古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。週刊ダイヤモンド2024年3月2日号にて、佐藤優先生にご紹介いただきました。是非手に取ってお読みください。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 最近、名越健郎(なごしけんろう)著『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書、2019年)を読んだ。この本では、外国勢力、具体的には、アメリカ、中国、ソヴィエト連邦から、日本の各政党、自民党、民社党、社会党、共産党への資金提供があったことが書かれている。アメリカや旧ソ連などの公開資料を調べ、その中に出てくる日本の各政党への資金提供の文書を詳しく分析し、資金の流れを解明している。日本の政党が外国勢力から資金提供を受けることは法律で禁止されており、違法行為である。従って、外国勢力からの資金提供は非公式、秘密に行われた。

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秘密資金の戦後政党史

 自由民主党結党時(1955年)に、民主党系から出て、初代の幹事長となった(1956年末まで)のが岸信介だった。岸信介は、戦前に商工省に入省し、次官となった。国家総動員立案の中心的人物であった。満州国の産業政策を立案し、戦争開始時の東條内閣では商工大臣・無任所大臣兼軍需時間を務めた。敗戦後は、A級戦犯として逮捕されたが、後に釈放し、政界復帰を果たした。

岸信介は、1956年の石橋湛山との自民党初の党総裁選挙で敗れたが、1957年3月には石橋の病気退陣を受けて、自民党総裁、首相に就任した。1960年の日米安保条約改定で大規模な反対運動に遭い、安保改訂成立後に退陣したが、その後も日本政界で隠然たる力を保持した。80歳を超えた1979年まで代議士を務めた。戦前から戦後まで日本政界で影響力を保持し、「昭和の妖怪」と呼ばれた。

 戦後の岸信介につきまとったのは、CIAとの密接な関係、そして韓国発祥の統一教会、創始者である文鮮明との蜜月関係であった。外国勢力との関係が取り沙汰されてきた。『秘密資金の戦後政党史』によれば、岸信介と弟の佐藤栄作元首相といった人物たちが、自民党の資金不足を言い訳にして、アメリカ大使館の外交官やCIAの要員たちに資金提供を求めている。反共のためのアメリカの手先として利用されたのが岸信介だった。岸信介・娘婿の安倍晋太郎・孫の安倍晋三と続く、アメリカのCIAと統一教会との深いつながりは、下に掲載した東京新聞の記事の通りである。

 民社党はもともと社会党右派であったが、1959年末に参議院選挙敗北の責任をめぐって、社会党を脱党し、1960年に民社党が結成された。安保については条件付き賛成という立場を取った。民社党は、民間労組(同盟)を支持基盤として、中道路線を標榜したが、自民党よりも右寄りの姿勢を持つ野党であった。民社党にもCIAからの資金が入っていた。民社党首脳部は社会党在籍時からアメリカ大使館、CIAと特別な関係を結び、民社党結成後は、資金提供を受けた。現在の国民民主党は、20世紀の民社党のような存在だと考えるのが妥当である。民社党・同盟系の研修機関として設立された富士政治大学校にはCIAの資金が出ていたという説もある。富士政治大学校では、反共教育がなされていた。ここで教育を受けた民間労組の組合員たちが民社党の活動家にもなっていった。現在の連合の会長である芳野友子は、この富士政治大学校の強い影響を受けている。

また、ここで重要なのは、富士政治大学校を設置した、富士教育センター(民社党系)の理事長に、松下正寿という学者が就任していた事実である。松下正寿は政治学者であり、立教大学教授・立教大学総長を務め、民社党所属の参議院議員を務めた。松下は、統一教会の教祖である文鮮明に傾倒し、文鮮明を褒め上げる著書も書いている。富士政治大学校がどのような教育をしていたか、推して知るべし、である。民社党・同盟にはこのような統一教会との深い関係があった。それが現在も続いていると考えることが自然である。

 さて、ここからは私の考えたことである。日本が経済成長する前に、アメリカ(CIA)は日本に資金を提供し、「反共の防波堤」として成長させた。その後、経済成長を遂げた日本は、CIAに搾取される存在になった。CIAは、冷戦下、共産主義の拡大を阻止するために、反響を掲げる宗教団体である統一教会を利用した。統一教会の勢力を南米に拡大させ、共産主義勢力と競わせた。その際に、利用したのが、統一教会の日本人信者と資金である。以前放送された、TBSの「報道特集」で、統一教会の南米での拡大が取り上げられていた。日本人信者が大金を持って大挙して南米に向かったということが報告されている。これは、統一教会がCIAの意向を受けて動いていたことを示している。

 自民党と民社党という、日本の保守勢力にCIAと統一教会は深く浸透し、利用してきた。それは今も続いていると考えることが自然だ。その中心が、岸信介・安倍晋太郎・安倍晋三の流れであり、安倍派(清和政策研究会)だった。日本の保守を標榜しながら、日本人と日本の資金を外国勢力に搾取されることを許してきたのがこの勢力だ。日本がアメリカの属国を止め、芯の独立を果たすためには、まずここを切開手術して明らかにして、切除しなければならない。

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●「旧統一教会系と歩んだ安倍氏「3代」スパイ防止法を巡る歴史から闇を読み解く」

2022817 0600分 東京新聞

https://www.tokyo-np.co.jp/article/196366

https://www.tokyo-np.co.jp/article/196366/2

 続々と明るみに出る国会議員と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係。ただ、そもそもの話をお忘れではないか。安倍晋三元首相のケースだ。読み解くカギになるのが、いわゆる「スパイ防止法」。法制定を巡る経過をたどると、祖父の岸信介元首相、父の安倍晋太郎元外相、そして当人までの3代にわたり、教団系の政治団体「国際勝共連合」と共同歩調を取った過去が浮かんできた。政権中枢が絡んだ闇の深さこそ、目を向けるべきだ。(特別報道部・木原育子、中沢佳子)

◆岸信介氏「あるときは内密に…」

 「岸元首相は、本連合設立当初から勝共運動に理解を示し、陰に陽に支援、助言を行ってきた」

 勝共連合の機関紙「思想新聞」の1987816日付1面には、同月7日に亡くなった信介氏の評伝が掲載され、先の一文がつづられた。広辞苑によると、「陰に陽に」とは「あるときは内密に、あるときは公然と」の意。親密ぶりがうかがえる。評伝はこう続く。「スパイ防止法制定運動の先頭に立ってきた

