古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

 古村治彦です。

 今回は、「米ドルの供給(US dollar supply)が増大すると、実物資産、特に食糧価格が急騰する。食糧ショック(food shock、食糧価格の急騰)が社会不安(social unrest)を引き起こす」という内容の記事をご紹介する。著者たちの主張の証拠となるのが、2008年のリーマンショックからの国際的な金融危機(global financial crisis)と2010年からの「アラブの春(Arab Spring)」からの相関関係である。アラブの春は民主化(democratization)を求めた人々の動きと言うのが一般的な理解であるが、これはアメリカ、アメリカ国務省が主導した。このことは拙著『アメリカ政治の秘密』で詳しく説明した。

 しかし、このアラブの春は別名「空腹・飢餓の革命(Hunger Revolution)」とも呼ばれている。食糧価格の急激な変動は人々の生活を苦しめ、その不安の高まりもあり、暴動や内戦にまで発展したということである。食糧価格の推移と世界各地での抗議活動やデモの数の推移を示したグラフが下の記事に示されているが、相関関係はあるようだ。

 日米欧、特に日本はデフレーション(deflation)の状態である。給料も下がれば物価も下がる、だから景気が悪い、という状態だ。デフレとは簡単に言うと、供給(supply)は多が、需要(demand)が少ないという状況だ。だから物価が下がる、そして企業や個人の売上が下がれば給料も下がる、そうなると、家計の消費は減っていくということになる。

 ここで日本にとって怖いのは、「コストプッシュ・インフレーション(cost-push inflation)」だ。景気が悪く、給料が上がらない中で、食糧価格が高騰すると、生活は苦しくなる。食糧や石油について日本では輸入に頼っているが、それらの価格が高騰すると、日本でも物価高ということになるが、景気が良くなっている中での物価高ならば給料も上がっていくが、給料が下がっているのに物価が上がっていくということになれば、生活が苦しくなる人は多く出る。

 新型コロナウイルス感染拡大によって世界経済は大きく減速している。その規模は2008年の国際金融危機を超えるものだとも言われている。その時と同様、アメリカの中央銀行である連邦準備制度(Federal Reserve)は経済の安定化のために、ドル供給を行う。そうなれば、食糧価格が高騰し、世界各地で社会不安が起きるという、こういう図式である。日本もまた他人ごとではないが、主には発展途上国を襲うことになる。ハンガー・れヴォルーションが再び起きるということになるのだろう。

(貼り付けはじめ)

食糧価格の急上昇と社会不安:連邦準備制度(アメリカの中央銀行)の危機との戦いの暗い側面(Food Price Spikes and Social Unrest: The Dark Side of the Fed’s Crisis-Fighting

―緊急金融政策は意図しない結果を生み出す:世界規模での食糧価格の上昇

オレ・コーレン、W・キンドレッド・ワインコフ筆

2020年5月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/05/20/food-price-spikes-and-social-unrest-the-dark-side-of-the-feds-crisis-fighting/

2010年12月の初め、国際連合食糧・農業機関は政策短観を発表した。その中には次のように書かれていた。「世界的な農産物市場における極端な価格の不安定さは、世界の食糧に関する安全性に大きな脅威を及ぼすことになる」。それから数日後の12月17日に、チュニジアの露天商ムハンマド・ブアジジは自分の体に火をつけた。警察がブアジジのフルーツの屋台を没収した。その後にブアジジは自殺した。フルーツの屋台は彼にとっての唯一の生活費を稼ぐ手段だった。ブアジジの自殺はそれ以降、十数件の焼身自殺を引き起こした。そして、大規模な抗議運動が発生した。その大部分は上昇し続ける食糧価格が原因であった。そして、抗議運動は中東と北アフリカに急速に拡大していった。

社会の大混乱の頻発は西側のメディアでは「アラブの春(Arab Spring)」として知られるようになった。しかし、この地域の活動家たちは、アラブの春を「空腹の革命(Hunger Revolution)」だったと描写した。一連の混乱がアラブ世界にだけ限定されなかったということを考慮すると、空腹の革命の方がふさわしい名前ということになる。一連の大混乱は一国の国境内に限定されるものではなかった。リビアとシリアへと飛び火した内戦状態は特に国際化されたものである。シリア内戦による2015年の難民ショックは、ポピュリズム・ナショナリズムの政治運動の台頭をもたらした。こうした政治運動は、最初にヨーロッパで起き、やがて世界中に伝播した。

