古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

2020年04月

 古村治彦です。

 今回は『満鉄全史』(加藤聖文著、講談社学術文庫、2019年7月)をご紹介する。
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満鉄全史 「国策会社」の全貌 (講談社学術文庫)

 本書は、2006年11月に講談社選書メチエとして出版されたものを講談社学術文庫で出版し直されたものだ。満州や満州国に関する書籍は多く発刊されている。私は満州について興味を持ち、『キメラ―満洲国の肖像 (中公新書)』(山室信一、中公新書、2004年7月)や『満洲暴走 隠された構造 大豆・満鉄・総力戦 (角川新書)』(安冨歩著、角川新書、2015年6月)を読んだ。日本の満州進出と満州国成立と崩壊について詳しく述べられている。興味がある方は是非読んでいただきたい。

「満州は日本の生命線」(松岡洋右談)という意識があり、満州というの場所は、日本にとってさまざまな人間や資源を引き寄せる「場(トポス)」だった。日本国内にもない最新設備が備えられながらも、あまりにもあっけなく歴史から姿を消した満州国。

 私が満州や南満州鉄道に関心を持っているのは、ごった煮のような感じと整然とした姿がきわどいバランスの上に共存していたように感じられているからだ。また、傀儡国家(puppet state)としての満州国とは現在のアメリカの属国・日本の姿を鏡に映した姿であるとも考えているからだ。表面上は最新の技術が導入された豊かな暮らしと多民族国家の国際的な雰囲気、しかし、一歩中に分け入れば日本の支配と日本人の優越と他民族の差別を抱えていた。

 満州の歴史を語る際には、南満州鉄道(満鉄)が軸になるのは当然だが、満州全体の歴史となると、他のアクターである関東軍や関東庁、軍閥などにも言及することになり、満鉄自体の言及は少なくなる。しかし、私が求めているのは、満鉄の社史ではなく、満鉄と政治との関係を網羅した歴史で、本書は私がまさに求めている内容だった。

 本書『満鉄全史』は日露戦争の結果、日本が獲得した東清鉄道南部支線が1906年に南満州鉄道となり、1945年の日本の敗戦に伴って消滅(実際の清算にはもっと時間がかかった)までの約40年の歴史が網羅されている。満鉄は「国策」会社として出発した訳だが、「国策」(国家的政策の略語だろうか?)という曖昧な、中身は融通無碍、変化を繰り返す、どうとでも定義される言葉に翻弄されたということが言える。

 満鉄は日露戦争で満州軍総参謀長を務めた児玉源太郎と後藤新平が立ち上げた。児玉源太郎は台湾総督時代に部下であった後藤新平を知り、その有能さに目をつけ、後藤を満鉄の初代総裁に就けた。日本政府はそもそも東清鉄道南部支線を獲得するつもりもなく、獲得しても経営を文字通り軌道に乗せることが出来るか自信がなかったが、満鉄初代総裁後藤新平が複線化、撫順炭鉱の拡張、ホテルや新聞など多角経営を進めた。後藤の理想はイギリスの東インド会社であったと言われている。

 後藤新平は満鉄経営において、外務省、関東都督府(後に関東庁)、陸軍といった各政府機関の間、そして満鉄とこれらの機関との間で意志一致が図れずに、三頭政治による「満州経営の不統一」状態が放置されていることに不満を持ち、自身が政界に入り、この状態を改善し、全植民を統括する機関の設置を目指した。後藤は長州閥に近づいていった。

 長州閥の伊藤博文が作ったのが立憲政友会(政友会)だ。立憲政友会が積極財政主義で、日本国内での鉄道建設(鉄道省が管理していた鉄道、戦前から戦後直ぐは国鉄の路線を省線と呼んでいた)や港湾整備など、インフラ整備を推進したが、政権を長年担当し続けた立憲政友会と満鉄は深い関係を築いた。長州閥=立憲政友会-南満州鉄道という関係が出来上がる。「薩の海軍、長の陸軍」という言葉もあるが、満州は陸軍の金城湯池だった。立憲政友会と満鉄とのつながりを深めた、癒着を深めたのは立憲政友会に所属し幹部となっていた原敬(後の首相)だ。

 満州国を牛耳った「二キ三スケ」のうち、岸信介と鮎川義介、松岡洋右は肉親関係にある長州閥の人物たちだ。松岡は外務省から満鉄に転じ、副総裁、満鉄総裁を経て、立憲政友会所属の代議士となり、満鉄総裁、後に外相を務めた人物だ。首相となった原敬は満鉄中心の満州経営を推進し、満鉄は立憲政友会の利権となった。満鉄のドル箱は大豆の輸出のための輸送だった。

 1928年の張作霖爆殺事件から1931年から1932年の満州事変から満州国成立によって満鉄は政治に大きな影響を受けることになる。この時期に満鉄は松岡洋右を相殺に迎えることになる。満鉄は張作霖爆殺事件によって日本に対する反感を募らせた(日本が張作霖を利用するだけ利用して言うことを聞かなくなったら殺すという暴挙に出たので当然だが)張学良が満州において、満鉄に対抗するために並行する形で鉄道建設を行ない、価格競争力で満鉄は負けてしまうという事態も起きた。このために満州国成立は満鉄にとっても渡りに船だった。

 満州国成立後、満鉄の思惑とは異なり、満州国に赴任してきた革新官僚たち(岸信介がその代表格)は、重工業発展のために日本からの資本導入を決定し、満鉄は除外されることになる。満鉄は炭鉱や重工業にも進出していたが、ただの鉄道会社になれということになった。この時の満鉄総裁が松岡洋右であり、前述の通り、松岡と岸は親戚同士だったのだがこのような結果になった(満州重工業のために日本からやってきたのも親戚の鮎川義介だった)。まさに満州は長州の土地だった。

日本の降伏後、満鉄は崩壊した満州国や関東軍に代わり、在留する日本人150万人の帰国事業をになうことになった。進駐してきたソ連軍との交渉や日本への帰国の手配などを行なった。満鉄は日本の植民地経営の尖兵であったが、その最後は幕引き役であり、墓掘人であったとも言えるだろう。

