古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

 古村治彦です。

 2019年6月から大統領選挙民主党予備選挙候補者討論会が毎月1回のペースで実施されている(8月以外)。1回目(6月)と2回目(7月)の討論会の参加条件は、民主党全国委員会が承認した世論調査で3回以上1%以上の支持率を記録するか、政治献金者を6万5000名以上か各州最低200名以上を20州以上記録することだった。1回目、2回目の討論会には20名が参加となり、それぞれ2晩に分けて開催された。 

 3回目(9月)、4回目(10月)の討論会の参加条件は厳しくなり、民主党全国委員会が承認した世論調査で4回以上2%以上の支持率を記録し、政治献金者を13万名以上が各州400名以上を20州以上で記録することだった。9月の討論会の参加条件をクリアしたのは10名だった。10月の討論会の参加条件をクリアしたのは、12名となり、2晩に分けて実施するか検討中だということだ。democraticpresidentialdebateseptember2019001

9月の討論会の様子

 5回目の討論会の条件は更に引き上げられた。世論調査の支持率では9月13日から討論会の1週間前(正式な日取りは決まっていない)の間で、民主党全国委員会が承認した全国規模もしくは各州の世論調査で3%以上の支持率を4回以上、加えて早期に予備選挙が実施される各州(アイオワ州、ニューハンプシャー州、サウスカロライナ州、ネヴァダ州)での世論調査で支持率5%を2回以上記録することとなった。政治献金の面では政治献金者16万5000名以上、各州600名上を20州以上記録することとなった。この両方をクリアすることが必要になる。

 献金者数の条件は倍々ゲームで増えていたが、今回は増加幅が小さかった。9月の討論会参加条件締め切り期限である8月28日の時点で13名の候補者が13万人以上という条件をクリアしていたので、9月と10月で3万5000人を増やすことは大変ではあるが、献金者数の条件はクリアしやすい。支持率に関する条件は難しい。候補者の戦略も絡んでくる。少ない資金とスタッフをどう使うかということにかかってくる。早期に予備選挙が実施される4州を重点的に回っている候補者の場合は、5%を2回という条件のクリアに欠けることになる。全国各地を回っている候補者でも4州に重点を移す人も出てくる可能性がある。あまり条件を厳しくし過ぎると、「候補者を排除しようとしている。どの候補者が生き残るかどうかを決めるのは民主党全国委員会ではなく、有権者だ」という批判が出るのを民主党全国委員会が避けようとしている。

 トップ5のジョー・バイデン前副大統領、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)、カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)、インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジはこの条件を早々にクリアするだろう。

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左からブティジェッジ、サンダース、バイデン、ウォーレン、ハリス 

 しかし、中位グループからは脱落者が出るだろう。9月の討論会の際に10名が条件をクリアしたが、下半分の5名の中でどれほどの候補者が条件をクリアできるか注目される。下位5名には、コーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)、ビトー・オローク前連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)、フリアン・カストロ前住宅・都市開発長官(民主党)、エイミー・クロウブッシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)、IT経営者のアンドリュー・ヤンが入った。

 10月の討論会は9月の討論会と参加条件が同じで、9月の時に登壇できた候補者たちは自動的に登壇できる。更に、あと少しのところで条件を満たせなかった富豪のトム・ステイヤーとトゥルシー・ギャバ―ド連邦下院議員(ハワイ州選出、民主党)が10月の討論会の参加条件を満たしたので、登壇者は12名となる。

 下位5名に更に2名が加わった7名から11月の討論会へ参加できるかどうかで脱落者が出る。12月の討論会への参加条件が今回発表されなかったので、更に厳しい条件が課せられることになり、11月の討論会に参加できなかった候補者は最高のアピールの場に参加する機会を失う。 

 予想外の健闘を見せているアンドリュー・ヤンは11月の討論会の参加条件をクリアする可能性が高い。トム・ステイヤーも早期に予備選挙が実施される各州での世論調査で数字を上げているので条件をクリアする可能性が高い。問題は中途半端に知名度と人気があり、全国を回る選挙運動を展開している中位の候補者たちだ。自分の持っている資金力と人力を冷静に判定してどのように投入するかを判断しなければ条件クリアできないということになる。ブッカー、オローク、クロウブッシャー、カストロといった人々は難しい選択を迫られることになるだろう。

 討論会に出られるかどうかは、選挙運動を続けられるかどうか、負け犬イメージがつくかどうかという点で重要だ。各候補者の戦略が注目される。

(貼り付けはじめ)

民主党全国委員会は5回目の討論会の条件を引き上げ(DNC raises qualifying thresholds for fifth presidential debate

マックス・グリーンウッド筆

2019年9月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/462633-dnc-raises-qualifying-thresholds-for-fifth-presidential-debate

民主党全国委員会は月曜日、5回目の大統領選挙民主党予備選挙候補者討論会の参加条件を発表した。11月の討論会に参加したいと望んでいる候補者たちに対するバーは引き上げられた。

5回目の討論会に参加するための条件として、候補者は16万5000人以上の政治献金者、少なくとも20州以上で1つの州600名以上を集めるというものが設定された。

また、民主党全国委員会が承認した全国規模もしくは各州の世論調査で少なくとも4回以上3%以上の支持率を集め、加えて早期に予備選挙が実施される各州(アイオワ州、ニューハンプシャー州、サウスカロライナ州、ネヴァダ州)での世論で少なくとも2回以上5%以上の支持率を獲得することという条件も設定されている。これらの条件を満たすための世論調査は2019年9月13日から11月の討論会の1週間前に発表されたものが対象となる。

民主党全国委員会はこれまで厳しい討論会参加条件を課してきた。3回目と4回目の討論会の参加条件は政治献金者の数が13万、支持率2%以上を4回以上記録することとなり、最初の2回の討論会の参加条件から倍増となった。

月曜日に発表された新しい条件は複数の候補者たちが予測していたような厳しいものとはならなかった。ここ数週間、多くの選対が政治献金者の数に関する条件が既存の13万人から倍増されるだろうと警戒していた。これだと参加条件として政治献金者の数は26万となる。

新しい参加条件には、民主党全国委員会が抱える大統領選挙民主党予備選挙を進めるにあたっての複雑な思惑が反映されている。

民主党全国委員会は歴史上類を見ない多数のしかも多様性に富んだ候補者たちを監督しながら党の指名候補までもっていかねばならない。しかし、民主党全国委員会の幹部たちは、「民主党全国委員会は有権者が候補者を選択する前にその数を絞ろうとしている」という批判を避けようともしている。 現在のところ、大統領選挙民主党予備選挙には19名が立候補している。

複数の候補者たちが討論会参加に苦闘した末に大統領選挙民主党予備選挙から撤退した。

ワシントン州知事ジェイ・インスリー、前コロラド州知事ジョン・ヒッケンルーパー、カースティン・ギリブランド連邦上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)はこの秋の民主党討論会に参加することはできないことが明らかになって選挙から撤退した。ニューヨーク市長ビル・デブラシオは同じ理由で先週選挙戦から撤退した。

新しい参加条件の中で最も重要な変化は、世論調査の支持率の条件が2つになっていることだ。候補者たちは全国規模もしくは各州の世論調査で支持率3%以上を4回以上記録するか、早期に予備選挙が実施される各州(アイオワ州、ニューハンプシャー州、サウスカロライナ州、ネヴァダ州)での世論調査で支持率5%以上を2回以上記録するかという条件になっている。

