古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

2021年12月

 古村治彦です。

 アメリカのインフレーション率は高いままだ。2021年10月で6.2%を記録したが、11月では6.8%を記録している。人々の給料が10%くらい上がらないと、このインフレーションの状態では生活は苦しくなるばかりだが、簡単に給料が10%も上がる人は少ないし、もともと低賃金の仕事で10%も上げてくれることはない。嫌なら辞めろということになる。それで人手不足ということになるが、低賃金の仕事にしか就けない非熟練労働者は多く、結局仕事は埋まってしまう。日本の規制改革、構造改革を進めた竹中平蔵一派(小泉純一郎からの)は、このような構造を日本に作り上げ、巨大な格差社会を構築することに成功した。私は以前に「日本に低賃金で働く人たちの“国”を作りたいのだろう」と書いたがまさにそうなった。
inflationrates20172021503

usinflationrate2021503
 アメリカ国民は現状に不満と不安を持っている。インフレーション、物価高を何とかしてくれということになっている。インフレーションを抑えるには市場で流通している貨幣量を減らすということになる。金融政策で言えば利上げをすること、財政政策で言えば緊縮財政にして、増税をするということになる。しかし、新型コロナウイルス感染拡大のために疲弊した経済状態で、利上げをすること、増税をすることは難しい。バイデン政権は大型公共支出をして経済を刺激しようとしているが、それがインフレーションを亢進させてしまう危険性もある。民主党の連邦上院議員ジョー・マンチン(ウエストヴァージニア州選出)は、インフレーションへの懸念からバイデンが進める大型支出に反対することを表明した。

 今が調整局面で、デマンドプル型インフレーションなのだという解釈であれば、その内に落ち着く。しかし、コストプッシュ型インフレーションであれば、外的な要因ということもあって厳しい。具体的には中国の経済回復のために、資源の取り合いになって資源の価格が高騰するということになれば、アメリカのインフレーション、物価高は続く。輸入品の価格を下げるためにはドル高にしなければならない。そうなれば日本は円安となり、日本にコストプッシュ型のインフレーション、物価高を「輸出」「押し付け」することになる。日本のインフレーション率はそこまで高くなく、アメリカ並みのインフレーション率にまで上がることは考えにくいが、給料が上がらない中で物価高が続くことは人々の生活を直撃することになる。

 2022年もしばらくは厳しい状態が続くことになるだろう。

(貼り付けはじめ)

最新の世論調査によるとアメリカ国民の3分の2が世帯支出は上昇していると回答Two-thirds of Americans in new poll report higher household expenses

キャロライン・ヴァキル筆

2021年12月9日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/finance/585141-two-thirds-of-americans-in-new-poll-report-higher-household-expenses

アメリカ国民の約3分の2が2020年3月の段階に比べて世帯支出(household expenses)がより高くなっていると報告している。これは賃金上昇がありながらも、インフレーションがアメリカ国民に直撃しているということを示唆している。火曜日に発表された最新の世論調査の結果、明らかになった。

今月、アソシエイティッド・プレスとNORCセンター・フォ・パブリック・アフェアーズ・リサーチの共同世論調査が実施された。アメリカ国民の67%が、世帯支出は2020年3月1日時点よりもより多くなっていると答えている。26%は横ばいだと答えた。

2020年3月1日時点よりも世帯支出が低くなったと答えたのは6%だった。

アメリカ国民の過半数がここ数カ月、物価が通常よりも高くなっていることを経験していると答えた。日用品については85%、ガソリンについては85%、電気料金については57%、休日のプレゼントについては58%、サーヴィス全体については62%が、価格が高くなっていると答えた。

家電製品の場合、ここ数ヶ月でそれらの製品の価格が通常より高くなったと回答した人は37%にとどまり、51%がそれらの製品を購入しなかったと回答している。

世帯収入について、世論調査を行ったアメリカ国民の50%が「2020年3月1日とほぼ同じだ」と答えたのに対し、「その時点より高くなった」と答えたのは24%だった。

今回の世論調査では、26%が2020年3月の時点よりも世帯収入が減少したと答えた。

水曜日に発表された労働省のデータによると、10月の賃金上昇は年率5%だった。労働者需要が最高潮に達し、同月に企業によって1100万件の求人広告が出され。

バイデン大統領の世論調査の数字が低いのはインフレーションが一因となった。こうした状況下で、労働省からデータが発表された。10月のインフレーション率は30年ぶりの高水準に達した。

