古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

 古村治彦です。

 

 トランプ政権内における内部抗争に関する記事を2本ご紹介します。1つ目はバノン対プリーバス、2つ目はバノン対クシュナーという構図のものです。1つ目では、トランプの最側近であるスティーヴン・バノン(大統領首席ストラティジスト)と共和党エスタブリッシュメントに近いレインス・プリーバス(大統領首席補佐官)の争いがあり、トランプは両者を更迭するのではないかという内容の記事です。

 

 2つ目はクシュナー(トランプの義理の息子、大統領上級顧問)とバノンが対立しており、対立解消のために2人で会談を持ったという内容の記事です。バノンが過激な政治観、クシュナーは穏健な政治観を持っており、そのために対立していると言われています。

 

 このブログでもご紹介しましたが、クシュナーはヘンリー・キッシンジャーの支援を受けて、中国側と穏健に話し合いをする路線ですが、バノンは強硬な姿勢を取っています。

 

 トランプ政権内には、過激で強硬な政治姿勢を主張する勢力を代表するバノンと、穏健でエスタブリッシュメントとも仲良くやっていこうという勢力を代表するプリーバスとクシュナーがおり、この2つの路線が対立しているということになります。

 

 クシュナーとプリーバスの関係がどうなのかは不明ですが、少なくともお互いのバノンとの関係よりは良好であると考えられます。

 

 大統領選挙でトランプを当選させた人々とそれ以外の人々の争いという言い方もできると思いますが、トランプ政権は、2つの路線のバランスの上に成り立っていて、大統領であるトランプが最終的にどちらの考えを採用するのかという形になっていますが、どちらかに肩入れしているという感じは受けません。最後のところはトランプが決断をしますが、ある時は穏健派の考えを、別の時には強硬派の考えを採用しているという感じです。

 

 スティーヴン・バノンが最も影響力を与えていると考えられますが、義理の息子であるクシュナーを重用しています。どちらも通常の政権ではそこまで影響力が大きくない役職である首席ストラティジスト、上級顧問という個人スタッフ程度の役職で、そうした役職の人々が大きな役割を果たしているということについて、公的な立場であるプリーバスには面白くないかもしれません。

 

 これからトランプ政権内部のバランスがどのように変化していくかを注目していかねばなりません。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプはプリーバスとバノンの排除を検討している(Report: Trump considering ousting Priebus, Bannon

 

マックス・グリーンウッド筆

2017年4月7日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/administration/327757-report-trump-considering-ousting-priebus-bannon

 

トランプ大統領は大統領首席補佐官のレインス・プリーバスと大統領首席ストラティジストのスティーヴン・バノンの両方を解任しようと考えていると、金曜日、『アクシオス』誌が報じた。

 

複数の大統領の側近や補佐官たちは『アクシオス』誌に対して、「トランプ大統領は大統領執務室の退勢の大幅な再編を考慮しているが、プリーバスとバノンの解任をいつやるのか、解任をするのかどうかは明確ではない」と語った。

 

ある側近は「差し迫った状況にあるが、大統領が2人の更迭という手段を取ろうと思っているのかは明確ではない」と語った。

 

バノンは、トランプの大統領選挙当選前から、トランプに最も近い、そして最も人々の批判を浴びる側近として注目を浴びてきた。政権発足直後、トランプはバノンを国家安全保障会議の最高会議の常任出席者に引き上げた。『ブライトバート』誌の元最高経営責任者バノンはトランプ大統領に大きな影響を与えていると言われてきた。

 

しかし、今週初め、バノンは国家安全保障会議から排除された。この措置は、ホワイトハウスのスタッフの多くにとって、政権におけるバノンの影響力の低下を示す兆候として捉えられている。「経済ナショナリスト」と自称しているバノンは、自分自身が影響力を巡って、トランプの義理の息子であり、上級顧問であるジャレッド・クシュナーとの間で争っていることを認識しており、そうした中で、国家安全保障会議の再編が行われた。

 

バノンとプリーバスはトランプ政権内の異なる勢力を代表している。プリーバスは共和党全国委員会委員長を務め、政治の素人ばかりのホワイトハウスの中でエスタブリッシュメント側の主張を伝える立場となっている。

 

両者の更迭は発足して間もないトランプ政権に深刻な影響を与えるだろう。トランプ政権は発足してまだ100日も経過していないのだ。

 

アクシオス誌はバノンの後任の首席ストラティジストが誰になるかを報じていないが、首席補佐官プリーバスの後任候補には、連邦下院共和党院内総務ケヴィン・マッカーシー(カリフォルニア州選出、共和党)と大統領経済顧問ゲイリー・コーンの名前が挙がっていると報じた。

 

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クシュなーとバノンは物事を穏やかにしようとしている(Report: Kushner and Bannon attempt to smooth things over

 