新たに出された政治献金者の条件を既にクリアしている候補者の数はまだ少ない。ジョー・バイデン前副大統領、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)、カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)、サウスベンド市長ピート・ブティジェッジは政治献金者の数に関する条件を既にクリアしている。

2019年9月13日以降に民主党全国委員会が承認した世論調査の結果は3つしか発表されておらず、自動的に支持率の条件をクリアしている候補者はいないということになる。

新しい条件設定は複数の候補者たちにとって新たな困難となる。10月の討論会に参加するにあたり、条件をそこまでぎりぎりではない状態でクリアした候補者たちにとっても厳しいものとなる。

ここ数週間、候補者たちの中には民主党全国委員会が討論会参加女権を引き上げることが予想されることを、政治献金依頼の文面に反映させている人々がいる。新しい参加条件が発表されて数分後に、コーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)は支持者に向けた献金依頼のEメールを送り、その文面がニュースとして取り上げられた。

ブッカーは次のように書いている。「今回新たに発表された16万5000という数は、私たちが皆さんに正直でなければならない理由を改めて認識させてくれます。16万5000人の政治献金者今回のレースで飛び越えねばならないバーの高さはまた引き上げられ、これからも上がっていくことでしょう。これは民主党全国委員会が提示する条件ということにとどまりません。私たちの選挙運動は選挙戦にとどまり、当の指名を勝ち取るために規模を拡大していく必要があります」。
(貼り付け終わり)

(終わり)
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決定版 属国 日本論

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 古村治彦です。 

 今回、ドナルド・トランプ米大統領の外交交渉は全くうまくいっていない、成功していないということを取り上げている記事をご紹介したい。

 対中国、対イラン、対北朝鮮など、アメリカは国際的な諸問題に直面している。アメリカは、中国とは貿易戦争、イランと北朝鮮に対しては核開発、核兵器廃棄といった問題を抱えている。どれもこれもうまくいっていない。トランプ大統領が脅しをかけてみたり、すかしてみたり、良いことを言ってみたりと様々なことをやっているが、うまくいっていない。暗礁に乗り上げているという状況だ。

 トランプ大統領にとっては日本だけが唯一彼のいうことをほぼ受け入れてくれる国だ。防衛関連品を買えと言えば「はい、喜んで」と言い、トウモロコシがだぶついているので何とかしろと言えば、「是非買わせていただきます」となる。日本との場合は交渉ではなく、厳命、それですらなくて、指示、というくらいのことだ。

 ところが世界各国はそうはいかない。そして、それは、「トランプ大統領にはそもそも交渉術などないからだ」ということになる。トランプ大統領は不動産業で財を成し、自分の苗字「トランプ」をつけた高層ビルやホテル、リゾート施設をアメリカ国内外各地に持っている。自身が一代で今のトランプ・コーポレイションをここまでのグループにし、資産を築き上げた大富豪だ。それはトランプ大統領の実力、特に交渉力のおかげだと考えられている。しかし、長年トランプ大統領と一緒に仕事をしていた人物はそうではないと主張している。

 トランプ大統領の交渉術は「こん棒で叩きまくる」ようなもので、一対一で脅しをかけまくるものだということだ。交渉事というのは相手にも利益が出るように落としどころを探るものだ。「ウィン・ウィン」関係を成立させるものだ。しかし、トランプ大統領の考えは「自分だけが勝つ、得をする」ということで、それはなぜかと問われた時に、「世界には無数の人間がいて、取引するのは1回限りだから」と答えたという。また、脅しだけでなく、お世辞を駆使することもあるということだ。

 トランプは大統領になってもこのビジネスにいそしんでいた時代の交渉術を使っている。脅しで入り、相手が強硬だとお世辞を駆使する、という1つのパターンになっている。パターンになっていると、相手はどう対処すればよいか分かる。だから、放っておかれるということになり、交渉が暗礁に乗り上げるということになる。

 トランプ大統領が当選して3年、最初は突拍子もないことをやるということで、戦々恐々としていたが、だんだんパターンが見切られてしまい、放置されてしまうということになっている。ただ、日本だけは真剣に付き合って、言うことを聞いている。

(貼り付けはじめ)

トランプはどうして交渉を成立させることに失敗するのか(Why Trump Fails at Making Deals

―トランプ大統領は中国、イラン、北朝鮮、インド、最近ではデンマークといった国々との間での交渉に失敗している。彼を長く知っている人々は「現在のアメリカ大統領は実際には交渉能力の低いのだ」と述べているが、数々の失敗はそれを証明している。

マイケル・ハーシュ筆

2019年8月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2019/08/21/why-trump-cant-make-deals-international-negotiations/

これは彼のアピールの中核である。2015年に突然大統領選挙に出馬して以来、不動産王はアメリカの有権者たちの支持を勝ち取ろうとしてきた。有権者の多くがトランプ個人を嫌いでも支持せざるを得ないようにしてきた。トランプはこれまでずっと自分は交渉の達人であり、アメリカ国民のために多くの新しい合意を勝ち取ることが出来ると主張してきた。 

しかし、大統領選挙当選3周年が近づく中、トランプ大統領は国際的な交渉においてほとんど成果を挙げていないという証拠が山積みになっている。2018年にNAFTAの再編に合意して以来、中国、イラン、北朝鮮、その他の国々との最高レヴェルの交渉を再スタートさせるための彼の努力は全て暗礁に乗り上げている。今週、トランプ大統領は交渉が下手であることを再び見せつけてしまった。トランプ大統領はアメリカの親密な同盟国デンマーク訪問を中止した。デンマーク首相はトランプ大統領の盟友で、彼と同じく反移民の姿勢を取っている。しかし、トランプがグリーンランドの購入を提案し、デンマーク政府はグリーンランド売却を考慮することを拒絶したために、訪問が取りやめになった。技術的にはデンマークはグリーンランドをアメリカに売却することはできない。それはグリーンランドには自治政府があり、首相が選ばれているからだ。

トランプを長年見てきた多くの人々にとって、トランプが大統領になって外交交渉にことごとく失敗していることは、実業界での華々しいキャリアを実態以上に過剰に売り込んだことの結果でしかないということになる。トランプ・オーガナイゼーションで建築家として働いたアラン・ラピダスは「ドナルドの交渉能力は虚構でしかない」と述べた。ラピダスは十代の頃からトランプと知り合い、トランプが不動産業を家族でやっている頃から一緒に働いた人物だ。

ラピダスは本誌の取材に対して、「ドナルドの交渉術は絶叫と脅迫で構成されている。ドナルドには緻密さもないし、ユーモアのセンスもない。こん棒で殴りつける、殴りつける、殴りつける、これだけだ」と述べた。

ラピダスはトランプと彼の事業が交渉に成功したが、それはハーヴェイ・フリーマンやスーザン・ハイルブロンのような幹部社員の交渉能力や技術のおかげだと述べた。2人はトランプ・オーガナイゼーションのアトランティック・シティでの事業やリース事業のほとんどを管掌した。 ラピダスは「彼らは詳細な分析と資料の読み込みを全て行った。トランプがもしこの仕事をやらねばならなかったとしても、まずやらなかっただろう」と述べた。