 この法律は、防衛と外交の機密情報を外国勢力に漏らせば厳罰を下す内容だ。信介氏は並々ならぬ思いを持っていたようだ。

 57年に首相として訪米した際、米側から秘密保護に関する新法制定の要請を受けて「いずれ立法措置を」と応じていた。晩年の84年に「スパイ防止のための法律制定促進議員・有識者懇談会」が発足すると、会長に就いた。

◆岸氏、勝共連合、そしてCIA

 勝共連合の「本気度」もすさまじかった。思想新聞によれば、78年には「3000万人署名」を行い、久保木修己会長は元検事総長や元最高裁判事、元韓国大使らとともに79年発足の「スパイ防止法制定促進国民会議」に参加。以後、勝共連合は全都道府県に下部組織をつくり、地方議会への請願運動を展開した。

 思想新聞も連日、「国会への圧力を強めていこう」などと喧伝けんでん。87年の元日紙面では漫画で同法を解説しており、左派と想定した人物を博士風の男性が論破する流れになっていた。

 日本のトップだった信介氏、韓国発祥の教団の流れをくむ勝共連合。スパイ防止法を求めたのはなぜか。

 「根本的にはCIA(米中央情報局)」と話し始めたのは、御年89歳の政治評論家、森田実さんだ。「アメリカの政策は今も昔も変わらない。反共で韓国と日本の手を結ばせ、アジアを分断しながら戦いを挑ませる手法だ」

 信介氏は「米共和党に最も近い人物」といい、旧ソ連と向き合う上で「日本の関連法制では整備が不十分という米側の意向をくもうとした」。勝共連合の方は「権力や金のために日本に食い込むには米側に取り入るのが一番早かった」。

◆晋太郎氏「自信たっぷりの笑顔で…」

 スパイ防止法を巡り、勝共連合と共同歩調を取ったのは晋太郎氏もだった。

 856月に自民党議員が法案を提出した時には外相で、このころの参院外務委員会では「審議について関心を持っている。そういう方向を打ち出すことも理解できる」と踏み込んだ。

 思想新聞を読むと、勝共連合関連の会合に党代表や来賓として再三参加しており、「自信たっぷりの笑顔で『スパイ防止法成立に積極的に取り組みたい』と述べました」と報じられた。

 その晋太郎氏は韓国と深い縁を持っていたようだ。

 「安倍三代」の著者でジャーナリストの青木理氏によると、晋太郎氏の地元、山口県下関市は古くから朝鮮半島との交流の要衝だった。釜山行きのフェリーが行き交い、今も韓国との玄関口。在日コリアンが多く暮らし、地元の有力な韓国系の実業家も晋太郎氏を支援してきた。

◆全ては朝鮮半島との関係の中に

 青木氏は「勝共連合の結び付きと土地柄は切り離して考えるべきだ」と念押ししつつ、「時代背景もあり、反共というイデオロギーを核に岸さんと旧統一教会が結び付き、晋太郎氏もそのまま引き継いだ事実は間違いない。戦前から戦中、戦後に続く朝鮮半島との関係の中に全てはある」と指摘する。

 晋太郎氏は1991年に亡くなった。信介氏の時と同じように、思想新聞は1面で評伝を掲載した。やはり、この言葉で悼んだ。

 「安倍氏はまた、故岸信介元首相や福田元首相と同様、陰に陽に本連合に対し支援、助言を行ってきた」

 85年提案のスパイ防止法案は野党の強い反発などもあり、このころに成立することはなかった。

 「世界情勢は成立へと推し進める流れになかった」。政治評論家の小林吉弥氏はそう話す。冷戦の終結や旧ソ連の崩壊があり「急いで成立させる必要性は薄れた」。信介氏が87年、晋太郎氏も91年と相次いで亡くなり、旗振り役が消えたのも一因という。

 晋太郎氏に関しては、力を振るいにくい状況もあった。「外相こそ務めたが、当時首相だった中曽根康弘氏とは党総裁選で競った間。田中派に担がれた中曽根政権で、福田派の晋太郎氏はさほど重きを置かれず、政権中枢と距離があった」(小林氏)

◆晋三氏の登場と「特定秘密保護法」

 晋太郎氏の死から15年たった2006年、晋三氏は首相に就いた。思想新聞はここぞとばかりに「スパイ防止法制定急げ」「法の再上程を」と必要性を訴える見出しを付けた。

 安倍晋三政権は07年、海上自衛隊の情報流出疑惑を機に、「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」を米国と結んだ。米国と協定を交わした国が秘密軍事情報を共有する際、米国と同レベルの秘密保護が求められる。

 短命の第1次政権後、晋三氏は12年末に返り咲いた。翌137月の参院選で衆参ねじれ国会が解消したのを受け、力に任せた政権運営を展開。衆参両院で採決を強行して成立させたのが「特定秘密保護法」だ。

 防衛や外交の機密情報の漏洩ろうえいを厳罰化する同法は当時、スパイ防止法との類似点が指摘された。知る権利を侵す危うさをはらむが、思想新聞は「安保体制が大きく前進した」と持ち上げた。その一方、諜報ちょうほう活動をより強く取り締まる内容を盛り込んだスパイ防止法を制定するよう促した。

◆「教団系は自民党のいたるところに」

 「晋三氏が秘密保護法を成立させたがったのは祖父、信介氏への思いの強さ、教団との関係性からかもしれない」

 旧統一教会に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏はそう推し量る。

 ただ、教団と必ずしも考えが完全一致していないとも。「秘密保護法は政府が探られたくないことを追及されないようにした。一方、教団がスパイ防止法で求めるのはより踏み込んだ内容。両者の関係はまだ分からないことが多い。さらなる解明が必要だ」と語る。

 名古屋学院大の飯島滋明教授(憲法学)は、晋三氏が対米関係を考え、秘密保護法制定に動いたとみる。「スパイ防止法も秘密保護法も、政府による情報隠しを可能にし、戦争できる国づくりのための法。一気に進めると反発が大きいので、規制できる言動の範囲が限られる秘密保護法を足掛かりとしたのだろう」

