古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。




アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今回は経済のお話を書きたいと思います。私は経済学が苦手です。大学の経済学の授業でも半分寝ていたような人間です。ですから、経済の話は避けていたのですが、今回挑戦してみたいと思います。まずは思い出話から始めたいと思います。

 

 私が小中高時代を過ごしたのは、1980年代から1990年代にかけてです。私は九州の地方都市で育ちました。大人たちとは全く別の子供の世界、大人たちの顔を曇らせたり、笑顔にしたりするものと言えば、テレビのニュースでした。私が小学校時代に、久米宏司会の「ニュースステーション」が始まりました。それまでのニュース番組とは何か違うな、面白いなと思って大人たちと一緒に見ていました。フィリピンの民主化や第二次天安門事件など固唾を飲んで見守っていたことを思い出します。

 

 そんな中で、大人たちがいつも話をしているのが景気の話でした。バブルが始まる前兆があったのでしょう。地方都市の公務員の家でも株の話が出るようになりました。「●●さんはNTTの株を買って大儲けしたらしい」なんてことを聞いていました。

 

 ニュース番組の最後には、東京証券取引所の平均株価、そして円ドルの為替レートがいつも流されていました。株価が上がれば大人たちは喜んでいました。それでも子供ながらに不思議なことがありました。「円安、円高」という言葉でした。「238円から237円になったのに、“円高”になったと言って大騒ぎする」大人たち。数字が小さくなっているのに「円高」ってなんなのだろうか?と思って親に聞いても、子供に分かるように説明してくれませんでした。

 

 それでも小学校の高学年になって少し知恵がつくと、「価値」というものが少しわかるようになり、そして、日本という国が「加工貿易」で世界の中でも豊かな国となっていると習うようになりました。時代は、日米貿易戦争で、日本製の自動車やラジオがハンマーで壊されていました。

 

 「日本は原材料を輸入して、それをテレビ、ラジオ、自動車、船、鉄鋼などに加工して、それを輸出してお金を稼いでいる」ということを習いました。そして、「円安だと輸出した先の国で製品が安く売れる」ということも分かりました。だから、円が少しでも高くなると、自分たちのせいではなくて製品の値段が上がるから円安が良いのだ、ということを理解できるようになりました。そして、得意げに友達にこのことを説明していました。今から考えると、汗顔の至りです。

 

 私たちの世代くらいまでは、「日本は加工貿易の国で、円安は良くて、円高は悪い」ということをある意味刷り込まれてきたと言えると思います。「日本は世界中に工業製品を輸出してお金を稼いでいる。輸出あってこその日本なのだ」ということを私たちは教えられてきました。確かに世界各国に行って日本人と分かれば、その国の人たちから「ソニーの製品は素晴らしいね」「トヨタの車は故障がなくて良く走るよ」と賛辞を寄せられることが多いです。自分は全く関係ないのだけれど、それは別にして嬉しくなることは事実です。

 

 しかし、日本はどうも「輸出主導型経済」ではなくなっているようです。1960年代からの奇跡の高度経済成長の幻影はあるのですが、日本は先進国となり、製造業ではなく、サーヴィス業がその割合をどんどん増やしているようです。

 

※厚生労働省の報告書のアドレス↓

http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/13/dl/13-1-4_02.pdf

 

※2013年10月7日付東洋経済オンライン 野口 悠紀雄(早稲田大学 ファイナンス総合研究所顧問)「輸出主導型ではなくなった日本経済 リーマンショックから5年、世界はどう変わったか」のアドレス↓

http://toyokeizai.net/articles/-/20873

 

 もちろん、日本の製造業がこれからも頑張ってもらいたい、海外で売れる製品を作ってもらいたい、外貨を稼いできてもらいたい、というのはそうなのですが、新興諸国の追い上げということも考えていかねばなりません。

 

 そうなると、「輸出(外需)主導」ではなく「内需主導」型経済ということになりそうです。ただ、内需主導経済で経済の規模が大きくなるのかということは分かりません。ですから、外需に偏っていたものを内需にしていくということなのだと思います。また、内需主導経済というのはよく分からないものです。

 

 それでも現在の日本は、アベノミクスで株価は上がっています。そして、円安によって企業の売り上げは良くなっていると言われています。しかし、円安によって輸入品の値段が上がり、物価はどんどん上昇しており、給料の伸びが追いついていない状況です。株価が上がっても、株式を頻繁に取引する人たち以外にはまず関係のない話です。日本国民の8割以上は株式取引をしたことがないのです。