コロナウイルス危機によって、手頃な価格で食糧を手に入れることができるだろうかという懸念が大きくなっている。特に発展途上諸国でこの懸念が高まっている。今月初め、国際連合総会議長ティジャニ・ムハンマド=バンデは、感染拡大がもたらす食糧危機に警告を発した。一方、国連食糧計画は、感染拡大が起きる前の水準に比べて、急激な食糧不足が2倍の水準に達することになると予測している。近年の農業生産高は堅調に推移してきたが、公的機関や各国政府の幹部たちは、世界規模の食糧供給チェイン(網)のもろさ、食糧買い占め、食糧に関する保護主義について懸念を持っている。食糧不足が顕著化する中で、抗議活動、大衆行動、暴力・非暴力を問わない大規模な反政府デモといった政治に対する争いに関するエピソードが世界各地に広がっていく可能性も大きくなっている。

これらの出来事全てが広範囲な社会的秩序の動揺をもたらす訳ではないが、その中のいくつかは社会秩序を動揺させる。その結果は深刻なものとなるだろう。手頃な価格の食糧へのアクセスを求める抗議活動は政治掲載においては定期的に起きる現象である。2007年から2008年にかけてこうした抗議活動の波が発生した。2010年末に起きたアラブの春よりも前の現象である。より一般的に言えば、食糧ショックに対応する社会運動は、近代史を形作りにあたり重要な役割を果たした。急速に上昇する物価はフランス革命を引き起こした。1848年の革命は、ヨーロッパ諸国で続いた干ばつのために起きた食糧価格の上昇によって引き起こされた。食糧を求める抗議活動はソヴィエト連邦を生み出した1917年のロシア革命だけではなく、歴史的な皮肉と言うしかないが、ソヴィエト連邦の終焉をももたらした。最近で言えば、食糧危機によって、1998年にはインドネシアのスハルト政権が倒された。

これら歴史的な出来事の多くには干ばつのような自然現象も含まれていた。自然現象はマルサス流の力学を始めさせ、悪化させた。食糧の供給可能性は人々が食糧を求める需要のために脅威に晒されることになる。特に都市部での急激な人口増加が伴うと、食糧需要が急速に高まり、供給が脅威に晒されることになる。しかし、これとは別の要素が国際的な食糧価格、そして政治の安定に大きな影響を与えている。その要素とは国際的な通貨システムの変化である。

食糧の国際的な取引は拡大し続けている。その結果、食糧に関しては米ドルで示される国際価格が出るようになっている。その理由は米ドルが国際的に最も使用されている通貨であるからだ。米ドルの価値の変化は世界各地での、その中には食糧価格も含まれるが、物価の変動をもたらす可能性が高い。そして、米ドルの価値は、連邦準備制度の行動に最も影響を受ける。

連邦準備制度は、アメリカ政府から、アメリカ経済において完全雇用、低く安定したインフレーション率、金融の安定の維持を達成するように求められている。連邦準備制度は、様々な政策を利用して、上記の目的を達するために、ドル供給を拡大したり、縮小したりする。連邦準備制度が持つ手段とは、金利の変更、資産購入(別名「量的緩和」)である。通貨供給量の変化は物価に影響を与える。そして、ドルは最も国際的に使われている通貨であるので、物価の変動は国際的なものとなる。

農産物や鉱物資源などの実物資源の価格は特にアメリカの金融政策の影響を受ける。在庫量、分配ネットワークの機能、世界的な需要のレヴェルといった他の諸要素もまた重要な役割を果たすことになる。他の全ての要素がそれまで同様だった場合に、米ドルの供給拡大が実物資源価格の高騰につながるのが典型的な反応だ。食糧価格の変動は世界中での社会の安定に強力な影響力を持つことになる。

このことが示されたのは2007年に始まった世界金融危機の時期だった。アメリカ経済が減速し始め、崩壊した時、連邦準備制度は金利をわずか1年の間に5.25%からゼロに引き下げた。主要な政策金利をゼロにするということは前代未聞だった。しかし、金融部門で崩壊が始まった時、ゼロ金利はアメリカ経済を安定させるためには不十分であったことを示した。2008年秋から、連邦準備制度は一連の量的緩和を開始した。連邦準備制度はドルを他の資産に変えた。資産の多くは政府債券と不動産担保証券で、これで各種金融市場を安定化させ、経済を回復させようとした。2008年から2014年にかけて、連邦準備制度の資産は1兆ドル弱から約4兆5000億ドルに増加した。これもまた前代未聞のことであった。これらの行動の効果は、ドル貨幣供給の増加を招き、2008年から2014年にかけて約50%増加した。