 共同歩調が浮き彫りになった安倍家と教団系の過去。右派色の強い教団と一国の首相との関わりに、飯島氏は警鐘を鳴らす。

 「スパイ防止法が制定されれば、情報の入手はさらに制約される。基地監視はスパイ活動とされ、反基地運動が抑え込まれかねない。教団は自民党のいたるところに食い込んでいる。たださなければ、過去と似た動きが繰り返される」

◆デスクメモ

 陰に陽に勝共連合を支援したという晋太郎氏。死去から2年後、同じ山口県の選挙区から立候補したのが晋三氏だ。東京育ちで、選挙区との関わりは希薄。初当選を支えたのは父と縁深い面々だろう。では、勝共連合はどうか。恩返しのごとく、陰に陽に動いたのか。どうにも気になる。(榊)

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が刊行されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも取り上げたが、2023年10月7日から始まった、イスラエルとハマスとの間の紛争は半年を超えようとしている。イスラエルはガザ地区での地上作戦を展開し、パレスティナ側の民間人に多数の死傷者が出ている。最近では西側諸国の支援者たちがイスラエル軍の攻撃で死亡するという事件も起きた。ジョー・バイデン政権はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と政府の対応に、極めて強い不満を持っていることが報じられている。

 『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも書いたが、アメリカの二大政党である共和党と民主党のそれぞれの支持者で、ウクライナ戦争とパレスティナ紛争へのアメリカの支援(対ウクライナ、対イスラエル)について、姿勢が異なる。民主党支持者は、ウクライナ戦争でウクライナ支援を支持し、中東紛争でイスラエル支援には不熱心である。一方、共和党支持者は逆で、ウクライナ支援には不熱心であり、イスラエル支援には熱心である。昨年の段階で、そのような世論調査の結果が出ており、このことは拙著でも紹介した。

 昨年11月の世論調査に比べて、今年3月中旬の世論調査の数字は、イスラエルへの支援に反対が増えており、過半数が反対となったということだ。民主党支持者、無党派層では反対が大幅に増え、共和党支持者の中でも支持が減ったということである。

 イスラエルによるガザ地区での地上作戦でのパレスティナの民間人犠牲者については、世界各国で報じられ、アメリカ以外の国々では、イスラエルの行動に反対が多くなっていた。アメリカはイスラエルの強力な支援国であるが、そこでも反対が多くなっている。民主党であるバイデン政権は、この世論の動きを「利用」して、イスラエルへの支援の削減や、イスラエルのガザ地区での軍事行動に制限をかけるようとするだろう。これは、今年実施される大統領選挙を見据えた動きとなる。支持基盤である民主党支持者からの指示を固めるためにも、イスラエルに対しての何らかの動きは必要となる。大統領選挙に向けて、バイデン大統領は経済回復を実績とアピールしたい。それに加えて、外交、対外政策の面でも成功をアピールしたい。ウクライナ戦争が泥沼の状況になっている中で、中東紛争は、政権にとって対処すべき問題であり、そこで成功(停戦など)をアピールできれば、政権支持率の上昇に資することになり、大統領選挙でも有利に働く。アメリカとしてはまずイスラエルに停船を促す、圧力をかけるということになるだろう。更には、ネタニヤフ首相の「交代」「更迭」ということも視野に入っているかもしれない。

(貼り付けはじめ)

アメリカ人の過半数が現在、ガザ地区におけるイスラエルの行動に反対だ(Majority in U.S. Now Disapprove of Israeli Action in Gaza

-昨年11月から現在までで支持が50%から36%に下落した。

ジェフリー・M・ジョーンズ筆

2024年3月27日

「ギャロップ」

https://news.gallup.com/poll/642695/majority-disapprove-israeli-action-gaza.aspx

ワシントンDC発。昨年11月の時点では、イスラエルのガザ地区での軍事行動を僅差で支持したアメリカ人が、現在、この作戦に大差をつけて反対をするようになっている。現在、55%のアメリカ人がイスラエルの行動に反対し、36%が支持を表明している。
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最新の世論調査結果は、3月1日から20日までのものだ。イスラエルとハマスの戦争は5ヶ月間続き、数万人のパレスティナ人と1000人以上のイスラエル人が亡くなっている。ガザ地区の大部分は破壊され、今もそこに住むパレスティナ市民に人道援助を届ける努力を難しくしている。国連とジョー・バイデン政権を含む国際社会は停戦(cease-fire)を呼びかけているが、イスラエルとハマスの両陣営は合意できない状況だ。

今回の世論調査は、月曜日に国連安全保障理事会がラマダン期間中の停戦を求める決議を可決する前に終了した。アメリカが拒否権を行使せず、棄権したため決議は可決された。アメリカは以前に停戦を求める他の決議には拒否権を行使した。

アメリカの成人の74%は、イスラエルとハマスの状況に関するニュースを注意深く見ていると回答している。これは昨年11月に測定されたギャラップ社の世論調査の結果の72%とほぼ同じである。アメリカ人の3分の1(34%)は、状況を「非常に注意深く」注視していると答えた。

イスラエルの軍事行動に対する反対は、アメリカ人がどれだけ紛争に注目しているかにかかわらず、ほぼ同様である。しかし、注目度が低い人ほど、この問題に関して意見を持たない傾向が強く、その結果、注目度が高い人よりも支持率が低くなっている。
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●共和党支持者は肯定的スタンスを維持しているが、無党派層は決定的に否定的になっている

アメリカにおける3つの主要な政治的なグループ分け全てで、イスラエルのガザ地区での行動を昨年11月時点よりも支持しなくなっている。これには、民主党支持者と無党派層の支持率が18ポイント低下したことと、共和党支持者の支持率が7ポイント低下したことが含まれる。

無党派層は、イスラエルの軍事行動に対する見方が分かれていたが、反対へとシフトした。民主党の支持者は、昨年11月の時点で既に過半数が反対していたが、現在はさらに反対を強めており、賛成が18%、反対が75%となっている。

