古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

2019年10月

 古村治彦です。

 日本時間の日曜日夜、アメリカのドナルド・トランプ大統領はアメリカ軍特殊部隊がシリア北部を急襲し、イスラミック・ステイト(ISIS)指導者アブー・バクール・アル=バグダディ(Abu Bakr al-Baghdadi、1971-2019年、48歳で死亡)を自爆に追い込み、死亡を確認したと発表した。
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バグダディ
ISISは2014年からシリアとイラクの一部を占領・実効支配し、イスラミック・ステイトの樹立を宣言した。その創設者にして指導者のバグダディが殺害されたということは大きなニュースとなった。

 バラク・オバマ政権下の2011年にはテロ組織アルカイーダの指導者オサマ・ビンラディンがパキスタンの潜伏先で同じく米軍特殊部隊の急襲を受け殺害された。今回も米軍特殊部隊の作戦によってテロ組織の指導者が殺害されるということになった。
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作戦の様子を見守るトランプ大統領

 アメリカをはじめ関係諸国が行方を追っていたバグダディであったが、シリア北部で米軍特殊部隊に追い詰められ、最後は洞窟の中で自分の子供3人と共に自爆をするに至った。バグダディに関しては身柄を拘束して裁判を受けさせる(国際法廷になるか、シリアやイラクの法廷になるかは分からない)ようにすべきであったが、バグダディは自爆したと発表されている。アメリカ軍特殊部隊の動きが降伏へと誘導するのではなく、自爆に誘い込むようなものであったとするならば問題である。また、バグダディに付き従った人間たちを「多数」殺害したというのも降伏や投降の意思を示した者までも殺害したとなるとこちらも問題だ。

 私はISISの肩を持たない。しかし、「正義をくだす」ためにはそれなりの手続きが重要であって、そこに瑕疵があれば正義とは言えなくなる危険性が高いということを言いたい。ただ殺害すれば済むという問題ではない。

 トランプ大統領の発表では作戦時の様子にも触れられていたが、非常に生々しい言葉遣いであった。また、バグダディと「犬」を結び付ける表演が複数回使われていた。バグダディは洞窟の中で犬に追い回された上に、「犬のように亡くなった(died like a dog)」「犬のようにクンクンと怯えて鳴いていた(whimpering)」とトランプ大統領は発言している。これは、トランプ大統領独特の言語感覚ということもあるが、バグダディは人間ではない、だから裁判なんてしちめんどくさい手続きなしで殺してもいいんだ、ということを聴衆に刷り込ませたいという意図があってのことだろう。

 トランプ大統領は、ロシア、シリア、トルコに対して作戦上の協力を感謝し、クルド人勢力からは軍事上の協力はなかったが有益な情報提供があったことを認めた。ここから考えられるのは、ロシア、シリア、トルコからら軍事上の支援と情報提供があったということだ。2つの協力があったから謝意が表され、クルド人勢力に関しては情報提供があったことを認めるということになったのだと思う。

 従って、今回の作戦はアメリカ軍単独ではなく、ロシア軍、シリア軍、トルコ軍の共同作戦で、アメリカ軍に華を持たせる形でバグダディの追跡が任されたということだと思う。アメリカ(トランプ大統領)は、ロシア、シリア、トルコに対して大きな恩義、借りを作ったということになるが、これはアメリカ軍がこの地域から撤退してももう大丈夫という正当化と、この地域なロシアに任せますよという意思表示であり、最後に華を持たせてもらって出ていきやすくなったということだと考えられる。アメリカは海外のことに関わらず、国内の問題解決を優先するという「アメリカ・ファースト」にかなっているということになる。

 今回の作戦がこの時期に実施されたのはアメリカ軍の撤退を正当化するためのものであり、かつロシアがこの地域の担任となることを認めることもあり、米露の利害が一致したために実行されたと考えられる。

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領はアメリカ軍の急襲によってISIS指導者が死亡と発表(Trump announces death of ISIS leader in US raid

モーガン・チャルファント筆

2019年10月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/467620-trump-isis-leader

日曜日、トランプ大統領はイスラミック・ステイト(ISIS)の指導者アブー・バクール・アル=バグダディが北部シリアにおいてアメリカ軍の急襲によって殺害されたと発表した。

トランプ大統領はホワイトハウスのイーストルームにおいて声明を発表した。声明の中で大統領は「昨晩、アメリカ合衆国は世界ナンバーワンのテロリスト指導者に正義(の鉄槌)を下した。アブー・バクール・アル=バグダディは死亡した」と述べた。

アル=バグダディの死はテロリスト集団であるISISとの戦いにおける重要な象徴的な勝利を示すものであり、捕捉が難しいISIS指導者アル=バグダディを追跡するという数年間の努力が結実したことを意味する。アル=バグダディはこれまで何度か殺害されたと報じられたことがあった。

トランプ大統領は「危険かつ大胆な」作戦の詳細を説明した。バグダディはアメリカ軍特殊部隊によってトンネル内に追い詰められた。この時3人の子供を連れていた。そして、自爆用のヴェストを爆発させた。トランプ大統領は爆発後の残骸などを調査、テストし、バグダディが殺害されたことを示す証拠が出たと発言した。

トランプ大統領は「この極悪人は大変な恐怖の中で、完全なるパニックと恐怖の中で、最後の瞬間まで何とか他人になりすまそうともがいた。アメリカ軍が彼を完全に屈服させることに恐怖し続けた」と述べ、バグダディは「クンクンと情けない鳴き声を出しながら(whimpering)」死んでいったと発言した。

トランプ大統領はホワイトハウスのシチュエイション・ルームで作戦の「大部分」を見ていたと発言した。しかし、どこを見てどこを見なかったかの詳細については明らかにしなかった。ホワイトハウスは大統領の発表の後にその時の様子を撮影した写真を公開した。土曜日のシチュエイション・ルームの様子は、大統領の傍らにはマイク・ペンス副大統領、ロバート・オブライエン国家安全保障問題担当大統領補佐官、マーク・エスパー国防長官と軍部の最高幹部たちが座っていた。

