古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

2019年03月

 古村治彦です。

 

 このブログでもご紹介したピート・ブティジェッジ(アメリカでも難読苗字とされているようです)についての記事をご紹介します。

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 今回の大統領選挙民主党予備選挙には10名以上も出馬しており、私はこのピート・ブティジェッジ(本人はピート市長と呼んで欲しいと言っています)は泡沫候補ではないかと思っていましたが、彼の出ている番組の映像を見て、頭の回転の速さと話す内容に感銘を受けました。今回の大統領選挙で民主党の候補者指名を受けることは難しいにしても、これから全国的な知名度を上げていくでしょう。日本にもこのような政治家が出て欲しいものです。


 

 ブティジェッジについていろいろと調べ見ましたが、もしこれを計画的にやっていたとするならば、恐ろしい人だとすら思えるものです。高校生の時に、ケネディ財団が主催する論文コンクールに応募しました。その内容は当時無所属の連邦下院議員だったバーニー・サンダースを取り上げ、政治における寛容と統合について書いたものです。それで優勝したブティジェッジはボストンでの表彰式に出席し、ケネディ家の人々と会います。駐日大使を務めたキャロライン・ケネディやテッド・ケネディ連邦上院議員(故人)というケネディ家の中心メンバーと高校生の頃に既に会っています。

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キャロライン・ケネディとの写真(2000年) 


 大学はハーヴァード大学、言わずと知れた世界屈指の名門校です。ハーヴァード大学はボストン郊外にあり、ケネディ家のお膝元です。ジョン・F・ケネディも卒業生です。テッド・ケネディ上院議員の事務所で夏休みにインターンをしたのは、論文コンクールで優勝したことでつてが出来たからでしょう。その後は2004年の米大統領選挙ではジョン・ケリー、2008年ではバラク・オバマの選挙運動に参加しています。

 

 ブティジェッジが生まれ育ち、今は市長を務めるインディアナ州サウスベンド市はインディアナ州北部にあって、オバマの地元シカゴから遠くありません。舅インディアナポリスよりも距離としては近いようです。オバマとの関係も良好で、オバマはブティジェーグに「民主党の未来」という賛辞を送っています。彼はただの田舎町の市長ではなく、ケネディ家とオバマという民主党内部の重要な人脈の結節点につながりを持っています。

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帰還の際に両親からの出迎えを受ける(父は2019年初めに死去) 

 2009年に米海軍の予備士官となり、2014年に既に市長になっていたのですが、休職して7カ月間、アフガニスタンで軍務に就きました。これも大きいことです。実際に軍務に就いて海外に派遣されるというのはここ最近の大統領ではいません。これがあるおかげで、「あいつは弱虫だ」という批判は説得力を持たなくなります。2017年には民主党全国委員長選挙に立候補しますが、途中で撤退します。しかし、この選挙で民主党内部、特に各州レヴェルの幹部たちとの人脈を形成し、民主党内部の人々に「この読みにくい苗字の人は大したものだ」という印象付けをすることに成功した、ということです。

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選挙から撤退する際の写真。民主党の大物ハワード・ディーンが挨拶

 

 高校生の頃からこのような道を進むと決めておおまかにでも計画して進めてきたとすると恐ろしさを感じます。さすがにこのような想定は私の考えすぎかもしれませんが、市長となって以降の動きは計画性を感じます。インディアナ州サウスベンドは人口10万で周辺も含めると30万です。彼が市長になったのは29歳の時で、これは10万人以上の人口を持つ市の市長としては史上最年少だそうで、しかも共和党が強い保守的な地盤のところに、民主党から出て当選してしまうのですから、これもまた凄いことです。

 下の記事で書かれている、ブティジェッジの戦術は興味深いです。ある民主党系のストラティジストが「トランプ個人というよりもトランプ主義(Trumpism)を批判している」という指摘をしています。これは重要な指摘だと思います。トランプ大統領個人を攻撃することは、彼に投票した人々、熱心な人々からそうではない人々まで全てを攻撃することになります。自分が投票したことは誤った愚かな行動だったと言われているようなものだからです。ですから、そこを分離できるというのは頭の良さだと思いますし、他の候補者とは違う点なのでしょう。

 

 ピート・ブティジェッジからは目が離せません。

 

(貼り付けはじめ)

 

ブティジェッジは民主党の候補者の中から台頭している兆候を示す(Buttigieg shows signs of emerging from the Democratic pack

 

エイミー・パーンズ筆

2019年3月25日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/435696-buttigieg-shows-signs-of-emerging-from-the-democratic-pack?fbclid=IwAR1s2zO53adF968H7gNZgOUvDk0rZexgvaugQMgW5xKXMbGEQydpjs6vDFI

 

ピート・ブティジェッジインディアナ州サウスベンド市の市長ではあるが比較的無名の人物、今2020年米大統領選挙民主党予備選挙の有力候補として存在感を増している兆候が出ている。

 

37歳になるブティジェッジが大物候補者たちの一団に割って入るかもしれないという可能性を示した最初の動きは、今週末に発表されたエマーソン大学の世論調査であった。この世論調査で、ブティジェッジは、アイオワ州においてジョー・バイデン前副大統領とバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、民主党)に続く第3位に入った。

 

ブティジェッジは、世論調査アイオワ州の民主党党員集会(予備選挙)に参加予定の人々の間でバイデンの25%、サンダースの24%に続いて支持率11%を獲得した。

 

大統領選挙の最初期のたった一つの世論調査の結果ではあるが、この世論調査が行われる数週間前からメディアでブティジェッジの名前は好意的に取り上げられてきた。ブティジェッジは、CNNのタウンホールミーティング方式の一般の人々との対話番組に出演し、民主党系のストラティジストや専門家たちに良い印象を残した。

 

ブティジェッジは、今回の大統領選挙で同性愛を公表している唯一の候補者である。そして、これまでいくつか人々の注目を集める場面があった。最も近いところでは今週末にもある出来事があった。ノルウェーからの取材者からノルウェー語を話してくれるように頼まれた。

 

ブティジェッジは7か国語を操る。彼は即座にノルウェー語で答えを返した。この時の様子はユーチューブ(YouTube)で人気を集めることになった。

 

この発音しにくい苗字を持つ田舎町の市長について懐疑的であった民主党関係者たちも今では注目するようになっている。

 

民主党系のストラティジストで長年にわたり民主党所属の連邦上院議員のスタッフを務めたジム・マンリーは「数週間前、私は彼に全く注意を払わなかった。それは彼に勝利する可能性など全くないと考えたからだ。しかし今ではどんどん興味がわいている」と述べている。

 

民主党系のストラティジストであるクリスティ・セッツアーは次のように述べている。「ブティジェッジのプチ・ブームは本物だ。彼は色々な場所に顔を出している。彼は本物で興味深い人物であり、論理的な話し方でメッセージを届けられる。こうしたことで、彼はメディアから引っ張りだこになり、予備選挙に参加する民主党支持者たちの注目を集めている」。

 

いまだ出馬表明していないバイデンとサンダースは2020年の米大統領選挙の初期段階である現在、複数の世論調査で上位に来ている。現在のところ、民主党予備選挙の候補者たちは2つの集団、もしくは3つの集団に分けられるような展開になっている。

 

カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)とビトー・オローク前連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)は多くの世論調査で3位につけ、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)も有力候補となっている。

