古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

2014年01月









 古村治彦です。



 私は最近、昭和史にも関心を持ち、それに関する本を読むようになりました。その中で、清沢冽の『暗黒日記』『清沢冽評論集』(ともに岩波文庫)を手にし、読む機会を得ました。これら2冊の本は本当に素晴らしい示唆を与えてくれました。



 清沢冽は1890年に長野県で生まれ、小学校を卒業後、内村鑑三の弟子、井口喜源治が開いていた「研成義塾」で学びました。そして、1906年に渡米し、苦学しながらタコマ・ハイスクール、ウィットウォース・カレッジで学びました。


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1918年に帰国し、中外商業新報社(現在の日本経済新聞社)、朝日新聞社に勤務した。1929年には朝日新聞を辞し、外交評論家として独立しました。その後は数多くの著作を著し、外務省の顧問なども務めました。1945年5月、肺炎をこじらせ55歳で急死してしまいました。彼の戦時中の日記は『暗黒日記』として出版されました。



 『清沢冽評論集』の編者山本義彦は、清沢冽の思想の特長を「(1)「心的態度」としての自由主義、中庸主義、(2)教育の国家統制に反対し、画一主義の排除と多元主義の擁護、(3)国際平和の実現をめざす外交論、(4)軍部の神がかり的、猪突猛進的で非科学的な戦争指導への否定、これに追従する思想家、ジャーナリストへの厳しい批判」としてまとめています。




 私は、清沢冽が1929年に発表した「甘粕と大杉の対話」に注目したいと思います。この文章を発表したことで、清沢冽は朝日新聞を追われ、外交評論家として独立しました。この文章は、獄中にいる甘粕正彦の許へ幽霊となった大杉栄が現れて対話を行うというものです。この二人のやり取りは清沢の創造の産物です。



 この対話の中で、私に最もなるほど、その通りだと思わせた一節をここで引用したいと思います。これは大杉の台詞です。



「今の俺は世界の思想を別けるに、右と左に区別しないで右と左を一緒にした極端派(エキストリーミスト)と、これに対する自由派(リベラル)とにする。そしてこの極端派の中には君ら軍人だの警官だのと一緒に生前の大杉やいわゆる戦闘的主義者とを編入する。この事実の特長は、持って生れた争闘性乃至は争闘を主とした教育の影響から、自分が闘うと同時に、他人をも闘わしたい点にある」



 私は、この「極端派(エキストリーミスト、Extremist)対自由派(リベラル、Liberal)」

という分類に触れて、自分の抱えていたもやもやをある程度晴らすことができたと感じました。私は、リベラルという言葉の定義の難しさもあって、今でもリベラルとは何かということを考えています。答えが出るかはわかりません。



 しかし、攻撃的な右と左対そうではない勢力という分け方にはある程度納得ができます。そして、右と左が極端派として一緒になり、リベラルと対峙するという構図を清沢は私に与えてくれました。



 私は、この構図は日本政治を理解する上で非常に重要だと思います。現在の状況に完全に当てはまるものではなくても、大きな示唆を与えてくれるものだと思います。



 現在の政治状況は、自民党が大きな勢力を持ち、公明党と共に与党となっています。野党側には元気がなく、共産党がある程度の活力を保っている状況です。日本維新の会やみんなの党は、安倍晋三首相が「責任野党」と呼んだように、自民党に大変強力的な姿勢を示しています。ここにリベラルな野党はいません。



これは2012年の衆議院銀選挙でリベラル政党が軒並み壊滅してしまったからです。この「リベラルの殲滅」を仕組んだのは、マイケル・グリーンであることは間違いのないところです。



 最近の選挙で安定して議席を確保し、微増させているのは共産党です。自民党に対する批判票を吸収する形で党勢を少しずつですが拡大させています。しかし、共産党が過半数を握って政権を掌握するということはないでしょう。



 ここで奇妙な「呉越同舟」「共存共栄」関係が生まれます。自民党がどんどん大きくなる。それによって、格差は拡大し、人々の生活は苦しくなります。すると、批判票が共産党に流れる。そして、自共の間には奇妙な相互依存関係ができます。自民党にしてみれば、批判票が共産党に流れることで、強力なリベラル野党の出現を防いでくれることになります。



 そして、ここで面白いことになるのですが、自共は共にリベラルの出現を阻止しようとして奇妙なランデブーを行うのです。その好例が今回の東京都知事選挙(2014年2勝ち9日投票)です。



