古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

2020年09月

 古村治彦です。

 宣伝になるが、『ザ・フナイ』2020年11月号に今回のアメリカ大統領選挙について拙文を掲載していただいた。このことは前々回のブログで紹介した。拙文の中で私は、「民主党のジョー・バイデンがかなり有利だと報道されているが、それは間違いだ」という点から、その論拠となる世論調査の結果を紹介するなどして、トランプ大統領再選がある、ということを主張した。
thefunai202011
ザ・フナイvol.157(2020年11月号)

 今回、ご紹介する記事は、偶然にも拙文の内容とよく似た内容になっており、私の主張が独りよがりの、論拠のないものではない、ということを伝えたいと思い、このブログでご紹介することにした。

 アメリカでも日本でも「全国規模の世論調査の結果で、民主党のジョー・バイデン前副大統領が共和党の現職、ドナルド・トランプ大統領を10ポイント近くリード」という報道がなされ、「バイデンが圧勝だな」という雰囲気作りがなされている。しかし、そもそも全国規模での世論調査で判断するのは間違いのもとだ。そのことは、2000年の大統領選挙、2016年の大統領選挙で、アル・ゴア、ヒラリー・クリントン(共に民主党)が全国規模での得票総数で勝利したのに、選挙人獲得数で敗北したことでも明らかだ。

 アメリカ大統領選挙は各州の獲得票数が多かった候補者が選挙人を総取りするという形式で行われるのだ(メイン州とネブラスカ州はそうではない)。単純に全米での得票総数で決まる訳ではない。だから、各州の動きを見ておかねばならない。しかし、選挙人が配分されている全米50州+ワシントンDCすべてを見る必要はなく、激戦州と言われる10程度を見ていればよい。

 下の記事では、「トランプの意外な強さ」が選挙戦の様相を複雑化させている、つまり、バイデンが勝利すると言いきれない要素がある、と述べている。それが、「経済運営に関してはトランプの方の評価が高い」「トランプ支持者は熱心な人が多いが、バイデン支持者はそうではない」というものだ。私も拙文(まだ暑い8月上旬の時点で書いた)でこの2点の重要性を取り上げた。

 バイデンが圧勝ということはないし、大統領選挙は終わってなどいない。

 あと1時間もしないで第1回目の討論会がオハイオ州クリーヴランドで開催される。『ニューヨーク・タイムズ』紙が、トランプが税金を少ない金額しか払っていなかった、もしくはラっていなかったという報道をした。討論会でのテーマは既に決まっていることは前回ご紹介したが、この税金問題を取り上げざるを得なくなる。これは、他の重要な問題についての時間を削るためのものだ。特に経済問題について時間を使わないようにするためのものだろう。

(貼り付けはじめ)

メモ:トランプの強さが選挙の様相を複雑化させている(The Memo: Trump's strengths complicate election picture

ナイオール・スタンジ筆

2020年9月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/517893-the-memo-trumps-strengths-complicate-election-picture

ジョー・バイデン前副大統領はホワイトハウスをめぐる戦いで明らかにリードをしている。しかし、民主党の候補者にとっていくつかの問題が表面化しつつある。

トランプ大統領は、伝統的に多くの有権者にとって最重要の問題である、経済運営の点で、劣勢をはね返す強さを見せている。多くの世論調査の結果で、トランプ支持者たちはバイデン支持者に比べて熱心に支持しているということも分かっている。

大統領候補者同士による討論会は3回実施される予定で、その日程も近づいている。来週火曜日に第一回目の激突が予定されている。これはバイデンにとって最大の試練となるだろう。また、バイデンのラティーノ系有権者からの支持についても疑問が出ている。ラティーノ系有権者は重要な激戦諸州の多くでカギを握る存在だ。

民主党内部で希望となっているのは、多くの物事が発生しており、それらのためにトランプが二期目を勝ち取ることが難しくなっているということだ。

アメリカ国内における新型コロナウイルスによる死者数は今週火曜日には20万を超えた。経済は最低の状態から回復しつつある。しかし、全国規模での失業率は通常よりも高いままであり、8月の時点で8.4%を記録した。

トランプ大統領の個人的な性格については、アメリカ国民から支持を得られるよりも、見放されることの方が多いという状態である。各種世論調査の数字によると、トランプ大統領は多くの問題、特に人種関係で有権者から厳しい評価を下されている。トランプ大統領の人種関係についての言動などは状況を悪化させており、それが選挙に影響を与えている。

今週水曜日に、ケンタッキー州在住のアフリカ系アメリカ人女性ブレオンナ・テイラーが今年3月に銃撃で殺害された事件に関連して、警官が1人だけが訴追されたということを受け手、更に多くの抗議活動が行われた。この警官はテイラーの殺害による告訴ではなく、テイラーの近隣住民を危険に晒したという件で訴追された。

しかし、これらトランプに対して逆風となるカードが多く出ている状況ではあるが、民主党内部には、党内に過度の楽観論が広がっていることに懸念を持っている。

ある民主党系のストラティジストは率直に次のように述べた。「選挙戦は既に終わりで、トランプは負けだろうと言う人たちがいるが、私はその時にこう考える。“一体何を言っているんだ?”と」。

