古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

 古村治彦です。

 

 今回は、2017年11月2日に発売となります副島隆彦先生の最新刊『銀行消滅 新たな世界通貨(ワールド・カレンシー)体制へ』(祥伝社刊)をご紹介いたします。関東圏の大書店であれば11月3日(金)からの週末、その他の地域の大書店でも11月5日(日)くらいまでには店頭に並ぶものと考えられます。


ginkoushoumetsu001

銀行消滅 新たな世界通貨(ワールド・カレンシー)体制へ


 今回の最新刊は、世界規模のテーマとしてビットコイン、日本のテーマとしては銀行消滅が柱となっています。家電量販店ビックカメラでは、ビットコインによる決済が可能となっており、ビットコインについて、知識を得るようにしなければならない状況になっています。また、地方銀行の合同も進んでいます。私の生まれ故郷の第一地銀である鹿児島銀行は、隣県の肥後銀行とグループを形成することになりました。これが何を意味するのか、ということは生活者として興味があります。

 

 今回の最新刊『銀行消滅 新たな世界通貨(ワールド・カレンシー)体制へ』は大変興味深い内容になっていると思います。ぜひ手に取ってお読みください。よろしくお願い申し上げます。

 

(貼り付けはじめ)

 

まえがき

 

 最近、私たちの周(まわ)りから銀行の支店(店舗)がどんどん消えている。この本『銀行消滅』は、この事実を追跡することから始まる。

 

皆が、コンビニで公共料金やコンサート・チケットの振り込みをするようになった。「コンビニ決済」である。その次が「スマホ決済(モバイル決済)」で、やがて「ビットコイン決済(支払い)」の時代になっていくだろう。ビットコイン Bitcoin なる、奇妙奇天烈(きみょうきてれつ)な暗号通貨(あんごうつうか)(クリプト・カレンシー crypto currency )という、お金なのか、貨幣(コイン)なのか、通貨になれるのか分からない「インターネット上のお金」が出現しつつある。それで投資家たちが大騒ぎしている。仮想通貨(かそうつうか)は、政府や官僚の統制を受けない、新しい金融市場のフロンティア(辺境の地)で蠢(うごめ)いている。 

 

地方銀行の大合併がますます進んでいる。この「銀行消滅」の課題以外に、北朝鮮の核ミサイルの脅威に対する、日本国としての対応が目の前の緊急の問題である。私は、国際政治(外交。安全保障=軍事)の問題の最先端の情報、知識をこの本に書いた。すでに私は、今年(2017年)4月に予言して、「米軍による北朝鮮爆撃は、来年(2018年)の4月である。直後に中国軍が平壌(ピョンヤン)に侵攻(進撃)して金正恩(キムジョンウン)体制を崩壊させるだろう」と書いて公表している。私のこの近(きん)未来予測にまったく変わりはない。さあ、私の予言は当たるか、外(はず)れるか。

 

 私は質問を受けた。「副島先生。それでは、その〝第2次朝鮮戦争〟へ向かっての戦争銘柄や復興需要(〝朝鮮戦争特需(とくじゆ)〟)で儲(もう)かる日本の企業はどれですか」という質問だった。私は、呆(あき)れたが己(おのれ)の不明を恥じた。それで極力それらの戦争需要、復興特需から生まれる株高への投資期待に応(こた)えようと思う。だが、私の視線はすでにさらにその先の先に向かう。私の中では、迫り来る〝第2次朝鮮戦争〟さえも過ぎ去りつつある。

 

 これからの世界の金融・経済は、どうなるか。ドナルド・トランプはおそろしく獰猛(どうもう)な企業経営者あがりである。米トランプ政権は、QE(キユーイー) じゃぶじゃぶマネー(=金融緩和(かんわ)マネー)を、このあともやっていくしかないのだ、と腹の底から分かっている。金融引き締め(=金融タカ派(ホーク))に転換したフリも一方でするだろうが。

 

だから今のまま、低金利(日本とヨーロッパはゼロ金利)を続け、株をニューヨークの「大親分たちの談合(だんごう)」で吊り上げ続ける。それしか他にやりようはない。ドル札と米国債(トレジャリー・ビル Treasury Bill 米財務省(ざいむしょう)証券)をさらに大量に刷り続けて、国家財政(ファイナンス)と米国経済(ナシヨナル・エコノミー)を成り立たせるしかない。日本の株価もズルズルと、この先もニューヨーク相場に〝連れ高〟する。そうやって先進国(米、欧、日)の退職老人たちの年金を賄(まかな)い続ける。これが何よりも国家運営の基本だからだ。老人たちを怒らせたら政権はもたない。トランプは、アメリカの国内産業を建て直して輸出振興を目指す。だから、「ドル安路線、低金利路線」なのである。だが〝ちょっとだけ〟利上げのポーズはする。若い元気なFRB議長にやらせるだろう。

 

 私は、この本では、気合いを入れて、どうしても人類に出現しなければ済まず、新しい世界通貨(ニュー・ワールド・カレンシー new world currency )になってゆく仮想通貨(サイバー・マネー)の運命を予測する。