 安倍晋三首相には国内に強力な反対勢力を持たないという状態になりました。私の考えでは、日本国内で安倍氏に少し動揺を与えられる反対勢力として、アメリカ大使館にいるキャロライン・ケネディ米駐日大使がいて、そのリベラル・カトリック人脈から、今回、細川護煕氏が突然、東京都知事選挙に出馬してきたと考えています。



 今話題の都知事選について考えてみます。舛添要一氏、田母神俊雄氏、宇都宮健児氏、細川護煕氏が有力な候補者となっています。自民党と公明党は舛添氏、日本維新の会の石原慎太郎系と自民党の一部は田母神氏、共産党は宇都宮氏、民主党は細川氏をそれぞれ支援しています。



 私は最初、宇都宮氏と細川氏が一本化してどちらかがどちらかの支援に回るくらいのことをしなければ、舛添氏が楽々と当選してしまうことになると考えていました。そうなるのなら、当選の可能性が高い細川氏が統一戦線の候補者となるべきだと考えました。しかし、細川氏も宇都宮氏も一本化の考えはないと言明されましたから、一本化がないのは残念だがしょうがないと考えあした。



 宇都宮氏陣営は、細川氏の出馬に関して文書をPDFファイル形式で発表していたり、細川氏の出馬が遅かったことを捉えて「後出しじゃんけんだ」という全く持って的外れな批判をしたり、と一番当選の可能性が高い舛添氏ではなく、細川氏を攻撃してきました。



 私は、主敵は誰なのか、自民党政権に大きなショックを与えるのは、舛添氏の落選ではないのかと考え、どうして宇都宮氏陣営は舛添氏に対して同じほどの熱心さで対峙しないのかと不思議で仕方がありませんでした。



 しかし、私は清沢の「極端派と自由派」という分け方を知り、合点がいきました。この都知事選でも「自共の共存共栄のためのリベラル潰し」が行われているのです。宇都宮氏個人は当選に向けて必死で選挙活動を展開されているでしょう、粘り強さが身上の方で、それこそ命がけの活動をなさっていると思います。しかし、彼の支援者や共産党はどうでしょう。



 自分たちの商売敵になりそうなリベラルの代表である細川氏を攻撃し、自共の安定した相互依存関係をこれからも維持していこうという戦略を取っているように見えます。自民党や安倍氏の圧政が続けば続くほど、彼らにとっては安定した支持や支援を得られるということで、これは「合理的な選択(ラショナル・チョイス)」と言えるでしょう。



 自民党にしてみれば、自分たちが動かなくても、宇都宮氏陣営が細川氏陣営を攻撃し、票を奪ってくれるのですからこんなに楽なことはありません。



 二正面作戦を強いられて、細川氏は苦戦するでしょう。そして、舛添氏が当選してしまうでしょう。そうなれば、自民党の圧政はしばらく続くことになります。これは国民の利益にかなうこととはとても言えません。



 「地獄への道は善意で舗装されている」という言葉があります。マルクスが『資本論』の中で使った言葉です。私はこの文章を書きながら、この言葉を思い出しました。



(終わり)







 


 

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 古村治彦です。

 今回は、2014年3月1日に開催される副島隆彦を囲む会・定例会を皆さんにお知らせ申し上げます。この定例会では、私も『ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側』(古村治彦著、PHP研究所、2014年1月)の内容をお話し、その後、鼎談にも出席する予定です。詳しくは以下をお読みくださいませ。

 是非、拙著『アメリカ政治の秘密』『ハーヴァード大学の秘密』をお読みいただき、ご参加いただければ幸いです。本の内容から少し踏み込んだお話、本の原稿の最終提出後に起きたが、是非本に入れたかったお話もしていく予定です。

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どうぞよろしくお願い申し上げます。

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(1)2014年3月1日(土)開催予定の定例会「キャロライン・ケネディ駐日大使着任が日本政治中枢に与えている衝撃」(仮題、時局講演を含む定例会)のご案内

