古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

ダニエル・シュルマン
講談社
2015-10-28



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 昨日、埼玉県知事選挙が行われました。多選をしないように「努力目標」を条例に掲げながら出馬した現職の上田知事(維新と民主が応援)に対して、自公は多選批判もあって、元エリート官僚のつかだ桂祐氏を擁立しました。共産党は独自に柴田やすひこ氏を応援しました。

 

 結果は下に書いた通りです。新聞記事によると、投票率は26.63%と低率でしたが、これでも前回よりも約2%は上昇したということです。昨日も厳しい暑さが続き(テレビでも取り上げられますが、日本有数の夏の暑さを誇る熊谷市も埼玉にあります)、外に出るのが億劫になるほどでしたが、それでも前回よりも投票率が上昇したことは、クールで選挙にあんまり関心を示さない埼玉県民が少しだけですが政治に関心を持ったということになるのだと思います。

 

①上田きよし  891,822

②つかだ桂祐  322,455

③柴田やすひこ 228,404

④石川英行    49,884

⑤たけだのぶひろ 32,364

 

 結果は、国会議員から県知事へと転身してしっかりと地盤を固めてきた上田氏が圧勝でした。自民党は、自分が提唱した条例に違反しているという多選批判一本槍ではこの地盤を突き崩すことはできませんでした。前回の選挙では自公は上田氏を応援した訳ですし、考え方で違いがある訳ではないので、効果的な攻撃は全くできませんでした。

 

 しかし、それにしてもつかだ氏は大敗しました。3倍近くの差を付けられ、大惨敗と言えます。共産系の柴田氏は20万票を超える得票でしたが、前回の共産系の候補者が約17万票を獲得したことを考えると、票を伸ばしたと威張れるほどではないと私は考えます。

 

 この夏の地方選挙は国会で安保法制が審議されていることもあり、安倍政権に対する国民の反応を見る選挙になっています。仙台市議選では野党が得票を伸ばしました。埼玉県知事選挙でも劣勢を伝えられていた自民党は、次の岩手県知事選挙に現職参議院議員で元復興相の平野達男氏を擁立することに決定していましたが、平野氏は立候補取り止めを表明しました。これは地方選挙と参院補欠選挙での連敗を避けるためと言われています。

 

 今回の県知事選挙について私が考えるのは、公明党の支持者層が安倍氏批判票として、上田氏に投票したのではないかということです。参議院の埼玉全県区の結果について見てみると、ここ最近は自民党が90万票、公明党が59万票でそれぞれ候補者を当選させています。足して大体150万票とします。上田氏の支持者と自公の支持者は重なっていますから、今回の上田氏の得票が約90万票ですから、残りは60万票となります。

 

 それならつかだ氏は、60万票くらいは取っていなければなりません。しかし、結果は約30万票です。この結果から考えて、私は公明党支持者がつかだ氏に投票しなかった、これは、安倍政権に対する批判の動きなのだと考えます。

 

 この結果は自民党にとっては深刻です。現在の小選挙区制で自民党は公明党支持者(小選挙区では自民候補の名前、比例では公明党と書く)の投票がなければ接戦になった場合に勝ち抜くことはできません。公明支持者は創価学会の信者の方々が多く、団結心と忠誠心が強い方々ですから、頼まれたことはきっちりとおやりになる方々です。それでも、安倍政権の最近の動きについて、批判的になっておられる方々が多く、その方々が自民批判に回ったら、選挙は難しくなります。

 

 公明党の議員さんたちでアメリカ留学もしたような、エリート出身で、見た目も素晴らしい方々が、安保法制をめぐって得意のさわやかな弁舌で、安倍政権に追随しています。そうした動きを公明党を支持してこられた方々がどのように見ておられるのか、きになるところです。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「埼玉知事選、上田氏が4選…投票率は微増」

 

読売新聞 20150809 2205

http://www.yomiuri.co.jp/election/local/20150809-OYT1T50046.html

 

 埼玉県知事選は9日、投開票が行われ、現職の上田清司氏(67)(無=維新支持)が、無所属の新人4人を破り、4選を果たした。

 