共和党支持者は依然としてイスラエルの軍事行動を支持しているが、賛成が71%から64%に減少した。
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イスラエルの行動に対する民主党所属の連邦議員たちの間で、反対意見が拡大していることは、ジョー・バイデン大統領にとって、彼の最も忠実な支持者の間でもこの問題が困難であることを浮き彫りにしている。民主党を批判する人々の中には、バイデンは停戦を促進し、紛争地域に巻き込まれたパレスティナ市民を支援するためのより強力な行動を取らず、イスラエルに寄り添いすぎていると考えている人がいる。

バイデンの中東情勢への対応に対する支持率は27%で、今回の調査でテストされた5つの質問の中では最低の数字であった。これは、バイデンがイスラエルとパレスチティナの情勢をどのように扱っているかを支持する民主党支持者たち(47%)が、経済、環境、エネルギー政策、外交問題など幅広い分野でのバイデンの扱いを支持する民主党議員よりもはるかに少ないためである。これらの問題に関しては、民主党支持者の66%以上がバイデンを支持している。

中東情勢に関するバイデンの低評価をさらに促しているのは、無党派層のわずか21%、共和党員の16%が、この問題でのバイデンの対処を支持していることだ。

それでも、中東紛争がバイデンの政治的地位に明らかな打撃を与えている訳ではないようだ。昨年10月と11月の調査では支持率が37%であったが、今回は40%となり、これは、おそらくアメリカ国民のアメリカ経済への信頼が高まっていることが理由となるだろう。

●結論(Bottom Line

イスラエルとハマスの戦争が長引くにつれ、戦争における同盟国イスラエルの行動に対するアメリカの支持は低下している。ギャラップ社が今年2月に実施した世論調査によると、アメリカ人はイスラエルとパレスティナ自治政府の両方に対してあまり好意的でないという結果が出ている。

多くの問題でそうであるが、アメリカ国内は党派別で激しく対立している。共和党支持者の大半は、秋の調査よりは少ないものの、イスラエルの行動を支持しており、民主党支持者の大半は反対している。無党派層の意見は、民主党支持者の意見にかなり近づいている。

アメリカ人はバイデンの紛争への対応を低く評価しているが、バイデンの大統領としての仕事ぶり全般に対する支持率は紛争が始まる前より下がってはいない。中東紛争は、アメリカ人が、アメリカが直面している最重要な問題を挙げるという質問では上位にランクされていない。また、アメリカ人がアメリカの重要な利益に対する重大な脅威として、いくつかの国際問題をそれぞれ評価する際にも上位にランクされていない。しかし、中東紛争は、この問題に深い関心を持ち、バイデン大統領の対応に憤慨している、バイデンに投票するであろう民主党支持者の投票率を下げることで、大統領に打撃を与える可能性がある。

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(終わり)
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が刊行されました。「西側諸国対西側以外の国々」という構造で国際政治を分析しています。是非手に取ってお読みください。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 インドネシアの新大統領に選出されたプラヴウォ・スビアント国防相が選挙後の初めての外遊として、中国と日本を訪問した。中国だけ、日本だけではなく、両国を訪問したという点はインドネシアの置かれている立場をよく表している。インドネシアは東南アジアの地域大国として、アジア全体の地域大国である中国と日本の橋渡しができる国である。思い返せば、北朝鮮の拉致被害者曽我ひとみさんが夫ジェンキンズ氏と娘たちと再会を果たしたのはインドネシアの首都ジャカルタでのことだった。

 プラヴウォ国防相(新大統領)は、インドネシア共和国の建国の父スカルノを失脚させ、第2代大統領となり、独裁者として権勢を振るったスハルトの娘婿だ(1983年に結婚・現在別居中という話がある)。陸軍の中で栄進を重ね、陸軍中将となった時に、民主化でスハルトが失脚し、軍を追われることになった。軍籍をはく奪された後は海外で亡命生活をしながら、ビジネスを展開し成功、資産は約1億5000万ドル(約225億円)と見られている。スハルトの娘婿、東ティモール派遣軍の司令官時代に、独立運動の活動家の殺害や弾圧、人権侵害に関わった疑いというマイナス面がありながら、政界に進出し、大統領選挙に何度も出馬している。

 2019年の大統領選挙では、二期目を目指すジョコ・ウィドド大統領の対抗馬として出馬し、選挙後には選挙に不正があったと主張し、プラヴウォ支持者が暴動をおこし、死者が出る騒ぎとなった。それほど対立した関係であったが、ジョコ大統領は、プラヴウォを自分の政権の国防相に迎え入れた。そして、今回の大統領選挙では、ジョコ大統領の長男ギブランが、プラヴウォの副大統領となり、実質的に、ジョコ大統領が「後継者」としてプラヴウォを指名し、「お目付け役」として長男をつけるということになった。選挙結果は、プラヴウォの勝利だった。1回目の投票で過半数を取れないので、2回目の決選投票になると思われていたが、1回目の投票で、プラヴウォは58%の得票率で勝利を決めた。

 ジョコ大統領はこれから院政を敷くことになる。プラヴウォは、ジョコ大統領の路線を継承することを公約に掲げている。そして、アメリカをはじめとする西側諸国と、中国をはじめとする西側以外の国々との間でうまくバランスを取りながら、国内経済成長路線を維持する。もし、何か反する動きがあれば、プラヴウォのマイナス面である、過去を掘り返して、大統領の座から追われるということになるだろう。副大統領となるジョコ大統領の長男ギブランが、大統領になるかどうかは不明だが、それもこれから5年での成果にかかっている。インドネシア政治はこれから注目される。

(貼り付けはじめ)
インドネシア次期大統領 中国 習主席と会談 関係強化を確認

202442 633分 NHK

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240402/k10014409911000.html
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インドネシアの次期大統領のプラボウォ国防相は、当選後、初めての外国訪問先として中国を訪れて習近平国家主席と会談し、双方とも両国関係のさらなる強化を確認しました。

ことし2月に行われたインドネシアの大統領選挙で当選したプラボウォ国防相は、当選後初めての外国訪問として習近平国家主席の招きを受けた中国を訪れていて、1日、北京で習主席と会談しました。