トランプ大統領はアメリカ軍の急襲は2時間ほどで終了し、アメリカ軍はISISに関連する「非常に重要な情報を含む取り扱いに注意を要する文書や物資」を押収したと発表した。トランプ大統領は作戦中にアメリカ軍に死者は出ず、アル=バグダディの追随者たちの多くが殺害されたと発表した。

トランプ大統領は今回の作戦のことを3日前から知らされていたと述べ、連邦議会の指導者たちには、「リークされる」という恐れから伝えなかったとも発言した。

トランプ大統領は「リークによって作戦に参加した米軍の人員全てが殺害されることもあるだろうと考えた」と発言した。しかし、作戦終了後の日曜日にリンゼイ・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)とリチャード・バー連邦上院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)と会談を持ったとも述べた。

今回の発表はトランプ大統領にとって追い風となるだろう。ここ数週間、トランプ大統領は北部シリアからの米軍の撤退という決断に対して様々な角度から検証されてきた。批判する人々は、米軍の撤退によって、アメリカが盟友関係を築いてきたクルド人勢力に対してトルコ軍の軍事作戦が推進されると主張している。アメリカ軍の撤退によってISISが勢力を回復するのではないかと多くの専門家が懸念を表明していた。

トランプ大統領は日曜日、「昨晩はアメリカ合衆国と世界にとって素晴らしい夜となった。多くの人々の困難や死の原因となった野蛮な殺人者は荒々しく消滅させられた。バグダディは犬のように死んだ。臆病者のようにして死んだ。世界はこれまでよりもより安全な場所になった。アメリカに神のご加護がありますように」と述べた。

アル=バグダディの死はISISに対して大きな一撃を与えた。ISISは既にアメリカが主導する連合諸国によって縮小させられている。しかし、バグダディの死がISISの完全なる消滅を意味するものではない。

トランプ大統領は、アル=バグダディの死は、アメリカの「各テロリスト集団の指導者に対する飽くなき追跡とISISやそのほかのテロリスト組織の完全な敗北を確かなものとするための努力」が証明されたものだと高らかに宣言した。

「アメリカ軍が北部シリアでアル=バグダディを標的にした急襲作戦を実行した、そして武装勢力の指導者は殺害されたものと考えられる」という内容の報道が出始めたのが土曜日の夜遅くだった。トランプ大統領は内容の発表をもったいぶり、ツイッター上に「何かとてつもなく大きなことが起きた!」とだけ書いた。

トランプ大統領は日曜日にアメリカ軍の人員が安全に帰還した後でツイッター上に書き込みを行ったが、それはニュースメディアを警戒してのことだったと述べた。

トランプ大統領はロシア、トルコ、シリア、そしてイラクに対して、作戦への協力を感謝した。また、クルド人勢力が有益な情報を提供したことを認識していると述べた。トランプ大統領は、クルド人勢力は作戦において軍事的な役割を果たすことはなかったと述べた。大統領は作戦に参加したアメリカ軍と情報・諜報機関の人員に謝意を表した。

トランプはまた北部シリアからの米軍の撤退という自身の決断を擁護し続けた。とることシリアの国境地帯に米軍を駐屯させ続けることはアメリカの利益にかなうものではないと主張した。

トランプ大統領は「私たちはこれから200年もシリアとトルコの間に米軍を駐屯させたいなどとは望まない。シリアとトルコはこれまで数百年もの間戦ってきた。(だから勝手にすれば良いが)私たちは出ていったのだ」と述べた。それでも油田がISISの武装勢力の手に落ちないようにするためその地域にアメリカ軍を残しているとも述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 2019年10月15日のアメリカ大統領選挙民主党予備選挙候補者討論会(4回目)が終わった後に実施された世論調査の結果が出た。結果としてはジョー・バイデン前副大統領の支持率は伸びず、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)の支持率は伸びたということになる。インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジも支持率を回復している。
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トップ5のランク付けでは、バイデンとウォーレンが頭一つ抜け、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)が追いかけ、ブティジエッジが盛り返しつつあり、カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は置いていかれている、という展開になっている。
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 討論会についての記事でもご紹介したが、ウォーレンはトップランナー、フロントランナーということで討論会の場では他の候補者たちからの集中砲火を浴びたが、それをうまくかわしたということになる。そして、反論の機会が与えられたことで結果として発言時間が一番長かった。そこで自分の考えをアピールすることが出来た。
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 討論会の途中で速報という形で、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)が「サンダースを推薦する」と表明するというニュースが流れた。その後、アレクサンドリア・オカシオ=コルテスと同じく、進歩主義派組織「ジャスティス・デモクラッツ」に属しているイルハン・オマル連邦下院議員(ミネソタ州選出、民主党)、ラシーダ・タリブ連邦下院議員(ミシガン州選出、民主党)もサンダース推薦を表明した。サンダースの支持率にこれらの動きは反映されていない。これはジャスティス・デモクラッツを支持している有権者はサンダースを元々支持しているので、支持基盤が拡大しないということである。ただ、サンダースの支持基盤であるリベラル左派の若者たちは粘り強くて硬い。サンダースが心臓発作で倒れてしばらく選挙戦を離脱したということは、大きなマイナスになりそうだが、それでも支持率が堅調なのは有権者の支持の度合いが高いということになる。言葉は悪いが個人崇拝のようにさえ思える。
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 バイデンはこれまでの4階の討論会で鋭いところは何も見せられず、全くと言って見せ場はなかった。また、ドナルド・トランプ大統領のウクライナ疑惑に絡んで、地震のウクライナへの内政干渉疑惑や次男ハンター・バイデンのウクライナのガス会社取締役就任などの問題も出ている。トランプ大統領の疑惑の前からバイデン家の疑惑は別物として出ていたこともあり、「親バカ子バカ」で少しは影響があるように思う。

