古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。




アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




 古村治彦です。


 今回は、鹿児島県第二区の補選について書きたいと思います。

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鹿児島県第二区(②のところ)

 徳田毅氏の衆議院議員辞職に伴う鹿児島県第二区補欠選挙の投開票が2014年4月27日(告示日:2014年4月15日)に行われます。現在のところ、立候補を表明しているのは、

 

・金子万寿夫氏(67歳、自民党、県議)

・打越明司氏(55歳、民主党を離党して無所属、元県議、前衆議院議員)

・三島照氏(72歳、共産党)、

・松澤力氏(31歳、政治団体・幸福実現党)

・有川美子氏(42歳、政治団体・新党ひとりひとり)

・碩利昭氏氏(46歳、無所属)

 

の各氏です。金子氏はベテラン県議で、国政初挑戦、打越氏は2009年の政権交代時に徳田毅氏に選挙区で敗れましたが、比例復活し、代議士を一期務めています。松下政経塾では、野田佳彦前首相の一期下の二期生で、こちらも長く自民党所属の県議を務めてきました。三島氏は鹿児島二区で再挑戦、松澤氏は昨年の参議院議員選挙に続いて国政再挑戦となります。有川、碩両氏は初挑戦です。

 

 鹿児島県第二区は鹿児島市谷山地区から指宿市、南九州市という薩摩半島南部(錦江湾より)から奄美諸島(大島郡)を含む、地理的にも社会、文化、経済的にも多様性に富んだ選挙区です。昔の奄美群島区では、保岡興治氏と徳田虎雄氏との間に「保徳戦争」と呼ばれる程の厳しい選挙戦が繰り返されたことを覚えておられる方も多いでしょう。

 

 小選挙区比例代表並立制が導入されて以降、保岡氏が鹿児島市を中心とする鹿児島県第一区を地盤とし、徳田家が鹿児島県第二区を地盤とするという棲み分けができました。しかし、今回、徳田氏が公職選挙法違反で辞任となりました。

 

 金子氏は長く奄美地区選出の県議を務め、鹿児島県議会の議長を務めた人物です。また、保岡氏系の人脈であり、徳田氏からの資金援助を受けていなかったということもあって、自民党の公認を得ることができました。公明党も推薦ということになりました。鹿児島第一区、第二区を保岡氏と保岡氏系の人脈が抑えたということになり、保岡氏(もう引退が近いのではないかと噂もありますが)にとっては僥倖ということになりました。

 

 打越氏は長く自民党県議を務めた関係で、県議仲間の金子氏とは、自民党離党までは親友関係、それ以降も良好な関係を保っていたということですが、今回、議席を争うことになりました。自民党県議のままであれば、もしかしたら今回の補選で自民党公認を得られたのかもしれませんが、人生は何が起きるか分かりません。松下政経塾で一期先輩の野田氏を助けたいという大義名分で国政に挑戦していましたが、徳田氏に跳ね返されてきました。今回は、野党共闘を目指すということで、民主党を離党し、無所属となりました。自民、公明、共産以外の既存の野党が支援しやすいということになりましたが、実際には、民主、社民、生活の党が中心で動いて、日本維新の会やみんなの党、結の党がどれほど活動するかは未知数です。

 

 今回の補選の結果予想ですが、恐らく、99%の確率で自民党の金子氏が勝利するでしょう。鹿児島県のウェブサイトに掲載されている、直近の2012年県知事選挙、2012年の衆議院議員選挙、2013年の参議院議員選挙の結果から見ても、金子氏が2位に数万票の差をつけて勝利するのは動かないと思います。

 

※鹿児島県のウェブサイトのアドレスは以下の通りです↓

http://www.pref.kagoshima.jp/kensei/senkyo/senkyokekka/index.html

 

 これまでの選挙結果から見て、打越氏が何とか勝負できるのは、自分の地元である指宿市だけで(2012年では、打越氏が10729票、徳田氏が10536票で打越氏が勝利)、接戦となりそうなのは、南九州市(打越氏:3108票;徳田氏:3419票で僅差)と鹿児島市谷山地区(打越氏:22732票;徳田氏:37707票で善戦)だけです。奄美市と大島郡となると元々弱い上(票差にすれば少ないが徳田氏に5倍から9倍近く負けている)に、自民党の金子氏が奄美出身ですから、勝負にならないでしょう。