※上記3/1(土)の定例会のお申込みはこちらからお願いします↓
http://soejima.to/cgi-bin/kouen/kouen.html

(1)2014年3月1日(土)開催予定の定例会『キャロライン・ケネディ駐日大使着任が日本政治中枢に与えている衝撃』(仮題、時局講演を含む定例会)のご案内

 昨年、孫崎享(まごさきうける)先生をお招きして開催した講演DVDも、まだまだご好評をいただいております。こちらもよろしくお願いします。

※オリジナル講演DVDのご注文はこちらから↓
http://www.snsi.jp/shops/index#dvd

 来る3月1日(土)に、いつもの御茶ノ水の全電通ホールで開催予定の当「囲む会」の定例会のご案内です。

 今回は時局講演会です。年末12月26日に安倍首相が靖国神社を就任一年目にして「強行参拝」し、アメリカ・オバマ政権は慰霊の「失望」の意を表明、さらに中韓のみならず、他の東南アジア諸国からも懸念を表明されました。

この参拝への異例の望表明から読み解けるのは、去る11月に着任したキャロライン・ケネディ駐日大使の存在感です。

今回の定例会では安倍政権の一年を振り返ると共に、安倍政権が強行突破に踏み切った背景となる国内の政治的勢力図の再編、そして、海外の日本への反応について、取り上げます。

 今回の定例会は3部構成です。13:00開演で16:30終了です。時間は延長する場合もあります。

第一部 古村治彦研究員出版記念講演『ハーヴァード大学の秘密とはなにか』(仮)(60分)
第二部 副島隆彦SNSI所長による「カルト・オブ・ヤスクニの再来:安倍支持層のネトウヨ、近視眼の中国・韓国嫌いの言論に反論する」(仮)(75分)
第三部 副島・古村・中田三者による鼎談(残りの時間)

 ケネディ駐日大使が日本の「本当の支配層」と「成り上がりの支配層」の間に楔を打ち込んだ感はあります。この辺の事情について、スライドを駆使し、ビジュアル化して浮き彫りになることを目指す講演会です。別に開催している会員の会「副島隆彦のケンカ道場」で討論されたことも踏まえての講演会となります。よろしくお願いします。

※上記定例会のお申込みは、こちらからお願いします↓
http://soejima.to/cgi-bin/kouen/kouen.html 

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(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12


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古村治彦
PHP研究所
2014-01-21




 古村治彦です。



 今回は、2012年12月28日に旧版の「古村治彦の酔生夢死日記」に掲載した文章を再掲します。



 最近、インターネットで未来の党、嘉田由紀子滋賀県知事、飯田哲也氏、そして田中秀征氏といった言葉を目にしたので、「自分も何か書いていたな」と思い、見返してみたところ、この文章を見つけました。


 そして、政治運動、選挙運動とは攪乱要員、傭員、要因との闘いであるということを最近、改めて認識しております。都知事選挙で選挙運動を行っている細川護煕候補の陣営では選挙対策本部から、責任者であった馬渡氏、ネット担当であった上杉氏、共に鳩山邦夫代議士の元秘書という経歴を持つ人たちですが、彼らが退いたということはまさにこのことを示しています。

 今でも説得力があるのかどうか、皆様にご判断いただければ幸いです。



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 2012年12月26日、国会では安倍晋三自民党総裁が総理大臣に指名されました。そして、安倍内閣が発足しました。この同じ時期、日本未来の党は、党内不和から分裂の道を選びました。本日、日本未来の党の党首(だった)嘉田由紀子滋賀県知事と、小沢一郎代議士が滋賀県大津市で共同記者会見を行うということです。



(記事貼り付けはじめ)



●「嘉田氏ら「名」を、小沢氏「実」取る…未来分裂」



読売新聞電子版 2012年12月28日



 日本未来の党は27日、党名を「生活の党」に変え、代表を嘉田由紀子滋賀県知事から森裕子参院議員へと変更することを総務相に届け出た。



 「生活の党」は小沢一郎衆院議員ら旧「国民の生活が第一」(現在は国会議員15人)のメンバーで構成される見通しで、嘉田氏と嘉田氏に近い阿部知子衆院議員らは離党することになり、分裂が決まった。嘉田氏らは政治団体として党名を引き継ぐ方向だが、結党1か月にして国会から未来の党の名は消えた。



