アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

古村治彦です。

 

このブログでも書きましたが、2014年12月26日に生活の党に山本太郎参議院議員(東京選挙区選出、2019年改選)が参加しました。そして、正式な党名が「生活の党と山本太郎となかまたち」となりました。

 

このことについて、新聞と山本太郎議員のブログでは発表がありましたが、2014年12月30日午後7時の時点で、生活の党のウェブサイトでは何のお知らせもありません。文章でも動画でも何の発表もないのです。党名の変更もなされていないし、ロゴの変更もなされていないのです。2015年になって、山本議員の参加と党名変更についての記者会見があるという情報もありますが、そのことについても何も書かれていません。

 

↓※生活の党のウェブサイトのアドレスは以下の通りです※↓

http://www.seikatsu1.jp/

 

今回の山本議員の参加によって生活の党(と山本太郎となかまたち)は、政党要件を満たし(所属国会議員5名以上、もしくは直近の国政選挙で小選挙区か比例区で得票率2%以上)、政党交付金(約4億円)を受けられることになりました。

 

このような重要な出来事に関し、生活の党の対応は余りにもお粗末で、動きが緩慢です。そのために、要らぬ誤解や憶測を生み出したと言えます。一言で言えば、「自業自得」です。今回の山本議員の合流が起爆剤になるどころか、「どうせカネ目当てだろ」と言われてしまうのは、党からもそして党の代表である小沢一郎代議士(岩手四区選出)からも全く正式な説明がないからです。これは異常なことだと私は思います。有権者に投票用紙に書いてもらうべき政党名をあまりに軽んじている所業ではないかとも思います。

 

山本太郎参議院議員のブログ「山本太郎の小中高生に読んでもらいたいコト」の2014年11月21日付の記事「告白」(記事のアドレスは以下の通りです→http://ameblo.jp/yamamototaro1124/entry-11955101001.html)には、今回の生活の党への合流と党名変更についてのヒントが書かれています。是非お読みください。山本議員の主張は次の通りです。

 

2014年12月14日投開票の総選挙は、余りにも大義がなく、それに対して多くの国民と同じく、山本議員も憤りを感じました(彼は「茶番」だと書いています)。そして、現在は自分1人、無所属であるが、4名の仲間に衆院選で当選してもらって、もしくは数名に当選してもらって、政党、もしくは野党再編につながる政治勢力になりたいと考えました。

 

しかし、問題は先立つもの、お金です。立候補するにはまず供託金が600万円かかります。これは選挙の結果、10%以上の得票率で返ってきますが、まずこれを一括で納めねばなりません。600万円で4名分となると2400万円となります。これに選挙運動資金となると、山本議員と支持者だけではとても賄える金額ではありません。また、政党要件を満たしていない、山本議員が勢力を作り、比例区で戦うには、比例区の定数の2割以上の立候補者を立てねばなりません。これは全国で42名となり、こちらも供託金は1人

600万円ですから、供託金だけで2億5200万円となります。こちらはもう土台無理な話です。ただ、山本議員が当選している東京ブロックであれば4名ですので、2400万円となります。

 

そして、山本議員たちは、この比例に立候補者を出した場合の政治団体の名前を「山本太郎となかまたち」にして(団体の代表者を別にして、更に山本太郎が立候補者にならなければ)、略称を「山本太郎」とすれば、山本太郎と書いてもらえば、この政治団体の立候補者の票として認めてもらえるということを発見しました。「山本太郎」が100万票を獲得すれば3名の当選ということになります。しかし、どうしても先立つもの、お金がネックになってくる、と。

 

そこで、山本議員は考えました。現在、政党要件を満たしている政党と比例統一名簿を作ったらどうかと。「●●党・山本太郎となかまたち」とすれば、全国の比例区で、●●党か山本太郎と書いてもらえれば良いということになります。しかし、選挙前に話を持ちかけてみたが、どこも賛同してくれなかったということです。「政党交付金を貰っている」から、選挙対策は万全なのだろうと山本議員は推測しています。

 

そして、選挙の結果、生活の党は当選者2名で、国会議員数が4名となり、政党要件を満たせなくなりました。そして、今回、山本議員が合流して、「生活の党と山本太郎となかまたち」となりました。

 