下のグラフが示しているように、食糧価格の急騰と共にみられる極端な動きは、毎月の米ドル供給の変化(これには標準的なM2法を用いる。これは銀行が持つ現金と金融市場の預入額の合計である)と毎月の国際的な食糧価格の変化(こちらのデータは国連食糧・農業機関のものだ)を同時に示したものである。2007年から2011年にかけての食糧ショックの各段階に先だったのは、ドル供給に影響を与える金融政策の変化であった。しかし、連邦準備制度の政策だけが危機をもたらしたと非難することは間違いであろう。石油価格の上昇のような連邦準備制度の政策以外の要素も影響を与えた。しかし、これらの諸要素にしても金融政策の変化に関連して変化するものである。国際金融システムの中核における極端な金融政策は実物資産の急激な価格変動を生み出したのだ。

■食糧ショックとドル供給

米国通貨(ドル)供給と食糧価格指標(複数の農産物を一緒にした国際価格の月単位での変化)

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食糧価格の上昇は政治に大きな影響を与える。下のグラフが示しているように、世界における食糧を求める暴動の件数(マーク・ベレマレのデータによる)は、食糧価格の急上昇に対応して、2005年から2011年にかけての期間の平均に比べて250%も急激に増加している。現在も続いている市民的不服従運動の件数(非暴力・暴力運動とその結果3.0データによる)は、2010年1月の13件から2011年12月の28件に増加している。こうした多くの人々が動員される運動は、リビア、シリア、イエメンで現在まで長引いている内戦状態を生み出した。そして、エジプトでは新しい独裁政権を生み出した。更には、イスラム国の台頭をもたらした。

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現在はその時のような状態になって、私たちはその中に生きていると言えるだろう。新型コロナウイルス感染拡大は別の経済危機を引き起こしている。今年の3月中旬以降、連邦準備制度は大規模な金融政策を実施している。その規模は最近の歴史にないほどのものだ。2016年に政策金利が少しそして中庸に上昇したが、それ以降はゼロ金利に戻っている。更に重要なのは、連邦準備制度の積極的な資産購入のペースは、2008年から2014年にかけての量的緩和プログラムを小さく見せてしまうほどのものだ。中央銀行の総資産は2月末の4兆2000億ドル(約450兆円)から4月末には約7兆ドル(約750兆円)に膨れ上がっている。

いくつかの食糧価格は既に上昇している。上記のグラフが示しているように、食肉価格は歴史上2番目の高さに達している。一方、供給は少しずつ減少している。更に重要なのは、穀物(小麦、トウモロコシ、米)の価格である。穀物は発展途上諸国においては基礎食品を構成しており、摂取カロリーの最大部分を占める。2007年から2008年、2010年から2011年にかけての抗議運動は穀物価格の急激な動きに深く関係していた。最近の米価は近年になく高い状態になっているが、他の穀物の価格の動きは激しくない。それは供給が高いレヴェルを維持しているからだ。連邦準備制度の諸政策はアメリカの食糧生産に大きな影響を与える可能性が高い。アメリカはトウモロコシの世界最大の輸出国であり、小麦と大豆に関しては世界2位の輸出国である。

これら複数の金融政策、特に大規模な資産購入(これは“無制限の量的緩和”と呼ばれる)は、急速な需要縮小に見舞われているアメリカ経済(そして世界経済)を安定させるために、経済的に必要となるだろう。しかし、更なる金融的な介入が少量価格の不安定化を招く可能性が高い。食糧価格の極端な動向の10年を過ぎて、食糧価格が落ち着くまでにはさらに4年間かかった。こうした価格の変動の政治的な結果はより深刻となるだろう。更に言えば、コロナウイルスによるロックダウンから社会が再開し始め、人々がこれから数カ月でレストランに戻ると、各種物価は上昇する結果になるだろう。