 小沢氏と嘉田氏は28日に大津市内で共同記者会見を行い、党分裂の経緯などを正式に説明する。



 当初は小沢氏らが離党するとの観測もあったが、離党して新党を結成した場合に受け取れる政党交付金は、未来の党が受け取る予定だった約8億6500万円(現時点での勢力による試算)と比べ、大幅な減額となる。小沢氏に近い議員が「衆院選の選挙資金の多くは、旧『国民の生活が第一』が負担した」などと語る一方、嘉田氏側は、日本未来の党という党名の存続にこだわり、党の「割れ方」を巡る騒動を「カネ目当てと思われたくない」と周辺に語っていた。これが、嘉田氏らが「名」を取り、政党交付金という「実」を小沢氏らが取る格好の決着になったものとみられている。(201212280529 読売新聞)



(貼り付け終わり)



 日本未来の党は名前を「生活の党」にし、党首を嘉田由紀子知事から森裕子参議院議員に変更することになりました。離党するのは、嘉田由紀子知事と阿部知子衆議院議員で、党名は嘉田知事と阿部代議士が引き継ぐということになりました。新しい「日本未来の党」は、政党要件を満たさない、政治団体ということになります。



 2012年11月27日、嘉田由紀子滋賀県知事が新党「日本未来の党」結成を発表し、翌日の11月28日に選管に届け出を行い、日本政治の世界に「日本未来の党」が出現しました。小沢一郎氏が代表をしていた「国民の生活が第一」がすぐに合流を発表しました。また、新党を結成していた亀井静香氏たちも合流し、選挙前に衆議院議員61名、参議院議員8名の政党が誕生しました。私は、この日本未来の党結成時、「どうしてこの時期に、嘉田滋賀県知事が新党を結成し、それに小沢氏たちが合流するのか」という疑問を持ち、「違和感」を持ちました。そして、そのことをブログでも書きました。



 12月16日に実施された総選挙で、日本未来の党は大敗を喫し、所属衆議院議員は9名という結果になりました。その後、党内で人事をめぐり、嘉田代表と所属国会議員たちとの間で対立が起こり、昨日、日本未来の党から嘉田知事と阿部議員が離党ということになりました。



 思えば、2009年の民主党(と連立相手である社会民主党と国民新党)による政権交代は約3年で変質し、民主党は第二自民党と化し、そして、今回、自民党が総選挙で大勝利を収めることになりました。そこには、有権者の深い失望がありました。そして、強い怒りがありました。



 民主党の変質から、小沢一郎氏と小沢氏を支持する議員の離党、国民の生活が第一の結党、日本未来の党への合流、そして分裂という一連の「ここは決起せよ」「勝負を挑め」という決戦主義、突撃主義がありました。その裏側に「決起に参加せぬ卑怯者、臆病者」という罵倒がありました。また、今回の日本未来の党の分裂に関しては、嘉田知事や小沢代議士、森裕子参院議員に対して、罵詈雑言が投げつけられました。



 こうした一連の動き、日本人の短気さを示していると思います。「早く理想の状態に辿り着きたい」「早く結果を出してほしい」という焦燥が人々を駆り立て、怒りの感情を湧き起こさせ、罵詈雑言を吐いている、このように感じます。



 映画『硫黄島からの手紙』の中で、徹底抗戦で1日でも長く島を死守するという意図を持つ栗林忠道中将に対し、その他の多くの将官が決戦主義を主張し、自決、総攻撃、玉砕の道を選んでいきます。これは日本人の潔さを示すエピソードでありますが、同時に日本人の短気さも示しています。



 また、「日本にとっては自民党がいちばん良いのさ」「何をやっても変わらない」「日本国民は馬鹿ばかりだからな」という諦観と蔑みの感情も、今回噴出しました。自民党を支持している人々からも、それ以外を支持している人たちからもそのような声が聞かれました。これもまた、日本人の短気さ(=一度うまくいかなかったら「潔く」諦める)を示していると思います。



 民主党の変質から未来の党の分裂までの間、大変な罵詈雑言が聞かれました。その対象は、嘉田知事であったり、小沢議員であったり、森議員であったりと様々ですが、どうも見ていると、罵倒している人たちが一番罵倒したいのは、その人たち自身であるように思います。「信じた自分が馬鹿だった」「裏切られた」という気持ちの噴出であると私は見ています。それもこの3年ほどで「理想が実現されなかった」「結果が出なかった」ことに対する焦燥と失望が原因であると考えます。