 それでも「非現実的な極左のサンダース、リベラル派のウォーレンでは選挙には勝てない、現実的なバイデンこそが選挙でトランプに勝てる候補者なのだ、当選可能性(electability)を見なければならない」という考えが根強くある。民主党を長年支持してきた高齢の有権者たちの間でこの考えが強い。また、アフリカ系アメリカ人有権者たちには史上初のアフリカ系アメリカ人大統領バラク・オバマによく仕えてくれたという恩義もあり、かつ、「ウォーレン?ブティジエッジ?はっ、白人のエリートさまだろ、自分たちには関係ない」ということもあり、バイデン支持は固い。

 民主党は左に寄り過ぎていてこれではトランプ大統領には勝てないということはよく言われている。これは、トランプ大統領が民主党のお家芸であった保護貿易や国内インフラ投資を実施し、労働者階級にアピールするという戦略を採っているために、仕方なくもっと左に寄ってしまうということになっているのだ。共和党の主流派から見れば全くもって苦々しい限りだ。トランプ大統領が左に寄りかかってきたために、民主党自体がもっと左に押し出されているということになる。民主党自体が実は端に追い詰められているという言い方もできる。これを押し戻すことは難しい。

(貼り付けはじめ)

バイデンとギャバードは討論会後に好感度の下落に苦しむ(Biden, Gabbard suffer hits to favorability after debate

レイチェル・フラジン筆

2019年10月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/466838-biden-gabbard-suffer-hits-to-favorability-after-debate

最新の世論調査の結果が発表され、アメリカ大統領選挙民主党予備選挙の候補者ジョー・バイデンとトゥルシー・ギャバード連邦下院議員(ハワイ州選出、民主党)は、民主党予備選挙参加予定の有権者の間での純好感度(「好き」の数字から「嫌い」の数字を引く)が下がってしまっている。今回の世論調査は4回目の民主党予備選挙候補者討論会の後、また、ギャバードが2016年の民主党大統領選挙候補者ヒラリー・クリントンと争っている中で実施された。

先週、オハイオ州ウエストヴィルで開催された4回目の討論会の後、月曜日に発表されたモーニング・コンサルト社の世論調査の結果では、ジョー・バイデン前副大統領の純好感度(「好き」の数字から「嫌い」の数字を引く)は55%から50%に5ポイント下落した。ギャバードは10%から4%に6ポイント下落した。

その他の多くの候補者たちの純好感度は比較的安定している。エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は1ポイント上昇し、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は変化なく、カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は1ポイント下落した。

インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジは純好感度が33%から36パーセントに増え、最大の増加となった。

純好感度の計算方法は、その候補者について「好き」と答えた有権者の割合から「嫌い」と答えた割合を引くというものだ。

今回の世論調査でもバイデンは予備選挙でリードしている。支持率は30%だった。バイデンに続くのがウォーレンで支持率21%、サンダースの支持率は18%だった。

討論会には12名の候補者たちが参加し対決した。

ヒラリー・クリントン元国務長官がギャバードはロシアにとっての財産だと示唆したと証拠はないが噂された。それ以降、ギャバードはヒラリーと小競り合いを続けている。ギャバードはロシアとの関係を否定し、ヒラリーを「戦争屋たちの女王(queen of warmongers)」と一刀両断に切り捨てた。

モーニング・コンサルト社の世論調査は、民主党予備選挙もしくは党員集会に参加予定の有権者登録をしている1万1521名を対象に2019年10月16日から20日にかけて実施された。誤差は1ポイントだ。

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世論調査:ウォーレンは全国規模の世論調査でバイデンに対して7ポイントの差をつける(Warren opens up 7-point lead over Biden nationally: poll

タル・アクセルロッド筆

2019年10月24日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/467231-warren-opens-up-7-point-lead-over-biden-nationally-poll

木曜日にキュニピアック大学が最新の世論調査の結果を発表した。エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は2020年アメリカ大統領選挙民主党予備選挙において2位に7ポイントの差をつけている。

民主党支持、民主党寄りの無党派の有権者の28%がウォーレンを支持すると答えた。一方、21%がジョー・バイデン前副大統領を支持すると答え、15%がバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)を支持すると答えた。

インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジの支持率は10%となり、ここまでが支持率で2桁を記録した候補者となった。

ウォーレンの支持率は今月初めの調査に比べて2ポイント下がったが、バイデンの支持率は6ポイント下がった。サンダースの支持率は4ポイント上昇した。

キュニピアック大学世論調査分家のメアリー・スノウは「ジョー・バイデン前副大統領の支持率は下がり、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員とバーニー・サンダース連邦上院議員の支持率は堅調だった。ピート・ブティジェッジ市長の支持率は2桁に回復した」と述べた。

ウォーレンのリードは、いくつかの重要な人口動態学上のカテゴリーでのリードによって強められている。「とても」リベラルだと自己規定している有権者たちの間では33ポイントの差をつけている。また、白人有権者の間では5ポイントの差をつけてリードし、大学学位保有者の間では15ポイントの差をつけてリードしている。更には18歳から34歳までの有権者の間では7ポイントの差をつけている。

バイデンは、穏健派もしくは保守派の有権者の間では19ポイントの差をつけてリードしている。また、男性で大学学位を持っていない有権者の間では8ポイントの差をつけ、アフリカ系アメリカ人有権者の間では38ポイントの差をつけてリードしている。

ウォーレンは「私はそのことについて計画を立てている」という作戦によって利益を得ている。有権者の30%がウォーレンは最も良い考えを持っていると答えている。20%がサンダースは最も良い考えを持っていると答え、15%がバイデンは最も良い考えを持っていると答えた。

バイデンは全体的に下落しているが、それでもトランプ大統領を倒すことができる最善の有権者だと考えられている。民主党支持と民主党寄りの無党派の有権者の42%が現職大統領を追い出すための最善の機会を持っていると答えた。20%がウォーレン、14%がサンダースと答えた。

