古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

2021年04月

 古村治彦です。

 今回はジョージ・オーウェルの秀逸なスポーツ論を紹介したい。それは「スポーツ精神」というタイトルの短い論説(エッセイ)だ。これは、『あなたと原爆~オーウェル評論集~ (光文社古典新訳文庫)』と『一杯のおいしい紅茶-ジョージ・オーウェルのエッセイ (中公文庫)』のどちらにも入っている。もしお読みになりたいという人はどちらかを手に取ればよい。『あなたと原爆』の方が政治的な内容で、『一杯のおいしい紅茶』の方は生活に関連したエッセイが多い。今回は『あなたと原爆』から引用していきたい。
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 ジョージ・オーウェル(George Orwell、1903-1950年、46歳で没)と言えば、やはり『一九八四年〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)』『動物農場〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)』で有名だ。これらは政治・社会風刺、ディストピア小説の金字塔だ。

 「スポーツ精神」はイギリスの左翼系雑誌『トリビューン』誌12月14日号に掲載された。『トリビューン』誌は1937年に新聞として創刊され、後に雑誌となった。オーウェルは1943年に文学編集者として雇われコラムを執筆した。1945年まで勤めた。その後も1947年までコラムやエッセイを寄稿した。

 1945年秋にソ連のサッカーティームであるディナモ・モスクワがイギリスを訪問し、各地で強豪ティームと対戦した。その中にはアーセナルも含まれていた。ディナモもアーセナルも現在まで存続している有名ティームだ。サッカーに詳しくない私でも名前くらいは知っているほどだ。ウィキペディアによると、「1945年、ソビエト連邦のクラブとして初となるイギリス遠征を行い、カーディフ・シティを10-1、アーセナルを4-3で破り、チェルシー、レンジャーズと引き分けた」とある。ディナモ・モスクワは2勝2引き分けの結果を残した。しかし、ディナモ・モスクワは予定を切り上げて帰国してしまったようだ。

 第二次世界大戦直後、ソ連のサッカークラブがイギリスを訪問したのは、第二次世界大戦後で戦勝国同士、親善を深める目的であったはずだ。しかし、この時には既に英ソ関係は険悪化していたようだ。ディナモ・モスクワとイギリスの各クラブの試合では、殴り合い、喧嘩騒ぎ、観客の悪口雑言、ブーイングで「無秩序」「無法」状態になったそうだ。

 そこにまた、「イギリスとソ連ではどちらがサッカーの力は上か」というようなことも絡んできた。オーウェルは「それからアーセナルのチーム編成について、このナショナリスティックな時代特有の議論が巻き起こった。すなわち、戦ったチームはロシア人たちが言うように本当にイギリス代表チームだったのか、あるいはイギリス人たちが主張するように単にリーグの一クラブチームだったのか、という議論である」(38-39ページ)と書いている。

 続いてオーウェルはスポーツ、特に国家を代表するティームが行うスポーツについて次のように書いている。長くなるが引用する。

(引用はじめ)

 スポーツというのは国と国の間に親善の気持ちを醸成し、世界中の一般市民がサッカーやクリケットの試合で出会うことができたなら、戦場で顔を合わすことなどないだろう、という意見を耳にするといつも不思議に思う。国際的なスポーツ大会が憎悪による馬鹿騒ぎに陥ったケース(一九三六年の[ベルリン]オリンピックがいい例だ)をたとえ知らずとも、そうなりがちであることは一般的原則から推測することが可能ではないか。