満鉄は日本の植民地支配、経営の最前線を担った。その当時の世界最速の超特急「あじあ号」や近代的な町並みづくりなど、現在の私たちが見ている風景はその美しい表明に過ぎない。別の面で見れば、日本の「国策」、という翻弄された組織とも言える。満州の工業化や近代化を担ってきた組織も国家の都合で簡単にただの鉄道会社に「降格」させられた。また、鉄道敷設の面でも経営や利益ではなく、国家の都合が優先された。

しかし、最初に立ち戻ってみれば、日本に確固とした満州における「国策」などなかった。満州の地でロシアと戦った日露戦争は朝鮮半島を日本の影響下にとどめておくことが目的だった。何とか引き分けに持ち込んで、賠償金は取れなかったが鉄道の経営権は手に入った。はてさてこんなものを渡されてどうしよう、というところから満鉄は始まっている。

 基本的な哲学も計画もないままで始まった満鉄の歴史40年は日本の確固とした哲学、計画もない醜悪な拡大主義とその挫折の歴史の姿と重なる。この姿は現在の日本でも変わっていないと私は考えている。

(終わり)

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 古村治彦です。

 ロイター通信がドナルド・トランプ大統領と民主党の大統領選挙候補者に内定しているジョー・バイデン前副大統領に関する世論調査を実施した。五大湖周辺の「ラスト・ベルト(Rust Belt)」に属するミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルヴァニア州での世論調査を実施した。2016年の米大統領選挙ではこの3つの州で、トランプ大統領が予想外の勝利を収め、大統領に当選した。ラスト・ベルトは伝統的に工業地帯で、労働組合が強く、民主党の金城湯池であった。今回の大統領選挙でもこの3つの州は激戦州であり、民主党は奪還を目論んでいる。

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ラスト・ベルトの地図

 今回の世論調査の結果は、3つの州ともバイデンがトランプをリードしているというものだった。しかし、その差は小さいものであり、接戦となっている。しかし、問題は、トランプ大統領は新型コロナウイルスとの戦いの最高司令官、「戦時大統領」であり、二期目を目指す現職なので、バイデンをリードしていなければならない立場にある。トランプ大統領は大美厳しい立場にある。

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 大統領選挙は選挙人の総取りであり、ペンシルヴァニア州には20名、ミシガン州には16名、ウィスコンシン州には10名が配分されている。合計すると46名だ。前回の大統領選挙ではトランプ大統領は306名、ヒラリー・クリントンが232名という結果だった。トランプ大統領がこの3つの州を失うということになれば選挙人の過半数270名に到達できないということになる。

 有権者の最大の関心事は新型コロナウイルス対策であり、次に経済問題、更には医療制度と続く。トランプ大統領としては、新型コロナウイルス感染拡大を止め、経済活動を再開させて、支持を取り戻さねばならない。しかし、その道筋はまだついていない。そもそもトランプ大統領はマイク・ペンス副大統領を責任者にしたはずだが、毎日の記者会見に臨むことになって、ペンスに責任転嫁したのに、それがうまくいっていない。

 ペンスもマイク・ポンぺオ国務長官もトランプ大統領の陰に隠れ目立たないようにしているが、時にメディアで話題になるのは対中強硬姿勢だ。トランプを隠れ蓑、盾(たて)として使いながらやりたい放題という感じだ。そもそもこの2人はジョージ・W・ブッシュ政権の副大統領だったディック・チェイニーに連なる人物たちで、一部では「まるでチェイニー政権ではないか」とまで言われている。

 バイデンは誰にでも良い顔をするし、何よりも民主党のグローバリスト系だ。連邦上院議員だった2003年にイラク戦争開戦に賛成票を投じたように、「アメリカの世界支配」は正当だと考える人物だ。トランプ政権内に、イラク戦争を副大統領として主導したチェイニー系がおり、民主党にはバイデンがいる。これではトランプ大統領は四面楚歌(しめんそか)の状態で、味方は娘のイヴァンカとイヴァンカの夫ジャレッド・クシャナーくらいということになる。

 トランプ大統領はアイソレーショニズム(国内問題解決優先主義)、「アメリカ・ファースト」を訴えて当選した。だからこの4年間、アメリカは大きな戦争をしなくて済んだ。しかし、それでは困る勢力がいる。それが共和党系ならばネオコン(Neoconservatives)、民主党系ならばヒラリーたちの介入主義派(Interventionism)である。軍産複合体とも呼ばれる人たちだ。民主党系は、昔はリベラル・ホークとも呼ばれていた。

 バラク・オバマ前大統領がいまだにバイデン支持を表明していない、という奇妙な事実も考え合わせると、トランプ大統領の再選を阻もうとしている勢力は民主、共和両党に幅広く存在しているのではないかと考えられる。

(貼り付けはじめ)

世論調査:バイデンは重要な3つのラスト・ベルトの州でリード(Biden leads in three crucial Rust Belt states: Poll

ザック・バドリック筆

2020年4月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign-polls/494241-biden-leads-in-three-crucial-midwestern-states-poll

水曜日に発表されたロイター通信の世論調査によると、3つの「ラスト・ベルト」に属する3つの州でジョー・バイデン前副大統領がトランプ大統領をリードしていることが明らかになった。これらの3つの州は2016年のトランプ大統領の勝利にとって重要な役割を果たした。

ロイター通信・イプソス社の世論調査の結果では、ミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルヴァニア州の登録済み有権者の45%がバイデン支持と答え、39%がトランプ支持と答えた。

各州の結果を見ると、バイデンはトランプ大統領に対して、ウィスコンシン州で3ポイント、ペンシルヴァニア州で6ポイント、ミシガン州で8ポイントの差をつけてリードしている。

別のロイター通信・イプソス社の全国規模の世論調査の結果によれば、バイデンはトランプ大統領に対して8ポイントの差をつけてリードしている。

今回の世論調査の結果では、3つ全ての州でトランプ大統領の支持率は不支持率を下回った。それでも支持率と不支持率の差は全国規模での差に比べて小さいものであった。ウィスコンシン州の登録済み有権者の47%がトランプ大統領を支持し、53%が不支持と答えた。一方、ペンシルヴァニア州では支持率は48%、不支持率は52%だった。ミシガン州では、支持率は44%、不支持率は56%だった。