 

このトップ5の有力候補者たちに続いてまた別の候補者の一団が続くという展開になっている。

 

ニューヨーク州民主党の幹事長を務めたバジル・スマイクルは、ブティジェッジの最近の露出は、オロークにとっては悪いニュースとなるだろうと分析している。オロークは今月初めに喝さいを浴びながら出馬宣言を行った。

 

ブティジェッジは全国規模の政治の舞台で知名度上昇のために動いているが、ここ数年、民主党内部での地盤固めを行ってきた。この動きは2年前に民主党全国委員会委員長選挙に出馬した時から始まっている。

 

スマイクルは「ブティジェッジはビトー・オロークの進むコース、レーンにある程度侵食してくる可能性がある。それはブティジェーグが選挙期間で既に多くの人々に好印象を与えたからだ。2年前の民主党全国委員会の選挙から各州の民主党幹部との関係を構築している」と述べている。

 

スマイクルは、ブティジェッジは有権者たちの共感を得る優れたメッセージを発していると述べている。

 

スマイクルは次のように述べている。「他の候補者たちがトランプ個人に敵対して選挙戦に出馬している一方で、ブティジェッジは自身の生い立ちで人々の関心を集め、マイク・ペンス副大統領とトランプ大統領を支援している人々が体現している共和党の偽善性に対抗して出馬しているということをアピールしている。これは、トランプ大統領自身というよりもトランプ主義を攻撃するという戦術であり、不平不満を持っている幅広い有権者たちにアピールする可能性を持つ」。

 

ブティジェッジの選対はエマーソン大学の世論調査の結果についてコメントをしないだろう。しかし、選対の報道担当リス・スミスは、最近の選挙運動とメディアへの出演が、ブティジェッジに対する支持の拡大につながっている、と述べている。

 

スミスは次のように述べている。「私たちは常日頃から多くの人々にピート市長を見てもらえばもらえるほど、好きになってもらえるはずだという確信を持っています。彼はミレニアル世代に属する中西部州の市長として、他の人々とは全く異なる言葉を皆さんに届けることができます。世代交代というピート市長の発するメッセージは予備選挙が早い段階で行われる各州とそれ以外の州に住む有権者の皆さんの共感を集めています。彼の発する言葉や行動に対する興味関心が高まっているのを私たちは感じています」。

 

ブティジェッジに懐疑的な人々もいる。ある民主党系のストラティジストはエマーソン大学の世論調査結果の複数の問題点について次のように指摘している。

 

このストラティジストは、世論調査の結果は偶然の産物にすぎない、それは誤差が6%もあるもので、数百人しか対象にしていないと指摘し、「ブティジェッジが台頭しているというのは馬鹿らしい話だ」と述べた。

 

他のストラティジストたちはエマーソン大学の世論調査には問題点があるにしても、ブティジェッジは好調だと述べている。

 

民主党系のステラティジストであるエディ・ヴェイルは次のように述べている。「ブティジェッジは長年にわたりよく計算して実行し努力してきたことの利益を今受け取っているという点が彼の最大の凄さと思う。彼はあらゆる場所に出ている。いろいろな人々に向けて話をしている。多くの集会に出席し、インタヴューを受けている。人々に大きな印象を与えている。これまでの努力の積み重ねが世論調査の数字に出始めているのだと思う」。

 

ストラティジストたちの間で共有されている疑念、それは、ブティジェッジが適切なタイミングで浮上してきたのか、というものだ。

 

セッツアーは「問題はブティジェッジのピークが6カ月前に来てしまっていることだ。それでも彼にとって何か良いニュースはないのかって?それなら、ビトーのピークは1年早過ぎたということかもしれないということだ」と語った。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 今回はニューヨーク州民を対象にした世論調査の結果についての記事をご紹介します。この記事で中心的に書かれていたのは、ニューヨーク州選出の連邦下院議員であるカーステン・ギリブランドとニューヨーク市長ビル・デブラシオの支持率が共に30%に届かなかった、ということです。

 

 世論調査の数字についてもっと詳しく見ていくと、次のようになります。

 

(貼り付けはじめ)

 

※3つ目の数字は「よく知らない、判断が出来るほど聞いたことがない」の数字です(一桁台の数字は省略しました)。

 

ドナルド・トランプ大統領:28%(67%)

 

ジョー・バイデン前副大統領:62%(24%)、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属):51%(38%)

 

エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党):31%(38%;30%)、コーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党):31%(28%;39%)

 

カーステン・ギリブランド連邦上院議員(ニューヨーク州選出、民主党):29%(35%;35%)、カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党):27%(25%;47%)、ビトー・オローク前連邦下院議員(テキサス州選出、民主党):21%(22%;55%)

 

エイミー・クロウブッシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党):13%(16%;70%)

 

アンドリュー・クオモニューヨーク州知事(民主党):42%(45%;10%)、ビル・デブラシオニューヨーク市長(民主党):24%(49%;24%)、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党):31%(38%;31%)

 

(貼り付け終わり)

 

 ニューヨーク州の人々は政治家に対する評価が辛いようで、支持率が50%を超えたのはバイデンとサンダースだけでした。その他は3割台、2割台ばかりで、ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモの支持率45%は非常に高い数字ということになります。

 

 ニューヨーク州民は地元の政治家だからというような理由で政治家を支持しないようで、地元選出のカーステン・ギリブランドの支持率が29%で不支持率が35%となっています。そして、全体的に「よく知らないんだよな」となっていることが分かります。

 

 そこでも興味深いのは、大統領選挙民主党予備選挙に出馬している各政治家の支持率と不支持率の数字の関係です。ギリブランドが29%対35%、ウォーレンが31%対38%、ブッカーが31%対28%、ハリスが27%対25%となっています。支持、不支持を判断できるとしている人々の中で、不支持が支持を上回っているのは、ギリブランドとウォーレンです。

 

 どちらも司法の世界で長年活躍し、連邦上院議員としては若手から中堅というところです。全国規模のメディアでもよく名前が出ますし、民主党が優勢なニューヨークでこれだけ評価が低く、不支持が支持を上回っているのは何か原因があると思われます。

 

 その原因としては、2人が民主党エスタブリッシュメント、ヒラリー派に近いと見られているということが挙げられると思います。ギリブランドはヒラリーがオバマ政権の国務長官に就任するためにニューヨーク州選出の連邦上院議員を辞め、その後継となった人物です。これから2人が上昇するためにはそうしたイメージを払しょくしなければならないでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

世論調査:ニューヨーク州民の中で、ギリブランド、デブラシオの支持率は共に30%以下(Poll: Gillibrand, de Blasio have favorable ratings under 30 percent among New Yorkers

 

ジョン・バウデン筆

2019年3月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/435119-poll-gillibrand-de-blasio-have-favorable-ratings-under-30-percent-among-new

 

ニューヨーク州出身の2名の民主党所属の政治家は大統領選挙に野心を持っているが、最新世論調査によると、2人の支持率は水面下に落ち込んでいる。

 

木曜日に発表されたキュニピアック大学の世論調査の結果では、カーステン・ギリブランド連邦上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は、ニューヨーク州の登録済み有権者の中で29%しか支持がなかった。不支持率は少し高かかった。35%だった。この人々は、ニューヨーク州選出の2期目の連邦上院議員ギリブランドの仕事ぶりを評価しないと答えた。

