古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

2018年04月

 古村治彦です。

 

 今回は少し古い記事になりますが、「金正恩は何をどう考えるか」ということをテーマにした記事をご紹介します。

 

著者のロバート・マニングはジョージ・W・ブッシュ政権下で国務省に入り、2001年から2004年まで国務次官特別顧問を務め、2004年から2008年まで国務省政策企画局に勤務しました。現在はアトランティック・カウンシルの上級研究員を務めています。

 

 マニングは金正恩の意図について、「何とか核兵器を全て放棄することなく、安全保障を得て、経済成長をする」という「二兎追う」作戦を実行しようと考えているとしています。

金正恩は、経済発展のために支援を得つつ、アメリカに見つからないようにして、核兵器とミサイルを隠し持ちたいと考えているとしています。そのために核開発の「凍結(これ以上進めない)」という言葉を使って、「進めないけど、これまでの成果は保持する」

 

しかし、マニングの論の進め方で肯定しにくい部分は、金正恩が核兵器を隠し持つということを選択するのかということです。今回、うまく合意を結んだとして、もし核兵器を持っているということが明らかにされてしまえば、何の言い訳も聞かれることなく、金王朝は「お取り潰し」となります。アメリカの国家安全保障上の脅威と認定されている核兵器とミサイルを、アメリカを欺いて隠し持っていたとなれば、問答無用ですし、これではロシアも中国も肩入れできません。

 

 アメリカが考えるとすれば、北朝鮮を信頼することなく、自分たちの利益を得るということです。それは、核兵器とミサイルの完全放棄とその保証ということになるでしょう。この保証を中国とロシアに担当させて、もし北朝鮮が破れば(ごまかして核兵器とミサイルを秘密裏に保持する)、中国とロシアが厳罰を下し、それで足りなければアメリカが攻撃するということになるでしょう。

 

 しかし、金正恩が米朝首脳会談の実現と成功を望むながら、核兵器とミサイルの完全放棄は条件となります。ですから、ここで下手な小細工をしてごまかしても、次に「核兵器とミサイルを持っている」ということを明らかにしたら、その時点で、アウトということになります。

 

 

 ここで考えてみたいのは、そもそもどうして北朝鮮は、巨額の資金と膨大な労力をかけて核兵器を保有することになったのか、ということです。核兵器で脅しても周辺諸国はお金をくれる訳ではなく、かえって厳しい経済制裁を科されるということになりましたし、韓国は核兵器を持っていない訳ですから、持つ必要があったのかどうかということになります。

 

 結局、これは、下の論文にもありますが、「アメリカと合意を結んでも、それは破られてしまう。だからリスクヘッジのために持つしかない」ということが最大の動機ということになります。そう考えると、そもそも論として、アメリカが海外に過度の介入を行い、気に入らない政権を転覆させた来た、という歴史が生み出した、「自業自得」のもの、バックラッシュということになります。

 

 

 

(貼り付けはじめ)

 

ある独裁者の頭の中:金正恩の思考プロセスを把握してみたい(Inside the mind of a dictator: trying to grasp Kim's thought process

 

ロバート・マニング筆

2018年3月16日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/opinion/national-security/378769-inside-the-mind-of-a-dictator-trying-to-grasp-kims-thought-process

 

北朝鮮の李容浩外相はスウェーデンを電撃訪問した。米朝間に国交がないためスウェーデンは平壌においてアメリカの利益を代表している。これはトランプ大統領と金正恩委員長による米朝首脳会談の実現に向けた計画の遂行が行われており、李外相の訪問はその初期段階であることを示している。この訪問でアメリカ政府と韓国政府の中で、何が出来て、何ができないかについて議論が沸騰している。

 

このだらだらと続くバブルに欠けているのは、米朝最高首脳会談を成功させる、もしくは失敗させることになる2つの重要な疑問である。

 

おそらく最も重要な疑問は、「金正恩は“鄧小平になる瞬間”を持てるのだろうか?」というものだ。これまでにないほどの厳しい経済制裁で北朝鮮の経済が破壊され始めている事態に直面し、エリートたちに対して褒賞を与える力が削がれている。金正恩は中国が経済制裁を支持し、トランプが軍事攻撃を行うという脅しを行っているということを認識した。金正恩は、並進路線(Byungjin、核武装力と経済発展)を考え直さねばならない状況に追い込まれている。

 

金正恩が自分の中で自己と行う対話の論理は次のようなものとなるだろう。

 

「私は圧力を受けている。並進路線(Byungjin、核武装力と経済発展)は危機に瀕している。私は現在34歳だ。私はこれから30年から40年は生きていたい。バスケットボールとウィスキーのシングルモルトが好きだ。私はより発展した、ハイテクの統一された朝鮮半島を見てみたい。統一された朝鮮半島は緩やかな連合となるだろう。その中に私の占める位置が存在する」。

 

「経済改革と共産主義に基づく権威主義的支配は、中国とヴェトナムで機能している。両国はそれで豊かになっている。私は両国の誤りを避けることが出来る。私は韓国政府をうまく利用することが出来るだろう。それで私は支配し続けることができる」。

 

「しかし、私がその代償として支払わねばならないのは私が持つ大量破壊兵器をすべて放棄するというものだ。“ビッグバン”のような衝撃的な合意によって中国が改革開放で進めた経済改革が我が国でもすぐにスタートするだろう。そして、経済成長は私の統治の正統性を担保するのに十分なものとなるだろう」。

 

「北朝鮮と韓国が平和条約に向けて前進し、平和条約締結後にアメリカが朝鮮半島に関わらなければ、私に核兵器など必要ないのだ。アメリカは私の持つ核兵器の所在地全ては知らないはずだ。私は核弾頭の1発か2発かはアメリカが見つけられない場所に保管できるだろう」。

 

「平和条約締結と核兵器を隠し持つことは試してみる価値がある。私は南北首脳会談で核開発の凍結を提案できる。文在寅大統領は核開発の凍結を非核化に向けた“一時的なステップ”と考えるはずだ。しかし、私はこの条件として国連による制裁の解除を主張できる」。

 

「このようにして圧力を解除できれば、我が国はパキスタンのような通常国家として受け入れられるだろう。そして、核開発の凍結以上よりも先に進まないための言い訳を探すことが出来る」。

 

「アメリカが反対するならば、少しずつ譲歩する。私の核兵器と大陸間弾道ミサイルを放棄するための代償を釣り上げることが可能だろう。エネルギー援助と現金がとりあえずすぐに必要だ。ロシア極東からの水力発電も必要だ。北東アジア地域における統一的なエネルギー供給システムの一環として石油と天然ガスのパイプラインが必要だが、北朝鮮国内にそれらを通して、賃貸料を受け取ることもできるはずだ」。

 

「2005年の合意の時と同様、私は米朝関係の正常化を要求できる。そして、アメリカ、ロシア、中国の3か国による安全保障も求めることが出来る。これによって、リスクを減らし、外国からの投資に門戸を開くことが出来る。私は朝鮮半島再建基金のために200億ドルを要求し、それを中国が主導する「一帯一路計画(BRI)」の一環であるアジアインフラ投資銀行に要求する」。

 

このようなシナリオはある種の賭けを行い、中国型の改革を行うことがあれば実現する可能性がある。しかし、アメリカと北朝鮮が誠心誠意話し合い、合意に達するにしても、2つ目の疑問がこのシナリオの実現可能性を低めてしまう。

 

それは「いかなる合意が出来たとしてもその実行をどのように検証するのか?」というものだ。

 