最新の『ワシントン・ポスト』とABCニュースの共同世論調査の結果が今週水曜日に発表されたが、これは民主党関係者の神経を刺激した。世論調査が実施されたフロリダ州とアリゾナ州でトランプが僅差ではあるがリードしているという結果が出たのだ。

トランプはフロリダ州の選挙に必ず行くと答えた有権者の間で、バイデンに対して4ポイントのリードを確保し、アリゾナ州では1ポイントのリードであった。両方の結果は共に誤差の範囲内の数字ではあった。ワシントン・ポスト紙は、「これら2つの世論調査の結果は他の機関が行った同じ2つの調査の結果に比べて、トランプ大統領にとってより良いものとなった」と評価している。

しかし、こうした結果は、トランプの熱狂的な支持者たちに希望を与える、表面的に報道される数字だけでのことではない。

両州の有権者はトランプに対して経済運営について比較的高い評価を与えた。アリゾナ州では、登録済有権者のうちトランプの経済運営を評価したのは57%で、42%は評価しなかった。フロリダ州では、53%がトランプ大統領の経済運営を評価し、43%が評価しなかった。

両州における経済運営に関するトランプへの評価の数字は、両州におけるトランプの大統領としての仕事への支持率の数字よりもかなり高い数字となっている。

トランプに投票するつもりの有権者でそれを「隠して」おり、世論調査の調査員との面談で自身の支持候補を明確にしたくないという人たちがいる場合、彼らの存在は、トランプ大統領の2期目で自分たちの経済状態が更に良くなる考える人々の中に見つけることができるだろう。

ワシントン・ポスト紙とABCニュースの共同世論調査で、経済運営に対する評価に関しては他の世論調査の結果でも示されている。全国規模で選挙に必ず行くと答えた有権者を対象にした、キュニピアック大学の世論調査の結果が今週水曜日に発表されたが、トランプは経済に関して僅差であるがバイデンを49%対48%で上回った。トランプ大統領の大統領としての支持率は低いままで、支持率は43%、不支持率は53%だった。

キュニピアック大学の世論調査の結果では、バイデンはトランプに10ポイントの差をつけている。これが11月の選挙でも同様であれば、選挙の結果はほぼ地滑り的にバイデンの勝利ということになる。21世紀の大統領選挙において、総得票数で最も差が開いたのは2008年の大統領選挙であった。この時にはバラク・オバマはジョン・マケインに7ポイントの差をつけて勝利した。

また、有権者の熱意はトランプにとって希望が持てる、もう一つの指標である。アリゾナ州とフロリダ州におけるワシントン・ポスト紙とABCの共同世論調査では、トランプ支持の有権者の中で、「とても熱心だ」と答えた人の割合は、バイデンの支持者の中での熱心な支持者の割合に比べて、かなり高いことが分かっている。熱心な支持者の割合の差は、アリゾナ州では22ポイントに達し、一方でフロリダ州ではそこそこの7ポイント差となっている。

民主党の一部には、「バイデンがトランプに対して大差をつけていることを強調し過ぎないことが大事だ」とする声もある。

民主党系のストラティジストであるポール・マスリンは、2012年の共和党候補者だったミット・ロムニーとロムニー選対は、有権者の熱意によって当時のオバマ大統領に対して勝利を収めることができるだろうと確信していたと述べている。マスリンは次のように述べている。「私たちが学んでいることは、熱意というものを測定すること、そしてそれに頼ることは大変に難しいということです。しかし、ロムニー選対が説明していなかったのは、選挙戦において重要である5つか6つの州で、オバマ陣営は素晴らしい組織を持っていたということです。熱意という点では、10人のうち8人が選挙に行くと答えていたのですが、実際には全員が投票に行っていたのです」。

トランプの分断を招きやすい性格と現在の通常ではない状態は、火曜日の討論会で多くの視聴者がテレビの前に座ることになるだろうということが容易に予測される。トランプはバイデンの心を乱そうとするだろう。そして、トランプ選対は民主党側のミスにつけこむだろう。しかし、バイデンが無傷で切り抜けることができれば、これからの選挙戦は彼に有利に進むことになるだろう。

共和党系のストラティジストであるマット・ゴーマンは、今年の大統領選挙討論会はこれまでに比べて重要性が低い、その理由は有権者の多くは既に誰に投票するかを決めていると述べている。ゴーマンは、金曜日に亡くなった最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグの後任選びを巡る戦いは、民主、共和両党の基礎的な支持者たちの熱意で選挙の結果が決まってしまう場合には、重要な戦いになるとなるだろうと主張している。

ゴーマンは次のように述べている。「民主、共和両党の支持者で、候補者たちによって説得されるであろうという人はほとんどいません。私が最高裁をめぐる戦いがかなり重要である考える理由はこれです。左派はトランプ大統領に刺激を受けて活発化しています。しかし、右派は最高裁判事の構成のためにも大統領選挙がいかに重要かということを認識しています」。

