古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

2016年02月








 

 古村治彦です。

 

 2016年2月11日付の『フィナンシャル・タイムズ』紙に「マイケル・ブルームバーグ待望論」と呼ぶべき記事が掲載されました。内容は、ビジネスマンとして、そして911テロ以降の厳しい状況下のニューヨーク市長として、ともに実績を残した有能な指導者であるブルームバーグがアメリカ大統領にふさわしいというものです。

michaelbloomberg001
マイケル・ブルームバーグ

 

 ただ、既に民主、共和両党では正式に予備選挙をスタートさせています。ですから、この2つのうち、ブルームバーグが所属する共和党の予備選挙に参加することは難しい状況です。そこで、記事を書いたアックマンは、第三党・無所属で出馬したらよいと書いています。

 

 これまでのアメリカ大統領選挙でたまに第三党や無所属で出馬して一定の票数を獲得する人たちは出ていました。記憶に新しいところでは、1992年のアメリカ大統領選挙では、共和党で現職大統領だったジョージ・H・W・ブッシュ、民主党でビル・クリントンがそれぞれ候補者になり、第三の候補者として、ビジネスマンのロス・ペローが出馬し、一定の票数を獲得しました。ペローは保守派でしたので共和党の票を食ってしまい、現職大統領で2期目を目指したブッシュが敗北するという結果になりました。

 

 この記事で勉強になったのは、大統領選挙の本選挙で過半数を獲得する候補者がいなかった場合、アメリカ合衆国憲法修正第12条の規定で、大統領選挙の上位3名から、連邦下院が大統領を決めることが出来るのだということです。

 

 今回の選挙で言えば、共和党の候補者、民主党の候補者、そしてブルームバーグが選挙に出て、誰も過半数の票を獲得できなかった場合に、連邦下院が、誰が大統領になるかを決めることが出来るのだということです。

 

 記事の著者アックマンは、現在の連邦下院は共和党が過半数を占めているが、党の分裂を避けるために、ブルームバーグを大統領にするのではないかと書いています。

 

 このシナリオを荒唐無稽と切り捨てることは簡単ですが、大変示唆に富んでいる内容です。アメリカ大統領選挙はこれまで二大政党である民主、共和両党がそれぞれの中核的な支持者を固めて、そして中間層(日本で言うと無党派層)を取り合うというものでした。少し古いデータを基にしたものですが、2004年の段階での、アメリカ国民の支持政党はそれぞれ次のグラフのようになっています。中間層が大きな割合を占めていることが分かります。また、この記事では、ギャロップ社の調査では、中間層が43%になったということも引用しています。

uspartyaffiliation2004001
赤色が共和党、青色が民主党、黄色が無党派

 

 そうなると、この中間層を全部取れる候補者が出てきた場合、三すくみになって、誰も過半数を取ることが出来なくなります。そうなると先ほど書いたように、憲法修正第12条の規定が当てはまることになります。

 

 ブルームバーグが出た場合には、恐らく共和党の票を食い合ってしまって、民主党の候補者を勝たせる、1992年と同じようなパターンになることも考えられます。ですが、「トランプも嫌だし、ヒラリーもどうかな」ということになった場合に、ブルームバーグという選択肢は大変魅力的だと思います。彼はそこまでイデオロギー的ではありませんし、行政経験もあり、穏健な態度は好感を持って迎えられるでしょう。

 

 これまでイギリスと共に二大政党制の具体例とされてきたアメリカに対して,このような柔軟な考えが出てきて、それをあながち荒唐無稽な夢物語と簡単に切って捨てることもできないようになっています。そして、これは日本がこれまで目指してきた二大政党制の正当性を大きく揺るがすものでもあると私は考えます。

 

(貼り付けはじめ)

 

●「America is burning but Michael Bloomberg can put out the fire

 

Never has an independent candidate with his achievements run for office, writes William Ackman

 

February 11, 2016 6:08 pm

William Ackman

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/1c440342-d0a2-11e5-831d-09f7778e7377.html#axzz3zxPWqCkI

 

 

Consider one of the greatest businesses in the world after decades of mismanagement. Growth is tepid, at best, and has been fuelled largely by debt. The organisation’s systems and infrastructure are outdated. International competitors have taken advantage of its weak position and stolen market share. A proxy contest is looming. The chief executive is about to step down, and the board and shareholders are faced with a decision about leadership. Who should they appoint? What qualities should they seek?

A turnround requires a leader with exemplary character, intelligence and independence, with a demonstrated record of success. It needs someone who can recruit extraordinary people, who understands the details yet knows how to delegate, negotiate and compromise. In short, a leader who commands respect from employees, the board and the shareholders.

 

After 9/11, New York needed such a leader. When Michael Bloomberg was sworn in as mayor on January 1 2002, the city was burning — literally. Our economy had crashed and public finances were shot. New Yorkers were scared and depressed.