 

 「円安にして輸出を増やす」ということも、今の日本では難しいです。なぜなら、1980年代から円高基調になって、各メーカーは生産拠点を海外に移しているからです。日本国内にも製造工場がありますが、日本列島全体が生産工場ということはありません。円安で輸出を増やすということはできるはずがありません。

 

 また、日本人の人件費も高度経済成長のおかげで伸びていきました。どんどん豊かになりました。簡単に言えば、昔は日本人の給料は世界に比べても安くて、その上高品質の製品を作ることができたので、低価格で良いものを世界中に売りまくることができました。しかし、今は人件費が上昇し、円安をいくら進めてもそこまで低価格にはできないのです。

 

 それでは、円安で輸出を増やすということをやるためには何が必要になるかというと、低賃金で働く人々です。アメリカにおける移民の立場はまさにそうです。しかし、日本ではなかなか移民受け入れは難しいのが現状です。そうなると低賃金層は日本国民の中に作らねばなりません。

 

 現在のアベノミクスがやろうとしていることは、低賃金層を生み出そうということです。お金持ちがいきなり低賃金層になることはありませんから、中間層から脱落していく人たちが増えていきます。低賃金で働かざるを得なくなる人たちが増えていきます。

 

 私がこの部録の記事で指摘したように、中間層は民主政治体制(デモクラシー)にとって重要な要素となります。中間層がいなくなれば、民主政治体制は脆弱になります。

 

 若者の非正規雇用やマイルドヤンキーといった現象はこうした中間層がいなくことを示しています。お金持ちと貧困層の二極化が進みます。そして、貧困層は政治になど関心を持たなくなります。そうなれば支配者層とつながるお金持ちたちに都合の良い支配体制となります。それが自民党の一強多弱時代です。

 マルクスの理論では、資本主義がどんどん発展していくと、格差が拡がり、労働者(プロレタリアート)階級がブルジョア階級を倒す階級闘争(クラス・ストラグル)にまでいくということになります。しかし、現在の日本では、そうした自分の状況に関心を払うことも、政治に関心を払うこともできない状況になっています。また、低賃金層の団結も妨げられ、孤立化も進んでいます。

  
私は、財政の再配分機能を利用して、つまり、人々の家計にお金が直接入るような政策を行うことを支持します。 

 

 今回の総選挙で自民党の一強時代はしばらく続きそうです。そうなれば、日本はますますお金持ちと低賃金層の二極化、中間層の脱落が進んでいくことになります。そうした状況を変えるためにも、野党勢力にはしっかりとしていただきたいと思います。

  

(週刊誌記事転載貼り付けはじめ)

 

安倍自民大勝もアベノミクスが落とし穴

 

(週刊朝日 20141226日号掲載) 20141219()配信

http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/asahi-20141219-2014121700087/1.htm

http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/asahi-20141219-2014121700087/2.htm

 

 選挙で予想通りに大勝した自民党は、来週にも新内閣を発足させ、向こう4年間の長期政権をスタートさせる。

 

 憲法改正まで見据え、着々と足場を固めていく安倍首相。だが、今後の政権運営には、多くの落とし穴が待ち構えている。まずは年明けにも想定される原発再稼働だ。

 

 今回の衆院選で首相はあまり触れなかったが、九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)は早ければ2月にも、再稼働する。他の原発も原子力規制委員会の基準を満たせば再稼働していく。

 

 今年7月の集団的自衛権行使を認めた閣議決定に沿った安全保障関連法案も来年の通常国会に提出される。自民党の高村正彦副総裁は「すぐに安保法制の大枠を作る作業に入りたい」と話しており、作業を加速させる考えだ。

 

 関連法案の審議の時期は統一地方選後になりそうだが、自衛隊がこれまでより危険にさらされるだけに、国会の内外で再び大きな反発が起こることも予想される。

 

 安倍首相が政権公約集の表紙に掲げた「景気回復」も足元は心もとない。

 

 選挙期間中、今年7月から9月までのGDPの改定値が発表されたが、速報値の年率マイナス1.6%からマイナス1.9%に下方修正。4月の消費税8%への増税は、結果として内需を冷え込ませ、予想以上に深刻になっている。

 

 自民党ベテラン議員は言う。

 

「アベノミクス3本目の矢の成長戦略も妙案がなく、みな困り果てています。すでに掲げた医療・雇用の規制緩和や農業改革などは、自民党の支持団体の抵抗にあってスムーズに進んでいない。