 

森羅万象(しんらばんしょう)の中に生起し有象無象(うぞうむぞう)のひとつ、であるビットコインは、各国の権力者(官僚たち)に叩き潰されるだろう。だがこれから何度でも復活する。仮想通貨には「中心がない(ノン・セントラル)」のだ。だから、世界を操(あやつ)る権力者たちや支配層の言いなりにならない。このサイバー・マネーが、やがて実体を持つ実物資産(タンジブル・アセット tangible assets )である金(きん)や銀、銅などの金属資源と、エネルギー(石油と天然ガス)と、小麦や豚肉などの食糧品目などの基本物資(コモディティ commodity 商品)のすべてを大きな籠(かご)(バスケット)に入れて総量を金額換算した「コモディティ・バスケット」commodity baskets によって裏打ち(担保、保証)される。そのとき、この地上に新しい世界通貨体制(秩序)ができてゆく。この世界通貨は、大(だい)経済学者ジョン・メイナード・ケインズが、第2次大戦末期にアメリカ政府と激論したときに唱えた、まさしく bankall「バンクオール」通貨の実現である。もう米ドル体制の時代ではない。

 

世界の中心は、やがてニューヨークとワシントンから、ユーラシア大陸(ユーロッパとアジア)に移ってゆく。そのとき、新しい世界の中心都市は、中央アジア5国のひとつであるカザフスタン国の都市アルマトゥ(アルマティ)であろう。私は、すでに2010年に拙著でこの予言もしている。

 

 今の北朝鮮危機はどうせ過ぎ去っていく。このあと、日本に年間1億人の外国人旅行者がやってくる時代(現在の3倍の数)が来る。だから外国人向け旅行客ビジネスで活躍しているネット企業の推奨銘柄一覧を巻末に載せた。

 

 いわゆるIT(アイティ)企業を、私たちは、大きく二つに分けて考えるべきだ。私の中で閃(ひらめ)いた。

 

      EV(イーヴイ)(電気自動車)や自動運転、そして生活のインターネットとロボット

化(IoT(アイオウテイ) )、コンビニ・スーパーの完全無人化などは、総じてAI(エイアイ)(人工知能)の開発として考えるべきだ。

 

もう一つは、前述した、

 

  ビットコインなどの、奇妙きわまりない新しいサイバー(ウェブ)マネーたちだ。この新しい世界通貨の発達を、これからの人類のあるべき世界秩序の問題として大きく考えるべきである。ビットコインは政治問題なのである。ビットコインは、国家(官僚たち)の支配を打ち破って国境線を超えてゆくからだ。

 

私は、① のAI(サイバー・ショップから実(リアル)(てん)()へ)よりも、の仮想通貨(サイバー・マネー)のほうを、より重要だと考える。

 

副島隆彦

 

=====

 

目次

 

 

まえがき

 

1 消える銀行

●今、銀行で何が起きているのか

●破綻処理と国有化

●アメリカでも日本でも進む「銀行消滅」

●三菱東京UFJも、みずほも店舗閉鎖

●地方銀行は「2県で1行」の時代に

●コンビニが銀行になっている

●〝手数料競争〟が始まった

●ポイントカードがクレジットカードに

●「非接触型」(コンタクトレス)の決済とは何か

●銀行どころか証券会社も不要になる

 

2 朝鮮半島有事と

  これからの個人資産の守り方

●〝第2次朝鮮戦争〟は2018年4月に起きる。1カ月で終了する

●「副島先生。戦争銘柄を教えてください」の質問に答えよう

●一挙公開! 日本の軍需銘柄

●「日本は1万円札を廃止せよ」という米経済学者の主張

●インフレ・ターゲティング理論の大失敗

●仮想通貨と金(きん)

●税金官僚から資産を守る。金はどう保管すべきか

●海外へ資産を「逃がせ隠せ」した人は、日本に持ち帰らないように

●税務署に〝本当のこと〟を言うべきではない

●事業所得の目安「5棟10室」ルールとは何か

●法律は上級公務員の理屈からできている

 

3 仮想通貨は

  新たな世界通貨(ワールド・カレンシー)となるか

●誰が「コイン」を発行するのか

●ビットコインは「現金」に戻せない。おそらく損をするだろう

●1BTC(ビツトコイン)=110万円の夢を見るのもいいけれど

●仮想通貨の取引所が倒産して28億円が消えた事件

●ビットコインは「通貨」(カレンシー)になれるか

●リバータリアンの思想からビットコインは生まれた

●仮想通貨市場の時価総額は15兆円

●ブロックチェーンとは何か

●なぜ金融工学は滅んだのか

●国家体制の外側へ逃げてゆく

●2万台以上のコンピュータで「マイニング」(採掘)する中国の会社

●「ビットコインは10万ドル(1100万円)になる」

●なぜ中国でビットコイン取引の規制が強化されたのか

●巨大銀行連合が仮想通貨を乗っ取ろうとしている

●仮想通貨と実物資産が結びついて、新たな世界通貨体制ができる

 

