古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

2015年01月






アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12


野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 2015年1月18日に民主党代表選が行われます。今回の代表選には、細野豪志元民主党幹事長、岡田克也元民主党代表、長妻昭元厚生労働大臣が立候補しています。現在、3名で舌戦を展開していますが、岡田氏が勇み足をしてしまったことはこのブログの記事でもご紹介しました。

dpjpresidentialelection002
 

 

 代表選挙が近づき、新聞などでは情勢分析、それぞれの陣営の分析が行われています。下の記事を読む限りでは、細野氏は自分が長を務める「自誓会」、長島昭久代議士が率いる「国軸の会」、前原誠司元民主党代表が率いる「凌雲会」の一部から支援を受けているようです。岡田氏は自分でグループを持っている訳ではありませんが、野田佳彦元首相が率いる「花斉会」と玄葉光一郎元外務大臣が率いる「日本のグランド・デザイン研究会」、民社党系の議員で構成している「民社協会」が応援しています。長妻氏には赤松広隆前衆議院副議長を長とする旧社会党系議員たちの「サンクチュアリ」と大畠章宏前民主党幹事長率いる「素交会」がついています。素交会は鹿野道彦氏を中心とする農業に強い議員たちの集まりでしたが、鹿野氏が落選している状況で大畠氏が代表になっています。

 

 立候補者3名のそれぞれの応援団にはマイナス要素が存在します。

 

 細野氏陣営で一番足を引っ張っているのは、長島昭久氏です。長島氏が応援すればするほど、細野氏にはマイナスになってしまいます(慶應義塾大学応援指導部出身の長島氏には大変申し訳ない言い方になってしまいますが)。長島氏は簡単に言うと、第二自民党志向であり、昔の民社党的な(自民党よりも右寄りで核武装論すら唱えたし、またアメリカからCIAを通じて資金提供を受けていた)ものを目指している人です。

 

長島氏は安倍晋三首相の民主党内の応援団であり、はっきり言って、自民党にいた方が自然な人です。長島氏と国軸という言葉については、アルルの男・ヒロシこと中田安彦氏のブログ記事を参考にしてください。一言で言って、こんなネトウヨ御用達のような神社に嬉々として参拝しているようでは、安倍政権との対決などと言うことは望むべくもありません。アドレスは以下の通りです。彼が応援すればするほど、「細野氏は安倍氏との違いはなく、結局アメリカの手先でしかないのではないか」と思われてしまい、リベラルを軸にすることで自民党、安倍政権との相違点を鮮明にしなければならない時に、このような印象を持たれてしまうのはマイナスです。

※(「ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報 」→

http://blog.livedoor.jp/bilderberg54/archives/40249915.html
 

中田氏の最新刊も是非どうぞ
 

 岡田氏の場合は、民主党政権時代に大失敗をしてしまった野田氏と玄葉氏の松下政経塾先輩後輩コンビが応援していることが大きなマイナスです。両氏ともに松下政経塾時代には創設者の松下幸之助氏の「無税国家論」の薫陶を受けたはずなのに(玄葉氏は松下氏に触発された論文を書いているほどです)、財務省にコロッと騙されてしまって、現在の悲惨な政治状況を生み出してしまいました。彼らが出てくると、いやぁな感じを受けてしまいます。

 

 長妻氏はリベラルの姿勢を鮮明にしています。この点で、安倍自民党との違いを鮮明にできる人です。しかし、問題は、素交会です。素交会がリベラルだとは私も不勉強で知りませんでしたが(皮肉ですよ)、彼らのハイライトは野田佳彦氏を代表に選ぶ時に、ポストをちらつかされて間違った選択をしてしまい、結果として民主党の退廃と現在のひっ迫した政治状況を生み出しました。彼らにはポストを巡る取引しか頭にないのでしょう。現在の状況では長妻氏は3位となる公算が高く、そうなると細野、岡田両氏の決選投票ということになるでしょうが、素交会は既にポストを巡る裏取引をしているのではないだろうかと私は疑っています。彼らがまた目先のポストのために日本の政治にマイナスな行動を取ることがないように祈るばかりです。

 

 今回の民主党代表選挙は、「よりましな」候補者を選ぶ選挙ということになると思います。その時に判断材料になるとすれば、それは民主党を、そして現在の状況をこれほど酷いことにしてしまった人たちが応援している人たちには投票しない、そして自民党との違いを鮮明にできる人に投票すべきだということになると思います。そして、私は更に「民主党を分裂させ、小沢一郎氏とその支持者たちを切り捨てることにどれほど“貢献”したのか」ということも材料になると思います。そうしたことを加味すると、私には投票権がありませんが、①長妻昭氏、②細野豪志氏、③岡田克也氏となります。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「民主代表選、国会議員票は3氏に分散…読売調査」

 

読売新聞 111()151分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150111-00050062-yom-pol

 

 読売新聞社が民主党代表選(18日投開票)に向けて実施した党所属国会議員132人の動向調査で、細野豪志元幹事長、岡田克也代表代行、長妻昭元厚生労働相の3氏とも過半数に届いておらず、支持が分散傾向にあることが明らかになった。

 

 各陣営は、1回目の投票で過半数に届く候補がいない場合の上位2人による決選投票も想定し、終盤戦の戦略を練る構えだ。

 

