古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

2020年07月

 古村治彦です。
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日本は戦争に連れてゆかれる 狂人日記2020 (祥伝社新書)

 2020年8月1日に副島隆彦先生の最新刊『日本は戦争に連れてゆかれる狂人日記2020』(祥伝社新書)が発売となります。本書は新型コロナウイルス感染という事態を受け、立ち止まって、俯瞰で状況を見る、そうすれば大きな流れに流されても何とか騙されないということが大きなテーマになっています。

 副島先生は清沢冽(きよさわきよし、1890-1945年)の戦時中の日記をまとめた『暗黒日記』を読み直し、現在と75年前の終戦直前の日本の類似を指摘しています。私も清沢冽は尊敬する人物であり、ツイッターのアカウントには「『暗黒日記』再び」とつけています。これは2010年代の日本は1930年代の日本に酷似している、また『暗黒日記』が書かれる時代が来ると私が考えているからです。

 『日本は戦争に連れてゆかれる狂人日記2020』を是非にとってお読みください。新書でお求めやすくなっています。

(貼り付けはじめ)

目 次

第1章 翼賛体制への道――80年前と現在

私が狂人なのか、周囲が集団発狂状態なのか

日本人が戦争にのめり込んだ瞬間   

「日米交渉」の真実   

緊急事態宣言と戒厳令   

開戦から3年3カ月後、東京は丸焼けにされた   

第一次世界大戦で日本は大儲けした   

不況への転落と猟奇事件   

私たちは「歴史の法則」から逃げられない   

第2章 次の「大きな戦争(ラージ・ウオー)」と日本   

戦争の準備が着々と進行している   

戦争までの4段階、そのあとの2段階   

戦後の日本人はどう生きたか   

私たちを襲う「ショック・ドクトリン」   

今すぐ金(きん)を買いなさい   

第3章 新型コロナウイルスの真実   

3人の「皇帝」たち   

生物化学戦争を実行した米軍事強硬派   

「マインド・コントロール」と「ブレイン・ウォッシュ」   

ゲノム配列が一致しない「4%」とは   

「中国の女性科学者が亡命」という謀略報道   

初めて書く、私が福島原発事故で目撃したこと   

第4章 暗い未来を見通す   

『暗黒日記』を読む   

戦争に反対した清沢の同志たち   

人間の命、人間の値段   

5つの「正義」   

これからの生き方と死に方

(貼り付け終わり)

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日本は戦争に連れてゆかれる 狂人日記2020 (祥伝社新書)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 アメリカ大統領選挙に関する各種世論調査の結果では、民主党のジョー・バイデン前副大統領が有利となっている。確かに数字を見てみればジョー・バイデンが共和党の現職ドナルド・トランプ大統領をリードしている。各州の世論調査の数字を大統領選挙の選挙人獲得に当てはめた地図を見ると、バイデンが225、トランプが115、接戦が201となっている。選挙人270を獲得した候補者が大統領となる。

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 下の2つの記事から現在のアメリカ大統領の大きな流れが分かる。その一つは、トランプ大統領への支持は積極的支持でバイデン前副大統領支持は消極的支持というものだ。

CBSニュースの最新の世論調査で、「あなたがトランプ大統領(バイデン副大統領)に投票する理由は何ですか?」という質問があり、この質問に対する答えの結果が興味深い。「バイデン前副大統領に投票する」と答えた有権者の中で、50%が「トランプ大統領に反対するため」と答え、27%が「バイデン前副大統領が好きだから」と答え、23%が「民主党の候補者だから」と答えた。一方、「トランプ大統領に投票する」と答えた有権者の中で、68%が「トランプ大統領が好きだから」と答え、17%が「バイデン前副大統領に反対するため」と答え、15%が「共和党の候補者だから」と答えた。

 バイデン支持の半数はバイデンが好きとか、民主党支持だからではなく、トランプ大統領が嫌いだから、反対したいから、でバイデンに投票すると答えている。この半数は別にバイデンではなくて良かったわけだ。バイデンが好きだという投票予定者は27%しかいなかったというのはバイデン陣営からすればショックだろう。この50%の一部は現在の新型コロナウイルス感染拡大への対応や経済状況から、トランプ大統領に反対するためにバイデンに投票すると考えているだろうが、状況が好転すればどう動くか分からない。

 以前の記事でも指摘したが、対中国政策と経済運営の点ではトランプ大統領の方が、バイデン前副大統領よりも評価が高い。一方、新型コロナウイルス感染拡大対応に関して、トランプ大統領への評価は低く、バイデンに対しては、大統領になって対応するための準備ができているという評価がなされている。

 新型コロナウイルス感染拡大対策と経済対策は車の両輪であって、どちらか一方に偏ると、とんでもない対策が実施されてしまう。このバンランスを取ることが難しいが、それこそが政治家、指導者の仕事だ。そうした中で、感染拡大が続く中で経済の落ち込みもまた深刻さを増している。アメリカ国民の関心が経済に向くようになると、トランプ大統領への支持も回復していくだろう。

 大統領選挙の大きな流れとしては、アメリカ政治の対立構造が「共和党対民主党」から「親トランプ対反トランプ」になっていることだ。有権者の党派の好みは薄まり、トランプを支持するかどうかで、投票行動が決まっている。単純に金持ちや自営業者だから共和党に入れるとか、民主党は貧乏人のための政党だから入れるとか、そういう話ではなくなっている。既存の二大政党への支持や感心が落ちていることが分かる。これは共和党、民主党どちらにとっても深刻な問題だ。

 上の図にあるように、アメリカ大統領選挙は現在のところ、バイデン有利だ。しかし、激戦諸州の選挙人201の動きがどうなるか、上の図にある灰色の州の中で、特にフロリダ州、テキサス州、ペンシルヴァニア州、オハイオ州、ミシガン州、ウィスコンシン州といった私が重要な激戦諸州と指摘している諸州の動向、選挙人131の動向が大統領選挙の結果を決することになるだろう。

(貼り付けはじめ)

世論調査:全国規模でバイデンがトランプ大統領に対して10ポイントの差をつけてリード(Biden up 10 points over Trump nationally: poll

レベッカ・クレア筆

2020年7月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/509142-biden-up-10-points-over-trump-nationally-poll

最新世論調査の結果によると、民主党の大統領選挙候補者に内定しているジョー・バイデンがトランプ大統領に10ポイントの差をつけてリードしている。

日曜日に発表されたCBSニュース・ユーガヴの共同世論調査の結果によると、選挙に行くと答えた有権者の51%がバイデン支持と答え、41%がトランプ大統領支持と答えた。4%が支持する候補者を決めていないと答え、別の4%は全く別の個人もしくは第三党の候補者を支持すると答えた。

CBSニュースが日曜日に発表した別の各種世論調査によると、ミシガン州ではトランプがバイデンを追いかけ、オハイオ州では両者が接戦を展開している。この2つの激戦州は2016年の大統領選挙ではトランプ大統領が勝利を収めた。

全国規模の各種世論調査と激戦州での各種世論調査でバイデンがリードをしているが、11月の大統領選挙投開票日まで残り約100日を切った段階にある。

今回の全国規模の世論調査で調査対象となった有権者の10人のうち9人以上が投票したいと考えている候補者を変更しないと答えた。78%が自分たちの候補者への支持は「大変に強力」だと答えた。16%が「強力」と答えた。支持する候補を変更する可能性があると答えたのは5%にとどまり、1%は変更する「可能性が高い」と答えた。

