやさしい祖父には、ドイツ留学中に知り合った愛人がいて、祖母や叔父たちには大騒動であったと聞いている。森鴎外の『舞姫』の話と同じだ。私は、国語教科書の「舞姫」が祖父の話かと思いこんだほどだ。(森鴎外と祖父は32歳違うので、ありえない)

 

 かつて日本では、地位が高い男子は、妾を持つのは当然だ、という風潮があった。余裕があれば、貧しい婦女を支えるのが美徳とされた。ドイツから、わざわざ日本にまで押しかけてきた女性も、そのうちの一人だ。話は『舞姫』と似たり寄ったりの結末で終わる。

 

 もっとも祖母や叔父たちは妾たちとの狭間で、けっこう気苦労したらしい。明治生まれの祖父は妾を囲うことを慈善行為だと考えていた。だが、西洋のキリスト教的な思想が浸透する大正から昭和の時代、愛されたことは権利であり、契約だと女性は考えるようになった。

 

 一方、祖母の家系を遡ると、どうやら支倉常長の血筋になる。支倉常長は伊達政宗の親書を持って、メキシコを経由してローマへ行った人物である。帰国のときは禁教令が発令されていて、キリシタンの取り締まりで支倉家は一時断絶した。支倉常長の嫡男は皆処刑されたが、政宗の温情で女子は寺に預けられたという。その子孫ではないかということだ。だから同じ明治の人である祖母は、隠れキリシタンの血だからか、妾の制度を心底嫌がっていた。このような男女の価値観の対立は、いまでもある。

 

 和算(江戸時代の数学)の頃は、キリスト教思想は、今の私たちが思う以上に異質であった。小説『沈黙』の中で、捕らえられたロドリゴとフェレイラが会った場面での会話。

 

「知ったことはただこの国にはお前や私たちの宗教は所詮、根をおろさぬということだけだ」

「根をおろさぬのではありませぬ」司教は首をふって大声で叫んだ。「根が切りとられたのです」

だがフェレイラは司祭の大声に顔さえあげず眼を伏せたきり、意志も感情もない人形のように、

「この国は沼地だ。やがてお前にもわかるだろうな。この国は考えていたより、もっと怖ろしい沼地だった。どんな苗もその沼地に植えられれば、根が腐りはじめる。葉が黄ばみ枯れていく。我々はこの沼地に基督教という苗を植えてしまった」

 

(中略)

 

「我々の神を屈折させ変化させ、そして別のものを……」司祭はフェレイラの言葉を嚙みしめるように繰りかえした。「それもやはり我々のデウスではありませんか」

 

「違う。基督教の神は日本人の心情のなかで、いつか神としての実体を失っていった」

 

「何をあなたは言う」

 

(遠藤周作『沈黙』新潮文庫、1966年、231、234頁)

 

 関孝和ら近代数学者が日本に登場してから400年、明治維新から150年が経った。

 

 イエズス会宣教師たちから学んだ和算家たち、さらにその書から学んだ多くの和算家たちは、ヨーロッパの数学者と同じように、最先端の西洋数学に神のすがたをおぼろげに感じただろう。

 

 だが、近代化( modernization )により、数学は唯物的に変質した。

 

 コンピュータネットワーク社会では、さも必然の叡智かのように、われわれ人間を差し置いて、コンピュータ内のロジック、アルゴリズムが偉そうに振る舞いだしている。SF映画『1984』『ターミネーター』『マトリックス』は決して空想物語ではない。

 

 だからこそ、学問を、数学を、我々がしっかり見据える必要があるのだ。

 

 ローマ・カトリック教会と、プロテスタント(16世紀の宗教改革から始まる)の勢力闘争は、互いの「科学」の闘いになった。そして数学は双方にとって最良の武器となった。

 

 今後現れるであろうビック・ブラザー(『1984』の闇の支配者)と闘えるのも、やはり数学の力だけなのだ。

 

  2019年8月8日

 六城雅敦 

 