北朝鮮は極秘のうちに1990年代に高濃縮ウランプログラムをスタートさせた。これは1994年の合意をアメリカが破ることを想定してそのための備えとしてであった。また、北朝鮮は極秘のうちにシリア国内に核関連施設を建設した。そのため、北朝鮮政府に対する信頼はほぼゼロだ。トランプ大統領は、北朝鮮は、冷戦期におけるレーガン大統領のゴルバチョフへの対応と似た対応を取ることになるだろう。それは、信頼はしないが、検証はする、というものだ。

 

北朝鮮がこれまで繰り返してきた違反行為や虚偽はこの際脇に置いておく。それでもまだ大きな問題が一つ残る。私たちは金正恩がどれくらいの数の核兵器を保有しているのか正確に知らないし、それらがどこにあるかを正確に把握していない。私たちは中距離、長距離の移動式ミサイルがどれほど存在しているのかを正確に知らないし、どの山やトンネルに隠されているのか分かっていない。高濃縮ウラン施設の数と場所についても正確に把握していない。

 

通常であれば、合意に至るまでに、北朝鮮政府は国際原子力機関(IAEA)に核兵器プログラムの詳細を明確にし、報告しなければならない。IAEAは核関連施設を監視し、調査を実施することになる。しかし、徹底した調査を行うとしても、金正恩が核兵器とミサイルを完全に放棄しどこか見つけられない場所に隠してなどいないと確信を持てる人はいるだろうか。

 

これらの合意は全て完璧という訳にはいかない。アメリカ政府は北朝鮮政府がごまかしを行うということを前提にしなければならない。しかし、アメリカはどれくらいのごまかしまでは許容できるだろうか、私たちが知らないことをどのように私たちは知ることが出来るようになれるだろうか?

 

現在のところ、金正恩が戦略的な選択をし、「鄧小平となる瞬間」を持つという考えには論拠となる証拠はあまり存在しない。今年1月1日の演説以降の金正恩の行動はこれまでになく合理的だ。アメリカ政府は「金正恩が合理的に行動している」という前提についてテストをしてみる必要がある。

 

武器の放棄の確認をどのように行うかという問題については、私は考えつかないが、アメリカが許容できる実行可能な形式が存在する可能性はある。これまで文中で提起した疑問に答えを出せる人はノーベル平和賞を受賞できるだろう。そのほかの問題は比較してみて大した問題はないということになる。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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今の巨大中国は日本が作った

※私の仲間である石井利明さんのデビュー作『福澤諭吉フリーメイソン論』が2018年4月16日に刊行されました。大変充実した内容になっています。よろしくお願いいたします。

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(仮)福澤諭吉 フリーメイソン論

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 古村治彦です。

 

 今回は少し遅くなりましたが、マイク・ポンぺオCIA長官(次期国務長官)が復活祭の時期(4月第一日曜日)に北朝鮮を訪問し、北朝鮮の最高指導者金正恩朝鮮労働党委員長と面会したということを伝える記事をご紹介します。

 

 今年の3月にいろいろな事態が急速に動き始め、韓国大統領特使が北朝鮮を訪問し金委員長と会談、この特使がアメリカを訪問し、ドナルド・トランプ大統領に北朝鮮訪問について報告し、その際に金委員長からの米朝首脳会談の提案を受け入れました。3月末には、金委員長が指導者となって初めての外遊として中国・北京を訪問し、習近平国家主席と会談を持ちました。また、習近平国家主席が近々北朝鮮を訪問するという報道も出ました。

 

 こうした中、米朝首脳会談準備でアメリカ側の指揮を執るポンぺオCIA長官(次期国務長官)が4月上旬に北朝鮮を極秘に訪問し、金委員長と会談を持ったということが報じられました。北朝鮮側は米朝首脳会談に真剣に取り組んでいることが分かります。

 

 韓国は北朝鮮との戦争状態を終結し、平和条約を結ぶ方向で動いています。しかし、ここで重要なのは、中国とアメリカの意向です。朝鮮戦争では中国とアメリカがそれぞれ北朝鮮、韓国に味方をして多くの犠牲を払いました。ですから、朝鮮半島に関してはアメリカと中国の意向が重要となります。

 

 中国と韓国は直接交渉と平和条約締結の方向で動いています。北朝鮮もこの方向で進んでいます。一方、日本は「交渉のための交渉はしない」として、経済制裁など圧力を強化して北朝鮮の屈服を図るという主張です。交渉と圧力、2つの方向性があり、トランプ大統領はこの2つをうまく手綱を引いたり、緩めたりしながら、事態を進めているという感じです。

 

 日本は北朝鮮に対する吠え掛かり係をやらされ、嫌われている状況で、それにプラスして、アメリカ側は日本との二国間経済交渉で日本の対米黒字(アメリカの対日赤字)を削減しようとしてきています。日本はこれらを唯々諾々と呑むしかありません。主要なアクターになれないということを日本のメディアではあまり報じられていませんが、その現実をしっかりと見据えておかねば、上京を大きく誤って認識することになるでしょう。また、大いなる内弁慶として、外側から見れば滑稽な姿を晒すことになるでしょう。すでに十分に晒しているように思われますが。

 

 

(貼り付けはじめ)

 

ポンぺオCIA長官と北朝鮮の最高指導者金正恩委員長と復活祭の週末に会談を持った(CIA Director Pompeo met with North Korean leader Kim Jong Un over Easter weekend

 

シェイン・ハリス、キャロル・D・レオニング、デイヴィッド・ナカムラ筆

2018年4月17日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/politics/us-china-trade-dispute-looms-over-trump-summit-with-japans-abe/2018/04/17/2c94cb02-424f-11e8-bba2-0976a82b05a2_story.html?noredirect=on&utm_term=.ca9a46445049

 

マイク・ポンぺオCIA長官は4月上旬の復活祭(イースター)の週末にドナルド・トランプ大統領の特使として北朝鮮を極秘訪問し、北朝鮮の最高指導者金正恩委員長と会談を行った。本紙の取材に対して、ポンぺオ長官の訪問について直接の知識と情報を持つ2人の人物が答えた。

 

上記の2名の人物は米朝交渉の高度の秘密性を理由にして匿名を条件にして本紙の取材に応じた。2人は、「トランプ大統領の信頼厚い政権幹部とならず者国家の権威主義的な元首との間で、通常では考えられない会談が行われた。これは、北朝鮮の核兵器開発プログラムをテーマとするトランプ大統領と金委員長との直接対話に向けた地ならしの一環だ」と述べた。

 

この秘密の任務はこれまで報道されてこなかった。この任務はポンぺオが国務長官に指名された後すぐに実施された。

 

ポンぺオは先週行われた連邦上院外交委員会での証人の可否を決める公聴会で次のように発言した。「アメリカ政府が北朝鮮の核開発プログラムに関して条件を設定し、それによって直接対話を行うことが出来ると楽観的に考えている。この交渉によって、アメリカと世界が真剣に望んでいる外交的な目標が達成できる方向に進むことが出来る」。

 

 

火曜日、マー・ア・ラゴ・リゾートでトランプ大統領は記者団に対して発言を行った。その中で、アメリカ政府は北朝鮮政府との間で「きわめて高いレヴェルで」直接交渉を持ったと述べ、金委員長とポンぺオ長官との対面が会ったことを仄めかした。トランプ大統領は詳細を明らかにしなかった。

 

トランプ大統領は、遅くとも6月上旬までに金正恩と会談を持つ可能性が高いと述べた。

 

ポンぺオは北朝鮮との交渉を指揮している。ポンぺオと金委員長との会談は2000年以来の最高レヴェルの会談となった。2000年、当時の国務長官マデリーン・オルブライトが現在の金正恩委員長の父金正日が戦略的な諸問題について議論を行った。国家情報局長官ジェイムズ・R・クラッパー・ジュニアは2014年に北朝鮮を訪問し、北朝鮮に拘束されていた2名のアメリカ人の解放を実現した。またこの時に北朝鮮の中間クラスの情報担当者と会談を行った。

