古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

2016年08月

 古村治彦です。

 

 トランプは、マイノリティへの働きかけを強めています。黒人有権者には、彼らが多く住むインナーシティ(都市部の荒廃した環境の地区。治安が悪く、教育も荒廃しているので、そこから抜け出すことが難しい)の改善を訴え、失業率を引き下げることを約束しました。

 

 また、トランプ支持のヒスパニック社会の指導者たちとトランプ・タワーで会談し、その中で、不法移民について、大規模な強制送還は行わないということを示唆したということです。

 

 どの世論調査でも、トランプはヒラリーに比べてマイノリティからの支持が高くありません。黒人の場合ではヒラリーが80%以上あるのに対して、1から2%と壊滅的です。ヒスパニックの場合では、ヒラリーが50%以上で、トランプは30%台半ばとこちらはそこまで酷くありません。メキシコは強姦犯人を送り込んでくる、メキシコのお金で国境に壁を建設しろと言ったことを考えると、ヒスパニックに関して、それだけの差で済んでいるのは大したものです。

 

 黒人有権者の中で致命的に人気がないということは逆に言うと、これからそれを伸ばしていけるだけの余地があるということです。しかし、黒人有権者は全体の10%程度ですから、大きな数字ではありますが、これまでの態度を一変させてまで狙うべき層ではありません。

 

 トランプ陣営は、予備選挙で他を圧倒することが出来た戦術を変えようとしています。トランプは、怒れる白人男性の票を取り込むことで、下馬評は低かったのに、予備選挙を勝ち切りました。しかし、本選挙となると、対象となる有権者は格段に増えます。民主党支持者を切り崩すことは無理かもしれませんが、無党派(independents)の人々からの支持がなければ当選しません。今回のマイノリティに向けたアピールは、「過激なことを言うのは止めて、現実的で多少マイノリティにも配慮した政策をやります」という無党派に向けたアピールです。

 

 これに対して保守派からは「変節した」という批判は出るでしょうが、彼らがヒラリー支持になることはありません。不満があってもトランプに投票するしかありません。

 

 これからこの効果がどのように出てくるか、世論調査の数字でも特にマイノリティの支持率を見ていきたいと思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

ギングリッジ:私たちは、「成熟した」「謙虚な」トランプを目撃している(Gingrich: We're seeing more 'mature,' 'humble' Trump

 

ジョナサン・スワン筆

2016年8月20日

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/292077-gingrich-were-seeing-more-mature-humble-trump

 

元連邦下院議長ニュート・ギングリッジは金曜日、ドナルド・トランプがより謙虚に、成熟しつつあると語った。

 

トランプの盟友ギングリッジは金曜夜のFOXのニュース番組に出演し、司会のシーン・ハニティに次のように語った。「今週皆さんが目撃したのは、文字通り、皆さんが見たのは、より成熟した、より謙虚になったドナルド・トランプです。こんな言い方をして、トランプが喜ぶかどうかは分かりませんがね」。

 

ギングリッジは数十年来の友人であるトランプを「世界で最も複雑な国アメリカをリードすること、3億2500万の人々を率いること、つまりアメリカ大統領になろうとすることは、本当にきついことなのだと気付き始めている人」だと形容している。

 

ギングリッジは、今週になって、トランプが自分の発言で人々を傷つけたことを後悔している(しかし、どの発言かは明確にせず)と述べたことについて賞賛した。

 

ギングリッジは、今週はトランプの選挙運動にとって「最高の週」になったと語った。

 

ギングリッジは、選挙運動における、トランプの内面の葛藤について、「それはまるで、彼自身の頑固さとIQとの間の戦いのようなものでしょうね」と語った。

 

「彼は高いIQを持っており、彼自身が新しいレヴェルに向かわねばならないということを分かっています。彼は、本物の大統領選挙候補者にならねばならないと認識しています」。

 

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トランプ:2020年には黒人有権者95%から得票するだろう(Trump: I'll get 95 percent support from black voters in 2020

ジェシー・ヘルマン筆

2016年8月19日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/292054-trump-says-hell-get-95-percent-support-of-black-voters

 

ドナルド・トランプは金曜日、彼が大統領として4年間働いた後、黒人有権者の95%は自分に投票してくれるだろうという予測を語った。

 

トランプはミシガン州ディモンデールでの集会で次のように語った。「4年後、私はアフリカ系アメリカ人有権者の95%が私に投票してくれるようになるでしょう。保証します。本当に起きると約束します。なぜなら、私はインナーシティのために結果を出しますし、アフリカ系アメリカ人のために結果を出すからです」。

 

「民主党は何も結果を出さないでしょう。彼らがやることは、アフリカ系アメリカ人の皆さんの投票を利用することだけです。彼らがやるのはそれだけです。選挙が終われば、民主党はワシントンの居場所に戻り、皆さんのためには何もやりません。このことは覚えておいてください。一つ確かなことは、同じ人に投票したら、同じ結果しか得られません。これまでの政権が何もしなかったですが、私の政権は皆さんのために働きます」。

 

トランプは、「ヒラリー・クリントンはアメリカのマイノリティよりもシリア難民を大事にする」と非難した。

 

トランプは次のように語った。「ヒラリー・クリントンは海外からの難民に仕事を与え、デトロイトのような大都市の失業中の若いアフリカ系アメリカ人には仕事を与えないでしょう。アフリカ系アメリカ人は自国で難民のようになっています」。

 

トランプは選挙戦を辻手、黒人有権者からの支持を得ることに苦労している。先週行われた各種世論調査の結果を平均してみると、トランプは黒人有権者の2%の支持しか得ていないことが明らかになっている。

 

トランプはここ数日、言葉遣いを変えて、マイノリティ有権者の支持を得ようとしている。

 

トランプは金曜日に次のように語った。「皆さんは何を失っているでしょうか?貧困の中で暮らしています。学校のレヴェルは低い。仕事がない。アフリカ系アメリカ人の若者58%は失業している。皆さんは何を失っていますか?」。

 

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トランプの最側近:彼に「許し」を与えて欲しい(Top Trump aide: Show him 'some forgiveness'

 

ジェシー・ブライネス筆

2016年8月19日

『ザ・ヒル』

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/291947-trump-aide-after-regret-speech-show-trump-some

 

ドナルド・トランプが新たに起用した選対委員長ケリアン・コンウェイは金曜日、ドナルド・トランプが後悔を示した演説の後に、人々に対して、トランプを許して欲しいと語った。

 

コンウェイはABCの番組「グッド・モーニング・アメリカ」に出演して、「トランプは彼の発言で嫌な思いをした人について彼は語りました」と語った。

 

コンウェイは、「これは彼が思っていることです。トランプは昨日、ぎりぎりまで自分で演説原稿に手を入れていました。ですから、あの演説の内容は彼が書いたものでした。彼の本当の言葉です」と述べた。

 

番組の司会デイヴィッド・ムラーとのインタヴューでコンウェイは次のように語った。「デイヴィッド、これまでトランプがある人たちに対して気遣いが出来ずに、バカにするような発言をすることで、トランプに対して批判的になっている方々には、トランプに対して、少しでもその存在を認め、許してあげて欲しいと思います」。

 

ムラーは、トランプが数週間前に起こした戦死したフマヤン・カーン大尉の家族との言い争いに言及し、彼が今になって後悔の念を示したのはどうしてかと質問した。

 

コンウェイは「恐らく、トランプは後悔を感じていたと思います。しかし、それを今の時点で明らかにしたのです」と語った。彼女は更に、トランプはカーンの家族に個人的に連絡をする「かもしれない」が、「家族の皆さんが昨晩の彼の言葉を聞いたことを願っています」と述べた。

 

トランプはここ数週間、世論調査の数字を落としていた。木曜日夜にノースカロライナ州シャーロットでの選挙集会の演説の中で初めて彼の言葉遣いを後悔していると語った。しかし、どの言葉を後悔しているのかを明言しなかった。民主党のヒラリー・クリントン陣営は、「彼の演説はプロンプターを読んだだけのことだ」と切り捨てた。

 

トランプは次のように語った。「時に、議論が白熱したり、複数の問題について語ったりするときに、正しい言葉を選べないとか、間違ったことを言うということがあります。私がそうでした。そのことを残念に思っています。私の言葉で誰かが個人的な痛みを感じることになったことを残念に思います。こうした問題をそのままにしておくことは良くないと思います」。

 

コンウェイは金曜日、次の言葉を繰り返した。「私は、トランプの選挙運動が彼の真の心を見せるものに変更されることを心から願っています」。

 

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報告:アドヴァイザーたちはトランプが「陰鬱」「落ち着きがなく」「助言を聞かない」状態になっていると述べる(Report: Advisers see Trump as 'sullen, 'erratic,' 'beyond coaching'

 

ジェシー・ヘルマン筆

2016年8月13日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/291351-report-advisers-see-trump-as-sullen-erratic-beyond

 

ドナルド・トランプのアドヴァイザーたちは、ドナルド・トランプが陰鬱になっており、プライヴェートでは落ち着きがなく、ちょっとした批判でもすぐに向きになって怒り出す状態にあると述べたと『ニューヨーク・タイムズ』紙は報じている。

 

今年の6月、トランプ側でいくつかの失敗が続いた時、トランプの娘イヴァンカ、イヴァンカの夫、更に数名の側近たちが私的にドナルド・トランプに会い、選挙戦の方向を刷新するように求めたと記事は報じている。

 

しかし、トランプはこれまで態度を変えることはなく、いくつもの論争と批判を惹起している。

 

先週だけでも、トランプはオバマ大統領をISISの「創設者」と呼び、ヒラリー・クリントンが最高裁判事にリベラルな人物を指名することを「憲法修正第2条を支持する人々」が阻止するという考えについて議論を行った。

 

ニューヨーク・タイムズ紙は20名以上の共和党の幹部に取材した。彼らは異口同音に、トランプが疲れ切っており、イライラし、アドヴァイスを受け付けない状態にある、また、政治過程のいくつかのポイントについて誤解していると述べているということだ。