      *  *  *

【謝辞】

 

 天文学者になりたかった。スペースシャトルが飛び立ち、惑星探査機ボイジャーが木星の巨大な赤色斑点を撮影していた頃だ。天文学はこの世で一番かっこいい研究だと憧れた。ただ、いくら神秘を見極めたいと思っていても、毎晩空を見上げ続ける熱意は、やがて薄れていった。天空に輝く星も月も、昨日と何も変わらないのだから。

 

 辛抱強く、天体観測をする人は、古代からいる。江戸時代にも天文学者(天文博士、暦師)はいた。その熱意( enthusiasm )の根源を、今さらだが私も共有してみたい。そんな興味が本書を書くきっかけだ。

 

 監修の副島隆彦氏と、担当編集者の小笠原豊樹氏には深く感謝する。このプロフェッショナルの二人がいなかったら、私が書き散らかしただけの文章を、ここまでまとめることはできなかっただろう。

 

 副島隆彦氏の師は統計数学者の小室直樹氏である。小室直樹氏は、いち早くソビエト連邦の崩壊(1991年)を予測した経済学者としても有名だ。副島隆彦氏は、私の大嫌いな言葉「理系/文系」をよく口にする。当初仮題として「理系」がタイトルに入っていた。ところが文系代表、といわんばかりの副島隆彦氏の理解は、なにを仰る、あなたこそ理系だろうが、と思うのだ。古代数学から現代物理学まで、体系での理解は小室直樹からしっかり引き継がれている。

 

 副島、小笠原の両氏はともに歴史に詳しく、時代背景のアドバイスは有難かった。数学と西洋史、さらに時代背景のつながりを深く理解できた。この文系(ああ、嫌な言葉だ)のお二人がホントは理系なのではないか。もし理系と自称する人がいるとすれば、自惚れているか、思慮の浅い人だと思う。

 

 理系というわりに、会社に在籍し、与えられた仕事で汲々としているのが、自称理系の現実だ。私も毎日が精一杯であるが、自分が学び経験したこと、得た知識は積極的に発信すべきだと考える。なぜなら、考えない葦は存在しないことと同じだからだ。それが「 be 」という動詞の本質ではないのだろうか。だから私の足りない脳力で数学とはと、ずっと考えてきた。

 

 副島隆彦氏は一流の書く能力だけではなく、他人の脳までも採掘(マイニング)できる特殊な能力があるようだ。私の脳を使って、数学という学問の成り立ちを、「文系」にもわかるように説明する。そんなことができるのか?

 

 果たしてできたのか。本書は監修者・副島隆彦氏の名に羞じない内容となったと信じる。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

価格:1,400円
(2018/3/9 10:43時点)
感想(0件)

ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側[本/雑誌] (単行本・ムック) / 古村治彦/著

価格:1,836円
(2018/4/13 10:12時点)
感想(0件)


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 

 2019年7月21日に参議院選挙の投開票が行われました。開票は22日になっても続けられましたが、大勢は21日の段階で判明しました。

 

 今回は、自民党と公明党の与党は選挙の対象となった124議席のうち71議席を獲得し、過半数を超えましたが、改選議席からは6議席を減らしました。公明党は改選議席数を維持しましたので、自民党が減らしたということになります。新潟、山形、秋田、岩手、宮城といった本州北部の各県で野党勢力が勝利しました。これらの地域は米どころですから、私はツイッター上で、これは「rice rebellion(お米反乱・反抗)」と書きました。吉本興業の社長さんと同じで全く受けませんでしたが。

 

 ヨーロッパでは労働者と農業従事者が連帯する「レッド・グリーン同盟(Red Green Alliance)」という考え方があり、政治の場面で実現することもありました。日本では、戦後の一時期、戦前の農民運動の流れから農民組合が左傾化していた時期もありましたが、農協(農業協同組合)は自民党の大きな支持基盤でした。労働組合は、官公庁の労組自治労や日教組を中心とする総評が日本社会党、民間企業の労組を中心とする同盟が民社党を支持していました。