選挙まで6週間に迫り、バイデンに有利な状況は明白だ。しかし、トランプ大統領が除外されているということでもないのだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 2020年アメリカ大統領選挙は最終盤を迎え、これから大統領選挙候補者討論会が3回、副大統領候補者討論会が1回開催される。バイデンが1対1の討論会を乗り切れるかどうか、が注目される。

トランプ攻撃も勢いを増しており、バイデンの応援団『ニューヨーク・タイムズ』紙では、トランプが税金を少額しか払っていなかった、全く払っていなかったという報道がなされた。最終盤で、バイデン支持の伸びに勢いがなく、トランプが重要州で追い上げている中で、なりふり構わない攻撃となっている。しかし、バイデンがそうした攻撃の勢いを活かせていない。

 新型コロナウイルス感染拡大は大統領選挙にも影響を与えている。有権者の関心は新型コロナウイルス感染拡大対策と経済にある。このブログでもご紹介したが、新型コロナウイルス感染拡大対応ではバイデンの方がうまくやるだろうという評価があり、一方で経済対策ならばトランプだという声が多い。

 アメリカ国内での新型コロナウイルス感染拡大によって死者数が20万を超えた。日本では人々の努力もあり、他国に比べてかなり低く抑えられているように思われる。また重篤化して死亡する人も少ないように思われる。アメリカで死者数が多いのはどうしてなのか、ということは検証されるべきことだが、私がアメリカに住んでいた経験から考えると、やはり国民皆保険ではない医療体制とそれに伴う生活習慣病を持つ人の数が多いということが挙げられると思う。

 新型コロナウイルス感染拡大においては、糖尿病や心臓疾患などの生活習慣病を持つ人々の重篤化率が高くなるという研究結果が出ている。こうした病気を持っていても、常日頃から節制し、きちんと治療や投薬をしていれば、重篤化する率は低くなると考えられる。

 アメリカでは無保険という状態の人も多く、また医療にお金がかかり、慢性的な疾患を放置してしまう人も多いのではないかと考えられる。そうなると、こうした病気をコントロールできない状態になり、新型コロナウイルスに感染すると重篤化して死亡してしまうということになるのだろうと思う。

 新型コロナウイルスはアメリカ型の国民皆保険ではない医療制度の問題点を突いているのではないかと思う。そして、これを解決するためには一朝一夕にはいかない。国民皆保険を社会主義的だという風潮も根強く残っている。

 経済については新型コロナウイルス感染をいかにしてコントロールしながら、人々の社会科活動をどれくらい以前の状態に戻すかということになる。これはアメリカだけにとどまらず、全世界の国々にとって共通の重要な課題である。

 更に言えば、最高裁判事の人事は左派、右派両方にとって重要だ。そのための大統領選挙ということでもある。同性愛結婚や妊娠中絶など社会的に重要な問題について、「アメリカ合衆国憲法にかなっているかどうか」ということを判断するのが連邦最高裁判所であり、9名の判事たちによる採決で判決が決まることになる。この時に、保守的な考えを持つ判事が多いのか、リベラルな人が多いのかで結果が変わってくる。今回の大統領選挙でもこの点は争点ということになる。

 もうすぐ開催される第1回の討論会ではどのようなことが起きるのか、注目される。

(貼り付けはじめ)

第1回目の大統領選挙候補者討論会はコロナウイルス、最高裁判事を取り上げる(First presidential debate to cover coronavirus, Supreme Court

モーガン・チャルファント筆

2020年9月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/517580-first-presidential-debate-to-cover-coronavirus-supreme-court

トランプ大統領と民主党候補者ジョー・バイデンは、新型コロナウイルス、最高裁についての質問と、大統領と副大統領在職中の記録について質問されることになる。来週、2020年大統領選挙における第1回の討論会で顔を合わせることになる。

フォックス・ニュースのアンカーであるクリス・ウォレスが第1回目の討論会の司会者である。ウォレスは火曜日、議題のリストを発表した。討論会では、経済、アメリカの各都市の人種と暴力、選挙が誠実に行われるかについての問題を取り上げるとウォレスを述べた。

討論会は9月29日に、ケイス・ウェスタン・リザーヴ大学とクリーヴランド・クリニックの共有キャンパスで開催される。有権者たちに対して、候補者たちを判断する機会を与えることになる。選挙まで2カ月を切った現在、バイデンはトランプを全国規模と各激戦州の各種世論調査でリードしている。

バイデンは、トランプ大統領のコロナウイルス対応について批判している。現在、アメリカ国内でのコロナウイルス感染による死者数は20万となった。バイデンはトランプによるコロナウイルス対応に対する批判を選挙戦の柱としている。トランプはウイルス対応について防衛をしつつ、暴力と破壊について特に取り上げている。ここ数カ月、アメリカ各地で、人種による不正義に対するデモ活動が行われ、それに伴って暴力と破壊が発生している。

トランプ、バイデン両候補者は最高裁についての質問に答えることになる。討論会の前に、トランプは欠員が出た最高裁判事を発表することになっている。金曜日にルース・ベイダー・ギンズバーグ判事が在職のまま亡くなり、空席となった。