バイデンへの支持は、反トランプという考えによってもたらされている。バイデンに投票すると答えた有権者の50%は、バイデンを支持するのはトランプ大統領に反対するためだと答えた。バイデンが好きだから投票すると答えたのは27%に過ぎなかった。バイデンに投票するのは民主党の候補者だからだと答えたのは23%だった。

一方、トランプ大統領への支持は候補者としてのトランプ大統領を支持しているというのが主な理由となっている。トランプ大統領に投票すると答えた有権者の68%はトランプ大統領が好きだから投票すると答えた。バイデンに反対するためにトランプ大統領に投票すると答えたのは17%に過ぎず、トランプ大統領が共和党の候補者だから投票すると答えたのは15%にとどまった。

今回の世論調査は2020年7月21日から24日にかけて2008名の成人を対象に実施された。誤差は2.5ポイントだ。

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世論調査:重要な激戦州ノースカロライナ州でバイデンがトランプに対して7ポイント差をつける(Poll: Biden tops Trump by 7 points in key battleground state of North Carolina

ジャスティン・ワイズ筆

2020年7月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign-polls/509123-poll-biden-tops-trump-by-7-in-key-battleground-state-of-north

最新のNBCニュースとマリスト大学の共同世論調査によると、民主党の大統領選挙候補者に内定しているジョー・バイデンが、ノースカロライナ州において、トランプ大統領に7ポイント差をつけた。2016年の大統領選挙でトランプ大統領はノースカロライナ伊州で勝利した。

この世論調査によると、登録済み有権者の51%が2020年の大統領選挙ではバイデンに投票すると答えた。一方、44%がトランプ大統領を支持すると答えた。今年3月の同様の世論調査の結果では、バイデンがトランプに4ポイントの差をつけていた。

2016年の大統領選挙でトランプ大統領が民主党候補者ヒラリー・クリントンを3ポイントの差をつけて破ったノースカロライナ州で、今回の世論調査においてトランプ大統領の支持率は大きな下落を記録した。ノースカロライナ州の有権者の41%がトランプ大統領の仕事ぶりを評価し、55%が評価しなかった。これまでの4カ月で支持率は11ポイントの下落を記録した。

今年3月、NBCニュースとマリスト大学が行った世論調査の結果では、トランプ大統領の支持率は45%、不支持率は48%だった。

ノースカロライナ州でのバイデンのリードは無党派有権者の支持がその理由である。無党派有権者の49%がバイデンを支持すると答え、41%がトランプ大統領を支持すると答えた。バイデンはまた女性有権者とどちらの候補者も好きではないと答えた有権者の間でも堅調な支持を集めている。

アフリカ系アメリカ人有権者の中では、86%がバイデン支持で、トランプ支持は8%だ。今回の世論調査の結果によると、トランプは白人有権者と大学の学位を持たない白人有権者の間でリードを保っている。ノースカロライナ州の有権者の過半数は、トランプ大統領は経済運営を行うために準備がより良くできている候補者だと考えている。

コロナウイルス感染拡大へのトランプ大統領の対処を評価しているのは34%にとどまった。一方、51%がバイデンの方がより準備ができていると答えた。

今回の世論調査の結果は2020年の選挙まで100日を切った時点で出された。現在、アメリカは国内各地でコロナウイルス感染拡大が続いている。月曜日の朝までの時点で、アメリカ国内では420万件のCOVID-19が確認された。COVID-19は新型コロナウイルスによって引き起こされる。死亡者数は約14万6900に達している。

各種世論調査の結果によると、多くの激戦州においてバイデンはトランプに対して攻勢をかけている。激戦州が選挙の帰趨を決することになるだろう。日曜日に発表された別のNBCニュースの世論調査の結果によると、バイデンはアリゾナ州、ミシガン州、そしてフロリダ州でバイデンがリードをしている。2016年、トランプ大統領はこれらの州で勝利を収めた。同日に発表されたAP通信の世論調査の結果によると、アメリカ国民の中でトランプ大統領のコロナウイルス感染爆発への対処を評価しているのは32%にとどまった。これは最低記録を更新するものとなった。

最新のNBCニュースとマリスト大学の共同世論調査は2020年14日から22日にかけて、ノースカロライナ州の登録済み有権者882名を含む1087名の成人を対象に実施された。誤差は3.7ポイントだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 今回は少し古い記事になるが、『ニューヨーク・タイムズ』紙の大統領選挙情勢分析記事をご紹介する。ニューヨーク・タイムズは記事の中で、ミシガン州、ペンシルヴァニア州、ウィスコンシン州、フロリダ州、アリゾナ州、ノースカロライナ州を激戦州として、その情勢を紹介している。全体としては、バイデン贔屓の内容になっている。トランプ大統領に不利な点をいくつも挙げている。白人で大学の学位を持っていない有権者が2016年のトランプ勝利の原動力となったがその層での支持が下がっているということを指摘している。しかし、私はここで、トランプ大統領に有利な点について考えてみたい。

 トランプ大統領の有利な点はやはり現職であるという点と、経済運営に関しては評価が高いという点だ。アメリカでは現在も新型コロナウイルス感染拡大が続いており、新型コロナウイルスに関しては最初の内は「中国の病気」であったものが、現在は南北両アメリカ大陸のアメリカとブラジルが最前線となっている。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、2020年の経済は世界規模で大減速となる。国際通貨基金(IMF)の予想では、世界規模ではGDPは8%の減少となり、アメリカのGDPも8%の減少ということになる。主要国でプラス成長となるのは中国で、それでも1%成長の予想だ。日本は5.8%のマイナス予想だ。ブラジルは9.1%マイナスの予想だ。そうした中で、やはり人々の関心は経済ということになる。

 ここで重要なのは、トランプ大統領の経済運営は有権者の間で評価が高いということだ。「新型コロナウイルス感染拡大で減速してしまった経済を立て直す」ということがこれからの課題となる。下の記事では経済よりも感染対策を優先して欲しいという有権者の数も多いとしている。特に、有権者の中でも投票率が高く、共和党支持が多い高齢者層でこの考えが多数を占めている。それが下の記事の表でも示されているように、高齢者層のバイデン支持につながっている。また、フロリダ州でトランプ大統領支持が下がっているのも、高齢者層のバイデン支持が理由である。フロリダ州は人生である程度以上の成功を収めた高齢者たちが移住して老後を暮らす場所だ。その人たちからすれば、「高齢者が新型コロナウイルスに感染したら死亡するリスクが高い。だから経済再開よりも拡大対策を重視して欲しい」ということになる。

 話がそれてしまったが、感染拡大対策(pandemic)と経済再開(reopening)は車の両輪のようなもので、どちらが大き過ぎても小さ過ぎてもうまくいかない。しかし、経済対策は現在でもやらねばならないし、収束を迎えたら一気に進めねばならないものだ。現在の経済対策と経済再開を本格化させる時期のことを考え「トランプが良いか、バイデンが良いか」ということになれば、トランプ支持が上がってくることは予想される。トランプ大統領はまた選挙までに思い切った経済対策を打ってくることも考えられる。

 また、下の記事では、トランプ大統領の対中国政策を支持する有権者も多いという指摘がなされている。最近になってマイク・ポンぺオ国務長官が中国に対して強硬な姿勢を示して中国側を動揺させている。激しい言葉遣いで歴代政権の対中国政策を批判している。これはもちろんトランプ大統領の許可を得てのことだが、トランプ大統領としては、ポンぺオが中心の「封じ込め政策派」とキッシンジャーを中心とする「関与政策派」を車の両輪として進めていくと考えているだろう。有権者に受けがよい対中国強硬姿勢を見せつつ、こちらが進み過ぎたとなれば引っ込めるという形で手綱を使って制御していくだろう。今回の対中国強硬姿勢は大統領選挙対策という面もある。