今回の世論調査はウォーレンが民主党予備選挙で支持率トップになっていることを示すいくつかの世論調査の一つである。この場合、バイデンとサンダースが2位の座を争っている。しかし、今回の世論調査でも、バイデンは本選挙での当選可能性を持っているという主張は、彼が全国で選挙運動を行う中で有権者にアピールしている。バイデンはトランプを「太鼓を叩くように叩き潰す」と発言している。

キュニピアック大学の世論調査では、民主党支持と民主党寄りの無党派の有権者たち713名を対象に2019年10月17日から21日まで実施された。誤差は4.6ポイントだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 遅くなったが、2019年10月15日に開催された第4回アメリカ大統領民主党予備選挙候補者討論会の様子をまとめた記事をご紹介する。
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 全体としてはジョー・バイデン前副大統領とカマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)の仲良しコンビにとってはマイナス、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)とバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)のリベラル左派・進歩主義派コンビ、そして中道派(新自由主義的傾向もある)インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジにとってはプラス、ということになった。発言時間もこの上位5名がやはり多かった。

 バイデンはこれまでの討論会では見せ場がなく、「眠たげなジョー(Sleepy Joe)」という印象を強めただけであったが、今回もそれが続くことになった。それでもジョー・バイデンは支持率トップを続けているが、これは「オバマ政権時代は良かったな」という民主党支持の有権者たちの郷愁と投票率が高い高齢の有権者たちの支持によるものだ。また、アメリカ初のアフリカ系アメリカ人大統領となったバラク・オバマをよく支えた人ということで、アフリカ系アメリカ人有権者からの支持も高い。

 ウォーレン、サンダース、ブティジェッジはアフリカ系アメリカ人有権者からの支持獲得で伸び悩んでいる。ウォーレンやブティジェッジは白人である上にアメリカの名門大学の集まりであるアイヴィー・リーグの先生だったり出身だったりで、アフリカ系アメリカ人たちからすると「自分たちとは関係のない人たち」ということになってしまう。ウォーレン、サンダース、ブティジェッジは白人のリベラル、大学の学位を持つ人々の支持は高いので、そこからどれだけ支持の幅を広げられるかということになる。

 討論会での丁々発止、激しい批判に当意即妙の反論、切り返し、時に見せるユーモアを見れば、「ああやっぱり日本は遅れているなぁ」と思わされてしまう。カニやメロンを贈られて喜んでいる有権者のレヴェルにあった政治と言えばそれまでだが、これでは戦前から何も進歩も進化もしていないということになる。悲しいことだ。

(貼り付けはじめ)

オハイオ州での討論会での5つのハイライト(Five takeaways from the Democratic debate in Ohio

ナイオール・スタンジ筆

2019年10月16日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/the-memo/466013-five-takeaways-from-the-democratic-debate-in-ohio

火曜日に第4回アメリカ大統領選挙民主党予備選挙候補者投函買いが開始された。オハイオ州ウエストヴィルで12名の候補者たちが争った。

火曜日の討論会の5つのハイライトは何だろうか?

●ウォーレンは批判の矢面に立つ(Warren in the firing line

エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は最近の各種世論調査でトップに躍り出ている。ライヴァルたちが彼女をターゲットにして攻撃したことで、ウォーレンは新たな先頭走者になったのだということが強調される結果となった。

他の候補者たちは彼女の勢いを弱めなければと躍起になった。

インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジ(民主党)とエイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)は候補者たちの中で、最もウォーレンを攻撃した候補者ということになる。ブティジェッジとクロウブッシャーは討論会の冒頭からウォーレンを攻撃し、それからカマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)とビトー・オローク前連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)が攻撃に加わった。

ウォーレンは攻撃によって崩れることはなかった。しかし、彼女はこれまで経験したことないほどに防御に回った。

彼女の「メディケア・フォ・オール」計画について、ブティジェッジはこの計画では選択を制限するものだと主張した。一方、クロウブッシャーは計画の財源には税金の引き上げも含まれるとウォーレンが認めることを拒絶しことを攻撃した。

税制についてウォーレンは、「有権者はコスト全体について懸念を持っている、税金が上がってもそれは相殺される、何故なら民間保険の保険料を支払う必要がなくなるからだ」と主張している。この主張は論理的には正当化できる。ライヴァルたちは、ウォーレンの税金についての曖昧に見えるところを利用して攻撃するようになる。

マサチューセッツ州選出連邦上院議員であるウォーレンは、討論会が進むにつれて、より過ごしやすそうにしているように見えた。「民主党には“アメリカが抱える深刻な諸問題をおざなりにする“のではなくより野心的な政策が必要なのだ」というウォーレンの基本的な立場は進歩主義的な考えを持つ有権者を惹きつけている。

ウォーレンは最初に批判の集中砲火を浴びたがうまく生き延びた。しかし、選挙に関心を持つ人々は、火曜日の夜の討論会での集中砲火によって彼女の前進が遅くなっているのかどうか、これから出てくる世論調査の数字を注目している。

●バイデンにとっては再び悪夢の夜となった(A bad night for Biden — again

これまでの3回のジョー・バイデン前副大統領の討論会でのパフォーマンスは良くないものだった。これが問題であった。そして、火曜日の夜でもこのような流れを覆すことができなかった。

76歳のバイデンはウエストヴィルにたくさんある小麦の収穫後の刈り後に溶け込んでいった。バイデンにスポットライトが当たりながらも、彼の答えはまたもことごとく平凡で鋭さやパンチ力に欠けるものとなった。

バイデンはバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)よりも2歳若いが、バイデンの答えはことごとくより時代遅れの言葉が使われ続けた。火曜日、バイデンは「株式市場で多くの債権をクリップしている(clipping coupons in the stock market)」人々について語ったが、この表現は数十年前に使われていたが、今は使われていないものだ。

