古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。





 古村治彦です。

 今回は都知事選挙について、私がここ数日考えたことを書きたいと思います。


 


 2014年2月9日に投票が行われる東京都知事選挙は主要な候補者たちの立候補表明が終わり、いよいよ本格化してきました。細川護煕元首相が立候補を表明して、舛添要一元厚労相がかなり有利だと思われていた都知事選挙の構図が少し変化するかなという印象があります。宇都宮健児元日弁連会長・弁護士や田母神俊雄元空将・軍事評論家も活発な動きを見せています。

 


 こうした中で、自民党と公明党が舛添要一氏の支援に本腰を入れるということになりました。最初は都連レベルでの支援を行い、党本部は直接関わらない(実質はそういう訳にはいかないと思いますが)ということになっていたようですが、党本部が動くということになりました。こういうことを書くと大変失礼ですが、宇都宮氏や田母神氏の出馬を受けても、「自公の組織票に舛添氏の個人の力があればそこまで本気にならなくても勝てるさ」という感じで動く気配を見せなかった自公が細川氏をターゲットにして動き始めてきました。

 


 細川氏に出馬に対しては、全陣営が早速批判と非難を向けています。そして、宇都宮氏や田母神氏の支持者の皆さんの中にいる、細川氏にかなりの拒否反応を示す人たちがインターネット上で広範なテーマを取り上げて批判を展開しています。私はこうした動きは、結局のところ、主敵であるはずの舛添氏の当選に利するだけの行為であると私は考えます。マルクスは『資本論』の中で、「地獄への道は善き意図をもって舗装されている」という言葉を使っています。この言葉の意味については複数の解釈があるようなのですが、「良いと思ってやった行いが思いもよらず、全く意図しなかった悪い結果をもたらす」という意味で使われます。細川氏に対しての批判には正論があり、その通りだということがありますが、細川氏に対する批判を行ったからと言って、圧倒的に有利な舛添氏に打撃を与えられるかというとそれは難しい、ほぼ不可能ではないかと私は思います。

 


 こういうことを書いて気分を害される方もおられると思いますが、近親憎悪や内ゲバという言葉があります。戦後の左翼陣営の歴史を見てみると、自分たちの主目的の達成よりも、自分たちと元々は仲間であったが分裂したグループに対する攻撃に終始する、そして弱体化していくということがありました。また、急進的な主張(それはそれで素晴らしい内容のものではありましたが)をするあまりにかえって広範な人々の支持を得られなかったということがありました。今回もまた同じような失敗をして、主敵を利することになるのだろうと、私はここ最近悲観的になっています。

 


 ここで良く考えねばならないのは、自民党員、自民党から選挙に出ること(東京地区の地方自治体や国会議員の選挙)を考えていながら、元空将・軍事評論家の田母神俊雄氏を支援しようとしている皆さんです。自民党は最初、都連レベルで舛添要一氏を支援することにしていました。しかし、公明党が舛添氏の支援を決めたこともあり、また細川氏の出馬で危機感を覚えたのか、安倍晋三首相・自民党総裁が公明党の山口那津男代表と会見し、舛添要一氏の支援で一致しました。そして自民党は党本部を上げての支援ということになりました。

 


 自民党が田母神氏を支援する可能性はなくなりました。複数の当選者が出るなら支援ができるかもしれませんが、都知事は一人しかなれません。そうなると、自民党員、もしくは自民党から選挙に出たいと考えている人が田母神氏を支援することは自民党総裁、もしくは自民党本部の意向に反することになります。自民党の歴史を見てみると、総裁や党本部に反抗しても許されてきたということもありますから大丈夫だとは思いますが、自民党東京都連や公明党のことを考えると、そういう人たちは今後選挙の際にそこまでの支援が受けられるのか、そして東京から選挙に出ようとしてどうだろうか、ということになります。

 