 

1月以降に景気回復が進まなければ、国民の期待は一気に怒りに変わるでしょう。統一地方選にも打撃となります」

 

 同志社大学大学院の浜矩子教授は「来年1月以降の経済はさらに厳しくなる」と予測する。

 

「消費や設備投資は低調で、どの指標を見ても景気上昇のきっかけが見られない。物価上昇の影響で実質所得もマイナスになっている。円安で輸入製品の価格が上がり、生活コストも上昇しています。これでは消費が伸びるはずがありません。実際に痛みを感じている中低所得者層に直接、働きかけることをしないと、経済はなかなか回復しない」

 

※週刊朝日  20141226日号より抜粋

 

(週刊誌記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)








 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 2014年12月14日に行われた総選挙で一党だけ大敗を喫した政党がありました。それは平沼赳夫氏率いる「次世代の党(The Party of Future Generations)」です。公示前には衆議院議員が19名いて、選挙には公認候補を48名擁立して、結果は小選挙区で2名の当選を出したのみで、比例区では誰も当選者を出すことができませんでした。比例区の票は全国で約141万票を獲得しましたが、その「人気」と「知名度」とは裏腹に惨敗を喫しました。

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参議院議員が6名いますので、現在でも政党要件を満たすことができますし、2016年改選議員が2名ですので、最悪当選者を出せなくても、衆参で6名の議員は確保できるので、少なくとも2019年までは何とか政党要件を満たして、政党助成金を受け取ることができます。

 

 大変皮肉だなと思ったのは、発信力がある議員たちが顔を揃えていながら、代表の平沼氏が「急な解散で知名度が不足していた」と総括していたことです。石原慎太郎、平沼赳夫、園田博之、藤井孝男、中山成彬、中山恭子、松沢成文、中田宏、山田宏などの大臣や地方自治体の首長を経験し、テレビや新聞などにも取り上げられる機会が多かった人々が集まっていたことを考えると、知名度不足などと言えるのだろうか、と首をかしげたくなります。これに加えて、お騒がせな人たちではありますが、田母神俊雄、西村眞吾といった人々もいた訳です。

 

 私は、知名度不足などではなくて、彼らの主張が全く有権者に受け入れられなかったことを素直に受け入れるべきではないかと思います。「ああいう人たちはあくまでトリックスターであるが、自分の一票を託せるような人たちではない」と多くの有権者が考えたのだと思います。ネット世論が何とも頼りないものであることを政治家たちはいつ気付くのでしょうか。加藤の乱以来、彼らは周囲が見えなくなると、ネット世論の身を盲信し、そして消え去っていきました。ネット選挙などというものは幻影に過ぎません。

 

 下に貼り付けた朝日新聞の記事は次世代の惨敗について詳しく分析しています。記事では、「保守の理念」に執着し、生活に密着した政策を打ち出せなかったことが惨敗につながったと分析しています。

 

 私は、次世代の党が「保守」なのかどうか疑問を持っています。保守という言葉の定義については語り出すときりがありません。しかし、私は次世代の党が有権者に「保守」であるとは認識されず、自民党の支持者を惹きつけることもできずに、「立ち枯れて」しまったのだと思います。また、今の自民党は政治の世界でぎりぎり許されるところまで右側に拡大しているので、自生台の党の生存できる空間は既に存在していませんでした。自民党の中に、「この人は次世代の党の方がお似合いなのに」という程度の低い政治家の数が多くなってきました。

 

 次世代の党の排外主義的、自民党を糺すとして公明党攻撃を始めたことに対して、有権者は警戒感を持ったのだと思います。「いくらなんでもこんな政党は面白おかしい分には構わないけど、勢力を持たせてはいけない」というバランス感覚が働いたのだと思います。多くの有権者たちが、「この人たちは、戦前、戦中に回帰しようと言っているのだ」と直感的に判断し、危険を察知して、選択肢から外したのでしょう。そうした中で140万の票を得たことは、大変なことですが、この政党を支持した有権者が140万以上もいたということは日本が衰退基調に入っていることを示しているのではないかと考えます。

 私はツイッターで「次世代の党は政界における在特会のようだ」と書いたことがありました。その在特会では、前会長の桜井誠氏が次世代の党に投じたと発表したそうです。この寮舎の共通点は、それぞれ政界と市民社会という自分たちがいたいと思う場所に自分たちの居場所がないということです。 

 