バイデンの支持者たちは、「バイデンへの支持はより年齢の高い、より中道派の民主党員からのもので、トランプを倒すための最強の候補者だ」と主張するだろう。

火曜日夜の討論会でのバイデンのパフォーマンスは場を支配するとは程遠いものだった。

●バーニーの復活、AOCの助けを借りて(Bernie bounces back — with AOC’s help

今回の討論会でサンダースには彼の健康について真剣な疑問が寄せられた。78歳になるサンダースにとって心臓発作で倒れてから初めての大きな舞台への登場が討論会だった。

サンダースはこのような懸念を、いつも通りの激しいパフォーマンスをすること払しょくした。熱意やスタミナが欠けている兆候は微塵もなかった。

長年民主社会主義者であることを貫いてきたサンダースの勢いをつける最大の要素が討論会の会場の外からもたらされた。

ウエストヴィルでの討論会が終わりに近づく中、『ワシントン・ポスト』紙が速報として、サンダースに対して、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)が土曜日にニューヨーク市のクイーンズ地区での集会で推薦することを発表するだろうと報じた。それからすぐに、イルハン・オマル連邦下院議員(ミネソタ州選出、民主党)とラシード・タリブ連邦下院議員(ミシガン州選出、民主党)も彼を支持することになるだろうというニュースが流れた。

オカシオ=コルテス議員からの推薦というニュースは火曜日の討論会の壇上で起きたいかなることもよりも大きなニュースとなった。左派のアイコンで若手のオカシオ=コルテス議員からの推薦それ自体は何も驚くべきことではない。2016年の大統領選挙で、オカシオ=コルテス議員はサンダース陣営のヴォランティアのオーガナイザーをしていた。オカシオ=コルテス議員の推薦がこれ以上にないタイミングで報じられたことで、サンダース選対は熱狂に包まれた。これはウォーレンにとっては失望となるだろう。それはオカシオ=コルテス議員は以前ウォーレンを称賛したこともあったからだ。

●ブティジエッジは上昇局面を掴んだ(Buttigieg seizes his moment

ブティジェッジは火曜日の討論会で唯一素晴らしい出来だった候補者だ。 彼はウォーレンを攻撃した。討論会において重要な序盤で素晴らしいパフォーマンスであった。彼はリベラル派以外の有権者ともつながることが出来る候補者として、彼の主張を幅広く主張できた。

ブティジェッジはこれまでテレビで有効なパフォーマンスをしてきた。そして政治献金集めで強さを見せている。

しかし、ブティジェッジはこれらの強みを世論調査の支持率の数字の上昇につなげることに苦労してきた。

37歳の市長であるブティジェッジの前には、ウォーレンとサンダースが代表している民主党内の進歩主義派に対抗する中道派の現実主義者としてバイデンを追い越すという大きな壁が立ちふさがっている。

ブティジェッジは火曜日には出にアピールすることが出来た。そして、バイデンが弱さを見せていることを利用し、それに突けこむことが出来た。

●ハリスのウォーレンに対する攻撃は不発だった(Harris misfires with Warren attack

ハリスは6月末にマイアミで開催された初めての候補者討論会で輝いた。しかし、それ以降、支持率は下がっていった。

ハリスは火曜日の討論会の序盤で目立っていた。一般的な医療問題から女性の出産する権利に話題が転換するときに彼女は議論をリードした。これはホール内の観衆を感動させ、おそらく民主党支持の有権者たちの多くも感動させるものだった。

ハリスにとって悪い意味で目立ってしまったのは、それからあとのトランプ大統領のツイッターアカウントを話題にしてのウォーレンとのやり取りだった。

ハリスは、ウォーレンに対して、「私がトランプ大統領にSNSの使用を禁止させようとしていることにあなたが支持を表明していないのはどうしてですか」と攻撃をかけた。しかし、ウォーレンはハリスからの攻撃に対して、「私はトランプをホワイトハウスから追い出すことに集中しています。ツイッターからだけのことではないのです」と述べてハリスの攻撃を軽く退けた。

ハリスはあくまでウォーレンと対峙することにこだわったが、その結果はウォーレンよりもハリス自身にマイナスとなった。カリフォルニア州選出連邦上院議員ハリスは狭量でけち臭く見えた。

ウォーレンとのやり取りは、余裕がないように見えたハリスにとって良くない瞬間だった。

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ウォーレンは討論会において発言時間でリードした(Warren leads in speaking time during debate

ジャスティン・コールマン筆

2019年10月15日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/466009-warren-leads-in-speaking-time-during-debate

エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は、火曜日の第4回のアメリカ大統領選挙民主党予備選挙候補者討論会において発言時間で候補者たちをリードした。

CNNの発言時間測定者によると、ウォーレンはトップ集団に入っている候補者であるが、ライヴァルたちから頻繁に攻撃され、それに対する反論する時間が与えられたので3時間の討論会において約23分の発言時間が与えられた。ジョー・バイデン前副大統領はウォーレンよりも6分半短い、16分半の発言時間が与えられた。今回の討論会はCNNと『ニューヨーク・タイムズ』紙が共同で主催した。

キュニピアック大学の世論調査の最新結果では、ウォーレンはバイデンに対して3ポイントの差をつけている。デラウェア州選出の連邦上院議員だったバイデンをウォーレンがリードするという結果が出る世論調査がいくつかあり、今回の世論調査はその1つだ。

ウォーレンはマサチューセッツ州選出の連邦上院議員であり進歩主義派だ。最近の各種世論調査で支持率を上げている。ウォーレンの「メディケア・フォ・オール」計画と富裕層への増税に対して批判が集中した。ウォーレンは名指しで批判されたので、司会者たちは彼女に反論の機会を与えたので、彼女の発言時間は増える結果となった。

エイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)、ビトー・オローク前連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)、インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジは約13分間の発言時間が与えられた。

カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は12分半の発言時間が与えられ、コーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州、民主党)には12分弱の発言時間が与えられた。