 

CIAはコメントを拒否した。ホワイトハウスもまたコメントを拒否し、CIA長官の外国訪問について話はしないと述べるにととどまった。北朝鮮政府もまたコメントを拒否した。

 

ポンぺオ長官の北朝鮮訪問から約1週間後、アメリカ政府高官たちは北朝鮮政府の高官たちが金委員長は非核化の可能性について交渉したいと望んでいると認めたと発言した。これはトランプ政権の関係者たちが明らかにしている。これは、米朝首脳会談を前にして米朝両政府の間で新たなコミュニケーションチャンネルが開かれたこと、トランプ政権は北朝鮮政府が首脳会談実現に向けて本気になっているという確信を持っているという兆候を示す発言だ。

 

火曜日、トランプ大統領は自身が所有するリゾートであるアー・ア・ラゴでの日本の首相安倍晋三との会談の途中、「私たちはきわめて高いレヴェルでの直接交渉を行っている、北朝鮮との間できわめて高いレヴェルでの交渉だ」と述べた。

 

トランプ大統領は詳細には言及しなかった。アメリカは北朝鮮との間に正式な外交関係を持っていない。しかし、アメリカの外交官はこれまでにも北朝鮮を訪問し、アメリカ政府は北朝鮮政府との間にある複数の秘密のチャンネルを使って連絡をしてきた。

 

トランプ大統領は次のように発言した。「北朝鮮は交渉を継続し、離脱していない。韓国は北朝鮮と交渉を行っており、戦争状態を終わらせるために首脳会談を行う計画を持っている。私はそれらがうまくいくように祈っている」。

 

トランプは朝鮮戦争を正式に終わらせるための南北首脳会談の計画について「祝福があるように」と述べた。これは核兵器を所有する北朝鮮をめぐる外交的な急速な進展が実現することを意味する。

 

安倍首相との2日間の首脳会談の始まりにあたり、トランプ大統領は北朝鮮関連での急速な事態の進展を肯定的に評価した。北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルの実験に関して、トランプ政権はアメリカの国家安全保障に対する最大の脅威と考えてきた。

 

トランプ大統領は、「韓国政府の高官たちは、アメリカ政府の支持がなければ、特に私の支持がなければ、何も議論話されなかっただろうし、オリンピックも失敗に終わっただろうと述べ、とても感謝している」と述べた。韓国政府は今年2月に平昌で開催された冬季五輪を北朝鮮政府との外交交渉を再開するための道具として利用した。

 

北朝鮮は選手団と高い地位の人々による代表団を五輪に派遣した。これはアメリカの同盟国である韓国との関係の改善を示す大きなサインとなった。これは東アジアの外交、トランプ大統領が主導的な役割を果たしていた状態の急激な変化をもたらした。

 

トランプ大統領は次のように語った。「世界にとっての問題を解決するための大きな機会が存在する。これはアメリカにとっての問題ではない。日本やそのほかの国にとっての問題でもない。世界にとっての問題なのだ」。

 

アメリカも参戦した朝鮮戦争における戦闘は65年前に停止したが、平和条約はいまだに締結されていない。火曜日、ある韓国政府高官は、戦争状態の正式な終了は、来週南北の間にある非武装地帯で開催される金委員長と韓国の文在寅大統領との首脳会談の議題となると発言した。

 

トランプ大統領は「両者が戦争状態を終結させるために議論することは喜ばしい、うまくいくことを祈っている」と述べた。

 

しかし、平和条約締結は複雑な道筋をたどるであろうし、アメリカの参加と合意が必要となるだろう。アメリカは韓国に代わって休戦協定に署名しているので、いかなる種類の平和条約であってもアメリカと北朝鮮との間で結ばれる必要がある。

 

長年にわたり平和条約が締結されてこなかった理由は、北朝鮮が長年にわたり、平和条約が締結されたら、韓国駐留の米軍は必要ではなくなるので撤退させねばらないと主張し、アメリカはこの要求を拒絶してきたからだ。

 

トランプ大統領は北朝鮮の世襲の指導者を「小さなロケットマン」と揶揄した。その後、両者の間で侮辱と脅しの応酬が続いた。これは昨年のことだ。しかし、トランプ大統領は金委員長と会談を持つ計画を進めている。トランプ大統領は北朝鮮がアメリカや同盟諸国に脅威を与えるなら北朝鮮を「完全に破壊」すると述べ、金委員長はトランプ大統領を老いぼれと揶揄した。

 

火曜日、トランプ大統領は、すべてが順調に進めば、金委員長との首脳会談は6月上旬までに開催されるだろうと述べた。トランプ大統領は同時に警告も付け加えた。「物事がうまくいかないこともあるだろう。会談が実現しないこともあるだろう。それでも私たちはこれまで堅持してきた非核化に向けた強力な道筋を進み続けるだろう」。

 

トランプ大統領は首脳会談の場所は現在考慮中で、決定はもうすぐ行われるだろうと述べた。また、記者からの質問に対して、場所はアメリカ国内ではないと付け加えた。トランプ政権は朝鮮半島以外のアジア、東南アジア、ヨーロッパで場所を探していると述べた。

 

安倍首相は彼がトランプ大統領に協力して成し遂げた進歩について喜ばしいという態度を取った。安倍首相はトランプ大統領に対して、1970年代から80年代にかけて少なくとも13名の日本人が北朝鮮の機関によって拉致された未解決の問題について金委員長にその解決を求めるように依頼した。この問題は安倍首相にとって重要な国内問題である。

 

トランプ大統領は2017年11月の東京訪問の際に拉致被害者の家族と面会した。昨年の夏、アメリカ人大学生オットー・ワームビアが亡くなったことにトランプ大統領は激怒した。ワームビアは北朝鮮に17カ月拘束し、意識不明状態で解放された後すぐに死亡した。現在、3名のアメリカ人が北朝鮮に拘束されている。アメリカ政府高官は北朝鮮との交渉ではこの3名の解放を議題にしたいと述べている。

 

安倍首相は「トランプ大統領が拉致被害者家族に面会してくださったことは、日本政府が拉致問題に関してどのように対応してきたかを大統領が深く理解してくださっていることを示している。私は大統領の努力に感謝を申し上げる」と述べた。また、安倍首相はトランプ大統領に対して、北朝鮮政府に「最大限の圧力」を維持するように求めた。

 

トランプ大統領と安倍首相は両者の関係を修復するために首脳会談を行う。トランプ大統領が金委員長と会談するという決定を下したことで日本政府は衝撃を受けた。また、鉄鋼とアルミニウムに対する関税で日本を適用除外対象から外した。こうしたことでトランプ大統領と安倍首相の関係は傷ついた。

 

両者は初期のうまくいった関係を復活させようとしている。トランプ大統領は、水曜日には、様々な追加的な会談の前に2人でゴルフをプレーすると述べた。トランプ大統領は、以前にも述べたが、今回もマー・ア・ラゴは「冬の時期のホワイトハウス」だと述べた。

 

トランプの補佐官たちはアメリカが11か国から構成される環太平洋経済協定への参加の可能性があると述べたが、この動きはまだ機が熟している訳ではないとも強調した。

 

トランプ大統領の首席経済問題補佐官であるラリー・クドローは、貿易に関する日本との対立を過小評価している。クドローはトランプ政権の関税政策は中国を罰することを目的にしていると述べた。クドローは中国が「第三世界の国の経済規模しかないかのようにふるまっている」と批判した。クドローは国際的な連合がトランプ政権の戦略を支持していると明言した。

 

クドローは次のように述べた。「貿易に関して善意の諸国による協力について私はこれまで述べてきた。他国も中国のふるまいを批判している。中国は先進国の経済規模であるのに、第三世界の経済規模であるかのようにふるまっている。中国は技術やそのほかの問題に対して、ルールに従って行動しなければならない」。