 

But in only a few years, Mr Bloomberg created tens of thousands of jobs, converted a $6bn deficit into a multibillion-dollar surplus and made New York one of the safest cities in the world. He promoted development, improved public education, enhanced our infrastructure, cleaned up our parks, reduced the city’s carbon footprint and greatly contributed to the health of its citizens.

 

He did not do it alone. He did it by recruiting top talent to city government, working with other politicians and motivating the existing workforce and inspiring our citizens to do their part.

 

Today America is burning. Our government is wasteful and dysfunctional. Our national debt exceeds our gross domestic product. Our bridges, roads, airports and tunnels are crumbling. Our school system fails to educate our children. Our middle class is shrinking. Our tax code drives our most profitable businesses to relocate to foreign jurisdictions. Our immigration laws force talented young scientists and entrepreneurs to competitor nations. Our incomprehensible regulations fail to protect us from fraud, crime, pollution and abuse of power, while stunting growth and impairing our global competitiveness. Our international standing has deteriorated. Our enemies no longer take our pronouncements seriously and our military supremacy is threatened. The American dream is fading.

 

Yet there is hope. The key is finding the right leader. And that leader is Mr Bloomberg, who told the Financial Times this week that he is considering joining the race for the White House. His character is unimpeachable and he is an extraordinary entrepreneur and philanthropist. He has great judgment and is beholden to no one. He has a proven business record, having created $40bn of value building one of the most successful media and information technology companies in the world.

Bloomberg considers joining race for the White House

 

After a 12-year stint as mayor of New York, he has a demonstrated record in government too. He is a globalist, having immersed himself in foreign policy and used effective philanthropy to address international problems. Because he is pragmatic and non-ideological, he gets along with everyone. And he is prepared to make tough decisions based on the facts, without regard for his re-election prospects or obligations to a party and big-money donors.

 

If Mr Bloomberg were to run for president, he would do so as an independent. Some commentators say history shows that independents or third-party candidates cannot win. But today, according to one poll, 43 per cent of Americans identify as independents, which is a record. And never before has an independent presidential candidate with Mr Bloomberg’s achievements and financial resources run.

 

Significantly, Mr Bloomberg would not need a plurality of votes to win the presidency. If no single candidate receives an overall majority in the electoral college, the 12th Amendment to the US constitution allows the House of Representatives to choose the president from among the three candidates who received the most electoral votes.

 

If the top three are, say, Mr Bloomberg, Donald Trump or Ted Cruz for the Republicans, and Hillary Clinton or Bernie Sanders for the Democrats, then Congress, which is under Republican control, would surely choose Mr Bloomberg rather than destroy the party by selecting Mr Trump or Mr Cruz.

 

It is time to put the fires out and restore the United States to greatness. Mr Bloomberg is the right choice.

 

The writer is founder and chief executive of Pershing Square Capital Managemen

 

(貼り付け終わり)

野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23






 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12

 

 もしビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、そしてバラク・オバマがリアリズムの諸原理を採用していたら、1993年以降のアメリカの外交政策はどれほど違ったものになったのだろうか?

 

 第一にそして最も明らかなことは、ブッシュがブレント・スコウクロフト、コリン・パウエル、その他のリアリストたちの意見を聞いていれば、2003年にイラクに侵攻することはなかっただろう。ブッシュは、イラクで泥沼にはまるのではなく、アルカイーダの殲滅に集中したことであろう。数千のアメリカ兵たちが戦死したり、戦傷を受けたりすることもなかったことだろう。数十万のイラク国民が亡くなることもなく、今でも生きていたことだろう。イランの影響力は今よりもだいぶ小さいものだっただろうし、イスラミック・ステイトが生まれることもなかっただろう。リアリストによる正しい助言を拒絶することで、アメリカの納税者のお金を数兆ドルも無駄にした。そして、多くの人々の声明が失われ、地政学的に見て混乱が発生することにもなってしまった。

 

 第二に、アメリカの指導者たちがリアリズムの知恵をきちんと理解していれば、アメリカは1990年代にNATOを拡大させることはなかっただろう。NATOの範囲をポーランド、ハンガリー、チェコまでとしただろう。リアリストは、大国というものは自国に接する外側世界の力の構成に特に神経を尖らせるものだということを理解している。ジョージ・ケナンはNATOの拡大はロシアとの関係を悪化させるという警告を発していた。NATOの拡大は同盟関係を強化することにはつながらなかった。NATOの拡大によって、アメリカは一群の弱小なそしてアメリカから遠く離れてはいるが米軍が防衛しづらい国々を防衛する責務を負うことになってしまった。そうした国々はロシアと国境を接している。読者の皆さん、NATOの拡大は、傲慢さと地政学の間違った応用の結果なのだ、と私は申し上げたい。

 