 

ビル・デブラシオニューヨーク市長(民主党)も同様で、彼はまだ予備選挙出馬表明を行っているが、ここ数週間出馬を示唆しているが、彼の市長としての仕事ぶりを評価しているニューヨーク州民は24%に留まった。調査に答えた人々の49%は評価しなかった。

 

これらの数字は、ギリブランドとデブラシオ両者にとって、これまでの中で最も低い数字となった。両者ともに「自分はより多くの有権者たちに知られるようになっている」と考えているが、支持率は低調である。

 

世論調査アナリストのメアリー・スノウは声明を発表し、「民主党が優勢なニューヨークでは、民主党支持者たちが2020年の大統領選挙でドナルド・トランプ大統領に引導を渡したいと熱望しているが、今回の世論調査の結果はなにも驚くには値しない」と述べた。

 

スノウは続けて次のように語った。「しかし、ニューヨーク州民は自分たちの州の政治家たちがトランプ大統領に代わることが出来ると考えるほど甘くはない。カーステン・ギリブランド連邦上院議員は正式に出馬表明を行ったが、支持率は過去最低となった。ニューヨーク市長ビル・デブラシオは出馬するかどうか決めていないが、ニューヨーク州全体の彼の支持率は、2014年の市長就任以来、最低の数字となった」。

 

ジョー・バイデン前副大統領は支持率トップ、62%を獲得した(24%は不支持)。バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は水面から顔を出している。ニューヨーク州民の51%がサンダースを支持した。

 

キュニピアック大学による世論調査はニューヨーク州民1216名を対象に行われ、誤差は3.8%である。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 今回は2020年の米大統領選挙民主党予備選挙に関するCNNによる最新の世論調査の結果が出たのでその記事をご紹介します。

 

 アメリカ大統領選挙の本選挙の投開票は2020年11月3日に実施されます。民主、共和両党の予備選挙は2020年2月3日のアイオワ州の党員集会から始まります。その後、共和党の候補者指名を行う全国大会は2020年7月18日にノースカロライナ州シャーロットで、民主党の全国大会は2020年7月13日から16日にかけてウィスコンシン州ミルウォーキー市で開催されます。

 

2020年2月から民主、共和両党の予備選挙が始まる→2020年7月に両党が全国大会を開き候補者指名→2020年11月3日の本選挙投開票ということになります。

 

 共和党は現職のドナルド・トランプ大統領が再選を目指しており、対抗馬が出る可能性は低い状況です。民主党は既に10名以上が予備選挙への出馬表明を行っています。

 
SRSSdemocraticpresidentialcandidatespollsresults005

 今回のCNNの世論調査は最新の動向が見られるものです。最大の関心事はやはりどの候補者が人気なのかということです。その数字を見ていくと、マラソンのように、既にいくつかの集団に分かれているようです。それは以下の通りです。

 

●第1集団(支持率10%以上)

(1)ジョー・バイデン

(2)バーニー・サンダース

(3)カマラ・ハリス

(4)ビトー・オローク

 

●第2集団(支持率1%以上、10%未満)

(5)エリザベス・ウォーレン

(6)ジョン・ケリー

(7)コーリー・ブッカー

(8)エイミー・クロウブッシャー

 

●第3集団(支持率1%かそれ以下)

 

 昨年の段階で人気(支持率)トップ3はジョー・バイデン、バーニー・サンダース、ビトー・オロークということになっていました。そこに第2集団から、カマラ・ハリスが上がってきて、第1集団は4名ということになりました。第3集団から第2集団に上がってきた人はいないので、第2集団は4名のままという感じです。ニューヨーク州選出の連邦上院議員であるカーステン・ギリブランドが支持率1%で第3集団にいるというのは人気のなさを物語っています。

 

このうち、トップのジョー・バイデンと、第6位のジョン・ケリーは出馬表明をしていません。バイデンは出馬可能性が高い一方で、ケリーは出馬しないと考えられています。よって、第2集団は3名と考えておいた方が良いでしょう。

 

 こうした中で、このブログでもご紹介しているインディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジの人気が急上昇しています。今回の世論調査は3月14日から17日にかけて実施されたものです。ブティジェッジは、2019年3月10日にCNNでタウンホール様式の視聴者との対論番組に出ました。そのためか、以前の世論調査では数字が出なかったのに、この世論調査では1%の支持率を記録しました。

 

 今後民主党の候補者たちの動きがどうなるかは、ジョー・バイデンが出馬するかどうか、討論会での様子で変わってきそうです。ブティジェッジは若い世代の人気を上昇させており、若者人気の高いサンダース、オロークは影響を受けるでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

CNN世論調査:大統領選挙民主党予備選挙でハリスが上昇、民主、共和両党の支持者たちの大統領選挙への関心は高い状態で始まる(CNN Poll: Harris climbs in the Democratic race, as enthusiasm starts high for both parties

 

ジェニファー・アジエスタ(CNN世論調査部長)筆

2019年3月19日

CNN

https://edition.cnn.com/2019/03/19/politics/cnn-poll-2020-harris-surge-deep-enthusiasm/index.html?utm_medium=social&utm_source=twCNN&utm_content=2019-03-19T21:07:29

 

CNN発。CNNの最新の世論調査の結果、カリフォルニア州選出の連邦上院議員カマラ・ハリスへの支持率が8ポイント上昇したことが分かった。SSRS社が実施したCNNの世論調査では、アメリカ大統領選挙民主党予備選挙では今のところ4名の候補者が二桁の支持率を獲得している。

 

ジョー・バイデン前副大統領(28%)とヴァーモント州選出の連邦上院議員バーニー・サンダース(20%)が多くの立候補者が乱立している民主党予備選挙でトップの座を占め続けている。ハリスは民主党支持者、民主党よりの無党派層の間で12%の支持を集め、2018年12月の段階での支持率4%から大きく上昇した。そして、民主党予備選挙への最新の出馬表明者である、テキサス州選出の連邦下院議員だったビトー・オロークの支持率は11%であった。

 

ハリスの支持率上昇は有権者全般での支持上昇のためで、12月以来、どの人種的、性別グループにおいても支持率が下がったものはなかった。それでも彼女の上昇率は、無党派(+5%)よりも民主党支持者(+10%)の方が高く、中道・保守派(+7%)よりもリベラル派(+10%)の方が高く、男性(+6%)よりも女性(+9%)の方が高く、白人(+6%)よりも人種・民族的なマイノリティ(+10%)の方が高い。

 

トップ4以外では、マサチューセッツ州選出連邦上院議員エリザベス・ウォーレン(6%)、元国務長官ジョン・ケリー(4%)、ニュージャージー州選出連邦上院議員コーリー・ブッカー(3%)、ミネソタ州選出連邦上院議員エイミー・クロウブッシャー(3%)と続き、支持率1%のグループから抜け出している。その他の5名の支持率は1%となっている。 別々の世論調査のうち3つの世論調査で支持率1%を獲得することが、今年後半に行われる討論会に参加するための最低条件となる。

 

世論調査では来年の選挙で投票についてその関心度について質問しているが、21世紀以降のどの大統領選挙よりも関心度が高いという結果が出た。10名のうち4名が大統領選挙の投票について「極めて高い関心を持っている」と答えた。これはこれまでの大統領選挙の初期段階よりも高い数字となっている。CNNではこの質問を2004年の世論調査から始めたが、2008年の段階での登録済有権者の間で37%という数字が出て、これが今まで一番高い数字であった。