これ以降の大統領選挙は10月15日と10月22日に開催される。ペンス副大統領とカマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)による、副大統領候補者討論会は10月7日に開催される。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。
 『ザ・フナイ』2020年11月号に拙文を掲載していただきました。タイトルは「二〇二〇年アメリカ大統領選挙が迫る―「ジョー・バイデン有利」という報道に騙されないために」です。
thefunai202011
ザ・フナイvol.157(2020年11月号)  
  アメリカでも日本でも「今回の大統領選挙(2020年)では民主党候補者のジョー・バイデン前副大統領が圧倒的に有利」という報道がなされています。拙文では、アメリカ大統領選挙の動向を分析し、ドナルド・トランプ大統領の再選の可能性について言及しています(まだ暑くてセミも鳴いていた8月上旬に書きました)。実際に、選挙が近づくにつれて、トランプ大統領が各種世論調査の数字で持ち直し、バイデン前副大統領を追い上げています。  是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
(終わり)
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  古村治彦です。

 

 今回は、田中進二郎(たなかしんじろう)氏の単著デビュー作『秀吉はキリシタン大名に毒殺された』(電波社、2020年)を紹介する。田中研究員の渾身の研究成果が一冊にまとめられ、世に出ることになった。。

 

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秀吉はキリシタン大名に毒殺された

 

 本書で、田中進二郎研究員は、1500年代から1600年代、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康が天下を統一した時代の日本におけるキリスト教(イエズス会)の動きを丹念に調べ上げ、新しい事実を明らかにしている。キリシタン大名、隠れキリシタン大名が数多く日本に存在したが、これはイエズス会による日本の「神の国」化、属国化のための策動の結果だった。

 これに対して、信長、秀吉、家康がどのように振る舞ったのか、が本書によって明らかにされている。これら英傑3人はイエズス会の目的を見抜き、それぞれに対応した。信長、秀吉、家康と言えば、鳴かないホトトギスに対してどう対応するか、で、「信長は殺す、秀吉は鳴かせてみせる、家康は鳴くまで待とう」という言葉が有名だ。それぞれはこの言葉に近いやり方でキリスト教、イエズス会に対応した。

 今年のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」の主人公は明智光秀で、時代は本書が取り扱っている時代そのものだ。毎度のことでNHK大河ドラマは常識やこれまでの研究から逸脱するものではない。ドラマが物足りないと思っている皆さんには必読の一冊である。

 

 以下に、副島隆彦先生による推薦文、目次、田中進二郎氏によるあとがきを掲載する。よろしくお願いいたします。

 

(貼り付けはじめ)

 

推薦文                                副島隆彦

 

 本書の圧巻(あっかん)は、加賀(石川県)金沢の大名、前田利家(としいえ)のもとに落ち延びた、キリシタン大名の筆頭、高山右近(たかやまうこん)が、そのあと25年にもわたり、加賀でイエズス会宣教師たちとともに密かに布教活動を続けていた事実を明らかにしたことである。秀吉のキリシタン禁教令天正15(1587)年6月のすぐあとからだ。金沢は今やキリシタン文化都市として知られる。

 古参の内藤ジョアン(如安)も右近と合流した。なんと彼らは、秀吉の朝鮮出兵を片付ける停戦協議まで、中国の明(みん)帝国を相手に小西行長(こにしゆきなが)とともに、秀吉に事実を隠しながら秘密裏に行っていた。この史実を田中進二郎は、今回探り当てた。

 だから前田利家(と妻まつ)がこの本の真(しん)の主人公である。前田利家は秀吉と激しく暗闘した。そして家康と組んで、辛(から)くも家名を残した。高山右近らは、家康による大坂城攻めの直前(1カ月前)1614年9月に、マニラとマカオに追放された。右近はこの年、マカオで死んだ。

 

 本書は、私が主宰する学問道場の、私の弟子の田中進二郎(たなかしんじろう)君が書いた初めての単著である。田中君はこれまでに学問道場SNSI論文集である『フリーメイソン=ユニテリアン教会が明治日本を動かした』(成甲書房 2014年刊)と『蕃書調所(ばんしょしらべしょ)の研究 明治日本を創った幕府の天才たち』(成甲書房 2016年刊)で、フリーメイソンが幕末の日本で果たした大きな役割を鋭く描いた。

 私は、2019年4月に田中君たちを連れて名古屋駅から近くの、元は穢(きたな)い湿地帯だった中村区に調査に行った。中村で生まれた秀吉は、川筋衆(かわすじしゅう)と呼ばれる下層民の出だ。信長の小者衆(こものしゅう)の草履取りから出世した。ここから100メートル離れたところに加藤清正の生家もある。清正は生涯、秀吉に臣従して、家康に嫌われた。歌舞伎役者の初代・中村勘三郎(かんざぶろう)もここで生まれ、秀吉の生家のすぐそばに銅像があった。だから姓が中村なのだ。

 

 川筋衆(かわすじしゅう)(漁労民(ぎょろうみん)系。ここから真実の集団戦をする武士団が生まれた)と河原者(かわらもの)(芸能集団)、そして戦場撹乱者である乱波(らっぱ)、スッパ、細作(さいさく)間者(かんじゃ)と呼ばれた戦場スパイ組織(のちの忍者)は、もともと出自(しゅつじ)が同じであることが分かった。現地で確かめた。