 

 投票率は26・63%で、全国の知事選で過去最低となった2011年の前回選の24・89%と比べて微増にとどまった。

 

 上田氏は、努力義務として自らの任期を「3期12年」と定めた多選自粛条例を破る形で出馬し、「県民の期待が増している時に放り投げるわけにはいかない。政策を出すことで理解してもらう」と説明。選挙戦では、団塊世代が75歳以上になる「2025年問題」への対策などを訴えた。

 

 維新の党からの支持のほか、民主党県連、県内約9割の首長、経済団体など幅広い支援を受け、終始優位に戦いを進めた。

 

 前回選で上田氏を支持した自民党県連は「条例違反だ」と批判を強め、告示まで1か月を切ってから、元総務省消防庁審議官の塚田桂祐氏(58)を擁立して推薦。麻生副総理や石破地方創生相、高市総務相ら現職閣僚が応援に入ったが、出馬表明の遅れが響き、浸透し切れなかった。上田氏は高い知名度も生かし、大差で多選批判を退けた。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)









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ダニエル・シュルマン
講談社
2015-10-28



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 2015年8月20日に告示される岩手県知事選挙に、自民党と公明党の全面支援を受けての立候補を予定していた平野達男参議院議員(元復興相)が立候補を取り止めると発表しました。今年の4月に平野氏が県知事選挙に立候補すると発表された時は、生活の党代表の小沢一郎代議士の地盤で、「小沢王国」とまで呼ばれた岩手県で、小沢系で現職知事の達増拓也氏が敗北するのではないかとまで言われていました。平野氏は東日本大震災でご家族が亡くなり、ご自宅も大きな被害を受け、政治的には復興大臣となり、復興に取り組みました。その実績もあり、県知事にふさわしいと考える県民も多くいると見られていました。

 

 しかし、先の仙台市議選での自民党の低調に加え、注目を浴びる県知事選挙でも、本日行われている埼玉県知事選挙と岩手県知事選挙で自民党が苦戦すると見られて、敗北を重ねることは政権にとって痛手となるという判断で、平野氏の立候補取り止めが進められたようです。埼玉で敗北、岩手で敗北、平野氏の辞任に伴う参院補選での敗北となれば、大きな痛手となりますので、何とか埼玉での敗北だけにとどめたいと自民党は考えているようです。

 

埼玉県知事選挙はいつも投票率が低く、低投票率の場合は組織を持っていることが有利に働きますし、自民党系の国会議員や地方議員も多くいるにもかかわらず、それでも勝てないということになると、自民党の状況は相当に深刻です。この自民党の退潮の原因は安保法制です。

 

 「地方選挙と国政問題は関係ない」と言いますが、国政問題が直接自分たちの生活に降りかかってくるということになると、それは切り離せない問題になります。そして、そういう問題が起きている時に、国政選挙があれば良いですが、そうではない場合に「意志表示」の手段として地方選挙が使われることになります。

 

 地方選挙では卿佐藤を除く与野党全て相乗りなんてことはよくあることですが、今回の埼玉県知事選挙はちょっと特殊ですが、岩手県知事選挙は与野党対決の構図になるはずでした。岩手県民はそこで投票という形で意思表示ができるはずでした。しかし、与党自民党が逃げ出してしまいました。あれだけ大々的に発表しておきながら。平野氏個人のことを考えると、これで自民党に魂を売って、恩を売ったことにはなりますが、県民を裏切ったことになります。これからの政治生命に大きな傷がついてしまいました。

 

 安保法制に対する国民の不安というものは数カ月で自民党をここまで追い詰めることになりました。自民党は敗北を免れるために、平野氏に出馬取り止めを依頼したそうですが、どちらにしても「負けは負け」です。しかも国会でこれだけの議員数を持つ巨大与党が、しっぽを巻いて国民の前から逃げ出してしまったという恥ずべき醜態を晒してしまいました。この出馬取り止め自体が自民党にとっては大きな痛手となりました。