 

昨年の中間選挙では、民主党支持者たちの熱意と関心の高さによって連邦下院で民主党が過半数を制した。この時とは異なり、エネルギーは共和党支持者の方が高い。共和党支持者の10名のうち6名(57%)が大統領選挙の投票に関して極めて高い関心を持っていると答えた。一方民主党側は46%、無党派は26%だった。

 

共和党の方は関心が高く、民主党の方が低いということは起こりうることだ。それは、支持政党の候補者が誰になるかがはっきりした段階で関心を持つということが有権者にとってはより楽なことであるだろうからだ。共和党支持者の多数はトランプ大統領を支持しているということもある。

 

共和党支持者と共和党支持寄りの無党派の4分の3(76%)が2020年の米大統領選挙で共和党はトランプを大統領選挙候補者に指名すべきだと答えた。これは昨年の調査の時の数字とほぼ変わらない。10名のうち8名(78%)がトランプ大統領を党の候補者に指名することで勝利する可能性が高まると答えた。別の人を候補者にすべきと答えたのは17%であった。これは2015年の予備選挙の時とは大きく変わっている。当時、共和党支持者と共和党支持寄りの無党派層の過半数は、トランプ以外を候補者とすることで勝利の可能性が高まると考えていた。

 

民主党支持者、民主党支持寄りの無党派層のうちの10名のうちの6名が民主党予備選挙に関して現時点で誰にもチャンスがあると考えていることが分かった。民主党予備選挙に勝利して大統領選挙候補者指名を受けられるのは現時点で1人もしくは2人に既に絞られていると考えているのは37%しかいなかった。このように考えている人たちの中で、人気トップ4はリードを拡大している。こうした人々の中で33%はバイデンが候補者指名を獲得すると考えていると答え、サンダースは22%、ハリスとオロークは13%ずつという結果が出た。それ以外の候補者はいずれも5%以下であった。

 

民主党支持者、民主党支持よりも無党派の過半数(56%)が、民主党がトランプを倒す可能性の高い候補者を指名するだろうと答え、35%が当選可能性よりも候補者の問題に対する姿勢を獣医すると答えた。

 

この当選可能性を望む割合が高いということはサンダースにとって最も強い向かい風となっている。トランプを倒すことが出来る候補者は誰かという質問に、32%がバイデンと答え、これがトップとなった。続いて、ハリスが16%、サンダースが14%、オロークが11%という結果になった。イデオロギー上の純粋性を重視する人々にとってサンダースは好ましい候補者である。そうした人々の31%がサンダースを支持し、バイデンは21%、オロークは11%、ハリスは7%であった。

 

より直接的に、トランプ大統領と対峙する際に、サンダースが候補者となった方が勝利する可能性が高いか、別の人が候補者になった方が可能性は高くなるか、という質問をして見たところ、民主党支持者、民主党支持寄りの無党派の56%がサンダースではない方が勝利の可能性が高まると答えた。バイデンについても同じ質問をしたところ、51%がバイデンが候補者になった方が勝利する可能性が高いと答えた。

 

これらの数字が示しているのは、バイデン、サンダースを支持している人たちの中には、両者が知名度の高い候補者であることを以外を理由にして支持している人たちがいる、ということである。しかし、選挙戦が進み、有権者が他の候補者たちのことを知るようになって、両者が支持を拡大していけるのかどうかは疑問である。

 

中道のもしくは保守的な民主党支持者たちのバイデンへの支持率は30%であった。2018年12月の時点と比較すると、バイデンの支持率は変化なしであったが、オロークの同じグループの支持率は27%から40%に上昇し、全体でも5%の支持率上昇となった。

 

知名度の高い人物たちには出馬表明で支持率が上昇することがあるということが考えられる。最も知名度と支持率が高いが出馬するかどうか表明していないバイデンは、正式に出馬表明をしてもその利益を受けられない可能性がある。

 

サンダースは2019年2月19日に州場表明を行った。彼の支持率は2018年12月の14%から現在は20%になっている。彼の支持率は民主党支持者の中で安定している。2019年12月段階では約75%が支持しているという結果が出で、今回も同レヴェルであった。しかし、民主党支持者以外では不支持が多くなっている、2018年12月の段階では51%が支持していると答え、36%が支持しないと答えた。それが、今回は46%が支持していると答え、43%が支持していないと答えた。

 

今回の世論調査では、来年の選挙について考える時、民主党支持者と共和党支持者では、重要だと考える政策が大きく異なるという結果が出た。共和党支持者の間は、移民と経済がトップ2の重要問題で、その他の候補者のイデオロギーとか諸問題についての姿勢といったものを大きく引き離している。民主党支持者の間では、候補者の個人としての考え方、移民、経済、医療という順番になっている。

 

CNNの世論調査はSSRS社が3月14日から17日にかけて実施した。1003名の成人を全国規模のランダムサンプリングで抽出し、有線電話もしくは携帯電話でインタヴューを行った。誤差は3.8パーセンテイジポイントである。456名の民主党支持者、民主党支持寄りの無党派の間では誤差は5.7ポイント、448名の共和党支持者、共和党支持寄りの無党派の間では誤差は5.5ポイントである。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 前々回、ご紹介したピート・ブティジェッジの支持率急上昇という結果が出た世論調査の続報をご紹介します。

 

 この世論調査では「大統領選挙本選挙で一対一になったらどちらに投票するか」という質問があり、トランプ大統領対ジョー・バイデン、対バーニー・サンダース、対エリザベス・ウォーレン、対コーリー・ブッカー、対カマラ・ハリス、と複数の想定がなされています。

 

 その結果はトランプ対バイデンはでバイデン、トランプ対サンダースはでサンダース、トランプ対ウォーレンはでトランプ、トランプ対ブッカーはでトランプ、トランプ対ハリスはでトランプ、という結果になりました。

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人気トップ2のバイデンとサンダースだけが一対一の戦いでトランプに勝利となり、他のウォーレン、ブッカー、ハリスは敗北するという結果になりました。現時点での数字ですから参考程度にしかなりませんが、ここに前々回ご紹介したブティジェーグが入っていても恐らく敗北の方に入っていたことでしょう。

 

 この結果は民主党には深刻でしょう。まだ1年以上先の話とは言え、トランプ大統領攻撃の最大の武器であったロシア疑惑も、ロシアとは共謀していないという結果が出て、連邦議会での大統領弾劾も不可能な状況になりました。これらはトランプ大統領にとって有利な材料です。そして、ロシア疑惑の捜査結果が出る前の世論調査で、トランプと一対一で戦って、何とか勝てそうなのが、まだ出馬宣言をしていないバイデンと、高齢かつ民主党エスタブリッシュメント(ヒラリー派から総スカン)のサンダースだけというのは、民主党には厳しい状況です。

 

 カマラ・ハリス、ビトー・オローク、エリザベス・ウォーレンの中でハリスは全国的な知名度を上げていけば何とか、という感じでしょうが、オロークは2018年の中間選挙で日本からも取材が行くほどの人気ぶりでしたが、やはり最終的に選挙に落ちたというのはマイナス材料でしょう。ウォーレンはどうしても民主党エスタブリッシュメントのイメージが強くて、20代前半の若者層、ミレニアル世代(1980年代以降生まれの20代後半、30代の人々)にはアピールしません。