 

トランプは、マルコ・ルビオ連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)が彼の再選を目指す選挙中に、「次の大統領には所属政党は関係なく協力する」と述べたことに激怒したとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

 

トランプは、ピーター・キング連邦下院議員(ニューヨーク州選出、共和党)がテレビ番組でトランプを批判したことで不機嫌になった。トランプはこれまで長い間キング議員に献金を行っていた。

 

トランプの報道担当ジェイソン・ミラーは、ニューヨーク・タイムズ紙の取材を受けた共和党幹部たちの発言内容を否定し、ニューヨーク・タイムズ紙の取材に対して、トランプは、「元気いっぱいで」あり、「選挙戦に集中している」と語った。

 

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トランプ:共和党はアフリカ系アメリカ人への働きかけを「改選しなければならない」(Trump: GOP 'must do better' on African-American outreach

 

ベン・シュレッキンガー筆

2016年8月20日

『ポリティコ』誌

http://www.politico.com/story/2016/08/donald-trump-gop-african-american-outreach-227233

 

ドナルド・トランプはこれまでの選挙運動で人種に関して幾つもの論争を巻き起こした。そのトランプが土曜日、共和党は黒人有権者への働きかけを改善しなくてはならないと述べた。

 

ヴァージニア州フレデリックスバーグでの演説でトランプは「アフリカ系アメリカ人共同体への働きかけは、共和党が改善しなければならない分野だ」と語った。このストーリーを以下に続ける。

 

トランプからこのようなことを言われるのは、共和党の幹部たちにしてみれば心外なことであろう。共和党の幹部たちは2012年にミット・ロムニーが大統領選挙で敗れたことを受けて、マイノリティに対する働きかけを改善する計画を立ててきたが、トランプ自身のマイノリティに対する行動や攻撃的な発言によって計画を台無しにされたという思いがある。トランプはツイッターで、白人優越主義者たちのツイートをリツイートし、黒人たちの殺人関与件数に関して実際よりも多い数字を出した誤りの統計数字をリツイートしたり、テレビ番組のインタヴューで過激派白人優越主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)を非難することを拒絶したりした。この件では、後にツイッター上でKKKについて否定した。

 

トランプは「共和党は南北戦争で勝利したリンカーンの党です。私は共和党が再びアフリカ系アメリカ人の投票先になって欲しいと思っています。私は誰も排除されない国、排除しない政党を目指します」と述べた。トランプは最近の集会で黒人有権者への明らかなアピールを行っている。その中には大きな批判を浴びた金曜日のミシガンでの演説も含まれる。 最新の4つの全国規模の世論調査の結果の平均を出してみると、トランプを支持する黒人有権者の割合は2%に留まる。これは、86%のヒラリー・クリントンだけではなく、緑の党のジル・ステインの5%、リバータリアン党のゲーリー・ジョンソンの4%に負けている。

 

土曜日の朝、トランプは、ニューヨークのトランプ・タワーで24名のヒスパニックのリーダーたちと会談を持った。バズフィートは次のように報じている。その場で、トランプは不法移民に対して「人間味があり効果的な」やり方で対処すると語った。出席者の中には、大規模な強制送還を求める彼の公的な立場について少し緩めることを占めているのだと推測する人たちもいた。

 

ここ数カ月、トランプは大規模な強制送還の提案について、演説の中で曖昧な表現に終始してきた。そして、共和党の指導者たちは、トランプがもはや不法移民全員を強制送還する意図を持っていないと語り始めた。

 

 トランプは集会で、ヒラリーの副大統領候補ティム・ケイン連邦上院議員(ヴァージニア州選出)を激しく批判した。ケインは2006年から2010年までヴァージニア州知事を務めた。トランプは、「失敗ばかりの州知事だったティム・ケイン。彼は任期中にヴァージニア州の失業率を倍増させ、ヴァージニア州内の不法移民の数を増大させました」と語った。トランプは最近の演説でそうしているように、プロンプターに映る演説原稿を読み上げ続けた。彼は続けて次のように読んだ。「ところで、ティム・ケインは州知事になって1週間もしないうちに、40億ドルの新しい税金を提案しました。その増税案には、年間所得が1万7000ドルの人に対する増税も含まれていました」。

 

ここ最近、トランプは、評判の悪い人物である元フォックス・ニュース会長のロジャー・アイルズの助言を受けている。トランプはまた、フォックス・ニュースに対して、彼が貿易協定の交渉にあたってどのような態度で臨むかをネットワークを通じて報じて欲しいと願っていた。トランプは、「フォックス・ニュースは公正でバランスが取れていると思う」と語った。

 

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トランプはヒスパニックに向けてアピールする(Trump makes pitch to Hispanics

 

ジョナサン・スワン、ラファエル・バーナル筆

2016年8月20日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/292074-trump-makes-pitch-to-hispanics

 

ドナルド・トランプは土曜日に、彼が「全国ヒスパニック・トランプのためのアドヴァイザー会議」と呼ぶグループと会談し、ヒスパニック有権者に対してのアピールを行った。

 

共和党全国委員会は、ニューヨークのマンハッタンにあるトランプ・タワーで共和党の大統領選挙候補者ドナルド・トランプと一緒に、「全国の12州からやって来たビジネス、公務、そして宗教各分野のヒスパニックのリーダーたち(NHAC)」と会談した、と発表した。

 

共和党全国委員会委員長レインス・プリーバスは声明の中で、トランプ・タワーにラティーノの指導者たちが集まったのは、「私たちがヒスパニック共同体に関与するための努力の一環だ」と語っている。

 

共和党全国委員会は声明によると、トランプとの会談後、ヒスパニックのリーダーたちは「ヒスパニックの人々に、トランプ氏が低迷する経済を建て直し、中間層を復活させ、世界規模のテロリズムを終わらせるための提案を持っているということを理解してもらうための戦略について議論することになるだろう」と述べたということだ。

 

会談に出席したラミロ・ペーニャ牧師は本誌の取材に対して、トランプ「ヒスパニック・ラティーノの人々に対して温かい心を持っており、今日、それに触れた」と語った。

 

ペーニャは更に、「今日部屋には最近彼が起用したバノンとコンウェイはいたが、彼の家族は誰もいなかった」と述べた。

 

トランプは最近選対幹部の更迭を行い、ブライトバート・ニュース社元会長スティーヴ・バノンを選対の運営責任者、世論調査専門家ケリアン。コンウェイを選対委員長に就任させた。そして、選対委員長だったポール・マナフォートは金曜日、委員長の座から退いた。

 

元プエルトリコ検事総長のホセ・フエンテスは、NHACのメンバーである。フエンテスは、「出席者たちはトランプ・タワーの談話室で、移民を含む様々な問題について議論しました」と述べた。

 

既にアメリカ国内にいる1100万人の不法移民の問題について、トランプは「全ては法律の枠内で、公平の範囲内で」対処されるべきだと語った、とフエンテスは述べた。

 

ペーニャは、大規模な強制送還は「非論理的で非現実的だ」と考えている。ペーニャは、「トランプが自分たちの意見に耳を傾けてくれた」と感じ、トランプは「不法移民の家族について取扱に注意しようとしており、家族を引き裂くつもりはないようだ」という認識を持った、と語った。

 

フエンテスは、メキシコ国境に壁を作るという問題は話題でなかったと語り、「そもそも話題に出なかったのは、それが現実的な問題ではないからだ。そもそも国境線に関してコントロールできない国は主権を持てないからだ(訳者註:アメリカはそうではないのだから、メキシコのお金で壁を作るというのは荒唐無稽だ)」と述べた。

 

フエンテスとペーニャは、不法移民に関するトランプの計画については議論しなかったと述べた。

 

ペーニャは、「詳細は選対から発表されるでしょう。トランプ陣営は不法移民に関して計画を立てているようです」と語った。

 

トランプは、マイノリティの有権者からの支持でヒラリー・クリントンに大きく水をあけられている。特に、アフリカ系・アメリカ人とラティーノでは差が開いている。いくつかの世論調査では黒人有権者の支持は1%であった。

 

しかし、ここ数日、トランプは黒人有権者に対して明らかなアピールを始めた。黒人有権者に向けて、民主党は皆さんが投票することを当然だと思っているが、皆さんがトランプ政権に投票することで何も失うものはないではないかと述べた。

 

土曜日にはヒスパニックに対しての最も重要なアピールの場となる会談を持った。ヒスパニックは人口が増え、有権者の中で割合を増やしつつあり、ネヴァダ州、コロラド州、アリゾナ州のような激戦州の結果を決める存在である。

 

トランプは、「メキシコは、アメリカ・メキシコ国境を越えてレイプ犯人と麻薬密売人をアメリカに送り込んでいる」と発言して選挙運動を開始したことで、多くのメキシコ人を遠ざけた。トランプはまた、ツイッターに、「私はヒスパニックを愛している!」というキャプションをつけてタコボウルの写真を投稿したことで、批判を浴びた。

 

共和党全国委員会によると、ヒスパニックのリーダーには聖職者や州議会議員たちが含まれていたということだ。

 

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トランプ選対委員長:「私は白人ですが、私は黒人有権者たちへのアピールに感動しました」(Trump campaign manager: 'I'm white. I was very moved' by pitch to black voters

 

レベッカ・サヴランスキー筆

2016年8月21日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/292144-trump-campaign-manager-im-white-and-was-moved-by-trump

 

ドナルド・トランプの選対本部長ケリアン・コンウェイは、共和党大統領選挙候補者トランプが最近になってアフリカ系アメリカ人有権者へアピールを始めたことを擁護した。

 

コンウェイは日曜日朝のABCの番組「ディス・ウィーク」に出演し、「トランプのコメントは全て全てのアメリカ人に向けたものです。私は白人が多い共同体に住んでおり、私は白人です。私は彼のコメントにとても感動しました」と述べた。

 