 次世代の党に集まったのは、前回の選挙で落選すべき議員たちでした。日本維新の会を結党して、橋下徹氏の個人的な力を利用して、ゾンビのように生き返っただけの議員たちでした。今回、この橋下氏の個人的な風を起こす力を利用できなければ、結局落選するしかありませんでした。

 

 次世代の党は、ゾンビ議員たちが「辞世の句」を詠むための党だと言えると思います。若い議員の方々は彼らのお付き合いすることもないとは思いますが、好き好きですから仕方がありませんね。彼らの党名の英訳である「party of future generations」が何とも悲しく響いてしまいます。当選したのが70歳以上の大ヴェテランだけでしたから。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

次世代の党惨敗、ネット右派頼み限界 理念先行薄い政策

 

朝日新聞デジタル 1220()1439分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141220-00000026-asahi-pol

 

 自民党の右に柱を立てる――国家や民族を重視する本格的な右派政党として衆院選に臨んだ次世代の党。インターネットで活発に発言する右派勢力などを頼りに、強い保守色を前面に出して戦った。だが、公認48人に対して当選は2人と惨敗。識者からは、保守の理念が先行し、生活に密着した政策に結びつけられなかったとの指摘が出ている。

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 選挙結果を総括した19日の次世代の党の会議。平沼赳夫党首は、落選議員らを前に「私の力が足らず、心から反省している」と頭を下げた。石原慎太郎最高顧問も「十分な応援ができなかった」と謝罪した。

 

 旧日本維新の会から分裂し、8月に結党した次世代の党は、平沼氏や石原氏ら自民党よりも保守的な理念を掲げる政治家の「オールスターチーム」の様相だった。衆院選では中国批判、慰安婦問題に加え、「根拠がない」との批判を浴びながらも、独自調査をもとに「在日外国人の生活保護受給率は日本人の8倍」などと訴え、「生活保護は日本人に限定」とする社会保障制度の抜本改革も公約に掲げた。

 

 次世代の選挙戦の象徴は、2月の東京都知事選で61万票を獲得した元自衛隊航空幕僚長の田母神俊雄氏だ。東京12区で公明党の太田昭宏国土交通相にぶつけ、支持母体の創価学会を徹底的に攻撃した。

 

 記者会見で田母神氏は「安倍晋三首相の足を引っ張る公明党を政権から分離させ、自民・次世代の連立政権を作らねば、日本は取り戻せない」と述べ、街頭演説でも徹底した公明党、創価学会批判を続けた。

 

 ネット上で発言する右派の支持を得ようと、積極的なネット戦略も展開した。「子育て犠牲にしてまでなぜ働くのか」「慰安婦問題はでっちあげ」など、「誰もが知らんふりするタブー」を斬るとして、キャラクター「タブーブタ」を一刀両断する動画を制作。動画の再生回数は30万回を超えた。

 

 ツイッターも自民、公明に次ぐ約1万2千フォロワーを獲得。「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の桜井誠前会長が「期日前投票で小選挙区、比例ともに次世代に一票を投じてきました」とツイートするなど、右寄りのネット世論に浸透したようでもあった。

 

 しかし、ふたをあければ、わずか2議席。当選はいずれも強固な地盤を持つ平沼氏(岡山3区)と園田博之氏(熊本4区)のベテラン議員だった。目玉候補の田母神氏も東京12区で約3万9千票にとどまり、4候補中最下位。平沼党首は15日未明の会見で、「急な解散で党の知名度が不足していた」と語った。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)








 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今回は、アメリカとキューバとの国交正常化交渉の過程についての記事をご紹介します。南米出身初のローマ法王フランシスの役割、オバマ大統領の側近による交渉、オバマ大統領の決意について書かれています。

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こんなに近いアメリカとキューバ 

 

 こうしたものが外交なのだということを改めて考えさせられます。翻って日本について考えてみると暗澹たる気持ちになってしまいます。

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ラウル・カストロ大統領(議長)と電話で話すオバマ大統領 

 

==========

 

アメリカとキューバとの間の秘密の外交交渉は拘留者交換の合意に達し、将来の国交正常化に結び付いた

 

キャロル・モレロ、カレン・デヤング筆

2014年12月17日

ワシントン・ポスト紙

http://www.washingtonpost.com/world/national-security/secret-diplomacy-with-cuba-ended-in-breakthrough-deal/2014/12/17/c51b3ed8-8614-11e4-a702-fa31ff4ae98e_story.html

 