インドネシア国防省によりますと、会談でプラボウォ氏は「防衛分野の協力において、中国は地域の平和と安定を確保するのに鍵となるパートナーの1つだ」と述べ、中国との関係を重視していく姿勢を強調したということです。

中国外務省によりますと、これに対し習主席はプラボウォ氏の当選を祝福し「中国とインドネシアはともに新興国の代表であり、主権や安全保障、発展の利益を守る上で互いをしっかり支持すべきだ」と述べ、両国関係の強化を確認しました。

また、南シナ海をめぐってASEAN=東南アジア諸国連合の一部の国との領有権争いを念頭に「海洋協力を引き続き深めることを望んでいる」と述べ、インドネシアに理解を求めました。

中国としては、ASEANの大国であるインドネシアとの連携を重視する姿勢を改めて示し、地域での影響力を強めるねらいがあるとみられます。

プラボウォ氏は2日、日本も訪れる予定で、岸田総理大臣との会談が調整されています。
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【インドネシア】プラボウォ氏と岸田首相会談、協力強化確認

4/4() 11:31配信  NNAKyodo News Group

https://news.yahoo.co.jp/articles/6e93ecdf6cc95647af589409f4383d76e4abd06d

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 インドネシア次期大統領のプラボウォ・スビアント国防相は3日、訪問中の日本で岸田文雄首相と会談した。2国間関係や地域情勢について意見交換し、協力関係を強化していくことを確認した。プラボウォ氏の大統領選当選後の外遊先としては、日本が中国に続いて2カ国目となった。

 プラボウォ氏と岸田氏の会談は、午前9時15分から約35分間実施された。岸田氏は、プラボウォ氏に当選の祝意を改めて示し「早々の訪日は日本重視の姿勢と受け止め、大変心強い」と述べた。また「基本的な価値や原則を共有する『包括的・戦略的パートナー』として、2国間関係や地域・国際情勢に係る協力をさらに進めていきたい」とした。

 岸田氏は、2国間関係において、インフラやエネルギー分野で協力するほか、インドネシアが目指している経済協力開発機構(OECD)への加盟に向けて支援することも伝えた。

 プラボウォ氏は「インドネシアと日本は旧友であり、重要なパートナーだ。これまでの良好な関係をさまざまな分野でさらに強化したい」と述べた。安全保障協力をはじめ、農水産業や防災などの分野で、2国間関係を深めることに期待を示した。

 地域情勢を巡っては、東シナ海や南シナ海情勢、北朝鮮への対応、ミャンマー情勢などでも意見交換し、連携を継続していくことを確認した。

 プラボウォ氏は、2月に実施された大統領選の正式結果が3月20日に発表され初当選した。当選後初の外遊で同月31日~4月2日に中国を訪問し、習近平国家主席や李強首相と会談した。

 プラボウォ氏は、憲法上3選が認められておらず2期・10年で退任するジョコ・ウィドド大統領の後任として、1020日に就任する。

 ■木原防衛相とも会談

 プラボウォ氏は3日、木原稔防衛相とも会談した。両者は、防衛省で午前1028分から約50分間会談し、2国間・多国間の防衛協力や交流を強化していくことで一致した。木原氏は、南シナ海での力による一方的な現状変更や緊張を高める行為に強く反対すると表明した。中国の海洋進出を念頭に置いた発言とみられる。

 また木原氏は、海洋国家の両国間において「法の支配に基づく『自由で開かれたインド太平洋』を維持・強化していきたい」と述べた。 

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プラヴウォはインドネシアをどのように主導するか?(How Will Prabowo Lead Indonesia?

-今回の大統領選挙の勝者プラヴウォは選挙運動の中で過去を葬ろうとした。指導者として成功するために、彼は歴史が繰り返されないことを期待している。

サリル・トリパティ筆

2024年2月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/28/indonesia-elections-prabowo-leader-human-rights-jokowi/

大統領選挙において2度の失敗を経験した末、今年の2月14日、インドネシアのプラヴウォ・スビアント国防相が大統領選挙で念願の勝利を収めた。プラヴウォは自分の勝利が自分の政治の結果だと考えたいように見えるが、彼の成功はジョコウィとして知られるインドネシアのジョコ・ウィドド現大統領の人気に負うところが大きい。プラヴウォは2014年と2019年にジョコウィの対抗馬として出馬し、いずれも敗れた。しかし、ジョコウィは2019年にプラヴウォを国防相に任命することで、専門家と支持者の多くを驚かせた。ジョコウィの長男であるギブラン・ラカブミン・ラカは、プラヴウォの副大統領候補として出馬した。

インドネシアにおける選挙の最終結果は数週間以内に発表されるが、初期の集計によると、プラヴウォが得票率58%でリードしており、対抗馬のガンジャル・プラノウォとアニエス・バスウェダン(いずれも元州知事)を大幅に上回っている。他の候補者は2月14日の選挙に関して不正があったと主張し、投票結果に異議を唱えるつもりだと述べている。広範な操作の証拠があれば、憲法裁判所は結果を取り消す可能性がある。新大統領は10月まで就任しない。

任期制限により、ジョコウィ大統領は3度目の出馬を妨げられた。今回の選挙は、ジョコウィなら簡単に勝てたであろう。ギブランが副大統領として勝利すると予想されているため、多くのインドネシア人は次期政権がジョコウィの事実上の3期目、あるいは少なくとも継続性を示すものと見なしている。しかし、ジョコウィは大統領職を辞し、未知の領域に入りつつある。プラヴウォを支援することで、自身が今でも関係を持っている、インドネシア闘争民主党(Indonesian Democratic Party of Struggle PDI-P)との架け橋をジョコウィが燃やしてしまうことになった。闘争民主党候補者のガンジャールが3位に終わって、裏切られたと感じるのには十分な理由がある。ガンジャールは、自分の得票数がこれほど少ないとは信じていないと述べている。