3つの州全ての有権者の最大の懸念としてコロナウイルスの感染拡大を挙げた。3つの州の有権者の48%がコロナウイルスの感染拡大は自分たちの共同体において最重要の問題だと答えた。15%が経済を、12%が医療制度を、2%が移民制度を最重要の問題に挙げた。

トランプ大統領とバイデンは、誰がウイルスの感染拡大と経済後退に大勝するのに最適かという設問では接戦を演じている。有権者の50%がバイデンと答え、47%がこの仕事にはトランプ大統領が最適だと答えた。

3つの州の有権者の約47%はトランプ大統領の感染拡大への対処を支持すると答えた。一方で、67%はそれぞれが住む州の知事たちの対処を支持すると答えた。

イプソス社は、ミシガン州の登録済み有権者612名、ペンシルヴァニア州の登録済み有権者578名、ウィスコンシン州の登録済み有権者645名を対象に、4月15日から20日かけて世論調査を実施した。この世論調査の全体の結果の誤差は3ポイントで、各州の世論調査の結果では誤差は5ポイントだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 アメリカで新型コロナウイルス感染拡大の最前線で指揮を執っているのは各州の知事だ。ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモ(民主党)やミシガン州知事グレッチェン・ウィットマー(民主党)は厳しい制限や在宅命令を出したが、支持率は上がっている。ドナルド・トランプ大統領も毎日記者会見を行い、感染拡大への対処をアピールしている。

 そうした中で、トランプ大統領の心配事は「経済活動の再開」だ。今年のイースター(2020年4月12日)までに経済活動を再開させることを目指していた。そのために連邦政府はガイドラインを出し、アメリカ国民に対して、ソーシャル・ディスタンシングや大人数での集会の禁止を推奨した。しかし、残念ながら、現在のところ経済活動の再開は実施されていない。

 各州の知事たちによる在宅命令やビジネスの閉鎖などの厳しい措置に対して、反発する声も出ている。実際に、「厳しすぎる」「自分たちの生活のことは自分たちで決める」「私の体は私のものだ」という主張を掲げて、抗議のデモ活動が各州で行われている。アメリカでも失業などによって経済不安が増大している。これに対しては各州の知事は憂慮を表明したが、トランプ大統領は「各州を“開放する(LIBERATE)”」ことへの支持をツイッター上で表明した。このトランプ大統領の支持表明に対して、各州の知事たちは、「自分たちで出したガイドラインに反することを人々が行うことを促しており、意味不明な行動だ、違法な行動だ」と反発している。トランプ大統領は特にミシガン州での抗議活動を支持しているが、これはウイットマー知事がトランプ大統領に対して批判的であることに対する攻撃であり、かつ今年の大統領選挙でミシガン州が重要な位置を占めていることを示している。トランプ大統領は何とかミシガン州で勝利を収めたいが、現在のところはウイットマー知事の人気もあり、厳しい状況であり、それを何とか挽回したいと考えている。そのために、自分が出したガイドラインに反する抗議活動であっても支持を表明するという矛盾した行動を取っている。トランプ大統領は矛盾の塊のような人物である。

 日本でも安倍晋三首相による緊急事態宣言が日本の全県に出されて以降、デパートやコーヒーショップチェインの休業が行われ、人々の生活は厳しいものとなっている。また、経済活動の停滞によって、景気後退の不安が大きくなっている。人々の接触を「8割減らす」というとてつもない(ほぼ実現不可能な)目標を掲げて、あと2週間を過ごさねばならない。その間に経済状況がどれほど厳しいものとなるか見当もつかない。現状は、新型コロナウイルス感染拡大防止と経済活動・社会活動との間のバランスが崩れている、と私は思う。手洗いやうがいの励行、マスクの着用、ソーシャル・ディスタンシングは実行しながら、何とか現在の経済活動・社会活動の範囲を少しでも広げられないかどうかを検討すべきではないかと思う。

 リスクの高い高齢者や基礎疾患のある人たち(恥ずかしながら私もその中の一人だ)の感染防止と重篤化防止が第一である。それでも経済活動ができなければ更に多くの人々が路頭に迷うということにもなる。ここは専門家の知見を利用しながら、何とか少しでも経済活動ができるようにしなければならない。新型コロナウイルスは既に日本国内に入ってしまって、根絶をさせることは不可能だ。これから特効薬やワクチンができるまで現在のような状況を続けることは難しい。それならば個人でできることをやりながら、何かしらの「ウイルスとの共存の」ための方策を考えるしかないと私は思う。

 アメリカ国内でトランプ支持派が経済活動を再開させろと主張している。そのためには連邦政府のガイドラインでは、感染者数が2週間減少を続けなければならないとされている。そして、この数をきちんと把握するためには十分な検査がされねばならないとされている。そのための資源が足りないと各州の知事たちは、連邦政府とトランプ大統領を批判し、支援を求めている。

確かにこのような重大な決定を下すためには正確なデータがあることが大前提だ。日本でも感染者数の減少が見られるようになれば、現在の流れも変わっていくだろうが、そのためには正確なデータがなければ正しい判断はできない。そのためにはある程度のサンプルを抽出し、検査をして統計学的に確からしさの高い結果を得る必要がある。