4 フィンテックから民泊まで

  副島隆彦が見通す未来

●インターネット決済を始めたピーター・ティールという男

●仮想通貨は金融市場のフロンティア(最前線)か

●アマゾンとトランプの激しい対立

●I(アイ)(オウ)(テイ)で無人化が進むと、どうなるか

●自動運転(運転の無人化)と電気自動車の時代は、まだまだ遠い

●訪日外国人は年間で1億人になる。これがビジネスチャンスだ

●「富士山ビジネス」に投資せよ

 

5 日米〝連動〟経済は続く。そして……

●〝トランプ暴騰〟は、なぜ起きたか

●証拠を残さない相場操縦が行なわれていた

●ドル円の為替相場も操作(マニピュレイシヨン)されている

●トランプは国家借金の「上限」を引き上げた

●アメリカの「歴史的な減税」とは

●緩和マネー問題で、次期FRB議長の人事も決まる

94歳のキッシンジャー博士が、トランプ、プーチン、習近平の先生

●世界の3巨頭による「第2次ヤルタ会談」が開かれる

 

あとがき

 

(巻末付録)

外国人旅行者で成長する企業たち推奨銘柄27

 

=====

 

あとがき

 

 本書で「エコノグローバリスト・シリーズ」は、ついに20冊目となった。

 

私は金融本としてこのシリーズを書き続けた。毎年1冊ずつ出し続けて、本書で20周年となった。シリーズ1冊目は、『悪(あく)の経済学』(1998年刊)である。

 

我ながらよくもこんな本を、倦()まず弛(たゆ)まず20年も書き続けたものだ、と感慨深い。このシリーズ本の出版を支えてくれた編集者二人が、著者である私よりももっとこのことを喜んでくれた。最初の担当編集者は、一昨年、祥伝社社長に就任した辻浩明氏である。

 たしかあのとき、私は「本を1冊書け、書け、と言われても、何をどう書いてよいか分からないんだ」と喚(わめ)いた。そしたら辻氏は、「まあまあ、そう怒鳴らないで。あれこれ応援しますから書いてくださいよ」と言った。私は拍子(ひょうし)抜けして、なんとか書く気になった。優れた編集者との出会いが、人々が求めている良い本を世の中に送り出す。著者(書き手、演技者、芸術家も同じ)は、一人で勝手にもがき苦しんでいるから周(まわ)りが見えない。すべての演戯者(パフオーマー)は、「本当に、私のこんな踊りや歌でいいんだろうか」と何歳(いくつ)になっても自問している。スポーツ選手と違って1等賞、2等賞がない。有能な編集者と組まないと良い本はできない。作家生活35年にして、私はようやくこういうことが分かる。

 

シリーズ1冊目の『悪の経済学』を出した、前年の1997年に、私は『属国(ぞっこく)・日本論』(五月書房刊)を出版している。「日本はアメリカの属国(ぞつこく)(朝貢国(トリビユータリイ・ステイト))である」という理論を敢然(かんぜん)とこのとき提起した。今では多くの国民がこのコトバをつぶやくようになった。

 

その2年前の1995年(42歳)に、私は、現代アメリカの政治思想の諸流派12派からなる全体像を描いた本を出した。のちのち私の最大業績だと評価されるだろう。だが政治思想の研究の出版では、ご飯は食べられない。私は、金融本を次々と書くことで、いつの間にか金融評論家になっていた。予期してやったことではない。4冊目から担当編集者は岡部康彦氏に代わった。

 

シリーズ11冊目である『恐慌前夜』は、〝リーマン・ショック〟(2008年9月15日勃発)を予言(プレデイクト)した。予言は預言(プロウフエシー)とは違う。この本の「第4章 恐慌への道のり」に「リーマン・ブラザーズは破綻する」と書いた。この本が出版された2週間後にリーマン・ブラザーズ社は本当に潰(つぶ)れたのである。これも私の勲章のひとつだ。

 

以後ずっと岡部氏と二人でこのシリーズ本をつくってきた。こうやって20年が経()った。

 

私が、物書き業(評論家)を、1982年(28歳)から始めてから35年が過ぎた。これまでに220冊の本を書いた。もう他の職業に転じることができる歳ではない。このまま死ぬまで書くしかない。「お前の本はもういいよ」と飽()きられても私は書く。職業とはそういうものだ。

 

インターネット時代(さらにスマホ時代)になって、本を買って読む人々が大きく減った。本が売れなくなって出版業界はヒドく追い詰められている。出版業は世の中にある800ぐらいの業種のうちのひとつである。どこの(産)業界も自分たちが生き延びることで厳しい試練に耐えている。私も出版業界で禄(ろく)を食()む者のひとりとして、この業界が生き延びるための、新たな知恵と方策を絞り出さなければならない。これは残りの人生で自分に与えられた使命である、と思っている。

 

