古村治彦です。
2017年4月6日に米中首脳会談が行われます。その下準備を行ったのが、トランプの娘イヴァンカの配偶者(義理の息子)であるジャレッド・クシュナーだということです。以下の『ワシントン・ポスト』紙の記事は大変重要です。
クシュナーはトランプの側近で、2016年5月に、トランプがヘンリー・キッシンジャー元米国務長官と会談を持つ際にアレンジをした人物です。当選後、ヘンリー・キッシンジャーはトランプに頼まれて訪中し、トランプと習近平それぞれのメッセージを伝えるという役割を果たしました。そして、キッシンジャーは、トランプ政権内の対中国チャンネルとしてクシュナーが機能するようにお膳立てをしました。
トランプ政権内には対中宥和派(ただ親中国なのではなく交渉でうまくやっていこう)と対中強硬派がおり、それぞれが役割分担をしてうまくやっている印象です。強いことを言いながらも、ちゃんと交渉が出来るようにもしておくという外交の基本中の基本ができています。
クシュナーはキッシンジャーの助けを借りて、国務委員・楊潔チと駐米中国大使である崔天凱との関係を築き、米中関係の問題解決のためのチャンネルになるということで、これからますます重要性を増していくことになりそうです。義理の息子がホイホイとしゃしゃり出ているということではなく、「キッシンジャーのお墨付き」を得て活動しているというところに価値があります。
政治の世界では裏でつながるということがとても泰司なのだということを改めて認識しました。
(貼りつけはじめ)
クシュナーの中国へのチャンネルの内側(Inside the Kushner channel to China)
ジョシュ・ロギン筆
2017年4月2日
『ワシントン・ポスト』紙
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/inside-the-kushner-channel-to-china/2017/04/02/d1a960c6-164f-11e7-833c-503e1f6394c9_story.html?utm_term=.63f01b9116b5
4月6日(木)の中国国家主席習近平との首脳会談を前に、トランプ政権は、省庁間の垣根を超えたティームを作り、中国側のメッセージ、政策、米中関係における優先順位について議論を行っている。これは比較的常識的なプロセスである。しかし、この作業を詳しく見ると、ホワイトハウスと中国の最高指導部との間の高いレヴェルでのやり取りのためのカギとなるチャンネルが存在することが分かる。このチャンネルは、トランプの義理の息子ジャレッド・クシュナーによって形成されている。
クシュナーの対中国チャンネルは、大統領選挙でトランプの勝利後すぐに、ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官の助けを借りて形成された。中国の最高指導部の幹部たちと次々と会談を持つ中で、クシュナーをはじめとするトランプの側近たちは、現在の政策プロセスが始まる前に、来たるべき首脳会談における方向付けと幅広い議題を決定した。トランプと習近平がマーアラゴで首脳会談を持つ際に、2人は準備期間の一連の会談で、アメリカ、中国、アジア太平洋地域に関する、クシュなーたちが議論したテーマを話すことになるだろう。
ホワイトハウスと政権移行ティームの幹部たちは、「クシュナーの目的は、様々な厄介な諸問題は存在するが、米中関係を拡大し、改善することだ」と語っている。クシュナーの目的は、トランプが選挙期間中に公約に掲げた、様々な問題に関して中国政府と対峙したいと望む他の政権幹部たちの考えと対立する。
選挙後の2016年11月中旬、キッシンジャーは、米大統領国家安全保障問題担当補佐官就任予定だったマイケル・フリン(後に辞任)、トランプとトランプタワーで会談を持った。この席でトランプは、キッシンジャーに対して、北京を訪問して習近平に対して、「二国間の協力関係について全ての選択肢がテーブルの上にある」ということを直接伝えてほしいと頼んだ。12月2日、キッシンジャーは北京を訪問し、習近平と会談を持った。習近平は、米中間の首脳会談をできるだけ早く実現したいという私的なメッセージをキッシンジャーに託した。