コンウェイは次のように語った。「言い換えると、彼はアメリカ人に私たちは改善できると言おうとしているのです。トランプの発言で私が驚いたのは、民主党の候補者ヒラリー・クリントンは皆さんを有権者としてしか見ていないし、皆さんが自分に投票するのは当然だと考えているというものです。私は皆さんを人間として見ています」。

 

選挙運動で、トランプはアフリカ系アメリカ人に向けてアピールをしている。そして、彼らに対して、トランプに投票して何を失うものがあるだろうかと述べている。

 

トランプは次のように語った。「皆さんは貧困の中で生きています。皆さんの学校は良くない。仕事もない。58%の若者に仕事がない。私に投票してこれ以上何を失うでしょうか?」。

 

日曜日、コンウェイは「これ以上悪くしてはならない」ところまで来ているということをトランプは分かってもらおうとしているのだと述べた。

 

コンウェイは次のように語った。「若いアフリカ系アメリカ人の失業率が58%にまで達していることが良いことだと思うのなら、皆さん、どうぞヒラリー・クリントンに投票してください」。

 

コンウェイはトランプの立場を擁護し続けた。彼女は、トランプが、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック、そして「全ての」の生徒のための学校選択ヴァウチャーとチャータースクールを支持していると語った。

 

コンウェイは次のように語った。「私はこうしたことを実現するためにニューヨークで頑張ってきました。学校を選んだり、チャータースクールに行くことが出来たりすることで、能力を持つ、知性の高い生徒たちに高い質の教育を提供することが出来ます」。

 

「ヒラリー・クリントンはこれらに反対していますと彼女は語った。」

 

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 古村治彦です。

 

 ヒラリーのEメール問題が大きくなりつつあります。

 

 ヒラリーのEメール問題とは、2012年9月11日に発生したベンガジ事件(リビア・ベンガジのアメリカ大使館が襲撃され、クリス・スティーヴンス大使と3名のアメリカ人が殺害された)の調査過程で、「ヒラリー・クリントンが、国務長の強い要請があったにもかかわらず、ハッキングなどをされやすい私的なEメールアカウントとEメールサーヴァーを使用していた」ということです。私的Eメールアカウント使用はハッキングに弱いということもありますが、業務に関わるものは全て記録として残しておくという公務の規定にも抵触する可能性がありました。

 

 2016年7月、FBIのジェイムズ・コミー長官は、ヒラリーと彼女の側近たちの国務省在職中のEメール使用について、「私的なEメールアカウントで機密情報をやり取りしていた。これは大変軽率な行動であったが、訴追するには至らない」と発表し、司法省のロレッタ・リンチ長官に報告し、私的なEメール使用での訴追はなくなりました。

 

 ヒラリーは、2014年12月に国務省に、自宅にあるEメールサーヴァーに残っていたEメールのうち、業務に関するもの3万通を提出しました。これらは、国務省の分析も済み、公開されています。業務に関するか、プライヴェート化の分類はヒラリーが雇った弁護士が行いました。そして、このEメールサーヴァーから消去されたEメールが3万通あり、これをFBIが復元し、これらもまた国務省に提出されました。これらの中には数千通の業務に関するEメールが含まれていました(ヒラリーと弁護士たちは、プライヴェートなものとして提出しなかったものの中に業務内容が含まれていたことになります)。この復元された3万通は現在国務省が調査と分類を行っています。

 

 これらのEメールについて、情報公開法に基づいて、いくつも訴訟が起こされています。そして、8月22日の月曜日に、連邦裁判所は、国務書に対して、現在国務省が調査分析中の復元された3万通のうちの約1万5000通を開示するように命じました。ただ、国務省がいつどのようにして開示するかを検討中なので、選挙の投開票日である11月8日までに間に合うかどうかは分かりません。

 

 ここでEメール問題は、①業務とは関係ないとして消去されたEメール3万通の中に、業務内容を含むものがあったので、ヒラリーの主張の信頼性が損なわれる、②これらのEメールの内容とヒラリーが連邦下院ベンガジ特別委員会で宣誓証言を行った内容との間に齟齬があった場合の偽証罪、③Eメールの内容で、ヒラリーが国務長官の権限を利用して、私腹を肥やす、もしくはクリントン財団に有利な取り扱いをして利益を得た、あっせん利得、口利きといった行為があったかどうか、ということになります。

 

 連邦下院共和党は②の偽証罪でヒラリーを告発し、FBIが捜査し、司法省が起訴するように働きかけています。マスコミは③のヒラリーが国務長官時代の国務省とクリントン財団との不適切な関係を攻めるということになっています。

 また、ヒラリーが国務長官時代に私的Eメール使用に関して、「元国務長官のコリン・パウエルからの助言を受けてそのようにした」とFBIの聴取に対して答えていたことで、失点しました。コリン・パウエルは共和党ですが、2008年、2012年の大統領選挙で民主党のバラク・オバマを支持しました。今回の大統領選挙ではパウエルは誰も支持していませんが、これでヒラリーを支持する可能性は亡くなりました。大きな魚を逃したことになります。 

 

 トランプの態度変更に合わせて、ヒラリーのEメール問題に対する追及も激しくなってきました。これからどうなるか注目です。

 

 

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Eメール:クリントンの側近が財団の寄付者との会談を調整(Emails: Clinton aide arranged meeting with foundation donor

 

ケイティ・ボー・ウィリアムズ筆

2016年8月22日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/national-security/292250-emails-clinton-aide-arranged-meeting-with-foundation-donor

 

保守系の監視団体ジュディシャル・ウォッチは月曜日、ヒラリー・クリントンがやり取りしたEメールを公表した。ジュディシャル・ウォッチは、この中に、クリントン財団の大口献金者たちが当時国務長官だったヒラリー・クリントンへの特別なチャンネルが与えられていたことを示すものがあると主張している。

 

2009年、ヒラリーの首席補佐官だったフーマ・アベディンは、クリントン財団幹部ダグ・バンドと協力して、ヒラリーとバーレーンのサルマン皇太子との会談を調整した。この会談は皇太子側から求められたものだった。

 

2009年6月23日(火曜日)、バンドはアベディンに対してEメールで次のように送った。「バーレーンの皇太子が明日から金曜日まで滞在。ヒラリー・クリントンとの面会を希望。私たちにとっての良き友」。

 

アベディンはそれから数時間後に返信し、サルマン皇太子は「通常のチャンネル」を通じて、会談の日程を調整しようとしたが、火曜日から金曜日までは、彼女が良く知る人物以外には会談を持ちたくないと言っていると返事をした。

 

2日後、アベディンはバンドにEメールを送った。その内容は以下の通りだ。「バーレーンの皇太子側には明日の午前10時にヒラリー・クリントンと会談するということでどうかと提案。もし皇太子自身に会う場合には、そのことを伝えてほしい。私たちは公式のチャンネルで連絡している」。

 

サルマン皇太子は2005年にクリントン・グローバル・イニシアティヴのために奨学金プログラムを創設した。そして、クリントン財団のウェブサイトによると、2010年までに3200万ドルを提供したということだ。

 

このやり取りは2016年8月22日にジュディシャル・ウォッチが発表した725ページにわたる国務省の文書に中に含まれており、このうちの20ページ分は、2014年12月にヒラリーが国務省に提出したEメールの中には含まれていなかったとジュディシャル・ウォッチは主張している。

 

別のやり取りでは、バンドは、ヒラリーに対して、イギリスのサッカーティームのウォルヴァ―ハンプトン・ワンダラーズ・フットボール・クラブのあるメンバーのヴィザ交付プロセスをスムースにしてくれるように依頼するものだった。このメンバーは「犯罪歴」があったために、ヴィザ交付で苦労していた。この依頼は、ケイシー・ワッサーマンからのものだった。ケイシー・ワッサーマンは、ワッサーマン財団の会長で、この財団はクリントン財団に500万ドルから1000万ドルを献金していた。

 

しかし、ヒラリーのオフィスではこの依頼を実行しなかった。アベディンは「この依頼に関しては神経質にならざるを得ない。頼むことは不可能ではないが」と答えている。

 

バンドは「それなら実行しなくてよい」と答えた。ワッサーマンの報道担当は、この依頼は実行されなかったと本誌の取材に答えている。

 

新たなEメールの公開によってクリントン財団を巡る論争が継続することになった。共和党はこれまでも長年にわたり、ヒラリーを非難してきた。民主党の大統領選挙候補となった現在、ヒラリーに対しては、国務長官在任時に「口利き、あっせん行為」に関与したと非難している。

 

ジュディシャル・ウォッチ会長のトム・フィットンは声明を発表し、その中で次のように述べている。「これらの新たに公表されたEメールによって明らかにされたのは、ヒラリー・クリントンが、クリントン財団の大口献金者たちに対して便宜を図ることで、公的地位を不当に利用したということだ。ヒラリー・クリントンとその他の人物たちが法律を破ったのかどうかを決定するために、真剣なそして政府の影響から独立した捜査が必要だ」。

 

クリントン選対はこうした批判に対して反論を行った。

 

クリントン選対の報道担当ジョー・シュワーリンは次のように語った。「繰り返しになりますが、この右翼団体は1990年代からクリントン一家を追いかけまわしてきました。この団体は間違った攻撃を行うために事実を捻じ曲げてきました。どれほどこの団体がこれらの文書を悪意をもって解釈しようとも、ヒラリー・クリントンはクリントン財団への献金のために、国務長官として活動したことはないというのが事実です」。

 

月曜日、ビル・クリントン元大統領は、「11月にヒラリー・クリントンが大統領に選ばれたら、クリントン財団は外国の企業や団体からの献金受け入れを停止する」と発表した。

 

ヒラリー・クリントンは現在、クリントン財団に関与していない。一方、ビル・クリントンと娘チェルシー・クリントンは財団のイヴェントに姿を見せている。クリントン元大統領は、ヒラリーが大統領に当選したら、財団の理事の座から退き、資金集めも行わないと述べた。

 

公開書簡の中で、ビル・クリントンは、こうした変化について、「利益の衝突(相反)の可能性に関する正当な懸念」を払拭したいと述べた。しかし、ビル・クリントンは、クリントン財団の環境保護、教育、公衆衛生に関する活動について擁護した。