 

クドローは中国の悪いふるまいに対処するためにアメリカがTPPに入る必要ではないと述べた。クドローは強いアメリカ経済こそが貿易に関するアメリカの考えを世界に広めるための強力な武器になると強調し、トランプの中国の貿易に対するより強力な姿勢は国際的な支援を得られるだろうとも述べた。

 

クドローは次のように語る。「世界は私たちの側に立っている。トランプ大統領は意識的に世界の支持を求めている訳ではないが、世界は支持してくれるだろう。これは良いことだ。中国はこの流れを注意深く読み、積極的に対応することを望む」。

 

火曜日、中国はアメリカ産のモロコシに対して一時的なダンピング防止策を実施すると発表した。これは、2016年の大統領選挙でトランプ大統領が勝利したカンザス州やテキサス州のようなモロコシの生産高の高い州の農業従事者に打撃を与えることになる。

 

アメリカ産のモロコシの輸入抑制の動きは中国政府とアメリカ政府との間の貿易戦争の規模を拡大させている。月曜日、アメリカ政府はアメリカ企業が中国の携帯電話メーカーZTEに部品を売却することを7年間禁止する措置を取った。世界で1位と2位の経済大国が数十億ドル規模の関税を使って脅威の応酬を行っている。

 

しかし、トランプ大統領は、補佐官たちの中国政府に対する様々な批判のバランスを取ろうとした。トランプ大統領は中国の習近平国家主席を称賛した。トランプ大統領は習主席に対して北朝鮮への経済制裁を実行するように強く求めた。

 

トランプは次のように述べている。「習主席は非常に寛大な人物だ。彼は経済制裁を強化している。誰も期待していなかったレヴェルまで強化している。私は中国政府に対して経済制裁を強化して欲しいと望んでいる。習主席は誰も予想していないレヴェルまで強化している。北朝鮮へ流入する物資の量は確実に減少している」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)


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 古村治彦です。

 

 安倍晋三首相が17日からアメリカを訪問し、フロリダでドナルド・トランプ大統領とゴルフをします。ついでに首脳会談もちょこっと行われるようです。安倍昭恵夫人、柳瀬唯夫経済産業審議官(元首相秘書官で加計学園問題の渦中にある)も同行するようです。逃避行か何かなんでしょうか。それともこれから大変だから少し羽を伸ばしてリフレッシュしなさいということでしょうか。

 

 安倍首相は世界の指導者の中で初めて当選直後のドナルド・トランプ大統領と直接面会し、それ以来、「蜜月関係」を築いてきたということになっています。他国の指導者が安倍首相にトランプ大統領との関係構築に関して助言を求めたという話は初耳でした。

 

 しかし、両者の蜜月関係は終わりを迎えつつあると記事では述べています。日本は北朝鮮に圧力をかける、「対話のための対話は意味がない」という強硬路線を堅持しています。韓国は北朝鮮との直接対話を志向しています。そして、アメリカは強硬路線、具体的には経済制裁を維持しながらも、トランプ大統領が金正恩委員長に直接会うということを発表しました。これで日本側のメンツが潰れてしまった、朝鮮半島をめぐる多国間交渉から排除されることになるという分析があります。

 

 これに加えて、鉄鋼とアルミニウム輸入に対する関税も安倍首相とトランプ大統領の関係を悪化させるものだと記事では述べています。関税の一時的な免除の対象国に日本は含まれず、また、トランプ大統領は安倍首相を友人で良い人物だと言いながらも、「アメリカをこれまでうまく利用してきたが、今後はそんな訳にはいかない、安倍首相と日本政府関係者の顔から笑顔が消えるだろう」と述べました。

 

 鉄鋼とアルミニウム関税についてですが、アメリカの輸入に占める日本産品の割合は高くないので、これらの製品についてはあまり影響が大きくありません。問題はこの関税をアメリカ側が利用して、別の条件を日本に呑ませるのではないか、撒き餌みたいなものではないかということです。

 

 トランプ大統領のやり方は相手の意表を突くというものですから、厳しい態度を見せておいて、実際には相手にも少しは利益があるような結果に落とし込む、もしくは逆のこともある、と考えられます。今回の日米首脳会談では日本の北朝鮮への強硬姿勢を評価しながら、安倍首相にお世辞的な言辞を与え、貿易問題の交渉で日本側に何らかの譲歩を迫るものと思われますが、日本側が譲歩できることがあるのか、ということは疑問です。また、拉致問題についてアメリカ側にも助力を求めるとなるでしょうが、これはただという訳にはいきません。

 

 安倍首相とトランプ大統領との関係が蜜月というのは恐らくゴルフ仲間としてであって、国際関係においては無条件の友情というのは存在せず、お互いに利用し利用されるという関係しかありません。日本は利用するよりも利用されるばかりで、利用するということができない、というのは悲しい属国の姿なのでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

週末のマーラゴ訪問はトランプ・安倍関係を救うことが出来るか?(Can a Weekend at Mar-a-Lago Rescue the Trump-Abe Relationship?

―日本の安倍晋三首相とアメリカのドナルド・トランプ大統領との間の蜜月関係は機能した、ある一時期に。

 

エミリー・タムキン、ダン・デルース筆

2018年4月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2018/04/13/can-a-weekend-at-mar-a-lago-rescue-the-trump-abe-relationship-japan-trade-tariffs-north-korea-nuclear-abductees/

 

米朝首脳会談が実現するかもしれないという話で驚かされ、貿易に関して非難されたが、日本の安倍晋三首相は次週フロリダを訪問し、ドナルド・トランプと会談する。安倍首相はトランプ大統領と築いた緊密な関係を維持できるのかどうかを見極めるためにも訪米する。

 

安倍首相の訪米はトランプ大統領との関係におけるターニングポイントとなる。安倍首相のトランプ大統領との関係は、政治的経験に乏しく、短気な大東柳雄との会話を成功させたいという他国の指導者にとってはモデルとなってきた。しかし、トランプ大統領が北朝鮮の独裁者と直接会談を持つというニュース、更にはトランプ大統領が最近のツイートで貿易に関して日本はアメリカをずるく利用してきたと述べたことで、両者の関係が蜜月であることに完全に油断していた日本は大きなショックを受けた。安倍首相はせっかくの好スタートを切りながら完全に失速してしまったかのよう見える。

 

スタートから、安倍首相はトランプ大統領との関係を構築しようと大胆な賭けに出て、成功したように思われた。安倍首相は2016年のアメリカ大統領選挙後に初めてトランプと直接面会した最初の外国の指導者となった。トランプが当選して1週間後にトランプタワーを訪問し、トランプと対面した。その後、2017年2月にはマーラゴを訪問し、トランプと会談を行った。両者を結び付けたのはゴルフで、この時にプロゴルファーのアーニー・エルスを交えて一緒にゴルフをプレーした。

 

昨年の安倍首相とトランプ大統領の関係について、ジョンズホプキンズ大学SAIS付属ライシャワー記念東アジア研究センターの研究員ダニエル・ボブは次のように語っている。「日本側は安倍首相がトランプ大統領と個人レヴェルで親しくなったことを喜んだと思う。世界の指導者の多くが安倍首相がトランプといかにして話をして、親しくなるかという方法を示したということで驚き、かつ肯定的に評価をした」。

 

ボブによれば、ヨーロッパのある国の首脳が安倍首相に電話をかけて助言を求めたということだ。この電話は安倍首相の訪問中にされたということだ。この時、安倍首相は、トランプ大統領をのせて、話題を絞り、同じ話題を繰り返す、という助言を行った。

 

昨年のフロリダ訪問の期間中、北朝鮮はミサイル実験を実行した。この時、安倍首相は自分が大統領の隣にいて非常に影響力がある立場にあると考えた。

 