 今日(こんにち)行われているほとんど全てのスポーツは、競争的なものである。勝つために参加するのであり、勝つための最大限のどりょくをしないのであれば、試合することにほとんど意味がない。村の芝生(しばふ)で、地元への忠誠心などまったくなしに両サイドに分かれてサッカーをする場合には、単に娯楽や運動のために楽しむことも可能であろう。しかし、威信の問題が持ちあがり、自分たちが負けた場合にじぶんのみならず自分の帰属するより大きな集団までもが面目を失うと感じるやいなや、我々の心中に非常に野蛮な戦闘本能が引き起こされてしまうのである。学校対抗のサッカーの試合に出たことのある者なら誰でも理解できるだろう。国際レベルでは、スポーツとは率直に言って疑似戦争だ。しかし重要なのは選手の姿勢ではなく、むしろ観客の態度である。そしてその観客の背後にある、こういったばかばかしい競争で怒りの炎を燃やして、走ったり跳ねたりボールを蹴ることが国家の美徳の照明であると、短期間であっても信じさせてしまう国家の態度こそが問題なのだ。(40-41ページ)

(引用終わり)

 更に、重要な部分を引用したい。

(引用はじめ)

 こういったこと(引用者註:イギリスとアメリカでスポーツが巨大化していき、それが各国に伝播したこと)全体がナショナリズム、つまり自分自身をより巨大な権力の単位と同一化して全てを競争的な名声を通して見るという狂気じみた現代的な慣習と、切っても切れない結びつきを持っているという事実には、ほぼ疑いの余地はない。(43-44ページ)

(引用終わり)

 オーウェルの論稿は現在にも通じるものだ。日本のテレビに出てきて、オリンピック推進論を唱える、オリンピック関係者たちは、オーウェルの文章を読んで、自分たちのやっていることを省みた方が良い。どれほど醜悪なことをやっているか、自分で自分がイヤになるならまだましで、何とも感じないようならば、それは病膏肓に入る、露骨に言えば、もう手遅れということである。

 オリンピックはナショナリズムを高揚させる装置として利用されてきた。冷戦期を振り返れば、ソ連や中国、東ドイツといった東側陣営の国々はメダル獲得数を社会主義、共産主義の優位の証明としてきた。しかし、その陰でアスリートに対するドーピングが国家を挙げて研究されてきた。アスリートの健康は二の次、国家の威信が第一ということになった。近年はナショナリズムに加えて商業主義、拝金主義、消費主義も絡み合って、オリンピックの持つ醜悪さがより酷くなっている。その集大成が2020年東京オリンピック(2021年開催)だ。

 「オリンピックは平和の祭典」「復興五輪「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証明」などというものは、本質を覆い隠すための美辞麗句に過ぎない。オリンピックは、ナショナリズムを利用して、人々の劣情を掻き立て、お金を使わせ、森喜朗氏やIOC会長トーマス・バッハなどオリンピックお貴族さまと電通に贅沢をさせるための装置でしかない。オーウェルのスポーツ論はそのことを私たちに気づかせてくれる。内村鑑三の言葉をもじって言えば「スポーツで食うのは良いが、スポーツを食い物にするのは間違っている」といいうことになる。その間違った方向に日本だけではなく、世界中が進んでいる。

(終わり)

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 古村治彦です。

 菅義偉首相がホワイトハウスを訪問し、ジョー・バイデンとホワイトハウスで会談を行った。一体何のために、この時期にわざわざホワイトハウスくんだりまで行って、ハンバーガーも食べずに帰って来たのか。全くもって意味も意義も分からない会談だ。

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 この写真の異常さ、これが「新しい日常」「ニューノーマル」なのか。この寒々しさは、これまでの虚飾を取り払って、「日本がアメリカの属国である」ということをより鮮明に私たちに教えてくれる。ハンター、正剛という言葉に敏感な人ならば「お互いにバカ息子のために祟(たた)られますなぁ」という嘆きが聞こえてくるということもあるだろう。

 下の記事では、対中強硬の米国とそれに反対する日本、という構図になっており、「菅を呼びつけたのも、対中けしかけ、吠えかけ組の一番手だからであって、日米関係が世界で最重要の二国間同盟関係などという戯言(たわごと、ざれごと)のためではない」ということが理由となっている。アメリカの片棒、お先棒を担いで、中国に吠えかかるのがお前らの仕事だぞと、ガツンとやられてシュンとなって帰ってくるだけの話だった。