アメリカとキューバとの間で50年以上も続いた敵対関係に終止符を打った。アメリカとキューバとの間で続けられた1年半に及ぶ秘密の外交交渉によってそれは成し遂げられた。

 

 オバマ政権のある高官は取材に対して、両国間の秘密交渉はアメリカからキューバに申し入れがあった時点から始まり、2013年6月にカナダ国内で直接交渉が始められ、それは9回にも及んだ、と述べている。

 

 外交交渉過程においては、異例なことであるが、ローマ法王フランシスの関与もあった。ローマ法王フランシスは、両国の交渉が合意に達するのを助けるために、ヴァチカンの利用を許可し、オバマ大統領とキューバのラウル・カストロ議長(大統領)にそれぞれ親書を送り、拘留者の交換と外交関係の復活を求めた。

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ローマ法王フランシス 

 

 スパイの定義を巡って交渉が一時ストップすることもあったが、結局は3機の飛行機が両国間に拘留されていた人々を同時に交換することで、喜びに包まれる結果になった。

 

 秘密交渉は外交官たちではなく、オバマ大統領の国家安全保障問題担当補佐官2名が行った。これは、キューバ側に対して、アメリカ側が外交交渉と国交正常化はホワイトハウスが直接行うことだということを明確に示すためであった。

 

 交渉の過程で、ジョン・F・ケリー国務長官をはじめとする政権の幹部たちは機会を捉えて、アメリカとキューバとの関係の未来は、アメリカ人の建設業者アラン・グロスの釈放にかかっていると表明していた。グロスはキューバに5年間も拘留され、肉体的、精神的な衰えが進んでいた。

 

 キューバの外相ブルーノ・ロドリゲス・パリラとケリーとの間でこの夏に4階の階段が持たれた。ケリーは会談の度に、グロスがキューバの刑務所に拘留されている限り、二国関係が改善されることは「決して、決して」ないと語った、とある国務省の高官は証言している。この高官は他の交換と同様に匿名を条件としてきたが、私的な会話の内容について取材に答えてくれた。

 

 水曜日に、キューバとアメリカは国交の正常化に動くと発表された。これは、オバマ政権が長年にわたり実行したいと考えていた政策変更であった。

 

 オバマ大統領はキューバ系アメリカ人の親戚への少額の送金や訪問を容易にするための女権の緩和を行ったが、一期目ではそれ以上の劇的な政策変更はできなかった。しかし、オバマ大統領は、二国間の断絶はいつまでも継続すべきではないと確信していた、とある政府高官は語っている。2012年に開催された南北アメリカ大陸諸国サミットの期間中、オバマ大統領は、南米諸国の指導者たちから、アメリカはキューバについて妄想に取りつかれていると激しく批判された。

 

 2013年初頭、オバマ大統領の大統領としての二期目がスタートした直後、大統領はキューバとの間で国交正常化に向けた交渉を行うことを許可した。

 

 アメリカとキューバは双方ともに伝統的な外交チャンネルを使わずに、双方の大統領に近い人々同士で交渉を行うと決めた。ホワイトハウスは、オバマ大統領の信任が厚い国家安全保障問題担当次席大統領補佐官ベンジャミン・J・ローズ(Benjamin J. Rhodes)と国家安全保障会議南米部長リカルド・ズニガ(Ricardo Zúñiga)を代表として選んだ。ズニガは、ハヴァナでアメリカの利益代表部で働いた経験を持っている。キューバ政府も彼らに相当する役職の人々を出してきた。

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ベンジャミン・ローズとオバマ大統領 

 

 交渉に参加したある政府高官は次のように述べている。「双方がそれぞれの大統領の意向を受けて交渉しているということが分かっていることが何よりも重要なことでした」

 

アメリカ、キューバ双方の交渉チームの人数はかなり制限されたと前述の政府高官は述べている。

 

 「私たちはとても団結していました。キューバ側も恐らくそうであっただろうと思います。私たちは、アラン・グロスの釈放という目標の達成を難しくするようなことをするつもりはありませんでした。」

 

 2013年6月、カナダの首都オタワで初めて2つのチームが直接顔を合わせた。双方は友好的な雰囲気で話し合いを行った。それから18カ月、2つのチームはカナダの首都で複数回にわたり話し合いを行った。

 