 前田利家も信長の小姓衆から這い上がったが、秀吉よりは格上の武士である。過酷な勤務評定で知られる信長軍団の中で両者は生き延びた。秀吉と反目し何度か命を狙われた。結局、徳川家康が前田氏を守った。妻のまつは自ら家康の人質となった。

 南九州(薩摩)の島津の家紋の「丸に十字」〇に十 は、本当は 〇に で縦棒が長い。関ヶ原合戦のときの戦陣旗はこっちだ。

 加藤氏が滅んだあとの肥後熊本の細川氏も幽斎藤孝(ふじたか)、忠興(ただおき)、忠利(ただとし)も隠れキリシタン大名だ。NHKの大河ドラマが正直に描いた。筑前福岡の黒田官兵衛(如水)、長政もそうだ。豊後(ぶんご)大分で一番初めのキリシタンの大友氏は宗麟(そうりん)の次の義統(よしむね)で滅んだ。安芸(あき)広島の福島正則もキリシタン大名だったが、滅びた。

 明智光秀を山崎の戦いで破った“摂津(せっつ)三人衆”の池田恒興(つねおき)、中川清秀、高山右近もキリシタン大名である。中川氏は滅んだ。池田氏は隠れキリシタン思想を取り入れた善政を敷いて、備中(びっちゅう)備前(びぜん)藩(岡山)として明治まで続いた。池田光政は陽明学者熊沢蕃山(くまざわばんざん)を庇護した。蕃山や山鹿素行(やまがそこう)の陽明学は、朱子学と並ぶ近世儒教(日本では儒学)とされるが、その正体は、中国化したキリスト教である。このことを私たちの学問道場が解明した。私たちの大きな業績である。

 高槻城主だった高山右近は、冒頭に書いた秀吉のバテレン追放令(1587年6月)で

城を失い、加賀の前田利家のもとに落ち延びた。

 奥州仙台の伊達氏(政宗【まさむね】以来)は伊達者(だてもの)と呼ばれた金糸銀糸のキリシタン織りを兵士たちに着せた。政宗は支倉常長(宗派はフランシスコ派)を太平洋航路でローマに送った。出羽(でわ)(秋田)の佐竹氏と陸奥(むつ)(岩手)の南部(なんぶ)氏もキリシタン大名だ。京阪で弾圧を逃れた多くのキリシタンが鉱山掘り師となって生きた。何と水戸の徳川氏もキリシタンである。

 

 田中は本書で、イエズス会史料『信長公記』、『太閤記』(数冊ある)のような日本の史書は、権力者におもねるが故に脚色が過ぎて、真実とかけ離れていると指摘する。権力者に都合が悪い事実は抹消するという伝統は、どこの国にもあることで、現在も繰り返される公文 書(こうぶんしょ)改ざん問題で、われわれが知るところである。

 

 日本は世界の一部であり、故 ゆえ に確実に日本史は世界史の一部である。これまでの日本国内の史書だけに依拠して書かれた、虚偽(ウソ)の多い日本史の本は、大いに改めなければならない。

 本書『秀吉はキリシタン大名に毒殺された』は、私が書いた『信長はイエズス会に爆殺 され、家康は摩り替えられた』(PHP研究所 2016年刊)の隙間(すきま)を埋めた。天下人(てんかびと)となった信長、秀吉、家康のまん中の私がやっていなかったことを書いてくれた。

 フランシスコ・ザビエルが日本にやってきて(1549年)から、鎖国の完成(1641年)までの約100年のキリシタン大名の歴史を、イエズス会士(ジェズーイット・プリースト)中の碩学(せきがく)であるルイス・フロイスの『日本史』を読み解いて、そこに横たわるローマ・カトリック教会の隠された日本占領、支配の計画を田中は明らかにした。

 巻頭から、恐ろしいザビエルの本性が描かれる。イエズス会の創立者イグナティウス・ロヨラに次ぐナンバー2のザビエル(シャビエル)は、ヨーロッパで荒れ狂う宗教改革(リフォーメイション)(反(はん)カトリック運動)を避けて、それでは、と世界中に出て行って植民地支配し、「神(かみ)の国(くに)」に作り変え属国にするために動いた。

 田中によると、日本のキリシタン研究はカトリック文学だそうだ。なるほど、と思う。耶蘇教(やそきょう)(イエズス会 Jesuit Society of Jesus  ジェズーイット・ソサエティ・オブ・ジーザス)は、キリスト教のカトリック教団内の一 派である。キリスト教そのものは天主教(てんしゅきょう)と訳さなければいけない。×天「守」閣も本当は、天主閣である。これは世界基準での学問用語である(中国ではこう書く)から、長年の誤表記は、日本史の学者たちの怠慢と無能の所為(せい)である。

 秀吉、家康にたくさん殺されたキリシタン弾圧の殉教者(マーター)たちが、絶対正義だとする考えをいつまでものさばらせておいてはいけない、日本人の知識人の側からの反撃がなければならない。イエズス会(とカトリック)の日本支配(洗脳)計画は、強く批判されなければならない。