■細野陣営

 

 動向調査では、細野氏は自らのグループ(14人)のほか、長島昭久元防衛副大臣グループ(7人)の支持を固め、前原誠司元代表グループ(約20人)の一部からも支援を受ける。松本剛明元外相や羽田雄一郎参院幹事長らも支持している。

 

 最も若い候補である細野氏は世代交代による党の刷新を訴える。10日に大阪市内で党が主催した候補者集会では「過去と明確に決別し、新しい出発を切らない限り、民主党の考え方は実現できない」と強調した。衆院当選2~6回の中堅・若手議員らの多くは細野氏に流れた。

 

■岡田陣営

 

 岡田氏は、民主党政権時代に中枢を担った「6人衆」の野田佳彦前首相、玄葉光一郎前外相、安住淳元財務相、枝野幸男幹事長の支持を得た。野田、玄葉両グループ(いずれも約10人)の大半をまとめたほか、前原グループや旧民社党系グループ(約15人)からも半数近い支持を得ている。

 

 3候補の中で唯一、代表経験のある岡田氏は、政権時代に外相や副総理を務めた実績をアピールする。岡田氏は10日の候補者集会では「野党第1党のリーダーは国会で堂々と渡り合わなければいけない。私は自信がある」と述べた。

 

■長妻陣営

 

 長妻氏は、赤松広隆前衆院副議長ら旧社会党系グループ(約15人)、大畠章宏前幹事長グループ(約15人)を中心に支持を集めた。参院議員からの支持が多く、日教組や自治労など官公労系の議員も目立つ。

 

 長妻氏は、集団的自衛権行使に反対を表明するなど、リベラル色を強調し、保守的な岡田、細野両氏との違いを打ち出している。10日には「自民党に歯止めをかけられる大きな野党が渇望されている」と安倍内閣への対決姿勢を強調した。

 

 細野、岡田両氏による決選投票になった場合、党員・サポーターらは投票できないため、1回目の投票で長妻氏を支持した議員が、どちらに投票するかが勝敗を左右しそうだ。

 

 岡田氏よりも保守色が強い細野氏と、リベラルを掲げる長妻氏とでは政策面で距離があり、支持議員の考え方も大きく異なる。さらに、細野氏が野党再編を巡り維新の党側から分党の申し出があったと発言し、その後、撤回したことが、国会議員票に影響を与えかねないと懸念する向きもある。

 

 細野陣営関係者は「決選投票は不利だろう。1回目の投票で過半数を得られるよう、党員・サポーター票の上積みを目指す」と語る。

 

 一方、岡田陣営は今後、決選投票になることを見越し、長妻氏に接近することを検討している。陣営からは「候補者集会の討論などで、長妻氏と政策面で同調できる部分を強調していくべきだ」との声も出ている。

 

 

●「岡田氏と細野氏、支持ほぼ並ぶ…民主代表選」

 

読売新聞 112()929分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150111-00050117-yom-pol

 

 読売新聞社の全国世論調査で、民主党代表選(18日投開票)について聞いたところ、次の代表にふさわしい人は、岡田克也代表代行が32%、細野豪志元幹事長が30%となり、両氏がほぼ並んだ。

 

 長妻昭元厚生労働相は16%だった。

 

 ただ、民主支持層に限ると、岡田氏が45%で、細野氏の31%、長妻氏の19%をリードしている。

 

 自民党に対抗するため、多くの野党が一つの政党に「まとまった方がよい」と思う人は52%で、前回調査(昨年12月24~25日)から4ポイント低下。「そうは思わない」は40%で4ポイント上昇した。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)







メルトダウン 金融溶解
トーマス・ウッズ
成甲書房
2009-07-31
 






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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

私は年末から年始にかけて『NHKと政治 蝕まれた公共放送』(川崎㤗資著、朝日文庫、2000年)という本を読んでいました。この本はNHK政治部記者やボン支局長を歴任した川崎㤗資氏が自身の経験を踏まえながら、戦後HNKの負の歴史を網羅的に書いた著作です。川崎氏自身はこの本に出てくる主要人物たちに批判的であったために、左遷されるなど人事上の不利益を蒙った人です。この本には、NHKが「みなさまのNHK」として、国民から受信料を徴収して運営されている「公共放送」なのだという建前が虚しくなってしまう程に、政治に絡め取られている様子が赤裸々に描かれています。

 

 戦後NHKを動かしたのは、NHKの所管官庁である郵政族の元祖である田中角栄と、鈴木善幸元首相とは入魂の間柄であった政治記者上がりの島桂次(後に会長となるがスキャンダルで辞任)と労働組合である日本放送労働組合(日放労)の委員長に就任し、後に社会党から代議士となった上田哲といった人物たちです。こうした構図は、55年体制下の自民党と社会党の関係が投射されています。自民党と社会党も表面上は激しく対立しながら、実際には裏取引で、政治を「安定」させていました。彼らが衝突と妥協をしながらNHKが運営されていった訳ですが、その過程でNHKは政治に絡め取られていきました。
 

 