 日本でバイデンを熱烈に応援して、トランプを非難してきた知識人層は、このバイデン政権の凶暴・狂暴極まりない性格をどのように日本国民に説明し、自分たちの行動をどのように釈明するのか。あれだけ事故や事件で死者が出ると責任者を追及し、理由を精査するのだから、日中が衝突して死者が出た場合にはさぞ、明確な理由を探し、それが自分たちであれば、筆を折る、国公立大学の教授職や審議会の委員など公職から辞するくらいの態度を示してくれることだろう。

 菅首相としては、せめてバイデンの口から直接「東京オリンピックが楽しみだ。準備は順調に進んでいると聞いている。努力して欲しい」くらいのリップサーヴィスが欲しかったところだろうが、それすらなかった。菅首相が自分で「世界の団結の象徴として、大会の開催を実現する決意であることを大統領に伝えた。大統領からは、この決意に対する支持を改めて表明してもらった」と言うのが精いっぱい。これは自作自演とも言う。共同声明には「開催の努力を支持する」という文言が入ったと喜んでいるが、「ああそう、やる気なの。それなら何とか頑張りなさいね、出来るかどうかは知らんけど」ということでしかない。
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 結局何のための訪米だったのか。坂井学官房副長官が誰に配るのか知らないが、「バイデン・ハリスチョコ」やら「フルーツバー」「1ドルチョコ」をたくさん買い込んだことが唯一の収穫だったのではないか。しかしまぁ、終戦直後の「ギヴ・ミー・チョコレート」の時代じゃあるまいし、他に気の利いたお土産はなかったものか。問題はそこにはないが、ただただお金と燃料の無駄遣い、お土産を買って帰りましょうの物見遊山、官邸御一行様の「GOTOキャンペーン」でしかなかった。そして、属国の悲しみだけが際立つものとなった。

(貼り付けはじめ)

日米首脳ハンバーガー会談舞台裏…台湾明記で対中戦略は?バイデン政権内に不満も

4/17() 18:56配信

日本テレビ系(NNN

https://news.yahoo.co.jp/articles/f09f98776082d87cc9e72e80c0fd3c8d6b1e75f0

https://news.yahoo.co.jp/articles/f09f98776082d87cc9e72e80c0fd3c8d6b1e75f0?page=2

日米首脳は、ホワイトハウスの一室で、ハンバーガーを前に、マスクを着用したまま見つめ合っていた。

バイデン大統領が、初めての対面形式の会談相手として、菅首相を招いて行った日米首脳会談。共同声明では約半世紀ぶりに「台湾」を明記し、中国を強くけん制した。

「雰囲気はすごく良かった」と出席者が口を揃え、首相自身も「私と似ている」と“ベテラン政治家”同士の相性に手応えを語る一方、ある政府関係者からは「米中の事実上の軍拡競争に日本は巻き込まれている」との声も上がる。

いったい何が起きているのか。舞台裏を探った。(ワシントン支局長・矢岡亮一郎)

■食べない“ハンバーガー会談”

「いろいろ人生経験とかの話をして、ハンバーグ(注:ハンバーガー)も全く手をつけないで終わってしまった。それくらい熱中した」

会談終了後、菅首相は少し頬を緩めながら、バイデン大統領との「テタテ」と呼ばれる11の会談を振り返った。時間にしてわずか20分間。「たたき上げの政治家という共通点がある」と親近感を寄せるバイデン大統領とは、部屋に飾られた家族の写真を見ながら、孫などの話題で打ち解けたという。

「私と似ているような感じを受けたが、本人もそう思っているようで…」

とバイデン氏との信頼関係の構築に手応えを語った。しかし、この「食事に手をつけないランチ会」に至るまでには、紆余曲折があった。

■ホワイトハウス「幻の夕食会」

日本代表団ホテルに「坂井副長官のお土産」段ボール…「1ドルチョコ」も

「こんなにバタバタの首脳会談は初めてだ」

首相の訪米を翌々日に控えて、ある日本政府関係者はうめいた。ホワイトハウス側との調整が滞り、スケジュールは直前まで定まらなかった。今回、日本政府がこだわったのが、バイデン大統領、ハリス副大統領との食事会。特にバイデン大統領との「夕食会」開催に向けては最後まで粘り強く交渉を続けたというが、結局実現することはなかった。