IT実業家アンドリュー・ヤン、前住宅・都市開発長官フリアン・カスロト、トゥルシー・ギャバード連邦下院議員(ハワイ州選出、民主党)、大富豪のトム・ステイヤーの発言時間は10分以下だった。社会事業家でもあるステイヤーは選挙戦出馬が遅くなり、今回が初めての討論会参加となった。ステイヤーが候補者の中で発言時間が最も短く、7分強だった。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 副島隆彦先生の最新刊『米中激突恐慌』が発売されます。以下にまえがき、目次、あとがきを貼り付けます。参考にして、お手に取ってお読みください。よろしくお願いします。

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米中激突恐慌-板挟みで絞め殺される日本 (Econo-Globalists 22)

(貼り付けはじめ)

まえがき

この本を書き上げた直後(9月30日)、私はヨーロッパから情報をもらった。名門ドイツ銀行(ヨーロッパ最大の民間銀行。ドイツの中央銀行[ブンデスバンク]ではない)が破綻(はたん)する。ヨーロッパに金融危機(フアイナンシヤル・クライシス)が起きる。日本円は、激しく円高になる。1ドル=100円を割って80円、60円台になるだろう。

ヨーロッパ(EU)とアメリカ(トランプ政権)の貿易戦争(トレイド・ウオー)も始まった。制裁関税のかけ合いだ。欧米白人文明の内部分裂が起きている(10月2日)。

(きん)が、この6月初めから急激に上がりだした。

1トロイオンス(31.1グラム)が1560ドル(9月4日)まで上がった。日本の国内の価格では、1グラムが5300円(9月5日。卸値[おろしね])になった。「金(きん)を買うように」と、ずっと勧(すす)めてきた私の考えの勝利である。このあと、金(きん)はもっと上がってゆく。これまで金を買ったことのない人は、今のうちに金(きん)の地金(じがね)を買ったほうがいい。長い目で見て、金はもっともっと上がる。今の2倍になる。第2章で、これからの動きを詳しく予測する。

あと一度、下(した)()し(下落)したら、そこでサッと拾い(買い)なさい。

株価は、NY(ニユーヨーク)でも日本でも、最高値を更新しつつあるように見えた。だが、もうすぐ暴落が起きる。いくら上がっていると言っても、ジェットコースターと同じで、急降下する。この動きを2カ月周期で繰り返す。今の世界の金融市場は、きわめて不安定である。

このことを投資家、資産家、企業経営者は、肌身(はだみ)でよく分かっている。私たちは注意深くならなければいけない。常に慎重になって、用心しなければいけない。調子に乗って、また大損して痛い目に遭()うのは自分だ。ただし、生来(せいらい)の博奕(ばくち)打ちの才能のある人は別である。彼らは瞬時(しゅんじ)に動く。そうでないと、勝ち残れない。そういう人々は、私の本から世界の金融の動きの知識と情報だけ、取って行ってください。

この本では、米と中が、防衛(軍事)と金融経済の両面でぶつかることで、世界が不安定になって、金融恐慌が起きることをずっと説明してゆく。

アメリカと中国が貿易戦争(トレイド・ウオー)(ハイテク、IT[アイテイ]戦争でもある)で激しく衝突するたびに、NYや東京の株価が落ちる。そのせいで、世界中が不安定だ。このことを投資家や資産家が、心配して動揺している。自分の金融資産や投資した資金が、安全に守られるか、という根本的な不安を抱えて、そのことを口に出し始めている。

「株や債券の値下がりを見越して、先物(さきもの)の売りで儲けを出そう」とか、「金(きん)の地金(じがね)が値上がり出したので、そっちに短期間だけ資金を移そう」とかいう、安易な考えはダメだ。どうも、アメリカを中心にした戦後76年目の、世界金融体制(金・ドル体制。ブレトンウッズ体制)の崩壊、終わりが近づいている。そのことを投資家や資産家が、肌合いで敏感に感じ取っている。

私は最近、彼らから、直接の苛立(いらだ)ちや訴えを聞くようになった。彼らの、投資家としての動物的な勘(かん)から来る不安に対して、私はどのような理論と対策を立てることができるか、を真剣に考えている。

米と中が、世界覇権(ワールド・ヘジェモニー world hegemony )すなわち、世界の支配権をめぐって激突している。これが今の不安定な金融市場の大きな原因である。この本の英文書名に載()せたとおり、" The US‐China Hegemonic Cold war "「ザ・ユーエス・チャイナ・ヘジェモニック・コールド・ウォー」である。それは去年(2018年)3月に、貿易戦争(トレイド・ウオー)の火ぶたが切られたときからだ。米トランプ大統領が、先制攻撃(プリエンプテイブ・アタツク)で先に手を出した。

「もうこれ以上、中国を放っておくことはできない」と。さあ、それでだ。この戦いは、アメリカと中国の、果たしてどちらが勝つか。

日本国内では、今もなお、保守的な資産家や投資家、企業経営者たちは、「絶対に、アメリカが勝つ」と固く信じている。「やっぱりアメリカは強いんだー」と威勢よく言っている。だから、彼らは「NYや東京の株は、まだまだ上がり続ける」、そして「円ドルの為替(かわせ)相場は、強いドルが続くので、1ドル=130~140円の円安ドル高になる」と予想している。そういう人が多い。果たしてそうか。

私、副島隆彦の本の読者であれば、もう少し深い知恵に基づく、別の見方をする。このことをずっと、この本で説明してゆく。

副島隆彦

=====

目 次

まえがき

第1章 「米中激突 恐慌」と日本

●中国に対する、アメリカ国民の切迫感とは

●なぜトランプは「2人の主要閣僚」を叱りつけたのか

●市場を直撃した大統領のトゥイッター

●消費税10%で日本の景気はどうなるか

●ジェットコースター相場で、下落(11月)上昇(12月)暴落(2020年1月)