 戦後すぐのNHKは、戦前と戦中の反省を踏まえ、「民主化」されました。しかし、郵政省はその人事権などを掌握しようとして巻き返しを図りました。戦後すぐにはNHKの会長は「放送委員会」という独立した組織が決めていたのですが、これもいつの間にか解散となり、郵政省と自民党、そしてNHKがそれぞれに望ましい候補者を立て、調整をするということになりました。初代会長の高野岩三郎は就任の挨拶で、「権力に屈せず、ひたすら大衆に奉仕することを恪守(かくしゅ)すべきである」と述べましたが、こうした時代は短く、すぐに郵政省と自民党に奉仕する存在に堕していきました。

 

 そうは言っても、NHKGHQ占領下においてはGHQに奉仕する存在でもありました。ここのGHQとNHKの関係については、川崎氏はあまり触れていないのは残念なことです。日本が独立を果たした後、少しずつ、「放送の中立性」が侵害されていきました。都合の悪い番組(風刺番組『日曜娯楽版』とその後身である『ユーモア劇場』)などは打ち切りになったり、ニュースなどでもカットされたりすることがありました。それは安保騒動や大きな政治スキャンダル(ロッキード事件やリクルート事件など)の時にもありました。こうしたことは、最近始まったことではなく、伝統的に行われてきた訳です。

 

 そして、現在に目を転じてみると、NHKの最高意思決定機関である(会長の人事も決める)経営委員会には安倍晋三首相のオトモダチである放送作家の百田尚樹氏や大学教授の長谷川三千子氏といった人々が入っています。こうした人々の影響なのか、NHKの放送姿勢も政権寄りになっていると言われています。

 

 そして、今回、世の中を風刺する漫才が人気の漫才コンビ・爆笑問題がNHKで放送される漫才の中で政治に触れられないという出来事が起こりました。「NHKからの圧力は一切なかった」と爆笑問題の二人は述べています。爆笑問題は、NHKで多くの番組を持ってきた(不確かな記憶で申し訳ありませんが、歌番組の司会や演芸番組の司会、そして教養番組の司会など)ので、NHKはいわばお得意さんです。彼らの知名度と芸人としてのランクを引き上げたのはNHKでの番組であったと言えましょう。ですから、彼らがNHKを批判するようなことはなかなかできません。しかし、自身が民放でやっているラジオ番組で、「政治家さんのネタがあったんだけど全部だめって言われた。あれは腹立った」とかなり踏み込んだ発言をしています。こうした政治風刺などに過敏に反応してしまうのが今のNHKであり、そして、これがNHKの伝統なのだということが、私は今回の事件と『NHKと政治』を読んではっきりと分かりました。


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 爆笑問題

 

 NHKは「公共放送」として、税金ではなく、国民から受信料を徴収して運営されています。そして、その理念は「大衆にひたすら奉仕する」ということであると思います。しかし、これまでのNHK、そして現在のNHKは果たしてそのような理念通りに運営されているでしょうか。もしそうでないのなら、私は国営放送にすべきではないかと思います。いまのように「公共放送」を隠れ蓑にしながら政権側の宣伝活動や都合の悪いことを報道しないのは大変性質が悪いです。国営放送となったら、見る国民の側に、「あれは国の宣伝機関だから」とある程度の警戒感と心構えができ、割り引いて放送を見ることができます。

 

 しかし、よく考えてみると、マスコミ各社の最高幹部連中が首相との会食やゴルフに嬉々として出かけて、恬として恥じないような国では、本当の意味で「大衆に奉仕する」放送を期待することが無理なのかもしれません。そう考えると、ため息しか出ない、今の日本の状況です。

 

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「NHK:お笑い番組で「政治ネタ却下」 爆笑問題明かす」

 

毎日新聞 20150107日 2334分(最終更新 0108日 0134分)

http://mainichi.jp/select/news/20150108k0000m040137000c.html

 

 お笑いコンビの爆笑問題が、NHKのバラエティー番組に出演した際、用意していた政治家についてのネタをNHK側から却下されていたことを、7日未明放送のTBSラジオで明らかにした。

 

 番組は3日に生放送された「初笑い東西寄席2015」。爆笑問題は司会を務め、漫才も披露したが、政治的なネタはなかった。

 

 ラジオでの発言によると、3日の放送前の打ち合わせで当日のネタのチェックがあり、「プロデューサーに却下され」たという。また、コンビの一人、田中裕二さんは「政治家さんのネタがあったんだけど全部だめって言われた。あれは腹立った」と明かし、もう一人の太田光さんは「誤解しないでもらいたいんだけど、政治的圧力は一切かかってない」と説明した。その上で、太田さんが「テレビ局側の自粛というのはあります」などと話すと、田中さんは「それは色濃くなっているのは肌で感じる」と応じた。

 

 NHK広報局は「放送にあたって娯楽番組の通常の打ち合わせを出演者と行った。その中身については普段から答えていない」とコメントしている。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)








 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12


野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 2015年1月11日、古川康前知事の辞職(自民党所属の代議士への転身)に伴う、佐賀県知事選挙の投開票が実施されました。結果は、農協の政治組織「佐賀県農政協議会」が推薦し、一部の地元首長や自民党所属の県議が支援した、元総務省キャリア官僚の山口祥義(やまぐちよしのり、49歳)氏が当選しました。自民党本部、官邸が地元自民県連の意向に反して選び、自民、公明の推薦を受けていた、元総務省キャリア官僚で前武雄市長の樋渡啓祐(ひわたしけいすけ、45歳)氏は落選しました。山口氏が約18万2000票、樋渡氏が約14万3000票をそれぞれ獲得し、票差は約3万9000票でした。