ニキータ・ヴラディミロフ筆

2017年4月7日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/administration/327932-report-kushner-and-bannon-attempt-to-smooth-things-over

 

『ポリティコ』誌は金曜日、大統領顧問であるジャレッド・クシュナーとスティーヴ・バノンは、2人の間にある緊張関係をほぐすために、今週、大統領に随行してマーアラゴに到着した後に会談を持ったと報じた。

 

『ニューヨーク・タイムズ』紙は更に2名の別々の取材源(クシュナーとバノンの会談の内容を教えられている)の証言によると、トランプ大統領は側近たちに2人の会談は「うまくいった」と述べた、と報じている。

 

ニューヨーク・タイムズ紙は、バノン、クシュナー、大統領経済顧問ゲイリー・D・コーン、大統領首席補佐官レインス・プリーバスが政権内部で争いが起き、その解決のためにトランプから指示が出された、と報じた。

 

ポリティコ誌によると、バノンとクシュナーとの間での不同意の原因は、政策の違いである。

 

バノンはトランプの義理の息子クシュナーの穏健な政治観を批判し、クシュナーはバノンの大統領に対する影響力と彼のぎらぎらしたスタイルに就いて懸念を表明している、と報じられている。

 

ポリティコ誌によると、バノンとクシュナーはお互いのマイナスの話をメディアにリークすることでお互いを攻撃し合っている、ということだ。

 

今週初め、トランプはバノンの国家安全保障会議での役割を外す決定を下した。

 

ホワイトハウスは政権内部の争いについての報道内容を否定した。

 

ホワイトハウスのサラ・ハッカビー・サンダース報道官はニューヨーク・タイムズ紙の取材に対して次のように語った。「繰り返しますが、この種の内部争いの葉梨は完全に間違いです。この種の話を出しているのは、この政権がもたらしている成功から人々の目を逸らさせたいと思っている人々です。大統領の最高裁判事の指名(この決定は長期間にわたり影響を残す)が本日、承認されました。今週、多くの外国の指導者をお迎えしました。そして、昨晩、大統領はシリアに対して決定的な軍事行動を取りました。私たちが人々を狼狽させているのは、トランプ大統領の積極的な政策を進める際に採用している手法のためであると言えます」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22

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 古村治彦です。

 

 いよいよ米中首脳会談が始まります。北朝鮮のミサイル発射もあり、米中間でどのような話になるのか注目されます。トランプ政権内部には対中強硬派と対中交渉優先派があり、その内部対立が激しくなっているという報道もあります。そして、その流れで、トランプ大統領の側近スティーヴ・バノンが国家安全保障会議から外されるということがニュースとなりました。バノンは前からトランプの義理の息子ジャレッド・クシュナーと関係が悪いと言われていて、今回のことではクシュナーが勝利したという報じられ方もしています。

 

 前回のブログ記事でもご紹介しましたが、クシュナーがトランプ政権内の対中交渉優先派で、ヘンリー・キッシンジャーの斡旋を受けて中国側と交渉をしています。バノンは対中強硬派ということで、今回の件は中国に対して、対中融和路線に進むということを示したということができます。

 

 しかし、同時に大統領首席ストラティジストであるバノンが国家安全保障会議に出席していたことは異例中の異例で、これはマイケル・フリン前大統領国家安全保障問題担当補佐官(2月に辞任)のアレンジであったのですが、後任のマクマスター補佐官が通常に戻したということになります。ちなみに大統領国家安全保障問題担当補佐官が国家安全保障会議を主催します。バノンはフリンを監視監督するために会議に出席していたので、その必要がなくなったという主張もあるようです。

 

 スティーヴ・バノンの影響力はこれくらいのことでは低下しない、彼はトランプ大統領と一対一で議論できる立場に変わりはないという意見もあります。

 

 こうして考えると、バノンが国家安全保障会議から排除されたことは大きな事件ではなく、中国に対してのアピールなのではないかと考えることができます。

 

(貼り付けはじめ)

 

大逆転で、トランプはバノンを国家安全保障会議から追放(In Reversal, Trump Banishes Bannon from National Security Council

 

ダン・デルース筆

2017年4月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/04/05/in-reversal-trump-banishes-bannon-from-national-security-council/

 

ドナルド・トランプ米大統領は水曜日、首席ストラティジストであるスティーヴン・バノンを国家安全保障会議(NSC)に出席させないことに決定した。これは、政策形成機関である国家安全保障会議の再構成の一環であり、情報・諜報と軍事面の指導者たちの伝統的な役割を復活させることになった。

 

今回の動きは、トランプ大統領の国家安全保障問題担当補佐官H・R・マクマスター中将が、NSCのこれまでとは異なる形態を終わらせることで自身の権威を増大させようとしたということを示している。トランプ政権におけるNSCの構成に対して、民主、共和両党の連邦議員たちや外交政策専門家たちは懸念を表明してきた。