 慎重に行動することは良いことだが、過度な悲観も過度に楽観することは何事においても禁物だ。また、政府による更に厳しい手段を国民が求めるということも考え物だ。そのためには淡々と自分ができるだけのことをやるという単純なことしかない。ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』や「惨事便乗型資本主義」については本ブログでも既に紹介した。今回のコロナ禍についても、既に政府による監視や制限の強化が私たちの恐怖心を利用して導入されようとしている。ここで私たちが、「その方が楽で良い、そもそも何も悪いことをしていないのだから」と簡単に監視や制限を受け入れてしまえば、これはどんどんエスカレートする。
 また、現在は政府や地方自治体による「自粛要請」であり、本来であれば「自分で決める」べきもので、営業を行う店があっても良い。しかし既に警察や官吏ではなく、一般国民が「民間警察」「自警団」になって、貼り紙をしたり電話をしたりして、営業している店に対する妨害行為を行っている。これは過度な反応である。安倍首相や専門家会議がこのようなことが起きないように慎重な表現を選ばなければならないのに、あたかもそれを推奨するかのように、あまりにも危険を煽っていると私は思う。
 専門家会議は、一般の人々が「自分は新型コロナウイルスに感染したのではないか」と不安に思った場合には、まず「体温が37.5度以上が4日間続いたら医療機関に連絡せよ」という「お達し」を出した。これは医療機関に人々が殺到しないための措置であったはずだ。しかし、この「様子見」期間で症状が悪化して亡くなる人のケースが出ると、「そのような意図で述べたのではない」とし、「積極的に受診してください」という意味だった、と「受け取る方の受け取り方が悪い」「誤解だった」ということを言い出す。訳の分からない横文字を使い、このようなどうとでも意味が取れる表現を使うようでは、専門家たちの信頼性は薄らいでいく。「8割減」も本当か、できると思っているのか、ということになる。

 私が驚いたのは、知り合いの医者に「免疫力を挙げることだよ、そのためには食物繊維を取って腸内環境をよくすることだ」と言われたことだ。あんなに難しい勉強をしても、医学博士でございと威張ってみても、今回の騒ぎで私にできる助言がその程度でしかない。薬やワクチンがなければ医者でもこれくらいしか言うことがないのだ。それならば自分ができることをやりながら、淡々と日常を過ごしていくしかない。

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領:コロナウイルスに関する制限において州知事の中には行き過ぎの者がいる(Trump: Some governors have gone too far on coronavirus restrictions

ブレット・サミュエルズ筆

2020年4月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/493601-trump-some-governors-have-gone-too-far-on-coronavirus-restrictions

日曜日、トランプ大統領は、全米各州でコロナウイルスの感染拡大の速度を弱めるための制限を設けているが、「やり過ぎている」州知事たちも中に入ると述べた。

ホワイトハウスでの記者会見の中で、トランプ大統領は、抗議活動を行っている人々に対して反対する考えを持っていないと述べた。抗議活動を行っている人々は、ソーシャル・ディスタンシングに関するガイドラインに反対し、各種の制限に対する肥満を表明している。各種の制限によって事業は閉鎖され、失業数が急増している。

トランプ大統領は次のように発言した。「中には行き過ぎている者たちがいる。州知事の中には行き過ぎている者たちがいる。これまでに起きていることの中には適切ではないことが含まれている。最終的には問題にはならないだろうと思う。何故なら私たちは各州の経済活動や日常活動を再開させつつあり、各州でそれらはうまくいくだろうからだ」。

トランプ大統領は続けて次のように述べた。「講義をする人々に関して言えば、私はあらゆる種類の事柄について講義する人々を見てきている。私は全ての人々と共にいる。私は全ての人々と共にいる」。

トランプ大統領は最初のうちは行き過ぎていると考えている知事の名前を挙げることを拒絶していたが、その後、ミシガン州知事グレッチェン・ウィットマー(民主党)とヴァージニア州知事ラルフ・ノーザン(民主党)の名前を挙げた。特にノーザンについては新しい銃規制に関する州法に署名したことについては抗議されるに値すると示唆した。

トランプ大統領は次のように述べた。「ミシガン州を例にとると、ミシガン州では必要とではない、もしくは適切ではないと私が考える物事が実行されている。これは全ての人々が分かっているはずだ。ミシガン州知事とはとてもうまくやっているし、そのことは知事も恐らく分かっていると思う」。

ウイットマーについては、今年の大統領選挙で民主党の副大統領候補として取りざたされるようになっているが、それによってトランプ大統領にとっては大きな攻撃目標となりつつあるようだ。

トランプ大統領はここ数日の間、全米各州において数百人単位で集まっている抗議行動を行っている人々に対して同情的である。抗議活動している人々はホワイトハウスがウイルス感染拡大に対処するために発表したソーシャル・ディスタンシングに関するガイドラインを無視している。このガイドラインは、アメリカ国民に対して10名以上の集まりを行わないように促している。

金曜日、トランプ大統領はミネソタ州、ミシガン州、ヴァージニア州で抗議活動を行っている人々への支持を表明した。抗議活動を行っている人々は、ウイルスの拡大を弱めるための在宅命令とその他の制限に反対するデモを行った。こうした人々はこれらの各州を「開放する」と主張している。これら3つの州は民主党所属の知事たちが運営している。

ここ数日の間で小規模の抗議活動がミシガン州、オハイオ州、ヴァージニア州、ミネソタ州、テキサス州、そしてフロリダ州で行われた。その他にもこれからの数週間で抗議活動が全米各地で計画されている。抗議活動参加者の中には、トランプ大統領の名前が入った旗を振り、名前の入ったTシャツを着ている人たちがいた。

トランプ大統領はマスコミの報道で抗議活動を見たと認め、抗議活動に参加している人たちは「私たちの国への愛」を示しているのだと述べた。

各州の知事たちは、トランプ大統領による解放を求める動きに対して懸念を表明している。知事たちはトランプ大統領の言動によって人々の間で不満を高め、デモ活動を激化させることになるだろうと心配している。公衆衛生の専門家たちは多くの人々が集まることによってウイルスの感染がさらに進むことになると警告を発し、ソーシャル・ディスタンシングの必要性をさらに強調した。

ジョンズ・ホプキンズ大学のデータによると、日曜日の夜までに全米で75万5000名以上がウイルスに感染し、4万名以上が亡くなった、ということだ。

ホワイトハウスはアメリカ経済を段階的に再開する方針で、各州の知事たちにソーシャル・ディスタンシングに関するガイドラインをいつの時点で撤回できるかについて最終的な目標時期を設定するように求めている。しかし、トランプ大統領が抗議活動を受け入れていることで、州知事たちに対する敵意を煽動する危険性が高い。