この本も、前述した祥伝社書籍出版部の岡部康彦部長とつくった。毎度のことだが、私が暗中模索(あんちゅうもさく)でへばりそうになるのを助けてくれて、なんとか完成した。記して感謝します。

 

副島隆彦

 

(貼り付け終わり)

 

Share on Tumblr Clip to Evernote

 古村治彦です。

 

 今回は前回に引き続き、ジェイク・サリヴァンについての記事をご紹介します。今回は後半部についてご紹介します。

 

 サリヴァンは、それでもやはりアメリカの偉大さは、海外に介入することである、とい信念を変えていません。アメリカが世界に介入することで、世界を良くするという考えを捨てていません。また、エスタブリッシュメント、エリートとしての態度も崩していません。

 

 しかし、自分は故郷のミネソタ州に帰って、政治家をやるか、地区検事をやるべきではないか、そうすることで人々の声を聞き、生活を目にすることができる、とも考えているようです。彼は新たなエリート像を模索しているようです。

 

 それでも彼はワシントンの重力から逃れることはできず、また、ヒラリーとの関係も着ることができないでいるようです。

 

 サリヴァンは、人道的介入主義派のプリンスとして、これから温存されて、いつか民主党が政権に近づく時には大物となって出てくることになるでしょう。

 

 

(貼り付け終わり)

 

ケンタッキー州の田舎の町で生まれ育ったというある学生がサリヴァンの話に入り、「人口の少ない、飛行機や高速道路で通過するだけの田舎の州の出身ですが、私が一緒に育った人々と同じ考え方をすることは難しいのです」と語った。これを受けて、サリヴァンはアメリカの「拡大しつつある」、「恐ろしい」分裂について話すことになった。

 

この学生の話を受けて、サリヴァンは自分が生まれ育ったミネソタ州のことを思い出した。1989年にベルリンの壁が崩壊した時、サリヴァンは13歳だった。それから数か月後、ソヴィエト連邦の指導者ミハイル・ゴルバチョフは一般的なアメリカ人たちと会いたいと熱望し、サリヴァンの住んでいた、ミネアポリスの近所にやってきた。ソ連首相の車列に対して、ラトヴィア系とエストニア系のアメリカ人たちがバルト三国の独立のために抗議活動をしていた。サリヴァンはこの様子を見て、世界にとってアメリカの存在が重要なのだということを感じ取った。

 

候補者としてのトランプは、アメリカ例外主義という考えを不必要な負担であるとして拒絶した。トランプはテキサス州で開催されたティーパーティーの集会で次のように語った。「アメリカ例外主義は素晴らしい言葉だなどと思わない。私たちは例外で、お前たちはそうではないということだ。私はアメリカがこれまで世界に与えてきたものを取り返したい。私たちはこれまで世界にあまりにも多くを与えてきた」。

 

サリヴァンはトランプ主義に対する対抗手段として、彼がミネソタで感じていた種類のアメリカ例外主義を徹底的に主張することだと考えるようになっている。サリヴァンは次のように語っている。「私たちの国家として持つDNAに基礎を持つ何かしら傲慢な考えが必要となります。DNAは、私たちがアメリカ人としてのアイデンティティを規定するものです。このDNAは人々を奮起させるための武器となります」。

 

しかし、サリヴァンは自分の考えを詳しく語ることに困難を感じた。彼の考えを深めるために、サリヴァンは1890年に軍事戦略家アルフレッド・セイヤー・マハンが発表した難解な論文を読んだ。マハンはアメリカを国際的な海軍強国と形容した。サリヴァンは、歴史家スティーヴン・カインズナーの著書『ザ・トルゥー・フラッグ』を研究した。この著書は、セオドア・ルーズヴェルト、マーク・トウェイン、アメリカ帝国の誕生に関する内容だ。

 

サリヴァンはミネソタやケンタッキーの人々の考えと共鳴すべきという考えを軽視した。サリヴァンは次のように述べた。「アメリカの例外主義は、アメリカは新しいものを生み出し、気候変動、流行病、核拡散といった厳しい諸問題を解決する力を持っているという考えを基礎にしています」。これから数週間後、サリヴァンは、アメリカの例外的な使命は、強力で成長を続ける中間層への関与をしていくということになる、とも述べた。

 

しかし、こうした主張は、何も大きなことではなく、傲慢でもなく、人々を鼓舞するものではない。

 

サリヴァンは、彼が世界における考えを「ミネアポリスの公立高校」で培ったと常に述べている。しかし、サリヴァンは同時にワシントンの排他的な外交政策エリートが作り上げたということも明確だ。

 

アメリカでは党派同士の憎しみ合いが存在しているが、共和党と民主党の国際主義者たちは、彼らは憎しみ合いなどないと訴えてきた。彼らは最大の諸問題について合意していた。:アメリカは世界の中でも特異な道徳的権威を持っており、世界の指導者として特別な責任を担っている、と彼らは考えている。共和党内の外交政策エスタブリッシュメントのほぼ全員はトランプが大統領選挙候補者になることに反対する公開書簡に署名した。

 