 

 家康は、今川氏(義元(よしもと))と織田信長の二重スパイであった。戦場忍者集団(願人坊主(がんじんぼうず)たち)によって幼年から育てられた男である。彼らは今川方を裏切って信長に付き、桶狭間(おけはざま)の合戦(1560年5月)の直後、信長の命令で、翌年、家康は三河(みかわ)大名・松平元康(もとややす)にすり替わった。秀吉と家康は、信長の忠実なカーボン・コピーである。

 戦国時代にキリシタン大名はものすごい数でいた。天下人(信長、秀吉、家康)以外はほとんど隠れキリシタンだったのではないか。世界を席巻していた最先端の光輝 かがやく思想の流行に、まず女たちから先に(人間救済(きゅうさい)する、と説いたから)感染したのには、確かに理由がある。

 

 ルイス・フロイスの『日本史』を厳密に解読すれば、上司のヴァリニャーニが信長殺し

の「本能寺の変」の主謀者であることが分かる。この時代にヨーロッパで次々と起こって

いたローマ教会による「王殺し(regicide レジサイド)、父殺し(patricide パトリサイド)」と同じだ、と田中は指摘している。

「父 パトリサイド 殺し」というのは、ユダヤ教の創始者モーセが、自分が引き連れてきたエジプトからの集団(開拓農民だ)に石打ちで殺されたとする考え(思想)だ。

 カナーンの地(今のパレスチナ)に到着する、直前にモーセ殺害があったと、精神分析学の祖ジークムント・フロイトが『モーセと一神教』(1939年)で発表した。モーセ殺しの秘密を共有した者たちがユダヤ民族を作った。キリスト教(本当はパウロ教)も、イエス処刑のあとイエスを神棚に祀 まつ ることで、同じ成り立ちをしている。

 信長は、明らかに大(だい)天才の日本人で無神論者(エイシスト)だった。信長という父を「父殺し」したとするのが、田中の新説だ。イエズス会による信長の爆殺は、日本国にとって今なお許すことのできない暴挙である。

 そしてさらに、次の天下人である秀吉もまた、イエズス会の支配下にあったキリシタン大名連中(れんじゅう)によって毒殺されたことが、この本によって明らかにされた。

 

  2020年9月                           副島隆彦

 

=====

 

秀吉はキリシタン大名に毒殺された 目次

 

推薦文 ―― 副島隆彦 3

 

第1部 イエズス会と戦国大名の危険な関係

 

序章 イエズス会結成にいたる歴史 18

ザビエル「空白の10カ月」 26

千利休が大成した茶の湯はカトリックのミサ(聖餐)の儀式である 33

ローマ教皇が茶室でミサを行うことを公認していた 36

火薬ビジネスとイエズス会ネットワーク 44

細川藤孝と明智光秀はイエズス会のエージェントだった 46

戦国時代の新興宗教=天道思想はキリスト教 49

信長絶対王政と重商主義 51

イエズス会は信長とともに明帝国を挟み撃ちする計画だった 55

戦国日本の戦争の本当の真実 60

本能寺の変の予行演習だった荒木村重の謀叛 66

黒田官兵衛もワルのキリシタン大名だ 68

黒人侍従ヤスケが本能寺に爆薬を仕掛けた実行犯である 72

安土城の天主閣は「デウス=信長のおわします塔」という意味だ 79

無神論者の信長が日本史上空前の宗教革命を起こした 83

デウスの起源はエジプトのアメン神である 89

ルイス・フロイスは後から来日したヴァリニャーニに手柄を奪われた 94

当時最先端の西洋の科学を知っていたヴァリニャーニ 98

天正遣欧少年使節はなぜ信長の家臣たちから選ばれなかったのか? 102

火薬ビジネスで大きくなった角倉財閥 105

明智光秀は征夷大将軍に任命されるはずだった 108

本能寺の変 信長、光秀、家康とイエズス会の動き 109

 

第2部 秀吉はキリシタン大名に毒殺され、徳川幕府は密かにキリシタンを利用した

 

備中高松城水攻めは軍師官兵衛がつくったフィクションだ 122

本能寺の変の前に秀吉と毛利は和睦が成立していた 126

イエズス会に振り回される明智光秀 128

高山右近はわずか一千の手勢で光秀の本隊を破った 133

どうしても織田家の上に立ちたかった秀吉 139

ローマ教会=イエズス会が隠匿したヴァリニャーニと蒲生氏郷の密約 148

キリシタン大名で埋め尽くされた秀吉政権 153

高山右近は加賀前田藩を隠れキリシタン王国に変えた 160

バテレン追放令とスペイン-イエズス会の日本侵略計画 169

未遂に終わった第 2 の「本能寺の変」と利休の処刑 176

秀吉の大粛清と朝鮮出兵   182

関ケ原の戦いへつながる関白秀次一族の粛清事件 191

ローマ教会は新教徒派の国王を次々と暗殺した 200

関ケ原の戦いと大坂の陣はオランダ・イギリスの最新兵器で決着がついた 206

家康はキリシタン大名を引き剥がして勝利した 208

関ケ原の戦役の常識はほとんどが後代の創作 214

角倉財閥はイエズス会を抜け出て生き延びた 223

隠れキリシタンの力を用いた江戸幕府の関東開拓事業 225

隠れキリシタン大名が隠し持っていたアルキメデスの水利技術 231

家康の孫・松平忠直も隠れキリシタンだった 233

 