 この日本人の短気さについては、山本七平がイザヤ・ペンダサンという名前で書いたベストセラー『日本人とユダヤ人』の中でも指摘されていることです。日本人毎年「キャンペーン型稲作農業」で鍛えられ、締切から逆算して行動するという訓練を受けてきたが、遊牧民たちはまた違う時間の流れで生きた、というのが山本七平の書いていることです。そして、日本人は「待つ」ということが苦手で、待つとなるとイライラして待つということになるのだと山本七平は書いています。



 私たちが陥っているのは、まさにこのような状態なのではないかと私は考えます。日本人特有の短気さゆえに、民主党による政権交代から以降の出来事に大きく失望し、怒り、諦めるというようなことになっているのではないかと思います。



 しかし、このような怒りや諦観をいつまでも引きずる訳にはいきません。私は、アメリカ生まれのユダヤ人政治学者マイケル・ウォルツァーの『正義の領分』(山口晃訳、而立書房、1999年)に所収されている「我が身を振り返って―私の特定主義―」という文章を思い出します。



 ウォルツァーはこの文章の中で、ユダヤ人のものの考え方を書いています。その中で、次のような文を書いています。



 「『指おり数え』『終わりを強行する』人々は、繰り返し私たちの人民に災厄をもたらしてきた。それゆえに、数えることと強行することの両方に対してラビの政治があるのである」



 「政治的解放、社会建設、国民形成、立法といった仕事、これらはすべて永続するものである。文字通り継続し、終わることなく更新される」



 「私たちは、最後の詩を書くことを期待すべきではないように、最後の法を制定したり、最後の国家を建設することを期待すべきではない」



 ユダヤ人に対しては、毀誉褒貶様々ありますが、歴史を見れば、自分たちの国家建設のために千年単位かけ、その間にユダ人内部でも激しい対立があったり、迫害にあったりと様々な出来事が起きています。しかし、ユダヤ人は民族として生き延びてきました。迫害や失敗の後に自暴自棄になることなく、また同じことを繰り返していったということが、ウォルツァーの言葉から読み取れます。また、考えや意見の多様性を大事にしていること、これもまた重要なのだろうと思います。このことについては今回は触れません。



 私たちは「決戦主義「突撃主義」で短兵急に結果を求めるのではなく、同じことを繰り返していく、それで良いのだ、と思うことから始めるべきではないかと思います。そこには華々しさはなく、長距離走のように苦しいことばかりがあると思います。しかし、それでも繰り返しをただ繰り返していく。うまくいかなかったら、また最初からやっていく、ということを「気長」にやっていくしかないのではないかと思います。



(終わり)





(終わり)
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 古村治彦です。


 昨日、共同通信で、そして今朝の東京新聞で報道された、「アメリカからのプルトニウム返還要求」というニュースについて考えたことを書いていきたいと思います。


 このプルトニウム返還に関して、怒りや戸惑いを示す意見が起きています。「世界で最も重要な二国間関係である日米関係を揺るがすものだ」「オバマ政権だからこういうことが起きるのだ」という主張もあります。


 確かにオバマ政権になってから「核セキュリティー」が重視され、核兵器に転用可能な物質の管理を厳しくする動きになっているようです。しかし、これはアメリカ側か見れば、自国の世界の安全と安定のために合理的な動きと言えます。リスクを小さくするのは合理的な動きです。


 「日本がテロリストにプルトニウムを横流しできる訳がない」「IAEAの厳しい監視の下にあるではないか」という反発もあると思います。しかし、日本だから特別扱いする、とか日本の管理体制を絶対的に信頼するという選択肢はアメリカにはないようです。


 このニュースが出たこの時期は、安倍首相が靖国参拝からわずか1カ月後、ダヴォス会議で現在の日中関係を第一次世界大戦前の英独関係に譬えて数日後、オバマ大統領による一般教書演説を直前に控えています。日本では国会が始まり、都知事選の選挙活動の真っ只中です。


 これらのことと結び付けられることは当然ながらニュースソースたちは分かって話をしたと思われます。そのことの意味を考えてみなければなりません。


 言い切ってしまえば、「安倍政権への不信」が根底にあると思います。ほっておくと勝手に「核武装」に向けた動きにまで出るのではないか、日本は数カ月で不完全ではあるが核兵器を作る物理的、人的、知的能力を有している、最悪のシナリオでそれを中国に向けて使うのではないかという懸念をアメリカが持つのは仕方がないことだと思います。