 一つ明確に言わねばならないことは、全国規模の世論調査でバイデンがトランプを大量リードしているという報道は話半分で聞いておくべきだということだ。確かにバイデン支持は高まっているという流れはあるし、それを示してはいるが、バイデンが圧勝するということは今の段階ではまだ言えない。アメリカ大統領選挙の情勢をより正確につかむためには、私が以前挙げた10州程度の激戦州の世論調査の数字を、世論調査自体の誤差も頭に入れながら見ていくことだ。そうすると、現状は接戦ということになる。全米50州とワシントンDCを全て見る必要はもちろんないし、そんなことはできないが、激戦諸州を見ていくことが重要だ。

(貼り付けはじめ)

世論調査で、トランプ大統領は6つの激戦州でバイデンから遠くおいていかれている(In Poll, Trump Falls Far Behind Biden in Six Key Battleground States

-トランプ大統領への白人有権者からの支持が減っている。これは各州で少なくとも6ポイントの支持率減少につながっている。

ネイト・コーン筆

2020年6月27日

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2020/06/25/upshot/poll-2020-biden-battlegrounds.html

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『ニューヨーク・タイムズ』紙とシエラ・カレッジの複数回の共同世論調査の結果によると、トランプ大統領は6つの激戦州で支持を大きく落としている。2016年の大統領選挙でトランプ大統領はこれらの州で選挙人を勝ち取った。ジョセフ・R・バイデン・ジュニアはミシガン州、ペンシルヴァニア州、ウィスコンシン州でトランプ大統領に対して10ポイント以上の差をつけている。

トランプ大統領は白人有権者の支持で大きなリードを保っていたが、それがほぼ消え去っている。この状態が続くならば、トランプ大統領の再選は妨げられることになるだろう。バイデン前副大統領は白人の大学卒業生の間で21ポイントのリードを記録している。バイデン氏は白人の大学卒業生の有権者たちの間で21ポイントの差をつけている。そして、トランプ大統領は北部の激戦諸州において白人有権者の支持を失いつつある。2016年の大統領選挙でトランプ大統領は10ポイント近くの差をつけて勝利した。

4年前、トランプ大統領は白人の労働者階級が多い激戦州で無類の強さを発揮し、獲得選挙人数で勝利をしたが、一般得票数では敗れるという結果を出した。各種の世論調査の結果によると、トランプ大統領は全国規模の結果に比べて、比較的白人が多く住む激戦諸州では善戦を続けている。

今週水曜日に発表されたニューヨーク・タイムズとシエラ・カレッジの共同世論調査の結果によると、全国規模でバイデン氏が50%対36%で、14ポイントの差をつけている。

バイデン氏は選挙人333名を獲得して勝利する可能性がある。バイデン氏が調査の実施された6つの州全てで勝利を収め、勝利に必要な270名を大きく超えるものだ。4年前にヒラリー・クリントンはこれらで勝利を収められなかった。フロリダ州、アリゾナ州、ノースカロライナ州を含む6州のうちの3つの州の組み合わせでもバイデン氏は勝利を収めるだろう。

選挙まで4カ月強に迫った段階で、大統領が政治力を使って支持率を回復するための時間はまだ残っている。4年前の大統領選挙でも多くの機会をトランプ大統領は利用した。トランプ大統領は経済について優位な立場を保っている。今年の波乱が起きそうな選挙では、経済はいつもよりも重要な争点となるだろう。今回取り上げる激戦諸州に住む、どちらを支持するかまだ決めていない有権者の多くは共和党支持寄りであり、最終的に共和党の候補者であるトランプ大統領に投票する可能性は高い。

しかし現在の段階では、昨年10月以降、トランプ大統領の政治的な立場は急速に落ち込んでいる。昨年10月、本紙とシエラ・カレッジの複数回の世論調査の結果、バイデン氏は6つの州全体で2ポイントのリードをつけていることが分かった(現在のリードは9ポイントになっている)。それ以降、アメリカはいくつも危機に直面している。これまで再選を目指した大統領は多くいたが、トランプ大統領ほどいくつも深刻な政治上の問題に直面している人はいない。各種世論調査によると、激戦諸州の有権者たちは、トランプ大統領が支持を集めることに苦闘していると考えている。

概して言うと、激戦諸州に住む有権者の42%がトランプ大統領の大統領の仕事ぶりを評価しており、54%は評価していない。

これら6つの州は大都市、古くからの工業の中心、拡大し続ける郊外、農業地帯など様々な要素を含んでいる。これらを合わせて見ると、最近の諸問題についてのトランプ氏の対応についての総合的な判断をすることができる。最近の諸問題はアメリカの生活様式に影響を与えている。ウイルス感染拡大とジョージ・フロイドの死亡の後に起きた抗議活動へのトランプ大統領の対応は、新旧の激戦諸州での大統領の支持率低下の説明となる。

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アリゾナ州アパッチ・ジャンクションに住む83歳になるアラン・ラーソンは最近、メカニック・エンジニアの仕事から引退した。ラーソンはトランプ大統領就任直後から、トランプ大統領に投票したことを後悔し始めた。ラーソンは、トランプ大統領が、オバマ前大統領の実施したことを余りにも多く廃止しようとしており、素晴らしい人々を政権から排除しているが、何よりも感染拡大に対する大統領の対処が自分の考えを固めさせた、と述べている。

ラーソン氏はバイデン氏に投票する予定だ。ラーソンは次のように述べた。「彼はウイルスについて何もしていません。彼が大統領としてやってきたことについて、私は彼がやるべきことをやったとは考えません」。

最近起きている諸問題について、有権者のトランプ大統領への不支持は、アメリカの現状についての一般的な不満以上のものを反映している。トランプ大統領への不支持は、コロナウイルスの拡大を止めることよりも経済を優先させる、そして、刑法システム改革よりも法と秩序を重視する大統領の姿勢に対するより根本的な不同意を反映しているように見える。

有権者の過半数、63%が抗議活動の主張を認める大統領選挙候補者を支持すると答えている。抗議活動が行き過ぎているが、行き過ぎたデモに対して強硬姿勢を取る必要がある述べる候補者を支持すると答えた有権者は31%にとどまった。

失業率が二桁を記録しているが、これら6つの州の有権者の55%は連邦政府の優先順位はコロナウイルスの感染拡大を制限するものであるべきだと答えている。たとえそれが経済に打撃を与えても感染拡大を制限する方を優先すべきだと答えた。一方、連邦政府は経済を再開することを優先すべきだと答えたのは35%だった。最近になって失業した人々は、経済再開で最も得るものがある人々であるが、コロナウイルスの感染拡大阻止が政府の優先政策となるべきだと答えている。

トランプ大統領とミシガン州知事グレッチェン・ウィットマーとの衝突は、大統領が直面している挑戦を象徴している。トランプ氏は、ミシガン州知事の在宅命令に反対する抗議活動参加者たちに味方した。しかし、ミシガン州に住む有権者たちのうち、ソーシャル・ディスタンシングに反対する抗議活動について、57%が反対、37%が賛成だった。

現在までに、ミシガン州の有権者の59%がトランプ大統領のコロナウイルスへの対処に同意していない。この数字は激戦諸州で実施された世論調査の数字の中で最も高いものである。ミシガン州の登録済見有権者の約40%、その中には共和党支持の有権者の11%が含まれているが、この人々は感染拡大に関して、トランプ大統領は他の州に比べて自分たちの州の取り扱いをきちんとしていないと答えている。

