古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。



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 古村治彦です。

 今回は、2013年1月15日に発表した政治学の一つの理論である、プリンシパル―エージェント理論(Principal-Agent Theory)を使って、日米関係と安倍総理について書いた文章です。

 この文章の妥当性が一年経ってどうなのか、是非お読みください。宜しくお願い申し上げます。

 『日本政治の経済学―政権政党の合理的選択』(マーク・ラムザイヤー+フランシス・ローゼンブルース著、加藤寛監訳、川野辺裕幸+細野助博訳、弘文堂、1995年)という本があります。この本は、日本政治研究において、大変に重要な本です。政治学に、合理的選択(ラショナル・チョイス、Rational Choice)というアプローチがあります。これは、ある政治的な行動について、「個人は利益の最大化(プロフィット・マキシマイゼーションprofit maximization)のために行動する、合理的に(rational、ラショナル)行動する」と説明するアプローチであり、現在の政治学の世界では大きな勢力になっています。



日本政治は、こうした合理的な説明ではなく、文化とか伝統、慣習、もしくは、構造から説明するものというのが通念でしたが(日本政治研究が本格化したのは第二次世界大戦後、しばらく経ってからです)、欧米の合理的選択で説明できるとしたのが、『日本政治の経済学』です。



この本で使われている理論は、プリンシパル・エージェント理論(Principal-Agent Theory)と呼ばれるものです。プリンシパルを「本人」、エージェントを「代理人」と訳すこともあります。プリンシパルと呼ばれる個人や団体は、自分の利益を最大化するために、エージェント呼ばれる人を雇います。エージェントは、プリンシパルの利益を最大化するために行動し、報酬を得ます。



このように書くと、大変難しく感じますが、日本政治を使って説明すると次のようになります。有権者(私たち)は、利益を最大化するために、政治家(例えば国会議員)を使います。この場合、有権者はプリンシパルとなり、政治家はエージェントとなります。そして、政治家、特に与党の政治家の場合は、官僚を使って、利益が最大になるようにします。この場合、政治家がプリンシパルになり、官僚がエージェントになります。プリンシパルが使う人、エージェントが使われる人ということになります。



・有権者(プリンシパル)―政治家(エージェント)

・政治家(プリンシパル)―官僚(エージェント)



 『日本政治の経済学』のなかで、ラムザイヤーとローゼンブルースは、この理論を使って、日本政治を説明しています。そして、自民党の政治家たちが官僚たちを使っているというモデルを作りました。それまでの日本政治のモデルは、官僚主導モデルというもので、日本政治を本当に動かしている、力を持っているのは官僚たちなのだというものでした。



 このプリンシパル・エージェント理論で重要なのは、エージェンシー・スラック(Agency Slack)と呼ばれる問題です。これは、プリンシパルとエージェントの間で、情報の非対称性、具体的にはエージェントは情報を持っているのに、プリンシパルが情報を持っていない場合、エージェントが自分勝手に行動し、プリンシパルが求めたものと違う結果をもたらすことです。そのために、プリンシパルは、エージェントが自分の要求通りに動くように、アメと鞭、自分の期待通りに動いたら報酬、期待通りに動かなかったら罰を与える、ということになります。ラムザイヤーとローゼンブルースは、『日本政治の経済学』のなかで、自民党官僚たちの昇進をコントロールすることで、エージェンシー・スラックを避けようとしてきたと述べています。



 これを現在の日米関係に当てはめてみます。日本はアメリカの属国(トリビュータリ―・ステイト、tributary state)ですから、プリンシパルはアメリカ、エージェントは日本の安倍晋三首相ということになります。アメリカの国益を最大化するために、安倍首相は行動します。日本の国益のために行動する訳ではありません。そして、安倍首相はプリンシパルになって、側近や官僚たちがエージェントとなります。



・アメリカ―(ジャパン・ハンドラーズ)―安倍首相―側近・官僚



 ここで、アメリカと安倍首相との間にも、エージェンシー・スラック問題があります。アメリカの意向通りに安倍首相が動かない場合、エージェンシー・スラック問題が起こります。