トランプの仕事仲間や取引先だった人々は、トランプが交渉の席で銀行をやっつけていたと自慢しているのは話を盛り過ぎていると指摘している。その当時のトランプの会計責任者だったスティーヴン・ボレンバックの交渉術によって、トランプは1990年に9億ドルの負債を抱えて個人破産寸前まで追い込まれたが、うまく逃れることが出来たのだ、と彼らは述べている。

トランプの自伝作家で多くの機会でトランプにインタヴューをしてきたマイケル・ダントニオは、ラピダスの発言に同意している。ダントニオも大統領としての交渉術は彼が実業家であった時のものと何も変わらないと認めている。ダントニオは次のように述べている。「彼のスタイルは敵意むき出しで、交渉相手から可能な全ての妥協を引き出すためにいじめ同様の方法を採用する。そして自分の利益を最大化する。トランプが私に語ったところでは、相手と“ウィン・ウィン”ではなく、“私だけが勝つ”取引をすることにしか興味がないということだった。将来またビジネスをするかもしれないので相手に好意を見せるために、相手に何かしらの利益を与えたことはあったかと私が彼に質問したところ、答えは“ノー”だった。そして、世界にはこれだけたくさんの人間がいるのだから、取引は一度きりだ、と語った」。

会社相手ではなく国家相手の交渉をする際には状況は異なる。世界には一定数の国家が存在するだけだ。アメリカ大統領は諸大国と何度も何度も交渉し合意に達するという行為を繰り返すことになる。それは様々な分野で行われるものだが、あくまで友好的になされる。更に言えば、国家は企業のように競争をして負けたからといって退場することはできない。破産を申請することも簡単に解散することもできない。貿易関係においては、「私だけが勝つ」というゼロサムの結果は存在しない。

結局のところ、国の誇りというものが重要になる。交渉を成功させるには、相手方の顔を立てることも必要だ。世界各国の指導者たちは、ビジネス上の取引でやられてしまった人々のように、降伏することもこそこそ逃げ出すこともできない。トランプ大統領はこのような妥協を望まない姿勢を明確にしている。2018年のアメリカ・カナダ・メキシコの協定に関する話し合いで、大統領は義理の息子ジャレッド・クシュナーからの強い働きかけを受けて、カナダとメキシコにしぶしぶではあるが2、3の譲歩をしたと報じられた。の当時、アメリカ通商代表ロバート・ライトハイザーは「ジャレッドの働きかけがなければ、この協定は成立しなかっただろう」と記者団に語っている。

ダントニオは次のように語っている。「トランプ大統領は外交を行うこと、そして主権国家と交渉することの準備がそもそもできていないのだ。二国間もしくは多国間での利益を生み出すためのギヴ・アンド・テイクのやり方を彼は知らない。彼は自己中心的過ぎるために、自分とは異なる考えを持つ人々を敵と認識する。大統領は自分のいじめが通じない相手がいれば自分が攻撃されたと思い、彼の提案に対して自分の考えを述べるような人物には激怒するのだ」。

従って、トランプ大統領は、こん棒で叩きまくるアプローチでは交渉相手によっては交渉が行き詰まり、交渉開始当初よりも交渉が進んでいる段階での方が、合意形成がより難しくなるというパターンが出来上がっていることに気付いている。トランプ大統領は中国と対峙するための12か国からなる環太平洋パートナーシップ協定から離脱した後で、トランプ大統領は彼の方か一方的に中国との貿易戦争を始めた。しかし、結果は、彼の習近平中国国家主席が企業向け補助金と知的財産権侵害の主要な問題に対して何の対策も取らないということであった。市場からは2年間の停滞は国際経済に脅威を与えるという警告が出ていた。トランプ大統領はオバマ政権下で結ばれたイランとの核開発をめぐる合意を「これまでで最悪の合意」と非難した。そして、イランに対する経済制裁を再開した。その中には、イラン外相モハマド・ジャヴァド・ザリフ個人に対する制裁も含まれていた。イランをめぐる情勢は先行きが見えない。トランプ大統領は北朝鮮の最高指導者金正恩と親しくなろうとし、アフガニスタンにおけるアメリカの状況を改善するためにカシミール地方をめぐるインドとパキスタンとの間を仲介しようと無様な提案を行った。これらもまた何も進んでいない。一つの局面では、トランプ大統領はもうすぐある程度の成功を収めることが出来るだろう。それはタリバンとの交渉だ。トランプ大統領は交渉に関しては特使であるザルメイ・ハリルザルドに任せきりだ。専門家の中には、トランプ大統領が公約しているアメリカ軍のアフガニスタンからの撤退は、タリバンに勝利をもたらすだけだと恐怖感を持っている人たちがいる。

トランプ大統領自身は何の心配もしていないふりを続け、ほとんどの問題に関しては解決を「急いでいない」と繰り返し述べている。それでも今週水曜日に記者団に対して中国に対して「私たちは勝利を収めつつある」と述べ、「私は選ばれた人間なのだ」という見当違いのアピールを行った。しかし、彼は2020年に迫った大統領選挙までの時間を浪費することになるだろう。

トランプ大統領は世界各国との交渉にことごとく失敗しているが、国内でも失敗を続けている。トランプ大統領の主要な公約である社会資本(インフラストラクチャー)、移民、医療制度について実質的な話し合いはこれまでなされていない。トランプ大統領は刑法改革法を成立させたが、これは民主党が訴えていた政策であり、こちらも義理の息子クシュナーの交渉術のおかげである。思い返してみれば、今年の1月、トランプ大統領は公約した国境の壁に関して、民主党に完全に屈服した。大統領自身が始めた政府機関の閉鎖が35日間に及んだ。大統領は最終的には連邦政府職員の給料を支払うための一時的な手段を採ることに合意したが、国境の壁への予算はつかなかった。

トランプの交渉スタイルは予測しやすいもので、ある一つのパターンが存在する。別のトランプ伝記作家グゥエンダ・ブレアはこれを「こん棒で殴りつけることと愛情を大袈裟に表現すること(love-bombing)」と呼んでいる。中国とイランに対しては次のようなパターンになる。中国の習近平国家主席とイランのハッサン・ロウハニ大統領に対しては降伏以外にはないというようなことを言っていた。これは両者にとっては不可能ではないにしても政治的に難しいことになる。トランプ大統領は同時にお世辞を言うことも忘れなかった。今週、トランプ大統領はツイッター上で「習近平は中国国民からの大いなる尊敬を集めている偉大な指導者だ」と書き、ロウハニ大統領に関しては別の観点から、「ロウハニ大統領はとても愛すべき人物だと思う」と書いている。

金正恩委員長との関係ではトランプ大統領は最初のうち脅しを繰り返した。ある時点では、当時のレックス・ティラーソン国務長官を北朝鮮との交渉をしようとして「時間を無駄にしている」と非難した。しかし同時にお世辞を繰り返すことも忘れなかった。そして、首脳会談や私的なメッセージの交換を行った。トランプ大統領は金委員長に「核兵器を放棄すれば北朝鮮はとても豊かな国になる」と請け合った。

しかし、トランプ大統領の広報外交(パブリック・ディプロマシー)も大臣レヴェルの交渉者たちの交渉も素晴らしい成果を上げることはできなかった。しかし、金委員長は別だ。一連の外交を通じて、金委員長はこれまでにない程の国際的な関心と認知を受け、彼自身の政権の正統性も認められた。