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コロナウイルス感染拡大という事態がなく、より通常の状態の選挙であれば選挙の中心的な争点となるであろう諸問題について、トランプ大統領の支持率はより健全である。経済については、56%がトランプ大統領の仕事ぶりを支持している。支持していないのは40%である。この数字は大統領支持率の数字とほぼ逆になっている。激戦諸州の有権者たちは、経済についてはトランプ大統領はバイデン氏よりもより良い仕事をするだろうと答え、その差は10ポイント以上だ。また、中国との関係への対処についてはトランプ大統領の方がうまく行うだろうと答えている。

人々の記憶を消したり、大統領への支持を引き戻させることができる全国放送の討論会の準備をしたりする時間はまだ残っている。

フロリダ州オークランドに住む35歳のパン販売店の店長ジョー・クックは2016年の大統領選挙でトランプ大統領に投票したが、大統領のコロナウイルス感染拡大の対処に失望している。クックは、トランプ大統領は感染拡大の間も経済のシャットダウンを行うべきではなかったし、略奪者たちへの厳しい取り締まりは行うべきだったと述べている。

それにもかかわらず、クックはトランプ大統領を支持し続けている。それは、トランプ大統領がより低い税率と規制緩和を行っているからだと述べている。クック氏は「私の人生で言えば、より小さい政府はより良いことなんですよ」と述べた。

しかし、現在のところ、トランプ大統領に勝利をもたらした連合は深刻な縮小に直面している。ここ最近の選挙の人口面から見た分裂に沿った減少である。

トランプ大統領は2016年に彼に投票した有権者の86%の支持を維持しているが、この数字は昨年10月の92%に比べて下がっている。

対照的に、バイデン氏は厳しい戦いとなった予備選挙を経て、まとまった民主党の連合から出現してきた。4年前の選挙でヒラリー・クリントン夫人に投票した有権者の93%がバイデン氏を支持している。また、自身を民主党支持者と答えた有権者の92%の支持も獲得している。バイデン氏は2016年にトランプ大統領にもクリントン夫人にも投票しなかった有権者の間で大量リードを保っている。バイデン氏は、激戦諸州の有権者の中で二大政党以外の小政党の候補者や他の人の名前を書いた有権者の間で、トランプ大統領に対して35ポイントの差をつけてリードしている。

まとめると、有権者の記録を見ると、2016年の選挙に参加した有権者の間で、バイデンは6ポイントの差をつけてリードしている。同じ有権者たちで見ると、2016年の時点では、トランプ氏はクリントン夫人に対して2.5ポイント差をつけていた。この数字は、6つの激戦諸州での実際の数字よりもより高いものとなった。これは世論調査の確かさを示している。2016年の選挙に参加しなかった登録済み有権者の間では、バイデンは17ポイントの差をつけている。

白人有権者の間でのトランプ氏の支持は低下している。現在、人種問題について全国規模で関心が高まっている。多くのアナリストたちは、人種問題によって、白人有権者たちの間でトランプ大統領は強さを増すはずだと考えている。人種についての姿勢は白人有権者に対するトランプ氏のアピールにとって重要であるが、彼の強さは揺らいでいる。

全国規模の各種世論調査の結果によると、ブラック・ライヴス・マター運動は2016年の選挙以降、より人々に知られるようになっている。本紙とシエラ・カレッジが実施している複数の世論調査では、激戦諸州に住む白人有権者たちは最近の抗議活動を支持しており、刑法システムについての抗議活動の主張を支持している。その中には、フロイド氏の死亡は警察の行き過ぎた暴力のパターンであり、刑法システムはアフリカ系アメリカ人に対して不利に働くようになっているという主張だ。有権者たちは、最近の抗議活動と人種関係についての大統領の対処の仕方全般について不同意である。

白人有権者の中で、若い有権者と大学教育を受けた有権者の間でバイデン氏支持が伸びている。こうした人々は人種問題についての抗議活動参加者たちの考えに同意している。

6つの州において、4年制大学の学位を持つ白人有権者の中で、バイデン氏は55%対34%でリードしている。昨年10月から11ポイント支持を伸ばしている。35歳以下の白人有権者たちの中で、バイデン氏は50%対31%でリードしている。昨年10月の時点では数字はタイであった。

人種問題についてより保守的な考えを持つ白人有権者たちはここ数カ月でトランプ氏への支持を下げているが、バイデン氏への支持にも回っていない。

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大学学位を持たない白人有権者は、トランプ大統領に勝利をもたらした連合の基礎であった。激戦諸州で見ると、この人々の間ではトランプ大統領が16ポイントのリードをつけているが、昨年10月の24ポイント差、前回の選挙前最後の世論調査での26ポイント差に比べると支持は下がっている。このようにトランプ台と寮への支持の低下はあるが、大学学位を持たない白人有権者の間でのバイデンの支持は昨年10月に比べて1ポイントしか上昇していない。

バイデン氏が支持を得た有権者の中には、ウィスコンシン州ベロイトに住む29歳のサマンサ・スペンサーがいる。スペンサーは次のように述べている。「私には失望してしまうことがたくさんあります。私はキリスト教徒ですが、同じキリスト教徒でもまだトランプ大統領支持にこだわっている人たちがたくさんいます。しかし、私は自分の信仰に照らしてみて、このゴミ箱をこれ以上支持することを正当化できなくなっているのです」。

バイデン氏は65歳以上の有権者の間でトランプ大統領をリードしている。10年単位で見ると、高齢者の間では共和党支持の方が高いという流れであったが、それが逆転している。しかし、バイデン氏は昨年10月以降、50歳以上の有権者たちの間で支持をあまり伸ばせていない。大学の学位を保持していない50歳以上の白人有権者の間では支持を伸ばせていない。

人種と抗議活動についての比較的保守的な姿勢は大統領の支持回復の理由となるだろう。激戦諸州の50歳以上の白人有権者たちは最近のデモについては反対し、あまりにも多くのデモが暴力的な暴動に発展していると述べている。白人に対する差別はマイノリティに対する差別と同様に重大なのかどうかということについては意見が分かれている。そして、アフリカ系アメリカ人への警察の取り扱いよりも暴動の方がより重大な問題だという主張に関しては10ポイントの差で支持されている。

先月、司法制度改革と人種差別について全国規模で関心が集まっているにもかかわらず、より驚くべきことには、バイデン氏は非白人有権者の間で支持をほぼ高めていないということだ。

激戦諸州全体で見ると、アフリカ系アメリカ人有権者の間で、バイデン氏の支持率83%、トランプ大統領の支持率7%となっている。昨年10月から支持率を少し上げている。ヒスパニック系有権者の間ではバイデンの支持率62%、トランプ大統領の支持率は26%で、バイデン氏の支持が高い。この数字はほぼ変わっていない。2016年の大統領選挙でヒラリー・クリントン夫人の支持率の数字に比べれば、バイデン氏の支持率の数字は低くなっている。

バイデン氏の大幅リードは、バイデン氏の強さではなく、トランプ大統領の弱さを反映している。全体で見て、バイデン氏の支持者の55%は、自分たちのバイデン氏への投票は、バイデン氏支持というよりも、トランプ大統領への反対票だと答えている。一方、トランプ大統領の支持者たちはトランプ大統領への支持票だと答えている。バイデン氏の支持率の上昇は彼の好感度の改善なしに達成されている。トランプ大統領の好感度は大幅に下がっている。

しかし、バイデン氏は多くの点で支持を高めている。激戦諸州の有権者の50%はバイデン氏に対して好意的な見方をしている。彼に対して否定的な見方をしているのは47%だ。