サリヴァンはこうしたエリートの最も奥ゆかしい特性を体現した人物と言えるかもしれない。彼は反対者をシャットアウトしないし、ツイートで悪口を言わない。共和党関係者の多くはサリヴァンを称賛している。イランとの合意を激しく批判しているマーク・ダボウィッツは次のように語っている。「サリヴァンは誠実そのものの人物だ。批判すべき点は見当たらないし、彼がどんな問題を持っているかを指摘することもない」。

 

大統領選挙期間中、そして大統領に就任してからも、トランプは外交政策の常識のほぼすべてに挑戦してきた。トランプはアメリカの同盟諸国を口汚く罵り、核不拡散の試みに疑問を呈し、民主的な諸価値、人権、自己利益を基盤として構築されてきたアメリカの外交政策の理想を拒絶した。

 

ワシントン内部からのトランプへの対応は、ワシントン外に広がることはない。ワシントンの外交政策専門たちがティームを組んで、ブルッキングス研究所から発表したレポートの中に次のような一節がある。このティームにサリヴァンも参加した。「私たちは、国際秩序に対してアメリカが行ってきた支援を放棄することは深刻な戦略的間違いであり、これがアメリカをより脆弱により貧しくし、世界をより危険な場所にするだろう、と確信している」。

 

最近まで、サリヴァンはこうした努力の価値と学識について考え込んでしまっていた。長年にわたり、外交政策分野のエスタブリッシュメントは、アメリカ主導の、ルールに基づいた国際秩序の維持の重要性を訴えてきた。この訴えはアメリカ国民のほとんどにとってはよくて意味のないものである。悪くとると、こうした訴えは魂のこもっていないグローバリズムにつながるものである。

 

サリヴァンにとって、エスタブリッシュメントの知的な消耗の衝撃的な具体例は12か国が参加する環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が今年の初めにトランプ大統領が公式に廃棄すると発表したことだ。共和党と民主党の国家安全保障問題アナリストたちは長年にわたりTPPをアメリカの国家安全保障と中国封じ込めにとって必要不可欠であると主張してきた。サリヴァンもまたTPPを支持していた。

 

サリヴァンは次のように語った。「こうした専門家のほとんどはTPPの詳細やアメリカ労働者に対するマイナスの影響が出る可能性について関心を払わなかった。エリートたちは、TPPは南シナ海の領海争いのような他の問題にとってプラスの効果があると主張した」。TPPの交渉過程の中で、エリートたちは、彼らが仕え、守ることになっている人々のことを忘れてしまったのだ。

 

サリヴァンは、エリートと一般の人々との間の懸隔は、より大きな問題の前兆だと主張している。

 

サリヴァンは次のような質問をした。「私たちの社会において広がりつつある基礎の部分での分裂が生み出している尊厳、孤立、アイデンティティに関する諸問題を私たちはどのように解決できるだろうか?」。彼は自分のすぐ近くに座っているケンタッキー州出身の学生を見つめた。サリヴァンは続けて次のような質問をした。「私たちが今話題にしている、人々とは切り離された、謙虚な姿勢を持っているエリートになることなしに、この質問をすることは可能なのか、可能ならそれはどのようにしてか?」。

 

この質問は部屋の雰囲気を暗くした。

 

サリヴァンは最近になって、ワシントン、ハーヴァード、イェールといった場所から離れたら、こうした疑問に対してより容易に答えられるだろうと考え始めている。

 

サリヴァンはあるインタヴューで次のように語った。「TPPが南シナ海の紛争を解決するなどという主張は、善良なアメリカ国民にとって価値のある主張ではないのです。ミネソタ、ニューハンプシャー、タルサといった場所にこれから行って住んでみても、これまで手に入れられなかった知恵を急に手にできるなんて思いませんよ。しかし、考え方を身に着けることはできます。自分がしてきた考え方とは異なる考え方をする、これが重要だと思います」。

 

サリヴァンが2005年に連邦最高裁判所事務官の仕事を終えて最初に行ったことは、地元に帰ることであった。この時、ワシントンの大きな法律事務所からは契約金25万ドルでの契約を提示されたが、これを断り、ミネアポリスの法律事務所に入った。この事務所の顧客のほとんどは農業関係や食品産業であった。

 

この当時のことについて、サリヴァンは、ワシントンで政府関係の仕事をするか、ミネアポリスで平凡な生活をするかの分かれ道であったと語っている。「ワシントンでは、仕事が全ての中心です。それはワシントンでの仕事はその人の全てを投入させるハードな内容のものだからです。ミネアポリスでは、仕事は人生の一部に過ぎません」。

 

ヒラリーが国務長官を辞任した2013年、サリヴァンは地元に帰る予定にしていた。彼は、連邦議会の選挙に出馬するか、連邦検事になろうかと考えていた。しかし、オバマ大統領(当時)は、サリヴァンにホワイトハウスで働くようにと説得した。当時、オバマ大統領の首席外交政策補佐官であったベン・ローズは次のように述懐している。「オバマ大統領は、帰るならいつでも帰ることができるじゃないか、と言いました。地元がなくなりはしないだろう、だけど、ホワイトハウスの最高レヴェルで働く機会がそこにあるんだし、その機会が次いつ来るかは分からないじゃないか、ともね」。