2014年12月15日に政治団体「山本太郎となかまたち」が設立されました。代表者は山本議員の公設秘書で、自身も2011年から2013年にかけて参議院議員(民主党→国民の生活が第一→日本未来の党→生活の党→2014年に離党し無所属)であった、はたともこ氏が就任しています。私は、選挙直後から、生活の党への上記のアイディアの売り込みがあったものと推測しています。

 

私は、はたともこ氏のツイッター(@hatatomoko)を読み、いくつかの記述がとても気になりました。以下に引用します。


 hatatomoko001

hatatomoko002

 

(引用開始)

 

「「生活の党」と「山本太郎となかまたち〈略称:山本太郎〉」は、統一地方選は別個にたたかう。「山本太郎となかまたち〈略称:山本太郎〉」は、次期参院比例代表選を別個にたたかう方針」(2014年12月29日午前8時20分)

 

「山本太郎となかまたち〈略称:山本太郎〉」は、次期参院比例代表選で得票率10%以上、600万票で5議席獲得をめざす。山本太郎議員の東京選挙区得票率11.8%、衆院鹿児島2区補選ありかわ得票率4.6%で、10%以上は達成可能な目標」(2014年12月27日午前6時54分)

 

(引用終わり)

 

はた氏のツイッターの記述は、山本議員の生活の党への合流と党名変更(生活の党と山本太郎となかまたち)の後に行われたものです。これによると、政治団体「山本太郎となかまたち(略称:山本太郎)」は、2015年の統一地方も2016年の参議院議員選挙も、生活の党とは「別個」に戦うと書かれています。そして、2016年の参議院議員選挙での政治団体「山本太郎」の目標を高らかに宣言しています(比例区で得票率10%以上、600万票で5名の当選)。

 

これは一体どういうことでしょうか。山本議員は「党議拘束のない自由度の高い新党」として、「生活の党と山本太郎となかまたち」を立ち上げたと書かれています。しかし、選挙で「別個に戦う」とか「山本太郎で600万票を獲得し、5名の当選を目指す」と言ったことは書かれていません。このはたともこ氏の書きぶりでは、選挙は別でやりますよ、生活の党の比例区の選挙の応援はしませんよ、私たち山本太郎は別で候補者を立てて600万票、5名当選を目指しているんですから、ということになります。

 

これでは、選挙目当てとお金目当てと言われても仕方がないのでではないでしょうか。政党要件をぎりぎりで満たせなかった生活の党に働きかけて、とりあえず政党要件を満たさせておいて、次の選挙では、自分たち(政治団体「山本太郎」)は、政党要件を満たしている生活の党の資格(全国の比例区に候補者を立てることができる、政党交付金の一部を自分たちで利用できる)を利用して、自分たちだけで5名の当選をめざし、政治団体から政党要件を満たす政党になる、という意図が透けて見えます。

 

生活の党側にしてみれば、政党交付金がもらえなくなるのはやはり痛いですから、このような条件を飲むしかなかったのでしょう。恐らく、党内でも今でも反対の人々もいて、調整に手間取っていて、何も正式な発表ができないのでしょう。山本太郎氏側、はたともこ氏の昂揚感あふれる記述と比べてみても、生活の党側が何か暗いというか、違和感が漂います。

 

政治家として晩年を迎えた小沢一郎氏から山本太郎氏が薫陶を受けることは素晴らしいことです。そして、生活の党が政党要件を満たすことができたことについては、山本太郎氏の決断をありがたく思います。しかし、山本氏側の意図が分かりながら、政党要件を満たすために野合し、政党名を変更してしまったというのは、矜持を捨ててしまったように感じられてしまいます。

 

そして、何か小手先の、法の隙間を突いたようなやり方が、果たしていつまで続くのだろうか、という思いもまた拭いきれません。そして、小手先の野合に国民の支持が集まるのだろうか、という思いにも駆られてしまいます。

 

政治団体「山本太郎となかまたち」が「生活の党」を吸収して、タガメのように「生活の党」に残っている少ない養分を吸い尽くして、それに取って代わることができれば、それはそれで良いのかもしれませんが、一抹の寂しさを覚えます。まぁ、生活の党に吸い取るべき養分が残っているのかどうも問題ですが。

 

(終わり)