古村治彦です。
今回は、塩崎智著『日露戦争 もう一つの戦い―アメリカ世論を動かした5人の英語名人』(祥伝社、2006年)を皆様にご紹介いたします。この本は『ハーヴァード大学の秘密 日本人の知らない世界一の名門の裏側』(古村治彦著、PHP研究所、2014年1月21日発売)のために読みましたが、大変有意義なものでした。
この本では、日露戦争前後(1904―1905年)にかけてアメリカ社会で活躍した5名の日本人の事蹟を詳しく紹介しています。著者の塩崎はこの5名を「英語名人」と称しています。これは、母国である日本語と同程度のレベルで英語を操り、アメリカ人たちとスムーズにかつ深いところでコミュニケーションを取ることができた人々のことです。
この5名の英語名人とは、岡倉天心(1863~1913年)、金子堅太郎(1853~1942年)、家永豊吉(1862~1930年)、野口米次郎(ヨネ・ノグチ、1875~1947年)、朝河貫一(1873~1948年)です。この5名が日露戦争の戦時中、アメリカの世論を日本に有利な方向に導くために精力的に活動し、それが日露戦争を日本側有利に終結させることにつながったというのが本書の趣旨です。
彼らはまとまって、また意図して日本擁護の論陣を張った訳ではなく、それぞれが自分の利益のためにヴァイタリーを持って行動したことが結果として日本の評価を高め、アメリカ世論を日本贔屓にすることに成功しました。
本書はあまり語られることのなかった歴史が丹念に描かれています。日米関係史は私も大変関心を持っている分野ですが、この本を読むことで、いくつか着想、インスピレーションを得ました。
著者の塩崎は上智大学、国際基督教大学(ICU)大学院を経て渡米。アメリカでは日本人学校教員を務め、現在はジャーナリストとして活躍しました。現在は拓殖大学外国語学部教授、武蔵大学非常勤講師を務めています。日米の交流史を研究テーマにしています。
(終わり)
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