 

ホワイトハウスでの仕事を終えても、サリヴァンはワシントンとのつながりを保つことができた、それは、ヒラリー選対を通じて、また彼の妻を通じてであった。サリヴァンの妻は、連邦最高裁判事スティーヴン・G・ブライヤーの秘書官となる予定で、そのため、夫妻は少なくとも来年はワシントンに留まることになるだろう。

 

翌年以降にワシントンを去って、どこか基盤を置ける場所に移り住むというのが次の計画だ。サリヴァンは、結果がより現実的で、即座に出て、手に取ることができる、地域プロジェクトの様なものに関わることを考えている。ミネソタは一つの選択肢であり、妻が育ったニューハンプシャーがもう一つの選択肢だ。

 

もう一つの可能性はワシントンに留まることだ。サリヴァンは「私は人々と実際に会って、過去10年の経験を基にして、これからアメリカがどこに向かうかということを話したいという希望を諦めている状態です」とも語った。

 

サリヴァンのレヴェルの人物で、ワシントンを去るとか地元に帰るという選択をすることはほぼないことだ。問題はより複雑なものだ。お金の面は心配ないのだ。アジアのある国は、最近、サリヴァンの2日間の訪問に2万5000ドルを提示した。

 

彼はこの提示を断る前に、「よく分からないが、そんなものなのかな?」と考えたことを覚えている。

 

イェールの学生たちの心配は、サリヴァンの考えとは全く反対の方向に向かっていた。彼らは、トランプ大統領のいるワシントンで彼らにとって魅力的な機会が今でも残っているのかということを懸念していた。

 

ある学生は、最近発表され、評判を呼んだ『フォーリン・ポリシー』誌の記事を要約しながら、「これは、テクノクラシーとエリートに対する不吉な鐘の音ということになるのでしょうか?」と質問した。

 

サリヴァンが答える前に、別の学生が次のように言った、「東海岸のエリート2.0となるか、私たちは全員終わりとなるか、ということだね」。

 

ワシントンや学界の一部に蔓延している滅亡するという予言にサリヴァンは与しない。サリヴァンは学生たちに、トランプは彼が選び出したワシントンのエリートに依存しているのだ、と語った。トランプ大統領は外交政策を実行するのに将軍たちに頼り切っているし、政権内部は大富豪たちに掌握されていると語った。サリヴァンは、「ゴールドマンサックスが我が国の経済政策を遂行している。専門性と言うのは常に求められるものだよ」。

 

サリヴァンと学生たちの集まりも終わりに近づいた。夜は深まった。彼の皿の上に置かれたピザは冷たくなっていた。

 

サリヴァンは「ワシントン郊外に家を探したいと本当に考えているんですよ」と述べた。

 

学生が「ヴァージニアですか?それともメリーランドですか?」とジョークを言った。

 

サリヴァンは「おそらくそのどちらかだね。現在私ができる最高の仕事はワシントンの外側にいることなんだ」と語った。

 

サリヴァンはドアに向かった。翌日はニューヨークでヒラリーに会って、回顧録の校正を行う予定になっていた。校正が時間通りに終わり、疲れていなければ、フランス大使と夕食を共にすることにもなっていた。その後にワシントンに戻る予定であった。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12








このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

 古村治彦です。

 

 台風21号の接近、上陸の中、第48回総選挙の投開票が行われました。台風のために投票所の閉鎖時刻が早まる場所や、離島からの投票箱が届けられずに開票ができない場所が出てきました。このような状況では投票所の一時閉鎖と翌日の再開といった対処が必要ではないかと思います。台風のために参政権を行使することができない人がいるならば、その行使に全力を挙げるのが民主国家であると思います。

 

 選挙結果は、自公大勝ということになりました。現在のところ、自民党は公示前の勢力を維持、公明党は5議席減少、ということでほぼ公示前勢力を維持することに成功しました。自公だけで総議席の3分の2を獲得しました。自公に関しては、9月の段階では、勝敗ラインは過半数の233、その後、情勢調査が出て、絶対安定多数の261という話が、安倍晋三首相の側近・萩生田光一代議士から出ていましたから、まさに大逆転ということになりました。

 

 希望の党は公示前から8議席を失い、50議席前後、日本維新の会は4議席失い、10議席は確保、という結果になりました。立憲民主党は公示前15議席から約40議席を伸ばして54議席、共産党は21議席から9議席を減らして12議席、社民党は1議席は確保していますが、比例でどうなるか、分からない状況です。今回、民進党から無所属で出馬した候補者は20名以上が当選しました。比例復活がない中で当選してくるのは地盤が強いということになります。

 

 選挙速報の中で、共同通信や時事通信は、自民、公明、希望、維新を「改憲勢力」としてまとめ、この勢力で310議席を超えたという速報を打ちました。確かにこれら4つの政党で465議席中370議席という大きな数字を占めることになりました。希望を抜いても自公維で310議席以上320議席に迫る数字となっています。