 より良い選択肢だったのは、ロシアを含むワルシャワ条約機構に加盟していた国々と建設的な安全保障に関するつながりを求める「パートナーシップ・フォ・ピース」を構築することであった。残念なことに、注意深いアプローチは、NATO拡大を急がせる理想主義を掲げる動きを前にして放棄されてしまった。この決定は、リベラルの掲げる希望に基づいて行われた。彼らはNATOの拡大で安全保障が強化されると考えていたが、そんなことは起きなかった。

 

 リアリストは、グルジアとウクライナを「西側」陣営に引き込もうとすることで、ロシア政府から厳しい反応を引き起こすこと、ロシアはそうした試みを台無しにするだけの能力を持っていることを理解していた。リアリストがアメリカの外交政策を担当していたら、ウクライナ情勢は不安定なままであっただろうがクリミア半島はウクライナの一部であっただろう。そして、2014年から続いているウクライナ東部での戦闘は恐らく起きなかっただろう。クリントン、ブッシュ、オバマがリアリストの助言に耳を傾けていたら、ロシアとの関係は今よりもだいぶ良いものであっただろうし、東欧の状況はより安定したものとなっただろう。

 

 第三に、リアリズムの諸原理に大統領が従っていれば、ペルシア湾岸地域に対して、「二重の封じ込め」戦略を取らなかったであろう。イランとイラクを同時に封じ込めようとする代わりに、両国間のライヴァル関係を利用して、お互いを牽制させて均衡させようとしただろう。二重の封じ込め政策によって、アメリカはイラン、イラク両国を利用することが出来なくなり、サウジアラビアとペルシア湾岸地域に大規模な地上軍と空軍を駐留させ続けることになってしまった。長期にわたる米軍のサウジアラビア駐留は、オサマ・ビンラディンの怒りの理由となり、それが2001年9月11日に発生したアメリカに対する攻撃につながったのだ。ペルシア湾岸地域に対してリアリストが考える政策を行っていれば、アメリカに対する攻撃を根絶することはできなくても、少なくすることはできただろう。

 

 第四に、リアリストは、イラクに侵攻して、タリバンのネットワークの再構築を許してしまった時点で、アフガニスタンで「国家建設」をしようとすることは愚か者の先走りだと警告を発していた。そして、2009年にオバマ大統領が行った「増派」は全く役に立たなかった。オバマ大統領がリアリストたちの意見を聞いていたら、アメリカはアフガニスタンでの消耗をかなり早い段階で止めることが出来ただろう。結果としては失敗であってもその程度はだいぶ軽くで済んだはずだ。多くの命と莫大なお金が失われずに済み、アメリカは現在よりもより強力な戦略的立場に立てていたはずだ。

 

 第五に、イランとの核開発を巡る合意は、アメリカが現実的なそして柔軟的な外交を展開すれば成功を収めることが出来ることを示した。しかし、ブッシュかオバマがリアリストの助言を受け入れていれば、アメリカ政府はより良い条件で合意を結ぶことが出来ただろう。イランの核開発施設が小さい段階で合意を結ぶことが出来ただろう。リアリストは、繰り返し「イランはウラン濃縮技術を放棄することはないだろう、そしてイラン政府と軍部は核兵器開発を進めるだろう」と警告を発した。アメリカが、リアリストの助言通りにもっと早い時期に柔軟性を見せていたら、イランの核開発をより低いレヴェルの段階で止めることが出来たはずだ。アメリカの外交がより巧妙であったなら、2005年にムアマド・アフマディネジャドが大統領に当選することを阻止し、二国間の関係をより建設的な方向に進めることが出来たはずだ。たとえそこまでなくても、アメリカはそこまで悪い状況に追い込まれることはなかっただろう。

 

 第六に、様々な考えを持つリアリストたちは、アメリカとイスラエルとの間の「特殊な関係」に疑問を持ち、この特殊な関係が両国に害をもたらしていると警告を発している。イスラエルの熱心な擁護者たちの中にはリアリストに対して中傷を行っている。しかし、リアリストがアメリカとイスラエルの関係を批判しているのは、イスラエルの存在に対して敵意を持っているからではない。また、アメリカとイスラエル両国の国益が一致している場合にはアメリカとイスラエルは協力すべきだという考えに反対しているからではない。リアリストは、「イスラエルに対するアメリカからの無条件の支援は、世界におけるアメリカのイメージを悪く、テロリズム問題を悪化させ、パレスチナ人の犠牲の上に“大イスラエル”を建設しようとするイスラエル政府の自滅的な努力を続けさせている」という考えから、批判をしている。リアリストは、イスラエルとパレスチナの平和共存を進めるためには、アメリカが「イスラエルの弁護士」としてではなく、双方に圧力をかけるべきだと主張している。こうした考え以外のアプローチが繰り返し失敗している状況で、この考えの正しさに疑問を持つことができるだろうか?