 

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「岩手県知事選 安保審議の影響避けた自民 「連敗ドミノ」をブロック」

 

産経デジタル 2015年8月8日

http://www.iza.ne.jp/kiji/politics/news/150808/plt15080801140002-n1.html

http://www.iza.ne.jp/kiji/politics/news/150808/plt15080801140002-n2.html

 

 岩手県知事選(8月20日告示)に立候補を予定していた平野達男元復興相が7日に出馬を断念したのは、全面支援の構えを見せていた自民党が形成不利と見て「不戦敗」を選んだからだ。自民党は、平野氏出馬に伴う参院岩手選挙区の補選、今後の地方選での「連敗ドミノ」を警戒。安倍晋三政権へのダメージや来夏の参院選へ影響を、極力抑えたいとの思惑があった。

 

 「いろいろな方からアドバイスがあったが、最終的に判断したのは私だ」

 

 平野氏は7日、岩手県庁で記者会見し、決断の背景に、自民党側の“事情”があったことをにじませた。その上で平野氏は、「安全保障を争点とした選挙はしたくない」とも述べ、中央政界の与野党抗争に巻き込まれたことを悔しがった。

 

 生活の党と山本太郎となかまたちや民主党の支援を受け、3選を目指す現職の達増(たっそ)拓也氏に対し、自民党が白羽の矢を立てたのが平野氏だった。

 

 生活の党の小沢一郎代表は地元の岩手県に強固な地盤を持っており、自民党は知事選を「『小沢王国』岩手で小沢系の息の根を止める最終決戦」(党幹部)と位置づけ、党本部が中心になって県内の有力団体に支援を要請。公明党岩手県本部も平野氏支持を決めて準備を進めてきた。

 

しかし、この流れに待ったをかけたのが、国会での安保関連法案の審議の遅れだった。今国会の会期が岩手県知事選をまたぐ9月27日まで大幅延長され、知事選の投開票日と参院採決時期が重なる見通しとなったことで状況は変化した。

 

 また、安保関連法案への世論の反発で安倍内閣の支持率は急落。自民党は、昭和62年の参院岩手補選で同党候補が敗れ、当時の中曽根康弘政権が打撃を受けた「岩手ショック」の再来を警戒したのだ。

 

 さらに、9日投開票の埼玉県知事選でも自民党県連が支援する新人候補の苦戦が伝えられている。埼玉、岩手と県知事選に2連敗し、平野氏出馬に伴う参院岩手補選でも敗北する事態となれば、野党が勢いづくのは明らか。

 

 そうなれば、9月には安倍晋三首相が再選を目指す党総裁選もあるが、政権のイメージダウンは避けられない。野党優勢の流れが続き、今後の地方選でも負けが込めば、来夏の参院選にも暗雲が立ちこめかねないからだ。

 

 谷垣禎一幹事長は7日の記者会見で「知事選は国政の課題と連動する。そういうことも十分意識して全体の政治スケジュールを作らなければならない」と強調した。(山本雄史、豊田真由美)

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)







野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

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ダニエル・シュルマン
講談社
2015-10-28



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

古村治彦です。

 

 先日、ご紹介したフーマ・アベディンに関して、疑惑が出てきました。国務省在職中に正式な休暇申請をしないで勝手に休んでいながら、その分の給料を受け取っていたというものです。この問題自体は些細なことですが、疑惑を追及しているグラッセリー連邦上院議員はクリントン財団やクリントン周辺人物に対する口利きなどに焦点を当てて更なる追及を行う構えのようです。

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 バイデン副大統領が大統領選挙出馬を検討中と報じられたのと同じ時期にヒラリーの側近中の側近の疑惑が出てきました。これはホワイトハウス筋とケリー国務長官の意向があるものと考えます。

 

==========

 

国務省の厳密な調査:国務省はクリントンの側近に対して不適切に過剰な報酬の支払いが行われていた(State Department probe: Agency improperly overpaid Clinton aide

 

ピーター・シュローダー筆

2015年8月1日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/250002-report-clinton-aide-improperly-overpaid-at-state