ブレアは次のように語っている。「中国やデンマークに対してのトランプ大統領のアプローチは古くからのドナルドのやり方だ。彼は自分ともう1人だけが部屋にいる形にしようとする。だから多国間の条件や会議を彼は嫌うのだ。彼は部屋の中に1人だけ入れて、その人に集中して脅しをかけたいのだ」。

ブレアは、グリーンランドをめぐる買い取り要請もトランプのキャリアでのやり方をそのまま使っているものだと述べている。「今起きていることは、ブランド確立ということなのだ。まず、トランプ・コーポレイションのブランド確立があった。それからカジノ、リアリティTV番組、と続き、今は大統領としてのブランド確立が行われているのだ。大統領としてのブランドを確立するためには、世界最大の島を買い取ること以上により良い方法はないではないか?」

ラピダスのトランプ家との家族ぐるみの付き合いはトランプ大統領の父フレッド・トランプにまで遡る。ラピダスはフレッドとも建築士として一緒に仕事をした。トランプ大統領のアプローチは自分の仕事仲間や取引先にとってはおなじみのもので驚きはないとしている。ラピダスは次のように述べている。「トランプ大統領のやり方は彼がビジネスをやっていた時と全く同じだ。彼がやっていることはその継続に過ぎない。とどまることを知らない嘘が続けられる。当時の私はそれを見ながら、なんだかかわいげを感じていた」。

ラピダスは、「トランプの交渉スタイルは、当時も今も、その場しのぎで何の明確な戦略などないのだ。私は、彼が頻繁に更新するツイッターを見てますますその思いを強めている」と述べている。ラピダスは、1980年代のアトランティック・シティでのカジノの件をめぐる裁判での審理のことをよく覚えている。トランプは出廷し宣誓をしたのち、カジノを建設した理由について嘘の証言をした。ラピダスは、何とか嘘を止めねばならないと感じたと述べている。

ラピダスは次のように語った。「その後で私はトランプに、何をやっているんだ、どうしてあんなことを言ったんだと食って掛かった。彼は“アラン、私はね、自分の言葉が口から出るまで私は何を言っているのか自分でも分からないんだよ”と言った。これがドナルド・トランプという人物なのだ」。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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決定版 属国 日本論

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 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領のウクライナ疑惑について、今回はバイデン家とウクライナとの関係についての記事をご紹介する。今回のウクライナ疑惑のうち、トランプ大統領の個人弁護士ルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長が国務省を通さずにウクライナ政府、検察当局と会談を持ち、バイデン家(ジョー・バイデン前副大統領と次男のハンター・バイデン)についての疑惑を調査しようとしたというものがある。

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次男ハンター(左)とジョー・バイデン

 ジョー・バイデン(Joe Biden、1942年―、76歳)はオバマ政権(2009年1月―2017年1月)の副大統領時代に、ウクライナ国内の汚職根絶のために様々な働きかけを行っていた。ウクライナ国内のことにアメリカの副大統領が働きかけを行うということは内政干渉であるが、今回は置いておく。「バイデンは副大統領時代にウクライナ国内の汚職根絶のために働きかけを行った」という事実がある。
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ウクライナ訪問中のバイデン
 ジョー・バイデンの次男ハンター・バイデン(Hunter Biden、1970年―、49歳)は投資会社の共同経営者やワシントンでロビイストをしていた。父ジョー・バイデンが副大統領を務めていた時期、具体的には2014年にウクライナの天然ガス会社ブリスマ・ホールディングス社の取締役に就任し、2018年に退任した。ここでの事実は「アメリカ副大統領の次男ハンター・バイデンが2014年から2019年までウクライナの天然ガス会社ブリスマ社の取締役を務めた」ということだ。

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マイコラ・ズロチェフスキー

 ブリスマ社の創設者でありオーナーのマイコラ・ズロチェフスキー(Mykola Vladislavovich Zlochevsky、1966年―、53歳)は、ウクライナ政府でエネルギー担当の大臣(環境保護・天然資源担当大臣と称する)を2度務めた実力者だ。この大臣時代を含め、権力濫用や荒っぽい手段でブリスマ社を巨大企業に育て上げたために、すろちぇふスキーには常に捜査の手が伸びていた。2014年のウクライナの政変で、新露派のヴィクトール・ヤヌコヴィッチ(Viktor Fedorovych Yanukovych、1950年ー、69歳)大統領が失脚し、側近たちとロシアに逃亡した。ヤヌコヴィッチ政権で環境保護・天然資源担当大臣を務めていたズロチェフスキーはヤヌコヴィッチの側近ではなく、行動を共にしなかった。政変直後は、前政権に関わった高官たちへの激しい追及が起き、ズロチェフスキーも捜査対象となった。また、イギリス国内で資金洗浄の疑いが持ち上がり、ブリスマ社の口座が凍結処分となった(後に解除)。
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ヤヌコヴィッチ(左)とプーティン
 こうした中、捜査を回避し、欧米からの印象を良くするために、ズロチェフスキーとブリスマ社は、欧米の著名人や受けの良い人々を取締役に招聘し、「欧米基準の素晴らしい会社ですよ」というアピールをする作戦を取った。また、「ウクライナでの天然ガス増産に寄与するブリスマ社は、ウクライナのロシアからの経済的独立に大きく寄与する」というキャンペーンも行った。そうした中で、アメリカ副大統領ジョー・バイデン(当時)の次男ハンター・バイデンの名前は光り輝いていた。ブリスマ社はハンターの投資会社の共同経営者をまず取締役に迎え、それからバイデンを招聘した。また、元ポーランド大統領も取締役に迎え、対ロシア独立派を印象付けた。この元ポーランド大統領はハンターの招聘に一役買った。ハンターは2014年から2019年の間に、年に2回の取締役会に出席し、月に5万ドルの報酬を受け取った。

2014年の政変後に大統領になったペトロ・ポロシェンコ(Petro Poroshenko、1965年―、54歳)も親露派で、ウクライナ国内の改革は進まなかった。また、汚職に関する捜査も停止状態になった。せっかく政変で親露派政権を打倒したのにまた同じような政権が出来て、国内改革が進まない状況となったことに、欧米諸国は多額の援助を行う約束していたこともあり、不満を募らせた。
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ペトロ・ポロシェンコ

 アメリカのバラク・オバマ政権は副大統領であるジョー・バイデンをウクライナに派遣し、その不満を伝達させることにした。バイデンはウクライナを訪問し、ポロシェンコ大統領に対して国内改革、特にヴィクトール・ショーキン検事総長の更迭を求め、それが実現しない場合には支援を停止すると圧力をかけた。その後、ショーキンは解任された。

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ショーキン

 これでウクライナ国内の汚職事件に関する捜査が進むと見られていたが、ズロチェフスキーとブリスマ社に対する捜査はあまり進展しなかった。ウクライナ国内の改革派は、「ズロチェフスキーとブリスマ社には欧米諸国との強いコネがある、アメリカ副大統領の次男が取締役を務めているくらいだから」という「忖度」がウクライナ検察当局に働いている可能性があると指摘している。