 

 最後に、オバマがロバート・ゲイツのようなリアリストの助言を聞いていたら、リビアのムアンマール・カダフィを権力の座から追い落とすようなこともなかっただろう。そして、リビアが破綻国家の仲間入りをすることもなかっただろう。カダフィは独裁的な支配者であったが、人道主義的介入を主張する人々は、「大量虐殺」のリスクを誇張し、カダフィの独裁政治の崩壊の後に起きた無秩序と暴力を過小評価した。

 

(つづく)

野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23







 
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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 今回から3回に分けて、外交・国際問題専門誌『フォーリン・ポリシー』誌に掲載されたハーヴァード大学教授スティーヴン・ウォルトの国際関係論の一潮流であるリアリズムについての論説を皆様にご紹介します。

 

 ウォルト教授は私も翻訳作業に参加した『イスラエル・ロビー』の著者の一人で、国際関係論の大物学者です。今回の論説では、彼が信奉している国際関係論の一潮流であるリアリズムを紹介し、「これまでの3名のアメリカ大統領がリアリズムの諸原理に従っていれば、世界はもっと違って、より良いものになっていた」と主張しています。

 

 私は拙著『アメリカ政治の秘密』の中で、このリアリズムとネオコン・人道主義的介入の対立がアメリカ外交の流れだということを書きました。合わせてお読みいただければと思います。

 

==========

 

リアリストの世界はどのように見えるのか?(What Would a Realist World Have Looked Like?)①

 

イラク問題、大量破壊兵器、イスラエル・パレスチナ問題、シリアとロシアまでの中で、アメリカはアメリカの最大の誤りのいくつかをどのようにしたら避けることが出来ただろうか。

 

スティーヴン・M・ウォルト(Stephen M. Walt)筆

2016年1月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/01/08/what-would-a-realist-world-have-looked-like-iraq-syria-iran-obama-bush-clinton/

 

 アメリカの外交政策を研究している全学徒にとっての疑問、それは「外交政策研究分野における卓越したそしてよく知られたアプローチが、世論形成の場、特に主要な新聞の中で隅に追いやられているのはどうしてだろうか?これまでの記録を見てみれば、このアプローチが他のアプローチよりも好成績をあげているのに、隅に追いやられているのだ」というものだ。

 

 私はもちろん、リアリズムを好んでいる。私はリアリズムとリアリストが現在、完全に少数派に追いやられているというつもりはない。第一、今現在、あなたはリアリストの書いた文章を読んでいる。しかし、民主党内のリベラル介入主義(liberal internationalism)や共和党内のネオコンサヴァティズム(neoconservatism)に比べて、リアリズムが人々の目に触れることは極端に少なく、政策に与える影響もその存在に比べて小さい。

 

 外交政策研究の分野の中で、リアリズムが隅に追いやられている状況は驚くべきものだ。リアリズムは国際問題研究の分野で伝統的なアプローチとなっている。そして、ジョージ・ケナン、ハンス・モーゲンソー、ラインホールド・ニーバー、ウォルター・リップマンなどのリアリストたちは、過去においてアメリカの外交政策について鋭い、示唆に富んだ言葉を数多く残している。リアリズムは国際問題の学術的な研究において基礎となる考え方となっている。ここまで述べてきた通りだとすると、この洗練された思想体系は外交政策の議論の中で確固とした地位を保持していると皆さんは考えることだろう。そして、本物のリアリストはアメリカ政治や学術の世界において大きな影響力を持っているのだろうと思っているに違いない。

 

 更に言えば、過去25年にわたるリアリズムの行ってきた予測は、リベラル派とネオコン派の行ってきた予測よりもより質の高いものであった。しかし、冷戦終結後の25年間のアメリカの外交政策立案の分野においてリベラル派とネオコン派が大多数を占めてきた。更には、歴代大統領は、リベラル派・ネオコン派の主張を政策として追求し、リアリズムを無視する場合が多かった。また、主要なメディアはリアリストに対して、考え方を拡散するための手段を与えてこなかった。

 

 その結果は以下の通りだ。冷戦が終結した時、アメリカは世界の諸大国に対して有利な立場に立っていた。この時、アルカイーダの存在は取るに足らないものであり、中東における和平プロセスはしっかりと進んでいた。アメリカは「一極」世界で指導的な立場を享受した。権力政治は過去の遺物となったと考えられ、人類はグローバライゼーション時代において豊かになることに忙しくなり、繁栄、民主政治体制、人権が国際政治の重要なテーマとなった。リベラルな価値観は世界の隅々にまで行き渡るだろうと考えられた。そのペースがゆっくりとしたものであっても、アメリカの力はその拡散に貢献するだろうと見られていた。

 

状況は急激に変化している。対ロシア、対中国関係は徐々に敵対的になっている。東ヨーロッパ諸国とトルコにおける民主政治体制は後退している。中東全域の状況は悪いから最悪に移ってきている。アメリカは過去14年間にアフガニスタンで数十億ドルを使ってきた。しかし、タリバンは勢力を維持しているし、更に勝利を収める可能性を持っている。アメリカはイスラエルとパレスチナとの間の「和平プロセス」を20年にわたり仲介し、関与してきた。しかし、それによって「和平プロセス」は実現から遠ざかっている。更には、地上で最も明確にリベラル派の理想が現実化したヨーロッパ連合は、修復方法が見つからないような厳しい状況に直面している。