 

 有権者数を見てみると、薩摩半島にある自治体の合計が奄美地区にある自治体よりも多いことが分かります。ですから、打越氏に勝機があるとすれば、薩摩半島地区で金子氏に大差をつけて、奄美での劣勢(恐らく3万票以上の差が付きます)を挽回して接戦に持ち込むということしかありません。しかし、薩摩半島地区の自民党県議は金子氏支援ですから、大変厳しい状況です。打越氏が持っている基礎票が4万から5万の間といことも分かっていますから、これに如何に積み上げていくかということになります。

 

 しかし、打越氏にとっての頭痛の種となりそうな候補者が出てきました。それは、新党ひとりひとりの山本太郎参議院議員が擁立した有川美子氏です。有川氏は、反原発運動で盛んに活動されている方です。鹿児島県第二区には原発はありませんが、隣の第三区には、九州電力川内原子力発電所があります。川内原発の再稼働を巡って今年の夏の県議会で議論が行われるということですから、薩摩半島を中心に反原発を訴えていくと、打越氏にとっては票を食われる格好になります。そうなると、必然的に金子氏が有利になっていくということになります。有川氏は祖父母が奄美大島のご出身ということで、それをアピールしていく意図があると思いますが、恐らく奄美地区での多くの得票を望めないでしょう。そうなると、薩摩半島南部地区での戦いということになりますが、そこで反自民投票の食い合いということになりそうです。

 

 自民党は安倍晋三総裁、石破茂幹事長、野田聖子総務会長が応援に入るということになっており、奄美振興で予算措置、補助金を約束すれば、農業関係が多い鹿児島県第二区の有権者にとっては大きなアピールとなります。

 

 鹿児島の補選は消費税増税後の初めての国政選挙であり、注目を集めると思いますが、相も変わらずの選挙結果になると思います。前回の衆院選では徳田氏が打越氏をダブルスコア以上の大差をつけて破りました。それが10:7くらいになっていれば、これは、自民党に対する批判が大きくなっていると見ることができると思います。

 

 ですから、この補選では、金子氏の得票数と得票の割合、そして、打越氏と有川氏の得票数と得票の割合を注目していくべきだと思います。自民党としては、ここで前回並みの数字を出して、「自民党は信任されている」という正当化の論拠にしたいところだと思います。

 

(終わり)



 


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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




 古村治彦です。

 

 今回は、アメリカのネオコン派の論客であるロバート・ケーガン(Robert Kagan)の論稿をご紹介します。一言で言って、内容はありませんが、「気合」だけは伝わってきます。


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ロバート・ケーガン

 そして、この論稿を読んでいると、既視感を覚えます。「どこかで読んだかな」と。そのように思うのは、日本の「保守派」「リアリスト」と“自称”する人々の論稿にそっくりだからです。非現実的な「気合」「願望」だけで外交政策を語ることの危険をこの論稿から汲み取っていただければと思います。

 

 ちなみに、ロバート・ケーガンの奥さんが、最近のウクライナ関連で出てきた、ヴィクトリア・ヌーランド(Victoria Nuland)・ヨーロッパ・ユーラシア担当米国務次官補(Assistant Secretary of State for European and Eurasian Affairs)です。ご夫婦としての単位で見れば、夫唱婦随で結構なことだと思いますが、世界にとっては困ったご夫婦と言えましょう。

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ヴィクトリア・ヌーランド 

 

 ネオコンの考えるあるべき世界の姿、外交政策については、私が訳しました、ロバート・ケーガンの最新刊『アメリカが作り上げた"素晴らしき"今の世界』をお読みいただければと思います。よろしくお願いいたします。


 


 

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オバマ大統領の外交政策のパラドックス(President Obama’s foreign policy paradox

 

ロバート・ケーガン筆

2014年3月27日

ワシントン・ポスト紙

http://www.washingtonpost.com/opinions/president-obamas-foreign-policy-paradox/2014/03/26/c5284c2e-b4f8-11e3-8cb6-284052554d74_story.html

 

※ロバート・ケーガン:ブルッキングス研究所上級研究員。ワシントン・ポスト紙に月に1回外交問題についてコラムを執筆している。

 

オバマ大統領の外交政策を好ましく思っている人もいるだろうし、宋ではない人もいるだろう。外交政策の前提となっているのは、アメリカ国民が望む外交政策を政権は行っているというものだ。アメリカ国民の大多数は、シリアにおいてアメリカが何か実効的な役割を果たすことに反対している。また、中東への関与からも徐々に撤退すべきだと考えている。「波のように続く戦争」を止めたいと熱望している。また、「アメリカ国内の国家建設」に集中したいと望んでいる。Until now, the president generally has catered to and encouraged this public mood, so one presumes that he has succeeded, if nothing else, in gaining the public’s approval.