バイデン氏はトランプ大統領に対してつけている大幅リードをそのまま有権者の投票に結びつけるために苦闘するだろうと考えられる。バイデン氏、トランプ氏両方とも支持していない激戦諸州の有権者たちは、登録した支持政党や支持政党から見ると、共和党を支持する傾向がある。この有権者のうち、2016年の選挙でトランプ大統領に投票したのが34%で、クリントン夫人に凍傷したのが20%だった。

選挙戦終盤までに、こうした有権者の一部はトランプ大統領支持に戻る可能性が高い。しかし、こうした有権者の56%がトランプ大統領の仕事ぶりを支持しておらず、支持しているのは29%にとどまった。

これらの複数の結果が示しているのは、バイデン氏は圧勝する可能性をまだ持っているということである。結論を述べると、激戦諸州の登録済み有権者の55%が、今年の秋の選挙でバイデン氏に少なくとも投票する「チャンス」があると答えている。その中には共和党支持者の12%、2016年の選挙でトランプ氏に投票した有権者の11%が含まれている。また、共和党支持に近い無党派層の44%も含まれている。

トランプ氏について、激戦諸州の登録済み有権者の55%が、今年の11月にトランプ大統領に投票することは「ほんとうにない」と答えた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 今回は米中新冷戦に書いていく。

■マイク・ポンぺオのヘンリー・キッシンジャー批判

 米中関係が緊迫化している。アメリカ側の厳しい姿勢に対して中国が戸惑っているという形だ。その中心にはマイク・ポンぺオ(Mike Pompeo、1963年-)国務長官がいる。ポンぺオ国務長官は2020年7月23日にカリフォルニア州で演説し、リチャード・ニクソン大統領が行った米中国交回復以降のアメリの対中「関与政策(engagement policy)」を批判した。「関与政策」に対となる考え方は「封じ込め政策(containment policy)」であり、アメリカの外交官ジョージ・ケナン(George Kennan、1904-2005年)が書いた「X論文」がその基であり、これがアメリカの第二次世界大戦後の冷戦期の対ソ連の基本となった。
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マイク・ポンぺオ
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ジョージ・ケナン

 ポンぺオ国務長官は対中「封じ込め政策」のために、「有志連合」の形成を訴えている。有志連合(coalition of the willing)という言葉は、2003年のイラク戦争の際にも使用されたが、国際連合(United Nations、連合諸国[第二次世界大戦の戦勝国の世界管理に資する枠組み])の決議によらないで、アメリカが他国を攻撃する際に使う他国を「従わせる」ための枠組みである。アメリカは既に「国連は役立たず」と考えており、利用できる時だけ利用すればよい、という姿勢になっている。

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●「米の歴代対中政策「失敗だった」 ポンペオ国務長官」

7/24() 13:08配信

朝日新聞デジタル

https://news.yahoo.co.jp/articles/25bb2028ab3adbac4f0be59a302e68ebcf0f6500?fbclid=IwAR0wmBMsOgo9MFyGrzq1maGqg9a0_YeMzS-Sh_spMTC4KwBjHvvuLqfR_AU

 ポンペオ米国務長官は23日、対中政策について演説し、米国の歴代政権が続けてきた、一定の関係を保つことで変化を促す「関与政策」について、「失敗だった」と訴えた。中国に対抗するため、有志の民主主義国による新たな連合も提唱した。

 ポンペオ氏はカリフォルニア州のニクソン大統領図書館で演説。「無分別な関与という古いパラダイムは失敗した。我々は続けるべきではない」と訴えた。そのうえで、「ニクソン大統領の歴史的な訪中によって我々の関与戦略は始まった。その後の政策当局者は中国が繁栄すれば、自由で友好的な国になると予測したが、関与は変化をもたらさなかった」との見方を示した。

 ポンペオ氏は、閉鎖を命じた在ヒューストン中国総領事館について「スパイ活動と知的財産盗用の中継地だった」とした。

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 ポンぺオのアメリカのこれまでの対中政策批判は、リチャード・ニクソン(Richard Nixon、1913-1994年)政権下で米中国交正常化を行ったヘンリー・キッシンジャー(Henry Kissinger、1923年-)元国務長官が敷いた路線を批判したということになる。これは重大なことだ。ドナルド・トランプ(Donald Trump、1946年-)大統領は大統領選挙中の2016年6月に極秘に(と言ってもマスコミで報道されたが)ヘンリー・キッシンジャーの自宅を訪問している。この橋渡しをしたのは、トランプの娘イヴァンカ(Ivanka Trump、1981年-)の夫ジャレッド・クシュナー(Jared Kushner、1981年-)である。それ以降もたびたびホワイトハウスで会談している。この最重要人物キッシンジャーに対して、「お前のやってきたことは間違っていた、アメリカに大損害をもたらした」と、マイク・ポンぺオは国務長官として公の場で批判したことになる。
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キッシンジャー、周恩来、毛沢東
 現在のところ、トランプ大統領は表立って何かを言ってはいない。しかし、ここで分かることは、トランプ大統領は複数の路線を政権内に握っているということだ。マイク・ポンぺオをはじめとする対中強硬派と、ヘンリー・キッシンジャーを頭目とする対中関与派の2つの路線がある。トランプ大統領はそれらを使い分けようとしている。

 後100日ほどで大統領選挙投開票日を迎える。日本でも民主党の大統領選挙候補者に内定しているジョー・バイデン前副大統領がトランプ大統領を大きくリードしているという報道がなされている。このことについてはあまり言及しないが、全国規模の世論調査の数字だけを見ていては大統領選挙の実態を掴むことはできない。なぜならば、大統領選挙の結果は全国規模の総得票数で決まるのではなく、各州の得票数によって選挙人総取り制度となっているからだ。

 トランプ大統領とバイデン副大統領、どちらも支持者から簡単に支持を得やすいのは対中強硬姿勢だ。不公正な現在の貿易の状況を是正する、とか中国の人権状況を改善するとか言っていれば支持は上がる。特にトランプ大統領の支持者たちは、中国に恐れを抱いているだろうから(アメリカから覇権を奪う国として)、強硬姿勢は重要だ。

 しかし、トランプ大統領はビジネスマンだ。金儲けにならないことは無駄なことだ。ここまで大きくなった中国、世界のGDPの16%を占め、2020年の経済成長予測で世界の大国で唯一経済成長を続ける(それでも1%だが)国、そうした国と商売ができた方が良いに決まっている。だから、決定的な手切れにならないように、「保険」として、キッシンジャーを大事にしている。ポンぺオには好きなように吠えさせておけばよい、しかし、あまりにも行き過ぎたらガツンとやる、更迭もあるということになる。

■スパイ合戦はお互い様でしょう

 アメリカ政府は中国に対してテキサス州ヒューストンにある中国総領事館の閉鎖を命令した。その理由として、ポンぺオ国務長官は「スパイ活動と知的財産窃取の拠点」だったとしている。はっきり言って、スパイ合戦はお互い様だ。どこの国だってやっている。

 「なんでニューヨークとかロサンゼルスとかアメリカの大都市部の総領事館じゃなくてヒュースントンなの?」という疑問がわく。スパイ合戦というならば、イメージとしては、大都市の裏路地で情報提供者とスパイマスターが接触する、ということになる。

 テキサス州はアメリカ国内でも経済成長が著しい地域であり、人口流入が続いている。そして、中国からの投資や移民も多い。テキサス州の大都市であるヒューストン、ダラス、サンアントニオを結ぶ三角形内の人口増加は著しい。前回の大統領両選挙からの約4年間で200万人の人口増があったと報じられている。