外交評議会日本研究担当上級研究員のシーラ・スミスは「安倍首相がトランプ大統領と夕食を共にしている時に北朝鮮がミサイル実験を行ったという偶然の好機は、北朝鮮に関する議論において日本が影響力を発揮できる力を与えた」と述べている。この当時、韓国は国内の政治危機に忙殺されていた。

 

安倍首相とトランプ大統領の関係は当時の駐米日本大使の佐々江賢一郎の力も大きい。アメリカ国務省の高官たちとは異なり、佐々江はトランプ陣営を無視することなく、トランプ陣営の幹部や支持者たちとのコンタクトを絶やさなかった。

 

大統領選挙以降、日本政府の公式の説明では、安倍首相とトランプ大統領の間で20回の電話会談と6回の直接会談が行われた。1回目の電話会談と1回目の直接会談はトランプが正式に大統領に就任する前に行われた。

 

しかし、このような緊密な関係に綻びが目立ちつつある。トランプ大統領の北朝鮮との直接交渉を行うという決断は、北朝鮮政府が分裂を利用することを防ぐために、アメリカ、日本、韓国は一致して対処するという長年にわたって堅持してきた原理に反するものだ。しかし、最近の様々な出来事の結果、北朝鮮は米日韓の間にくさびを打ち込む機会を得た。そして、朝鮮半島に関する多国間交渉で日本を排除できる可能性が高まった。

 

バラク・オバマ政権でアジア政策に関与したエヴァン・メデイロスは次のように語っている。「日本は冷たい風の中に取り残されつつある。トランプ大統領は北朝鮮との直接交渉という決断を日本に相談することなく行った」。

 

「日本のより強硬な姿勢を受けて、北朝鮮は中国、韓国、アメリカを含む多国間交渉を促進することになるだろう。これでロシアと日本は外されることになる」とメデイロスは述べている。メデイロスは現在ユーラシア・グループの上級部長を務めている。

 

韓国の文在寅大統領は北朝鮮との外交交渉実現のために力を尽くしているが、日本政府は直接交渉に関しては懸念を持ったままだ。

 

ワシントンにある在アメリカ日本大使館の広報担当の島田丈裕公使は次のように述べている。「安倍首相自身は対話のための対話は何の意味もないと繰り返し述べている。私たちは金正恩の真の意図を監視し、研究したいと考えている」。

 

日本政府の高官たちはこれまで、いくつかの条件が満たされない限り、北朝鮮との交渉は望まないと繰り返し強調してきた。一方、アメリカ政府高官たちは、トランプ政権は韓国政府、日本政府と北朝鮮外交に関して定期的に意見交換をしていると述べている。

 

トランプ政権のある幹部は「アメリカと同盟国日本は北朝鮮に対する統一的な対応をするために緊密に協力を行っている」と述べた。

 

北朝鮮に対する姿勢の相違に加え、日本はアメリカ政府が課す鉄鋼関税にも直面している。先月、関税について発表した後、トランプ大統領はEUと韓国やそのほかの同盟国を含む6か国については関税を一時免除したが、日本には適用しなかった。

 

日本の産業界の指導者たちは、アメリカ政府は鉄鋼とアルミニウムの関税を交渉材料にして、より広範な貿易交渉を行おうとしてくると確信していると述べている。

 

日本からの鉄鋼に関税をかけるという決定が安倍首相との関係を悪化させるという主張について、トランプ大統領は否定した。トランプ大統領は関税に関する覚書に署名を行う際に次のように述べた。「日本の安倍首相を日本政府高官たちと私は話をする。安倍首相は素晴らしい人物で、私の友人だ。彼らの顔に笑顔が浮かぶことはほとんどないだろう。彼らが浮かべる笑顔は“なんてことだ、もうアメリカをうまく利用できなくなってしまうなんて信じられない”ということを意味するものになる。アメリカを騙してきた日々は終わりだ」。

 

トランプのコメントはあったが、北朝鮮に対する姿勢の違いと貿易問題は米日同盟を傷つけるものになる。特に安倍首相のトランプ大統領に対する影響力は消えつつあるように思われる。

 

カーネギー研究所アジアプログラムの上級研究員のジェイムズ・ショフは本紙の取材に対して次のように答えた。「時間が浪費された。トランプ大統領との間で安定した関係を維持している人物はほぼいないように思われる。ある意味で、これは避けられないことなのだ」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)


※私の仲間である石井利明さんのデビュー作『福澤諭吉フリーメイソン論』が2018年4月16日に刊行されます。大変充実した内容になっています。よろしくお願いいたします。

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(仮)福澤諭吉 フリーメイソン論

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 古村治彦です。

 

 今回は、悪名高い薩摩藩の行った「密貿易」と「贋金づくり」についての最新研究を参照しながら見ていきたいと思います。2018年のNHKの大河ドラマは、西郷隆盛(さいごうたかもり、1828-1877年)を主人公にした「西郷どん(せごどん)」です。原作は林真理子の小説『』です。1990年の「飛ぶがごとく」や2008年の「篤姫」と同じく、鹿児島が舞台になります。

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西郷どん! 並製版 上

 

 私も鹿児島生まれ、鹿児島育ちですが、私くらいの年代(40代)でも鹿児島弁はだいぶ使わなくなりました。「西郷」を「せご」と呼ぶ人は多くないと思います。また、「さぁ(様)」や「どん(殿)」を使う人も私の周りにはいませんでした。イントネーションは鹿児島弁独特のものでしたが、単語などはほぼ標準語と同じものを使っていました。「ぐらしか(かわいそう)」「むぜ(かわいい)」といった言葉は聞けば分かりますが、使いませんでした。鹿児島弁はイントネーションを残してだいぶ使わなくなっています。そのうち、イントネーションも変化していくかもしれません。

 

 私は大河ドラマ『西郷どん』を見ていませんが、見ている人たちからの話やツイッターなどでの感想を見ていると、今回のドラマではところどころで史実に基づいた描写があるようです。最新の研究成果が使われているようです。


 今回は徳永和喜著『海洋国家薩摩』(南方新社、2011年)と 
『偽金づくりと明治維新 薩摩藩偽金鋳造人安田轍蔵』(新人物往来社、2010年)をご紹介します。徳永和喜氏は1951年生まれ、九州大学から文学博士号を授与されています。鹿児島県の公立高校の教師を務め、その後、鹿児島県歴史資料センター黎明館の学芸課長、鹿児島大学、鹿児島国際大学の非常勤講師を歴任し、現在は鹿児島市立西郷南洲顕彰館館長を務めています。

 

 徳永和喜著『海洋国家薩摩』(南方新社、2011年)には、鹿児島と東アジア諸国との関係が詳しく描かれています。『海洋国家薩摩』の最新研究の結果をもとに、アジアと薩摩のつながりをご紹介していきます。

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海洋国家薩摩

 

 薩摩は歴史上、日本と東味が交錯する場所としての役割を果たしてきました。それは戦国時代から江戸時代になっても変わりませんでした。島津氏は直轄地とした山川港で朱印船貿易を行いました。中国からの商人たちが多数やって来て、薩摩藩内の各地で暮らすようになりました。島津家では中国貿易で中国商人たちとトラブルが起きた場合には、中国人商人に訴状を提出させ、鹿児島城下の臨済宗寺院の大龍寺住職だった南浦文之(ルビ:なんぽぶんし 1555-1620年)に照会し解決すると定めました。

 

 山川港は指宿、開聞岳の麓にある天然の良港です。島津氏は戦国時代に、三州統一(薩摩、大隅、日向)を行う過程で、地元の豪族であった頴娃氏から山川港を奪い取り、直轄地としました。それ以降、明治維新期まで、薩摩藩の海外貿易、琉球口貿易の拠点となりました。