 

2016年8月22日、ジュディシャル・ウォッチによってEメールが公表される前に、共和党大統領選挙候補者ドナルド・トランプはクリントン財団の解散を求め、「クリントン財団は政治史上最も腐敗した組織だ」と批判した。

 

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これはEメールに関するコリン・パウエルとヒラリー・クリントンの闘いだ(It’s Colin Powell vs. Hillary Clinton on email

 

ジュリアン・ハッテム筆

2016年8月22日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/national-security/292266-its-colin-powell-vs-hillary-clinton-on-email

 

共和党は、ヒラリー・クリントンとコリン・パウエルとの間に起きた衝突を利用して、「民主党大統領選挙候補者ヒラリー・クリントンは、国務長官時代の機密情報の取り扱いについて、FBIに対して虚偽を述べた」という彼らの主張を拡散しようとしている。

 

今週末、パウエルは、ヒラリーがFBIに対して「国務省でのEメールアカウント利用設定についてパウエルから助言を受けそれに従った」というコメントをしたと報じられたことについて、非難した。

 

ジョージ・W・ブッシュ政権下で国務長官を務めたコリン・パウエルは、今週末にハンプトンズで開催されたイヴェントに出席し、次のように述べた。「ヒラリー・クリントンの周辺の人々は私に責任を覆いかぶせようとしています。彼女がEメール設定を行ったのは、私が自分が国務長官時代にどのようにしていたかをメモに書いて送った1年も前なのです。これが真実です」。

 

共和党全国委員会委員長レインス・プリーバスは月曜日に声明を発表し、その中で、「このエピソードは、ヒラリー・クリントンがFBIに対して虚偽を述べたのかどうかという深刻な疑問を生じさせるものだ」と述べた。

 

声明の中では次のように続けて述べている。「ヒラリー・クリントンの一連の不誠実な態度は国家最高の地位を目指す候補者としては全く持って受け入れがたいものだ。彼女は真実を語ることを拒絶しており、彼女の判断力の乏しさと併せて、もし彼女が大統領に当選した場合に、どのように振る舞うことになるかを示す格好の材料となっている」。

 

ニューヨーク・タイムズ紙の記事によると、ヒラリーはFBIに対して、彼自身も国務長官在任中に私的なEメールアカウントを使っていたパウエルが、彼女がオバマ政権の国務長官就任直後に、同じようにしたら良いと助言をした、と述べた、ということだ。この説明は、先週、連邦議会に提出されたFBIによるヒラリーに対する3時間半にわたった聴取の記録の要約の中に含まれていた。ヒラリー周辺の人々は、共和党がこの要約から詳細が選択的にリークして、ヒラリーを悪く描くことを恐れている。

 

作家ジョー・コナソンは最新刊の中で、2009年6月にもう一人の国務長官経験者マデリン・オルブライトのワシントンにある邸宅で行われた夕食会にパウエルとヒラリーが招待され、その席上、パウエルがヒラリーに助言を行った、と書かれている。

 

パウエルの事務所は後に、パウエルはこの夕食会のことを記憶していないが、彼に近い人々は、パウエルが彼自身のEメールシステムが国務省の通信を改善したとするメモを送ったことは認めている。

 

先月、FBI長官ジェイムズ・コミーは議会で証言を個なった。その中で、「FBIの捜査官たちはヒラリー・クリントンがFBIに対して虚偽を述べたと結論付ける証拠を持っていない」と述べた。

 

FBIの報道官は月曜日、ヒラリーのEメールに関する捜査についてコメントすることを拒否した。

 

クリントン選対にEメールでコメントを求めたが反応はなかった。

 

これまで、ヒラリーに近い人々は、ヒラリーがニューヨークにある自宅にある私的なEメールサーヴァーを使っていたことについて、それはパウエルの前例があったからだとする説明をしてきた。しかし、ヒラリー自身も彼女の選対もEメールアカウントの設定についてパウエルから助言を受けたことを正式に認めたことはなかった。

 

しかし、パウエルとの齟齬が公になることで、ヒラリーの選挙運動はダメージを受けることになるだろう。

 

パウエルは2016年の大統領選挙ではこれまで誰に対しても支持を表明してこなかった。しかし、元国務副長官リチャード・アーミテージをはじめとするパウエルに近い人々は、ヒラリー支持を表明している。

 

パウエルは共和党員として選挙名簿には登録しており、これまでも何度か大統領選挙候補者として名前が挙がった。記憶に新しいところでは、2008年と2012年の大統領選挙ではオバマを支持した。また、ヒラリーの夫ビル・クリントンが大統領就任直後には、米軍の統合参謀本部議長を務めていた。

 

パウエルは、国家安全保障関係の大物の中で、今年の大統領選挙で誰を支持するかを明らかにしてこなかった数少ない人物の一人だ。そして、これまでヒラリーを支持してこなかった。

 

共和党大統領選挙候補者ドナルド・トランプは今回のニュースを受けて、ヒラリーを攻撃した。トランプは今回のニュースを取り上げて、有権者は彼女を信頼できないだろうと述べた。

 

トランプはフォックスの「フォックス・アンド・フレンズ」に出演して、「そうですね、よく見て下さいよ。彼女はうそつきです」と述べた。

 

トランプは続けて、「彼女はEメールに関して嘘を言いました。彼女はコリン・パウエルについて嘘を言いました。私はパウエルが怒っているのを見ました」と述べた。

 

トランプは更に「全てが嘘であり、詐欺なんです。いかさま師がやるような詐欺行為なんですよ」と述べた。

 

一連の攻撃は、よく知られたヒラリーの弱点に対するものだ。彼女の弱点は、彼女は正直ではなく、信頼できないというものだ。私的なEメールに関して何度も関心が集まることで、ヒラリーはうそつきだという主張が真実味を帯び、そのためにヒラリーはダメージを受けている。

 

月曜日には、FBIが発見した、ヒラリーが国務長官時代にやり取りをした未公開のEメール約15000通の公開が求められた。このためにヒラリーの弱点であるEメール問題はまだ続くことになる。これらのEメールと付属文書は今秋には公開されると思われるが、大統領選挙の投開票日前にどれだけのEメールが公開されるかははっきりしない。

 

加えて保守系の監視団体ジュディシャル・ウォッチが公表したEメールには、クリントン財団に関係する人々との連絡を確保するために私的なEメールアカウントが使われたことを示すものが含まれている。

 

パウエルとヒラリーは2人とも国務長官在任中に私的なEメールアカウントを使用していた。このために、今年初めには国務省の監察官による厳しい懲戒を受けた。

 

ジュディシャル・ウォッチは、5月に発表した報告書の中で、「パウエルとヒラリーは、適切な記録保存を行わずに公務を私的なEメールアカウントで行った。これは、政府職務規定に違反している」と結論付けている。

 

しかし、ヒラリーとパウエルの間には大きな違いが存在する、と事実関係に詳しい人々は声を揃える。

 

パウエルは国務長官在任中、個人のAOLEメールアカウントを使用し、補佐官や世界各地の外交官たちの連絡は個人のラップトップコンピュータで行っていた。

 

ヒラリーは、自宅の地下室にいくつもサーヴァーを設置し、個人で作ったclintoemail.comEメールシステムを使用していた。

 

パウエルとヒラリーの在任期間の間には4年という期間が存在した。

 

この期間で、国務省は職員たちに対してEメールのやり取りを記録することの必要性について警告を発していた。

 

またこの期間に、政府が認めたEメールアカウントを使用しないことで起きるサイバーセキュリティのリスクについての注意と関心が広がった。ジュディシャル・ウォッチは5月に発表した報告書の中で次のように書いている。「パウエルが国務長官だった期間、テクノロジーとディジタルの安全対策については流動的であった。その当時、国務省は情報技術に関連しての安全上の危険性について、その深刻さを認識していなかった」と書いている。

 

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FBIはヒラリー・クリントンが提出しなかった15000通のEメールを発見、あーあ(The FBI found 15,000 emails Hillary Clinton didn’t turn over. Uh oh.

 

クリス・シリーザ筆

2016年8月22日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/news/the-fix/wp/2016/08/22/the-fbi-found-15000-emails-hillary-clinton-didnt-turn-over-uh-oh/

 

ヒラリー・クリントンが私的なEメール使用を決定したことで生み出された、スピン(政治の場面で行われる偏向した描き方)や政治的立ち位置を全て取り去ってみると、次の3つの事実が残る。

 

(1)ヒラリー・クリントンは私的なEメールアカウントを公務に使った最初の国務長官だ。

 

(2)彼女はまた、私的なEメールサーヴァーを自宅に置いていた最初の国務長官でもある。

 

(3)国務省からEメールの提出を求められたとき、ヒラリーは複数の弁護士を雇い、彼らに個人的なEメールと職務に関係するEメールを分類してもらった。そして、個人的なEメールはサーヴァーから永久に消去されてしまった。職務に関係したEメールは国務省に提出された。提出されたEメールは次のように分類される。

 

2016uspresidentialelectionwashingtonpost20160822001

 

ヒラリーが消去したEメールの数は、国務省に提出したものよりも多い。彼女が雇った弁護士たちは、実際には全てのEメールを読んだわけではなかった。彼らは、キーワードを検索にかけてEメールを分類した。この過程を監視したのはヒラリーの周辺人物たちで、第三者はいなかった。このEメールの分類過程に関するヒラリーの主張の重要な点は、「私を信頼せよ」だ。詳しく見ると、私が雇った弁護士たちは、国務長官としての日常業務にまで関連するEメールをすべて発見し分類し、そして国務長に提出したと彼女は主張している。

 

本日(2016年8月22日)付のワシントン・ポスト紙に、スペンサー・シュー記者が記事(タイトル:「FBIがヒラリー・クリントンのEメール問題で15000通以上のEメールを発見した」)を掲載した。これはヒラリーにとっては痛手となるであろう。

 