また、「ショーキンの解任は、ショーキンがズロチェフスキーとブリスマ社の捜査を進める中で、ハンターにも追及の手が伸びることを恐れたジョー・バイデンが副大統領の地位を使ってウクライナ政府に圧力を使ってショーキンを解任させた」という話も出ている。当のショーキンがそのように話しているが、この話は馬鹿げているとウクライナ国内の改革派は切って捨てている。

 ハンター・バイデンのブリスマ社の取締役就任については、周囲の人物で懸念を持っていた人物も多く、ウクライナ国内の政局に巻き込まれる、名前を利用される、といったことを心配して止めるように忠告する人もいた。ここからは推測だが、年に2度の取締役会出席で月5万ドルの報酬は、ハンター・バイデンにとって魅力的だったのだろう。彼はそれまでにも薬物乱用問題や借金問題を抱えていた。逆に言えば、ハンターの苦境をブリスマ社は分かった上で利用したのだろう。

 ジョー・バイデンが副大統領としてウクライナ国内の改革を求める立場にあり、一方、次男ハンター・バイデンは、改革の影響を受けないようにしたいズロチェフスキーとブリスマ社に取締役として利利用されることに関しては、利益相反になるという主張は当時からあった。この点は、父ジョーと次男ハンターはウクライナについて具体的に話をしていない、と両者ともに述べている。トランプ政権側としてはここを弱点として突くということになる。

 ウクライナは親露派政権と親欧米派政権が政変で入れ替わる形で政情は不安定だ。また、政治家たちが大企業家としての顔を持ち、権力を濫用して自分がオーナーの会社に利益をもたらすということをやっている。欧米の基準から見れば大変に送れている。ハンター・バイデンはブリスマ社の取締役就任の理由を「会社のそれまでのやり方を変革するため」と語っている。しかし、年に2度の取締役会出席だけで変革することなどできない。それで毎月5万ドルの報酬を受け取っていたということは、彼自身が「お飾り」であることを認識し、それを受け入れていたということだ。

 父親は改革を進めようとし、次男はその改革の影響を避けようとする勢力に利用された、ということになる。「アメリカ副大統領」「バイデン」という言葉の輝きと効力の前に、ウクライナ政府はひれ伏すと、ズロチェフスキーは考えたし、実際にそのような側面もあった。そうなると、これはまさに日本でもあった「忖度」ということである。

 大国の狭間で生きる小国というのは、常に神経を尖らせ、大国の意向を「先回りして理解し、それに沿う形でご機嫌を取る」ということをやり尽くしてきている。それが国内でも国外でも行動原理になっている。日本も全く同じだ。

(貼り付けはじめ) 

天然ガス産業の巨頭と副大統領の息子:ハンター・バイデンのウクライナへの(The gas tycoon and the vice president’s son: The story of Hunter Biden’s foray into Ukraine

ポール・ソンネ、マイケル・クラニシュ、マット・ヴァイサー筆

2019年9月28日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/world/national-security/the-gas-tycoon-and-the-vice-presidents-son-the-story-of-hunter-bidens-foray-in-ukraine/2019/09/28/1aadff70-dfd9-11e9-8fd3-d943b4ed57e0_story.html

5年前、当時のジョー・バイデン副大統領の息子がウクライナの無名の天然ガス会社の取締役に就任した。バイデン副大統領の息子が取締役になることは、この天然ガス会社のオーナーである元ウクライナの大臣にとっては大成功と言えるものだった。この当時、オーナーはマネーロンダリング(資金洗浄)の疑いが捜査を受けており、会社のイメージを一新しようと苦労していた。

ハンター・バイデンにとって、取締役就任という決断にはリスクが伴った。ウクライナはその当時政治的な動乱が頻発し、莫大な利益をもたらす天然ガス産業から元政府高官たちが大きな利益を得ていることに対して調査が行われていた。バイデンの父親はオバマ政権によるウクライナ政府による汚職の処罰を求める努力の中心人物であった。

ウクライナがある地域はこの当時不安定を極めていた。そのため、ハンター・バイデンが経営する投資会社のパートナーはハンターが「ブリスマ・ホールディングス」社の取締役に就任することは間違っていると考え、バイデンともう一人のパートナーとのビジネス関係を解消した、とこの人物の報道担当は本紙の取材に答えた。この人物はジョン・ケリー元国務長官の義理の息子である。

それから5年が過ぎ、父ジョー・バイデンは大統領選挙に出馬している。ハンター・バイデンのウクライナの会社の取締役に就任するという決断は、重大なトランプ大統領に対する内部告発者の告発の背景となっている。この内部告発は2020年の米大統領選挙をめぐる状況を変えつつある。

トランプ大統領が個人弁護士であるルディ・W・ジュリアーニ元ニューヨーク市長と一緒になってウクライナ政府に圧力をかけて「ブリスマ」社を捜査させようとし、バイデン家の役割について調査させようとしたということが暴露された。これに対して、連邦下院では弾劾に向けた調査が開始されることになった。嫌疑はトランプ大統領がウクライナ向けの援助を停止して、来年の大統領選挙での強力なライヴァルとなるであろうバイデンについてウクライナ政府に捜査をさせようとした、というものだ。

バイデン家によって刑法上の罪を犯したことを示す証拠は出ていない。ジュリアーニが主に疑っている嫌疑は、ジョー・バイデンが副大統領として、元大臣でブリスマ社のオーナーであるマイコラ・ズロチェフスキーに対する捜査を止めせせるためにウクライナの検事総長を更迭させるために圧力をかけたというものだ。この嫌疑については証拠がでていない。この嫌疑については元アメリカ政府高官たちとウクライナの反汚職グループによっても提起されている。

ハンター・バイデンの取締役就任という決断によって、バイデン陣営は不愉快な質問に対して説明を迫られるということが起きている。ジョー・バイデンは副大統領としてウクライナ国内の汚職の根絶のために努力した。一方、息子ハンター・バイデンは政府高官としての地位を濫用したとして捜査を受けていた天然ガス産業の巨頭の会社の取締役となった。ジョー・バイデンは利益相反と見られることを避けるために何らかの行動を取らなかったのはどうしてか?

イギリス人ジャーナリストでウクライナの反汚職非営利団体「反汚職行動センター」の理事を務めるオリバー・ブローは次のように語っている。「ジョー・バイデンはどうしてハンターに向かって“取締役から退きなさい、自分が何をやっているか分かっているのか?”と言わなかったのだろう?」

ウクライナ国民の中には、ハンター・バイデンがブリスマ社の取締役になったことで、父バイデンのウクライナにおける汚職の根絶の訴えが台無しになったと見ている人たちがいる。

また、ウクライナの検察当局は、ズロチェフスキーがアメリカの最高レヴェルとのつながりを持っていることを恐れて犯罪行為に対する捜査を避けたのではないかという疑惑もある。アメリカはこの当時のウクライナの政権と政府にとって最重要の支援者であった。

バイデン前副大統領の補佐官とスタッフだった人物たちは匿名を条件に証言したが、副大統領執務室の中で、ハンターが取締役であることが利益に相反にあたるかどうか議論が私的な会話という形ではあったが起きたと述べた。

ある元補佐官は利益相反である可能性が高いと副大統領に述べた、と語っている。しかし、この会話自体が短いもので、他の補佐官やスタッフたちはこれを問題視したくない、もしくはする必要はないと語っていたと述懐している。

バイデンと一緒に働いたアメリカ政府高官だった人物たちは口をそろえて、息子ハンターの行動がバイデンの副大統領としてのウクライナに対する行動に影響を与えたことは無かったと語っている。