バイデン大統領自身、コロナ禍での対面の会談にはかなり慎重だとされる。会談中は「常時マスク着用」、しかも高性能のN95マスクの着用が義務づけられた。

この徹底ぶりはハンバーガーを前にしてなお、マスクを外さない一枚の写真によく表れている。

■台湾明記も…バイデン政権内に「落胆」

首脳会談では「N95マスクを常時着用」

首脳会談は、11のテタテ、少人数会合、拡大会合と3段階で計2時間半に及んだ。

今回の会談の最大の焦点は、共同声明に「台湾」の問題を明記するかどうかだった。そもそも日米首脳の共同文書に「台湾」が明記されれば、1969年の佐藤栄作首相とニクソン大統領以来、半世紀ぶりとなる。「台湾」の文言を盛り込みたいアメリカ側と、慎重な日本側との間で、事前調整はかなり難航したという。この対立構図を英紙フィナンシャル・タイムズが報じ、日本側が米側のリークを疑う場面もあった。

結局、共同声明には「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と明記された。日本政府の要請で後半に加えられたという「両岸問題の平和的解決を促す」という文言は、台湾問題に触れる場合の日本政府の定型見解で、外務省幹部は「この表現を後ろに付けることで、これまでの日本政府の姿勢と変わっていないというメッセージになる」と解説した。

一方で、あるアメリカ政府関係者は、「日本には共同声明でもっと強い表現に賛同して欲しかった」「落胆している」と不満を口にしている。

■日本「台湾明記」もなお米政府内に不満

「台湾の明記」を「内政干渉だ」とする中国は、共同声明に対し「強烈な不満と断固反対を表明する」と猛反発した。一方、アメリカ政府内には「台湾」を明記してなお、日本への不満が燻る。「日本は台湾有事への危機感が低い」との見方や、別のアメリカ政府関係者からは「日本は経済分野で中国と良い関係を保っていて、少しずるい」との声まで聞かれる。

アメリカが中国と貿易戦争をやって、経済面でも身を切る覚悟で向き合う中で、日本が尖閣など安全保障面で守ってもらおうというのは「不平等」との不満もあるようだ。

■菅首相「一番乗り」のワケ

菅首相訪米も「対中国のメッセージ」に

今回の菅首相の「一番乗り」は、日本重視と言えるのだろうか。ある日米外交筋はこう話す。

「バイデン大統領が菅首相を最初の会談相手に選んだのは、『日本』だからではない。対中国の最大の同盟国だからだ」

菅首相の訪米は、あくまでアメリカの対中国戦略の一環、一つのパーツとの位置づけだ。現にバイデン大統領は、同じタイミングで気候変動問題担当のケリー特使を中国に、台湾にも非公式の代表団を派遣して、台湾トップ蔡英文総統と会談させた。日米首脳会談に同席したブリンケン国務長官とオースティン国防長官は直前まで、欧州を歴訪していた。

バイデン政権は「同盟」を重視しながら、複合的かつ戦略的な外交を展開している。その中の一番重要なパーツとして、日本のトップを米国に招き、首脳会談を通じて「強固な同盟」、台湾などをめぐる厳しい姿勢を中国に見せつけた。

ある日本政府関係者は「ホワイトハウスは今回、バイデン大統領と菅首相が2人で並んでの会見にこだわった。発信したかったのだろう」と打ち明ける。

■日米今後は?「総論はいいが、各論に入ると…」

「ジョー」「ヨシ」が描く対中国戦略は

ある日本政府関係者は「日米は総論はいいが、各論に入ると立場の違いが露呈してくる」と交渉の難しさを語っている。今回の台湾をめぐる文言の調整は「各論の立場の違い」の一つのケースになった。