FBIは、ヒラリー・クリントンの私的なEメールサーヴァーに関する1年に及ぶ捜査を行い、ヒラリーの国務長官在任期間中にやり取りされ、ヒラリーが雇った弁護士たちが公表しなかったEメール1万5000通を発見した。国務省は、月曜日の朝に連邦裁判所で、いつどのようにこれらのEメールを公表するかを議論することになるだろう」

 

「先週、国務省が保守系監視団体ジュディシャル・ウォッチに対して引き渡すと述べ、司法省もそれを承認したEメールが全て公開された。これから公開されるものも足した数は、ヒラリー・クリントンが雇った弁護士たちが業務関連だと判定し、2014年12月に国務省に提出した30000通以上のEメールの約50%にあたる」。

 

うむ、なるほど。

 

従って、FBIは、ヒラリーがやりとした約15000通の文書やEメールを発見したが、これらはヒラリーが2014年12月に国務省に提出したEメールには含まれていない。もちろん、これらのEメールや文書のうちのどれも、もしくは全部が業務関連なのかどうかもはっきりしない。これらのEメール全てが、ヒラリーと弁護士たちが消去した30000通以上のEメールの一部である可能性もある。

 

 

しかし、ジェイムズ・B・コミーFBI長官は、FBIEメール問題について捜査したところ、ヒラリーが国務省に提出しなかったEメールの中に数千通の業務関連のEメールが含まれていたことを発見したと発表したことは、私たちは既に知っている。これら15000通のEメールは、コミー長官が言及したEメールの一部であることは少なくともそうだと言えるが、国務省に2014年12月に提出されたEメールと、FBIが復元して提出したEメールとの間でどれだけ重なりがあるのかは分かっていない。

 

ヒラリー選対から出された声明の内容も、これらのEメールの内容について分かっていないことを示すものだった。

 

2016uspresidentialelectionwashingtonpost20160822002

 

明白な事。ヒラリー・クリントンは私的Eメール使用問題については、FBIのコミー長官によって潔白だとされている。コミー長官とFBIは新たに公開されたEメールについては、彼らが発見したのだから、当然知っている。その上で、ヒラリーに対する起訴が適当ではないという判断を下したのだ。

 

しかし、事態はヒラリーにとって日に日に厳しくなっている。彼女は業務関連とプライヴェートなEメールの分類は適切に行われたと主張しているが、その主張は受け入れられなくなりつつある。そして、ヒラリーは、分離作業を行わないで、多くのEメールを消去したという可能性が出てきて、彼女の透明性に関して疑義も高まってくる。これは、次期大統領に向けて他をリードしている人物にとっては、悪い印象を与えるものとなる。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 今回は世論調査に関するより細かい数字について書かれた記事をご紹介します。

 

 今回の世論調査の数字でマスコミに大きく取り上げられるのは、全体の支持率で、ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプではどちらが支持率が高いか、その差は何ポイント差かといったことです。この数字の増減で、どちらに勢いがあるとか、巻き返している、突き放しているという言い方をされます。

 

 この数字の裏には様々な調査と答えがあります。現在のところ、各種世論調査(ラスムッセンとLAタイムズ・南カリフォルニア大学共同調査を除く)では、トランプが劣勢です。しかし、下の記事で注目なのは、無党派層で、トランプの方が支持が高い(30%対23%)という結果が出ていることです。

 

 先週からのトランプの態度変更(後悔の念を示す、黒人やヒスパニックに向けてアピールをする)によって、無党派層にも支持が浸透できる可能性が出てきました。共和党予備選挙では過激なことや人種差別的なことを言って、白人男性層の支持を得て勝利を得るというのは正しい選択ですが、本選挙になれば、彼らの支持だけでは勝てません。そこの転換がようやくでき始めました。これまで未開拓の部分が多いのですから、伸びが期待できます。

 

 しかし、トランプが述べていることは、基本的に議会共和党やオバマ大統領、ヒラリー・クリントンと違わなくなってきました。そうなると、「お前は態度を変えた」「結局、取り込まれただけじゃないか」ということになって、批判を受けたり、支持を減らしたりすることも考えられます。

 

 今週と来週の世論調査の結果が出る9月1日(アメリカではレイバーデーで祝日)頃の世論調査の結果に注目です。

 

 

(貼り付けはじめ)

 

今週発表された中で重要な5つの数字(5 numbers that mattered this week

 

スティーヴン・シェパード筆

2016年8月20日

『ポリティコ』誌

http://www.politico.com/blogs/5-political-numbers-to-watch/2016/08/5-numbers-that-mattered-this-week-227220#ixzz4HsLmh3is

 

ポリティコ誌はアメリカ大統領選挙を追いかけ続けている。私たちは最新の世論調査を追いかけ、2016年の大統領選挙についてのストーリーを発表している。今週発表された中で重要な数字についてこれから論じていく。

 

2016uspresidentialelectionpoliticonumber001

ドナルド・トランプは勢いが衰えた大統領選挙運動を再び盛り上げようしている。選対幹部の更迭し、演説における言葉遣いで人々を傷つけてきたことを謝罪した。そして、本選挙に向けてのCMを放映し始めた。

 

しかし、共和党大統領選挙候補者トランプが勢いを回復させるには遅すぎるのではないか?

 

近代の大統領選挙になって、党全国大会から3週間たった時点で、支持率でリードされていた候補者が勢いを盛り返して最終的に勝利を収めたというケースはない。

 

しかし、有権者が既に投票する候補者を決めつつあるなかでも、大統領選挙の様相が根本的に変化することは不可能だということを意味するものではない。ピュー・リサーチ・センターが今週発表した最新の世論調査では、ヒラリー・クリントンが4ポイント差をつけてリードしている(ヒラリー:41%、トランプ:・37%)。この数字はこれまでの数字よりも良い数字だ。最新のハフィントン・ポスト紙の最新の世論調査の結果の平均は、7ポイントだった。

 

しかし、ピュー・リサーチ・センターの世論調査の結果は、トランプがまだまだ支持を伸ばせる余地があることを示している。トランプに投票する可能性があると答えた有権者は8%で、彼を支持する有権者は37%である。

 

全体として、有権者の51%が彼らはトランプには投票しないと決心していると答えた。6月末の調査で、トランプを支持することはないと答えたのが52%だったので、この数字はほとんど変わっていない。

 

ヒラリーもまた数字が伸びていない。彼女の支持率は41%に留まっている。ヒラリーに投票する可能性があると答えたのは8%に留まり、48%が彼女を支持することはないと答えた。

 

2016uspresidentialelectionpoliticonumber002
 

トランプは集会における参加者の数と熱心さを挙げて、自分の支持者たちは、ヒラリーの支持者に比べて、より熱心で献身的だと言いたがる。

 

しかし、世論調査の結果は彼の主張を裏付けていない。トランプの支持者の方が、数が少ないだけでなく、「自分はトランプのために投票するというよりも、自分はヒラリーに反対するために投票するのだ」と答える人が多く、熱心なトランプ支持という訳でもないのだ。

 

ピュー・リサーチ・センターは、有権者を「誰を支持したいか」で分類するだけでなく、その理由も質問している。トランプ支持者のうち、44%だけがトランプが好きだから支持をすると答え、 53%がヒラリーに反対だからだと答えた。

 

言い換えると次のようになる。有権者全体の中で、16%がドナルド・トランプに好きだから投票すると答え、20%がヒラリーに反対だからトランプに投票すると答えたのだ。

 

クリントン支持者たちの方がより熱心な支持者である。しかし、それはトランプを大きく引き離すものではない。ヒラリー支持の有権者53%が、ヒラリーが好きだからヒラリーに投票すると答え、46%がトランプに反対だからヒラリーに投票すると答えた。

 

クリントン支持の有権者は有権者全体で22%を占めている。トランプ支持の有権者は16%である。反トランプでヒラリーを支持する有権者は19%を占めていると世論調査の結果が出ている。

 

激戦州での世論調査でも同じ結果が出ている。トランプ支持者たちの方が激しく主張するし、表に出るが、その数はヒラリー支持者に比べて少ない。そして、彼らの支持理由が、ヒラリーに反対するためにトランプを支持するというものだ。トランプに反対するためにヒラリーを支持するという消極的な理由を持つ有権者の数と、消極的な理由でトランプを支持するという有権者の数を比べると、後者の方が多い。

 

キュニピアック大学は6つの激戦州で過去数週間にわたり調査を行い、各州で「ヒラリーが好きだからヒラリーに投票すると答えるヒラリー有権者の割合が、トランプが好きだからトランプに投票するというトランプ支持者の割合よりも多い」という結果を得た。

 

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トランプは「アメリカを再び偉大にする」と約束している。このメッセージが彼の支持者に受けている。トランプ支持者たちの大多数は、アメリカは悪い方向に進んでいると考えている。

 

トランプ支持者の80%は、自分たち同じような人々にとって過去50年間で物事はどんどん悪くなっていく一方だと考えている。その逆だと考えている人たちは11%にとどまった。

 

彼らは将来がより良くなるとは考えていない。トランプ支持者の68%が初来のアメリカ人の生活は現在に比べて悪くなるだろうと答え、11%だけがより良くなると答えた。

 

ヒラリーの支持者たちは、過去50年間のアメリカの前進についてより積極的に肯定している。59%の人々が、50年前に比べて、自分たちと同じような人々の生活はより良くなっていると答え、19%が悪くなったと答え、18%がほぼ同じだと答えた。

 

彼らもまたアメリカの未来の世代に関しては楽観的ではない。38%がより良くなると考え、30%が悪くなると考え、28%が同じだと答えた。

 

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トランプはアメリカがこれまでに結んできた自由貿易協定がアメリカに損失を与えてきたと主張し、共和党支持者たちもその考えに納得している。トランプは、共和党を自由貿易に反対する政党に変えた。

 

国全体では、アメリカ人の間は、これらの自由貿易協定がアメリカにとって良いことなのかどうかで考えが分かれている。ピュー・リサーチ・センターの調査では、45%が自由貿易協定はアメリカにとって良いことだと答え、47%が悪いことだと答えた。