元補佐官は次のように述べている。「何か明確な問題になっているだろうか?確かに問題にはなっている。しかし、実際に何か悪いことが起きただろうか?その答えはノーだ」。

この当時、ホワイトハウスは、ハンター・バイデンは民間人であり、副大統領はウクライナのどの会社にも支持を与えない、と発表していた。副大統領在任中、ジョー・バイデンはブリスマ社での息子の役割についてコメントしなかった。

ブリスマ社でのハンター・バイデンの責務については完全に分かっていない。ハンター・バイデンの顧問弁護士ジョージ・R・メシレスは、ブリスマ社がハンターに報酬をいくら支払っていたのか、ハンターが取締役になった時に会社のオーナーがウクライナ政界の実力者であり、疑惑の中心にいたことを知っていたのかという質問に対して回答を拒否した。

メシレスは声明の中で次のように述べている。「ハンター・バイデンのウクライナにおける行動についての疑問は、トランプ大統領とジュリアーニの犯罪行為から関心をそらすためのものだ。ハンターの行動について精査した人々全てが既に回答を得て満足している疑問を蒸し返している」。

メシレスは続けて次のように述べている。「簡潔に述べれば、ハンターによる犯罪行為はこれまでもなかったし、これから発見される可能性もない」。

バイデン選対は、「ジョー・バイデンはどうして、息子ハンターに対して、利益相反と見られるので、ブリスマ社の取締役から退くように言わなかったのはどうしてか?」という質問に回答することを拒絶している。

バイデン選対の報道担当アンドリュー・ベイツは声明の中で次のように語っている。「ジョー・バイデンはウクライナ国内の革命のために誇り高く戦った。アメリカ、EU、IMF、ウクライナの反汚職グループ全てが支持したゴールを彼は達成した。その結果、ウクライナ政府が素晴らしいものとなった」。

ベイツは続けて次のように語っている。「オバマ・バイデン政権はアメリカ史上、最も強力な倫理政策を作り、実行した政権である。ドナルド・トランプがウクライナ問題を選挙戦に入れ込もうとし、酷い言葉での中傷を行っているが、彼の発言と行動は全く信用されない」。

●変転し続ける政治潮流(Changing political tide

ハンター・バイデンがウクライナに関わるようになった当時、元ソ連を構成したウクライナの政治状況は混乱していた。2014年初め、キエフの独立広場で暴動が起きた。これはマイダンとして知られている。暴動によって、政変が起き、最終的に親露派の大統領ヴィクトール・ヤヌコヴィッチ率いる政権は崩壊し、ヨーロッパとアメリカとの緊密な関係を志向するウクライナの政治家たちが権力を握った。

追い落とされたヤヌコヴィッチと「ファミリー」と呼ばれた側近グループは、キエフの新政権によって訴追されることを恐れてロシアに逃亡した。新政権は諸外国に対してヤヌコヴィッチの同盟者たちの財産を凍結するように通知を出した。ヤヌコヴィッチ政権の徴税担当の大臣と検事総長は熱狂の中の追及に恐れをなし、ロシアに逃亡する際に空港の金属探知機を押し倒して飛行機に殺到するほどであった。

この政変によってズロチェフスキーは問題に直面することになった。ズロチェフスキーは、親露派の政治家に長年属していたが、彼はヤヌコヴィッチの同盟者ではなかったが、同時にキエフで権力を掌握したばかりの親欧米の政治家という訳でもなかった。

ズロチェフスキーは2度にわたり、ウクライナ政府のエネルギー部門のトップを務めた。一度目はレオニード・クシュマ大統領時代、そして、二度目はヤヌコヴィッチ時代で環境保護担当大臣を務めた。ブリスマ社の子会社エスコ・2度の大臣を務めた時期、後にブリスマ社の一部門となる複数の石油会社と天然ガス会社に対して事業にとって重要な許可や免許が多く出されていた。ウクライナ政府の許認可担当部局の記録によると、ブリスマ社の子会社であるエスコ・ピヴニッチ社とパリ社には多くの許認可が出された。

その後、ズロチェフスキーはウクライナ最大の天然ガス生産会社のオーナーになり、ウクライナ屈指の大富豪となった。

ブリスマ社は、同社が獲得した許可は全て合法的に発せられたものだと主張している。ブリスマ社は2015年に『ウォールストリート・ジャーナル』紙の取材に対して、「ズロチェフスキーは公僕として法律の文字と精神に従っている。彼はいつでも公正さと政策決定において最高度の道徳と倫理の基準を守ってきた」と答えた。

2014年、ズロチェフスキーはヤヌコヴィッチの側近グループから脱落し、大臣から副大臣に降格された。

2014年3月、ヤヌコヴィッチがロシアに逃亡してから数週間後、キエフでは前政権の政府高官たちの汚職への追及が過熱していた。イギリスの裁判所の記録によると、この時期イギリスでは、イギリス当局がズロチェフスキーに対する資金洗浄疑惑で捜査を開始し、ブリスマ社のイギリス国内の銀行口座が凍結された。口座には数百万ドルが入っていた。イギリス当局による捜査は、BNPパリバ銀行から疑わしい行動の報告を受けてのことだった。

裁判所の記録によると、口座に入っていた資金のうち、2000万ドルがセルゲイ・クルチェンコに提供された。クルチェンコはヤヌコヴィッチに近い同盟者でウクライナ財界の大物であった。この取引の数週間前にヨーロッパ連合によって取引禁止処分を受けていた。ズロチェフスキーの代理人は、この資金は合法的な売買の代金として送金されたものだと主張した。

ズロチェフスキーにとって、資産凍結はそれから司法上のトラブルが続く年月の始まりを告げる出来事となった。これが後々にはウクライナの検事総長と反汚職部局による刑法上の犯罪捜査にまで拡大していった。イギリスでは、結局ズロチェフスキーの犯罪行為で訴追されることはなく、資産凍結は最終的に解除となった。

ズロチェフスキーとブリスマ社は本紙からの繰り返しのコメント依頼を拒絶した。

2017年、ブリスマ社は、同社とズロチェフスキーに対する全ての訴訟手続きは取り下げられたと発表した。2017年2月、同社のアメリカ人弁護士ジョン・ブレッタは、ズロチェフスキーは全ての捜査に真摯に協力し、ウクライナの検察当局は、ズロチェフスキーが自身の立場を濫用したことを示す「証拠はなかった」と発表したと述べた。

しかしながら、ウクライナ政府国家反汚職局は金曜日、ズロチェフスキーが環境保護担当大臣時代にブリスマ社に出された免許に関し捜査を行っていると発表した。ズロチェフスキーが大臣だった期間、ハンター・バイデンはブリスマ社と関係を持っていなかった。

●欧米の人物や組織を使った改造(A Western makeover

イギリス当局が資金洗浄についての捜査を開始してから2か月もしないうちに、ハンター・バイデンはブリスマ社の取締役になった。この当時ハンターが、イギリス当局がイギリスで捜査を進めていたことを知っていたかどうかは明確になっていない。当時、ズロチェフスキーがブリスマ社を所有していることはあまり知られていなかった。