移住してくる人の多くは教育水準の高い若者たちが多い。こうした人々の多くは民主党支持者である。テキサスは共和党の金城湯池、レッドステイトであり、レッドステイトしては最大の大統領選挙での選挙人配分数(38名)となっている。しかし、世論調査の数字を見ると、トランプ大統領とジョー・バイデン前副大統領は大接戦となっている。また、大統領選挙と同時に実施される連邦議員選挙でも民主党が議席を伸ばす可能性が高まっている。

 トランプ大統領としては何としてもテキサス州を取りたい。そのために支持者を固めたいところだ。対中強硬姿勢を見せる場所としてヒューストンは格好の場所である。ヒューストンという場所が別の意味で象徴的であるのは、この町が先ごろ亡くなったジョージ・HW・ブッシュ元大統領の町だという点だ。ちなみに息子のジョージ・W・ブッシュ(George Walker Bush、1946年-)元大統領はダラスに住んでいる。ヒューストンとダラスの間を日本の新幹線で結ぼうという計画がある。

 ジョージ・HW・ブッシュ(George Herbert Walker Bush、1924-2018年)元大統領は中国とのつながりが深い。兄や息子が中国とのビジネスをしていたということもあるし、何より、ブッシュ自身が米中国交正常化後、北京に設置された米中連絡事務所(事実上のアメリカ大使館)の初代所長として中国に滞在した。また、ブッシュ政権下で発生した天安門事件の後処理でも強硬な姿勢を取らず、ヘンリー・キッシンジャーやブレント・スコウクロフトを派遣し、関係を継続するなどしている。そのために、ブッシュ家は「親中派」だという主張もある。ブッシュ家の拠点であるヒューストンの中国総領事館に閉鎖命令が出されたことは、アメリカの対中関与政策派に対する攻撃をも意味するものだ。
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北京でのブッシュ夫妻
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●「総領事館は中国のスパイ拠点 習主席を名指しで批判―ポンペオ米国務長官」

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https://www.jiji.com/jc/article?k=2020072400203&g=int

 【ワシントン時事】ポンペオ米国務長官は23日、南部テキサス州ヒューストンの中国総領事館閉鎖命令の理由について、「スパイ活動と知的財産窃取の拠点だったからだ」と明らかにした。現在の中国を「通常の国」として扱うことはできないと述べ、対抗姿勢を鮮明にした。西部カリフォルニア州ヨーバリンダでの演説で語った。

 ポンペオ氏は演説で、歴代米政権の「関与政策」は中国に変化をもたらさず、習近平国家主席は「全体主義の本物の信奉者だ」と批判。知財窃取に加え、南シナ海への進出、人権侵害などを挙げ、「われわれが行動しなければ、中国は法の支配に基づく国際秩序を破壊する」と懸念を示した。

 その上で、国連や先進7カ国(G7)などが中国の脅威に十分に対応できていないと示唆。「新たな民主主義国の連合」による国際的な対中包囲網の形成を模索する考えを示した。詳細には触れなかったが、トランプ大統領はこれまで、G7にインドや韓国、オーストラリアなどを加えて拡大する案を表明している。

 また、ポンペオ氏は「中国共産党は、市民の正直な意見をいかなる敵よりも恐れている」と指摘。天安門事件で民主化を求めた学生リーダー、王丹氏や民主活動家の魏京生氏を演説に招待し、「国家安全維持法」施行で香港への統制を強める中国をけん制した。

 ポンペオ氏の演説に先立ち、過去1カ月でオブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)、レイ連邦捜査局(FBI)長官、バー司法長官が共産党のイデオロギーや、中国のスパイ活動などを批判する演説を行ってきた。政権として強硬姿勢を前面に押し出している。

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 中国政府は、アメリカ政府によるヒューストンの中国総領事館の閉鎖命令に対抗して、四川省成都にあるアメリカ総領事館の閉鎖を求めた。これはヒューストンの中国総領事館閉鎖命令への対抗措置だ。対抗措置の場合、受けた事象よりも過大であってもいけないし、過小であってもいけない。釣り合わねばならない。中国政府は成都の米総領事館が「スパイ活動」の拠点であったと示唆している。ここで思い出されるのは、重慶市党委書記として辣腕を振るった薄熙来(はくきらい、ポーシーライ、1949年-)をめぐる事件だ。2012年、薄熙来の側近だった王立軍(おうりつぐん、ウネンバートル、1959年-)重慶市副市長が成都の米総領事館に逃げこんだ。その後、薄熙来をめぐる様々な事件が明るみに出て、薄熙来は失脚した。

 薄熙来は重慶市のトップである中国共産党重慶市委員会書記として権勢をふるい、「独立王国」を形成し、北京に乗り込む勢いだった。これに対して、当時の胡錦涛(こきんとう、フーチンタオ、1942年-)国家主席と温家宝(おんかほう、ウェンチアパオ、1942年-)国務院総理は深刻な危惧を抱いていた。薄熙来は重慶市を抑えるとともに、成都軍区(現在は西部戦区)人民解放軍も取り込んでいた。一説にはクーデターを画策していたとも言われている。ここからは私の推測だが、薄熙来の後押しをしていたのが成都にある米総領事館だったのではないかとも考えられる。
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北京、瀋陽、上海、武漢、広州、成都
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五戦区(Theater Command)
 アメリカの総領事館は上の地図で表示されているが、中国国内の各戦区と対応している。もちろんそれは各地の大都市に置いてあるのだから当然であるが、この総領事館には米軍の情報将校が派遣されていると見るのが当然だ。そして、人民解放軍内に人脈を広げたり、工作活動を行ったりしているのは間違いない。もちろん、中国側もアメリカ国内で同様の活動を行っているはずだ。

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●「中国、米国に成都の総領事館閉鎖を要求-ヒューストン閉鎖に対抗」

Bloomberg News

2020724 13:36 JST 更新日時 2020724 21:04 JST

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-07-24/QDYHIFT1UM0W01

領事館員としてそぐわない活動に一部が従事-中国外務省報道官

成都の総領事館はチベット情勢の重要な情報収集拠点

中国政府は米国に対し、中国南部の四川省成都にある総領事館を閉鎖するよう要求した。中国外務省が24日に声明で明らかにした。米政府が中国にテキサス州ヒューストンの総領事館閉鎖を迫ったことに対抗する措置。

中国外務省は声明で、「中国が講じた措置は、米国の不当な行為に対する正当かつ必要な対応だ」と主張した。中国の報復は想定されており、ヒューストンの総領事館が撤収期限を迎える数時間前に発表された。米国務省はヒューストンの総領事館がスパイ活動や情報活動の拠点になっていたと非難している。

成都の総領事館閉鎖は米国の外交官を四川省の省都から追放するだけではない。隣接するチベットの動向を把握する上で重要な情報収集拠点の閉鎖も意味するため、武漢の米総領事館の閉鎖を命じられた場合よりも大きな影響があるとみられる。ただ香港や上海の総領事館の閉鎖ほどの影響ではない。

中国外務省の汪文斌報道官は北京での定例会見で、一部の総領事館職員が「領事館員としてはそぐわない活動に従事し、中国の内政に介入、中国の国家安全保障上の利益を損ねた」と説明した。24日午後までに多くの警察官や私服警察官、人民解放軍関係者が成都の総領事館に隣接する通りをパトロールし、写真を撮影した人たちに画像を消去するよう命じていた。

 総領事館の閉鎖はここ数年間の米中関係悪化が警戒すべき水準にまで達したことを示している。中国は世界に対して一段と強硬な姿勢を取るようになり、米国は中国の台頭を阻もうと必死だ。トランプ米大統領とその側近らは11月の大統領選を前に対中攻撃を強めており、スパイ活動からサイバー攻撃、新型コロナウイルスのまん延などあらゆる面で中国政府を非難している。