どういった国々が最もリスクに晒されているだろうか?下に掲載している地図は国際食糧安全保障指標に基づいて作られている。国際食糧安全保障指標は、食糧購入能力、供給能力、質を1つの安全保障の指標にまとめられている数字である。数字が大きいということは、より安全性が高いということになる。全ての国のデータが利用できる訳ではないが、一般的に言って、これらの側面に関するデータがないことは、全ての状況がうまくいっていると考えるべきではないことを示している。これが示しているのは、現在の食糧安全保障が低い国々のリストは、2000年代のリストとほぼ同じだ。サハラ砂漠以南のアフリカ、中東、北米の国々だけでなく、中央アジアと南アジアの一部、ヴェネズエラ、中央アメリカもリストに入っている。

国際食糧安全保障指標

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この結果は究極的には、最も強力な経済部門である連邦準備制度は、その行動が国際的な影響を持ちながら、究極的な国内的な政策権限を持つという事実から生み出されている。発展途上諸国は国際機関を通じて実物資産価格の安定化を長年にわたり求め続けてきた。それは現在も同じだ。国連は発展途上諸国への支援のために2兆5000億ドル規模の金融支援を求めている。国連のムハンマド=バンデ事務総長は「国際協力と協調は、食糧市場の安定を促進し、突然の価格ショックを防止するために極めて重要だ」と述べている。

しかし、こうした請願は各国政府によってほぼ無視されてきた。アメリカ型局主義を否定し、ヨーロッパ連合が動揺し、中国が国際的な公共財のコストの支払いを渋っている現在、国際協調主義は不足傾向にある。しかし、各国政府の国際協調といった試みなどを組み合わせることで、世界各地での社会不安と暴動を生み出す食糧ショックを防止することができるだろう。国際協調に加えて、国際的な金融機関(世界銀行と国際通貨基金)の寛大な行動も必要となるだろう。連邦準備制度は最も遠くまで国際的な影響を与えながら、最も反対を受けづらい機関である。連邦準備制度の緊急安定化プログラムはアメリカ財務省が発行する債券を支援し、国際機関と諸外国の政府に資金を供給することに使われ、少量価格の急騰から国際市場を守ることができる。もちろん、そのためにはトランプ政権が現在よりも国際問題についてより大きな関心を持つようになる必要がある。

世界の政治と経済は複雑な形で相互依存している。世界ネットワークの中核部分で取られた行動はシステム全体に影響を与える。アメリカ連邦準備制度の金融政策は世界の食糧価格に影響を与える。主要食料品の価格の急騰を引き起こすことになる。食糧価格の高騰によって抗議運動や暴動、不服従運動、大規模なデモが起こり、そこから国家の崩壊や内戦にまで進んでしまう場合もある。

前回食糧を求める暴動の波が起きて10年が過ぎた。しかし、その影響を今でも認識することができる。シリアでは内戦状態が続いている。レバノン(大規模なデモの回数が増えている)、トルコ、ヨーロッパ、その他の地域に逃げているシリアからの難民の経済的、政治的影響は今でも感じられている。結果として、ポピュリズムとナショナリズムを扇動する政治家たちに、自分たちの主張のプロパガンダにとっての効果的な道具を与えることになる。こうした政治家たちは食糧危機を、権力を掌握し、民主政治体制を掘り崩すために使う。この複雑さを人々が理解しないということになれば、同様のシナリオが間もなく繰り返される可能性がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 今年のアメリカ大統領選挙は、共和党は現職のドナルド・トランプ大統領とマイク・ペンス副大統領、民主党はジョー・バイデン前副大統領の戦いということになる。バイデンは「女性を副大統領候補に指名する」と発表している。「誰が副大統領候補になるのか?」「誰が副大統領候補にふさわしいのか?」とアメリカのメディアでは多くの名前が挙がっている。

 職務としては、連邦上院議員、連邦下院議員、州知事、市長、人種としては白人、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニックなどと多士済々である。しかし、誰もかれも実際に政権に入って仕事をした経験がなく、外交の経験もない。そこで出てくるのが、下に紹介する記事で取り上げられているスーザン・ライス(Susan Rice、1964年-)である。
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ライスとオバマ
 スーザン・ライスはオバマ政権8年間の内、前半は米国国連大使(閣僚級の扱いを受け、閣議にも出席できる)、後半は国家安全保障問題担当大統領補佐官(ホワイトハウスで外交を取り仕切る、国家安全保障会議
[NSC]を主宰)を務めた。オバマ政権二期目では国務長官の候補にも名前が挙がったが、「アラブの春」の過程で起きた、リビアのベンガジでのアメリカ領事館襲撃事件をめぐり、失言をしてしまったので、連邦上院の人事承認は得られないということで、承認の要らない国家安全保障問題担当大統領補佐官に就任した。

 拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所)で、私は、スーザン・ライス、国家安全保障会議(NSC)メンバーと米国国連大使(2017-2019年)を務めたサマンサ・パワー(Samantha Power、1970年-)、アメリカ国務省政策企画本部長(2009-2011年)を務めたアン・マリー・スローター(Anne-Marie Slaughter、1958年-)名をヒラリー・クリントンの側近の女傑3人として紹介した。
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ライスとヒラリー・クリントン
奥にサマンサ・パワー
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スローター(左)とヒラリー

 このヒラリー派は「人道的介入主義(Humanitarian Interventionism )」と呼ばれるグループだ。この人道的介入主義派は、「世界各国、特に非民主的な国々、特栽国家で虐げられている人々を助けるために、アメリカの力を使う、アメリカの軍事力で政権転覆(regime change)を行うべきだ」という考えだ。そのためには戦争を厭わない。

ヒラリー派の人物の名前が副大統領候補に出てくることは甚だ危険だ。特に、年齢や健康に不安があるバイデンの副大統領候補ということは、当選して、バイデンに何か事が起きれば、大統領ということになる。もしライスが副大統領になり、大統領に昇格すれば、これは「ヒラリーの勝利」ということになる。アフリカ系アメリカ人初の大統領はバラク・オバマが成し遂げたが、女性初の大統領をライスが成し遂げるということになるが、その裏では、ヒラリー派が暗躍するということは十分に考えられる。

 そうなれば何が起きるかと言えば、国際関係の緊張だ。ロシア、中国、北朝鮮との関係は緊迫化し、最悪の場合には武力衝突ということも考えられる。「アフター・コロナ」時代において、不安定化した国内状況、国際状況を転換させるために、戦争が起きるということも考えられる。

(貼り付けはじめ)

プレス:スーザン・ライスはアメリカ合衆国大統領になる心づもりで選挙に出る準備ができている(Press: Susan Rice would be ready to step in as POTUS

ビル・プレス筆

2020年5月26日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/499646-press-susan-rice-would-be-ready-to-step-in-as-potus

副大統領候補を選ぶって?何か簡単そうだ。しかし、実際はそうではない。実際、ジョー・バイデンは現在、最も難しい仕事に直面している。それは、彼の決定には多すぎる要素が入ってくるからだ。

バイデンにとっては、既に女性を副大統領候補に選ぶと公約しているが、そうなれば次のような疑問が出てくる。私たちが知らない候補者がいるのだろうか?副大統領候補は重要な激戦州で勝利をもたらすことができるだろうか?民主党支持の有権者たちを熱狂させ、投票に向かわせることができる素晴らしい選挙運動ができる人物なのだろうか?無党派の有権者たちにアピールする人物だろうか?バイデンはこの人物と行動することに居心地の良さを感じるだろうか?そして、最重要なのは、バイデンに何か起きた場合に、この女性は大統領の地位に就くことができるだけの疑いようのない経験を持っているだろうか?という問いだ。

この最後の基準に関して、元国家安全保障問題担当大統領補佐官スーザン・ライス以上の能力を持つ人物は他にいない。連邦政府の役割とは何かを理解し、人々に奉仕するために政府の諸機関の結集された力をどのように使うかを分かっている指導者が現在ほど求められている時代はこれまでなかった。

バイデンには別の多くの強力な候補者たちがいないなどと言うことはできない。実際、バイデンが幸運なのは、選ぶべき人物が多くいるということだ。ある意味では、誰を選んでも失敗ということはない。ライスに加えて、バイデンが考慮中だと知られているのは、大統領選挙の経験を持つ3名の連邦上院議員の名前が挙がっている。カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出)、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出)、エイミー・クロウブッシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出)である。もう一人の連邦上院議員としては、州司法長官を務めた経験を持つ、ネヴァダ州選出のキャサリン・コルテス=マスト連邦上院議員も候補の一人だ。行政経験を持つ州知事2名の名前が挙がっている。1人はミシガン州知事グレッチェン・ウィットマー、もう1人はニューメキシコ州知事ミシェル・ルーハン・グリシャムだ。元警察本部長で現在はフロリダ州選出の連邦下院議員を務めるヴァル・デミングスの名前も挙がっている。地域の指導者2名の名前も挙がっている。その2人は、ジョージア州下院少数党(民主党)院内総務を務めたステイシー・エイブラムス、アトランタ市長キーシャ・ランス・ボトムズである。