 

しかし、驚くべきことに、オバマ大統領の支持率は下がっているのだ。外交政策分野でのオバマ大統領の支持率は悲惨なものだ。最新のCBSの世論調査によると、36%のアメリカ人がオバマ大統領の外交政策を支持し、49%が不支持を表明している。過去1年間の様々な世論調査の結果も似たような結果を示している。2013年11月に行われたピュー・リサーチ・センターの世論調査によると、34%が支持、56%が不支持を表明した。CBSの世論調査では、オバマ大統領の経済政策への支持率が39%、健康保険政策への支持率が41%と外交政策の支持率よりも高い数字を示している。オバマ大統領が現在行っている仕事の中で、外交政策が最も支持されていないのである。外交政策で多くの支持を得ることは難しいと考える人もいるかもしれないが、クリントン大統領の2期目の外交政策に関する支持率は極めて良好だった。57%の支持に対して34%が不支持であった。ロナルド・レーガン大統領も2期目の外交政策の支持率は50%を越えていた。オバマ大統領と似ているのはジョージ・W・ブッシュ大統領だ。1期目の外交政策に対する支持率は極めて高かったが、2期目では、イラク戦争が最も厳しい段階にあったことを反映して、支持率は急降下した。

 

 オバマ大統領の外交政策の支持率は、オバマ大統領の支持率によって引き下げられているのではない。しかし、国民は区別をきちんとつけるものである。ジョージ・H・W・ブッシュ大統領の支持率は任期最終年で急降下していた。彼の経済政策に対する支持率の低下がそのまま支持率の低下につながった。しかし、ブッシュ大統領の外交政策への支持率は50%を越えていた。CBSの世論調査によると、オバマ大統領の支持率は40%で、外交政策の支持率よりも4ポイント高いのである。

 

 ここで私たちはここまでに示したパラドックスについて考えてみなければならない。オバマ大統領は人々の意見に忠実に従って外交政策を実施している。しかし、彼の外交政策は人気がない。これらの事実についてどのような説明ができるだろうか?私は、世論調査の専門家たちの更なる調査と分析を待ちたいと思うが、これまでの事実を踏まえて、1つの仮説を皆さんに提示したいと思う。

 

アメリカ国民の大多数はシリアへの介入を望んでいない。また、イランに対して何か強硬な姿勢を取ることを望まない。また、アフガニスタン、イラク、エジプト、ウクライナで起きていることに関心を持っていない。アメリカ国民の大多数は、最低限の外交政策の実施を望んでいる。彼らはアメリカが世界において指導的な役割を果たすことをもはや望んでいない。そして、他国が難しい問題を抱えても自国だけで解決するようにしてもらいたいと考えるようになっている。アメリカ国民の大多数は、より狭量な自己利益追求中心のアメリカの外交政策を望んでいる。つまり、アメリカ国民の大多数はオバマ大統領の外交政策を気に入っているはずなのだ。しかし、彼らはオバマ大統領の外交政策を誇りに思っていないし、彼らが望む外交政策を行っているのだがオバマ大統領に感謝していないのだ。

 

 長い間、アメリカ人たちはアメリカを特別な国だと考えてきた。アメリカ人たちはアメリカを「世界の指導者」「かけがえのない国」と自認し、世界でナンバー1の超大国であると考えた。これがアメリカ人の誇りの源泉となった。専門家や預言者と称する人々は、アメリカ人に対して、「そのような時代は終わったのだ」と語っている。彼らは、「アメリカは力の衰退に合わせて、より穏健な目標を目指すべきだ」と主張している。そして、アメリカ国民は、この責務を果たすオバマ大統領という指導者を得ている。オバマ大統領は、アメリカの優越的な指導者として役割を果たしていた時代を懐かしむそぶりも見せないし、アメリカの衰退という「現実」に対処しながら仕事をしている。

 