2014年の政変が起きる前、アメリカ副大統領の息子を取締役に迎え入れることは、ブリスマ社にとって信頼性を高めるための努力であった。ブリスマ社はアメリカとヨーロッパで投資銀行家をしているアラン・アプターを取締役会長に迎え入れた。また、元ポーランド大統領が取締役に就任した。ブリスマ社は経営陣を刷新し、国際的に業務を行っている会計事務所を起用し、財政状態を監査させることにした。

キエフでの政変によって政権が変わって数週間も立たないうちに、著名なアメリカ人とヨーロッパ人を会社の取締役会に迎え入れることは、ウクライナ国内に対して「ズロチェフスキーには欧米の有力者との強力なコネがある」というメッセージを送ることになった、とイギリス人ジャーナリストのブローは述べている。ブローはタックスヘイヴンとペーパーカンパニーについて『マネーランド』という本を出版し、その中でズロチェフスキーについて書いている。

反汚職行動センターの事務長ダリア・カレニクは次のように述べている。「有名な家族に連なる人々を取締役会に迎えることで、ブリスマ社は西洋の、正当な企業のように見せることが出来るようになった。ブリスマ社はウクライナ国内での天然ガス採掘の許認可を大変に疑いの多い手段で得た」。カレニクは更にこのような「表面上の飾りつけ」は、疑いの多い方法で集めた原資を合法なものに見せようとする実力者たちや政府高官たちにとって、一般的な手段となっている。

現在でも取締役会長を務めているアプターにコメントを求めたが回答がなかった。ブリスマ社は、許認可は合法的に取得したものだと主張している。

ブリスマ社はまた同社の天然ガス生産はエネルギー面でのウクライナのロシア依存の度合いを低下させるものだと強調し始めた。この主張はワシントンにアピールした。ブリスマ社はワシントンにあるシンクタンクであるアトランティック・カウンシルに寄付をし始めた。

ハンター・バイデンがブリスマ社の取締役に就任する1か月前、父ジョー・バイデンは副大統領としてウクライナを訪問し、ウクライナがエネルギー生産を増加させるための支援パッケージの提供を発表した。

バイデンは次のように述べた。「もし今日ここでロシアに対して“あなた方の天然ガスなどいらない”と言えたらどうだろうと想像して見て欲しい。現在とは全く違う世界になるだろう」。

ブリスマ社を立て直した時、ズロチェフスキーはウクライナ当局の捜査を受けている途中だった。2015年、検察当局は2つの嫌疑で元環境保護担当大臣について捜査した。この当時に『ウォールストリート・ジャーナル』紙が閲覧した検事総長事務局の発表した書類によると、1つは違法な手段での蓄財、もう1つは権力濫用、文書偽造、横領についてであった。ズロチェフスキーはこれらの嫌疑について犯罪行為を行ったことを否定した。

●父親たちと息子たち(Fathers and sons

ジョー・バイデンと長年一緒に働いた人々は異口同音に、ハンター・バイデンのビジネスについては長年にわたり、ジョー・バイデンと議論することは難しかったと述べている。ジョー・バイデンが連邦上院を務めていた当時、ハンターはワシントンのKストリートでロビイストを務めていたこともあった。

バイデンの家族は数々の悲劇に見舞われた。ハンター・バイデンは1972年に自動車事故に遭い、彼は生き残ったが母親と妹は亡くなってしまった。長兄のボウはこの時の自動車事故では生き残ったが、2015年に脳腫瘍のために亡くなった。2017年に離婚の際の書類によれば、ここ数年、ハンター・バイデンはアルコール中毒と借金に苦しんだということだ。

2014年のウクライナでの政変が起きた時期、イェール法科大学院の卒業生であるハンターは、「ワールド・フード・プログラム・USA」は無給の会長、投資会社「ローズモント・セネカ」社のパートナー(共同経営者)、ニューヨークの法律事務所「ボイス・シラー・フレクスナー」の顧問を務めいていた。

ハンターの投資会社のパートナーだったデヴォン・アーチャーはブリスマ社の取締役に就任した。それからすぐにハンター・バイデンにもブリスマ社から取締役就任以来の書簡が届いた。

別のパートナーたちは取締役就任に対して深刻な懸念を持っていた。

ジョン・ケリー元国務長官の義理の息子クリス・ハインツはアーチャーに対して、ブリスマ社の取締役に就任することは良くないと伝えた、とハインツの報道担当は語っている。ハインツはウクライナ国内の汚職事件多発の記事、地政学上のリスク、情勢についての疑問について懸念を持っていた。

ハインツの報道担当クリス・バスタルディは本紙の取材に対して次のように述べた。「ハインツ氏はアーチャー氏に対してブリスマ社と仕事をすることは受け入れられないと強く警告を発した。アーチャー氏は、自分とハンター・バイデンは、会社のパートナーとしてではなく個人として機会を掴みたいのだと述べた」。

投資会社は結局分裂した。

バスタルディは「この問題についての判断力の欠如は、ハインツ氏がアーチャー氏とバイデン氏とのビジネス関係を解消するための主要な理由となった」と述べた。バスタルディは更にハインツとハインツの投資会社はブリスマ社と関係していないと付け加えた。

アーチャーにコメントを求めるための連絡はできなかった。アーチャーの弁護士はコメント依頼に回答しなかった。

ハンター・バイデンの弁護士メシレスは、ハンター・バイデンがハインツの警告について知っていたかという質問に回答しなかった。

ハンター・バイデンは今年初めに本紙の取材に対して、ブリスマ社の取締役に就任したのは既にブリスマ社の取締役を務めていたアレクサンデル・クファシニェフスキ元ポーランド大統領の積極的な働きかけがあったからだと答えた。ハンター・バイデンは声明の中で、ウクライナのエネルギー面での独立はロシア大統領ウラジミール・プーティンからの狡猾な援助の申し出を断るために重要だという考えをクファシニェフスキと共有していたと述べている。

アレクサンデル・クファシニェフスキはインタヴューの中で、「ハンター・バイデンは国際政治に関する知識を取締役会にもたらした、取締役会は年に2度開催されていた」と述べている。クファシニェフスキはハンターに「この会社はウクライナの独立にとって大変重要な存在であると思う」と語ったと述べている。

投資銀行家で現在もブリスマ社の取締役会長を務めているアプターは、当時のアメリカ副大統領の息子を取締役に選任したことについて、「彼の父親ではなく、完全に実力に基づいて」行われたと述べている。

バイデン選対は、ジョー・バイデンがハンターのブリスマ社の取締役就任を知ったのはマスコミの報道からであったと主張している。

今年初め、ハンター・バイデンは本紙に対して声明を出した。その中で次のように述べている。「私は父と会社のビジネスや取締役としての仕事について話したことはない」。ジョー・バイデンは最近、アイオワでの演説の中で同様のことを述べた。ジョー・バイデンは「私は息子の海外でのビジネス取引について話したことはない」と述べた。

ハンター・バイデンは『ニューヨーカー』誌の取材に対して、父ジョー・バイデンがハンターのブリスマ社での仕事について一度だけ言及したことがあることを示唆した。

ハンターは「父は、“お前が自分自身何をやっているか分かっていると思っているよ”と言ったので、“分かっているさ”と答えました」と述べている。

ハンターが取締役に就任した時、ブリスマ社幹部たちは、ハンターが法律問題を監督することになるだろうと述べた。しかし、ハンターの役割は法律関係にはとどまらなかった。本紙に対する声明の中で、ハンター・バイデンは「ブリスマ社の取締役に就任したのは、同社の透明性、コーポレイト・ガヴァナンス、責任に関するこれまでのやり方を改革することを助けるため」だったと述べている。同時に声明の中でハンター・バイデンは彼の仕事の具体的な中身については説明しなかった。 