プラヴウォはジョコウィの支援なしでは勝利できなかったが、統治するにあたり、ジョコウィに依存する必要はもはや存在しない。退任する大統領のテクノクラート出身の閣僚のうち、プラヴウォの下で引き続き職務を続ける者はほとんどいないと見られているが、プラヴウォはそれを気にしないかもしれない。彼の経済政策はポピュリズム的であり、特にインドネシアの財政赤字を増大させる学校給食プログラムなど補助金の増額提案などがある。対照的に、ジョコウィ政権の財務大臣、尊敬を集める経済学者スリ・ムリャニ・インドラワティは改革派として知られ、かつては世界銀行の専務理事を務めたこともある。彼女がプラヴウォの下で職務を継続する可能性は低い。

タイミングは選挙において、プラヴウォに対してもう1つの利点をもたらした。プラヴウォは、人々の記憶が薄れつつあることを利用して、権力を固めようとしている。選挙期間中、彼はソーシャルメディアを使って若い有権者に自分をアピールし、過去を覆い隠すような、かわいらしいおじいさんとしてのイメージを打ち出した。元陸軍中将の人権に関する記録はあまりに酷いもので、何年もの間、アメリカへの入国が事実上禁止されていた。興味深いことに、プラヴウォは3人の候補者の中で唯一、ヒューマン・ライツ・ウォッチが行った「インドネシアの次期大統領として人権を守るために何をするか」という質問に答えなかった。インドネシアの有権者の半数以上は1980年代以降に生まれており、プラヴウォが東ティモール(現東ティモール民主共和国)で特殊部隊の司令官を務めていたことなど、おぼろげな記憶しかないことになる。人権団体は、プラヴウォが東ティモールでの人権侵害に関係していると主張しているが、プラヴウォはこれを否定している。

もしプラヴウォが東ティモールでの勤務していた時代以降、ある種の免罪符を持っているように見えたとしたら、それは彼が長年、インドネシアを32年間統治したスハルト元大統領の次女、シティ・ヘディアティ・ハリジャディ(別名ティティーク)と結婚していたからだ。スハルトの息子たちはビジネスに専念し、婿のプラヴウォは軍隊で華々しいキャリアを積んだ。プラヴウォとティティークの結婚はかなり前に終わったが、ティティークは彼の立候補を支持し、今年最後の選挙集会にも彼の側に姿を見せた。2023年12月、プラヴウォは元妻ティティークを自身が率いる政党グリンドラ党の顧問に任命した。

スハルトの長期にわたる統治の間、インドネシアは多くの社会経済指標を改善し、食糧生産を増加させ、識字力を向上させ、外国からの投資を誘致した。しかし、この時代には寡頭制文化の台頭も見られた。スハルトの子供たちは事業で繁栄し、指導者と協力する縁故資本家たち(crony capitalists)が経済を支配した。1980年代に経済を安定させようとした努力にもかかわらず、汚職(corruption)は1990年代半ばまでに大幅に増加した。1997年7月にタイの通貨バーツが急落し、他のアジア通貨もその影響に巻き込まれた。

当時、インドネシアは公的債務を比較的うまく管理していたが、民間部門は、過大評価されているインドネシア・ルピアが安定的に続くとの前提で無謀な借り入れを行い、短期債務を積み上げていた。何かが与えられなければならず、市場はルピアに賭けて、ルピアを暴落させた。インフレと物資不足は避けられず、金融危機は本格的な経済危機(economic crisis)に変わり、その後、政治危機(political crisis)に発展した。スハルトは国際通貨基金(International Monetary Fund)に緊急支援を求め、その後はより実質的なパッケージを求めた。

世情不安(public unrest)が高まり、首都ジャカルタ全土でデモ行進が行われた。1998年5月、治安部隊はトリサクティ大学の学生活動家たちを取り締まり、少なくとも4人の学生が殺された。他にも多くの学生が拉致され、何人かは帰ってこなかった。その後の数日間、大きな変化が迫っていた。戦車が首都を走り回り、煙が充満し、デモ隊は企業を破壊し、スハルトに近い大物たちの邸宅を襲撃した。1998年5月21日、スハルトは辞任した。この出来事はプラヴウォのキャリアを後退させ、今も彼を苦しめている。

プラヴウォは予備役に編入された。プラヴウォは当初、学生拉致の責任を否定していたが、2014年の大統領選挙においては、命令を実行しただけだ、と自らの役割を認めた。

南東アジアはノスタルジックな局面を迎えているようだ。古い秩序への憧れが地域全体の選挙で繰り広げられている。フィリピンを統治するフェルディナンド・"ボンボン・マルコス・ジュニア(Ferdinand “Bongbong” Marcos Jr.)大統領は、彼の父親が1965年から1986年まで大統領を務め、民衆蜂起の後に倒され、1989年にハワイに亡命した。一方、マレーシアでは、1990年代に副首相を務めたアンワル・イブラヒムが首相を務めている。アンワルは1981年から2003年まで、そして2018年から2020年まで再びマレーシアを統治したマハティール・モハマド首相(当時)と対立し、アンワルは1998年に淫行と汚職の罪で投獄された。アンワルは最終的に2022年に首相となった。

多くの国民がスハルト時代の暗黒面を忘れていることを願いつつも、プラヴウォがインドネシアで政権を取ったことは、この傾向を裏付けているようだ。残る疑問は、プラヴウォとジョコウィの同盟関係がいつまで続くかということだ。ジョコウィの息子であるギブランは、スラカルタ市長を務めただけで、政治経験は浅いが、いつかは大統領になりたいと考えているようだ。もしプラヴウォがギブランを脅威と見なせば、2人の同盟関係に綻びが生じるかもしれない。72歳のプラヴウォは、スハルトが辞任したときより5歳若いだけで、選挙チームは選挙運動中に脳卒中の治療を受けたという噂を否定しなければならなかった。

インドネシアの専門家たちは、ワヤン・クリット[wayang kulit](影絵人形劇[shadow puppetry])と呼ばれる民俗劇を、この国の表向きには不可解な政治のメタファーとして用いることが多い。人々はスクリーンの向こう側で何が起きているのかを垣間見ることしかできないし、目に見えるものが正確に出来事を表しているとは限らない。スハルトはそのような曖昧さの達人(the master of such ambiguities)だった。しかし、プラヴウォはもっと率直で険悪で、短気なことで知られている。彼がインドネシアを統治する際に、ジェモイ(gemoy、かわいい)イメージを維持できるかどうかは未知数だ。