 

トランプに批判的な人々は、政権発足からすぐにバノンがNSCの常任出席者に引き上げられたことを、ホワイトハウスが、軍事行動と外交政策に関する重要な考慮に関して党派政治とイデオロギーを持ち込もうとしている徴候だと考えた。元政府高官たちは、バノンが出席するというNSCの構造は、大統領のために国家安全保障に関する決断を形成する責任が誰にあるのかを巡って、内部抗争と混乱をもたらすだろうと警告を発していた。

 

NSCの再編成は火曜日に出されたメモランダムでまとめられ、水曜日に発表された。ホワイトハウスは今回の命令についてコメントを拒否した。

 

マクマスターの前任者である退役陸軍中将マイク・フリンは、中米ロシア大使との会話についてマイク・ペンス副大統領に誤った情報を伝えたことを受けて、2月に辞任した。フリンが今回のNSCの通常とは異なる構成を始めたのだ。つまり、白人優越主義的で国家主義的なブライトバート社の元会長をNSCに引き入れたのはフリンだ。NSC最高会議は通常は閣僚レヴェルで構成される。トランプ政権下でのNSCでは、情報諜報と軍事部門のトップが外されていた。彼らは最高会議の議題が彼らに関わる時のみ出席することになっていた。

 

メモランダムでは、新しい構成では、ダン・コーツ国家情報長官と統合参謀本部議長ジョセフ・ダンフォード大将はNSC最高会議の定例出席者となると書かれていた。新たな大統領令で、NSC最高会議にはCIA長官、エネルギー長官、米国連大使も出席者に加えられることになった。

 

2月に補佐官に就任したマクマスターは、前任者のフリンと違い、トランプの選挙対策本部とは何の関係も持っていなかった。マクマスターは今回のNSCの再編でもう一つの官僚機構における勝利を収めた。国土安全保障会議は、これまでの別組織として独立してきた形から、マクマスターの権威の下に置かれることになった。

 

ホワイトハウスのある高官はマスコミの取材に対して、バノンがNSCに出席するようになったのは、フリンを監督し、NSCを合理化し、より効率的に運営されるようにすることが目的であったと述べた。この高官は、この目的は達成されたので、バノンはNSCに居続ける必要はなくなったのだと語った。

 

ヤフー・ニュースはこの政府高官の次のような発言を引用した。「スティーヴはマクマスターを補佐官に就任させることを主導した。マクマスターは基本的にスティーヴの考えを共有しているので、スティーヴがNSCに留まる理由は存在しない」。

 

バノンは外交政策や統治に関する経験を持っていない。更には移民反対の唱道者であり、ヨーロッパ各国の極右政党と関係を持っている。NSCにおけるバノンの存在は、元政府高官に警戒心を持たせ、連邦議会民主党から激しい批判を巻き起こした。

 

NSCの再編が行われた。しかし、バノンはホワイトハウスでの有力な立場を維持している。彼はトランプの選挙運動の最後の数カ月を取り仕切り、勝利をもたらした。そのために、大統領執務室に何の許可も要らずに入ることができる。NSC内の席の入れ替えをしてもバノンの影響力はほぼ変わらない可能性が高い。

 

オバマ政権下で駐ロシア米大使とホワイトハウス顧問を務めた経験を持つマイケル・マクフォールは、次のようにツイートした。バノンはNSC内部の高官たちの意見に従う必要はない。彼は大統領執務室で「トランプと差向い」で様々な問題を討論することができる。

 

政治顧問がNSCで公的な役割を果たすことは珍しい。レーガン政権で大統領顧問を務めたエドウィン・メッセがNSCに出席した例はある。

 

民主党所属の連邦議員は今回のトランプの決定を受けて安心感を表明したが、「バノンはホワイトハウスにいるべき人物ではない」とも述べた。

 

バーバラ・リー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は次のように語った。「スティーヴ・バノンの病んだイデオロギーがこれ以上、国家安全保障会議に悪い影響を与えることはないということで安心しました。しかし、バノンが引き続き政権内に留まることはアメリカ国民にとって脅威となります。私はトランプ大統領に対して、スティーヴ・バノンにドアを指さして、危険な過激主義者たちで構成されている政権から出ていくように指示することを求めます」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22

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 古村治彦です。  

 『ザ・フナイ』2017年5月号が発売になりました。『ザ・フナイ』は、日本の経営コンサルタントの草分けである故船井幸雄先生が創設した船井本社が発行する月刊誌です。4月号、5月号で、副島隆彦先生、船井勝仁氏との鼎談を掲載していただきました。5月号には鼎談の後半部です。

 宜しくお願い申し上げます。

thefunai201705hyoushi001
 ザ・フナイ 2017年 05 月号 [雑誌] 雑誌 – 2017/4/3

thefunai20175gatsugou001

(終わり)








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