●反中国の「フォアマン・レイバラー」とは何か

●〝スプートニク・ショック〟の再来

●アメリカ人は中国への親近感を抱き続けてきた

●これからの株価を予測する

●トランプの「(政策)金利を下げろ」は正しいのか

●逃げ場がなくなる先進国

●2024年、先進国の財政崩壊(フィナンシャル・カタストロフィー)が起きる

●中央銀行総裁と財務長官の違い

●トランプは、アメリカの隠された大借金を無視できない

●「強いドル」の終わり

●恐るべき中国のプラットフォーマー

●銀行が消滅する時代

●日本が買わされたのは、トウモロコシだけではなく大量の兵器

第2章 今こそ金(ゴールド)を握りしめなさい

●金(きん)を買う人、売る人が増えている

●あと2年で金(きん)1オンス=2000ドルに

●世界金価格を決めるのは上海とロンドン

●ウソの統計数字に騙(だま)されてはいけない

●中国とロシアは、米国債を売って金(きん)を買った

●最後の買い場がやってきた

第3章 米中貿易戦争の真実

●米と中の冷戦(コールド・ウオー)はどのように進行したか

●ファーウェイ副社長の逮捕と、中国人物理学者の死

●トランプを激怒させた中国からの政府公電

●「アメリカ政府による内政干渉を許さない」

●なぜトランプは折れたのか

●李()(こう)(しよう)になぞらえられていた劉鶴

●対中国制裁関税「第4弾」の復活

●妥協派と強硬派――アメリカ国内が分裂している

●米国のIT企業とファーウェイ

●アメリカに敗北し続けてきた日本

第4章 米国GAFA 対 中国BATHの恐るべき戦い

●アリババ(BATHのA)の金融商品が与えた衝撃

●追い詰められたアップル社

●トランプはアメリカ帝国の墓掘り人になる

●アリババの歴史と全体像

●7000倍の資産膨張

●貿易戦争からハイテク戦争、そして金融戦争へ

●「中国の手先」と非難されるグーグル

●ホワイトハウスに呼びつけられたグーグルのCEO

●未知なる最先端の何ごとかが進行している

第5章 金融秩序の崩壊

●日本が買わされている米国債の秘密

●ECB総裁が「恐慌突入」を認めた

●2024年、10000円が1000円になる

あとがき

=====

あとがき

この『米中激突 恐慌』は、表紙に打ち込んだとおり、 Econo-Globalists 「エコノ・グローバリスト・シリーズ」の22冊目である。よくもまあ22年間も、私は金融本を毎年、書き続けて、生きながらえたものだ。我ながら感心する。

 この本を書き進めながら、第4章に入ったところで異変が起きた。私の脳にひらめきが起きた。第3章までは、まあ私のいつもの金融と経済(そしてそれを世界政治の動きから見る)の、どぎついあれこれの洞察(どうさつ)である。

第4章に来て、私は急に一気に、高いところに到達した。問題は、米と中の貿易戦争が、IT(アイテイ)ハイテク戦争に姿を変えたことではなかった。現下(げんか)の貿易戦争は、本当は金融戦争だったのである。すでに5(フアイブ)(ジー)の世界規準を握った中国ファーウェイ(華為技術)社をめぐるあれこれの抗争と、米中政府間(かん)の激突ではなかった。問題は、ファーウェイではなく、アリババ(及びテンセント)だったのだ。アリババが先駆(せんく)して握りしめた、スマホ決済と与信(金融)、さらには預金機能(金融商品のネット販売だ)が、世界の金融体制を根底から覆(くつがえ)しつつある。まさしく大(だい)銀行消滅である。クレジット会社もカード会社も銀行も、世界中で消滅してゆく。

 ヨーロッパ近代(モダーン)が始まって、ちょうど500年である。この近代500年間の欧米白人文明が敗北しつつある。問題はファーウェイではなく、アリババだったのだ。真に頭のいい人は、本書の第4章を読んで驚愕してください。ついでに、ソフトバンクの孫正義(そんまさよし)氏の力(ちから)の謎と裏側もバッサリと解いた。乞()うご期待だ。

 私とともに、この20年間、「エコノ・グローバリスト・シリーズ」で走り続けてくれた、担当編集者の岡部康彦氏が、満期退職した。岡部氏が念入りに下ごしらえしてくれたので、本書の第4章の快挙も成し遂げることができた。彼との仕事での長い付き合いは、このあとも続く。記して感謝する。

2019年10月

副島隆彦

(貼り付け終わり)
ginkoushoumetsu005

銀行消滅 新たな世界通貨(ワールド・カレンシー)体制へ (Econo-Globalists 20)

(終わり)

ketteibanzokkokunihonron001
決定版 属国 日本論
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 古村治彦です。

 アメリカ大統領選挙民主党予備選挙の動向は大きく変わっていない。トップ3が他を大きく引き離している。ジョー・バイデン前副大統領、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、民主党)がトップ3だが、ウォーレンが2位の位置を固め、いくつかの世論調査ではトップに立っている。私が信頼している誤差の少ない世論調査の結果ではバイデンがリードを保っている。サンダースは支持を伸ばせないままだ。

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トップ3がいずれも70代というのは、民主党にとってはあまり良い傾向ではない。今は平均寿命が延びて、老齢となっても元気な人が多いので年齢は問題ではないとは言っても、大統領職は激務であって、体力と精神力、判断力が必要であり、年齢がどうしても注目される。前回の大統領選挙でもヒラリー・クリントン元国務長官の健康問題が取り上げられたが、今回はバーニー・サンダースが心臓発作で倒れて数週間休むことになったので、健康問題にも改めて関心が集まっている。
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 他の候補者たちで、カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は支持率を乱高下させてきたが、ここにきて下がり傾向が続いている。インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジは支持率の下落傾向は止まったが、上昇に転じられないままだ。
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 下位ではアンドリュー・ヤンとトム・ステイヤーという2人の政治経験のない実業家たちが数字は低いが支持率を伸ばしている。ステイヤーは早期に予備選挙が実施される州で支持率を伸ばしている。トム・ステイヤーは豊富な自己資金を早期に予備選挙が実施される各州でのテレビCMに投入して宣伝に努め、その効果が出ている。また、2017年からドナルド・トランプ大統領の弾劾要求運動を始めており、そのことでも支持を集めている。