 

 こうした状況は、次の疑問を生み出す。それは、「最近の3人のアメリカの大統領たちがリベラルやネオコンではなく、リアリズムの諸原理に従っていれば、アメリカと世界はより良いものになったのではないだろうか?」というものだ。この疑問に対する答えは「イエス」だ。

 

 皆さんにリアリズムについて説明したい。リアリズムは、「パワー(力、権力)」を政治における中心要素であると考える。国家は、自国を他国から守ってくれる世界政府が存在しない世界において自国の安全保障を維持することを第一に考える存在だ、と考える。リアリストは、軍事力は国家の独立と自律性を維持するために必要不可欠だと考える。しかし、リアリストは、軍事力が多くの場合に意図しなかった結果を生み出すための手段にもなり得るとも考える。リアリストは、ナショナリズムと地域的アイデンティティは強力で持続的だと考える。そして、次のように考える。国家はほとんどの場合、自己中心的である。利他主義はほぼ存在しない。信頼関係が醸成されることは稀だ。規範や国際機関は強力な国家が行うこと大して限定的な影響力しか行使し得ない。まとめると、リアリストは、国際問題に関して悲観的な見方をし、それがどんなに抽象的なイデオロギーを基にした、魅力的な設計図に従って世界を作り変えようとする試みに懸念を持っている。

 

(つづく)

野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23






 
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  古村治彦です。

 

 2016年2月1日、アメリカ大統領選挙がアイオワ州の党員集会(Caucus)から正式にスタートしました。結果は、日本のマスコミでも報道されている通りで、民主党はヒラリー・クリントン前国務長官、共和党はテッド・クルーズ連邦上院議員が勝利しました。民主党のバーニー・サンダース連邦上院議員はヒラリーに肉薄し、ほぼ五分五分の結果を得ました。共和党側では全国調査ではトップを走っているドナルド・トランプが2位になりましたが、こちらはアイオワ州を「捨てて」おり、熱心な活動はしていなかったので、2位は既定路線、3位につけたマルコ・ルビオ連邦上院議員は善戦し、大統領選挙レースで有力候補になりました。アイオワ州の党員集会の結果については、『ザ・ガーディアン』紙には英語が読めなくても、結果が詳しく分かるようになっている記事が掲載されています。記事のアドレスは以下の通りです。

 

http://www.theguardian.com/us-news/ng-interactive/2016/feb/01/iowa-caucus-results-live-county-by-county-interactive-map

 

 党員集会の集計結果の詳細は以下の通りとなりました。

 

■民主党

①ヒラリー・クリントン:49.86%(701)

②バーニー・サンダース:49.57%(697)

 

■共和党

①テッド・クルーズ:27.65%(51,666)

②ドナルド・トランプ:24.31%(45,427)

③マルコ・ルビオ:23.10%(43,165)

④ベン・カーソン:9.31%(17,395)

⑤ランド・ポール:4.54%(8,481)

⑥ジェブ・ブッシュ:2.80%(5,238)

 

 アメリカの政治情報総合サイトである「リアル・クリア・ポリティックス(Real Clear Politics)」(http://www.realclearpolitics.com/)には、マスコミ各社や大学、調査機関が行う世論調査の結果やマスコミに掲載される政治関連記事が集められるので、アメリカ政治に関心のある人にとっては便利なウェブサイトです。

 

 このサイトでは、各種世論調査の結果から、各候補の支持率の平均を割り出して表示しています。その数字は以下の通りです。

 

■共和党

 

全国平均

・トランプ:35.8%

・クルーズ:19.6

・ルビオ:10.2%

・カーソン:7.6%

・ブッシュ:4.8%

 

アイオワ州

・トランプ:28.6%

・クルーズ:23.9%

・ルビオ:16.9%

・カーソン:7.7%

・ポール:4.1%

 

ニューハンプシャー州

・トランプ:33.7%

・クルーズ:11.5%

・カシック:11.3%

・ブッシュ:10.5%

・ルビオ:10.2%

 

 

■民主党

 

全国平均

・ヒラリー:51.6

・サンダース:37,2

 

アイオワ州

・ヒラリー::47.9%

・サンダース:43.9%

 

ニューハンプシャー州

・サンダース:55.8%

・ヒラリー:33.7%

 

 

 これらの数字とアイオワ州の党員集会の集計結果を見てみると、様々なことが考えられます。

 