プラヴウォの闘争的な性格は、西側の諸大国に説教することを厭わないということであり、有権者にアピールできるかもしれない。過去には、インドネシアにとって他国からの民主政治体制に関する教訓は必要ないと発言し、ジャカルタのパーム油輸出への依存をめぐるヨーロッパ諸国からの批判には、植民地時代の歴史を引き合いに出して歯向かった。大統領選挙期間中、ヨーロッパ連合(EU)の森林破壊に対する政策を批判し、プラヴウォは次のように述べた。「茶、コーヒー、ゴム、チョコレートを植えさせたのはヨーロッパ人だ。そして今、私たちが森林を破壊していると言うのか? 私たちの森林を破壊したのはあなたたちだ」。この態度は、礼儀正しいポピュリスト(polite populist)というジョコウィの評判とは対照的である。

更に、狭い目的によって同盟関係が変化する多極化した世界では、プラヴウォはスハルトの型にはまり、独立した路線を作り上げるかもしれない。インドネシアと中国は南シナ海の係争中の島々の所有権を主張している国の1つだが、プラヴウォは中国への投資にヨーロッパの投資家たちよりも制約が少ないため、中国に言い寄っている。 2023年6月にシンガポールで開催されたシャングリラ対話(Shangri-La Dialogue)で、プラヴウォはモスクワで作成された可能性が高い、ロシアのウクライナ戦争に対する和平案を提案し、多くの地域アナリストやインドネシアのメディアを驚かせた。

プラヴウォは、インドネシアの広大な群島全域で学校給食費の補助を拡大する計画など、国内の支持を補強するために危険なポピュリスト的施策に頼ることになりそうだ。彼のチームは、初年度に76億8000万ドルもの費用がかかる可能性があると述べている。それは称賛に値するが、給食費補助計画はインドネシアの予算を圧迫し、財政赤字を拡大させる可能性がある。そうなればインフレにつながり、プラヴウォの側にはジョコウィ政権のテクノクラート的な有能な大臣たちはいなくなるだろう。プラヴウォは、ジョコウィのようなテクノクラート的な大臣たちを味方につけることはできない。彼の過去の気質がどうであれ、それはインドネシアに危険をもたらすかもしれない。

結局のところ、過去はインドネシアに必要なことの序章であってはならない。世界で4番目に人口の多い国として、その安定は重要であり、民主政治体制への移行(transition to democracy)を確固たるものにしなければならない。成功するためには、プラヴウォはインドネシアの若い人々の願望に応えることができる21世紀のリーダーになる必要がある。そして、技術力だけでなく、実質を提供する必要がある。

※サリル・トリパティ:ニューヨークを拠点とするライター。1990年代から東南アジアから報道を続け、その中にはジャカルタからスハルト政権崩壊も含まれている。著書に『悔い改めない大佐:バングラデシュ戦争とその不穏な遺産(The Colonel Who Would Not Repent: The Bangladesh War and its Unquiet Legacy)』があり、現在はグジャラートについての本を執筆中。

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インドネシア大統領選挙の勝者には暗い過去とかわいいイメージがある(Indonesia’s Election Winner Has a Dark Past and a Cute Image

-プラヴウォ・スビアントの記録は民主政治体制にとって良い兆候ではない

ジョセフ・ラックマン筆

2024年2月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/14/prabowo-indonesia-election-democracy-jokowi/

ジャカルタ発。「神のご加護で、1ラウンド、1ラウンド、1ラウンドだ。プラヴウォ、プラヴウォ」。歓喜に沸く群衆が、ジャカルタのスタジアムで次期大統領に決まったプラヴウォ・スビアントが勝利演説をするために到着したときにこのように大合唱した。約2億人のインドネシア国民が投票権を持ち、その52%が40歳以下という圧倒的な差で、旧独裁政権と深いつながりを持つ72歳の元陸軍中将を選んだ。

彼は変わったと言う人たちもいる。また、ジョコ・ウィドド現大統領(通称ジョコウィ)の選挙運動への暗黙の支援によって、既に緊張状態にあるインドネシアの民主政治体制にとって、ジョコウィの登場は悪い知らせになると懸念する声もある。ジョコ・ウィドド現大統領は、かつてのライバルの選挙運動を黙認していた訳ではない。インドネシアのヒューマン・ライツ・ウォッチのヴェテランのメンバーであるアンドレアス・ハルソノは、「ジョコウィは、インドネシアをかつての独裁者スハルトの、新秩序の闇に逆戻りさせる扉を開いてしまった」と語った。

最も明らかな心配の種は、プラボヴウォの伴走者であるギブラン・ラカブミン・ラカがジョコウィの息子であるという事実だ。父親が政治家としてのキャリアをスタートさせた、スラカルタ市長として2年強の政治経験を持つ、この36歳が立候補資格を得たのは、40歳以上という従来の制限を例外とする憲法裁判所の判決が最終的に下ったからだ。

国家は選挙運動の他の部分でも同様の判断を下している。党指導者たちに対する汚職捜査が浮上したが、ジョコウィがプラヴウォを支援することになった後は消えた。野党陣営は警察が嫌がらせをし、人々にプラヴウォを支持するよう圧力をかけていると訴えた。そして、インドネシア人への社会援​​助への支出が急増しただけでなく、場合によってはプラヴウォの選挙運動に関係する人々によって配られたとさえ伝えられている。前述のハルソノは「多くの法学教授や他の学者は、これはスハルト後のインドネシアでこれまで行われた中で最も汚い選挙であると述べた」と述べた。

大統領選挙に敗れた2人の候補は現在、開票における大規模な不正を主張している。結果を覆すのに必要な規模の、信頼に足る証拠はまだない。インドネシアの世論調査の専門家であるセス・ソダーボーグは、「あちこちに不正や問題があるのは確かだと思う。しかし、何千万票もの偽の投票があれば、その痕跡が残るだろう」と語った。