 

 ピート・ブティジェッジの人気が若者たちの間で上昇し、メディアでも注目されているというのは、「次の選挙に期待しよう」ということなのでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

世論調査:バイデンとサンダースがアイオワ州でトランプをリード(Poll: Biden, Sanders lead Trump in Iowa

 

ザック・バドリック筆

2019年3月25日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/campaign-polls/435574-poll-biden-sanders-lead-trump-in-iowa

 

最新のエマーソン大学の世論調査の結果から、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ-モント州選出、無所属)とジョー・バイデン前副大統領はアイオワ州でトランプ大統領を本選挙での一対一という想定質問でリードしている、ということが分かった。

 

世論調査の結果によると、バイデンはトランプとの一対一で53%対47%とリードし、サンダースは51%対49%でリードしていること言うことであった。

 

世論調査の結果では、トランプ大統領は他の民主党候補者に対してはリードしている。エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)に対しては、51%対49%、コーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)に対しては52%対48%、カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)には54%対46%とそれぞれリードしている。

 

無所属での大統領選挙出馬を検討しているスターバックスの創始者ハワード・シュルツを加えると、トランプとウォーレン両方ともに数字を落としていることが世論調査の結果で明らかになった。三つ巴となる場合、トランプ支持が48%、ウォーレン支持が45%、シュルツ支持が7%ということになった。

 

シュルツが無所属で出馬ということになると、サンダースにとってもマイナスになるという結果が出た。みつどもえとなると、トランプ支持が47%、サンダース支持が45%、シュルツ支持が8%ということになる。

 

日曜日に発表された今回のエマーソン大学による世論調査では、インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジがアイオワ州の民主党党員集会(予備選挙)に出席予定の人々の間で11%の支持率を獲得し、民主党の候補者たちの中で第3位に急上昇していることが分かった。これは11%の人々がブティジェッジを2020年の民主党大統領選挙候補者にふさわしいとして選んだということである。

 

今回の世論調査は2019年3月21日から24日にかけて707名の成人を対象に実施された。誤差は3.6ポイントである。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 ドナルド・トランプ大統領の「ロシア疑惑」について、ロバート・ムラー特別検察官の捜査が終わり、その概要をウィリアム・バー司法長官が書簡にして連邦議会に送付しました。その内容は、ロシア疑惑、ロシア疑惑捜査に対するトランプ大統領による司法妨害は共に立証されなかった、というものです。

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報告を受けた後のトランプ大統領
 

 ロシア疑惑とは、2016年の米大統領選挙において、ロシアが当選されると自分たちに都合の悪い民主党ヒラリー・クリントン候補を落選させようとし、共和党のドナルド・トランプ候補陣営と結託、共謀したのではないかという疑惑です。ロシアによる選挙介入はアメリカの複数の情報機関が行われていたと認める報告書を出しています。

 

 トランプ陣営幹部でロシア側と接触があった人物たちが複数いたことから、この問題が大きくなりました。マイケル・フリン国家安全保障問題担当大統領補佐官(当時)がロシア大使と会談を持っていたこと、それをトランプ大統領やペンス副大統領に報告していなかったことなどを理由に、就任早々解任されるということになりました。また、今回の件とは別件もほじくり返され、トランプ陣営の選対本部長(途中で解任)を務めたポール・マナフォートは逮捕されました。

 

 トランプ陣営がロシア側と一緒になってヒラリーを落選させるために動いた「共謀」を証明することは大変難しく、そもそも共謀を明確に立証することは困難でした。実際にムラー特別検察官は多くの人員を投入し1年以上かけて捜査しても確たる証拠は結局見つかりませんでした。

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ロバート・ムラー特別検察官
 

 ロシア疑惑の捜査に対して、トランプ大統領が司法妨害を行ったのではないかという疑惑については、ちょっと歯切れが悪いようです。「これについて有罪を構成するに足るだけの証拠がなかった」ということになりました。民主党側はこの点を突いていくことになるでしょう。しかし、それでもトランプ大統領を弾劾まで追い込むことは不可能になりました。ナンシー・ペロシ下院議長は今回の書簡が出る前から、弾劾はすべきではないということを述べて既に予防線を張っています。

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バー司法長官が連邦議会に送った書簡

 ロシアによるアメリカ大統領選挙への介入はあったでしょう。ロシアにしてみれば、「お前たちもソ連崩壊後、俺たちの国にいろいろと要らない、差し出がましい口をきいたよな」という感情もあり、「やり返しただけだ」ということになるでしょう。

 

また、SNSを使えば、「世論誘導」が出来る、ということも明らかになっています。拙著『アメリカ政治の秘密』でも書きましたが、2011年のアラブの春にはツイッター社やフェイスブック社が関わっていたことは明らかです。アカウントを持つ利用者の個人情報を持ち、書き込みの傾向などを簡単に割り出せるのですから、利用者の考えを誘導しつつ、あくまで「自分で考えた」と思い込ませることは簡単なことです。

 

 今回の捜査結果概要の書簡送付で、トランプ大統領は勝利を収めることが出来ました。弾劾も行われませんし、これまで批判をして来た人々に対して反撃が出来ます。2020年の大統領選挙に向けて好材料となります。これまで長い時間と資源をかけて、この結果と言うのはまさに「大山鳴動して鼠一匹」ということになりました。

 

(貼り付けはじめ)

 

ムラーはトランプに勝利を届けた:5つの要点(Mueller delivers a win for Trump — Five Takeaways

 

ナイオール・スタンジ筆

2019年3月24日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/435556-mueller-delivers-a-win-for-trump-five-takeaways?rnd=1553476550

 

日曜日、ホワイトハウスにとっては安心を、トランプの敵対者たちには不満が残った。ロバート・ムラー特別検察官による捜査結果の要約がウィリアム・バー司法長官から発表された。

 

22か月にわたる捜査は終了した。ここから要約に関する要点を紹介する。

 

(1)トランプにとっての大勝利

 

トランプ大統領にとって、バー司法長官が連邦議会に送った書簡以上の結果は望むことはできなかっただろう。それほどの最良の結果となった。

 

「共謀などない」、というのはトランプ大統領が一貫して主張してきたことだ、ロバート・ムラー特別検察官と彼のティームはこれに同意することになった。

 

バー司法長官が送った書簡によると、2016年の選挙に関し、「特別検察官の捜査ではトランプ選対、もしくはトランプ選対に関係を持ついかなる人もロシアと共謀も協力もしていない」ということであった。

 

捜査の中心的な疑いであるロシアとの共謀について疑いが晴らされたが、この疑惑は深刻に受け止められ、ムラーには捜査のために多くの資源が投入された。ムラーは19名の法曹関係者を起用し、40名のFBI捜査官の協力を受け、2800通以上の召喚状を発行した。

 

司法手続きへの妨害の可能性についての疑問に関しては、ムラーは明白に、疑いが晴れたのではないし、トランプ大統領が明確に罪を犯したということでもないと述べた。

 

ムラーはこの疑問をバー司法長官とロッド・ローゼンスタイン司法副長官に委ねた。ローゼンスタインは「集められた証拠では、大統領が司法妨害を行ったと断定するには不十分であった」と結論付けた。

 

民主党側はロシア疑惑について更に知りたいと望むだろう

 