 

 鹿児島には薩南学派と呼ばれる儒学の一派が形成されました。その創始者は、臨済宗の禅僧であった桂庵玄樹(ルビ:けいあんげんじゅ、1427-1508年)です。桂庵玄樹は現在の山口県で生まれました。京都で学んだ後、山口に帰り、その後、明に遊学しました。1478(文明10)年に島津家に招かれ、薩摩で儒学を教えました。南浦文之は孫弟子にあたります。

 

どうして日本の辺境である薩摩で儒学が盛んになったのでしょうか。しかも禅僧が儒学を教えるというのは何とも奇妙な話です。ここで簡単に言うと、禅僧たちは中国貿易において文書記録係、通訳をしていました。だから、貿易を行っていた、日本の辺境の領主たちは、禅僧を招いていました。そして、多くの禅僧が集まり、育っていきました。

 

 また、江戸時代まで山川港では南蛮貿易も行われていました。山川港にはイエズス会の司祭と修道士が駐在していました。島津氏はキリスト教の布教は禁止していましたが、イエズス会が教会を建設し、聖職者たちを滞在させることを認めていました。それはポルトガルをはじめとするヨーロッパ各国と南蛮貿易を行うことで、莫大な利益を得ようとしていたからでした。1561(永禄4)年に島津貴久(るび:しまづたかひさ 1514-1571年)がイエズス会インド地方区長宛てに出した書簡には、「安全を保障し、便宜を図るので是非ポルトガル人に来て欲しい」ということが書かれています。

 

 江戸幕府成立後の1609(慶長14)年、薩摩藩は琉球へ侵攻し、支配下に置きました。琉球は中国の王朝に臣属し、朝貢(ルビ:ちょうこう)を行っていました。これを冊封(ルビ:さくほう)体制と呼びます。薩摩藩は琉球を支配するによって石高が増加し、琉球口貿易を独占できました。幕府は長崎を唯一の窓口を独占しましたが、実際には対馬・宗氏の朝鮮口貿易、薩摩・島津氏の琉球口貿易、蠣崎氏(松前氏)の松前口貿易が認められていました。従って、薩摩藩が行った琉球口貿易は厳密に言えば「密貿易」ではありません。薩摩藩から輸出品を琉球に運び、琉球が進貢船を中国に出す。持ち帰ったものを薩摩が日本国内で売りさばくことで利益を得ましたが、これは幕府に認められた貿易でした。

 

 ただ、幕府が認めた以上の量の物資を買い入れて輸出し、中国からの輸入品を国内で売りさばくことは「密貿易」となります。そして、薩摩藩は厳しい財政状態もあり、恒常的に「密貿易」を行わねばならない状態でした。薩摩藩では輸出品の主力である昆布を集めるために、富山(越中)の売薬商人たちに薩摩入国と商売を認める代わりに、昆布の収集を命じました。売薬商人たちは北前船のネットワークを通じて、昆布を集め、薩摩に売り渡しました。

 

 薩摩藩は、琉球に通じる奄美群島の各島に唐通辞と朝鮮通辞と呼ばれた中国語通訳と朝鮮語通訳を自前で養成し、配置しました。これは、難破船や漂着船を保護するためということが名目にかかげられていましたが、実際には、対外情報集と密貿易用の人材であったと考えられます。また、薩摩藩では、長崎のオランダ通辞を招聘しての蘭通オランダ語通訳の養成にも着手していた。薩摩藩のオランダ語通訳は後に英語も学ぶようになっていった。

 

薩摩藩は斉彬藩主時代から貨幣鋳造で利益を出そうとしていました。貨幣鋳造が薩摩藩の資金力の第三の柱となりました。徳永和喜著『偽金づくりと明治維新 薩摩藩偽金鋳造人安田轍蔵』(新人物往来社、2010年)、『海洋国家薩摩』(南方新社、2011年)に、斉彬から久光時代にかけて行われた貨幣鋳造の歴史が詳しく書かれています。この研究の基になっているのは、斉彬と久光の側近として活躍した市来四郎(ルビ:いちきしろう 1829-1903年)が残した『市来四郎文書』です。

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偽金づくりと明治維新

 

市来四郎は明治維新後も久光に仕え続け、自分が関わった薩摩藩の幕末の歴史を記録として残した人物だ。市来は斉彬時代には、集成館事業に関わった。また、琉球に渡り、対外交渉にもあたった。久光時代には、貨幣鋳造、後には偽金づくりに関わることになる。貨幣鋳造に関しては小松帯刀も藩政の責任者としてかかわっている(高村直助著『小松帯刀』、106-107ページ)。

 

 貨幣鋳造計画は斉彬時代に始まります。薩摩藩はそもそも偽金ではなく、幕府から許可を得て貨幣を鋳造する計画を持っていました。これは、外国船来航に伴う警備の強化のために膨大な資金が必要となり、その資金を得るために貨幣を鋳造し、出目を稼ごうというものでした。しかし、1858(安政4)年に斉彬が死去したことで、貨幣鋳造計画は中止となりました。貨幣鋳造計画が再始動したのは1862(文久2)年からです。

 

 貨幣鋳造計画再始動の中心となったのは、斉彬の側近であった市来四郎と安田轍蔵(ルビ:やすだてつぞう)という人物だった。安田轍蔵は桑皮を原料とした布(木棉、きわた)を開発し、1861年に幕府から製造許可を得た。安田は、木棉の決済手段として薩摩藩が持っていた琉球通宝計画に目をつけ、薩摩藩に召し抱えられました。安田は安納信正、久世広周、水野忠精といった老中、小栗上野介忠順といった幕閣に食い込んでいました。安田の根回しもあり、薩摩藩に琉球通宝鋳造の許可が下りました。琉球通宝は、幕末に流通した銅銭である天保通宝の一種とされました。天保通宝1枚は100文とされたが実際には80文で流通しました。江戸時代の通貨単位を大まかに書くと、「1両=4分=16朱=4000文」となります。

 

琉球通宝の製造について、幕府は「3年間で100万両」を許可したが、実際には3年間で300万両分を製造した、と市来四郎は証言しています。薩摩藩では琉球通宝という文字を天保通宝と変えて製造するようになりました。これは偽金ということになります。薩摩藩ではさらに、二分金という金貨の偽金づくりも行いました。銅の台の上に金メッキをするというものでした。偽物の二分金を貿易の支払代金などに使ったと言われています。

 

 幕末の薩摩藩の資金力の3つの柱となったのは、琉球口貿易、黒糖の専売、貨幣鋳造(偽金づくり)でした。これらの事業で獲得した資金が蒸気船になり、鉄砲になり、近代的な工場群となりました。そして、1858年から1868年の幕末最後の10年で、これらを整備し、発展させたのが島津久光と小松帯刀を代表とする側近たちでした。この資金力の上に薩摩藩は強大な軍事力を有し、雄藩として存在感を発揮することが出来ました。沖永良部島から政治の表舞台に復帰し、薩摩藩の軍事司令官となった西郷隆盛は、久光と小松帯刀らによって整えられた条件があって輝いたと言えます。

 

 大河ドラマ『西郷どん』を見て、鹿児島の歴史に興味を持った方は今日ご紹介した本も読んでいただけますようによろしくお願いいたします。

 

(終わり)


※私の仲間である石井利明さんのデビュー作『福澤諭吉フリーメイソン論』が2018年4月16日に刊行されます。大変充実した内容になっています。よろしくお願いいたします。

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(仮)福澤諭吉 フリーメイソン論

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 古村治彦です。

 

 今回は、SNSI研究員である石井利明(いしいとしあき)氏のデビュー作『福澤諭吉 フリーメイソン論』(石井利明著、副島隆彦監修、電波社、2018年4月16日)を皆様にご紹介します。