 共和党では、テッド・クルーズとマルコ・ルビオの両方40代前半で連邦上院議員である2人が有力候補として浮上してきました。「政治経験もなく、失言も多いトランプよりはましだ」というある意味で「良識のある」人々がこの2人を応援しているものと考えられます。本当はジェブ・ブッシュが主流派の候補者たるべきなのでしょうが、あまりにも人気がないという状況になっています。しかし、まだまだ混戦状態が続く中で、撤退さえせずに、資金が枯渇しないようにしていけば、上位5位くらいまでの候補者誰にでもチャンスがあるのではないかと思います。それでもクルーズとルビオが有力候補となったのは興味深いことです。

 

 それは、この2人とランド・ポール連邦上院議員に対して、支援とまではいかなくても関心を持っているのが、共和党の大資金源となっているコーク兄弟だからです。トランプは自己資金で選挙戦を戦っていて、コーク兄弟を揶揄する発言を行っていますので、彼らがトランプを応援することはありません。これまでのトランプがトップを走る状況で、コーク兄弟の存在感は薄かったのですが、今回の大統領選挙に1200億円の政治資金を投入するということは明言しているので、クルーズかルビオがもっと支持を伸ばしてきた場合に、コーク兄弟が資金を投入してくることは考えられます。コーク兄弟に関しては、拙訳『アメリカの真の支配者 コーク一族』(ダニエル・シュルマン著、古村治彦訳、講談社、2015年12月)を是非お読みください。

 


 一方、民主党ではヒラリーに対してバーニー・サンダースが善戦しているという構図になっています。ただ、全国調査ではヒラリーがサンダースを10ポイント以上引き離しており、アイオワ州での世論調査でもヒラリーがサンダースを4ポイント上回っていました。しかし、結果はほぼ五分と五分でした。ヒラリーは勝利宣言をしましたが、サンダースの演説こそが勝利宣言にふさわしいものでした。ヒラリーにとっては敗北に等しい結果でした。

 

 私は数日前に、オバマ大統領がホワイトハウスでサンダースに会ったという記事が気になっていました。日本では次のように報じられました。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「「オバマ大統領は公平」 サンダース氏と会談」

 

産経新聞 2016年1月28日

http://www.sankei.com/world/news/160128/wor1601280043-n1.html

 

オバマ米大統領は27日、次期大統領選の民主党指名争いでクリントン前国務長官(68)を追い上げるサンダース上院議員(74)とホワイトハウスで会談した。サンダース氏は会談後、記者団に対し「大統領は公平であろうと努めてきたし、今後もそうだと期待する」と語り、オバマ氏の立場は中立だとの考えを強調した。

 

 サンダース氏の発言は、初戦となる2月1日のアイオワ州党員集会を控え、オバマ氏が内心はクリントン氏を支持しているとの観測を打ち消し、後継候補として対等の立場をアピールする狙いがありそうだ。

 

 大統領執務室(オーバルオフィス)で約45分間、内政や外交問題について広く意見交換したといい、サンダース氏は「建設的かつ生産的だった」と語った。(共同)

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

 この記事では、「オバマ大統領がヒラリーを支持しないように、中立を保つように」サンダースがくぎを刺しに行ったという解説になっています。しかし、私はこの行動は、オバマ大統領が間接的にサンダースを応援し、ヒラリーの勝利を妨害するためのものであったと考えます。ヒラリーにとってアイオワ州の党員集会は「鬼門」です。2008年の大統領選挙で、ヒラリーは圧倒的に有利と言われていました。しかし、アイオワ州で勝利を収めたのは、ダークホースであった当時のバラク・オバマ連邦上院議員でした。そこからあれよあれよという間にオバマ大統領が最有力候補になり、本選挙でも勝利を得ました。ヒラリーにとってはまさに悪夢のような思い出です。

 

 ですから、ヒラリーは昨年大統領選挙出馬を表明してから、日本で言うドブ板選挙をアイオワ州で展開していました。そして、全国調査でもそうですが、アイオワ州でもトップという世論調査の結果が出ていました。しかし、党員集会直前にオバマ大統領がサンダースに会ったということで、風向きが変わり、ヒラリーは大苦戦、サンダースは大善戦という結果になりました。次のニューハンプシャー州の予備選挙に関しては、今のところ、サンダースが圧倒的に有利ということが数字上でも出ていますので、サンダースが勝利するものと考えられます。そうなると、ヒラリーの優位は揺らぐことになるでしょう。

 

 共和党は混戦状態がしばらく続くでしょう。それでも次回の討論会である程度の流れが定まってくるのではないかと思います。まだ候補者が多数乱立し、乱戦がしばらく続くとなると、最初からトップに立たずに2位や3位をずっと堅持していく候補者が最後に飛び出るという、マラソンでよく見るような感じになると思われます。

 

 民主党はヒラリー対サンダースというマッチアップ(一対一)で、やるかやられるかの戦いになっていますので、相手を圧倒できる時に圧倒しておかねば足元をすくわれてしまうという厳しい戦いになります。その点で、ヒラリーはスタートに失敗しました。ここからどう巻き返してくるかに注目です。

 

(終わり)