1985年に開設された成都の総領事館は、中国南西部の四川省と雲南省、貴州省、重慶市を管轄地域としているほか、チベット情勢に関して米国が情報収集する主要拠点の役割も果たしている。

中国共産党機関紙・人民日報系の新聞、環球時報の胡錫進編集長がツイッターに投稿したところによると、中国は成都の米総領事館を72時間以内に閉鎖するよう命じ、米国がヒューストンの中国総領事館の閉鎖を求めたのと同じ期限を設けた。これに基づくと、成都の米総領事館は27日午前10時までに閉鎖する必要がある。

これとは別に米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は今回の件で説明を受けた関係者の話として、中国は閉鎖命令で影響を受ける外交官らに30日以内の国外退去を求めたと報じた。WSJは関係者の氏名を明らかにしていない。

中国外務省は24日、「中国と米国の関係の現況は中国が望むものではない。米国はこの全てに責任がある」と強調。「われわれはもう一度、米国にその誤った決定を直ちに撤回し、二国間関係を軌道に戻すために必要な条件作りを強く求める」と呼び掛けた。

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■「華人対華人」と書かれて、アメリカ人専門家の立場がない

 マイク・ポンぺオ国務長官の対中政策指南役は余茂春(Maochun Miles Yu、1962年―)という人物だ。米海軍兵学校の歴史学部の教授だ。天津にある南開大学を卒業後の1985年にアメリカに留学、フィラデルフィアにあるスワースモア大学で修士号、カリフォルニア大学バークレー校で博士号(歴史学)を取得した。東アジア史、東アジア政治、軍事史を専門とし、教えている。
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ポンぺオ国務長官と余茂春

「華人の軍師」という言葉から見ると、ポンぺオの軍師は余茂春となり、習近平(しゅうきんぺい、シーチンピン、1953年-)国家主席の軍師は、王滬寧(おうこねい、ワンフーニン、1955年-)中国共産党中央政治局常任委員・中央書記処書記・中央精神文明建設指導委員会主任ということになる。王滬寧は江沢民。胡錦涛、習近平に仕えたことから「三朝帝師」と呼ばれている。

 どちらもイケイケ、それぞれ反中、反米の路線で極端に流れがちだ。そのために王滬寧は習近平から叱責を受けたとも言われている。ヘンリー・キッシンジャーのリアリズム(現実主義)と比べれば、やはり一段落ちると感じだ。

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中国もひどく驚いた米国の超強硬圧迫…「国宝」と呼ばれる中国人の作品

7/23() 14:58配信

中央日報日本語版

https://news.yahoo.co.jp/articles/53327d5db0c4c20c8734cfe33bc17a9d7da577ab

米国の「中国バッシング」が中国内で「あくどいこと極まりない」という言葉が出るほど過酷だという評価が出ている。中国共産党員の米国訪問禁止案を議論したかと思えば、ヒューストン駐在の中国総領事館に対して72時間以内の閉鎖を電撃通知した。

想像を超える米国の強硬措置が続き、中国はひどく当惑している様子だ。中国はその都度「米国はおかしい」と非難し、「反撃する」と対抗している。しかし、中国が対応の枠組みを整える前に、米国は別の中国バッシングを披露している。 

過去の政府とは全く異なるトランプ米大統領の対中強硬措置の背後には「米国では国宝、中国では漢奸」と呼ばれる華人がいる。ことし58歳の余茂春氏がその主人公だ。余氏は現在、マイク・ポンペオ国務長官の中国政策首席顧問だ。

余茂春氏のオフィスはポンペオ長官の執務室からわずか数歩しか離れていない。中国から「人類の公敵」と非難されるポンペオ長官は、余茂春氏のことを「我々のチームの中核」と言う。

ポンペオ長官は「中国共産党の挑戦に直面し、このチームは我々に自由をいかに守ることができるかについて提案する」とし、余茂春氏の役割を評価した。デイビッド・スティルウェル米国務省東アジア・太平洋担当次官補は「余茂春先生は国宝」とまで称えている。

マット・ポッティンジャー米国家安全保障副補佐官は、余茂春氏をトランプ政府外交政策チームの「宝のような貴重な資源」と賞賛している。米ワシントン・タイムズや中国環球時報などによると、現在米国の中国バッシングを背後から指揮している人物が余茂春氏だ。

1962年8月に中国重慶で生まれた余茂春氏は、青少年期に狂乱の文化大革命の10年の歳月を経て、1979年から1983年までは周恩来が通ったことのある天津・南開大学で歴史学を学んだ。

1985年に米国に渡り、ペンシルバニア州のフィラデルフィアの南西に位置するスワースモア大学で修士号を、1994年にカリフォルニア大学バークレー校で歴史学の博士号を取得した。同年、米海軍の教官になり東アジアと軍事史を講義した。現在、米国の要職には余氏の学生が少なからず布陣しているという。

トランプ氏の執権以降、米国務省傘下の政策企画室で勤務することになった余茂春氏は、この3年間トランプ政府の対中戦略を立てるために非常に重要な役割を果たした参謀で、米国に中国を戦略的競争相手と規定させた張本人として知られている。

中国語を母国語として学んだ余茂春氏は中国が駆使する外交用語に惑わされるなと主張する。北京がよく使う「Shuangying(ウィン・ウィン)」や「相互尊重」のような言葉は中国語の中の陳腐なことこの上ない古臭い表現で、耳を傾けてはならないと言う。

余茂春氏は米政府が70年代末に北京と修交して以来、米中関係を自らの意のままに導いていけると誇示したのが間違いの始まりだったと言う。トランプ氏以前の米大統領が犯した間違いは、対中政策を立てる際に中国がどう出るかを考慮したことだと主張する。

余茂春氏は「まず、米国の最優先の国家利益が何なのかから検討すべきだった」と言う。これを土台に中国を強く圧迫すべきだということだ。また、余氏は米政府の歴代の対中政策のうち、最大の過ちは中国共産党と中国人民を区別しなかったことだと言う。

米高官が中国共産党政権と中国人民を区別せずに「中国人」と総称したのは間違いだということだ。ポンペオ長官が最近、習近平中国国家主席を「習首席」ではなく「中国共産党総書記」と呼んでいるのには理由があったのだ。

先日、米ニューヨークタイムズが報じた「中国共産党員の米国訪問全面禁止案検討」報道からは余茂春氏の存在が感じられる。中国共産党は伝統的に人民を水、共産党員を魚に例える。余氏の主張は魚を水から離そうとするものだ。

また、余茂春氏は米国はこれまで対中政策を樹立する際に北京の弱点を正確に把握できていなかったと指摘する。余氏は「実のところ、中共政権の核心は脆弱で、自らの人民を最も恐れている」と主張した。 

余茂春氏は現在、米政府で「中国に関する百科事典」で通っている。一方、中国では余氏を「漢奸」と呼ぶ。中国の左派シンクタンク昆侖策の研究員は「南開大学がこんな恩知らずな人物を輩出したのか」と嘆いている。

環球時報の総編集、胡錫進氏は「米国のあくどい対中政策はこの華人から出た。20代前半に中国を離れる時、彼の頭の中には西欧への崇拝でいっぱいだった」とし「彼はインターネットで出回る極端主義勢力の影響を受けた偽の学者に過ぎない」と猛非難した。 