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(仮)福澤諭吉 フリーメイソン論

 

 石井利明氏は私たちの仲間で、これまで出した論文集の中で、福沢諭吉についていくつも論稿を発表してきました。今回、石井さんの福沢諭吉(1834-1901年)研究の集大成が一冊にまとまり、世に出ることになりました。

 

本書の最大最重要の特徴は福沢諭吉とフリーメイソンとの関係を明らかにしたことです。このことについて、著者の石井氏は「日本を属国の一つとして扱う英国に対抗して、勃興する新興大国であるアメリカの自由思想と、アメリカ革命に深く関わったフリーメイソンたちを自分たちへの支援勢力とした。福澤諭吉は、フリーメイソンたちと手を携えて、日本国が、着実に自立してゆくために知識、思想、学問で闘い続けた」と簡潔に書いています。

 

 私の個人のお話で申し訳ないのですが、私は早稲田の出身で、学生時代から野球の早慶戦に行っています。慶應の応援は力強く、また華麗なものです。私もいつの間にか、慶應義塾の塾歌(校歌)や有名な応援歌「若き血」を歌えるようになりました。

 

慶應義塾にはほかにも多くの素晴らしい応援歌がありますが、私が個人的に好きなのは「我ぞ覇者」です。その一番の歌詞は「雲を破りて 世を照らさんと 見よや見よ自由の 先駆われ 独立友呼べば 自尊と我応え おお 共に起たん 吾等が義塾」です。この歌詞こそ福澤諭吉が慶應義塾を創設した精神「自由」「独立自尊」がよく表現されていると思います。

 

 以下に推薦文、まえがき、目次、あとがきを掲載します。参考にしていただき、是非手に取っていただければと思います。よろしくお願い申し上げます。

 

(貼り付けはじめ)

 

推薦文

                                   副島隆彦

 

 本書『福澤諭吉フリーメイソン論』は、誰よりもまず慶応義塾大学出身の皆さんに読んでいただきたい。

 

 福澤諭吉(一八三四~一九〇一、天保五~明治三四)は真に偉大な人物である。幕末と明治期の日本が生んだ、本当にとびきり一番の、大人物である。だが、福澤先生のなにが偉大であり、なにが賞賛に値するのかを、いまの私たちはまったく知らない。誰も教えてくれない。何も教わっていない。

 

 非礼を承知で私は書くが、慶応大学出で の人々であってさえ、福澤先生の偉大さの理由と根拠を知らない。入学当初から、誰からも教わっていない。『学問のすすめ』と『福澤翁自伝』を読め、読めと言われるだけだ。福澤先生の「日本国の独立自尊(どくりつじそん)」の思想を、今に受け継ぐ人々が今の日本にいるのか。

 

 この本を読んでいただければ、いろいろなことがわかる。真贋(しんがん)の判定は、この本を読んでくださった読者がする。何故(なにゆえ)に、福澤先生は日本が生んだ大(だい)学者、碩学(せきがく)にして行動者、実践家、温厚な教育者にして大実業家であったか。これらのことが、この本にすべて書かれている。

 

 著者の石井利明君は慶応出でではないが、一所懸命にあらゆる文献を読み、深く調査して福澤諭吉の思想の真髄にまで迫って、この偉人の真実を掘り当てている。この本を読んでくださればわかる。そして、私と一緒に驚いてください。福澤諭吉の生い立ちから人格形成期、そして晩年の大成者としての実像(六七歳で逝去)までを見事(みごと)に描ききっている。

 

 石井利明君は、私が主宰する学門道場およびSNSI(副島隆彦国家戦略研究所)の創立時からの人であり、研究員としても高弟であり古参である。

 

 思い出せば、もう七年前の、二〇一一年三月一一日の東日本大震災、そして福島第一原発の爆発事故の直後一九日に、私は死を覚悟して、とりあえず石井君ひとりを連れて現地を目指した。そして原発から七キロメートルのところで目視しながら放出された放射線量を現場で正確に計測した。それがごく微量であることを知った。このことを即刻、インターネットで発信し、日本国民に知らせた。「日本国は救われた」と。このあともほかの弟子(研究員)たちも引き連れて三度、福島第一原発正門前に到達して随時、放射線量を正確に測った。口はばったい言い方だが、あの時の私たちは、一八三七(天保八)年二月、大阪で決起した大塩平八郎中斎(ちゅうさい)一門の覚悟と同じだった。「とにかく大事故の現場に行って、自分の目で真実を見極めなければ。国家と国民の存亡の危機に際しては我が身を献げなければ」の一心だった。これらの事績(じせき)の記録と報告はすでに数冊の本にして出版している。

 

 どんな人にとっても目の前の日常の逃げられない生活の苦労がある。石井君にも私にもある。それでも誠心誠意、緻密な真実の福澤諭吉研究を、一〇年をかけて石井利明君がやりとげ、書き上げてくれて、私は心底嬉しい。私が全編にわたってしっかり朱筆を入れたので、私、副島隆彦との共著と考えてくださっていい。

 

 日本人は、真に日本国の偉人福澤先生の実像と学門の高さの真実にいまこそ触れなければ済まない。万感の想いをもって本書推薦の辞とする。

 

=====

 

はじめに

                                    石井利明

 

 福澤諭吉は世界基準(ワールド・ヴァリューズ)で評価すべき人物である。

 

 この一点において、今までの、数多ある福澤諭吉の人物評伝は片手落ちである。

 

 このことは、世界史と日本史が学問分野で分かれているための構造的な問題である。江戸末期から明治維新に活躍した人物や起った事象を真に理解するには、西洋史、中国史、日本史に橋を架けなければならない。

 

 しかし、市井の学者たちには、この橋が架けられない。だから、書くものがつまらない。事実に肉薄できない。ここに、歴史学者ではない石井利明が、10年の歳月を費やしてたどり着いた考えをまとめた、この本の大きな意義がある。

 

 慶応義塾大学で学んだ卒業生たちは、まずは、この本を読んで世界基準の福澤諭吉の偉大さを理解して下さい。

 

 福澤諭吉の人生のハイライトは、日本を属国の一つとして扱う英国に対抗して、勃興する新興大国であるアメリカの自由思想と、アメリカ革命に深く関わったフリーメイソンたちを自分たちへの支援勢力とした。福澤諭吉は、フリーメイソンたちと手を携えて、日本国が、着実に自立してゆくために知識、思想、学問で闘い続けた。ここに福澤諭吉の生涯の大きな意義がある。この大きな世界基準の枠組みが理解できれば、福澤諭吉の一生が大きく理解できる。と同時に、フリーメイソンに対する、我々日本人の理解が、いかに表層的で浅はかなものであったのか、も理解できる。福澤が生きた19世紀のフリーメイソンは、断じて、闇の勢力などではない。それは間違った理解だ。

 

 福沢諭吉は、生涯にわたって自らが唱えた日本国の「自立自尊」の道のど真ん中を歩んだ人物である。こんな日本人は、福澤の後にも先にも居ない。後にも先にもいないということは、副島隆彦氏が提唱した「帝国・属国」関係が、それだけ厳しいことの現れだ。

 

 この厳しい現実は21世紀に生きる、我々日本人が現在直面している大きな課題である。福澤諭吉の生涯を正しく理解することは、日本国がこれからどのように歩むべきかの大きな道標になる。

 

=====

 

福澤諭吉フリーメイソン論 大英帝国から日本を守った独立自尊の思想

 

推薦文 副島隆彦 

 

はじめに 

 

第一章 世界規模のフリーメイソン・ネットワーク

 

●諭吉の父、福澤百助

●諭吉が憎んだ幕藩体制は親の敵

●福澤諭吉の先生たち

●攘夷論者の野本真城から、開国派の白石(しらいし)照山(しょうざん)へ 

●中津藩の蘭学研究 

●オランダ語の化物、前野良沢(まえのりょうたく) 