別の日本政府関係者は「日本はすでに米中の事実上の軍拡競争に巻き込まれている」と語った。今後も中国をめぐる情勢が厳しさを増す中で、アメリカに立場の違いでどう理解を得ていくのか。日本外交の力が試される。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 2024年大統領選挙共和党予備選挙の状況はドナルド・トランプの動向で決まる。トランプは余裕をもって状況の推移を見守って、のらりくらりで準備をしつつ眺めておくということになる。現在でも世論調査をやれば、共和党の予備選挙での支持率はトランプがトップに来る。共和党側に人気のある政治家がいないということもあり、トランプ自身が出るか、トランプが支持する人物が出るかということになるが、今や共和党はトランプの党ということになっている。もちろんそれに反対する勢力が存在することは前回の記事でもご紹介した。

 まずは2022年の中間選挙での連邦上下両院の議席数がどうなるかということ、そして、トランプ派、反トランプ派がそれぞれどれくらいの議席数を獲得するかということが前哨戦ということになる。2022年の中間選挙、もう来年の話だ。これからの動きに注目していきたい。

(貼り付けはじめ)

ニッキー・ヘイリーはトランプが2024年に大統領選挙出馬するならば、自分は出馬しないと発言(Nikki Haley says if Trump runs for president in 2024 then she won't

マックス・グリーンウッド筆

2021年4月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/547784-nikki-haley-says-she-will-not-run-if-trump-runs-for-president-in-2024?rl=1

米国国連大使を務めたニッキー・ヘイリーは月曜日、2024年の大統領選挙について、トランプ前大統領が出馬を決断したら、自身は出馬しないと述べた。

ヘイリーは記者会見の席上、AP通信の記者に質問に次のように答えた。「トランプ大統領が出馬するのならば、私は出馬することはないですね、大統領が出馬するとなれば、私はこのことについて大統領と話すことになるでしょう。(I would not run if President Trump ran, and I would talk to him about it)決断をしなけれればならない時期に私たちは話をすることになるでしょう」。

サウスカロライナ州知事を務めたヘイリーは2024年大統領選挙の共和党予備選挙の候補者だと考えられているが、ヘイリーはトランプがホワイトハウスに向けて再出馬するならばトランプを支持するだろうと述べた。

しかし、ヘイリーはトランプと最後に話をしてからずいぶん時間が経っていることも認めた。トランプとの最後の会談について質問され、ヘイリーは2020年の選挙の後、1月6日の選挙結果の承認を阻止し羽ようとする群衆による連邦議事堂進入事件の前、その時期にトランプと会談を持ったと答えた。

また、ヘイリーは、国連に対する米国の代表を務めていた約2年間、自分はトランプ「素晴らしい仕事関係」を築いていたと述べた。

ヘイリーは次のように述べた。「私がやりたいように仕事をさせてくれたことに対して彼に感謝していますよ。私たちは外交政策について協力して素晴らしい成果を上げたと考えています。そして、私たちが達成したものの上に更に業績を積み重ね続けたいと思います。決してそこから後退しないようにしたいと思います」。

トランプとヘイリーの間には否定できないほどの緊張関係が今でも存在する。16日の出来事の後、ポリティコ誌とのインタヴューの中で、ヘイリーはトランプを酷評した。ヘイリーは共和党がトランプの主張に耳を傾けたことが間違いであると述べ、これからの数か月そして数年で、自分が「さらにさらに孤立」していくことに気づくだろうと予測した。

この時と同じインタヴューの中で、ヘイリーはトランプの政治上の将来について明確に次のような判断を下している。「彼は連邦政府の役職のために再び選挙に出ることはないでしょう」と述べた。

しかし、トランプが一期だけ大統領を務めてホワイトハウスから離れて約3か月が過ぎ、トランプは私的に2024年に復活のための選挙に出るという考えを弄び続けている。共和党の予備選挙に出る可能性のある人々にとっては、トランプがどういう決断をするかがはっきりするまで自分たちの決定を凍結しなければならない。