 以下のウェブサイト「プロジェクト・シンディケート(Project-Syndicate)」に、2012年12月27日付で、安倍首相の論文「アジアの民主国家による安全保障のダイアモンドを作る(Asias Democratic Security Diamond)」というタイトルの論文が掲載されています。この論文の存在は、新進気鋭の政治評論家である中田安彦氏に教えていただきました。(アドレスはこちら→

http://www.project-syndicate.org/commentary/a-strategic-alliance-for-japan-and-india-by-shinzo-abe



 この論文のなかで、安倍首相は、日本が主導して、韓国、インド、オーストラリア、遠くはイギリスやフランスを巻き込んで対中国包囲網を形成すること、東シナ海と南シナ海の海上航行の自由を確保するために、日本が中国と対峙することを主張しています。



 この安倍氏の、対中国強硬姿勢、ジンゴイズム(Jingoism)をアメリカはどれだけ望んでいるのか疑問です。アメリカは中国から国債も買ってもらっているし、経済関係も緊密です。世界覇権国の地位を脅かされるという不安はありながら、ソ連のように、ただ敵対すればよいというものでもありません。安倍氏については、太平洋戦争中の日本軍の行動に関して、歴史を書き変えようとする歴史修正主義(リヴィジョニズム、revisionism)があり、アメリカとしては、決して、「優秀な」エージェントという訳でありません。



 安倍氏個人が「優秀な」エージェントであっても、今度は彼がプリンシパルになって使う側近や官僚たちが「優秀な」エージェントでなく、安倍氏に彼らを抑える力がなければ、安倍氏の期待通りに動かないどころか、暴走することもあります。そうすると、アメリカから見れば、安倍氏が失敗した、エージェンシー・スラックが起きたと見なされるのです。そうなると、安倍氏には罰が与えられます。それは恐らく「辞任」ということでしょう。



 このように見ていくと、安倍氏が「低姿勢(ロー・ポスチュア、low posture)」でスタートしたのは彼にとって良かったと言えますが、いつアメリカから、「暴走した、期待外れだった」ということで首を切られるか分かりません。そう考えると、日本の首相の座というのも安泰ではないし、苦しい仕事なのだろうということが分かります。



(終わり)




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 古村治彦です。今回は前年に旧版に掲載した文章を再掲します。この通りになってしまうと、大変危険だなという思いがあり、2014年になっても、その危険性は高まるばかりであると考えています。


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4月になってもまだまだ寒い日々が続きます。私は現在、福島県の山間部におりますが、春というよりも晩秋といった風情です。まだまだ雪をも降ります。



季節が進み、夏になりますと、参議院議員選挙が行われます。この参議院議員選挙の争点は、「憲法改正」という点で、各政党は一致しているようです。



その中でも、特に日本国憲法第96条の「改正」を主張している政党(米政翼賛会と私は呼んでいます)と、それに反対している政党があります。



日本国憲法第96条は以下のような条文です。



(引用はじめ)



第9章 改 正

 

96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。



2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。



(引用終わり)



この条文は、憲法改正の手続きに関する条文です。この条文によると、憲法を改正する手続きとして、衆参両議院それぞれが所属議員3分の2以上の賛成で国民に憲法改正を提案し、国民投票で過半数の賛成があった場合に、憲法を改正することができるということになっています。複数の段階を経る、議員の3分の2というハードルの高さのために、これまで憲法改正は行われてきませんでした。また、55年体制下、野党第一党日本社会党は、憲法改正を阻止するために、しかし、与党になることは望まないという姿勢で、自民党とある種の妥協を行っていました。



今回、この日本国憲法第96条の改正を自民党と維新は目指しています。現在、衆議院は憲法改正に前向きな勢力が3分の2以上(自民と維新で348、民主党の一部も含めるともっと増える)を占めている状況です。参議院は3分の2以上となると162となりますが、憲法改正勢力はまだそれを占められないでいます。また、この夏の参議院選挙で3分の2以上を占めるためには、113議席の獲得が必要ですが、これはなかなか困難です。しかし、これは今回の参議院議員選挙だけを考えれば、です。次回2016年7月までを考慮に入れると、決して不可能な数字ではありません。また、現在の衆議院議員の任期は2016年12月15日までですから、それまでに解散がなければ、もう一度チャンスが巡ってきます。