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山口祥義

 

 今回の選挙は地元自民県連が擁立を進めていた財務省の大物官僚を自民党本部、官邸が承認せず、樋渡氏を擁立するように求めてきたこと、そして、農協改革とTPPを推進する自民党本部と官邸に不信感を持っていたJA佐賀が自民党の決定に反旗を翻したことから、いわゆる「保守分裂」選挙になりました。自民党本部と官邸が地元県連の意向を受け入れていれば、もしかしたらここまで注目されない、無風の選挙になったかもしれません。しかし、自民党本部と官邸は、樋渡氏の擁立にこだわり、分裂選挙になりました。

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佐賀県の地図 
 

 自民党本部と官邸は、前知事の古川康氏に対して、佐賀県玄海町にある玄海原発再稼働(古川氏の父親は九州最高の企業である九州電力勤務)と佐賀空港へのオスプレイの受け入れ容認の論功行賞で、選挙区が一つ減少した佐賀県から代議士として立候補して初当選しました。その後継者に若い樋渡氏が座るという予定になっていたのだと思います。樋渡氏は原発再稼働とオスプレイ受け入れ容認に関して古川氏の路線を引き継ぐと明言していました。

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古川康氏は56歳で、総務省のキャリア官僚出身で、今回の選挙で敵味方となった樋渡氏、そして山口氏とは、東京大学(古川氏と山口氏は鹿児島のラサール高校から法学部、樋渡氏は経済学部)と総務省の先輩後輩にあたります。東大と総務省の先輩後輩で敵味方に分かれての選挙となった訳です。

 

 今回の選挙の争点は、「原発」と「オスプレイ」と「TPP(農業)」であったと思います。私は、更に言えば、樋渡前武雄市長が行った「改革」の根本にある「竹中平蔵」式原理(アメリカみたいになって格差を拡大させていく)に賛成か、反対化もあったと思います。竹中平蔵氏は小泉政権下で総務大臣でありました。樋渡氏は総務省キャリア官僚時代に短期間ですが、竹中氏に仕えた時期もあり、その後、改革派市長となりました。改革派というイメージと誰にでも口汚く噛みつき、罵る手法、そして改革の根本に竹中式原理がという点で、樋渡氏と橋下徹大阪市長(前大阪府知事)とよく似ています。

 

 現在の安倍晋三政権も小泉政権と同じく、竹中式原理に伴う改革を進める政権です。私たちの目はどうしても憲法改正や武器輸出、秘密保護法の方に行きがちですが、この竹中式改革(日本のアメリカ化)を進める点も注目しなければなりません。この竹中式改革が佐賀県では拒絶されたという選挙結果になりました。

 

 これから佐賀県に対しては、沖縄県に対してと同じく、報復が行われることになるでしょう。農協に対してもまたさらに激しい攻撃が加えられることになるでしょう。小泉政権以降、自民党は「敵・味方」を峻別し、敵を殲滅するために手段を選ばないところがあります。

 

 私がこれから考えてみたいのは、2012年以来、国政選挙では無類の強さを見せる安倍政権が地方選挙では弱さを見せている原因と構造についてです。これは日本政治研究のこれからの大きなテーマになるでしょう。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「佐賀知事選:山口祥義氏、自公候補を破る」

 

毎日新聞 20150111日 2301分(最終更新 0112日 0032分)

http://mainichi.jp/select/news/20150112k0000m010092000c.html

 

 古川康前知事の辞職に伴う佐賀県知事選は11日投開票され、JAグループ佐賀の政治団体「県農政協議会」が推薦する元総務官僚、山口祥義(よしのり)氏(49)が、自民、公明両党の推薦を受けた同県武雄市の前市長、樋渡(ひわたし)啓祐氏(45)ら3氏を破り初当選した。保守分裂となり、安倍政権の規制改革に反発するJAと政権与党による代理戦争の様相を呈したが、山口氏が樋渡氏を退けたことで、安倍政権が進める農協を含めた規制改革や今春の統一地方選挙にも影響するとみられる。

 

 また山口氏は、政府が計画する佐賀空港(佐賀市)への陸上自衛隊の新型輸送機オスプレイ配備に慎重な姿勢を示しており、対応が注目される。

 

 初当選した山口氏は選挙戦では、農協組織を「岩盤規制」の象徴と位置付ける安倍政権の改革路線に危機感を抱く県農政協が全面支援。トップダウン型の樋渡氏の政治手法やオスプレイ配備に反発する佐賀市長ら県内の一部首長や自民県議からも支援を取り付け、保守分裂に持ち込んだ。【松尾雅也、岩崎邦宏】

 

 ◇「誠に残念だ」自民選対委員長

 

 自民党の茂木敏充選対委員長は「誠に残念だ。年末年始をまたぐ難しい選挙となったこと、投票率が大幅に低下したことなど今回の敗因をよく分析したい」とのコメントを出した。

 

 【略歴】山口祥義(やまぐち・よしのり)49 無 新<1>[元]総務省過疎対策室長[歴]長崎県総務部長▽東大院客員教授▽東大

 

 ◇佐賀県知事選確定得票数

 

当182,795山口 祥義<1>無新

 