 

 戦後すぐの人口や就労者数を考えると、農業地帯に基盤を置くというのは当然のことでした。戦後すぐの日本の就労者数に占める農業従事者の割合は50%程度でした。その後、重工業を中心とする輸出型企業の成長による高度経済成長時代に、地方から多くの若者が都市部で就労するようになり、農業従事者の割合は低下していきました。

 

 それでもいわゆる一票の格差問題ということがあるように、地方からの議員選出数が人口に比べて多い、という状態も続き、自民党は地方を基盤としてきました。自民党は、食糧管理制度を維持しての米価の高値維持や公共事業を通じて、高度経済成長の果実を地方に行きわたらせる政策を実施ました。これを補償型政治(Compensation Politics)と言います。その見返りとして、自民党は地方で勝利し、安定した基盤を築くことが出来ました。

 

 しかし、平成に入り、経済が停滞する中で、農業や公共事業、補償型政治は衰退していきます。そうした中で、補償型政治を代表する「田中派・竹下派」の流れをぶち壊す、小泉政治が出てきて、地方は息の根を止められました。旧民主党に参加した小沢一郎代議士が、農家の個別補償制度を主張し、民主党政権時代に実施しましたが、これは小沢代議士が田中角栄元首相の流れにある人であることを示しています。

 

 それでも地方ではいまだに自民党支持が強固な訳ですが、今回地方で自民党に対して異議申し立てが起きたことは注目されます。それでも自民党は小泉・安倍・麻生路線のアメリカ型システムによる改革(破壊)政策を実施し、都市部に住む、中間層(安定した雇用と比較的高い給与が保障されている)の支持を得ることに成功しています。

 

 立憲民主党、国民民主党では、立民が議席を増やし、国民民主は微減ということになりました。複数区での候補者調整がもう少しできていれば、当選できたかもしれないという惜敗した候補者たちが出たのは残念なことでした。これは他の野党でもあったことで、次の選挙での野党共闘の際の教訓にすべきことです。たとえば、東京都選挙区、立民2名、国民民主1名が立候補しました。立民の山岸一生氏が惜敗しました。大阪府選挙区では、立民、共産、国民民主の候補者が共に落選ということになりました。ここで何とかならなかったのかという思いに駆られます。

 

 立民の枝野幸男代表は立民の野党第一党の地位を確固、不動のものとすることに終始し、野党共闘に後ろ向きだったという批判も起きています。国民民主とは感情的な行き違いもある、共産党とも相容れないということも言われました。全てある部分では本当のことなんでしょう。しかし、それでも全国の一人区のうち、10で野党側が勝利を収めることが出来たというところを考え、次はもっとうまくやってください、と希望するばかりです。立民をあしざまに攻撃することは簡単ですが、それではもっと大きな敵を見逃すことになります。

 

 共産党は微減でしたが、野党共闘にもより前向きで、今回自民党の議席減に貢献したと言えると思います。社民党は政党要件を喪失するのではないかという危機感の中、得票率2%を超え、吉田忠智前党首が国政復帰を果たしました。低投票率の中、前回よりも少しですが、比例での得票数を伸ばしたというのは、改憲に反対する人たちが投票したということなのだろうと思います。愚直さというものに時に神様は微笑むものなのでしょう。

 

 れいわ新選組とNHKから国民を守る党がそれぞれ2議席、1議席を獲得し、政党要件を満たしました。これが今回の選挙のハイライトで、自民党の勝ち負けということすら、どっかに追いやられてしまうほどでした。

 

 れいわ新選組は4月に旗揚げされました。この時、私は「大丈夫かな、山本太郎議員は東京都選挙区から出馬したほうがいいんじゃないか」と考えていました。先を見る目がないことは、2016年のアメリカ大統領選挙の結果を外したことでも知られていますので、今更驚く人はいないと思いますが、れいわ新選組に対する支持の盛り上がりは予想を超えるものでした。消費税廃止、財源については原題貨幣理論(MMTModern Monetary Theory)という新鮮な訴えで、現在、生活苦に陥っている若者層(20代から40代まで)の支持を得ました。