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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12





 

 古村治彦です。

 

 金銭スキャンダルで経済再生担当大臣を辞任した甘利明衆議院議員(神奈川13区選出、甘利グループ)の退任のあいさつ全文を自民党の“機関紙”である産経新聞が掲載しました。「自分のせいではない秘書のやったことに対して、潔く辞任して安倍政権を支えようとする、素晴らしい政治家である甘利明」を宣伝しようという意図が透けて見えます。

 

 あいさつの全文を読むと、ところどころでお笑い用語で言う突っ込みを入れたくなります。

 

 以下の2つの記事が今回の甘利氏の金銭スキャンダルを理解するのに役立ちます。

 

①「安倍政権史上、最大の政治スキャンダル!甘利大臣は「シロ」か「クロ」か - 山本洋一」

→ http://blogos.com/article/156231/

②「甘利大臣が辞任を表明「閣僚・甘利明にとっては誠に耐え難い事態」」

→ http://blogos.com/article/157437/

 

 ①の記事の著者、山本洋一氏は日本経済新聞の記者として長く政治の世界の取材をしてきたヴェテランだそうです。山本氏によると、今回の甘利氏のスキャンダルの問題点は2つあって、1つ目は、甘利氏が、問題の建設会社(S社と表記)のお願いを受けて、国土交通省の所管である都市再生機構(UR)に口利きをして、S社の利益となるような結果を導き出して、その結果としてお礼としてお金を受け取った、つまり賄賂を受け取ったのかどうか、ということだそうです。国会議員が口利きなどをしてその見返りで金品を受け取ると「あっせん利得処罰法」違反ということになります。

 

 昔であれば、職務権限の有無、が問われたので、「自分の職務とは関係ない」という言い逃れもできたそうですが、現在は、職務権限は問われないようになっているそうです。

 

 政治資金として適正に処理してあれば問題は言い訳は立つのだそうですが、そこがいい加減だと処罰される可能性が高くなるということです。このスキャンダルを報じた『週刊文春』誌の記事の内容では、秘書が個人的に使ってしまったと可能性が高いということになります。

 

2つ目の問題点は、S社からもらったお金を政治資金収支報告書にきちんと記載したかどうかという点になるそうです。

 

週刊文春の記事によると、「最初に事務所に持参した500万円のうち、200万円分は政党支部への献金として処理されているが、残り300万円はどこにも記載がない」ということだそうです。

 

「甘利事務所は記事中で、甘利氏に渡された50万円やその他の現金について「パーティー券で処理している」などと答えている」のだそうですが、S社側は否定しているのだそうです。お金を出したS社が否定しているのに、甘利事務所側がパーティー券を買ったことにして政治資金収支報告書に記載すると、これは虚偽記載(嘘の内容を政治資金収支報告書に記載した)ということになります。

 

 賄賂を貰ったのかどうか、政治資金収支報告書にきちんと記載したのかどうか、という点が問題になっています。「賄賂としてもらった訳ではない、政治資金としてもらったのだが、秘書が一部を個人的な目的のために使ってしまった」という説明を甘利氏はし、監督責任を取り、安倍政権へのダメージを食い止めるというということで大臣を辞任しました。

 

 それについて、甘利氏は「やせ我慢」だとか「美学」だとかそういう大仰な言葉を使いました。数百万円のお金を受け取っておいての「やせ我慢」というのは何ともおかしな話ですし、「美学」というと、なんだかとても崇高なもののために自分を犠牲にするという響きがありますが、こちらもなんだかおかしな感じがします。

 

こうしたおかしな日本語の使い方の裏には、「自分は罪なくして(冤罪で)大臣の座を去らねばならない。しかし、それについて言い訳も恨み言も言わない」というある種のヒロイズム、悲劇のヒーロー気取りがあります。しかし、実際にはあっせん利得処罰法や政治資金規正法に違反している可能性があることをすっかり忘れてしまっています。

 

 今回のスキャンダルでは甘利氏と秘書がそれぞれお金を受け取って、甘利氏は自分が受け取ったお金は政治資金としてきちんと処理したと述べていますが、そもそも政治資金収支報告書に虚偽の記載をした可能性(受け取った分を全額記載しなかったこと、お金を渡した側が否定しているのにパーティー券の購入代金として記載したこと)があります。

 

 「やせ我慢」や「美学」という言葉を使い、政治活動を一からやり直すということならば、中途半端なことはせずに議員辞職をして一からやり直すのが筋ではないかと思います。政治家の出処進退はその人だけが決めることですから、甘利氏がどのような決断をするのかは甘利氏の良心に従った決定を尊重すべきですが、「やせ我慢」だの「美学」だのと大見得を切ったのに、他の政治家と変わらない大臣だけの辞任ということになると、大見得を切った分だけ出処進退の「潔さ」の度合いは小さくなりますし、そもそも「やせ我慢の美学」がある人は、大見得を切ることなく、出処進退を静かにするものではないかと思います。