「2016年」が大変重要であると考えます。今回の参議院議員選挙はそのための足掛かりになるということができます。



アメリカのオバマ政権も2016年まで(正式には2017年1月まで)ですから、それまでにTPPや日本の憲法改正手続きの「緩和(easing)」を進めておきたいということもあるでしょう。そして、2017年からの新しい大統領(おそらく共和党←外れたら申し訳ありません)で、「日米新時代」ということになるのではないかと考えます。自衛隊の領土領海外活動の拡大、米軍の下請け軍隊としての性格がよりはっきりとなっていくでしょう。経済、政治、そして軍事で属国化が進んでいくものと考えられます。



このシナリオが荒唐無稽で、まったく箸にも棒にもかからない笑い話で終われば良いなとは思いますが、そうならないかもしれない雰囲気も感じられるのです。



(新聞記事転載貼り付けはじめ)



●「首相と橋下氏が一致…改憲発議要件「過半数」に」



読売新聞電子版 2013年4月12日



http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130411-OYT1T01202.htm



 安倍首相と日本維新の会の橋下共同代表が9日の会談で、憲法96条が規定する改憲手続きを巡り、衆参各院の「3分の2以上」の賛成が必要とする改憲発議要件を「過半数」に緩和

すべきだとの認識で一致していたことが11日、分かった。



 会談に同席した維新の会の松井幹事長が、大阪府庁で記者団に明らかにした。



 松井氏によると、首相は「国民が憲法改正を議論するためにも、改正の発議ができる96条を緩和する必要がある」と述べ、橋下氏らも同様の認識を示した。さらに、過半数の賛成が必要とされている国民投票の要件の厳格化を検討する必要性でも一致したという。



 これに関連し、橋下氏は11日、大阪市役所で記者団に、「改正する条項に応じて(国民投票の)要件を変えてもいいのではないか」と述べ、要件の厳格化は重要条項の改正の場合に限定すべきだとの考えを示した。



20134121015 読売新聞)



●「維新連携視野に?菅長官「改憲を参院選争点に」」



読売新聞電子版 2013年4月9日



http://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/news/20130408-OYT1T01183.htm



 菅官房長官が憲法改正を夏の参院選の争点とすることを目指し、活発に発信している。



 8日の記者会見では、具体的な憲法改正の論点について「必要だと思うのは、環境権などだ。環境問題は憲法ができた当時、なかった。国民生活に大きな影響を与えるものだから、『加憲』で、憲法改正に入れていくのは当然のことだ」と環境権の明記に踏み込んだ。



 環境権は、「加憲」を掲げる公明党が新しい人権として主張しているテーマで、改正争点化に慎重な意見が多い同党に配慮したものとみられる。



 7日の福岡市での講演では、憲法改正の発議要件を緩和する96条改正に最優先に取り組む考えを示し、8日の記者会見でも「96条の改正がなければ、物事が進まない」と強調した。



 憲法改正に関する積極的な発信には、改正に意欲的な日本維新の会などと連携し、憲法改正に必要な衆参両院で3分の2以上の議席を確保する狙いがある。菅氏は9日、日本維新の会の橋下共同代表、松井幹事長と首相官邸で会談する予定。憲法改正を通じて公明、維新などとの連携を強化し、民主党を孤立化させる狙いも指摘されている。



2013491050 読売新聞)



●「<憲法改正>「ポイントは環境権」菅官房長官、公明に配慮か」



毎日新聞 48()1938分配信



http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130408-00000054-mai-pol



 菅義偉官房長官は8日の記者会見で、憲法改正の発議要件を定めた96条の見直しに関連し、改憲のポイントとして「環境問題は憲法ができたときにはなかったから、環境権を入れるのは自然ではないか」と述べた。



 記者団が、戦争の放棄を定めた9条の改正との優先順位をただしたのに対しては「自民党としても、現在の憲法の基本路線を守りながら、まず96条を改正しないと前に進まない」とかわした。環境権などを追加する「加憲」を掲げる公明党に配慮したとみられる。【鈴木美穂】



(新聞記事転載貼り付け終わり)

(終わり)