 

トランプ、ヒラリー双方共に、TPPに反対している。一方、貿易に関して、有権者の間には分裂が存在する。ヒラリーの支持者たちは自由貿易協定について賛成している。ヒラリー支持者の59%が自由貿易協定を良いことだと答え、32%が悪いことだと答えた。

 

トランプ支持者の68%が自由貿易協定はアメリカにとって悪いことだと答え、26%が良いことだと答えた。

 

これは共和党員や共和党支持者たちに広がっている。共和党は伝統的に自由貿易を支持する政党であったが、共和党支持者たちは自由貿易に反対している。61%の共和党員と共和党支持者たちは自由貿易が悪いことだと考え、良いことだと考えているのは32%に留まった。

 

この動きは流動的だ。2015年5月、トランプが大統領選挙に出馬を表明する1か月前、共和党支持の有権者のうち51%は、自由貿易はアメリカにとって良いことだと答え、39%が悪いことだと答えた。

 

2016uspresidentialelectionpolitico005
 

金曜午後のミシガン州での集会で、トランプはアフリカ系アメリカ人を対象にした演説を行った。4年前の大統領選挙では、ミシガン州の全投票数の中で、アフリカ系アメリカ人の投票数は16%を占めた。

 

トランプは、気宇壮大な主張をする前に、「皆さんは何を失っていますか?」と質問した。そして次のように続けた。「大統領の任期4年が過ぎた後、アフリカ系アメリカ人有権者の95%は私に投票してくれるでしょう。これは間違いありません。約束しますよ。なぜなら、私はインナーシティのために結果を出しますし、アフリカ系アメリカ人のために結果を出すからです」。

 

トランプの前にはやらねばならないことが山積している。ピュー・リサーチ・センターの調査では、全国レヴェルで、アフリカ系アメリカ人の中の支持率では、ヒラリーが85%、トランプが2%となっている。

 

この数字は、異常値ではない。これまでの多くの世論調査の結果では、多くの州で黒人有権者中のトランプ支持の割合は1から2%である。

 

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世論調査:有権者の半数がトランプに投票することを考えないと答える(Poll: Half of all voters won't consider Trump

 

レベッカ・サヴランスキー筆

2016年8月21日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/292157-poll-half-of-all-voters-wont-consider-voting-for-trump

 

モーニング・コンサルトの最新の世論調査によると、有権者全体の半分が共和党大統領選挙候補者ドナルド・トランプに投票することは絶対に考えられないという結果が出た。

2016uspresidentialelectionmorningconsult001
 
 

同じ調査では、45%がヒラリー・クリントンに投票することは絶対に考えられないという結果が出た。

 

有権者の約35%がヒラリーに絶対投票すると答え、16%が少なくともヒラリーに投票することを考慮すると答えた。

 

有権者の29%がトランプに絶対に投票すると答え、16%がトランプに投票することを考慮すると答えた。

 

世論調査によると、ヒラリーとトランプの支持者の28%がリバータリアン党の大統領選挙候補ゲーリー・ジョンソンに投票することを考慮すると答えている。

 

ヒラリーに投票すると答えた人々の25%強が緑の党ジル・スタインに投票することを考慮すると答えた。トランプ支持の有権者の14%もスタインに投票することを考慮すると答えた。

 

世論調査によると、有権者の32%がジョンソンに、23%がスタインに投票することを考慮すると答えた。

 

別のモーニング・コンサルトの世論調査によると、ヒラリーがトランプを3ポイントリードしている。

 

選択肢が4人になると、支持率はヒラリーが39%、トランプ36%、ジョンソン8%、スタイン4%となる。

 

無党派の中では、23%がヒラリーを、30%がトランプを支持すると答えた。

 

一対一の選択肢になると、ヒラリー(44%)がトランプ(38%)をリードしている。

 

世論調査は2016年8月16―17日、18-20日にそれぞれ2001名を対象に行われた。誤差はどちらとも2%である。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)





 
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 古村治彦です。

 

 今回のアメリカ大統領選挙では、民主党のヒラリー・クリントン、共和党のドナルド・トランプ共に「嫌われて」います。世論調査の数字を見ると、「好き・嫌い」に関する質問については、両方とも過半数の人たちが「嫌い」と答えています。

 

 不人気な2人による大統領選挙ですが、共和党側では、共和党全国大会で正式に大統領選挙候補者に指名された後でも、トランプに対する批判が出ています。また、共和党に所属しながら、トランプを支持しないと表明する人たちも出ています。だからと言って、ヒラリーを支持するというところまで表明する人たちは多くありません。

 

 トランプが、ヒラリーが国務長官時代に私的なEメールアカウントを使っていて、消してしまったEメールについて、ロシアがハッキングしているのなら、是非提供して欲しい、と発言したことに、民主党側が怒りを持って反応するのは当然ですが、共和党側からも批判が出ています。

 

 トランプがヒラリーのEメール問題に関して、ロシアにハッキングと提供を求めた発言やロシアのウクライナ進攻とクリミア併合を非難しなかったことによって、トランプとロシアの関係について批判する記事が多く出るようになっています。

 

 先日もこのブログで書きましたが、民主党側では、こうしたトランプの対ロシア姿勢を利用して、「アメリカの大統領選挙にロシアを干渉させて良いのか」「ロシア製の大統領で良いのか」という問題提起を行っています。そして、もしウィキリークスなどがヒラリーのEメールをリークした場合でも、「これはロシアがアメリカの大統領に自分たちの都合の良い人物を決めようとして行ったのだ」という言い訳で、ダメージを最小に抑えようとするものです。これは非常に巧妙かつ狡猾なやり方です。

 

 トランプは、ヒラリーのように対中、対露で対決姿勢ではなく、交渉で問題を解決しようと訴えています。どちらが世界のために良いかとなれば、トランプの考えの方が良いに決まっています。しかし、選挙戦術として、これから共和党支持者や党員たちを超えて訴えかけねばならない時に、あまりに稚拙な失言を繰り返しているのでは、「敵を喜ばせる」だけになっているという現状があります。現在の情勢では、トランプの勝利はかなり厳しいと言わざるを得ません。

 

 そうした中で、Eメール問題と健康問題はヒラリーにとってのアキレス腱ですから、これを有効に使えるようにしておかねばなりません。今のところ、それが出来ていないということになります。

 少し古い記事ですが、以下にトランプに対する保守系からの批判を掲載します。 

 

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ジュアン・ウィリアムズ:トランプのロシア問題(Juan Williams: Trump's Russia problem

―振り返ってみると、記者会見の酷さが現実なのだ

 

ジュアン・ウィリアムズ筆

2016年8月8日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/opinion/juan-williams/290590-juan-williams-trumps-russia-problem

 

民主党全国大会が終了した時、ドナルド・トランプはカメラの前に立ち、ロシアに対して、ヒラリー・クリントンの私的なEメールをハッキングして、アメリカのマスコミに提供するように訴えた。

 

トランプは真顔で次のように明言した。「ロシアよ、もし今聞いているのなら、行方不明になっている30000通のEメールを見つけ出して欲しいと願っている。それらを提供すれば我が国のメディアから多額のお礼をしてもらえるだろう」。

 

共和党の大統領選挙候補者トランプは、オバマ政権がロシアと協力できなかったのは、ロシアのウラジミール・プーティン大統領がオバマ大統領を嫌ったからだと述べた。トランプは、「プーティンはオバマ大統領を“間抜け(nerd)”と呼んでいる」と主張した。

 

その後、激しい批判に晒されたトランプはその批判をかわそうと、アメリカの大統領選挙に外国に干渉させようとしたことは「軽い冗談」だと言い訳した。しかし、トランプの発言は、アメリカの捜査官たちが、ロシアはアメリカの法律を破り、民主党全国委員会のコンピューターをハッキングした、と「確信している」と述べた直後という最悪のタイミングで出された。

 

これ以降、トランプはロシアと協力したいという希望を明らかにし、「ロシアと友好的になることは、悪いことではないだろ?」と述べた。トランプは、ロシアがウクライナに進攻し、領土の一部を奪取したことを批判することを拒否した。その前には、トランプは、ロシアの進攻の恐怖の中で存在しているNATO加盟諸国が攻撃された場合に、アメリカがそれらの国々を防衛する必要があるという考えを否定した。トランプは、主要政党の大統領選挙候補者にとっては伝統的に行われている、アメリカの最高機密情報に関するブリーフィングを受けようとしている。

 

トランプが無条件のロシアへの支持とロシアの大衆煽動的な指導者への無条件の好意を示していることを考えると、国家機密をトランプに教えることは大変危険なことだ。

 

最大の危険はトランプとトランプ陣営にいるスタッフのほとんどは、ロシアとプーティン大統領にアメリカの国家機密を教えてしまうだけのお金に関わる理由を持っているということだ。彼らはそのためにはアメリカの国益を犠牲にするかもしれないのだ。

 

8年前、ドナルド・トランプの息子ドナルド・トランプ・ジュニアは「トランプ家の財産においてロシアはその規模に似合わないほど多くの面でかかわりを持っている」と発言した。

 

『ワシントン・ポスト』紙のコラムニストであるジョージ・ウィルは最近、「トランプとプーティンやプーティンの側近たちとの間の金銭上の深いかかわり合いは、トランプが個人のそしてビジネスの税金情報の発表を拒否したことで明白なものとなった」と書いた。

 

『ポリティファクト』誌によると、トランプ選対の責任者ポール・マナフォートは、「ウクライナの親ロシア派の政治家たちと長きにわたる深い関係にある」ということだ。マナフォートはまた、プーティンと近いロシアの富豪たちの投資の管理をしていたこともある。

 

国防情報局元長官で退役中将のマイケル・フリンは、トランプの顧問である。彼は、ロシア政府が出資している『ロシア・トゥディ』紙とテレビ局RTの発足を祝う式典に出席し、プーティンと一緒に写真に収まっている。

 