ペンス副大統領は日曜日の記者会見で、「アメリカ国民は自分の住む州政府と地方自治体に注意を向けねばなりません」と述べた。

トランプ大統領は経済を再開する必要性について断固とした態度を示している。経済の再開は彼の再選を目指す選挙戦にとって中心的な柱となっている。しかし、トランプ大統領は日曜日、制限の撤回は安全を第一に考えねばならないと述べた。

トランプ大統領は次のように述べた。「多くの素晴らしいそして偉大な出来事が起きています。そして、私たちは私たちの国を開き始めようとしています。これは美しいパズルのようです」。

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抗議活動と検査に対する主張について知事たちがホワイトハウスに反撃(Governors push back against White House on protests, testing claims

ザック・バドリック筆

2020年4月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/sunday-talk-shows/493557-governors-push-back-against-white-house-on-protests-testing-claims

民主、共和両党に所属する知事たちは日曜日、トランプ大統領の在宅命令に対する抗議活動への明確な支持と全米でのコロナウイルスの検査は十分に行っているという主張に対して反撃した。

ワシントン州知事ジェイ・インスリー(民主党)は、ABCの「ディス・ウィーク」に出演し次のように述べた。「トランプ大統領はツイッターを通じて多くの州を“解放”するように抗議活動を行っている人々に訴えたが、これは“違法行為”を促進するものです。アメリカ大統領が人々に対して法律を破るように促しているのです。私はこの国で生まれ育ちましたが、このようなことが起きたことなど全く記憶にありません」。

インスリーは「これは本当に危険なことです。なぜなら人々の生命を救うことができる行為について人々に無視させることにつながるからです」と述べた。

ワシントン州はアメリカ国内において早い段階でウイルス感染拡大の中心地となった。ここ数週間、インスリーはカリフォルニア州知事ゲヴィン・ニューサム(民主党)とオレゴン州知事ケイト・ブラウン知事(民主党)といった西海岸の各州知事と協定を結び、地域の経済活動再開に向けての計画を作成しているところだった。州都オリンピアにあるワシントン州議会の建物の前での州知事の厳しい方策に対する抗議デモは日曜日に開催予定となっている。

メリーランド州知事ラリー・ホーガン(共和党)はより弱いトーンではあるが一連のツイートを批判した。CNNの番組「ステイト・オブ・ザ・ユニオン」に出演し、「デモを推奨することは有益なことだとは思いません。また、大統領自身の政策に反対するためにデモをすることを人々に推奨することも良いことではありません」と述べた。

ホーガンは経済活動の即座の再開を求めることは、トランプ大統領自身が発表した連邦政府のガイドラインに反することになると指摘した。ガイドラインによれば、経済活動再開のプロセスは、その地域でウイルス感染拡大が14日間にわたって減少するまでは開始されるべきではないとされている。

ホーガンは続けて次のように述べている。「従って、木曜日に、自分が作った推奨ガイドラインに即した計画に対して人々に抗議活動に参加するように促すことは、全く訳が分からないということになります。州知事と人々に対しては完全に矛盾しているメッセージを発しているのです。連邦政府の政策と推奨を無視するように求めているのです」。

オハイオ州知事マイク・デワイン(共和党)は、デモ参加者たちは抗議する権利を持っていると述べ、自分としては、参加者たちに対してソーシャル・ディスタンシングについてのガイドラインを尊重するように求めるだけだと述べた。

デワインはNBCの「ミート・ザ・プレス」に出演し、次のように述べた。「私たちは自分が正しいと考えることを行うだけのことです。それは、経済を再開しようとすることです。しかし、そのためには多くの人々を死に追いやることがないようにとてもとても注意深く実行する必要があります。しかし、私たちは経済や日常生活を再開させねばなりません。そして、私はその目標を5月1日に置いているのです」。

ミシガン州知事グレッチェン・ウィットマー(民主党)もまた、彼女が出した在宅命令の正当性を擁護した。この命令はアメリカ国内でも厳しい命令の一つとなっている。ウイットマーはその成果は既に上がりつつあると述べた。

ウイットマーはCNNの「ステイト・オブ・ザ・ユニオン」に出演し、次のように述べた。「ミシガン州は現在死亡者数の点において全米で第3位となっています。私たちの州の人口は全米で10番目です。こうした事実からミシガン州では独自の厳しい問題が起きているということが導き出されるのです。州の規模に比べて死者数が多いという問題が起きており、そのために私たちは人々を守るために独自のより積極的な行動を取る必要があるのです」。

ウイットマーは続けて次のように述べた。「現在、感染者数は徐々に兵站になってきつつあります。これが意味するところは、私たちは人々の生命を救っているということです」。ミシガン州の州都ランシングの州議会の建物の前での抗議活動に対して、トランプ大統領は特に支持を表明している。

ペンス副大統領は、フォックス・ニュースのキャスターであるクリス・ウォレスに質問された際に、トランプ大統領のツイートに直接言及はしなかったが、抗議活動について次のように述べた。「数百万のアメリカ国民はソーシャル・ディスタンシングに関するガイドラインを守ってくれていると思いますよ。人々が犠牲を甘受しているのは、各州の知事たちに経済の再開を、責任をもって安全に行える方法を見つけて欲しいと願っているからです」。

ペンス副大統領は「フォックス・ニュース・サンディ」に出演し、「アメリカ国民は全て、このアメリカ国内においてドナルド・トランプ大統領以上に経済活動や日常活動を再開させたいと望んでいる人間などいないことをよく分かっています」と述べた。

ホワイトハウスは各州には必要な検査を実施する能力がありと主張しているが、各州の知事たちはこの主張に反論している。ヴァージニア州知事ラルフ・ノーザムはこのような主張は「激しい思い込み」に過ぎないと指摘している。

ノーザムはCNNの「ステイト・オブ・ザ・ユニオン」で次のように述べた。「検査だけのことではないんです。信じていただけるか分かりませんが、私たちには十分な綿棒さえないのです」。