フロリダで大統領専用機「エアフォースワン」に登場する直前、記者団に対して短く「完全な潔白の証明だ」と述べた。

 

連邦議会にいるトランプ大統領の味方は強気だ。

 

連邦議会においてトランプに忠実な議員の中の一人、マーク・メドウズ連邦下院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は「本日のバー司法長官の声明はこれまで続いてきた議論に終止符を打つものだ。共謀はなかった。妨害もなかった。これで終わりだ」。

 

ホワイトハウスのホーガン・ギドリー副報道官はワシントンに戻るエアフォースワンの中で、トランプ大統領は元気を回復して好調だと述べた。

 

ギドリーは記者団に対して「大統領の機嫌は大変良い。全てが明らかにされたことを大変喜んでいる」と述べた。

 

(2)民主党側は厳しい戦いに直面する

 

日曜日、民主党側は即座に反応を示した。民主党側は連邦議会で独自の捜査を継続するだろうと述べた。連邦下院では民主党が過半数を握っている。

 

連邦下院司法委員会委員長ジェロルド・ナドラー連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)はツイッター上で、司法委員会はバー司法長官の証人喚問を求めると書いた。ナドラーは、「司法省の内部の分裂と最終決定に関して大変懸念を持っている」とし、それらについて調査すると述べた。

 

連邦下院の情報諜報委員会と監督委員会はトランプ大統領に関連する諸問題について独自の調査を現在も行っている。

 

民主党側は行政府が説明責任を果たすようにするための重要な仕事を行っているのだと主張するだろう。それがその通りに進むのは良いが、それでは民主党側が抱えるより大きな問題の解決にはならない。

 

政権発足直後からのトランプ大統領に関する諸問題の調査の中で、ムラーによる捜査は主要なものとなってきた。一般の有権者たちにしてみれば、ムラーの捜査結果が最終的な結論だということになる。

 

そうなれば民主党側が更なる調査を独自に行うことは難しくなる一方で、トランプ大統領と彼の味方が、民主党側を政治的な野心を持って無駄なことをする人々と決めつけることはより容易になる。

 

民主党側が今回の捜査結果の上を行く、確実性の高い訴追を行う機会を作るためのハードルは急激に高くなった。

 

(3)司法妨害に関する疑問は残る

 

バー司法長官の書簡の中のトランプ大統領にとっての最大の問題は決定的なものとまでは言えないが、司法妨害の疑いに関連するムラーの捜査で明らかにされた事実や証拠が書簡の中では明確にかつ詳細に示されていないということだ。

 

バー司法長官の書簡ではこの点は不明確になっている。民主党側は早速この明確性と詳細さを欠いている点を捉え、更なる情報提供を求めている。

 

連邦下院議長ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)と連邦上院少数党(民主党)院内総務チャールズ・シューマー連邦上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は共同声明を発表し、その中で、バー司法長官の書簡について、「多くのことの答えているのと同じくらいに多くの疑問を生み出している」と述べた。

 

民主党側の要求は理にかなっている。

 

バー司法長官の書簡では、司法妨害について、ムラーは「伝統的な検察官の手法による判断を行わないと決定した」と述べている。続けて、「ムラーは、捜査を行った大統領の行動が司法妨害を構成するのかどうかについて、有罪、無罪、どちらの結論も導き出せなかった」とも述べている。

 

これが示しているのは、ムラーは、大統領の行為が少なくとも一般的な司法妨害となり得る証拠を見つけたということかもしれない。それでもバー司法長官とローゼンスタイン司法副長官は刑事事件としての裁判を維持できるだけの強力な証拠は存在しなかったと結論付けた。

 

CNNの法律関係アナリストマイケル・ゼルダンは本誌の取材に対して、ムラーが、捜査で集めた証拠によってトランプ大統領の「疑いが晴れ(exonerate)」てはいないと述べざるを得なかったことに注目し、これは「大変に奇妙な」ことだと指摘した。

 

ゼルダンは「検察官は通常、疑いが晴れる(exoneration)という言葉は使わない」と述べ、これは、ムラーのティームと司法省との間に同意できない点があるのだろうと示唆した。

 

トランプ大統領にとって、ムラーが公開していない情報が司法妨害についての疑いを更に高めるようなものでなくても、公開されることで政治的なダメージを与える可能性があるので、危険はまだ存在しているということになる。

 

(4)大統領弾劾の可能性はなくなった

 

ペロシ下院議長は今月初めに『ワシントン・ポスト』紙とのインタヴューの中で、トランプ大統領に対する弾劾にブレーキをかける発言を行い、驚きを与えた。

 

この時、ペロシ議長は弾劾を進めることを好まないと述べた。

 

その理由について、ペロシ議長は次のように述べた。「弾劾は国家を分裂させてしまうものであり、勢いよく進めるものではないし、疑問や躊躇なく進めるものではないし、党派争いの道具にすべきものでもない。私たちはこの道を進むべきではないと考えている。それはその道を進めばアメリカは分裂してしまうからだ」。

 

バー司法長官の書簡の内容は弾劾を進めるための最低限の条件に届いていない。トランプ大統領を2020年の大統領選挙で落選させるために、前回トランプ大統領に投票した無党派層とそこまで熱心ではないトランプ支持者たちを寝返らせるに足るだけの大きな衝撃にはなっていない。

 

トランプ大統領の政治上の運命は2020年の大統領選挙で決まり、その前に決まるということはない、ということがこれまでよりもより確定的になった。

 

(5)テレビに出ている識者たちが恥をかく

 

メディアに出ている熱心な反トランプの姿勢を取る識者や著名人たち、その中には法律の専門家たちも含まれているが、この人たちの多くはロシア疑惑に関する諸事実がひっくり返されることを願っているとしてもそれは無理のないことだ。

 

バー司法長官の書簡が送られた後にテレビをつける人たちは、そこに出ている識者たちが何とか面目を保とうとしている姿を見て驚くことだろう。

 

ムラーの捜査結果が出たことで、トランプ大統領と彼の家族を馬鹿だ、地味だ、単純だと見下す活発な動きが低下するだろうということは容易に予測できる。

 

トランプ大統領と彼の味方はこれから何日も何カ月も反メディアの太鼓をより大きな音で打ち鳴らすことだろう。この人々は2020年の大統領選挙投票日までメディアの過剰な報道を示す例としてムラーの話をし続けるだろうということは容易に想像できる。

 

日曜日夜に発表した声明の中で、ペンス副大統領は「アメリカにとって偉大な日」になったことを喜ぶと述べた。

 

ペンスは、民主党とそれに同調する不特定の「メディアの人々」が「根拠のない告発」を行ったという主張を行った。

 

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要するにどういうこと トランプ政権のロシア疑惑を800文字以内で

 

2017124

http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-42218253

 

2016年米大統領選をめぐるロシア疑惑がトランプ政権に濃い影を落とし続けてきた。しかしなかなか厄介な話なので、あらためて短く整理してみた。

 

要するに

 

複数の米情報機関は、昨年の大統領選でドナルド・トランプ氏を勝たせようと画策したと結論している。果たしてトランプ陣営関係者がこのために、ロシアと結託したのかどうか、専任の特別検察官が調べている。

 

証拠は

 

トランプ選挙対策本部の複数の幹部が、ロシア政府関係者と接触していた。いくつかの面会については、当初公表されていなかった。

 