「トランスペレンシー・インターナショナル」はウクライナを世界で最も汚職が蔓延している国の一つと認定している。ウクライナでは財界人たちが自分たちの経済的利益を増やすために、検察官を選任し、裁判所を利用する。ハンター・バイデンは結果的にそのような国に関わってしまい、いろいろなことに巻き込まれてしまうことになる決断をしてしまった。

●更迭された検察官(A fired prosecutor

2015年のキエフでは不満が高まっていた。親欧米の大統領ペトロ・ポロシェンコによる汚職根絶の試みは遅々として進んでいなかった。

ウクライナのジャーナリストたちはズロチェフスキーのような元政府高官たちが莫大な富を築いていることを次々と記事やテレビニュースとして発表していた。ある時には、ドローンを使って、キエフ郊外にある2つの並んでいる大豪邸を撮影することもあった。この2つの大豪邸はズロチェフスキーの家族と協力者の所有となっている。ズロチェフスキーの娘は、「ズロッチ」という名前の高級店を新たに開店させた。店名は苗字をもじったものだ。この高級店ではわに革やオーストリッチの靴が販売されていた。この当時、ウクライナは厳しい経済不況に苦しんでいた。

人々の汚職に対する怒りの矛先は検事総長ヴィクトール・ショーキンに向かった。アメリカ政府やEU諸国の政府の高官たちはショーキンが積極的に動いていないと見ていた。

2015年9月の演説で、この当時の駐ウクライナ米国大使ジョフリー・ピヤットは、政府高官関係の汚職事件を追及していないとして、ショーキンが率いる検察当局を表立って批判した。

ピヤットは「私たちは、検察当局が汚職に対する捜査を支持しないだけでなく、検察官たちが明確な汚職事件について捜査することも妨害していることをたびたび目にしてきた」と語っている。

ピヤットは特にウクライナの検察当局がイギリス当局に対して、ズロチェフスキーの資産凍結を正当化するための十分な情報を提供しなかったことを取り上げ批判した。十分な情報がなかったために、イギリスの裁判所はズロチェフスキーを自由にさせることになった。

ピヤットは次のように述べた。「ウクライナ検察当局はイギリス当局ではなく、ズロチェフスキーを弁護していた彼の弁護団に複数回にわたり書簡を通じて情報を提供した」。

ピヤットは、ズロチェフスキーの弁護団に書簡を通じて情報を提供した検察官や政府高官たちについて捜査し、ズロチェフスキーの嫌疑を「なかったことに」した責任がある者たちは更迭すべきだと訴えた。

このような批判はアメリカとEU諸国の政府高官たちは共通して持っているものだった。反汚職の動きが遅々として進まないのはショーキンが検事総長であるからだ、という考えが広く共有されていた。改革を進めることを条件にして欧米諸国から多額の援助がウクライナに提供されていた。

アメリカ政府は、オバマ政権のウクライナ政策の伝達者としてバイデン副大統領を選んだ。副大統領をウクライナに向かわせることで、アメリカがいかにウクライナに不満を持っているかを示すことになった。

ジョー・バイデンは2015年にウクライナ議会で演説を行った。その中でバイデンはウクライナに対して汚職の根絶を求めた。そして、「検事総長局には徹底的な改革が必要だ」と述べた。

バイデンは後に、ポロシェンコ大統領との会談の時にはより率直に、ショーキンに対する行動がなければアメリカは1億ドル規模の借款を停止すると述べたと述懐している。

バイデンは2018年に外交評議会で行った演説の中で次のように語った。「私はポロシェンコや高官たちを見ながら次のように言った。“私は6時間以内にこの国から出る。もし検事総長を更迭しないなら、あなたたちは金を手にすることはできない”と。“いいかな、ショーキンは更迭される、そしてしっかりした人物を後任に据えるんだ”とね」。

ショーキンはバイデンについての情報をジュリアーニに提供した。ショーキンは今年初めに本紙の取材に応じ、その中で、自分が2016年3月に検事総長を更迭されたのはこの当時ブリスマ社について捜査をしていたからだと語った。ショーキンは、検事総長を続けることが出来ていれば、ハンター・バイデンの取締役としての適格性について疑義を提示していただろうとも述べている。ショーキンは「ハンター・バイデンはウクライナでの仕事の経験もなく、またエネルギー部門での仕事もしたことがなかった」と指摘した。

しかし、元ウクライナ政府高官、元アメリカ政府高官たちは、この当時ズロチェフスキーへの捜査は停止状態だったと述べている。

反汚職行動センターの事務長ダリア・カレニクは、ウクライナ国内で反汚職活動をしている自分たちはショーキンが検事総長として汚職について捜査を進めていなかったことを批判し、汚職事件の捜査を進めるためにも彼の更迭がなされることを望んでいたと述懐している。

イギリス人ジャーナリストのブローは、ジュリアーニがバイデンに関して持ち出した嫌疑である「ズロチェフスキーとブリスマ社を守るためにショーキンを更迭させたというのは、意味不明で馬鹿げている」と述べた。ショーキンの検事総長時代、検察庁自体、幹部たちがダイアモンドや数千ドルの現金を賄賂として受け取っていたというスキャンダルに見舞われていたとブローは指摘している。 

ブローは「しかし、ショーキンの件とは別の事実については疑問が残る。それは、ジョー・バイデンは自分の息子がバイデンの名前を使ってお金を得ることを阻止すべきだったのでは、というものだ。その答えはそうすべきだっただろう、というものだ」と語っている。 

ショーキンの後任ユーリ・ルツェンコは本紙の取材に対して、ハンター・バイデンはウクライナの法律を破っていないと確信していると述べた。しかし、ある時点ではルツェンコの様々な発言によって、ジュリアーニはバイデンに対する捜査について疑義があると考えるようになったことも事実だ。

ルツェンコは「ウクライナの法律に照らして、ハンター・バイデンは法律を破るようなことはしていない」と語っている。

今年5月にジョー・バイデンは大統領選挙出馬を表明した。ハンター・バイデンはその前にブリスマ社の取締役として次の任期も務めないという決断を下した。

ハンター・バイデンは今年7月の『ニューヨーカー』誌の取材記事の中で、これまでの人生における苦難と薬物乱用について赤裸々に語った。その中で彼は次のように述べている。「ドナルド・トランプが、彼を大統領選挙で破ることが出来ると考えている人物に対する攻撃材料として私を選び出すことなど全く予想できないことでした」。
ハンターは記事の中で自分のために父ジョー・バイデンを騒動に巻き込んでしまったことについて父に謝罪したと語った。

ハンターは次のように語っている。「父は“私もまた残念に思っている人の一人だよ”と言い、それから2人でより悲しい思いをしている人について長い時間話しました。私たち2人はこのようなことを払しょくするための唯一の解決策は勝つことだという認識で一致しました。父は“いいかい、これからやらねばならないんだ”と言いました。より高い目的があり、そこに向かっていかねばなりません」。
(貼り付け終わり)

(終わり)

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決定版 属国 日本論
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