ノーザムはトランプ大統領の一連のツイートに触れ、次のように述べた。「私たちの大統領は検査能力を向上させることができていません。そして、今は抗議活動に注目することを選んでいます。しかし、今は抗議活動をする時ではありません」。

ノーザムは続けて次のように述べた。「現在は分裂し、いがみ合う時ではありません。立ち上がり、人々に共感をもたらす指導力を発揮する時です。今回の感染拡大で私たちの国でいったい何が起きているのかを理解できる指導者が必要な時です。そして、今は真実を述べるべき時で、人々をまとめる時なのです」。

専門家たちはアメリカの経済活動を再開するためには十分な検査能力が必要だと述べている。そして、検査ができなければ感染者数が実際に減少しているのかどうかを正確に判断することは不可能だと繰り返し強調している。

メリーランド州知事ホーガンは州の検査能力についての決めつけは「完全な誤り」だと述べた。

ホーガンは日曜日に「ステイト・オブ・ザ・ユニオン」に出演し次のように述べた。「検査能力についてとりわけ強調し、各州には十分な検査能力があり、それを使うべきだとし、それなのに州知事たちは自分たちの仕事をしていないと主張することは、全くの誤りと言うしかありません」。ホーガンは、メリーランド州では先月だけで検査能力を5000%増させたが、各種事業を再開させることができるレヴェルにまではまだ到達していないとも述べた。

オハイオ州知事デワインは食品・医薬品局(FDA)が更なる行動を実行することが必要だと発言した。デワインは更なる支援があれば、「オハイオ州では一晩のうちに検査能力を倍増することは高い確率で可能であり、三倍増にすることも可能かもしれません」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 副島隆彦先生の最新刊『もうすぐ世界恐慌 そしてハイパー(超)インフレが襲い来る』が発売される。今回の新型コロナウイルス感染拡大を受けて緊急発売される。よろしくお願いいたします。

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もうすぐ世界恐慌 そしてハイパー(超)インフレが襲い来る

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まえがき

 この本は、大きくは以下の7つのことを、書いて(予言して)説明している。

 読者によっては、他のことはもうどうでもいいから、第2章の6.「金(きん)がもうすぐ買えなくなる。急いで金を買いなさい」をまず読むべきだろう。

1.新型コロナウイルスの所為(せい)で、3月に、株の世界的大暴落が、連続して起きた。とりわけ3月16日(月)にNY(ニューヨーク)の株が、1日で2997ドル(瞬間では3068ドル)下落した。歴史に残る大暴落だ。そして3月24日から、一旦は下げどまった。各国の政府が協調して買い支えて、暴落を喰い止めた。政府と中央銀行が株を買いまくるのだから権力者相場である。とても自由主義国がやることではない。恥を知るべきだ。

 3月コロナ大暴落は、明らかに2.世界大恐慌(ワールド・グレイト・デプレッション)への突入の合図、前兆(ぜんちょう)である。それは、本格的には、いつ起きるのか。それをこの本で書いた。

2.の大恐慌突入は、3.ハイパー(超)インフレ(ーション)を誘発する。超インフレは、ただの消費者物価高騰として現われるのではない。生活物資は、あり余るほどの過サープラス・プロダクティヴィティ剰な生産設備によって支えられている。

 今度のハイパー・インフレは金融秩序(マネタリー)と政府の財政(ファイナンス)の、この2つの崩壊として現われる。その予兆と証拠は、この本の冒頭見開きの、「新札[しんさつ]渋沢栄一の新一万円札』に2024年に切り替わる」である。この図をじっくりと見て下さい。このとき、新一万円は、1000円に、「通貨単位の変更」、即ちredenominationデノミネイション」が断行されるだろう。私は金融予言者としての全能力を賭けて、断言する。

 3.のハイパー(超)インフレを阻止するために、国家(政府)はこれをやる。このとき、米ドルの信用は世界中で暴落して、1ドル=10円にまで大下落しているだろう。

 新札切り替えと同時の、4.預金封鎖[よきんふうさ](バンク・アカウント・クランプダウン)も同時に行われる。おそらくそのとき、「一つの世帯(家族)で、月に一回、500万円しか引き下おろせません。これは生活費です」となるだろう。このとき金融恐慌はすでに起きている。富裕層(金持ち)に打撃がくる。

 だから6.の「今のうちに急いで金(きん」を買いなさい」なのである。

5.世界中の原クルード・オイル油価格の暴落(3月9日)が、株の大暴落を誘発した。今、原油は1バーレル(158リットル)=20ドルである。原油の暴落が、ハイイールド債ポンド(ジャンク債ポンド。ボロくず債。サギ師の山師[やまし]たちの資金源)の暴落につながった。

この「ハイリスク(高危険)ノーリターン債(さい)」のリターン=儲(もう)けは、元々パーだから初めからない。「マリリン・モンロー・ノー・リターン」である(笑)。こんなものを死ぬほど買わされてきた(途中に仕組[しく]み債という投資信託[ファンド]を、咬(か)

ませてある、農林中金(のうりんちゅうきん)始め日本の地銀や生保たちは、今度の株ストック式(及び債券[ボンド])コロナ大暴落で、ヒドい大損害を出した。またやってしまった農中(のうちゅう)は、もう立ち直れないだろう。

この5.原油暴落発(はつ)の、ハイイールド債(さい)崩れが、各国の国債の信用をこれから突き上げる。P33の図を参照のこと。これが、政府の財政崩壊(ファイナンシャル・カタストロフィー)につながり、2.の大恐慌に連結する。これで、この8年間続いた“ABE  Asset  Bubble Economy(アベ・アセット・バブル・エコノミー)”「資産バブル経済」が終わった。

 そして、最後に7.今度の「中国武ウー漢ハンに発生した新型コロナウイルスは、アメリカ軍の中の強硬派が撒いた(去年10月に)」論を、私は、徹底的に書いた。フニャフニャ、グチャグチャ、訳わけの分からんことを言い合っているんじゃない。一冊の本は、気合いを込めて、激烈に、大きな真実をガツンと暴き立てて言い切らなければいけない。「ああでもない、こうでもない」で、一いっ国こくを率ひきいるだけの優れた言論は成り立たない。