昨年12月、フリンはRTのインタヴューに答え、その時のやり取りがRTのうウェブサイトに掲載された。この時、フリンは、アメリカとロシアは協力してISISを打倒し、シリアの内戦を終わらせるべきだと述べた。

 

トランプのロシアに関する顧問として、実業家のカーター・ペイジがいる。彼はロシアと大きなビジネスを展開している、と報じられている。

 

今年7月中旬、『ワシントン・フリー・ビーコン』誌の記者モーガン・チャルファントは、「先週、ペイジはモスクワを訪れ、アメリカと西洋各国を批判した。彼はアメリカをはじめとする国々は、民主化、格差、腐敗、体制転換といった考えに偽善的に固執していると述べた」と書いている。

 

ペイジは今年3月にブルームバーグ社とのインタヴューの中で次のように語っている。「私が知っている人たちや一緒に仕事をしている人たちの多くが経済制裁政策によって大きな影響を受けている。アメリカによるロシアに対する経済制裁の解除によって、状況は好転すると思う」。

 

トランプ陣営はこのような親露的な態度を持っており、共和党全国大会前に、共和党政策のある点に変更を加えた。ワシントン・ポスト紙は次のように報じた。「トランプ陣営は先週、新たに採択される共和党の政策綱領において、ロシアと反対勢力と戦うための武器をウクライナに提供しないという点を明確にするために裏で活動していた。この考えは、ワシントンにいる共和党の外交政策部門の幹部や専門家たちのほぼ全ての考えと衝突するものだ」。

 

トランプ自身がかつて、オバマ大統領がISに対して同情心を持っているとほのめかし、「何かが進行している」と述べたことがある。

 

各種世論調査の結果から、アメリカの人々はトランプとプーティンやロシアとの奇妙な関係について把握していることが分かる。

 

先週のYouGovの世論調査では、54%のアメリカ人が、その中には無党派の48%が含まれているが、トランプがロシアに対してヒラリーのEメールをハッキングするように求めたことを「不適切」だと考えていることが分かった。

 

この世論調査では、40%のアメリカ人が、そして無党派のうちの38%が、トランプは「ロシアと親しすぎる」と考えていることが分かった。

 

各種世論調査では、前国務長官であるヒラリーが、外交政策ではどちらがより良い大統領になるかという質問に関して、トランプに対するリードを広げている。

 

先週のCNNORCの世論調査では、59%の有権者がヒラリーの方が外交政策に関して信頼が置けると答えている。一方、トランプへの信頼は36%であった。

 

ヒラリーは8日前に「フォックス・ニューズ・サンディ」で放送されたインタヴューの中で、トランプのプーティンに対する好意についての疑問を呈した。

 

ヒラリーは次のように発言している。「トランプは、ロシアに対してアメリカのEメールアカウントに侵入してハッキングをするように求めている。また、プーティンに対して過剰な賛辞を送っている。また、ロシアの望むような外交政策に対する姿勢を表明している。こうした点からも、私たちは、トランプが私たちの大統領であり最高司令官の地位に就くのにふさわしい人物ではないという結論に達せざるを得ない」。

 

数日後、オバマ大統領は、イスラム教徒だった戦死した米軍将校の両親に関するトランプの発言について、「これらの発言を聞いて、私は共和党の大統領選挙候補者が大統領に不適格だと思わざるを得なかった」と述べた。

 

オバマは次のように述べている。「トランプは大統領になる準備が全くできていない。この一点だけで、“もうたくさんだ”ということになる」。

 

有権者にとって、ポイントは、トランプのロシアとの疑わしい関係である。

 

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共和党の専門家50名:トランプは国家安全保障を「危機に晒す」(50 GOP officials: Trump puts national security ‘at risk’

 

リサ・へーゲン筆

2016年8月8日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/top-republican-gop-50-officials-warn-donald-trump-national-security-risk-dangerous

 

共和党の国家安全保障政策専門家50名が月曜日に、書簡を発表し、その中で、ドナルド・トランプは大統領となるための経験が不足しており、国家の安全を危険に晒すことになると訴えている、と『ニューヨーク・タイムズ』紙が報じた。

 

ジョージ・W・ブッシュ政権とリチャード・ニクソン政権に参加した専門家たちが署名した公開書簡では、彼らは誰もトランプには投票しないだろうと書かれており、その理由として、「私たちは、トランプが危険な大統領になるであろうこと、そして、彼が我が国の国家安全保障と福利を危険に晒すであろうことに思い至ったからだ」としている。

 

公開書簡には次のように書かれている。「トランプ氏は大統領にふさわしい人格、価値観、経験を備えていない。トランプは自由世界の指導者としてのアメリカの道徳的権威を弱めてしまっている」。

 

更には次のように続いている。「トランプはアメリカ憲法、アメリカの諸法律、アメリカの諸機関の根底にある信条についての基本的な知識を持っていない。アメリカの信条とは、宗教的寛容、表現の自由、司法の独立である」。

 

専門家たちは「トランプが当選したら、アメリカ市場で最も無謀な大統領になるだろう」と予測している。

 

署名した人々には、CIAと国家安全保障局の長官を務めたマイケル・ヘイデン、ブッシュとオバマ両政権で国土安全保障省長官を務めたマイケル・チャートフ、ブッシュ政権の国家情報局長官を務めたジョン・ネグロポンテ、ブッシュ政権で国土安全局長官を務めたトム・リッジがいる。また、激戦州のひとつペンシルヴァニア州の元州知事、アメリカ通商代表、国家安全保障問題担当補佐官や大使を務めた人々もいる。

 

これまで共和党の幹部クラスの中には、公にこの秋にトランプには投票せず、民主党の候補者ヒラリー・クリントンを支持すると表明する人たちが出ている中、書簡が発表された。

 

月曜日、レズリー・ウェスティンは大統領選挙でヒラリーに投票すると述べた。ウェスティンはジョージ・W・ブッシュ大統領時代のホワイトハウス連絡部長兼副補佐官を務めた。

 

『ニューヨーク・タイムズ』紙は、ヘンリー・キッシンジャー、ジョージ・シュルツ、ジェイムズ・ベイカー、コリン・パウエル、コンドリーザ・ライスの国務長官経験者たちが公開書簡に署名をしていないと指摘している。トランプは、数カ月前に、キッシンジャーとベイカーに会っている。

 

(終わり)











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 古村治彦です。

 

 先週水曜日に発表されたトランプ選対最高幹部の交代で、選対委員長の地位はそのままで実権は剥奪されたポール・マナフォートが正式に委員長を辞任しました。彼がウクライナの親露派の政党のために活動し、秘密裏に資金を受け取っていたということを司法省とFBIが捜査を始めたというニュースが流れてすぐのことでした。

 

 トランプ陣営では、運営責任者として、ロサンゼルスに本拠を置くインターネット上のニュースサイトであるブライトバート・ニュース社のスティーヴ・バノンが迎え入れられ、選対委員長として、上級顧問であった、ヴェテランの世論調査専門家ケリアン・コンウェイが昇格しました。

 

 この人事異動の後、トランプはこれまでのスタイルを一変させて、プロンプター(透明なプラスティック版に演説原稿を写し、あたかも原稿を読んでいないかのようにして演説ができる機械)に移された演説原稿から目を離すことなく、演説を行い、その中で、これまでの自分の言動で人々を傷つけたことを後悔していると語りました。

 

「私は態度を変えない、私は私だ(I do not pivot. I am who I am.)」と最近まで言っていたことを考えると、これは大きな変化です。トランプが本気で本選挙に勝ちに来ていることを示すものです。彼は過激な発言で予備選挙を勝ち抜きましたが、このやり方では本選挙は勝てません。本選挙では無党派や政治に関心が薄い人々にもアピールをしなければなりませんが、トランプの過激な発言や失言が彼らにアピールすることは少ないからです。

 

 これまでの選対幹部たちは、トランプがやりたいようにやることを止められなかったのでしょう。トランプがやりたいようにやる→失言が出る→支持率が下がる→何とかしろと怒鳴りつける→それにはあなたが変わらねばならないと言えない→トランプがやりたいようにやる、という悪循環が続いていたのでしょう。

 

 そこに、以前にご紹介した、大富豪のマーサー父娘が息のかかったプロたち、バノンとコンウェイを選対に入れ、「本気で勝ちたいのなら、私たちの言う通りにしなさい。そうしないとあなたはアメリカ史上最低最弱の負け犬になりますよ」と説得したのでしょう。トランプが怒鳴ろうがどうしようが、「トランプを勝たせろ」という命令を受けたプロは、トランプの意向など無視するでしょう。

 

 トランプがプロンプターにしがみついている限り、支持率の低下は止まり、少しずつ上昇していくでしょう。これがいつまで我慢できるか分かりませんが、残り80日くらい我慢できるという判断もあるでしょう。

 

 しかし、同時に、トランプの分身のような人物であるバノンを入れて、急に態度を変えたことで、トランプに対しては「態度を変えた」「うわべだけで本質的には何も変わっていない」という批判も出てくるでしょう。

 

 私は、今回の人事異動では、コンウェイの登用が重要なのだと考えます。態度の軟化は、女性有権者に対するアピールでもありますし、「不良がちょっと改悛の情を示すと、更生したということになって、良い人扱いになる(元々真面目にしていた人にはこういう効果はない)」ということになります。これが実際に起きている訳ですから、コンウェイの存在がとても大きいことが分かります。

 

 トランプの選挙運動がどれほど変化していくか、これから注目です。

 

(貼り付けはじめ)

 

ブライトバート社会長の登用はトランプにとっての最悪の結末を迎えることになる(Hiring of Breitbart exec spells utter doom for Trump

 

マット・マッコウィアック筆

2016年8月17日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/pundits-blog/presidential-campaign/291748-hiring-of-breitbart-exec-spells-utter-doom-for-trump

 

ブライトバート・ニュース社会長スティーヴ・バノンを新しい選対運営責任者に登用したことは喜劇を超えている。

 