 やはり今の自民党には公明党の組織票が必要なのでしょう。そして、田母神氏に共鳴してしまうような人たちは少し邪魔な存在なのかもしれません。しかし、そうした人たちをJ-NSCなどを通じて自民党支持者として陶冶してきたのは、自民党自身なのです。自民党にしてみれば、おとなしく、強い主張をすることなく、淡々といつもいつも自民党に無条件に投票してくれる人が重要であって、自分たちを強烈に支持してくれるが、時に大変批判的になり、党総裁や党本部の意向に反抗するような人はいらないということになります。

 


 私は偉大な政治学者であった故チャルマーズ・ジョンソン(Chalmers Johnson)が提唱した「ブローバック(Blowback)」という言葉を思い出します。これは2001年9月11日の同時多発テロの1年前に出された本の題名でもありますが、アメリカが対ソ連用に育てたアルカイーダが、結局アメリカに攻撃を加えることになったということをいみじくも言い当てたものでした。

 


 この都知事選が一つのポイントとなって、自民党が少し変化していくのではないかと思います。都知事選自体は、自民党と公明党の組織力やネットワーク力がフル回転ということになり、舛添要一氏が有利になったと思われます。反自公で統一戦線(United Front)、統一候補ができると面白い勝負になると私は考えていましたが、それも潰えました。安倍晋三首相に対する現実的な力を持つストッパーは国内勢力には存在しなくなるということになります。それでも、野党側からすれば、自民党と同じくここが一つのポイントとなって、野党再編や野党再建の動きが活発化することになると私は考えます。

 


 ここ数日、私が考えたことを取り留めもなく書きました。乱文で申し訳ありません。最後まで読んでいただいてありがとうございます。

※2014年1月17日午後6時5分。加筆します。細川氏擁立には自民党内部にくさびを打ち込むということではないかという考えが浮かびました。それは、ある自民党員の方が細川氏に投票するという発言をSNSで行っていたのを見たからです。私は自民党内部が一枚岩であるという前提で考えてきました。しかし、もともと自民党は寄り合い所帯のように、様々な考えの人たちがいた(いる)政党です。穏健派の人たちは目立たないが、確かにいます。

 谷垣禎一法相も穏健派というか、保守本流の宏池会の出身です。谷垣氏は自分が総裁の時に党を出た舛添氏に対して「個人的な思いはある」という発言をしています。これは「だけど党の決定に従う」と続くものですが、それなら「党の決定に従うこと」だけを述べればよいのです。ところがそうではないのはよほどの思いがあるし、もっと大きく言えば、安倍晋三首相に対しても含むところがあるのではないかと推測されます。

 こうして考えると、自公が本部として引き締めにかかっているのも、意外に党内にまとまりが欠けるところが見え始めているのではないかと私は考えています。そして、それが細川氏陣営が仕掛けた揺さぶり、打ち込んだくさびのせいなのだろうと考えます。そしてこのようなことを考えたのは、小沢一郎氏なのだろうとも考えています。


(新聞記事転載貼り付けはじめ)

●「主張に現実性ない…自民、党挙げ「対細川氏」」



2014年1月17日 読売新聞

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20140117-OYT1T00171.htm?from=top



 自民党が東京都知事選(23日告示、2月9日投開票)を巡り、党本部が前面に出る形で舛添要一元厚生労働相を支援する姿勢を鮮明にしている。



 小泉元首相が支援する細川元首相の主張が政府の方針と異なるため、国政が混乱しかねないとの判断から主戦論が一気に強まった。



 自民党の河村建夫選挙対策委員長は16日、党本部で開かれた東京都連幹部らの会合で「党本部を挙げた態勢の中で、勝利を目指して頑張っていこう」と呼びかけた。会合では、党として舛添氏を全面支援することを決めた。同党は16日、石破幹事長名で党所属の全国会議員に舛添氏への支援を呼びかけるメールを送った。今後は閣僚クラスを応援弁士として投入するほか、都議や区議、支持団体への働きかけを強める方針だ。