 この副島隆彦が、一体誰に遠慮すると言うのか。大きな真実をドカーンと明確に書いて初めて本物の国民的言論人である。

 くだらない、こんな人工、人造のコロナウイルス程度で、「キャーキャー、コワイ、コワイ」と騒ぐんじゃない。こんなもので誰が死ぬか。全部ヤラセだ。安倍首相が、4月8日から発令した「緊急事態宣言」(3月8日の特別措置[そち]法の改正に基づく)なんか、民衆(国民)を脅おどかして、恐怖に陥れて、それで自分たち権力者、支配者が新しい国家統制体制に移行しようとしている。その予行演習(ドリル)だ。

 2.の世界大恐慌突入を目前にして、統制経済(コントロール・エコノミー)に移行する準備だ。これを「ショック・ドクトリン」“Shock Doctrine”と言う。「大災害のショック(恐怖)で、民衆(ピーポー)の脳を支配せよ」という悪(ワル)の統治(とうち)技術だ。この別名を“disaster capitalism”「ディザスター・キャピタリズム」と言って、「大惨事(だいさんじ)便乗型(びんじょうがた)資本主義(しほんしゅぎ)」と言う。このことを最後の第5章で目(め)いっぱい書いた。 

 さあ、これだけのことを一冊の本に詰め込んだので、私は本望(ほんもう)である。あとは読者が、それぞれ自分で判断して下さい。とんでもない奴やつだ、でも何でもいいから。

副島隆彦

=====

もうすぐ世界恐慌──[目次]

まえがき─4

第1章 コロナ大暴落に翻弄される世界

予言どおり世界は大恐慌に入るだろう─20

コロナ大暴落で起きたリーマン超えの金融パニック─24

この暴落は大恐慌突入への警告─31

金価格は6倍になるから今こそ金を買いなさい─40

トランプの株の吊り上げ相場が終わった─47

日経平均が1万6000円を割ると仕組み債が紙キレになる─56

世界権力者相場で大手ヘッジファンドが生き延びた─64

第2章 金を買う人だけが生き残る  

もうすぐ金が買えなくなるから急ぎなさい─70

金の市場の混乱からも世界恐慌への足音が聞こえる─78

渋沢栄一の新一万円札が千円になる!─83

まだまだ金は上がるからさらに金を買うべきだ─89

100グラム単位で金を切り分けて売る方法─97

いざというときに金の地金に換えられる金を買う─99

金を売るなら海外に持ち出して売る─102

第3章 世界経済はどこまで破壊されるのか

ついにアメリカもゼロ金利になって成長が止まった─110

カドローNEC委員長が株の吊り上げ担当─115

石油価格の下落が大恐慌の引き金を引く─127

レポ市場が壊れたために中小銀行が危なくなった─146

ドイツ銀行がデフォルトを起こして潰れそうだ─151

世界的な信用収縮が起きている─161

第4章 インチキ経済の化けの皮が剥がされる

コロナ大暴落で資産バブルの化けの皮が剥がれた─166

アリババ株4・5兆円の売却で何とかもちこたえたソフトバンク─173

カルロス・ゴーンの復讐がこれから始まる─180

第5章 コロナウイルス恐るるに足らず

新型コロナウイルスは〝ショック・ドクトリン〟だ─192

恐怖を利用して国民を支配する─198

アメリカではインフルエンザで1万2000人が死んでいる─219

東京オリンピックはトランプが延期を提言─225

新型コロナウイルスを製造して撒いたのはアメリカ─228

コロナ騒動に感じる3・11と同じ後味の悪さ─237

あとがき─240

【特別付録】ドン底で拾う株 厳選15銘柄─244

=====

あとがき

 この本で、私がずっとガリガリと書いたとおり、3月に「コロナウイルス暴落」が起き

て、これまでのアメリカ主導の世界インチキ経済の化(ば)けの皮が剥(は)がれて、それで世界が大きく変わるようだ。

 私の周(まわ)りが口を揃えてそう言っているから、きっとそうなのだろう。それで、世界はこれから、どう変わるのか。となると、皆さん黙る。「副島さんなら、裏の秘密を知っていて、情報があるでしょう。教えてよ」と電話が架かってくる。ありません、そんなもの。私も皆さんと同じで、コロナ・パニックで、(他の人たちよりは穢[きた]ないガーゼマスクをして。本当は持病の気管支炎用)ボーッと生きています。

「バカ。くだらねえ。何がコロナウイルスだ。こんなもので、誰が死ぬか。みんなヤラセだ」と私がブツブツ言うと、奥さん( 配偶者[スパウス])が、目を剥(む)いて、私に怒り出す。「外から帰ったら、すぐに両手をしっかり30秒間、洗いなさい。これは常識よ。5秒じゃ、ダメー。すぐにお風呂に入りなさい」と。この件についての私の強固な考えは、本書第5章に書いた。

 社会インフラ(鉄道や公共サーヴィス)はすべてきちんと動いている。なのに街(まち)はガラーンとして人がいない(4月末現在)。みんな家に籠(こも)っている。……これが、予想された近(きん)未来か。映画「ブレードランナー」(1982年公開。主演ハリソン・フォード)の世界だ。

 それでも、金融・経済は、私が言ったとおりになってきた。私がずっと本に書いてきたことが、次々に現実のものになっている。私の言論の勝利だ。

「もうすぐ株の大暴落が来る。大恐慌が来る」と、23年間も本に書き続けて、ようやくこうなった。私が3月20日に、たったひとりで勝利宣言をした日に、世界中の指導者、権力者たちは揃(そろ)って青ざめていた。このあと私が「副島隆彦の勝利のお祝い」をしゃれたフランス料理屋でやって、飲んだくれた日(ワインを2本空[]けた。3月24日)、世界の権力者たちは、命懸けの「ナニ、クソ」で、ドーンと株価を押し上げて、暴落の連鎖を喰(く)い(杭[くい] 止(と)めた。これで小康(しょうこう)を得た。これで私も、よかった、よかったである。このあとも、私が、金融予言者業を続けていくのに、「一旦(いったん)は下げどまった」は、大変有難(ありがた)い。大(だい)災害、大(だい)変動、大(だい)恐慌にも、それなりの時間の経過(けいか)というものがある。数年間などあっという間だ。どうせ時間はダラダラとこのまま何なに事ごとも無(な)いかのように過ぎてゆく。それでも何か得え体(えたい)の知れない大変動のさ中なかに、私たちはいる。