荒唐無稽であることはその通りなんですが、このように考えてもおかしくないほど、安倍政権への不信は高まっているのだと思います。外国から見てみれば、日本の国民一人一人のことは見えませんが、当たり前のことですが、指導者たちの動きはよく見えます。


 2014年に入って、政治的にも経済的にも安倍政権に対する包囲網ができつつあるように感じます。まるで太平洋戦争の直前の時期のように。


(新聞記事転載貼り付けはじめ)


●「米、日本にプルトニウム返還要求 300キロ、核兵器50発分」


2014年1月26日付 共同通信

http://www.47news.jp/CN/201401/CN2014012601001661.html


 核物質や原子力施設を防護・保全する「核セキュリティー」を重視するオバマ米政権が日本政府に対し、冷戦時代に米国などが研究用として日本に提供した核物質プルトニウムの返還を求めていることが26日、分かった。


 このプルトニウムは茨城県東海村の高速炉臨界実験装置(FCA)で使う核燃料用の約300キロ。高濃度で軍事利用に適した「兵器級プルトニウム」が大半を占め、単純計算で核兵器40~50発分程度に相当する。


 日本側ではこれまで「高速炉の研究に必要」と返還に反対する声も強かったが、米国の度重なる要求に折れて昨年から日米間で返還の可能性を探る協議が本格化している。


2014/01/26 19:59   【共同通信】



●研究用プルトニウム300キロ 米、日本に返還要求


2014年1月27日付 東京新聞

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014012702000135.html


 核物質や原子力施設を防護・保全する「核セキュリティー」を重視するオバマ米政権が日本政府に対し、冷戦時代に米国などが研究用として日本に提供した核物質プルトニウムの返還を求めていることが分かった。複数の日米両政府関係者が明らかにした。


 このプルトニウムは茨城県東海村の高速炉臨界実験装置(FCA)で使う核燃料用の約三百キロ。高濃度で軍事利用に適した「兵器級プルトニウム」が大半を占め、単純計算で核兵器四十~五十発分に相当する。


 日本側ではこれまで「高速炉の研究に必要」と返還に反対する声も強かったが、米国の度重なる要求に折れて昨年から日米間で返還の可能性を探る協議が本格化している。米側は三月にオランダで開かれる「第三回核安全保障サミット」を機に返還合意をまとめたい考えだ。


 オバマ政権は核テロ阻止の観点から、兵器転用可能な核物質量の「最少化」を提唱。二〇一〇年に初の核安保サミットを主宰した前後から、東海村にある日本原子力研究開発機構のFCA用のプルトニウム三百三十一キロ(うち核分裂性は二百九十三キロ)を問題視し、日本に返還を求めてきた。


 英国産のプルトニウムも含まれているため、米国は英国の理解を得た上で日本から米国への「第三国移転」を図りたい考え。外交筋によると、日米英三カ国間でも政策調整が進められている。


 文部科学省などはこれまで「研究に必要。他では取れない良いデータが取れる」と主張。日本は原発の使用済み核燃料の再処理によって他にも約四十四トンのプルトニウムを保有するが、「研究用のものと比べ不純物が多く、高速炉研究には使えない」(日本の政府系専門家)という。


 東京電力福島第一原発事故後、日本のプルトニウム消費の見通しが立たず、米政府は日本側に懸念を伝達していた。FCAは高速炉の特性を調べるため造られ一九六七年に初臨界した。


(新聞記事転載貼り付け終わり)


(終わり)





 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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 古村治彦です。


 今回は、2014年1月18日に行われたオバマ大統領の演説について書きたいと思います。この演説でオバマ大統領は、2014年を現状打破の年(Breakthrough Year)とする宣言しています。


 そのために、給料の良い仕事(雇用)の創出を行うとしています。そのためハイテク製造業に力を注ぎ、ノースカロライナ州に企業、大学、連邦政府による研究所を創設するとしています。


 そして、オバマ大統領は議会が適切な行動をとらない場合は、自分自身が行動をすると明言しています。「Where Congress isn’t acting, I’ll act on my own to put opportunity within reach for anyone who’s willing to work for it」という部分です。共和党は連邦政府の支出となるオバマ大統領のこのような動きには反対するでしょうが、オバマ大統領は断固として、雇用創出のために製造業に力を入れると言っています。