 143,720樋渡 啓祐 無新=[自][公]

 

  32,844島谷 幸宏 無新

 

   6,951飯盛 良隆 無新

 

 

●「<佐賀知事選>農協改革に影響も 安倍政権、敗北に衝撃」

 

毎日新聞 112()022分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150112-00000003-mai-pol

 

 政府・自民党は佐賀県知事選で与党が推薦した樋渡啓祐氏(45)が敗北したことを受け、規制改革の柱と位置づける農協改革に向けた勢いがそがれることを警戒している。農協改革に反対する地元農協の政治団体「県農政協議会」が推薦した元総務官僚、山口祥義氏(49)が当選したことで、統一地方選を前に「農協を敵に回して選挙は勝てない」と受け止められかねないからだ。

 

 知事選では、全国農業協同組合中央会(JA全中)の権限を縮小する政府の農協改革案が争点になった。安倍政権は規制改革で農業に競争原理を取り入れ、成長産業に育成したい考えだ。政権が「岩盤規制打破」と位置付ける農協改革の成否は成長戦略全体の行方を占う試金石にもなりつつある。

 

 樋渡氏の応援に入った菅義偉官房長官は「(農業の)6次産業化を進め、農家の所得を上げる改革を行う」と述べ、農業の改革を推進する姿勢を強調した。

 

 これに対し、JA全中は農協改革を強く警戒している。先の衆院選でも自民党の候補者に農協改革を後退させるための政策協定書に署名を求めるなど圧力をかけてきた。

 

 こうした経緯もあり、政権側は「改革派」の樋渡氏を全面支援。菅氏のほか、自民党の谷垣禎一幹事長、農協改革の旗振り役の稲田朋美政調会長らを続々と投入した。終盤では「半馬身か1馬身、樋渡氏が抜けた」(党幹部)とみていただけに衝撃を受けている。

 

 政府・自民党はあくまで農協改革を断行する方針だ。ただ、農協側は、農協改革を掲げたことが自民党の敗因と訴え、全国で改革骨抜きのための圧力を強めていくのは必至だ。

 

 農協の集票力は一時に比べれば落ちているが、個別の地方選では無視できない力がある。政権の経済政策「アベノミクス」の効果が地方に届かないという不満と結びつけば、統一選全体にも影響しかねない。地方から改革の先送りを求める声が高まる事態も想定される。

 

 自民党の茂木敏充選対委員長は11日夜、コメントを発表し「年末年始をまたぐ難しい選挙となったこと、投票率が大幅に低下したことなど敗因をよく分析したい」と強調した。稲田氏は「全国に景気回復の実感を届け、理解と支持を得られるよう努める」とのコメントを出した。【影山哲也、宮島寛】

 

 

●「佐賀県知事選の投票率54・61%、戦後最低」

 

20150111 2338

http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/144411

 

 保守分裂の激戦となった今回の知事選だが、投票率は54・61%で、現職と共産候補の一騎打ちとなった前回より4・80ポイント下がり、戦後最低を記録した。

 

 前知事が衆院選に急きょ出馬し辞職したことに伴い、県内初の年末年始を挟んだ異例の選挙。忙しい時期となったことに加え、市町の首長選を控えている地域もあり、知事選への関心を高めることができなかったようだ。

 

 県内20市町のうち、17市町で前回を下回り、鳥栖市と唐津市、基山町では40%台にまで落ち込んだ。70%を超えたのは、白石町だけだった。

 

 10日までの期日前・不在者投票は計9万8576票で、前回比で2万6262票、約1・4倍に増えた。

 

 当日有権者数は67万5865人(男性31万3994人、女性36万1871人)。4年前の前回より2245人減っている。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)








 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 2015年1月18日に民主党代表選が行われます。岡田克也元代表、細野豪志元幹事長、長妻昭元厚生労働相の3氏が立候補しています。岡田氏と細野氏が激しく競り合い、長妻氏が追いかける展開となっています。全員が民主党の再建を掲げていますが、岡田氏は野党再編には消極的、細野氏は逆に積極的(維新の党の江田憲司代表と松野頼久幹事長と連携)とされ、長妻氏はリベラル派の結集と立憲主義を訴えています。

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 私は長妻昭氏が自民党との相違を最も明らかにできる候補者であると考えていますが、あの党内のお荷物である鹿野グループ(素交会)の支援を受けているという点でマイナスです。彼らが今頃になって「リベラルでござい」などという顔をして表舞台に出てくるのは滑稽で憐れですらあります。財務省に騙された野田佳彦氏に騙された二重のアホたちが選挙で大量落選したのに今回の選挙でまた復活してきているのを見ると虫唾が走ります。しかし、選挙は数であり、勢力ですから長妻氏を立てて、2位・3位連合を狙うか、勝ち馬に乗るかして復権を狙うというのは合理的な判断だと思います。

 

 現実的には岡田氏と細野氏の一騎打ちで、事前の調査では岡田氏がやや優勢ではないかという結果も出ているようですが、それも一部であって、激しく競い合っているようです。そのせいなのでしょうか、岡田氏は大きな利敵行為を働いてしまいました。3氏が集まっての公開討論会の席上、細野氏が今回の総選挙に関して失敗であったと述べたところ、総選挙時、国政選挙担当の代表代行であった岡田氏は、細野氏との会話の内容を明らかにして、維新の党との連携話があったことを暴露してしまったのです。