 

 大臣退任のあいさつで、「日本の官僚は世界一」という歯の浮くようなお世辞を残しました。官僚が「世界一」だから、今のほとんどの政治家たちのような「世界一」の質ではない、政治家を稼業にしているだけの二世、三世の人物たちが代議士になり、大臣をやっても国が何とかやっていけているのだろうという憎まれ口を叩きたくなります。

 

 また、今残っている問題を全て解決するまで安倍政権が存続すべきだという発言も気にかかります。安倍政権の閣僚だった人ですから、安倍政権の存続を願うのは当然でしょうが、いま日本が抱えている問題を全て解決するのに必要な時間はどれくらいのものでしょうか。1年、2年で済むものはないでしょう。たとえば、安倍晋三総理大臣が前回の首相在任時に「消えた年金」問題について、「私の政権で最後のおひとりまで救う」と選挙運動で述べたことがありましたが、これは解決しているでしょうか。財政赤字も問題とするのならば、それがここ1、2年で解消するものでしょうか。

 

甘利氏の退任のあいさつで気になったのは、「本当に身命を賭して突っ込んで」という表現です。もちろん物理的に、具体的に命を差し出すということではないのは分かっています。しかし、後半の安倍政権が今存在する問題をすべて解決するまで続くべきだという主張と併せて考えると、とても「狂信的な」感じを受けます。宗教的な熱狂と言ってよいかもしれません。「沖仲士の哲学者」と呼ばれた、アメリカの社会思想家エリック・ホッファーは主著『大衆運動』で、大衆運動の中心的な役割を果たす人々を「トゥルー・ビリーヴァーズ(True Believers)」と呼びました。この人々は大義や正義のためには命もいらないと考える人々ですが、こうした存在のために社会運動が得てして先鋭化してしまい、支持を失っていくということはこれまでも散々繰り返されてきました。冷静さを欠く、ある意味の熱狂が安倍政権の中にあるということになるとすると、安倍政権は穏健な保守政権というよりは、急進的な右翼反動的政権ということになります。甘利氏の発言からはそのようなことが読み取れると私は考えます。



 一つの内閣で問題が1つでも2つでも解決出来たらそれはそれで大したものですし、長期政権となるとどうしても緊張感がなくなり、弛緩してしまう部分が出てきます。特に今の自民党の体質では長期政権になると、緊張感を持続させることは難しいでしょう。

 

 今回の甘利氏のスキャンダルに関しては、「はめられた」とか「ゲスの極み」といった感想や批判が自民党の幹部から出ています。甘利氏を失脚させる「陰謀」があったということを言いたいのでしょうが、問題は誰がその「陰謀」を成就させるためにシナリオを書いたかということです。そこのところをはっきりさせねば、スキャンダルの発生を止めることはできません。しかし、自民党自体がこうしたスキャンダルの仕掛け人とか発生源とかに対して対処したという話は聞きません。

 

 今回はこれ以上は書きませんが、それはこうしたスキャンダルを仕掛ける「陰謀」の仕掛け人が海の向こうの意向を受けているということだからではないかと私は推察しています。簡単に言ってしまえば、「属国の悲哀」ということになるでしょうか。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

甘利氏退任あいさつ全文「私なりのやせ我慢の美学」「安倍内閣と一緒に使命を果たして」

 

産経新聞 129()132分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160129-00000540-san-pol

 

 

 自らの金銭授受問題の責任を取り辞任した甘利明前経済再生担当相は29日、内閣府で職員に退任のあいさつを行った。あいさつの全文は以下の通り。

 

           ◇

 

 「このたびは私どもの不祥事により、世間をお騒がせし、皆さんに大変なご迷惑をおかけして、本当に申し訳なく思っています。責任の取り方に対し、私なりのやせ我慢の美学を通させていただきました」

 

 「この3年余りの間、いろんな仕事をさせていただきました。日本経済全体の指揮をとるという大役をお任せいただきました。この3年間を通じて、痛感したことは、やっぱり日本の官僚は世界一だということでした」

 

 「ただ、今までその官僚の力を思う存分発揮できなかったのは、政権が毎年、毎年、代わる。政権が代われば指示が変わる。働くものは下された指示を、本当に身命を賭(と)して突っ込んでいっていいのか、不安になる。それが素晴らしいポテンシャルを、宝を持ちながら、必ずしも十二分に発揮ができなかったことだと思いました」

 

 「安倍内閣はまだまだ続きますし、続けさせなければならないと思います。そしてその間に、日本が解決しなければならない課題はすべて、全部解決をすると。そのつもりで総理は邁進(まいしん)されています。それを信じて、一片の疑いもなく、その使命を安倍内閣と一緒に果たしていただきたいと思います」

 

 「重ねて、ご迷惑をおかけいたしたことをおわびします。本当に申し訳ありませんでした。そしてありがとうございました」

 

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)



 
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