 オバマ大統領は就任当初、グリーンニューディールを打ち出しましたが、実際にはうまくいきませんでした。今回はより重厚長大産業の方に力を注ぐようです。


 オバマ大統領は次の大統領選挙には出られませんから、そこまで力を入れてやらなくても良い訳ですが(建前ではそんなことはないのですが)、外交面で何もやっていないに等しいので、せめて経済面で何とかと思ってのことでしょう。


 アメリカとしては雇用統計の数字をよくしないと、金融緩和をずっと続けていかなければならず、それにも限界があります。ですから、何とか雇用統計の数字を改善したい、FRBの議長も交代することだしということもあるでしょう。


 ここで日本は少し困ったことになります。アメリカが製造業に今から力を入れてもどこまで脅威になるか分かりませんが、オバマ大統領が本気になって製造業を何とかしたいということになると、やはり輸出にドライブがかかるということになって、円高ドル安ということになるでしょう。


 今のアベノミクスは円安による株高で支えられているようなものですが、これが円高になると頓挫してしまうことになります。更に、消費税増税ということになれば、景気に冷水を浴びせることになります。そうなると、安倍首相の進退問題にまで発展しかねません。最近では、ルー米財務長官の円安牽制発言もありました。


 アメリカ側としては、経済の面から安倍首相の生殺与奪の権を握っていると言えます。アメリカが本気で製造業で何とかとなると、安倍首相の退任の時期もそれだけ近づく可能性が高くなる、と言えると思います。

 2014年1月27日に東京証券取引所での取引が開始され、円高などの要因もあり、日経平均が400円以上の下げを記録しました。このことは私が書いたことの傍証になると思います。


(貼り付けはじめ)


Obama Believes 2014 'Can Be A Breakthrough Year For America'


AP  Posted: 01/18/2014 9:27 am EST

http://www.huffingtonpost.com/2014/01/18/obama-2014_n_4622789.html?ncid=edlinkusaolp00000003%20-#_=1390133357784id=twitter-widget-0lang=enscreen_name=HuffPostPolshow_count=falseshow_screen_name=falsesize=m


WASHINGTON (AP) — President Barack Obama says he believes 2014 can be a breakthrough year for the country.


In his weekly radio and Internet address, Obama says the U.S. is primed to bring back jobs lost in the recession or to overseas competitors. But he says to make that happen, the U.S. must act to create good-paying jobs and increase economic opportunity.


Obama says he wants to work with Congress. But he says when Congress doesn't act, he'll act on his own. He's pointing to a new manufacturing innovation institute the government helped launch in North Carolina.


In the Republican address, Indiana Rep. Marlin Stutzman says Democrats have focused on "making it easier to live without a job."


Watch Obama's address above. Or read his remarks below, via The White House


Hi, everybody. This week, I visited a company in Raleigh, North Carolina that helps make electric motors that save businesses money on energy costs and cut harmful carbon pollution.


 And I stopped by N.C. State University, where engineers are set to develop the new technology that will make those motors even better.


 It’s part of my push not only to make America home to more high-tech manufacturing – but to make America more attractive for the good jobs that a growing middle class requires.


 And increasingly, we are. Thanks in part to our all-of-the-above strategy for American energy, for the first time in nearly two decades, we produce more oil here at home than we buy from the rest of the world. We generate more renewable energy than ever, and more natural gas than anybody. Health care costs are growing at their slowest rate in 50 years – due in part to the Affordable Care Act. And since I took office, we’ve cut our deficits by more than half.


 So we are primed to bring back more of the good jobs claimed by the recession, and lost to overseas competition in recent decades. But that requires a year of action. And I want to work with Congress this year on proven ways to create jobs, like building infrastructure and fixing our broken immigration system.


 Where Congress isn’t acting, I’ll act on my own to put opportunity within reach for anyone who’s willing to work for it. That’s what I did in Raleigh by launching America’s second “manufacturing innovation institute.” It’s a partnership between companies, colleges, and the federal government focused on making sure American businesses and American workers win the race for high-tech manufacturing and the jobs that come with it – jobs that can help people and communities willing to work hard punch their ticket into the middle class.


 I firmly believe that this can be a breakthrough year for America. But to make that happen, we’re gonna have to act – to create good jobs that pay good wages, and to offer more Americans a fair shot to get ahead. That’s what I’m focused on every day that I have the privilege of serving as your president. That’s what I’m going to be focused on every single day of this year.


 Thanks, and have a great weekend.


(貼り付け終わり)


(終わり)


 


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