おわりに 244

 

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おわりに

 

 本書では、イエズス会の成立した1530年代から、日本が鎖国に入る前までの約100年のキリシタン大名の歴史を扱った。戦国期と明治期の二回、日本でキリスト教は大流行している。

 戦国日本では爆発的な流行だった。研究して驚いたのは、秀吉のバテレン追放令(1587年)と徳川幕府の禁教令(1612・1613年)のそれぞれの後に、むしろキリシタンは激増していた、という事実である。おそらく大阪夏の陣のころがピークだった。また、徳川政権下での殉教者の数は、数万人と推定されている。これは島原の乱よりも前のことである。恐ろしい迫害があったことが分かる。そこまで、徹底的にキリスト教(耶蘇教、天主教)を根絶しようと幕府がしたのは、なぜか?

 そして、本当は根絶どころか、大名たちは隠れキリシタンとして、命脈を保ち続けたのではないか? という疑問を、筆者なりに解いてみたのが、本書である。

 筆者・田中進二郎は、監修者の副島隆彦氏の不肖の弟子である。副島先生から「隠れキリシタン大名について調べてみなさい」と勧められて、調査を開始した。調べていくうちに、一般に隠れキリシタンや潜伏キリシタンと呼ばれているものと、「隠れキリシタン大名」というのは別物だ、ということが分かってきた。

 大友氏や大村氏、有馬氏など九州のキリシタン大名たちが、信仰心だけで宣教師に布教を許可したのではないことは、よく知られている。だが、禁教令後の、形の上では棄教したことになっている「隠れキリシタン大名」は、本当は支配者として、民衆とはまったく異質のキリスト教を信仰していたのではないか、と思える。ローマ教会が言う「神の国」に貧しい者が行く手段は、本当は殉教以外にはなかった。殉教してはじめて、教会は貧者を自分たちと同列に扱った。権力者は魂の救いがそもそも必要でないだろう。

 大名クラスの人間には、もともと宗教は政治の道具だ。民衆に宗教という「阿片」を吸わせておけばいいのだ。秀吉のような天下人に「救い」は、必要がない。逆だ。秀吉は権力を手に入れるために、イエズス会と結託したのだ。そして激しい権力闘争をキリシタン大名たちと演じたのだ。そして戦いの果てに、敗れて殺された。信長はイエズス会を乗っ取ってやるぐらいに思っていただろう。家康は隠れキリシタン大名を寝返らせて、関ヶ原に勝利した。

 天下人の信長、秀吉、家康だけがローマ・カトリック教会の虚偽を完全に見破っていたのだ。その境地というのは、同時代の哲学者のデカルトやローマ教会から異端裁判を受けたガリレオたちと同じだ。ガリレオはユニテリアン派の科学者だった。デカルトは、十代でそのことを悟った。デカルトはイエズス会の神学校で特待生だった。「君は優秀過ぎるから、授業は受けなくてもよい。好きな時間に起きて出たい授業だけ出なさい」と言われていた。その彼がフランス国王・アンリ4世の暗殺の時に、葬式に参列し、イエズス会に対して、深い懐疑を抱いたのだ。

 だから極論すると、戦国時代の天下人三人は、ヨーロッパの優れた哲学者たちと同列の偉人なんですよ、ということを書いておきたい。「キリスト教は邪教である」とニーチェが喝破した。ニーチェの思想と三人の天下人との間に大差はない。そのことを、本書を書きながら痛感した。

 本書は、一介の塾講師に過ぎない私田中進二郎に、副島隆彦先生から単著を書く機会を与えてもらって生まれた本である。本を書く機会というのは誰にでもあるものではない。

 副島学問道場のさる方から聞いたことだが、「本を書ける人は、東大に入れる人よりずっと少ない」とのことだ。大書店に行くと、書籍が氾濫(はんらん)していて、誰でも書けるような錯覚を起こすが、本当は大変な僥倖である。機会を与えてくださった上に最強の推薦文までいただきました。副島隆彦先生、ありがとうございます。そして、初めてのことゆえ、岩谷健一編集長にはご迷惑を掛け通しでした。深く感謝申し上げます。

 

  2020年9月                          田中進二郎

 

(貼り付け終わり)

 

hideyoshiwakirishitandaimyonidokusatsusareta001
秀吉はキリシタン大名に毒殺された

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 アメリカ大統領選挙も残り50日を切った。ラストスパートである。来週には第1回目の大統領選挙候補者同士の討論会が開催される。第1回目の討論会のテーマは、新型コロナウイルス感染拡大、経済、人種間の不平等に関する不正義と都市における暴動などである。