 自民党は当初、都連を主体とした舛添氏の支援態勢を想定していた。無党派層がかぎを握る都知事選は、党本部が出過ぎない方がいいとの判断もあった。しかし、「原発の即時ゼロ」を主張する小泉氏が、「脱原発」を争点に細川氏を支援する考えを示しているほか、細川氏自身がかつて2020年の東京五輪・パラリンピックの「返上論」を唱えていたことも判明。「細川氏の主張は現実性がない。都知事になれば、日本全体に悪影響が広がる」(幹部)との懸念が広がった。



20141171049  読売新聞)



●「舛添氏支援で自公党首が一致」



2014年1月16日 共同通信

http://news.nifty.com/cs/headline/detail/kyodo-2014011601001946/1.htm



 安倍晋三首相と公明党の山口那津男代表は16日、官邸で会談し、東京都知事選(23日告示、2月9日投開票)に立候補を表明した舛添要一元厚生労働相(65)を支援する方針で一致した。同じく出馬予定の細川護熙元首相(76)の陣営では、小泉純一郎元首相に続き、民主党の野田佳彦前首相や、脱原発を主張する菅直人元首相がブログで細川氏を支援する考えを相次いで表明した。



 脱原発や2020年東京五輪への準備、防災対策強化を争点とする首都のリーダー選びは告示まで1週間となり、各陣営は選挙準備を加速した。



 安倍首相は会談で山口氏に「協力して取り組もう」と呼び掛け、賛同を得た。



(新聞記事転載貼り付け終わり)



(終わり)






 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 

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 古村治彦です。


 今回は、大村大次郎著『国税調査官が教える なぜ金持ちが増えたのか? 税が格差社会を作った』(グラフ社、2007年)を皆様にご紹介いたします。



 この本は友人から貰った本の中にあったもので、偶然手にしたものです。大村大次郎という人物については、「節税(脱税といってはマズイようです)指南」の本をたくさん書いている人として、名前だけは知っていましたが、初めて著書を読みました。



 この本の肝は、タイトルにもある通り、「税が格差社会を作った」ということです。「役人が税金を無駄遣いしたり、公益法人を作って天下りをしたりすることで、税金にたかって生きていることで、必要なお金が必要な人や分野に流れない。また、税金の掛け方も問題があり、企業は正社員を増やさない。例えば、消費税は、利益と人件費に消費税の税率がかけられるために、人件費の圧縮の誘因となっている」というのが主な内容です。



 年金(を含む社会保障)と教育は2007年当時から現在まで多くの関心事であると思います。年金と教育には多くのお金がかかり、「そのために税収を上げるためにも消費税の税率アップが必要だ」と思っている(思わされている)人々がたくさんいます(私もその一人でした)が、お金の使い方に無駄が多いことによって、本当に必要なところにお金が回らず、税金で食べている人たちのところにどっさいお金が行くようなシステムになっているということなのです。



 著者の大村は、地方自治体は無駄なことをせずに、住民サーヴィスに専念していれば、そんなにお金を使わないで済む、夕張市が破産してしまったのも、流出し続け、減少し続ける人口に歯止めをかけ、人口を増やそうとして、市役所が全く不得意な観光事業などに手を出したからで、住民が住みやすい、住民サーヴィスに特化していれば良かったのだと主張しています。



 大村の「これから大きな経済成長は見込めない。だから成熟した社会を目指すべきだ」という考えには賛成です。日本は戦争直後から1970年代にかけて「奇跡の経済成長」を達成しましたが、先進国になった今、あのような劇的な経済成長どころか、中規模の経済成長も難しい状況です。そうであれば、私は低成長を前提として、お金の振り分け方をそれに合わせたものにし、必要なところに必要なお金がいきわたるようなシステムへの改良が必要だと考えます。