 

 代表選挙はたしかに選挙であって、勝ち負けがあることですから様々なやり方で相手をやっつけることは必要です。しかし、同じ党内でのことであり、選挙後も仲間としてやっていく訳ですから、そこまでのことはしないのが暗黙のルールであり、常識です。そんなことは政治家ではなくても分かることです。暴露合戦、批判合戦になってしまえば、党内、党外に「内輪もめをしている」という印象を与え、マイナスになってしまいます。政策論争で丁々発止ならまだしも、今回の岡田氏の発言はいただけません。世代交代(下からの突き上げ)に相当焦りがあったのだろうとは推察しますが、このセンスのなさと余裕のなさはそれだけでリーダー失格です。

 

 岡田氏は優秀であり、人格も立派で、1990年に初当選した自民党に残っていたら、今頃は総理総裁候補であったかもしれない人物です。民主党代表や外務大臣も歴任した政治家です。しかし、どうもセンスと余裕、人間味を感じさせないところがリーダーに不適格な感じがします。あまり欲をかかずに淡々としていればチャンスは巡ってくると思いますが、下からの突き上げにもう党内最古参となってしまっていて焦っているのでしょう。

 

 これは私の推測ですが、細野氏と維新の党の江田代表の連携も気に入らないのではないかと思います。岡田氏と江田氏は東京大学法学部と通産省の先輩後輩にあたりますし、ハーヴァード大学派遣も経験しているところまで一緒です。下に二人の経歴をまとめてみましたが、よく似ています。

 

岡田克也氏は1953年生まれ。1976年に東京大学法学部を卒業し、通商産業省(現経済産業省)に入省しました。1985年から1986年にかけてハーヴァード大学国際問題研究所研究員を務めました。ハーヴァード大学時代には『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の著者エズラ・F・ヴォーゲル教授の薫陶を受けたそうです。1990年から衆議院9期連続当選をしています。

 

江田憲司氏は1956年生まれ。1979年に東京大学法学部を卒業し、通商産業省(現経済産業省)に入省しました。1987年から1988年にかけてハーヴァード大学国際問題研究所研究員を務めました。ルームメイトがオバマ政権野マイケル・フロマン米国通商代表部代表です。フロマンはロースクールの学生で、ロースクールの雑誌編集でバラク・オバマ大統領と知り合いました。2000年に衆院選に出馬し落選してしまいました。2001年に初当選したが、2003年に再び落選してしまいました。2005年から連続当選で衆議院通算5期当選しています。

 

 岡田氏は江田氏が自分ではなく、細野氏と連携を構築しているのが気に入らないのではないかと思われます。これは私の勝手な推測ですが、岡田氏が政治家のセンスとは全く真逆の党内をぎくしゃくさせるような暴露を公の場でしてしまったのは、焦りと個人的な怒りがあり、判断を狂わせてしまったのではないかと私は推察しています。

 

 新代表を迎え撃つ自民党の幹部たちは「岡田氏の方がやりやすい」と話していると複数の関係者の方々から聞きました。岡田氏は想定外の手法を取ることはないので、行動を予想しやすく、対処しやすいと考えているのだということでした。その点で岡田氏は骨の髄まで官僚的な人なのだろうと思います。そして、彼が暴露合戦を行うことで、民主党のイメージが更に悪くなってしまいます。岡田氏が代表になろうとして禁じ手を行うことで、自民党を利することになるのです。

 

 そのようなことも気付けないような人が、自分の小さな利益実現のために大きな利敵行為をしてしまう人がリーダーになるようでは、日本の政界はまだまだ一強多弱時代が続いていくことになるでしょう。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「岡田氏また細野氏批判…代表選、泥仕合の様相」

 

読売新聞 20150110 1011

http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150110-OYT1T50021.html

 

 民主党代表選(18日投開票)に立候補している岡田克也代表代行、細野豪志元幹事長、長妻昭元厚生労働相の3氏は9日、BSフジの番組に出演した。

 

 岡田氏が8日に続き、細野氏の言動を批判するなど、泥仕合の様相も呈してきた。

 

 岡田氏はこの中で、細野氏のグループ結成について、「自民党の派閥政治のようにならないことを祈りたい。私が代表になれば、どういう形で(グループ活動を)やるべきか、党の中の機関で議論していただきたい」と述べた。細野氏がグループのメンバーに対して財政的な支援を施す一方、他グループとの掛け持ちを認めないなど、自民党の派閥に倣った運営を行っていることを批判したものだ。

 

 岡田氏は8日の公開討論会に続き、細野氏が衆院選前に維新の党との合併を提案したとし、「説明すべきだ」と追及もした。

 

 これに対し、細野氏は、「排他的なグループではない。(維新との合流は)少しでも仲間をたくさん通すためにいろんな方法があるのではないかと話した」などと反論した。

 

 長妻氏は「コメントしづらい」と述べるにとどめたが、陣営幹部は「内輪もめをしていたら民主党にとって命取りになる。融和の象徴という立場でやっていく」と語った。

 

 

●「「細野氏は維新との合併主張」 民主・岡田氏が会話暴露」


朝日新聞デジタル
18()2328分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150108-00000049-asahi-pol

 