それでも、選挙運動中の選挙妨害は、多くの人々にとって、特にプラヴウォ自身の過去と組み合わせれば、懸念が存在することになる。特にプラヴウォ自身の過去と合わせればなおさらだ。彼が最初に注目されるようになったのは、東ティモールでの流血の対反乱作戦中にインドネシアの特殊部隊を指揮していた時だ。プラヴウォは将官として、抵抗運動の指導者ニコラウ・ロバトの殺害に関与した。プラヴウォは東ティモールと西パプアの虐殺の責任者として告発されているが、彼は疑惑について常に激しく否定している。

スハルトの娘との結婚により、プラヴウォは政治的に有名になり、一部の人は彼を潜在的なスハルトの後継者と見なしている。1998年に民主化運動がスハルト政権を崩壊させたとき、プラヴウォは23人の民主活動家誘拐に関与し(うち13人は行方不明で死亡と推定されている)、自ら権力を掌握しようとしたという疑惑がある。

新しい政権によって一時的に失脚させられたプラヴウォは、すぐにインドネシア政界に復帰した。2004年に大統領候補に指名され、2009年には副大統領候補として出馬し、2014年と2019年には大統領選に出馬した。

いずれの時もプロヴウォはジョコウィに敗れた。2019年に敗れたジョコウィは当初、大規模な不正を主張して結果を否定し、8人の死者を出す暴動を引き起こした。ジョコウィはプラヴウォを国防相として政権に参加させることで事態を打開し、多くの人々を驚かせた。

これにより、プラヴウォはジョコウィの後継者となり、多くの若い有権者にとってはかわいらしい老人へと変貌を遂げることになった。それ以前の10年間、プラヴウォの選挙運動は熱狂的な「強者のナショナリズム(strongman nationalism)」によって特徴づけられ、彼はスタジアムの馬の後ろに乗って、熱狂する群衆に対して、外国の破壊的勢力や共産主義について警告を発していた。彼は明らかに日和見主義(opportunism)であるにもかかわらず、過激派イスラム主義グループと同盟を結び、脅威を増大させた。プラヴウォの母親はキリスト教徒であり、彼の兄もキリスト教徒である。

今回、プラボウォは、かつて彼の陣営が、秘密共産主義者・中国系無神論者・キリスト教徒と中傷したジョコウィへの忠誠を仰々しく、繰り返し宣言し、その政策を継続することを計画した。選挙戦では、ナショナリズムの隆興が、外国人たちがインドネシアを没落させ、富を盗むことへの警告として感じられた。しかし、選挙戦で最も目立ったのは、「ジェモイ(gemoy、かわいい)」というイメージの宣伝だった。ソーシャルメディアは、父親のように不器用に踊ったり、猫を抱っこしたりする動画や、彼の顔をピクサーのアニメのように描いたもので埋め尽くされた。

特に若い有権者たちは、プラヴウォのイメージが気に入り、おそらく彼の過去を知らずに、彼に群がった。プラヴウォの勝利演説を待つ群衆の中で、大学の工学部で学ぶ学生のファウザン・ディスマスは、プラヴウォは「タフ(tough)」だから好きだと明言した。しかし、過去の人権侵害疑惑やスハルトとのつながりについて尋ねられると、ディスマスは「そのことについてはよく知らない」と言葉を濁した。彼は「私はまだ生まれていなかった」とも述べた。

それでは、次はどうなるのか?

国際的には、インドネシアの姿勢や立場が大きく変わることはないだろう。アメリカも中国もインドネシアに言い寄ってきているが、インドネシアは長い間、国際問題における中立(neutrality)と非同盟(nonalignment)の原則を堅持してきた。プラヴウォは、インドネシアの立場を冷戦時代のスイスやフィンランドに例えて、この姿勢への関与を強調している。

それでも、プラヴウォの大げさな性格と鋭敏なナショナリズムは、時折驚きをもたらすかもしれない。インドネシアは南シナ海における中国の領有権に異議を唱え続けており、その領有権はインドネシアが「北ナトゥナ海(North Natuna)」と呼ぶ海域と重なっている。昨年8月、プラヴウォはロイド・オースティン米国防長官との共同声明を発表し、一時的に対中強硬路線を取るように見えた。しかし、その2カ月前、シンガポールで開かれたシャングリラ・ダイアログで、彼はウクライナ和平案を提案した。

国内的には、民主政治体制の衰退(democratic decline)を心配する以上に、プラヴウォとジョコウィの同盟関係がいつまで続くかが重要な問題かもしれない。大統領選挙期間中、詳細な政策論議は欠けていたが、プラヴウォはインフラ整備、インドネシアの天然資源の「川下化(downstreaming)」、ボルネオ島への新首都建設などでジョコウィに追随することを声高に約束した。しかし、プラヴウォは気性が激しいことで知られ、何十年もの間、指導者への野心を抱いてきた。果たして彼は前任者の影に隠れていることに満足するのだろうか?

もしプラヴウォがこれに反旗を翻す場合、ジョコウィの影響力は限られたものになるかもしれない。ジョコウィの息子は副大統領かもしれないが、その役割にはアメリカと同様、大統領が譲り渡したいと思う以上の正式な権限はほとんどない。

ジョコウィはまた、自分自身の政治的手段も持っていない。彼はまだ形式的にはインドネシア闘争民主党(PDI-P)のメンバーだが、闘争民主党が推薦した候補者ガンジャル・プラノウォ元中部ジャワ州知事よりもプラヴウォを非公式に支援したことで、その闘争民主党との関係を繋ぐ橋は完全に焼け落ちてしまった。一方、彼のもう一人の息子であるケーサン・パンガレップが9月に引き継いだインドネシア連帯党という小政党は、国民評議会に議席を得るのに十分な票を得ることができなかった。

プラヴウォも72歳で、健康状態が良くないと噂されている。世界第3位の民主政体国家が、事業経営にはある程度成功したが、かつて父親が市長をしていた市の市長を2年間務めた経験しかない若者の手に委ねられることになるかもしれない。インドネシアのヴェテランのテクノクラートの中には、どちらがより心配なのか分からないというひとたちもいる。 プラヴウォ大統領か、ギブラン大統領か、どちらの方が酷いことになるのか?

※ジョセフ・ラックマン:インドネシアと東南アジアからの報道を行うフリージャーナリスト。ツイッターアカウント:@rachman_joseph

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(終わり)
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