●『解体新書』翻訳の真相 

●長崎出島のカピタン(オランダ商館長)たち 

●日本に来た最初のフリーメイソン 

●日本を開国しようとした田沼(たぬま)(おき)(つぐ) 

●開国和親派と攘夷主義の暗闘

 

第二章 長崎出島と幕末の開国派ネットワーク

 

●開国か攘夷か、揺れる中津藩 

●黒船来航で攘夷に傾く世論 

●長崎出島と密貿易の巨大利権 

●諭吉もスパイとして長崎に送り込まれた 

●大坂、緒方洪庵の適塾時代 

●日米修好通商条約と尊王攘夷 

●アヘン戦争の本当の原因 

●アヘン戦争と幕末維新の共通性 

 

第三章 ユニテリアン=フリーメイソンとアメリカ建国の真実

 

●渡米を熱望した諭吉 

●東アジアの貿易戦争で大英帝国を破ったアメリカ 

●諭吉のアメリカ行きを支えた人たち 

●ジョン万次郎の帰国とペリー来航 

●万次郎を育てたユニテリアン=フリーメイソン 

●ユニテリアン、そしてフリーメーソンリーとは何ものか? 

●アメリカ独立革命を戦ったのはユニテリアン=フリーメイソン 

●諭吉が理解したアメリカ建国の真実 

 

第4章 文久遺欧使節の諭吉とフリーメイソンの関係

 

●アメリカから帰国し、幕府に出仕 

●文久遺欧使節としてヨーロッパへ 

●フランスでの諭吉とフリーメイソン 

●英国での諭吉とフリーメイソン 

●諭吉、ロシアでスパイにスカウトされる 

 

第5章 攘夷の嵐を飲み込む大英帝国の策謀

 

●攘夷派の動向と一八六三年の福澤諭吉 

●下関事件と薩英戦争 

●文久三年の政治状況 

●一八六四年の福澤諭吉 

●四カ国連合艦隊下関砲撃 

●一八六五年からの福澤諭吉 

●第二次長州征伐の真実と諭吉の対応 

 

第6章 明治維新と慶応義塾設立

 

●一八六七年、幕府最期の年の福澤諭吉 

●福澤塾の移転と慶応義塾の誕生 

●戊辰戦争と幕府内部のイギリス勢力 

●日本の自立に必要なものは経済力 

●『学問のすすめ』刊行 

 

第7章 福澤諭吉と宣教師たちの本当の関係

 

●福澤諭吉とユニテリアン医師・シモンズ 

●宣教師A・C・ショーの正体 

●半開の国と定義された明治日本 

●福澤諭吉が尊敬したフリーメイソン、ベンジャミン・フランクリン 

 

第8章 日本の独立自尊と近代化のために

 

●日本の中央集権化に対抗した福澤諭吉 

●西南戦争は反逆ではなく、明治政府の内戦 

●交詢社設立の真の目的とは? 

●国際社会に認められる文明国の条件 

●憲法草案と明治一四年の政変 

●息子二人のアメリカ留学 

●ユニテリアン教会の宣教師ナップの招聘(しょうへい) 

●ユニテリアン教会の修道院として始まったハーヴァード大学 

●慶応義塾とハーヴァード大学の連携と大英帝国からの独立自尊の大戦略 

●アメリカの変質と、その後の福澤とユニテリアンの関係 

●晩年の福澤は帝国主義の思想を持っていたのか? 

 

おわりに

 

福澤諭吉年譜

 

=====

 

おわりに

 

 本書『福澤諭吉 フリーメイソン論』の書名にギョッとする人は多いだろう。それでも、この本を手にとって読んでくださる方々に、私は、心からの敬意を表します。

 

 私の福澤諭吉研究は、二〇〇八年に、「これまで知られていない福澤諭吉の真実の姿を、石井くん、丹念に調べて描いてみなさい」と、私が師事している副島隆彦先生から言われたことから始まった。

 

 福澤諭吉という偉大なる人物を私ごときが簡単に扱あつかえるのか、大きな不安があった。しかし、私はこの大人物の、これまで日本社会でまったく知られていない、知られざる側面を大胆に表に出した。

 

 二〇〇一年から始まった福澤諭吉の脱亜入欧(だつあにゅうおう)論をめぐる「安川・平山論争」が続いていた。私の考えは本文でずっと説明したが、「日本の昭和のアジア侵略まで福澤諭吉のせいにするな!」である。一九〇一年まで生きた人であり、民間人であることを貫いた福澤諭吉に、その後の日本の帝国主義の責任まであるとする安川寿之輔と、彼の意見に同調する人々は元々精神の歪んだ人々である。

 

 安川氏に丁寧に反論して文献を挙げて説明し、論争に勝利した平山洋氏を私は支持する。と同時に、私は碩学(せきがく)丸山真男と、小泉信三が福澤諭吉を上品に「自由」と「愛」の体現者であったように描いたことにも反対する。福澤諭吉が生きた一九世紀(一八〇〇年代)の自由や愛は、西洋近代の啓蒙(けいもう)(エンライトンメント)を受けて光り輝きながらも、幕末以来の血生臭いものだった。この辺りの感覚が理解できないと福澤諭吉の実際の生涯はわからない。

 

 私は福澤諭吉を研究してみて、さらに彼を深く尊敬する。彼の表おもて裏うらのない、綺麗事や偽善とは対極にある生き方に感服した。こんな真っ正直な日本の知識人を私は、福澤諭吉以外に知らない。この余りの真っ正直さが、あれこれと誤解も招いたのである。

 

 これまで出版された福澤諭吉の自伝、評伝からは、真実の福澤諭吉の姿が伝わってこない。

ここに、学者ではない私が、福澤諭吉の評伝を書く意味がある。この本には、私がコツコツと自力で掘り起こした諸事実によって照らし出される真実の福澤諭吉が詰まっている。私は、真実の福澤諭吉の姿を皆さんになんとしてもわかってほしい。この明治開国期の日本の偉人の本当の姿を文献証拠から味わっていただき、国民的課題として大きく福澤先生を見直してゆきたい。福澤の人格形成とともにあったのはアメリカ、そしてヨーロッパのフリーメイソンの思想である。日本の学者たちは勇気がないから、福澤先生と三田会(みたかい)、フリーメイソンの関連をあえて遠ざけて無視しようとする。これでは、フリーメイソン思想と福澤諭吉の深いつながりから見える明治期の全体像がわからない。

 

 天主教(てんしゅきょう)(ローマ・キリスト教会。隠れキリシタンたち。その中心が耶蘇[やそ]会=イエズス会)の伝統とはまったく別にあったフリーメイソン思想の日本への伝来は、一七七〇年代に遡ることができる。フリーメイソン=ユニテリアン思想は、豊後(ぶんご)中津(なかつ)や大阪堂島の交易人の系譜の人である福澤諭吉にまで伝わったのだ。

 福澤諭吉とフリーメイソン組織の深いつながりを、こうして微力な私が掘り当て、捜し出したことで日本人が世ワールド・ヴァリューズ界基準の歴史、思想を理解する一助になるだろう。読者をこの知的冒険に誘いざなうことができるなら私の本望である。

 

 この本を苦心して書き上げる上でSエスNエヌSエスIアイ学門道場主催者の副島隆彦先生と電波社書籍部編集長の岩谷健一氏にたいへんお世話になった。この場を借りて、厚くお礼を申し上げます。

  二〇一八年二月一〇日                        石井利明

 

(貼り付け終わり)


※私が学生時代に所属していましたサークル(地方学生の会)の先輩でお世話になっている森和也氏の書籍が発売されました。ぜひ手に取ってお読みください。 よろしくお願いいたします。

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