 この本で書かれているお金の使われ方の改善についての提案には賛成なのですが、税金というものがどのような存在であるのかという点には賛成しかねます。税金は「低ければ低いほど、捕捉される部分が少なければ少ないほど」良いと私は考えます。私たちが日本史の授業で習ったのは、江戸時代、農民に掛けられた税金は五公五民、もしくは四公六民、つまり、40%から50%であったと習います。しかし、実際にはかなりいい加減で三割を切っていたという研究もなされています。これは農民が新田開発を行っても、それを報告しなかったり、生産量もかなり低く見積もられたりしていたためです。



 現在の私たちはどうでしょう。痛みの実感の少ない(物価は高く感じる)消費税は別にして、他の税金や社会保障関係の支払い(国民年金税と呼ぶべき。国民健康保険税と呼んでいるのだし)に汲々として、それで残ったお金でなんとか生活「させていただいている」のが実態です。江戸時代の農民と比べて、対抗できる手段がないだけ、苦しい状況にあると言えます。



 著者の大村は税務署の職員ということもあり、やはり「獲る側、お金を引っぺがして持っていく側」の論理を振りかざします。「税金はその国の文化を表す」ということで、「日本人は助け合いの文化があった、だからお金持ちはそれ相応の高い税金を払うべきだ」ということを書いています。しかし、「助け合い」を国家に強制されて行う理由はありません。



 また、この本で著者の大村は、お金持ちに対する税率が低くなったのが格差社会の一員であると書いています。これは、お金持ちではない人たちのお金持ちに対する劣情を掻き立てる主張であり、「お金持ちが強欲だから問題なのだ」ということになります。しかし、誰がこの日本で一番の強欲でしょうか。私は官僚・公務員であると考えます。



シェークスピアの『ベニスの商人』にはシャイロックという強欲な金貸しが出てきます。そして、契約書にあった「肉1ポンドを切り取る」という条項の履行を要求します。最後は「その条文には血については書かれていない」という、日本風に言えば「大岡裁き」でシャイロックは負けてしまいます。



しかし、日本の官僚や徴税役人であれば、「しかし、契約を結んだ時に血を流さずに肉を切り取ることなど想定しておらず、常識で考えれば血も含まれるはずだ」と言って、「常識解釈権」を用いて、肉を切り取ってしまうことでしょう。彼らは哀れなシャイロックよりも強欲で、強力なのです。



 公務員や官僚は税金の配分の際に、まず自分たちの取り分をしっかり、やや多めに確保して残りのカスを私たちに還元しているのです。ですから税金を払ったほどのサーヴィスを受けられません。人間の感情として、自分の取り分を先に確保するというのは自然なことです。ですから、そのような官僚をお金の配分の決定に関わらせてはいけないのです。大事な決定は国民の代表者である政治家が行うべきなのです、しかし、自民党支配の中でそのようなことが行われてきませんでしたし、これからも難しいでしょう。それでも、それを変えるべきだ、本来あるべき姿に変えるべきだと言い続けなければなりません。



この手の本は注意して読まないと、主張に取り込まれてしまうことがあります。こういう本は嫌らしいほどに猜疑と懐疑を持って読むと良いと考えます。



(終わり)


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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 古村治彦です。

 今回は、大変面白い音源を見つけましたので、皆様にご紹介したいと思います。

 インターネットの動画サイトYou Tubeにアップされていたもので、舛添要一氏がラジオ番組に出演して、キャロライン・ケネディ駐日米大使の着任の政治的意義について語っています。

 「キャロライン・ケネディ大使は日米両国に対する発信力が強いので、日本の政治家たちは舌禍を起こさないように口にチャックし、中途半端に英語ができるからと得意がって英語で話すのではなく、慎重に日本語で話してちゃんと通訳に訳してもらえ」と言っていたのが印象的でした。

 都知事選挙の情勢についての私の考えは昨日書きました。お読みいただければわかりますが、舛添氏もまさか自分がその政治的重要性について解説した相手に邪魔をされることになるとはという思いに駆られます。「一寸先は闇」「好事魔多し」ですね。





アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12


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