 現在のところ、全国規模での各種世論調査では民主党候補のジョー・バイデン前副大統領が6ポイントから8ポイントの差をつけている。しかし、このことは何度も書いているが、全国規模の世論調査の数字は当てにならない。なぜなら、アメリカ大統領選挙は全国での得票総数で結果が決まるものではないからだ。大統領選挙の動向は、各州レヴェルでしっかり見ていくことが重要だ。そうなると、ドナルド・トランプ大統領とバイデンは接戦ということになる。

 ロイター通信・イプソス社の共同世論調査の結果についての記事を以下に紹介する。ウィスコンシン州とペンシルヴァニア州での世論調査の結果だが、ウィスコンシン州ではバイデンが5ポイントのリード、ペンシルヴァニア州では3ポイントのリードだ。どちらの州でも世論調査の誤差の範囲は5ポイントなので、どちらも大接戦ということになる。記事によると、経済運営ではトランプの評価が高く、新型コロナウイルス感染拡大対応ではバイデンの評価が高いということになる。

「投票を行う際に候補者の特性の中で、どの特性が最も重要だと考えますか?」という設問に対する答え、つまり、どの問題を最重視しますか、という設問に対して、人々の答えは、新型コロナウイルス感染拡大対応への関心が最も高く、次いで経済と雇用創出の問題ということになる。だいたい3割程度が新型コロナウイルス感染拡大対応、2割程度が経済と雇用創出ということになっている。

 ロイター通信は9月21日にウィスコンシン州とペンシルヴァニア州、22日にミシガン州とノースカロライナ州、23日にアリゾナ州とフロリダ州での世論調査の結果を発表した。下の記事は21日の記事なので、22日以降の結果については書かれていない。

 簡単に結果について書いておくと、ミシガン州ではバイデンが5ポイントのリード(誤差4ポイント)、ノースカロライナ州では同点(誤差は5ポイント)、アリゾナ州ではバイデンが1ポイントのリード(誤差は5ポイント)、フロリダ州では同点(誤差は5ポイント)だった。これら激戦州では大接戦だ。

 経済と雇用創出、年暴動に対する対応についてはトランプの方がより良く行い、新型コロナウイルス感染拡大からの回復と公民権保護についてはバイデンの方がより良く行うであろうというのがこの6つの州の人々の共通の考えだ。そして、全米規模でも同様である。大統領選挙では10月に現職側が自分たちに有利になるような施策を行う、「オクトーバー・サプライズ」がある。それがどのようなものになるかで状況は変わってくる。アメリカ大統領選今日は大接戦で、最後のコーナーを回り、直線勝負ということになる。

(貼り付けはじめ)

世論調査:ウィスコンシン州ではバイデンがトランプをリード、ペンシルヴァニア州はより接戦となっている(Poll: Biden leads Trump in Wisconsin; Pennsylvania a tight race

ジュリア・マンチェスター筆

2020年9月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/517455-biden-leads-trump-in-wisconsin-pennsylvania-a-tight-race-poll

アメリカ大統領選挙民主党候補者ジョー・バイデンはウィスコンシン州においてトランプ大統領に対して5ポイントの差をつけてリードしている。ペンシルヴァニア州ではより小さい数字ではあるがリードを保っている。ロイター通信・イプソス社共同世論調査の結果が月曜日に発表された。

ウィスコンシン州でのバイデンの支持率は48%、トランプの支持率が43%だった。48%がバイデンの方が新型コロナウイルス感染拡大危機により良く対応するだろうと答え、40%がトランプの方がより良く対応するだろうと答えた。

しかし、ウィスコンシン州において、経済に関してはトランプの支持率がより高かった。48%がトランプの方が経済をより良く運営するだろうと答え、42%がバイデンの方がより良く運営するだろうと答えた。

ペンシルヴァニア州ではより接戦になっている。バイデンの支持率は49%、トランプの支持率は46%だ。支持率の差は誤差の範囲内に入っている。ペンシルヴァニアの調査対象者のうち48%がバイデンの方が新型コロナウイルス感染拡大により良く対応できるだろうと答え、一方44%がトランプ大統領の方がより良く対応するだろうと答えた。

経済については、トランプ大統領はペンシルヴァニア州でもリードを保っている。51%がトランプ大統領の方が経済をより良く運営するだろうと答えた。45%がバイデンの方がより良く運営するだろうと答えた。

2016年の大統領選挙で、トランプは予想を覆して、ウィスコンシン州とペンシルヴァニア州で勝利を収めた。白人の労働者階級の有権者の支持がその理由となった。しかしながら、4年後の現在、両州は元に戻っている。バイデンとオバマ前大統領は2008年と2012年の大統領選挙で両州において手堅く勝利した。

リアルクリアポリティックスが発表している、世論調査の数字の平均を見ると、ウィスコンシン州ではバイデンが6.7ポイントの差をつけており、ペンシルヴァニア州では4ポイントの差をつけている。

ロイター通信・イプソス社はウィスコンシン州で9月11日から16日にかけて世論調査を実施した。調査対象者は1005名で、そのうち609名が選挙に必ず行くと答えた。ペンシルヴァニア州では9月11日から16日にかけて実施された。調査対象者は1005名で、そのうち611名が選挙に必ず行くと答えた。両調査の誤差は共に5%だ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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