バノンは「悪意に満ちた人物で、弱い者いじめをし、独裁者で、長広舌の攻撃をしたがる」人物だ。これは、ブライトバート社で働いていたある人物がバノンについて述べたことである。

 

簡単に言うならば、ドナルド・トランプは自分の分身のような人物を登用したと言える。

 

バノンはブライトバート・ニュース社をトランプ支持のスーパーPACのようにすることで、ブライトバート社の活動をダメにしてきた。煽情的な見出しとトランプに都合の良い架空の話ばかりを掲載してきた。亡くなったアンドリュー・ブライトバートが掲げた、鋭くて、骨太な反エスタブリッシュメントな考えは消え去った。

 

ドナルド・トランプは壁に囲まれた部屋の中にいるようなものだ。

 

状況は州を追うごとに悪化している。

 

ヴァージニア州とフロリダ州のような重要な州での情勢は、トランプにとって劣勢だ。これらの州で、トランプは選挙運動を行っていない。選挙運動事務所も持っていない。夏のオリンピックが終わるこの時期になって、ようやく今週末にテレビコマーシャルを開始した。

 

私は、ケリアン・コンウェイが選対責任者として何ができるのか、分からない。コンウェイは技術を持ち、尊敬を集めている選挙運動と世論調査の専門家である。また、女性に対するメッセージに関する専門家でもある。

 

しかし、トランプはこれまで何カ月も全ての助言を拒否し、穏健な態度に変更することを拒絶した。また、選対に選挙のプロを入れることも拒絶した。そして、大統領選挙候補者として成長することも、共和党をまとめることも拒否した。

 

バノンを起用することで、選対委員長であるポール・マナフォートには不信任を突き付けた格好になる。マナフォートは、トランプを予備選挙の時の心構えから変えさせて、6500万から7000万票の得票が必要な本選挙の態度に刺せようと試みて、失敗した。

 

バノンのような制御不能な人物を起用することで、共和党内部では、本選挙でぼろ負けするので、連邦下院と連邦上院の選挙に集中すべきではないかという議論が沸き起こっている。

 

トランプはさらに多くの支持者集会を行い、更に攻撃的になりたいと望んでいる。今のやり方をさらに加速させても、機能しない。

 

トランプはおべっかを使う人間を周囲に置きたがる。阿諛追従によって、トランプのエゴを満足させ、彼の馬鹿さ加減がさらに進むのだ。

 

コーリー・ルワンドウスキーを選対委員長の座から追い出した後、トランプは役にも立たない助言を求め続けた。

 

トランプの子供たちは、ルワンドウスキーが選対に戻ることを認めないだろうから、バノンの起用は次善の策ということになる。

 

バノンが回答だというのなら、その答えが導き出される設問が何なのかを想定できない。バノンは、彼は、予算と人事を含む選挙運動の全てを取り仕切っていると語っている。

 

トランプ陣営と共和党の利益は全く異なるものになっている。

 

今回の人事異動は、トランプが候補者として態度を改めること、地滑り的な惨敗を避けることを願っていた人々に失望を与えるだろう。

 

ドナルド・トランプとスティーヴ・バノンは、選挙戦後に新しいメディア帝国を始めることになるだろう。彼らはこのメディア帝国を使って巨額の金を生み出す方法を見つけることだろう。

 

詐欺師は常に勝利するのだ。

 

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新しいトランプ選対に会ってみよう(Meet the new Team Trump

 

ベン・カミサー筆

2016年8月17日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/campaign/291715-meet-the-new-team-trump

 

各種世論調査で共和党大統領選挙候補者ドナルド・トランプは劣勢になっている。そこで、トランプはブライトバート・ニュース社会長と、テッド・クルーズ、ジャック・ケンプ、ニュート・ギングリッジのために働いた経験を持つ共和党のヴェテランの世論調査専門家を選対に入れた。

 

ブライトバート社会長のスティーヴン・バノンはトランプ選対の責任者となった。これまでポール・マナフォートが率いていた選対の責任者にバノンが就任したが、マナフォートは選対委員長の座に留まった。

 

世論調査の専門家ケリアン・コンウェイはトランプのアドヴァイザーをしていた。そして今回、トランプ選対の選挙運動責任者となった。コンウェイは、最近の3回の大統領選挙の共和党予備選挙で活動し、トランプの副大統領候補となったインディアナ州知事マイク・ペンスも顧客だった。

 

2人の選対入りはトランプにとって重要である。トランプは激戦州のいくつかで2桁の差をつけられており、8月は最悪の月になった。

 

今回の人事異動は、トランプが選挙運動を再スタートさせたいという希望を反映している。特にバノンを起用したことは、約80日を残す選挙期間中に無制限に何でもやるという意思を示している。

 

昨年ブルームバーグが掲載したプロフィールの中で、バノンは「アメリカで最も危険な政治活動家」と書かれていた。バノンは右翼系のニュースサイトを率いていた。このサイトでは、トランプを支持し、その他の共和党員たちを攻撃していた。そのやり方は恐れ知らずであった。特に連邦下院議長ポール・ライアン(ウィスコンシン州選出、共和党)は激しく攻撃された。

 

ライアンの事務所は、バノンの起用についてのコメントを拒否した。

 

バノンは民主党支持の家に生まれた。そして、海軍将校になった。彼は、ジミー・カーター元大統領がアメリカを危機に晒すと考え、レーガン大統領と共和党を支持するようになった。

 

軍務に就いた後、バノンはハーヴァード大学経営大学院に進み、その後、1980年代末にゴールドマン・サックスに入社した。そして、1990年に数人の同僚と自分の投資銀行を設立した。ブルームバーグ社のプロフィールによると、エンターテイメント産業で資産の一部を形成したということだ。バノンは、キャッスル・ロック・エンターテイメント社が制作した5つのテレビ番組の権利を保有している。その中でも有名なテレビ番組は「サインフェルド」だ。

 

自身の投資銀行を売却した後、バノンはハリウッドに移り、映画製作に携わった。この時に、アンドリュー・ブライトバートに出会った。アンドリュー・ブライトバートはブライトバート・ニュース社の創設者だ。ブライトバートは2012年に死亡した。バノンは、ブライトバート社の再スタートのために投資家から資金を集めた。

 

バノン率いるブライトバート社は、徹頭徹尾トランプ支持でこれまでやってきた。

 

ブライトバートは常にトランプを擁護してきた。最近では、トランプが「オバマ大統領はISの創設者だ」という発言を擁護し、それを発展させた内容の記事を幾つも掲載している。

 

トランプに対する支持に関しては、ブライトバート内部でも論争が起きていた。

 

ブライトバート・ニュース社の記者だったミッシェル・フィールズと同僚たちは今年初めに会社を辞めた。フィールズはある記者会見の後に、当時のトランプ選対委員長のコーリー・ルワンドウスキーに腕を掴まれ、引き倒されたと訴えた。それに対して、会社の経営陣は彼女の側に立って守ることをしなかった。そのためにフィールズと同僚たちは抗議のために辞任した。

 

ブライトバートは最初の内、口論についての記事を掲載していたが、すぐに、フィールズの訴えの信憑性について疑問を呈する記事を掲載した。

 

バノンは保守系の監視団体がヴァンメント・アカウンタビリティ・インスティテュートの理事を務めている。この団体の代表がピーター・シュワイザーで、シュワイザーは衝撃的な本を書いた。そのタイトルは、『クリントン・キャッシュ』で、クリントン家の私的な財産とヒラリー・クリントンの国務長官としての決定との間にある疑いについて詳しく書かれた本だ。

 

しかし、バノン率いるブライトバート社は共和党の政治家たちを厳しく追及している。

 

8月の最初の9日間で、ブライトバート社はライアン下院議長を攻撃し、彼の予備選挙のライヴァルを褒める記事を少なくとも15本掲載した。ライアンは予備選挙で70%の支持を集めている。

 

ブライトバートは、共和党内部のトランプの反対者たちを批判した。今年の初め頃、ブライトバートは、トランプに反対する共和党員で、トランプに対する反対運動を組織しようとしたビル・クリストルを「裏切り者のユダヤ人」と呼んだ。

 

クリストルは水曜日、「ブライトハートは、“右翼の非寛容な卑劣なニュース”と改名すべきだ」と反撃した。

 

バノンは共和党にとってのアウトサイダーであるが、トランプはインサイダーにも助けを求め、コンウェイを登用するに至った。

 

コンウェイが初めてトランプに会ったのは10年前のことだった。ニューヨークにあるトランプ・ワールド・センターで行われたコンドミニアムの自治会でのことであった、と今年初めにワシントン・ポスト紙が報じた。

 

コンウェイは元々弁護士をしていたが、世論調査の専門家に転身した人物だ。そして、世論調査会社を設立し、子会社として、女性消費者について研究するウィメン・トレンド社を起ち上げた。

 

コンウェイはこれまで共和党内の様々な政治家や候補者のために活動してきた。その中にはジャック・ケンプやダン・クエール元副大統領も含まれる。

 

2008年の大統領選挙では、元連邦上院議員(テネシー州選出)のフレッド・トンプソンのために働いた。2012年では、元連邦下院議長(ジョージア州選出)ニュート・ギングリッジ、2016年では、クルーズ支持のスーパーPAC「キープ・ザ・プロミス」のために働いた。

 

テッド・クルーズ支持のスーパーPACを率いていたコンウェイはトランプを攻撃していた。

 

2016年1月、コンウェイは新たに放映を始めるCMに関する声明を発表し、その中で、トランプが過去に中絶を容認する発言をしたことを攻撃した。

 

「保守派と共和党は選択肢しなくてはならない。ヒラリー・クリントンと同じ考えを持つ人物か、それともロナルド・レーガンと同じ考えを持つ人物か?」とコンウェイは声明の中で書いている。彼女は、民主党の大統領選挙候補者となったヒラリーとトランプを同じだと切って捨てた。

 

コンウェイは、アメリカ人の多くが中絶を「野蛮な行為」と見なすようになって、「15年」も経っていないとも書いている。この点ではトランプと考えが違っている。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)







 

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