古村治彦です。
昨日、埼玉県知事選挙が行われました。多選をしないように「努力目標」を条例に掲げながら出馬した現職の上田知事(維新と民主が応援)に対して、自公は多選批判もあって、元エリート官僚のつかだ桂祐氏を擁立しました。共産党は独自に柴田やすひこ氏を応援しました。
結果は下に書いた通りです。新聞記事によると、投票率は26.63%と低率でしたが、これでも前回よりも約2%は上昇したということです。昨日も厳しい暑さが続き(テレビでも取り上げられますが、日本有数の夏の暑さを誇る熊谷市も埼玉にあります)、外に出るのが億劫になるほどでしたが、それでも前回よりも投票率が上昇したことは、クールで選挙にあんまり関心を示さない埼玉県民が少しだけですが政治に関心を持ったということになるのだと思います。
①上田きよし 891,822
②つかだ桂祐 322,455
③柴田やすひこ 228,404
④石川英行 49,884
⑤たけだのぶひろ 32,364
結果は、国会議員から県知事へと転身してしっかりと地盤を固めてきた上田氏が圧勝でした。自民党は、自分が提唱した条例に違反しているという多選批判一本槍ではこの地盤を突き崩すことはできませんでした。前回の選挙では自公は上田氏を応援した訳ですし、考え方で違いがある訳ではないので、効果的な攻撃は全くできませんでした。
しかし、それにしてもつかだ氏は大敗しました。3倍近くの差を付けられ、大惨敗と言えます。共産系の柴田氏は20万票を超える得票でしたが、前回の共産系の候補者が約17万票を獲得したことを考えると、票を伸ばしたと威張れるほどではないと私は考えます。
この夏の地方選挙は国会で安保法制が審議されていることもあり、安倍政権に対する国民の反応を見る選挙になっています。仙台市議選では野党が得票を伸ばしました。埼玉県知事選挙でも劣勢を伝えられていた自民党は、次の岩手県知事選挙に現職参議院議員で元復興相の平野達男氏を擁立することに決定していましたが、平野氏は立候補取り止めを表明しました。これは地方選挙と参院補欠選挙での連敗を避けるためと言われています。
今回の県知事選挙について私が考えるのは、公明党の支持者層が安倍氏批判票として、上田氏に投票したのではないかということです。参議院の埼玉全県区の結果について見てみると、ここ最近は自民党が90万票、公明党が59万票でそれぞれ候補者を当選させています。足して大体150万票とします。上田氏の支持者と自公の支持者は重なっていますから、今回の上田氏の得票が約90万票ですから、残りは60万票となります。
それならつかだ氏は、60万票くらいは取っていなければなりません。しかし、結果は約30万票です。この結果から考えて、私は公明党支持者がつかだ氏に投票しなかった、これは、安倍政権に対する批判の動きなのだと考えます。
この結果は自民党にとっては深刻です。現在の小選挙区制で自民党は公明党支持者(小選挙区では自民候補の名前、比例では公明党と書く)の投票がなければ接戦になった場合に勝ち抜くことはできません。公明支持者は創価学会の信者の方々が多く、団結心と忠誠心が強い方々ですから、頼まれたことはきっちりとおやりになる方々です。それでも、安倍政権の最近の動きについて、批判的になっておられる方々が多く、その方々が自民批判に回ったら、選挙は難しくなります。
公明党の議員さんたちでアメリカ留学もしたような、エリート出身で、見た目も素晴らしい方々が、安保法制をめぐって得意のさわやかな弁舌で、安倍政権に追随しています。そうした動きを公明党を支持してこられた方々がどのように見ておられるのか、きになるところです。
(新聞記事転載貼り付けはじめ)
●「埼玉知事選、上田氏が4選…投票率は微増」
読売新聞 2015年08月09日 22時05分
http://www.yomiuri.co.jp/election/local/20150809-OYT1T50046.html
埼玉県知事選は9日、投開票が行われ、現職の上田清司氏(67)(無=維新支持)が、無所属の新人4人を破り、4選を果たした。
投票率は26・63%で、全国の知事選で過去最低となった2011年の前回選の24・89%と比べて微増にとどまった。
上田氏は、努力義務として自らの任期を「3期12年」と定めた多選自粛条例を破る形で出馬し、「県民の期待が増している時に放り投げるわけにはいかない。政策を出すことで理解してもらう」と説明。選挙戦では、団塊世代が75歳以上になる「2025年問題」への対策などを訴えた。
維新の党からの支持のほか、民主党県連、県内約9割の首長、経済団体など幅広い支援を受け、終始優位に戦いを進めた。
前回選で上田氏を支持した自民党県連は「条例違反だ」と批判を強め、告示まで1か月を切ってから、元総務省消防庁審議官の塚田桂祐氏(58)を擁立して推薦。麻生副総理や石破地方創生相、高市総務相ら現職閣僚が応援に入ったが、出馬表明の遅れが響き、浸透し切れなかった。上田氏は高い知名度も生かし、大差で多選批判を退けた。
(新聞記事転載貼り付け終わり)