 8日にあった民主党代表選の討論会で、岡田克也代表代行が、衆院解散直前の昨年11月、細野豪志元幹事長が「衆院だけでも、みんなの党や維新の党と合併するべきだ」と主張していたと明かした。細野氏が代表選で、維新との合流に否定的な立場をとることの矛盾点を突くために、やりとりを暴露した。

 

 岡田氏は「あの話はいったい何だったのか。政治家は自分の言葉に責任を持つべきだ」と追及。これに対し、細野氏は「残念だ。政治家同士のクローズの話だ」と語り、岡田氏の姿勢を批判した。

 

 さらに細野氏は「維新側から、関西(の候補者)を切り離すというサインがきていた」と述べ、維新との交渉まで踏み込んで打ち明けてしまった。結局、細野氏は同日夜、岐阜市内で「訂正したい。維新側から提案があったのではない。様々なやりとりの中でアイデアとして浮かんできた」と軌道修正した。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)








 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 
今回のブログは前回のものと合わせてお読みください。
 

安倍晋三政権下で、いよいよ、武器輸出が緩和され、日本の武器が世界中にばらまかれようとしています。正確には、民主党後半の菅直人政権、野田佳彦政権下で、武器輸出三原則の緩和は既に進められていました。これを進めてきた人物が、政策研究大学院大学学長の白石隆です。

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白石隆

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 政策研究大学院大学


白石隆は、京都大学の教授として、そして、アメリカのコーネル大学の政治学者ベネディクト・アンダーソンの弟子として知られていました。(博士号をコーネル大学で取得しています)アンダーソンは『創造の共同体(
Imagined Communities)』という著作を出していますが、日本語版は白石隆が担当しています。アンダーソンについては、『ベネディクト・アンダーソン、グローバリゼーションを語る』(光文社新書、2007年)が分かりやすいと思いますので、是非お読みください。こんな立派な先生の弟子がどうしてこうも簡単に劣化してしまうのか、不思議に思ってしまう程です。

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ベネディクト・アンダーソン
 
 


白石隆と関係が深い人物がマサチューセッツ工科大学教授(
MIT)のリチャード・サミュエルズです。サミュエルズについて、また彼と白石隆の関係については、拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)に書きました。詳しく知りたい方は、是非お読みください。サミュエルズは日本の財界や産業界の研究、特に軍事産業の研究で知られています。
 

 

白石が学長をしている政策研究大学院大学という何とも奇妙な名前の学校は六本木にあります。この近くには、赤坂プレスセンターと呼ばれる、米軍の施設(ヘリポート)や星条旗新聞社(米軍の新聞)が存在しています。また、米国大使館も近くに存在します。以下のウェブサイトに詳しく書かれています。日本中の米軍基地にはアメリカの関係者(民間人でも)はノーヴィザやパスポートのチェックなしで入れ、そこからヘリコプターでこの東京のど真ん中にやってくるのだそうです。政策研究大学院大学がこの場所に作られたのは、この学校がアメリカの威光で作られたものであることを示しています。


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赤坂プレスセンター

・渋谷民主商工会のウェブサイト:http://shibumin.jp/news/weblog_1366190198.html

NAVERまとめサイト:http://matome.naver.jp/odai/2138950837044500301

 

サミュエルズは、2011年3月11日に発生した東日本大震災後の日本の研究が彼の今のテーマのようで、よく日本を訪問しているようです、その際に政策研究大学院大学にも立ち寄っているようです。以下に写真を掲載します。

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 政策研究大学院大学の建物の前に立つリチャード・サミュエルズ

 

下の記事にあるように、日本政府は政府開発援助(ODA)の一環で武器を供与しようとしています。政府開発援助というと発展途上国に道路や橋、学校や病院を建設して現地の人々に喜ばれている映像などを見たことがあると思います。しかし、ODAの実態は、日本政府が予算を投入して、日本の企業に仕事をさせるためのものです。

 

日本政府は、「われわれ国民の税金」で武器を日本企業から買い、それを「援助物資」として発展途上国に渡そうとしています。もっと問題だと思うのは、その際に、日本政府の意向ではなく、アメリカ政府の意向によって「この国にどれだけ援助しろ」と言われて、それに唯々諾々と従わざるを得なくなるということです。

 

 その際に、アメリカが「俺が口を利いてやったからな」ということで恩を着せておいて、その武器が使われたことで起こる怒りや反感は日本が引き受けねばならないということです。私たちは自分たちでお金を払って、そうした反感や怒り、憎悪を買おうとしているのです。

 

日本を取り巻く状況について、危機感を煽りながら、アメリカに有利になるようにうまく利用しようとする、そのシナリオを書き、演出をしているのがサミュエルズであり、日本側の舞台監督が白石隆なのだと私は思います。この二人の動きから目を離すことはできません。そして、彼らが暗躍すればするほど、日本の未来はどんどん暗いものになっていきます。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「武器購入国に資金援助 途上国向け制度検討」

 

東京新聞201511 朝刊

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2015010102000127.html

 

 防衛省が、日本の防衛関連企業から武器を購入した開発途上国などを対象とした援助制度の創設を検討していることが分かった。武器購入資金を低金利で貸し出すほか、政府自ら武器を買い取り、相手国に贈与する案も出ている。政府開発援助(ODA)とは別の枠組みとする方針だ。