トランプ政権出身者の中で2024年の大統領選挙に出馬することを目指しているのはヘイリーだけではない。マイク・ポンぺオ前国務長官はアイオワ州とニューハンプシャー州での講演を行っているが、これら2州は大統領選挙共和党予備選挙で最初に投開票が実施される州だ。

共和党予備選挙の候補者としては、フロリダ州知事ロン・デサントス、サウスダコタ州知事クリスティ・ノエム、マルコ・ルビオ連邦上院議員(フロリダ州選出)、リック・スコット連邦上院議員(フロリダ州選出)、トム・コットン連邦上院議員(アーカンソー州選出)が予想されている。

月曜日のヘイリーの発言は、トランプが共和党の予備選挙に出る可能性は、他の候補者たちの政治的な見通しにも大きな影響を与えることを示している。トランプは近代の共和党の中で最も影響力を持つ人物である。そして、予備選挙で彼と争うことは多くの共和党の政治家にとってリスクの高い行いということになる。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 本ブログの更新が滞りまして申し訳ございません。年度末ということ、更に5月末にアメリカ政治に関する単著を刊行することになり、その準備にも追われておりました。第一稿が完成しましたので、余裕を持つことができるようになりました。

 私の友人(というのはおこがましいのですが)の藤森かよこさんの最新刊が出ました。『優しいあなたが不幸になりやすいのは世界が悪いのではなく自業自得なのだよ』という、これまでの本よりもより過激なタイトルになっています。興味がある方は是非お読みください。

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優しいあなたが不幸になりやすいのは世界が悪いのではなく自業自得なのだよ

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 今回ご紹介するのは、アメリカの共和党内部の亀裂についての記事だ。具体的にはトランプ派対反トランプ派の戦いということになる。トランプはホワイトハウス退去後、比較的静かに過ごしている。しかし、その存在感は共和党内部で維持されている。トランプに協力的な議員たちは彼からの推薦支持(endorsement)を望んでいる。トランプがこれを与えることで2022年の選挙での勝利が近づくという計算がある。

 トランプ派はより具体的に言えばポピュリズムである。既成の政治の枠組みや汚れたワシントン政治に対する人々の怒りがその原動力だ。一方で反トランプ派は、バイデン政権との協力を目指している。その割には経済政策などでバイデン大統領とは対立しているが。

 共和党がトランプの党になるかどうか、だが、その支持基盤がどうなるかが影響する。つまり、有権者の動向が決めることだ。反トランプ派の議員たちが多く選挙で落選するということになれば、必然的にトランプの党になる。選挙が近づいて、「あの議員はよくない、落選させよう」という呼びかけが出ればそれだけで現職議員の敗北の可能性は高まる。トランプの力はいまだに健在なのだ。

(貼り付けはじめ)

トランプの早々の支持表明は共和党内部の亀裂を示している(Trump's early endorsements reveal GOP rift

アレクサンダー・ボルトン筆

2021年4月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/senate/547483-trumps-early-endorsements-reveal-gop-rift

トランプ前大統領は最近、ロン・ジョンソン連邦上院議員(ウィスコンシン州選出、共和党)、ランド・ポール連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)、マルコ・ルビオ連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)に対する推薦支持(endorsement)を表明した。この出来事は、トランプ時代を過去のものにしたい共和党員(Republicans who want to leave the Trump era behind)と、勝利の方程式としてトランプの保守主義におけるポピュリストとしてのブランドを考えている共和党員(those who see his populist brand of conservatism as a winning formula)との間の亀裂を露わにしている。

中間選挙の投開票日までおよそ20カ月を前にして、トランプは一部の連邦上院議員たちに対して連続して支持表明を行った。このことによって、トランプは、共和党所属の連邦議員たちの議論に割って入ることになった。議員たちは党としての先行きをどのようにしたいか、バイデン大統領とどの程度の協力関係を築くかということを議論している。