接触とは

 

マイケル・フリン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、政権発足前に駐米ロシア大使と会談していたことについて、連邦捜査局(FBI)に嘘をついた。フリン前補佐官はムラー検察官との司法取引に応じ、有罪を認めた。このため、政権幹部の有罪を裏付ける証拠を、前補佐官が持っているのではないかと、取り沙汰されるようになった。

 

大統領の長男、ドナルド・ジュニア氏は選挙期間中の昨年6月、ヒラリー・クリントン氏について「泥(不利な情報)」を持つというロシア人弁護士に面会していた。陣営の外交顧問だったジョージ・パパドプロス被告は、ロシア関係者との接触と面会の仲介についてFBIに嘘をついたと認めた。

 

ほかには誰が関与

 

大統領の娘婿、ジャレッド・クシュナー上級顧問の関与も注目されている。元選対本部長のポール・マナフォート被告は、大統領選とは関係のない資金洗浄罪で起訴された。

 

そして大統領は

 

ロシア疑惑捜査の一部を指揮していたジェイムズ・コーミー長官を今年5月に解任してからというもの、大統領による司法妨害があったのかどうかが議論されている。これについては法律の専門家の間で、意見が割れている。

 

(英語記事 The Trump-Russia saga in 200 words

 

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ロシア疑惑文書の筆者、トランプ氏への恐喝懸念 議員が証言公開

 

20180110

http://www.bbc.com/japanese/42632824

 

「スティール文書」に関する証言を公開した民主党のダイアン・ファインスタン上院議員

「ロシア当局がドナルド・トランプ氏について決定的に不利な材料を入手している」という調査報告書、いわゆる「スティール文書」に関する米上院公聴会での証言内容が9日、民主党議員によって公開された。文書を作成した元英国情報部員のクリストファー・スティール氏が、トランプ氏がロシアに恐喝されているかもしれないと懸念していたことが、改めて示された。

 

民主党のダイアン・ファインスタイン上院議員(カリフォルニア州選出)は、「スティール文書」の作成を依頼したワシントンの調査会社「フュージョンGPS」の創業者グレン・シンプソン氏が昨年8月に上院司法委員会で証言した際の記録を公表した。シンプソン氏は米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの調査報道記者を経て、「フュージョンGPS」を立ち上げた人物。

 

ファインスタイン議員は、シンプソン氏の依頼に基づき議事録を公開したと説明している。フュージョンGPSをめぐって「妙な憶測や誤情報」が飛び交っているため、証言内容を公表すべきと判断したという。

 

ファインスタイン氏は、トランプ陣営とロシア当局の共謀疑惑や司法妨害疑惑について、捜査や議会調査を妨げようとする「非常に心配な動き」があると懸念を示した。今月初めには、司法委員会のチャールズ・グラスリー委員長(共和党)が、スティール氏について刑事捜査すべきだと発言している。

 

ファインスタイン議員が公表した上院司法委員会の議事録は312ページに及ぶ。そのなかでフュージョンGPSのシンプソン氏は司法委に、スティール氏が20167月の時点で連邦捜査局(FBI)に、トランプ氏がロシアに恐喝されているかもしれないと、懸念を伝えていたと証言している。

 

議事録によるとシンプソン氏は非公開の公聴会で、トランプ氏や側近たちがロシア政府と個人的かつ金銭的につながっていると示す「スティール文書」の内容に自信を示したほか、文書が理由で殺害された人が1人いると証言した。

 

トランプ氏とロシアとの関係についての調査を出資したのは、ヒラリー・クリントン氏の陣営と民主党だったと言われている。ホワイトハウスや共和党関係者の多くは、「スティール文書」の内容に根拠はなく、選挙の対立候補に泥を塗ることだけを目的としたでっちあげだと非難している。

 

トランプ氏がロシア政府に脅されていたという主張を裏付ける証拠は、出てきていない。

 

しかしシンプソン氏は上院議員を前に、「(元英情報部員のスティール氏は)大統領候補が恐喝されているのかどうか、安全保障上の問題があるように見えると考えていた」と証言した。

 

シンプソン氏はさらに、「これが国家安全保障を脅かすのかどうか、クリス(スティール氏)はとても心配だと話していた。そして、この国の政府の誰かにこの情報を伝える義務があると思うと話していた」と証言した。

 

10時間にわたり証言したシンプソン氏は、文書の情報源について議員たちに聞かれても、なかなか答えようとしなかった。

 

フュージョンGPSの顧問弁護士ジョシュア・レビー氏が質疑に割って入り、「シンプソン氏は情報源を慎重に守ろうとしている」と言い、さらに「この文書の公表によってすでに人が1人殺されている。この文書は誠実な仕事の成果で、そのせいで誰かに危害がもたらされるようなことがあってはならない」と述べている。

 

レビー弁護士は、誰が殺害されたのか公聴会で明らかにしなかった。

 

しかしCNNは消息筋の話として、弁護士は特定の人物について言及したのではなく、2016年大統領選後に複数のロシア人が謎の死を遂げていることを念頭に発言したのだと伝えた。

 

「スティール文書」には、トランプ氏がかつてモスクワのホテルで複数の売春婦といるところを撮影されていたなどの内容が含まれている。

 

トランプ氏は昨年111日の記者会見で、この指摘をばかげたことだと一蹴。自分はロシアにいる間は常に、ホテルが監視されているという認識で行動していたなどと話していた。

 

シンプソン氏の証言内容について、FBIはコメントしていない。

 

BBCを含め複数の報道機関が、201611月の大統領選以前に文書について説明を受けていた。しかし、ほとんどの報道機関は内容の裏付けがとれないため、記事にしなかった。

 

米オンラインメディア「マザー・ジョーンズ」が同年1031日に文書の存在について記事にした後、CNNが昨年1月に文書について報道。続いて米バズフィードが、文書の内容をそのまま公表した。

 

シンプソン氏が「スティール文書」以前にロシア企業による人権侵害と資金洗浄を調査した際に、その調査の対象となった米国の投資家ビル・ブラウダー氏は米紙ニューヨーク・タイムズに対して、「(シンプソン氏は)中傷キャンペーンのプロで、金のためなら何でも言う嘘つきだ」と非難している。

 

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ホワイトハウス、FBI「権力乱用」文書公表を承認

 

2018023

http://www.bbc.com/japanese/42928284

 

米司法省と連邦捜査局(FBI)がドナルド・トランプ米大統領に反して偏っている証拠だとして共和党幹部がまとめた文書について、ドナルド・トランプ米大統領は2日、機密扱い解除を承認した。これを受けて連邦議会は、4ページにおよぶ文書を公表した。民主党は、大統領がこれを口実に特別検察官や司法副長官を解任すれば、ウォーターゲート事件当時のような「憲政上の危機」につながると警告した。

 

問題の資料は、米下院情報委員会のデビン・ヌネズ委員長(共和党)のスタッフがまとめた文書(メモ)で、司法省が外国諜報活動偵察法(FISA)にもとづく監視活動権限を乱用し、大統領選のトランプ陣営関係者を不当に監視しようとしたと非難している。ヌネズ議員はトランプ氏の当選後、政権移行チームに参加していた。

 

FBI31日、メモの正確性が疑わしいため、公表について「深刻な懸念を抱いている」と、ホワイトハウスの方針に反対する異例の声明を出した。

 

