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 古村治彦です。

 今回は、世界各国の宗教と政治に関する短い論稿をご紹介します。


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世界各国の国家元首に必須の宗教に関する条件を解説する(Religious Requirements on Heads of State Around the World

 

トニー・パポウセク筆

2014年7月24日

フォーリン・ポリシー(Foreign Policy)誌

http://blog.foreignpolicy.com/posts/2014/07/24/interactive_map_religious_requirements_on_heads_of_state_around_the_world?utm_content=buffer1c0ec&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

 現在、ガザではイスラエルによる軍事作戦が展開され、シリアでは悲惨な内戦が続いている。イラクはイスラム原理主義者たちと戦っている。こうした状況下で、レバノンの政治の停滞に関するニュースが新聞の一面に掲載されないというのは理解できることだ。しかし、2014年7月23日、レバノンの国会議員たちは大統領の選出に失敗したのだが、これが8回目という体たらくだ。レバノンにおいては多くの宗教グループの間で複雑な勢力均衡を保たねばならず、大統領はマロン派キリスト教徒が就任するという決まりになっている。このような国家元首就任に宗教に関する条件が必要になるというのはそこまで一般的ではないという訳ではない。


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 ピュー・リサーチセンターの最新の分析によると、30カ国で国家元首は特定の宗教の信者でなければならないという条件を設けているということだ。そのうち17カ国で、国家元首はイスラム教徒でなければならない。2カ国では仏教徒ということだ。インドネシアの場合は、国家元首はパンカシラを信じていなければならない。パンカシラとは国家創設のイデオロギーである。その中には神の存在を信じるということも含まれている。8カ国で聖職者が国家を支配する地位に就くことを禁止している。

 

 ピュー・リサーチセンターの調査では、他の19カ国が別のカテゴリーに入れられている。それは、それらの国々が王制であるからだ。こうした国々でも執政は特定の宗教の信者である必要がある。しかし、この数字は少しずつだが増えている。それは、このうちの16カ国が英連邦・コモンウェルス(Commonwealth of Nations)のメンバーであり、国家元首は、イギリス国教会の形式上の最高指導者エリザベス二世となるのだ。エリザベス二世が持つ様々な肩書の中には、「信仰の守護者」というものがある。これは彼女の宗教上の特別な役割を示すものだ。その他の三つの王国であるスウェーデン、デンマーク、ノルウェーは特定のキリスト教の宗派の信者が王位に就かねばならないとしている。

 

パンカシラ(Pancasila)はインドネシアの最高指導者が持たねばならない指導哲学である。このパンカシラは、社会、宗教、統治などに関する5つの原理から成り立っている。レバノンに関して言えば、政府の役割は様々な宗教グループに分割されている。レバノンの最高指導者は大統領だ。大統領はマロン派キリスト教徒でなければならない。行政府の長である総理大臣はスンニ派イスラム教徒でなければならない。国会議長はシーア派イスラム教徒でなければならない。国会の副議長と行政府の副首相はギリシア正教徒でなければならない。更に言えば、参謀総長はドゥルーズ教徒でなければならない。国会議員の割合はキリスト教徒とイスラム教徒の割合が6対5と決められている。

 

 世界の残りの国々は、政治家の宗教上の資格を必須としていないか、宗教上のテストを行うことを非合法化している。

 

(終わり)