トランプはまた来年の選挙で共和党内の予備選挙での挑戦者たちから同盟者である現職の議員たちを守ることができるのだというシグナルを送っているということになる。

共和党系のストラティジストであるジム・マクローリンは「挑戦者となるであろう人たちを排除するということは極めて有効な予防的措置となります」と述べた。また、マクローリンは、トランプが、連邦上院共和党選挙対策本部長のリック・スコット連邦上院議員(フロリダ州選出)との間で、「極めて良好な関係」を維持していると指摘した。

マクローリンは、2022年の選挙に早い段階で介入するということは、共和党員に対して、共和党はバイデンの政策に対して戦う必要があるというメッセージを送ることになると述べた。バイデンはトランプ前政権の政策を破棄することを目的としている。

スーザン・コリンズ(メイン州選出)、リサ・マコースキー(アラスカ州選出)、ミット・ロムニー(ユタ州選出)のような一部の共和党所属の連邦上院議員たちはバイデンとの協力を望んでいると公に発言している。今名前を挙げた議員たちは、今年の2月初めにバイデン大統領と会談を持った議員たちの一部だ。この議員たちは大統領との間で、新型コロナウイルス感染拡大対策における経済対策での妥協を模索してバイデンと会談を持った。しかし、バイデンは共和党議員たちの提案を全く不十分だとして即座に退けた。

その結果、共和党所属の連邦議員の中で、バイデンが提案した1兆9000億ドル規模の「アメリカン・レスキュー・プラン」に賛成票を投じた議員は一人も出なかった。

共和党所属の連邦議員たちの一部は、ホワイトハウスからトランプが追い出されたことについて、共和党連邦上院議員会で特に不人気だった特定の政策の破棄する機会となると考えている。連邦上院共和党の中で不人気だったトランプの政策派、貿易関連と外交政策関連のものだった。

共和党所属の連邦議員たちはトランプの貿易政策と関税を放棄するかどうか決定していない。そして、バイデンは現在のところトランプの政策を続けている。

外交政策については、バイデン政権のNATOの同盟諸国との関係改善を行うという決定について共和党連邦上院議員会から大きな反撃は出ていない。今年2月バイデンは「一国に対する攻撃は全加盟国対する攻撃である。これは私たちの確固たる誓いである」と宣言し、アメリカのNATOへの関与を再び強く推進するという決意を示した。

しかし、その他の共和党の政治家たちにとっては、トランプが大統領を退任したことで、自分たちのキャリアを伸ばし、労働者階級の有権者たちの間に共和党の支持基盤を拡大するための機会となる。共和党系のストラティジストたちは、ジョンソン、ポール、ルビオは全員がトランプからの推薦支持を得たいと望んでいた。

ジョシュ・ホーリー連邦上院議員(モンタナ州選出、共和党)はトランプのポピュリズムを支持し、ポピュリズムを共和党の将来に進むべき道だと考えている数少ない議員の一人だ。

ホーリーは今週中に「21世紀のためのトラスト解消のための政策提案」を行うと述べた。その主眼は「ジョージア州についてのバイデンの大きなウソを報じ続ける巨大企業」に集中したものだとしている。

そのような政策主張は保守派全員には受け入れがたいものだ。

共和党系のストラティジストであるブライアン・ダーリンは次のように語っている。「反自由市場(anti-free market)的な政策を主張するその心情は理解できます。共和党が抵抗すべき一点は自分たちとは同意できない巨大企業に反撃するために反トラスト法を使えと促すことです」。

ホーリーは昨年、共和党連邦上院議員会での決定のほとんどに反対しその決定とは異なる行動をした。昨年12月連邦議会では9000億ドル規模の経済支援策、2000ドルの経済刺激のための小切手配布が決定した。共和党連邦上院議員会はこの妥協に反対したが、ホーリーは賛成に回った。トランプ大統領も2000ドルの小切手配布に賛成していたが、共和党の連邦議員たちの多くはこのアイディアに反対した。