ここに名前を挙げた人々はそれぞれ有利な点を持っている。誰を選んでも素晴らしい、そして歴史的な人選ということになる。しかし、ここに名前の挙がった人々の中に、行政と外交における経験において、スーザン・ライスにかなう人はいない。ライスはこれまでの30年間、複雑な政策問題、議会との協働、外国の指導者たちとの交渉、大統領の意向の実現にまい進してきた。ライスは政府と外交をいかに動かすかを知っている。彼女はスタッフをどのように動かすかを知っている。

ライスの人生とキャリアは公職に捧げられたものだった。彼女が最初に参加したのは、クリントン政権で、国際機関と平和維持部門部長と国家安全保障局のアフリカ問題担当部長を務めた。その後、連邦上院による満場一致で承認され、アフリカ問題担当国務次官補に就任した。彼女はキャリアの中で、ソマリアとルワンダでの危機的状況に対するアメリカの対応を指揮した。エボラ出血熱への対応に成功した後、ライスは国家安全保障会議の中に、 国際公衆衛生、生物学的防衛担当部長職(Directorate for Global Health Security and Biodefense )を創設した。この部門は2018年にトランプ大統領によって解体された。

2009年1月、オバマ大統領によって指名され、再びアメリカ連邦上院によって満場一致で承認され、ライスは米国国連大使に就任した。ライスは国連大使として、北朝鮮、イラン、中東、スーダン、リビア、その他の紛争地帯に関するアメリカの外交政策を形成することに貢献した。4年後、ライスはホワイトハウスに戻ることになった。この時は国家安全保障問題担当大統領補佐官としてであった。イランとの核開発をめぐる合意、パリ気候変動合意、キューバとの国交改善においてライスは重要な役割を果たした。

スーザン・ライスはまた人々に語るべき素晴らしい個人的な物語を持っている。母方はジャマイカ移民、父方はサウスカロライナ州の奴隷を先祖に持つ家族といった出自を持ち、ライス自身はアメリカンドリームを実現した。若い女性でかつアフリカ系アメリカ人という不利な点を乗り越えるために、両親の薫陶を受けて育った。彼女はスタンフォード大学を卒業し、ローズ奨学生としてオックスフォード大学に留学した。オックスフォード大学時代には500人の同級生の中でアフリカ系アメリカ人は彼女1人であった。そして、世界という舞台において最も有力な女性となった。ライスの物語は全ての順守の若い有権者を勇気づけるものだが、しかし特にアフリカ系アメリカ人コミュニティを活性化するものだ。アフリカ系アメリカ人コミュニティの熱心で全力な支持はバイデンの勝利にとって必要不可欠な要素である。

我が国がこれまで直面したことのない、最悪の公衆衛生上の危機と経済的危機により、バイデンはアメリカをこれまでの途に引き戻すための重大な挑戦に直面することになるだろう。バイデンには、全力で彼をサポートできる人物を選ぶ必要がある。スーザン・ライス以上の最高のティームメイトを見つけることはできないだろう。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 古い記事で恐縮だが、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官の新型コロナウイルス感染拡大に関する論考について短くまとめた記事をご紹介する。

 ヘンリー・キッシンジャー元国務長官は、ドナルド・トランプ政権の外交面での「守護神」「橋渡し」の役割を果たしている。トランプ政権は中国とロシアに対して強硬姿勢を取るが、その前後にはキッシンジャーが96歳という高齢にもかかわらず、中国とロシアを訪問して、習近平国家主席、ウラジミール・プーティン大統領と会談を持つということを行っている。北朝鮮外交について関わっているのかは不明だが、中露両国に太いパイプがあるということは、間接的に北朝鮮外交にも影響を与えることができる。

 キッシンジャーは、アメリカが国際協調を主導し、かつ自由主義に基づく世界秩序を維持するために努力しなければならないとしている。また、トランプ政権は新型コロナウイルス感染拡大に対して手堅い仕事(solid job)をしているとも述べている。