同じ12月2日、トランプは、台湾総統蔡英文から統制祝いの電話を受けた。これに対して中国外務省は反発した。しかし、公になった緊張関係の裏で、米中両国間でお互いに関係改善を求める姿勢は継続した。キッシンジャーは、12月6日、クシュナーをはじめとするトランプの側近たちと会談し、中国の国務委員である楊潔チと会談を持つように促した。その後、楊潔チと駐米中国大使である崔天凱は、2016年12月9日、10日にトランプタワーを訪問して、クシュナーのオフィスが主導して2度の会談を持った。
会談の中で、楊潔チは中国側の要求リストを提示した。中国側は、トランプ政権に対して「大国関係の新しいモデル」という考えを採用するに求めた。この考えは習近平が提案したもので、衝突を回避し、協力関係を深化させるためのものだ。中国側はまた、習近平の唱える「一帯一路」イニシアティヴをトランプが支持することを希望した。「一帯一路」イニシアティヴは中国の大規模なインフラと開発プロジェクトの総称である。中国側は更に、中国が革新的な国益だと考える台湾、ティベット、国内問題にアメリカが干渉しないように求めた。
見返りとして、中国は、雇用創出のためのトランプの国内優先政策の推進を助けるために金額などを決めていないが投資を行う準備があると伝えた。クシュナーと崔大使は、12月の会談以降も緊密に連絡を取り合い、中国の最高指導部もクシュナーのチャンネルに依存する形になっている。クシュナー・チャンネルは、来たるべき首脳会談のアレンジに使用された。
11月中旬、クシュナーは、中国の保険会社である安邦保険集団の幹部たちと会談を持った、クシュナーの不動産会社が安邦保険集団からの不動産投資の交渉を行った。しかし、こうした交渉は、利益相反の可能性があるという批判を受けて、先週まで中止されていた。
政権内部には、クシュナーが中国の関係を改善しようと躍起になり過ぎているという懸念の声がある。クシュナーと考えを同じくしている政権幹部として、大統領経済顧問ゲイリー・コーンと財務長官スティーヴン・ムニューシンが挙げられる。中国に対してより厳しい、より攻撃的なアプローチを主張する政権幹部には、大統領首席ストラティジストであるスティーヴ・K・バノン、国家通商会議議長ピーター・ナヴァロ、商務長官ウィルバー・ロスがいる。
あるホワイトハウス高官は、クシュナーは無条件に親中国ではないし、トランプは選挙期間中に、安全保障と貿易に対して中国と対決するという主張を公約の柱としていたことを認識している。
この高官は次のように語った。「ジャレッドの中国に対する見方は、全てが交渉可能だというものだ。ジャレッドは不動産業者であり、全ての物事でウィン・ウィンを実現できる解決策があると考える。彼はまた政治的な知識も豊富だ。こうしたことが義父であるトランプ大統領の政治姿勢に大いに影響を与えている」。
米中関係のある程度の改善は明確になっている。クシュナーは他の側近たちと一緒になって、トランプが2月に習近平と電話会談を行った際に、「1つの中国」政策を堅持することを再確認するように説得した。レックス・ティラーソン国務長官は今年3月に中国の王毅外相と会談した後に、中国側の主張をバカにしたような態度を取った。
米中首脳会談を観察している専門家たちは、トランプ大統領からはいくつかの個別の問題で厳しい言葉が出るであろうと考えている。北朝鮮と南シナ海に関して、トランプ政権は、伝統的な共和党のタカ派的安全保障政策を主張している。貿易に関して、トランプは、国家主義的なアメリカ・ファーストの経済政策に固執している。
しかし、トランプが中国の提案している大国間関係モデルと中国のアジア地域での拡大を支持し、国内の弾圧について発言をしないということになると、これは米中関係の新しい時代を迎える予兆となるだけではなく、米中関係においてクシュナーが最重要人物であることを示すことになる。
(貼りつけ終わり)
(終わり)