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 バイデンは4回目の討論会でもいいところなしだった。スリーピー・ジョー(眠たげなジョー)そのままだった。それでも支持率を少しは下げているがトップに立っているのは、彼が約30年近く連邦上院議員を務め、副大統領をして来たという実績があってのことだ。また、アフリカ系アメリカ人有権者からは「アメリカ初のアフリカ系アメリカ人大統領となったバラク・オバマによく仕えてくれた人」ということで絶大な支持がある。全米規模で労働組合とも良い関係を築いている。ウォーレン支持者は白人で大学の学位を持っていて、リベラル派という人たちだ。ウォーレンはこれからどのように支持を拡大していくかが課題となっている。サンダースは熱狂的な支持者が若者を中心にして多いが、過激すぎるために支持拡大は難しい。キャスティングボートを握るだろうが、サンダースが党の指名候補者になることはない。ここからは、バイデンとウォーレンのマッチレースということになる。

(貼り付けはじめ)

全国規模の世論調査でバイデンはウォーレンに対して2桁のリードを保っている:世論調査(Biden maintains double-digit national lead on Warren: poll

レイチェル・フラジン筆

2019年10月15日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/465825-biden-maintains-double-digit-national-lead-on-warren-in-morning-consult

火曜日の民主党討論会の前に発表された世論調査の結果、ジョー・バイデン前副大統領は他のアメリカ大統領選挙民主党予備選挙候補者に2桁のリードを保っている。彼に迫っているエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)も2桁のリードをつけられている。

「モーニング・コンサルト」社は月曜日に世論調査の結果を発表した。全国規模で民主党予備選挙に参加する予定の有権者たちの32%がバイデンを支持し、ウォーレン支持は21%だった。

バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)も2桁の支持率を記録しているが、他の候補者たちは2桁に届かなかった。サンダースの支持率は19%だった。サンダースに続くのは、カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)で支持率は6%、インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジ(民主党)の支持率は5%だった。

先週に比べ、バイデンの支持率は1ポイント下がった。他の候補者たちの支持率は横ばいだった。

モーニング・コンサルト社の世論調査は、民主党予備選挙に参加予定の有権者15683名を対象に実施された。結果の誤差は1ポイントだ。

バイデン、ウォーレン、サンダース、ハリス、ブティジェッジを含む12名の候補者が火曜日夜にオハイオ州ウエストヴィルで開催される討論会に参加予定である。

=====

全国規模の世論調査の最新の結果でウォーレンは3ポイントの差をつけてリード(Warren leads Democratic field by 3 points in new national poll

マックス・グリーンウッド筆

2019年10月14日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/465727-warren-leads-democratic-field-by-3-in-new-national-poll

キュニピアック大学は月曜日、最新の世論調査の結果を発表した。エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は民主党予備選挙の有力候補をリードしているが、ジョー・バイデン前副大統領を僅差で抑えている。

全国規模の民主党支持、民主党寄りの有権者たちの30%の支持を集め首位となった。バイデンは大きく離されていない。バイデンの支持率は27%だった。両者の差は世論調査の誤差5.3ポイントの範囲内に収まっている。

両者以外で2桁の支持率を記録したのはバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、民主党)で支持率は11%だった。インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジとカマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)はトップ5を形成しており、それぞれ支持率8%と4%を記録した。

今回の世論調査の結果はウォーレンの伸びを示している。先週、キュニピアック大学が発表した世論調査の結果では、ウォーレンの支持率は29%だった。この時の世論調査でもバイデンは第2位となり、支持率は26%だった。

今回の世論調査の結果では、サンダースは支持率を大きく下げている。彼は心臓発作で倒れてから数週間、選挙戦から離脱した。サンダースの支持率は先週の世論調査の結果では16%だったが月曜日に発表された今回の世論調査の結果は11%となった。選挙戦の離脱とこれまでも囁かれてきた彼の健康に関する疑問によって彼の支持率を低下させる原因となった可能性が高い。

今回の世論調査が示しているのは、かつて「ウォーレンは2020年の大統領選挙本選挙でトランプを倒す能力を持っているのかは疑問だ」と考えていた候補者たちが彼女の能力を評価するようになっているということだ。

今回の世論調査の結果では、有権者の21%が来年の選挙でウォーレンがトランプを倒すチャンスを持っていると答えた。8月9日に発表されたキュニピアック大学の世論調査の結果から9ポイント上昇した。

「誰がトランプを倒せるか」というについて、バイデンは他の候補者たちをリードしている。有権者の48%が2020年の大統領選挙でトランプを倒すチャンスを持っていると答えた。8月の調査では49%だったので少し下がったことになる。

オハイオ州ウエストヴィルで4回目の討論会が開催され、2人のトップランナーを含む12名の候補者たちが参加する。今回の世論調査の結果は討論会の1日前に発表された。ここ数週間、いくつかの世論調査でウォーレンがバイデンを抑えているという結果が出ているが、今回の世論調査もその1つだ。

キュニピアック大学の世論調査分析家であるてぃむ・マロリーは、今回の世論調査の結果はウォーレンが「持久力」を持っていることを示していると述べている。今回の結果で、ウォーレンは3回連続で首位となっている。

次回の討論会(10月の討論会)に向けてこれはウォーレンにとって重要なこととなるであろうが、同時に支持率を上げていることでライヴァルたちは彼女をターゲットにして攻撃するようになるだろう。

マロリーは声明の中で次のように述べている。「ウォーレン上院議員にとって3回連続トップタイを記録したのは驚きだ。彼女は討論会に向けて持久力を示している」。

キュニピアック大学は、2019年10月11日から13日にかけて、民主党支持、民主党寄りの無党派の有権者505名を対象に電話で調査を実施した。誤差は5.3ポイントだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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感想(0件)

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