 

 れいわ新選組の台頭は、欧米で起きている流れに連なるものです。イギリス労働党では、ジェレミー・コービンが党首となり躍進、アメリカ民主党では、2016年大統領選挙でヒラリー・クリントンを追い詰めたバーニー・サンダースの高い人気、突如すい星のように登場したアレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)連邦下院議員の活躍といったことに連なるものです。

 

 冷戦終結、ソ連崩壊以降、リベラルや進歩主義派といった人々の旗色は悪く、市場原理を基盤とする新自由主義が世界を席巻しました。しかし、新自由主義(むき出しの資本主義)による矛盾もまた同時に世界を覆いました。日本も例外ではありません。格差(inequality)が拡大する中で、新自由主義への疑問と異議申し立てが起きました。

 

 その時に、ずっとぶれずに進歩主義的考えを堅持していたコービンやサンダースを人々が「発見」しました。そして、欧米で大きな流れとなっています。既存のリベラルはまたエスタブッシュメントなのだという考えが広がり、人々の怒りが燃え上がりました。これが現在のポピュリズムの正体です。ポピュリズムは右と左に同時に出現しました。アメリカでは、ドナルド・トランプ大統領の出現とAOCの出現は右と左で全く違うように見えますが、同根の現象なのです。ポピュリズムは間欠泉のようなものだと思います。あちこちからお湯が吹きあがりますが、同じお湯です。怒りのお湯です。今回、N国党が議席を獲得しました。こちらもポピュリズムの右側の吹き上がりということになります。

 

 エスタブリッシュメント批判、エリート批判という点でとらえるならば、こうした動きは立民に対する批判ということも言えます。興味深かったのは、立民のブレーンとされる大学教授や知識人たちが、選挙戦中盤以降、れいわ新選組の批判を始めたことです。ポピュリズムは危険だ、山本太郎は危険だ、という言葉が飛び交いました。この構図は現在のアメリカ民主党内で起きているエスタブリッシュメント・主流派(ヒラリー派)と進歩主義派(サンダースやAOC)の内部対立と同じだと私は考えます。

 

 立民の東京都選挙区に立候補した山岸一生氏の最初の選挙ポスターが象徴的だと思います。そこには「元朝日新聞記者」「筑駒中、高、東大法学部卒」としか書かれていませんでした。このポスターは選挙戦が進むにつれて印刷し直され、貼り直されたそうですが、これで「ほー、素晴らしい、是非投票しよう」となると考え、それを「お前はアホか」と止める人がいなかった、結局時間と資源の無駄遣いをした、ということは象徴的です。

 

 生活者の目線はそこにありません。そして、「なんだよ、お前も結局はエリートで、俺たちを抑圧する側出身の奴じゃないか」ということになります。「山岸さんは自分から握手を求めに行くような気さくな人ですよ」ということでしたが、そんなことは当たり前じゃないでしょうか。選挙運動中に有権者が握手をしに来てくれるのを待っている候補者がどこにいるでしょうか。人気アイドルの握手会じゃあるまいし。

 

 立民は「令和デモクラシー」という大正デモクラシーになぞらえたスローガンを掲げましたが、どれほどの人たちの記憶に残っているでしょうか。立憲主義を透明に入れていることは素晴らしいし、これからも党勢を拡大していって欲しいと思いますが、「上から目線」という点は改善されるべきだと思います。

 

 自公維新で3分の2以下になりましたが、野党側の動き次第で、改憲が進んでしまう可能性が高い、微妙な議席配分となっています。是非野党勢力には小異を捨てて大同につく、「国民の生活が第一」で進んでいっていただきたいと思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

参院選当選者確定…与党、改選議席から6減らす

 