 キッシンジャーでもこの程度のことしか言えないのかという内容ではある。しかし、キッシンジャーが述べたという事実が重要だ。

 トランプ政権はマイク・ペンス副大統領、マイク・ポンぺオ国務長官、ロバート・オブライエン国家安全保障問題担当大統領補佐官といった対中強硬派がおり、中国との軋轢を生んでいる。しかし、最後の一線を超えないのは、キッシンジャーがいるからだ。しかし、彼も96歳である。いつまでも健康で生きていられる訳ではない。キッシンジャーが死ぬ時、米中関係が悪化し始めていくだろう。

(貼り付けはじめ)

“失敗によって世界に火がつく可能性がある”:96歳になるヘンリー・キッシンジャー元国務長官は、コロナウイルスが長期間にわたる経済の縮小をもたらす可能性があると警告を発し、アメリカに対しては「自由主義に基づく世界秩序を守る」ように求めている(Failure could set the world on fire.' Former Secretary of State Henry Kissinger, 96, warns coronavirus could spell economic doom for generations and tells US to 'safeguard the liberal world order'

・ヘンリー・キッシンジャー元国務長官は世界規模の経済衰退について警告を発している。

・キッシンジャーは金曜日、『ウォールストリート・ジャーナル』紙に論説記事を発表した。この記事は、「失敗によって世界に火がつく可能性がある」という緊急提言である。

・96歳になるキッシンジャーは、ホワイトハウスは「悲劇的状況の急速な進行を避けるために手堅い仕事」をしていると考えている。

・キッシンジャーはアメリカが治療法の発見を急ぎ、世界経済の再建に努力し、「自由主義を基礎とする世界秩序」を守る必要があると述べている。

・キッシンジャーは「アメリカは独力でウイルスに打ち勝つことはできない」と書いている。アメリカ疾病予防管理センターによると、土曜日の朝の時点で、世界全体で110万件以上の感染と6万400名の死亡が確認されている。

・アメリカ国内では現在のところ、感染者数は27万8602名、死者数は7170名となっている。

チェインヌ・ラウンドトゥリー筆

2020年4月4日

『デイリー・メイル』紙

https://www.dailymail.co.uk/news/article-8187313/Henry-Kissinger-warns-coronavirus-spell-economic-doom-generations.html

ヘンリー・キッシンジャー元国務長官は、適切な手段が取られない場合、新型コロナウイルス感染拡大によって長期間続く可能性がある世界規模の経済の悲劇が起きるだろうと警告を発した。

ニクソン大統領とフォード大統領に仕えたキッシンジャーは金曜日、『ウォールストリート・ジャーナル』紙に論説記事を掲載した。「失敗によって世界に火がつく可能性がある」という切迫した宣言を行った。

96歳になるキッシンジャーは、ホワイトハウスは「悲劇的状況の急速な進行を避けるために手堅い仕事」をしていると考えている。しかし、アメリカの信頼感だけでなく、世界の信頼感を取り戻すために、新型コロナウイルスを打ち倒すために効果的にかつ長期的視野で対応する必要があると考えている。

キッシンジャーは次のように書いている。「COVID-19の感染拡大が終了すれば、多くの国々の諸機関は失敗したと認識されることだろう。この判断が客観的に見て公平かどうかは重要ではない。現実は、アフター・コロナウイルスでは世界はそれ以前とは同じではなくなる」。

キッシンジャーは、アメリカは治療法を発見するために手際よく仕事をしなければならない、また、世界経済を再建し、「自由主義を基盤とした世界秩序」を守らねばならないとしている。更に、「アメリカ一国だけでウイルスを克服するための努力をすることはできない」と付け加えた。

アメリカ疾病予防管理センターによると、土曜日の朝までに、世界で110万人が感染し、6万400人が死亡したということだ。

コミュニティ・ソースド・データ・トラッカーによると、アメリカ国内では、27万8602件の感染が確認され、7170名が死亡した。

治療法はまだ見つからない。医療従事者たちは自分たちの安全を守るために必要な個人装備が十分にないと警告を発した。実際に、医者と看護師の中には患者の治療にあたる中で死亡する人たちが出ている。

キッシンジャーは不足の点を認識している。次のように書いている。「医療物資は、ウイルス拡大に対応するためには不十分だ。集中治療室は限界に達しているし、限界を超えてしまっている状況だ」。

キッシンジャーは次のように書いている。「検査は、感染規模をはっきりさせるための仕事には不十分だ。感染拡大を止めるためには更に不十分だ。ワクチンの開発にはこれから12か月から18か月かかる可能性が高い」。