民主党は、ヌネズ・メモはFBIによるロシア疑惑捜査の正当性を否定するのが狙いだと批判している。

 

ヌネズ・メモは大統領選のロシア疑惑に関するいわゆる「スティール文書」を根拠に、司法省とFBIがトランプ陣営関係者の盗聴監視許可を延長しようとしたと指摘する内容になっている。FBIが昨年3月にFISA裁判所から盗聴令状の延長を得ようとする際に、内容が立証されていない「スティール文書」がその根拠だと裁判所に伝えていなかったと、ヌネズ委員長は問題視している。

 

資料によると、監視対象はトランプ陣営の外交顧問だったカーター・ペイジ氏。同氏は昨年11月、下院情報委員会に対し、20167月のモスクワ訪問でロシア政府関係者と面会したと証言している。

 

スティール文書は、ワシントンの調査会社「フュージョンGPS」が元英国情報部員のクリストファー・スティール氏に作成を依頼したもの。費用の一部は、ヒラリー・クリントン氏の陣営と民主党が出資した。

 

ヌネズ議員の資料はさらに、スティール氏が司法省幹部に、トランプ氏を当選させてはならない、自分は「必死だ」と話していたと書き、一連の動きは「米国民を権力乱用から守るために設けられた司法手続きの懸念すべき破綻」を示していると指摘している。

 

ヌネズ・メモは最高機密扱いに指定されていたが、129日にヌネズ氏が委員長で共和党が多数を占める下院情報委員会が公表を採択し、文書をホワイトハウスに送付。トランプ大統領が2日、機密指定解除を承認した。

 

共和党の反応

 

ヌネズ・メモの公表を支持する共和党関係者は、FBIや司法省における不正行為と政治的偏向を明るみに出すものだと評価する。

 

トランプ大統領は2日、資料の内容について質問され、大勢が「自分を恥じるべきだ」と答えた。大統領はそれに先立ち、FBIや司法省の捜査を政治的に利用して共和党を傷つけようという動きがあると非難していた。

 

ヌネズ委員長は、司法省やFBIが国民の信頼を「深刻に損なった」ことを示すもので、改革のきっかけになるよう期待すると述べた。

 

FBIの監視対象だったペイジ氏は、司法省に対する賠償訴訟でヌネズ・メモを証拠として使うと話した。

 

しかし、共和党の全員がヌネズ・メモ公表を支持しているわけではない。党重鎮のジョン・マケイン上院議員は、共和党の同僚たちがFBIや司法省を攻撃したことを鋭く批判し、トランプ氏が法の支配を損ねたと非難した。

 

マケイン議員はツイッターで、「FBIと司法省に対する最新の攻撃は、いかなるアメリカの利益にもならない。どの党にとっても、どの大統領にとっても。プーチンの利益になるだけだ」と書いた。

 

民主党の反応

 

民主党は、2016年大統領選でのロシア疑惑を捜査するFBIを貶めようとする「恥ずべき」行為だと反発している。

 

民主党のナンシー・ペロシ下院院内総務は、「情報機関の情報源や活動手法を保護しなかったことで、(トランプ氏は)たった今、お友達のプーチンに花束を贈ったわけだ」と反発した。

 

さらに、チャック・シューマー上院院内総務、ペロシ下院院内総務をはじめ、他に8人の民主党幹部は共同声明で、この文書を「口実」に、ロシア疑惑を捜査しているロバート・ムラー特別検察官や、ムラー氏を任命したロッド・J・ローゼンスタイン司法副長官を更迭してはならないと警告した。

 

「そのような正当性のない行動は、ロシア疑惑捜査に関する司法妨害の試みとみなす」と民主党幹部は言明し、そのようなことになれば1970年代に当時のリチャード・ニクソン大統領がウォーターゲート事件をめぐり特別検察官を罷免しようとした時のような「憲政の危機」につながると念押ししている。

 

ホワイトハウスは後に、司法省に「変更はない」と言明し、ローゼンスタイン副長官は今後も職務を遂行するものと認識していると述べた。

 

ウォーターゲート事件では、ニクソン大統領が197310月に、事件を捜査していた特別検察官の解任を命じ、司法長官と司法副長官が辞任した後、後任の司法長官が特別検察官を解任した。このてんまつは、「土曜の虐殺」と呼ばれる。この後、連邦議会で大統領弾劾決議案の提出が相次ぎ、翌19747月になって、下院司法委員会が大統領を司法妨害で弾劾する委員会決議案を可決した。ニクソン氏は同年8月に辞任した。

 

FBIの反応

 

他方で、FBI職員連合の報道官はヌネズ・メモ公表に先立ち1日、「党派的政争」にかまけて自分たちの職務から目をそらしたことはないし、「今後もそのようなことは容認しない」と声明を出している。

 

昨年夏にトランプ氏に指名されたFBIのクリストファー・レイ長官も、文書の公表前に、公表に対する「深刻な懸念」を表明。さらに公表を受けて、職員にメールで、「口先でしゃべるのはたやすい。長続きするのは実際の仕事の内容だ。自分たちの職務を(政治から)独立して、かつ規則通りに遂行するという、全員共通の決意は揺るがない。私は諸君と共にある」と伝えた。

 

トランプ氏から昨年5月に解任されたジェイムズ・コーミー前FBI長官はツイッターで、ヌネズ・メモの公表を受けて、「それだけ? 不正直で誤解を招くメモが下院情報委員会を台無しにし、各情報機関との信頼を破壊し、FISA裁判所との関係を傷つけ、米国市民に関する機密捜査の内容を暴露するという許しがたい行為に及んだ。なんのために? 司法省とFBIは職務を遂行しなくてはならない」と書いた。

 

秘密は明らかになった。メモは公表され、その結果は……あらかた誰もが予想していた通りだった。

 

共和党作成の資料が言われていたほど衝撃的なものかどうかは、いまや悪名高い「スティール文書」をどう捉えているかによる。FBIFISA裁判所にカーター・ペイジ氏の盗聴監視令状を請求した際、「スティール文書」が『不可欠な」要素だったという、ヌネズ・メモの主張を信じるか。それとも、ヌネズ委員長たちがあえて省いた情報が、令状請求の根拠として実はあったのか。

 

ヌネズ・メモは、FBIはスティール氏の立場についてFISA裁判所に説明すべきだったと主張する。つまり、スティール氏がトランプ氏に否定的で、報道機関としきりに接触し、そもそも文書のための調査活動費が一部、民主党やクリントン陣営から出資されていたことなどだ。

 

しかし、そのような情報開示がされていたとして、それでFISA裁判所は令状発行を拒否しただろうか? 1978年に設置されて以来、FISA裁判所は何万という監視令状請求を受けてきたが、令状を認めなかったのはごくわずかだ。そして、2013年の時点ですでに複数の米情報機関から要注意人物として注目されていたペイジ氏に対する監視活動ひとつを理由に、ロシア疑惑捜査の全てを疑問視しても良いのかどうか。FBIのロシア疑惑捜査は、ペイジ氏への監視を始める数カ月前から始まっていた。20167月に始まったトランプ陣営の外交顧問だったジョージ・パパドプロス被告への捜査が発端となっているのだ。

 

こうした疑問に対する答えによって、このヌネズ・メモが爆弾だったのか、それとも不発弾だったのか、今後への影響が決まる。

 

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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