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 古村治彦です。


 今回は、米国防総省(U.S. Department of Defense)の発表した声明をご紹介します。年末にチャック・ヘーゲル米国防長官と小野寺五典防衛大臣との間での電話会談がキャンセルになりました。しかし、年が明けてさっそく会談が行われたようです。


 国防総省としては、「沖縄駐留アメリカ軍の再編」が重要な問題であり、そのことで、一歩「前進」となる辺野古沖埋め立てをまず歓迎しているのは当然のことです。それでも、近隣諸国との関係を改善することを求めることでバランスを取っています。


 アメリカとしては、「日米で共通の目的であるアジア(東アジア)地域の平和と安定」のために、日本が更なる努力をすることを期待し、日米同盟の強化、日米防衛ガイドラインの見直しを続けるとこの声明の中で表明しています。


 この日米同盟の強化、そして防衛ガイドラインの見直しというところが重要です。アメリカが求める「アジア地域の平和と安定」のために、日本に更なる「貢献」を求めるというのは字面だけなら結構なことです。


 しかし、そのために、日本がいかなる「前進」や「変革」を求められるのか、ということが問題です。その究極的な目標は憲法改正であり、日米共同運用性(interoperability)の強化という名の自衛隊の米軍下請化であると私は考えます。


 アメリカとしては、現在の段階で日中韓の間で直接的な大規模衝突は望んでいないでしょう。しかし、この多国間関係を管理することは難しいし、「想定外」のことが起これば、直接的な衝突にまで発展することもあります。


このたとえが適切かどうかは分かりませんが、国際関係は、原子炉内の温度管理に似ていると私は考えます。平常時であれば、温度管理はうまくでき、うまく操作し電気を作ることができますで。しかし、一朝「想定外」のことが起きた場合、原子炉内の温度管理は難しく、溶解(メルトダウン)にまで事態が悪化してしまうことは、これまでの原発の事故で起きたことです。


 大きく見れば、2014年に国際関係において大きなシフトが起きることは考えにくいし、現在のままで状況はだらだら続いていくと思います。日本にはフラストレーションがたまることばかりであると思います。ここで事態を急激に変えたいとして、「短気」や「驕り」、「自暴自棄」を起こしてしまうのは得策ではありません。事態をうまく管理するためには、そして忍耐力が必要な「自重」と「対話」が得策であると思います。迂遠ではありますが、これが一番の方法であると私は考えています。


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http://www.defense.gov/news/newsarticle.aspx?id=121431


ニュース


アメリカ軍報道サービス


ヘーゲル国防長官は、普天間基地移設を巡る努力に対して、日本の防衛大臣に謝意を示す

Secretary Thanks Japan's Defense Minister for Futenma Efforts


2014年1月4日付ワシントン発。チャック・ヘーゲル米国防長官は本日、日本の小野寺五典防衛大臣に対して、日本の沖縄にある海兵隊の普天間飛行場の移設のために、キャンプ・シュワブー辺野古の埋め立て許可申請に認可を与えるにあたり、日本政府が行った努力に謝意を示した。


両国の防衛分野の指導者2人の間で電話会談が行われた。会談の内容は要約され、国防総省の報道官であるジョン・カービー米海軍少将が声明として発表した。この声明の中で、カービー少将は、新しい施設(辺野古)について、「沖縄駐留アメリカ軍の再編において重要な、必要不可欠な要素である」と呼んだ。


カービー少将は、ヘーゲル長官が日米両国で日米地位協定に環境関連問題を追加することで交渉を進めていくことで合意に達したことの重要性を指摘した、と述べた。


加えて、カービー少将は、ヘーゲル長官と小野寺大臣は、2013年10月に発表されたイニシアティヴの実行について議論したと述べた。そのイニシアティヴには、TPY-2ミサイル防衛レーダーの日本に対する第二機配備と日米防衛ガイドラインの将来に向けての見直しが含まれていた。日米防衛ガイドラインの見直しにおいて、二国間が透明性を確保しながら交渉を行う重要性を確認した。


ヘーゲル長官は、「近隣諸国との関係を改善し、地域の平和と安定という日米共通の目的を達成するために手段を取ることが重要だと力説した。ヘーゲル長官は、21世紀における安全保障問題に対処するために日米同盟を強化するために二国間で議論を続けていくことを楽しみにしていると語った」と述べた。


(終わり)




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