キッシンジャーは、ウイルスを倒すために、アメリカはアメリカ以外の世界と協力する必要がある、と書いている。彼は、「目下の急務は、世界規模の協力のヴィジョンとプログラムを作ることだ」と述べている。

キッシンジャーは、アメリカはコロナウイルスを倒し、経済を安定化させるために3つのステップを踏む必要があると主張している。最初のステップは、新型コロナウイルスの治療法を見つけることだ。

キッシンジャーは次のように書いている。「感染管理のための新しい技術とテクノロジーを開発し、多くの人々が使用可能となるワクチンを使用できるようにする必要がある」。

キッシンジャーは続けて次のように書いている。「諸都市、諸国家、諸地域は、貯蔵、産学提携、科学の最先端の研究を通じて、感染拡大から人々を守らねばならない」。

次のステップは「世界経済に刻み付けられた傷を癒す」ことだ。

キッシンジャーは、シャットダウンによってもっと影響を受けた人々のダメージを改善する手助けを行うための特別なプログラムの必要性に言及している。

最後に、キッシンジャーは守られるべき自由主義を基調とした世界秩序の諸原理について書いている。彼は、啓蒙主義的な諸原理を守る政府は、「安全保障、秩序、経済的福利、そして正義」を守らねばならないと確信している、と指摘している。

キッシンジャーは次のように買いいている。「感染拡大は時代錯誤を促すことになる。その時代錯誤とは、繁栄が国際貿易と人々の動きに依存している時代に、壁に囲まれた都市の復活という形になる」。

キッシンジャーは続けて次のように書いている。「世界の諸民主政治体制国家は啓蒙思想の諸価値を守り、維持する必要がある。正統性に関して諸大国が均衡している状態から世界が後退することで、国内、そして国際的に社会が崩壊することになる」。

キッシンジャーは1938年にナチスが支配するドイツから両親と一緒に脱出し、ニューヨークに住むようになった。

1950年にハーヴァード大学で政治学博士号を取得後、キッシンジャーはいくつもの会議や政府機関のコンサルタントとしての仕事を始めた。その中には、アメリカ陸軍のオペレーションズ・リサーチ・オフィスや国務省の軍備管理軍縮局は含まれていた。

1960年代、キッシンジャーは共和党の大統領選挙予備選挙に出馬したネルソン・ロックフェラー選対の外交アドヴァイザーを務めた。しかし、1968年の大統領選挙で共和党の大統領選挙指名を獲得したリチャード・ニクソンの選対に転身した。

ニクソンは当選後、キッシンジャーは国家安全保障問題担当大統領補佐官に起用し、後には国務長官に任命した。キッシンジャーはジェラルド・フォードが大統領になった後も国務長官に留まった。

キッシンジャーは1973年にノーベル平和賞を受賞した。北ヴェトナムのレ・ドゥク・トと共にヴェトナム戦争の平和的な解決のための交渉の努力を行った。

中国が発表している公式の数に対して疑義が出ているが、アメリカは最近になってコロナウイルス感染者数が世界最大になっている。

ファウチは、デューク大学男子バスケットボールティームのヘッドコーチであるマイク・シャシェフスキー(Mike KrzyzewskiCoach K)が司会を務めるラジオ番組「バスケットボール・アンド・ビヨンド・ウイズ・コーチK」に出演した。シャシェフスキーはホワイトハウスの新型コロナウイルス対策タスクフォースに参加しているファウチを、COVID-19との戦いにおける「アメリカのポイントガード」だと形容した。COVID-19はウイルスによって引き起こされる疾病だ。

79歳になるファウチは、アメリカは感染拡大にどのように対応しているのか、バスケットボールを使ったたとえで表現するように求められた。

内科医であるファウチは、アメリカ国内のエイズとエボラ出血熱との戦いを含む数多くの戦いを主導してきた。ファウチはニューヨーク市で生まれ育ち、高校時代にはバスケットボールの選手だった。

ファウチは次のように語った。「バスケットボールでたとえるならば、まず私たちはとても強力なティームを作っているということです。相手はもちろんウイルスです。私たちに必要なことは、コート全面を使った厳しいディフェンスです」。

ファウチは続けて次のように述べた。「ウイルスにはドリブルでボールを前に進めさせないようにしなければなりません。私たちはウイルスを圧倒しなくてはなりません。私たちのゲームはまだハーフタイムにもなっていませんよね、コーチK」。

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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