もう一方の側にいるのがマコースキーだ。マコースキーは共和党がレーガン大統領時代の共和党のように「大きなテント(big tent)」のような政党に戻って欲しいと願っている。

マコースキーは今年1月、「共和党がトランプの党であり続けるなら、私は共和党に適しているかどうか自信を持つことはできません」と発言した。

金曜日、マコースキーは新たな支援を得た。連邦上院少数党(共和党)院内総務ミッチ・マコーネル連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)とつながっているスーパーPACの連邦上院リーダーシップ・ファンドは、2022年の選挙でのマコースキーの再選に推薦支持を表明した。

連邦上院リーダーシップ・ファンドの会長を務めているスティーヴン・ラーは「アラスカ州は経験豊富な代表を出す必要がある。リサ・マコースキーはアメリカ合衆国上院でその役割を担っている」と述べている。ラーは以前マコーネルの首席補佐官を務めた人物だ。

トランプがバイデンに敗れてから、マコーネルはトランプとの関係を切った。共和党の指導者であるマコーネルは昨年12月中頃にトランプと話すことを止め、今年2月、16日に連邦議員たちが選挙人の投票を承認しようとしているそのときにトランプ支持者たちが連邦議事堂に進入したが、この事件についてトランプの示唆があったと激しく非難した。

今年1月上旬にツイッター社から投稿禁止処分を受けて以降、トランプは比較的静かである。しかし、彼の大統領退任後の事務所と「セイヴ・アメリカ」PACからの一連の声明と支持表明が出されていることで、ここ最近、共和党政治において存在感が高まっているように感じられる。

「セイヴ・アメリカ」はトランプに忠実な政治家たちのために8500万ドルを集めている。このことは、トランプが政治の世界で力を持ち続ける意思があることを共和党員や共和党支持者たちに印象付けるものだ。

先週、トランプは、ジョンソン、ポール、ルビオへ支持表明を行った。この3名は連邦上院の中で最もとランプに忠実な議員たちで来年に再選のための選挙が控えている。ジョンソンは、ハンター・バイデンのウクライナのエネルギー企業に招聘されていたことについての調査を主導していた。このハンターの件はトランプの好むものであった。ジョンソン自身は3期目を目指すかどうかまだ発表していない。

トランプはジョンソンに対して、「出馬だ、ロン、出馬だ!」と促した。民主党側は、ジョンソンが共和党の候補者になれば民主党側の勝利の可能性が高まるだろうと考えている。

民主党系のストラティジストであるベン・ナックルスは2018年の選挙でウィスコンシン州知事トニー・エヴァースの勝利に貢献した人物である。ナックルスは次のように述べている。「ジョンソンに出馬して欲しいと願っています。そうすれば民主党側がより簡単に議席を奪取できますからね。ジョンソンは多くの問題について、あまりに急進的で、あまりにも無茶なことを言ってきました。もしジョンソンが出馬するならば、民主党が議席を奪取するのはより容易なことになるでしょう」。

ウィスコンシン州を地元して活動している共和党系ストラティジストであるブランドン・ショルツは、民主党側は2020年の選挙で使用した反トランプ戦術と言葉遣いを再び持ち出すだろうと述べている。

ショルツは、トランプからの支持は、2020年と同じ選挙を再現しようとしている民主党に有利に働くことになる、大統領選挙で反ドナルド・トランプ活動を展開したが、それを連邦上院議員選挙でもやり反ロン・ジョンソン活動をやろうとするだろうと述べた。

ショルツは、2020年の選挙で民主党はウィスコンシン州では課題や問題を取り上げることを中心の選挙戦を展開することはなく、トランプの性格や行動に焦点を当てて選挙活動を行った。

ショルツは「民主党はドナルド・トランプを憎悪していました。これが選挙活動の中心でした。私は、民主党がこの選挙活動を再現しようとしていると考えています」とお述べた。

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