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 援助制度は、武器輸出を原則認める防衛装備移転三原則決定を受け、輸出促進策の一環として検討されている。日本の防衛関連企業向けの資金援助や、相手国への訓練・整備支援なども合わせて検討している。

 

 援助については、有償援助を軸に検討を進めている。国が出資して特殊法人を新たに設立。この特殊法人が、金融市場から資金を調達し、武器購入に必要な資金を低利で相手国などに貸し出すという仕組みだ。

 

 さらに日本の防衛関連企業が製造した武器を政府自らが買い取り、途上国などに贈与する無償援助制度の創設も防衛省では議論。これは、他国の軍や軍関連機関に自衛官を派遣し、人道支援や災害救援、地雷や不発弾の処理などを訓練する防衛省の「能力構築支援制度」の拡充案が有力だ。国の一般会計の事業として実施しているこの事業の予算を大幅に増やして贈与資金に充てるという。

 

 政府は一月にもODAの原則を定めた大綱を改定する方針だ。新大綱(開発協力大綱)では、他国軍への支援について「実質的意義に着目」などとし、災害援助など非軍事目的なら容認しようとしている。しかし軍事目的の援助は、従来同様禁止しており、防衛省ではODAの枠外での創設を検討している。

 

【解説】軍事用途版ODAに

 昨年四月に決定された新三原則は、日本の安全保障に資する場合などに限定して武器輸出を認める、と定めている。しかし、防衛省が検討する援助制度から浮かび上がるのは、日本の安全保障強化のために、国が武器輸出に積極関与していこうという姿勢だ。現行とは別枠ながら軍事用途版ODAともいえる制度の実現は、歯止めなき軍事支援への道を開きかねず、日本の平和外交変質の象徴となりそうだ。

 

 制度の念頭にあるのは、南シナ海をめぐり中国との緊張が続く東南アジア諸国連合(ASEAN)だ。「積極的平和主義」を掲げた安倍晋三首相は昨年五月、シンガポールで講演し、ASEAN諸国に対し、武器を含めた海洋安全保障分野での支援を公約。防衛省もアジア太平洋地域などへの協力を課題として掲げている。

 

 援助制度は、軍事的用途を禁じた日本のODA政策を事実上転換させることにもなり、戦後日本が築き上げてきた平和国家というブランドの崩壊にもつながりかねない。しかし防衛省では「武器輸出は外交の手段として有益だ」(幹部)として、具体策を今夏までにまとめあげようとしている。国際社会に日本は今後何を訴えていくのか。理念なきまま、具体策を急ぐ姿勢に対しては、懐疑的な意見も少なくない。

 

 国際情勢にも詳しいジャーナリストの青木理氏は「日本は戦争ができる国になっていこうとしている。『国のため』に推進される武器輸出が、果たして『国民のため』になるのだろうか」と警鐘を鳴らしている。 (望月衣塑子)

 

 

●「防衛省が武器輸出の支援策で初会合、資金援助など検討」

 

ロイター通信 2014 12 18

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0JW0LY20141218

 

[東京 18日 ロイター] - 防衛省は18日、軍事装備品の輸出を後押しする政府支援策の検討を開始した。輸出を促進するための資金援助制度のほか、輸出後の整備支援のあり方などを議論する。

 

左藤章防衛副大臣は同日開いた有識者会議の初会合(座長・白石隆政策研究大学院大学学長)で、「どういう形で政府が装備移転に関与していくことが効果的、適切であるか検討する必要がある」とあいさつ。有識者からは「輸出相手が国であることから、国が主体的に進めていくアクティブな制度設計が必要」などの意見が出た。

 

会合は月1回程度のペースで開催。海外の事例を参考にしながら、輸出案件の発掘のほか、日本から武器を調達する国や、他国との共同開発に乗り出す日本メーカーへの資金援助、輸出した装備の使用訓練や整備支援の仕組みなどを検討する見通しだ。来夏までに提言を取りまとめ、防衛省は具体策を2016年度予算要求に盛り込みたい考え。

 

日本は4月に武器の禁輸政策を見直し、自国の安全保障に資するなどの一定条件を満たせば輸出を許可する防衛装備移転三原則を導入した。

 

(久保信博)

 

 

●武器輸出新原則を閣議決定=条件付き容認へ転換

 

時事通信 2014年4月1日

http://news.yahoo.co.jp/pickup/6112138

 

 政府は1日午前の閣議で、武器輸出三原則に代わる「防衛装備移転三原則」を決定した。政府は1976年以来、武器や関連技術の海外移転を原則禁じてきたが、新原則は条件を満たせば認める内容で、日本の安全保障政策の転機となる。(時事通信)

 

 

●「毎日フォーラム・ファイル:「武器輸出三原則」見直し論が再燃 前原政調会長が口火 国際共同開発の潮流を受け」

 

毎日新聞 20111011

http://mainichi.jp/feature/news/20111005org00m010037000c8.html

 

 これを受けて、防衛省は有識者による「防衛生産・技術基盤研究会」座長・白石隆政策研究大学院大学学長)を昨年12月発足。今年7月にまとめた中間報告で「従来の国産か輸入かという二者択一論ではなく、国際共同開発・生産が選択できる枠組みが不可欠だ」と、武器輸出三原則の緩和を提起している。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)







 

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