現在展開されている米中の戦いは、ある意味「華人対華人」の構図だ。トランプ執権後、中国は米国の予想外の高校措置にひどく苦戦し、「我々が米国を分かっていない」と嘆いてきたが、実は気づけば米国の背後には華人がいたのだ。

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毛沢東支配下の中国からフォギー・ボトム(引用者註:国務省のこと)へ:マイルス・イーは中国政府に対する私たちの新しいアプローチの重要なプレイヤーである(From Mao's China to Foggy Bottom: Miles Yu a key player in new approach to Beijing

ビル・ゲーツ筆

『ワシントン・タイムズ』紙

2020年6月15日

https://www.washingtontimes.com/news/2020/jun/15/miles-yu-mike-pompeo-adviser-helps-form-china-poli/

マイルス・イーの人生は中国の片田舎で始まった。その当時、中国全土は毛沢東が始めた文化大革命の狂乱の中にあった。狂信的な紅衛兵たちが中国国内の伝統と資本主義の全ての痕跡を破壊し殺害するために国全体を蹂躙していた。

今日、イー氏はマイク・ポンぺオ国務長官の中国に関する政策と企画立案の主要な助言者となっている。国務省7階にある政策企画本部(Policy Planning)の重要なメンバーでもある。政策企画本部はポンぺオ国務長官の執務室から数歩分しか離れていない場所にあり、アメリカの外交政策の最高峰の場所だ。

これはなかなか他の人にはない人生経験であり、彼に深く影響を与えている。

イー氏は本紙の独占インタヴューの中で次のように述べている。「共産中国で生まれ育ち、現在は私自身のアメリカンドリームを生きている中で、私は、世界はアメリカに心から感謝すべきだと確信しています。何故ならば、レーガン大統領が述べたように、アメリカは“地上に残された最後の最善の希望”を象徴しているからです。私は心の底からそれを信じているんです」。

ポンぺオ長官はイー氏を「敬意を持って私に助言を行ってくれているティームの中心的な人物であり、[中国共産党]からの挑戦に直面する中でいかにしてアメリカ人と私たちの自由を守ることを確かなものとするかについて助言を行っている」と称賛している。

国務省政策企画本部はかつてジョージ・ケナンが本部長を務めたこともある。ケナンは1947年に発表された「ミスターX」論文の著者だ。ケナンはアメリカに冷戦期における封じ込め政策のおぜん立てをした人物である。彼の封じ込め政策がソヴィエト連邦を最終的に歴史の灰にうずめさせることになった。

イー氏は数年に渡り、本紙のコラム「インサイド・チャイナ」に論稿を掲載していた。彼は1985年に中国からアメリカにやってきた。彼が渡米して4年後に起きた天安門での抗議活動と弾圧の後、学生として、イー氏は自由と民主政治体制を主張する活動家となった。

(貼り付け終わり)

米中間の新冷戦の行方はどうなるか。アメリカの封じ込め政策派と関与政策派の綱引きということになるだろう。大事なことは、本格的かつ深刻な衝突にならないことだ。トランプ大統領はそのことを心得ている。バイデン前副大統領は心もとない。バイデンが大統領となり、ヒラリークリントンを頭目とする人道主義的介入主義派が外交を牛耳るとなると、ジョージ・W・ブッシュ政権下のネオコンと同様のこととなる。これは大変に怖いことだ。

 米ソ冷戦について「長い平和(Long Peace)」だったとする学説もある。イェール大学教授ジョン・ルイス・ギャディス (John Lewis Gaddis、1941年-)はその名も『ロング・ピース』という著書を1987年に発表し、冷戦期は「長い平和」だったという主張を行った。米ソが直接戦争をするということはなかったという点を見れば「長い平和」であった。もちろん、朝鮮半島やヴェトナム、インドシナ半島の人々からすれば、何を言っていやがる、ということになるだろうが、世界を破滅させるような戦争は起きなった。

 米中の新しい冷戦もまさに「長い平和」となるべきだ。そのためには指導者層の選択が重要となる。猪突猛進的な単細胞の指導者層はこの時期には大変危険である。「中国嫌い嫌い、中国怖い怖い、中国消えろ消えろ」と叫びまわるような政治家たちこそが「怖い」存在であり、「消えて」しまうべきである。過激な方向に進まず、敵とも共存、それこそ、トムとジェリーさながらに、仲良く喧嘩するということができる「知恵」の深い指導者層が必要だ。

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古村治彦です。
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レッド・ステイツの真実 

 西森マリー著『レッド・ステイツの真実』を読んだ。「レッド・ステイツ(Red States)」とは、アメリカの中で、共和党が優勢な州のことだ。アメリカ南部や内陸部の農業が盛んな州がレッド・ステイツだ。保守的で、キリスト教福音派が多くを占める。福音派、福音主義とはキリスト教のプロテスタントの考えで、より聖書に戻ろう、聖書を厳格に守ろうという考えだ。
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ディープ・ステイトの真実 日本人が絶対知らない! アメリカ大統領選の闇

西森マリー氏は最新刊『ディープ・ステイトの真実 日本人が絶対知らない! アメリカ大統領選の闇』(秀和システム、2020年)で副島隆彦先生と対談をしている。西森氏は日本でニュース番組のキャスターや語学番組の司会を務めた後、ヨーロッパに渡り、その後、アメリカ・テキサス州に拠点を移し活動している。カイロ大学で比較言語心理学を専攻したイスラム教徒というのはユニークな経歴だ。

『レッド・ステイツの真実』は、「レッド・ステイツに住むキリスト教福音派の敬虔な信者たちは政治的に問題になっている事柄についてどのように考えるか」ということを丁寧に描いている。福音派の人々が根拠とする聖書やユダヤ教の聖典などから引用し、その解釈を説明している。キリスト教やユダヤ教に全然詳しくない、という人でも分かり易くなっているので、「なるほど、そういうことか」という驚きが多く詰まっている本だ。一言で言って、「大変面白い本」である。キリスト教やユダヤ教の知識がほぼなくても大丈夫(あればそれに越したことはないけれど)、と是非一読をお勧めしたい一冊だ。

環境保護、中絶、税金と大きな政府、福祉政策、銃規制、死刑といったアメリカ政治では議論が沸騰している諸問題。「保守的な」キリスト教である福音派の人々(共和党支持)とリベラル派の人々(民主党)が激しい議論を戦わせている。その中で、両者は聖書などを根拠にして議論が進められている。イエス・キリストについて、リベラル派は「無抵抗主義の穏やかな伝道者」と描写し、福音派は「正義の戦士として悪と戦う」姿を描写している。また、聖書の同じ個所でリベラル派と福音派で全く解釈が異なるところもあり、大変興味深い。

私が概して受ける印象は、アメリカの「自己責任」「敵と味方を厳しく峻別し敵の殲滅を図る」という規範はキリスト教から来ているのだということだ。福音派は「貧しいのは自己責任」「無計画で無軌道で働きが悪いから貧しいのだ」と考える。それで貧しくなったのに税金で助けてもらおうなどというのはけしからん、ということになる。そして、キリスト教は隣人愛や施しを推奨しているので、困っている人たちを助けるのは人々の隣人愛や施しだけで十分だ、政府がやることではない、と考える。

キリスト教は敵と味方の二元論であり、正義のために悪を殲滅するということになる。これもまたジョージ・W・ブッシュ政権時のネオコンやバラク・オバマ政権前半のヒラリー・クリントン国務長官時代の敵を殲滅するという考えにつながっている。

本書を読むと、アメリカのキリスト教国の一面が良く分かり、その考え方もよく分かる。また、読み物としても手軽に手に取って読めるもので、是非多くの方々に読んでもらいたい。

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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