 

 自公大勝、改憲勢力大勝ということになりました。野党は惨敗という結果になりました。しかし、9月から10月の初めにかけて、この言葉は、自公惨敗、希望大勝となるはずでした。安倍首相が解散を決断し、総選挙の投開票日が10月22日とされたころを思い出してみれば、安倍首相には森友学園小学校や加計学園岡山理科大学獣医学部の新設に絡む問題が付きまとい、安倍政権の支持率は下がっていました。そうした中で選挙をして、自民党は大丈夫なのか、過半数割れもあるという話になっていました。実際に9月末の状況では、自公で250議席を確保するのではないか、と言えば、「お前の予測は甘い、自公は過半数割れするのだ」という叱責を受けることさえありました。この時、私は自公で250、希望で150、それ以外で65ということになるのではないかと考えていました。かなりおおざっぱですが、希望が勝つだろうと思っていました。自公が公示前よりも40も50も減らせば、安倍首相の責任問題になって政権は持たないだろうし、それ以上の数字となれば倒閣運動が起きるのではないかと考えていました。

 

 しかし、私は同時に希望の党に懐疑的、批判的でありました。それは、このブログでも書きましたが、小池百合子東京都知事が安倍晋三首相と思想的に何の違いもないことやアメリカのジャパン・ハンドラーズとも関係が深いことを挙げて、希望の党は本当に自民党と対抗する野党なのだろうかということを書きました。小池都知事は、首班指名に関して、公明党の山口那津男代表の名前を挙げてみたり、維新との連携を図ってみたり、自民党との選挙後の連携、特に安全保障政策について連携する可能性に言及するなどの行動や言動を行いました。そして、選挙の候補者名簿を見てみれば、公明党が重視し候補者を出している小選挙区、日本維新の会(大阪の選挙区)、自民党・石破茂代議士に近い議員の選挙区には候補者を擁立せず、立憲民主党に対しては律儀なほどに対抗馬を立ててきました。

 

 思い出していただきたいのは、希望の党の結党から10月10日頃まで、希望の勢いは大したもので、立憲民主党は酷いものでした。「立憲民主?なんじゃそりゃ?潰してやるよ」という鼻息の荒さでした。希望の党は15議席も守れないだろうなというのが、10月10日に大宮駅西口での枝野幸男代議士の演説を聞いていた時の私の感想でした。同じ日の数十分前には小泉進次郎代議士が来ていて、その時の人の集まり具合を見ていたので、やはりそれよりも少ない人数でしたので、特にそう思ったのかもしれません。

 

 選挙戦が始まってみれば、安倍政権に対する支持率は上がらないが、自公が300議席をうかがう勢いという情勢調査の結果が出てきて、驚かされました。289の小選挙区の情勢を丹念に調査していけば、ある程度確度の高い分析ができるのでしょうが、それでもいくら何でも300は、と驚かされました。そして、希望の党の失速もまた驚くばかりのものでした。都知事選挙や都議会議員選挙の時の勢いはなくなっていました。

 

それはマスコミが面白おかしく報道したこともあるでしょうが、そのような報道をさせる隙を作ったのは小池都知事と希望の党であるし、何より、希望の党の曖昧さというか、どこか信じられないというところが有権者にあったと思います。小池都知事にマスコミは何度も総選挙への出馬はないかということを質問しました。私はどうしてそう何度も質問するのだろうか、小池さんは出馬は100パーセントない、と述べているのに、と思っていました。このパーセントを使った表現に関しては、小池さんにかわいそうな面があって、橋下徹氏が選挙に出る、出ないというときに%という表現を使って出馬はないと述べたが、結局出馬したということもあって、パーセントを使ってしまうとどうしても信用できないという印象が持たれやすくなっている状況もあって、これは小池さんには気の毒なことでした。しかし、彼女の煙に巻くような、少しすかした、馬鹿にしたような発言や行動は他にもあって、それが報道されて、希望の党への支持が伸びなかったということもありましょう。

 

 私は希望の党が無理やり過半数の233人の立候補者を立てたことに疑問を持ちました。そして、その中身を見て、憤りを覚えました。選挙はやはり勢いや風ではうまくいきません。国政選挙、特に総選挙では有権者は特に慎重になります。日頃から地道な活動をしているから応援してやろうということになります。どうしてもそうなります。それなのに、その選挙区から代議士となっている人、代議士となった経験がある人、選挙に備えて地道に活動してきた人たちに対して、選挙区の変更が指示されました。自由党に属していた人や小沢一郎代議士に近いと言われている人たちからそのような人が多く出て、私はどうしてそんなことをするんだと憤りを覚えました。

 