読売新聞 2019年7月22日

https://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/20190722-OYT1T50215/

 

 21日に投票が行われた第25回参院選は22日午前、当選者が全て確定した。

 

 自民、公明の与党は改選定数124の過半数(63)を超える計71議席を獲得したが、改選議席(77)からは6減らした。自民党が確保した57議席は、2016年参院選の56議席(追加公認含む)を上回ったものの、圧勝した13年の65議席には及ばなかった。宮城、滋賀、大分など8選挙区では、現職が落選した。公明党は選挙区選に擁立した7人全員が当選し、比例選の7議席を合わせると、党としての過去最多に並ぶ14議席を獲得した。

 

 立憲民主党は比例選で自民党に次ぐ8議席を獲得し、改選9議席から17議席に伸ばした。改選8議席の国民民主党は2減の6議席にとどまった。旧民進党を源とする立民、国民両党の議席を合わせると計23議席で、16年に民進党が獲得した32議席を下回った。両党が1人区で支援した無所属の野党統一候補は8人が当選した。

 

 共産党は改選8議席から1減らした。日本維新の会は関東でも議席を獲得し、10議席に伸長した。社民党は改選1議席を死守した。諸派のれいわ新選組は2議席、NHKから国民を守る党は1議席をそれぞれ比例選で獲得した。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

価格:1,400円
(2018/3/9 10:43時点)
感想(0件)

ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側[本/雑誌] (単行本・ムック) / 古村治彦/著

価格:1,836円
(2018/4/13 10:12時点)
感想(0件)


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 

 アメリカ大統領選挙民主党予備選挙の候補者たちによる2回目の討論会が2019年7月30日、31日にミシガン州デトロイトで開催されます。主催は民主党全国委員会で、今回の討論会の会場設営や中継はCNNが担当します。

 

 CNNでは20名の候補者を3つのグループに分けて、それぞれ抽選で登壇者を振り分けました。最初のグループは支持率が下位の10名で、それぞれ5名ずつが振り分けられました。次のグループは支持率が中位のグループ6名で、3名ずつが振り分けられました。最後のグループは支持率上位の4名、ジョー・バイデン前副大統領、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)、カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)が2名ずつ振り分けられました。

 

 下の図で言うと、1回目の討論会は、支持率上位4名のうち、サンダースとウォーレンが、中位6名のうち、インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジ、ビトー・オローク前連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)、エイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)がそれぞれ選ばれました。2回目の討論会には、支持率上位4名からバイデンとハリス、中位からはコーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)、実業家のアンドリュー・ヤン、フリアン・カストロ前住宅・都市開発長官が選ばれました。

2019democraticpresidentialdebatesecondlineups001

 

 今回の討論会も参加条件は1回目と同じで、(1)決められた期間内に指定された機関(大学や新聞社など)が実施した世論調査で支持率1%を3回以上記録する、(2)6万5000名以上の献金者、もしくは1つの州で200名上の献金者を20州以上記録すること、の(1)(2)のどちらかを満たすことです。

 

 次回、ABCとスペイン語放送ウニヴィジョンが2019年9月12日と13日にテキサス州ヒューストンから中継する3回目の討論会は参加基準がグンと厳しくなります。(1)6月28日から8月28日までに指定された機関が実施した世論調査で支持率2%以上を4回以上記録すること、(2)13万名以上の献金者、もしくは1つの州で400名上の献金者を20州以上記録すること、この(1)(2)の両方を満たさねばなりません。現在のところ、この2つの条件を満たしているのは、バイデン、サンダース、ハリス、ウォーレン、ピート・ブティジェッジ、ビトー・オロークの6名です。まだ40日ほど残っていますが、このハードルを越えるのは残り4名ほどではないかと思います。支持率2%を記録することがなかなか大変なことで、テレビで報道される機会が多い連邦上院議員たちでも苦戦しています。支持率と献金額の集まり具合は比例するでしょうから、こちらの面でも苦しいということになります。