 

 国務省の調査官たちは、ヒラリー・クリントンの最も近しい側近であるフーマ・アベディンに対して、クリントンが国務長官の時代に国務省に雇用されていたアベディンに対して約1万ドル多く報酬が支払われていたことを発見した、と一部メディアが報じた。

 

 『ワシントン・ポスト』紙は金曜日、アベディンは政府職員として報酬が多く払われ過ぎていたと報じた。彼女は在職中、数回実質的に休暇を取りながらそれを届け出なかったために起きたと報じられた。アベディンはこの報道の内容に対して争う姿勢を見せている。彼女は役所に出勤しなかった時でも仕事をしていたのだと主張している。

 

 連邦上院法務委員会委員長であるチャック・グラッセリー連邦上院議員(アイオワ州選出、共和党)は金曜日、ジョン・ケリー国務長官と国務省査察官に対して書簡を送り、国務省在職中のアベディンの職務の様子と報酬について詳細を発表するように求めた。ケリー宛の書簡の中で、グラッセリーは、査察官の詳細な調査によって、アベディンによる「犯罪の可能性がある行為」が存在したことを知り、利益の相反の可能性について調査すると述べた。クリントンが国務長官に在職中、アベディンは側近として国務省に入った。その当時、同時にクリントン財団とヒラリー・クリントンと深いつながりがある民間企業テネオ社でも働いていた。

 

 アベディンは休暇申請をせずに役所に出なかった期間の報酬として約3万3000ドルを受け取っていた。これが国務省在職中のアベディンに対する報酬の一部となった。アベディンは3年半国務省の職員であったが、アベディンは一度も休暇や病気欠勤を申請したことはなかった。それでも実際には役所に出勤しなかった時期もありそれに対しても報酬が支払われた。

 

 グラッセリーは、自分が委員長を務める連邦上院法務委員会宛てに、アベディンは数回にわたり休暇を取りながら一度も正式な申請をしなかったという告発がなされたと述べた。グラッセリーは、アベディンは夫と一緒にフランスとイタリアを10日間にわたって旅行した時に、休暇申請をしていなかったのに、Eメールで「現在休暇中です」と書いていたと述べている。

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 グラッセリーはケリー国務長官に宛てた書簡の中で、アベディンが複数の職をいかにしてこなしていたか、更には「好意的な人々」に対して便宜を図ったのかどうかについて、詳細を発表するように依頼した。

 

 グラッセリーは、1つの例として、テネオ社会長ダグラス・バンドがアベディンを通じて、ある人物をホワイトハウスのある地位に就けてくれるようにヒラリー・クリントンからオバマ大統領に働きかけて欲しいと頼んだと報道されたことを挙げている。グラッセリーは、この人物は、当時のテネオ社の顧客でクリントン財団の大口寄付者であるジュディス・ロディンだと述べている。

 

 書簡の中で、グラッセリーは、アベディンの問題は「継続している諸問題の1つ」だと述べた。

 

 グラッセリーの報道担当者は、ワシントン・ポスト紙の取材に対して、グラッセリー議員自身が違法行為の立証をしている訳ではないが、国務省と国務省査察官から最新の詳細な情報を提出するように求めている、と述べている。

 

 クリントンの選挙事務所はコメントを拒否した。アベディンの弁護士はワシントン・ポスト紙の取材に対して、アベディンは正式に事実に関して争う姿勢であると述べた。弁護士は、海外旅行や産休中に残業をしていたのでその分で相殺されると主張した。

 

アベディンの弁護士カレン・ダンは次のように述べている。「フーマ・アベディンは公職にいるこの20年間、ワシントンで最も勤勉な人物として有名です。国務省査察官の調査報告書によると、アベディンの在職中、更には彼女が産休中に複数の事実が発見されたということですが、主要な誤りは彼女が産休中であった時に、休暇申請をしなかったために通常の仕事をしている時と同じ報酬額が支払われていたということです。それ以上のことはありません」。

 

(終わり)







野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


 
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