恐らく、これが、アメリカ国民がオバマ大統領に望むものなのだ。しかし、それを実行したからといって、国民は彼に感謝しないのである。勝利を得るために指導者に従うことで、人々は、忠誠心、感謝、そして魅力を指導者に対して持つ。後退ばかりする指導者に従う場合、そのような感情は生まれない。

 

 歴代大統領たちは、国民の望みどおりの政策を行って常にそれが報いられてきたとは言えない。時に、国民の希望とは反対のことを行って報いられたということがあった。ビル・クリントン大統領は、ボスニアとコソヴォへの介入を実行し、高い支持率を得た。国民の大多数は、クリントンが介入を実施する前、アメリカの介入には反対していた。昨年8月にオバマ大統領が計画したシリア攻撃を実際に実行していたら、アメリカ国民はどう反応したかということを誰が分かるだろうか?ヘンリー・スティムソンが述べているように、大統領が指導力を発揮するまで、国民が「彼の指揮した方向に進むことを認めるか認めないか」は全く分からないのである。先週水曜日にオバマ大統領はヨーロッパ演説を行った。この演説で、オバマ大統領はアメリカが指導力を発揮する時だということを理解していることを示した。彼が任期の残りで、アメリカの指導力を発揮するような外交政策を行うかどうかは分からないが、彼の後任の次期大統領は、アメリカが指導力を発揮すべきだという考えを念頭に置いて政策を実行することになるだろう。

 

(終わり)


 



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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




●皆の海から中国の海へ

 

 中国人のプライド、ナショナリズムは彼らの奥底から湧き出るものだ。そして、彼らは、2世紀にわたる弱体国家の悲哀と屈辱から中国を復興させたいと熱望してきた。そして、この熱望が、最近の四半世紀における中国の進歩の原動力となった。ナショナリズムの存在は、経済格差が増大し続けている状況において国民の統一を維持するために重要である。また、ナショナリズムの存在によって中国は、マルクス・レーニン主義を公式の支配イデオロギーでして扱わなくても済むようになっている。中国を支配している中国共産党が国民としてのアイデンティティを強調するようになっているのは驚くべきことではない。

 

 しかし、ナショナリズムは多くの馬鹿げた、そして自国を傷つけることになる数多くの行為を中国に取らせる力となってしまっている。特に、南シナ海における攻撃的な領土に関する主張、一方的な「防空識別圏」の宣言、尖閣諸島に関する問題に対する強硬な姿勢は、中国政府が主張している「平和な台頭(peaceful rise)」を疑わしいものとしている。そして、アジア諸国は中国に対して警戒感を持っている。中国の主張の是非はともかく、彼らの行為は愚かしい。それは、中国の馬鹿げた行為によって、近隣諸国が中国に対峙し、アメリカの保護を求めるようになっているからだ。中国は長期的な構えをし、現在よりも強大になるまでそうした馬鹿げた行為を慎むのがより賢いやり方であると言えるだろう。しかし、中国全体の感情を考えると、中国の指導者たちがこのような賢く、忍耐力が必要なやり方を維持できるかどうかははっきりしない。

 

●正直ではない安倍

 

 皮肉なことに、現在の日本は、現代のナショナリズムが非生産的な、全く逆の効果を生み出すことの具体例を提供している。日本政府は尖閣諸島に関する問題で同じく一歩も引かない姿勢を見せている。更に悪いことに、日本は韓国とも竹島を巡り争っている。竹島は取るに足らない小さな島々でそこまで重要ではない。安倍晋三首相を含む日本の指導者たちは、第二次世界大戦中の朝鮮半島において日本が行った誤った行為について発言をしている。その中には、韓国人の女性たちを日本軍の「慰安婦」として使ったことはないという発言も含まれる。日本については次のように考える。中国は台頭しつつある大国である。中国は多くの点で日本を凌駕しつつある。日本は巨大な中国に対して行動の自由を最大限確保したいと望むならば、アジア地域において出来るだけ多くの友人を持つ必要に迫られる。これから得られる結論は明らかだ。韓国との不毛な争いは非生産的であり、馬鹿げている。そして、政治家たちが靖国神社に参拝して、日本の右翼のナショナリスティックな感情を和らげることもまた非生産的であり、馬鹿げている。

 

●こぼれた牛乳とはちみつ

 