樋高剛氏という人物がいます。樋高氏は小沢一郎代議士の秘書として研鑽を積み、生まれ育った神奈川で代議士を目指し、3回の当選を経験した人物です。義父は平野貞夫元参議院議員で、小沢氏の側近と言える人物です。2012年、2014年に苦杯をなめましたが、地道に活動を続けていました。しかし、樋高氏は今回千葉県の選挙区から立候補し、落選しました。いきなりの国替えで、名前を覚えてもらうところから始めてよく3万6000票も獲得できたものだと思いますが、これでは人材の無駄遣いです。このような例はほかにもあります。そして、立憲民主の候補者がいる場所には律義に広報車を立てて、自民批判票を分割して共倒れ、希望の党のほうが獲得票数が多い小選挙区が少なく、立民支持者からは「希望が本当に邪魔だったなぁ」という嘆き節が出てくる始末でした。

 

 しかし、このような嘆き節が出るはずではなかったのです。希望が少なくとも100議席は獲得、うまくいけば150議席だ、ということになっていたを思い出すと、どうしてこうなったのかということを今更ながらに思います。そして、小池都知事の振りまいた幻影と風が今回の総選挙では自公を利しました。小池都知事の吹かせた風が逆風となって希望の党に吹き付け、前進を阻んだということになります。小池氏が自民党を助けるために、希望の党を作って野党を分断したということまでは言いたくありませんが、結果としてはそうなってしまいました。意図してそうしたかどうかは分かりませんが、外形上そうなってしまいました。

 

 野党、安倍政権批判勢力が大敗したことは間違いありません。野党が分立し、しかも野党の核となるであろうと考えられていた希望の党に逆風が吹く中ではいかんともしがたいということになりました。立憲民主党は現有から40議席伸ばしましたが、これを喜ぶことは当然ですが、浮かれてはいけないと思います。支持者で浮かれている人は少ないでしょう。希望、民進系無所属、共産、社民といった野党、維新という「ゆ党(野党でも与党でもない)」、自公という与党の中で、自分たちの立ち位置を確かめ、これから支持を拡大していくという作業が必要になります。参加しているプレイヤーが多くなるとどうしてもその作業は複雑なものとなります。ここで失敗すると順風から逆風になりますし、その変化の速さは希望の党が今回示しました。

 

 総投票数、各政党の獲得票数といったことをこれから見ていかねばなりませんが、自民党に対する票数が全投票数に占める割合は、議席に占める割合である約60%を大きく下回っているでしょう。野党が分立してさえいれば、漁夫の利で自公が勝利する、ということを2012年からずっと見せられてきました。野党共闘の枠組み作りが全国各地で進められてきましたが、結局それはうまくいかないということになりました。

 

 前原誠司・民進党代表は野党共闘路線ではなく、希望に全員合流して、一気に巨大政党を作り上げることをもくろんだのでしょう。しかし、希望の党の結党メンバーには民進党のリベラル派が嫌で離党した人々が多く、とても全員が合流できる状態ではありませんでした。また、安保法制であれだけ反対していたのに、希望の党から出るということは、その時との整合性を問われるということになります。自公からそのような戦いを強いられたら、厳しい戦いになったことは間違いありません。また、小池氏は自分の子飼いを増やすということもあったでしょうから、民進系は厳しい処遇をされたことでしょう。自由党から言った人たちに対する扱いを見ればそのように思わざるを得ません。

 

 希望の党にも行けない、行っても厳しい、当選も難しいという「負け犬」たちが作ったのが立憲民主党です。しかし、この立憲民主党に支持が集まってしまったのです。これは安倍政権もいや、だけど、小池都知事もいやという人たちの受け皿となりました。私はこれまでずっと枝野幸男という政治家に批判的でした。しかし、安倍晋三、小池百合子、枝野幸男と並べられて、誰を支持するかと問われたときに、枝野幸男という選択しかありませんでした。「立民は現有維持できないだろうな、いやできるかもしれない、へー20台獲得という話も出ているのか、倍増の30?本当に?、40台なんてそんな馬鹿な」という感情の変遷がありますので、立憲民主党が50台を獲得できたことはうれしいですが、はたしてこれからどうしていくのか、いけるのかということには不安もあります。

 

 自公は自分たちへの支持が増えなくても、野党が分立してくれれば勝てるという基本戦略を確立しました。それに対しての対抗策は、野党がまとまること(候補者を立てあって潰しあうのを止めること)しかありません。今回の選挙で大きな傷が野党側に残ってしまいました。希望と立民が協力することは難しいかもしれません。また、小池氏が敗北を認めた希望から離脱する議員も出てくるのではないかという話も既に出ています。そうなったときに、元民進党の再合流となる時には、民進党の再興では意味がありません。リベラルから中道右派までを包むアンブレラパーティーになることが重要であると思います。

 

 今回は自公惨敗、となるべき選挙でした。それが野党分立となってしまったことは、野党側に責任があります。自民党を利してしまったという事実は厳然として残ります。そこで、どこが悪い、何が悪いということを言い合うのはありですが、それをいつまでも引きずっても自公を利するだけです。自公政権、安倍一強状況を打ち壊すために何が最善なのかということを考えていかねばなりません。

 

(終わり)



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12





このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

このページのトップヘ