 

 そうなると、今回の討論会でイチかバチか、目立ってやろう、という候補者も出てくるでしょう。前回、カマラ・ハリスがジョー・バイデンを攻撃して支持率を上昇させたということもありますから、虎視眈々とその機会を狙ってくるでしょう。支持率上位者は致命傷を浴びないようにうまく受け流して、相手に巻き込まれないようにするという戦術を採用することになるでしょう。

 

 前回と同じく、バイデンとハリスが同じ回に登壇することになりました。ここでどのような議論が展開されるか注目されます。

 

(貼り付けはじめ)

 

バイデンとハリスが民主党討論会の第二夜に登場(Biden, Harris set for second Democratic debate showdown

 

ジュリア・マンチェスター筆

2019年7月18日

『ザ・ヒル』師

https://thehill.com/homenews/campaign/453838-biden-harris-set-for-second-democratic-debate-showdown?fbclid=IwAR0OVDhJMsZPK35qk9B3Fo2acLbK9moOGe2v29GGJfZ5UxwWgCNuassxomI

 

ジョー・バイデン前副大統領は、2019年7月31日にデトロイトで開催される民主党主催の討論会の第2夜で再びカマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)と対峙することになった。

 

一方、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は7月30日の第1夜にエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)と共に登壇することになった。

 

コーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)は2019年7月31日に討論会に登壇する。一緒に登場するのは、前住宅・都市開発長官フリアン・カストロ、アンドリュー・ヤン、マイケル・ベネット連邦上院議員(コロラド州選出、民主党)とカーステン・ギリブランド連邦上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)、ワシントン州知事ジェイ・インスリー、トゥルシー・ギャバ―ド連邦下院議員(ハワイ州選出、民主党)だ。

 

インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジ(民主党)は、エイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)、ビトー・オローク前連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)と共に7月30日に登壇する。一緒に登壇するのは、ティム・ライアン連邦下院議員(オハイオ州選出、民主党)、モンタナ州知事スティーヴ・ブロック(民主党)、前コロラド州知事ジョン・ヒッケンルーパー(民主党)、作家のマリアンヌ・ウィリアムソンだ。

 

支持率が高い候補者たちが壇上の真ん中に立つことになる。

 

第1夜では、ウォーレンとサンダースが真ん中に立ち、第2夜では、ハリスとバイデンが真ん中に立つ。

 

注目されるのはバイデンとハリスの再戦だ。カリフォルニア州選出の連邦上院議員ハリスは1回目の討論会でバイデンを激しく攻撃した。バイデンの公民権に関する連邦上院議員としての採決での投票記録、特に連邦バス通学法の可決の際の投票について批判した。

 

ハリスは1回目の討論会でバイデンを批判した後、支持率と資金集めで上昇を経験した。

 

バイデンは、1回目の討論会の後、ハリスが1回目の討論会で行ったような方法で自分に対峙することはないだろうと考えていると発言した。

 

ブッカーは、バイデンの人種分離主義者の連邦上院議員たちと協力したという発言を批判している。彼は2回目の討論会でバイデンと共に登壇する。そうなれば1回目の時よりも激しい批判に晒される可能性がある。

 

今回の討論会では進歩主義的なサンダースとウォーレンが初めて直接顔を合わせることになり注目だ。

 

ここ数か月支持率を上昇させているウォーレンは、進歩主義的政策についての詳細な計画を次々と発表している。

 

サンダースは、進歩主義的な政策に関してウォーレンと多くの共通点を持つ。サンダースの支持率は頭打ち、もしくは下落している。

 

サンダース、ウォーレンの両連邦上院議員はお互いの政策の相違点を探し、自分の政策を売り込むことになるだろう。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

価格:1,400円
(2018/3/9 10:43時点)
感想(0件)

ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側[本/雑誌] (単行本・ムック) / 古村治彦/著

価格:1,836円
(2018/4/13 10:12時点)
感想(0件)





このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