 キューバ側はまずスパイの交換を提案してきた。キューバに拘留中のグロスと、マイアミの反カストロ活動を行っていたキューバ人の情報をハヴァナに送っていた5名のキューバ人スパイのうちアメリカに拘留中の3名の交換を提案してきた。アメリカ側はこの提案を拒否した。アメリカ側は、グロスが、米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSAID)と契約を結んだ建設業者に過ぎず、彼は正当に仕事を遂行していただけだと主張した。しかし、話し合いはすぐに二国間の外交関係の復活に何が必要かというテーマに移っていった。

 

 その前にオバマ大統領はヴァチカンを訪問し、ローマ法王フランシスと会談を持った。彼らの話題がキューバに移った時、史上初の南米出身の法王は、両国間に存在する困難な諸問題を解決する手助けをしたいと申し出を行い、その後、オバマとカストロにそれぞれ親書を送った。

 

 今年に入って、アメリカ側は、キューバ側に拘束されている本物のスパイとアメリカ国内で服役中の3名のキューバ人スパイの交換を提案した。

 

 2014年10月、アメリカとキューバ双方の交渉チームがローマを訪問し、ヴァチカンの幹部たちと会談を持った。そこで、拘留の人たちの交換が最終決定された。そして11月までカナダのオタワで交渉は続けられた。

 

 キューバとアメリカとの間で国交正常化に向けた話し合いを行うという決定を受けてそれに祝意を示すヴァチカンの声明には次のような一節がある。「ヴァチカン(The Holy See)はアメリカとキューバ両国が二国間関係を強化し、それぞれの市民たちの福利を向上させるという試みをこれからも支援し続ける」

 

 この決定に至るまで、オバマ大統領は全くぶれなかった。中間選挙の後、彼は、彼の行政府の長としての力を使って、単独で行動をすることができると感じていると語った。

 

 グロスの退潮が悪化しているという報告も入っていた。グロスは訪問者たちに対して、このままでは新年を迎えることはできないだろうと語っていた。彼の外見は報告ほどに弱っているようには見えなかったが、長期にわたる拘留で肉体的に弱っていくことが懸念されていた。

 

 しかしそのような懸念も今週払拭された。火曜日、オバマ大統領は密かに1時間近くにわたり、カストロと電話で話をした。これは1959年にキューバで革命が起きて以来、初めての大統領級の首脳同士の会話となった。そして、水曜日、オバマ大統領はホワイトハウスからテレビを通じて、アメリカ国民に語りかけた。

 

 オバマ大統領は演説の中で、自分が生まれたのはフィデル・カストロが政権を掌握してから2年後のことであったと述べた。そして、次のように語った。「変化することは難しいことです。私たちの人生においても、そして国家にとっても。特に歴史の重荷を背負っている場合には変化はより困難となります。しかし、今日、私たちは変化を起こそうとしています。それはそうすることが正しいことだからです」

 

 彼は続けて次のように語った。「本日、アメリカは過去からの足枷を断ち切る選択をします。それは、キューバの人々、アメリカの人々、西半球全体、そして世界にとってより良いことを成すことになるのです」

 

 この発表からほんの2、3時間前、3機の飛行機が朝もやの中を飛んでいた。

 

 一機はマイアミを飛び立ってハヴァナに向かった。この飛行機には2011年にスパイ容疑で有罪判決を受けた3名のキューバ人が乗っていた。

 

 もう一機は全く逆のコースを取った。この飛行機には名前が公表されていないアメリカのスパイが乗せられていた。彼はアメリカ国内にいるキューバ側のスパイ情報をアメリカ政府に提供したとして約20年にわたり拘留されていた。

 

 三機目の飛行機はアンドリュース空軍基地を飛び立ち、ハヴァナ近郊の軍事施設に着陸した。そこでアメリカの利益代表部の代表が、夫の帰還を待ちわびた妻ジュディの前へグロスを伴って姿を現した。

 

ジェフ・フレイク連邦上院議員(共和党、アリゾナ州選出)は次のように語っている。「グロス夫妻にとって最高の瞬間でした。とても感動的な光景でしたよ」。フレイク議員は拘留中のグロスの許を何回も訪問し、水曜日の解放にも立ち会った。

 

 アメリカへの途上、パイロットが、飛行機がアメリカの領空内に入ったとアナウンスをした時、グロスは両手を挙げて喜びを表現した。

 

パトリック・J・リーフィー連邦上院議員(民主党、ヴァーモント州選出)はグロスに「あなたは自由の身ですよ」と語りかけたという。

 

「どうやら本当に自由になったようですね」とグロスは答えた。

 

(終わり)








 

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