 人類の歴史は、どこの国でも、80年に一度の割で、「経済恐慌か、動乱(革命、内乱)か、戦争」だ。大恐慌に突入するのを阻止するために、世界の権力者、支配者たちは、大きな戦争(large war ラージ・ウォー)に、世界を叩たたき込むだろう。それが歴史(学)が私たちに教える知恵だ。

 「まさか、そんな(ことは起こりえない)」が、本当に起きる。私たちが真に賢い人間であるためには、こういう準備と心構えが必要である。

  私は、私の本を、これまでずっと買って読んで下さった皆さまに、何よりも感謝する。一冊の本1600円の、一割の160円をいただいて、私の生活は成り立ってきた。私の人生には、バブルの浮かれ騒ぎはない。と同様に悲観と絶望もない。急に慌あわてて、初めて私の本を読んでくれる皆さんにも、まあ、そうですね、それなりに感謝します。お客さまは神さまです(三波春夫)。

よくもまあ厭(あ)きないで、ずっと私の金融本を作ってくれた徳間書店学芸編集部の力石幸一氏に、感謝します。

  どうせ、あと10年ぐらいの命である。私は自分の人生の最後までずっと書き続ける。他にやりたいことは何もない。若い人たちが大変だ。

2020年4月

副島隆彦

(貼り付け終わり)

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もうすぐ世界恐慌 そしてハイパー(超)インフレが襲い来る

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 先月、ドナルド・トランプ大統領が新しい駐日米国大使にケネス・ワインスタイン(Kenneth R. Weinstein、1961年-、59歳)を指名したというニュースが流れた。前任のビル・ハガティは今年のテネシー州選出連邦上院議員選挙に出馬のために、2019年7月に辞任し、離日した。それ以降は正式な大使は空席で、代理大使はジョセフ・ヤング米国大使館首席公使が務めている。
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ワインスタインと安倍晋三

 ワインスタインはシカゴ大学で学士号、パリ政治学院で修士号(ソヴィエト連邦・東欧研究)、ハーヴァード大学で政治学博士号を取得している。学者として立派な経歴だ。思想としてはネオコン派に分類される。1991年にハドソン研究所でのキャリアをスタートさせ、2011年に所長に就任した。ハドソン研究所はワシントンDCにある保守系のシンクタンクだ。日本では、元NHKのワシントン特派員で作家の日高義樹氏が研究員をしていることでも一部で知られている。ドナルド・トランプ大統領とも関係が深く、貿易政策や貿易交渉に関する顧問委員会のメンバーにもなっている。

 ハドソン研究所では2019年に日本部(Japan Chair)を創設し、日本部長として、HR・マクマスター元国家安全保障問題担当補佐官(ドナルド・トランプ政権、2017-2018年)を招聘した。マクマスターは陸軍中将から現役のままで補佐官となったが、最終的にはトランプから更迭された。その際に大将への昇進を見送られるという屈辱もあった。ハドソン研究所は軍事研究も盛んで、軍や軍需産業とも関係が深いので、マクマスターは招聘されたということになる。安倍晋三首相や小泉進次郎環境大臣といった日本側の要人もワシントンDC訪問の際にはハドソン研究所に立ち寄り、講演を行っている。
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H・R・マクマスター
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ワインスタインと小泉進次郎
 トランプ大統領の日本に対する考え方は、「あいつらは不公平な貿易慣習や制度を用いてアメリカから金を奪っている。アメリカの対日貿易赤字を何とかしなければならない。そのためにはアメリカ製品を買わせるに限る。しかも大きいものをだ。それには戦闘機やミサイルなど兵器が一番だ」というものだ。ワインスタインはそのための代理人ということになる。

 新型コロナウイルス感染拡大の収束の時期が不明であり、ワインスタイン氏の連邦上院による人事承認もいつできるか分からない。承認は簡単に降りるだろうが、その時期が不透明となると、日本にやってくる時期も分からないということになる。日本の感染拡大が落ち着かないと来られないということになると、今年中は無理ということも考えられる。そうこうしているうちに11月の大統領選挙でトランプ大統領がジョー・バイデン前副大統領に敗れるということになれば、ワインスタイン氏もさすがに日本に来ないまま辞任することはないだろうが、短期間で駐日大使を終えるということも考えられる。

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領は駐日本米国大使にケネス・ワインスタインを正式に指名(Trump formally nominates Kenneth Weinstein as ambassador to Japan

タル・アクセルロッド筆

2020年3月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/487540-trump-formally-nominates-kenneth-weinstein-as-ambassador-to-japan

トランプ大統領はケネス・ワインスタインを駐日本米国大使に正式に指名した。金曜日午後、ホワイトハウスが発表した。

ワインスタインはワシントンDCにある保守派のシンクタンク「ハドソン研究所」の会長であり、最高経営責任者である。また、米国通商代表部に助言を行う貿易政策・交渉に関するアドヴァイザリー委員会の委員も務めている。

ハドソン研究所の責任者を務めている期間、ワインスタインはハドソン研究所の日本部長職を発足させ、HR・マクマスターを日本部長に起用した。マクマスターはトランプ大統領の安全保障問題担当大統領補佐官を務めた。

連邦上院から承認を得なければならないが、ワインスタインはビル・ハガティの後任の大使となる。ハガティは昨年大使を辞任した。そして、引退するラマー・アレクサンダー連邦上院議員(共和党)に代わって今年のテネシー州連邦上院議員選挙に出馬する。

トランプ大統領が就任直後に日本との不公平な貿易に関する合意について批判する発言を行ったことで、アメリカ政府と日本政府との関係に高い関心が集まった。しかし、トランプ大統領は日本の安倍晋三首相との良好な関係をアピールしている。

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(終わり)

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