 シオニズムは、根本的に19世紀にヨーロッパを席巻したナショナリズムのユダヤ版と言える。国家の統一、愛国的な犠牲、ユダヤ人の離散者たちからの支援を促すことで、シオニズムはイスラエルが過去に達成した業績にとって重要な基盤となった。

 

 しかしなら、現在、シオニズムはより過激な方向に発展しており、イスラエルの将来に危険を及ぼすかもしれないということになっている。イスラエルは国土の安全を求める代わりに、「より巨大なイスラエル」の永遠の確立に拘泥する一方で、イスラエルによる厳しいコントロール下にあるいくつかの飛び地にパレスチナ人たちを閉じ込めている。こうした政策はイスラエル内外のアラブ人たちに対する人種差別的な態度を引き起こしている。これはマックス・ブルメンソールが最近になって著書で発表したとおりである。こうした動きのために、イスラエルは、国際社会から厳しい批判に晒され、アメリカ国内、特にユダヤ系アメリカ人たちの間での支持と同情を失っているのである。他国でも言えることであるが、ナショナリズムの負の側面はイスラエルの長期的な利益を損なう政策の実施ばかりを促してしまうのだ。

 

●山の上にある一つの都市

 

 アメリカのナショナリズムは他国のナショナリズムといくつかの点で異なるものだ。アメリカのナショナリズムは、「市民(公民)的」ナショナリズムである。アメリカのナショナリズムは、民族や祖先といったものではなく、共有された政治原理と自由主義的な文化的価値観を基礎にしている。アメリカのナショナリズムが持つこうした特徴によって、アメリカは、波のように押し寄せてくる移民たちをアメリカ社会に争いや緊張を生じさせることなく、溶け込ませることができた。そして、アメリカは独自のナショナリズムを持つことで大国としての地位を確立することができた。

 

しかし、時間の経過と共に、特にアメリカが大国の一つとなって以降、アメリカのナショナリズムは、危険な「自分たちは例外」という考えを膨らませていった。特に、アメリカ人(特に外交政策に関与するエリートたち)は、アメリカは、「世界の指導者」としての役割を果たす権利と責任を有していると確信するようになった。それは、アメリカが大変に強力な国であるからというばかりではなく、アメリカは最良の統治形態を持ち、アメリカ国民は最も道徳的で、アメリカは常により善い目的のために正しい行動をするのだという確信を持つようになったからでもある。アメリカから遠く離れた土地で武力を行使し、アメリカに非友好的な政府を瓦解させても、それはより善い目的のために行われるのだとアメリカの指導者たちは信じ込むようになったのだ。

 

 アメリカのナショナリズムのこうした行き詰まりの結果が現在噴出している。アメリカの指導者たちがアメリカは常に善い行いしかしないと信じるようになってしまい、アメリカの力が他国をどれほど心配させているのかを過小評価するようになった。そして、他国がアメリカ政府に影響を与えて、アメリカの動きを何とか緩やかにしようとして様々なことを仕掛けるということにも鈍感になってしまっている。アメリカの指導者たちはアメリカの統治形態が最高のものであると確信しているので、他国へこれを輸出でき、他国もそれを喜んで受け入れるというアメリカの統治形態への過大評価という愚を犯している。アメリカは多文化に関する実験で成功を収めた希有な国であるために、アメリカ人は、世界の他の場所で、アイデンティティや宗教の共存が困難であることを認識できないのである。アメリカ人は自分たちがより賢く、より団結し、より英雄的で、分かりやすい人々である考えるために、ヴェトナム人、イラク人、アフガニスタン人が自分たちを打ち倒せるなどと考えることが難しい。たとえアメリカがそうした国々に行って戦っても、アメリカ人の士気は高く、最後には勝利を得られると考えていた。しかし、それは間違いであった。

 

 私はナショナリズムそれ自体に反対しているのではない。ナショナリズム自体がすぐになくなるということはないだろう。思考を停止した、無批判の、「我が国は全面的に正しいか、それとも間違っているか」というようなナショナリズムを私は批判している。それは時にこの種のナショナリズムが社会全体に影響を与えることがあるからだ。そのようなナショナリズムが横行する時、ある国の一部の人々が持っていた正当な誇りは、暗く、より粗雑な、そしてより危険な何かに変化する。そうなると、より危険な何かのせいで、国家は馬鹿げたことをやるようになる。国際政治の分野では、個人の生活と同様、馬鹿げたプライドは命取りになるのである。

 

(終わり)



 

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