消費者物価指数(CPI)は、主要な財・サーヴィスのインフレーション率を示すもので、10月だけで0.9%、同月までの12ヵ月間では6.2%の上昇となった。

APNORC社の共同世論調査では、アメリカ国民の57%がバイデンの経済への対応に不賛成であるのに対し、賛成は41%であった。

APNORC社の共同世論調査は、2021年12月2日から7日にかけて、1089名を対象に実施された。誤差は4.1ポイントで、信頼水準は95%だ。

=====

世論調査:アメリカ国民の69%がバイデンのインフレーション対応を不支持(Sixty-nine percent of Americans disapprove of Biden's handling of inflation: poll

ジョセフ・チョイ筆

2021年12月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/585486-sixty-nine-percent-of-americans-disapprove-of-bidens-handling-of

日曜日にABCニュースとイプソス社共同世論調査の最新結果が発表され、アメリカ国民の約70%がバイデン大統領のインフレーション対応に不支持と答えた。

世論調査の結果によると、アメリカ国民の69%がバイデン大統領のインフレーション対策を不支持と答えた。一方、28%が支持と答えた。支持政党別で見ると、共和党支持者の94%が不支持と答え、民主党支持者の54%が不支持と答えた。無党派の有権者の場合は、71%が不支持と答えた。

経済回復については、57%がバイデンの仕事ぶりを評価しないと答えた。

ABCニュースの世論調査の結果では、犯罪と銃犯罪に関してはバイデンの支持率は下がっている。それについて36%と32%が支持すると答えたが

しかし、バイデンはある分野に関しては大統領としての仕事ぶりで過半数を少し超える支持を維持している。それは新型コロナウイルス感染拡大対策だ。ABC・イプソス共同世論調査によると、53%がバイデンの新型コロナウイルス感染拡大対策を支持した。

ABCニュース・イプソス共同世論調査は2021年12月10、11日に実施された。ランダムに選ばれた524名の成人が対象となった。調査結果の誤差は5ポイントだ。

これらの支持率の数字はインフレーション率が急上昇し続けている中で発表された。今年11月までの1年間で消費者物価は6.8%も上昇した。これは1982年以降で最高の年間のインフレーション率だ。

先週、バイデンは、「アメリカは現在インフォメーション危機の“最高潮”の中にあるが、連邦上院で自分の最優先政策である“ビルド・バック・ベター”法案が可決すればインフレーションは下がるだろう」と述べた。

バイデンはCNNのカイトラン・コリンズに対して次のように語った。「これは実生活に置いての大きな問題です。日用品店に入って、何を買うにしても、より多くのお金を払うことになれば、家族に影響が出ます。これが問題です」。

バイデンは続けて次のように述べた。「ガソリン代が高くなることは、人々にとって重要なことです。いくつかの州では、1ガロン3ドルを切る価格まで下がりましたが、重要なのは、まだ十分に早く下がっていないことです。しかし、私はそうなると思っています」。

=====

民主党の政治家たちはインフレーションに打ち勝とうと苦闘している(Democrats race to get ahead of inflation

シルヴァン・レイン筆

2021年12月7日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/finance/584618-democrats-race-to-get-ahead-of-inflation?utm_source=thehill&utm_medium=widgets&utm_campaign=es_recommended_content

民主党の政治家たちは、物価の上昇がそれまでの好調な景気回復に水を差すことになるため、高インフレーションに打ち勝とうと苦闘している。

アメリカ経済は、新型コロナウイルス感染拡大で大きな被害を受けた他の全ての国に先駆けて、新たな感染拡大や感染拡大対策関連の制約を乗り越えて、急成長を遂げている。

2021年11月の失業率は4.2%にまで下落し、これは2020年2月以来の低水準である。先月、労働力は拡大し、賃金は年率で5%の上昇を記録した。個人消費と小売売上高も新型コロナウイルス感染拡大より前の最高水準を超えて急上昇しており、企業収益の上昇により株式市場は再び記録的な上昇を見せている。

しかし、景気回復のスピードが速いこともあり、インフレ率が着実に上昇しているため、民主党は景気回復をアピールすることが難しくなっている。

シェリ・ブストス連邦下院議員(イリノイ州選出)は木曜日、連邦議事堂で本紙の取材に応じ次のように述べた。ブストスはこの任期を最後にして議員を引退すると発表している。また、彼女の選挙区は民主、共和両党が激しく取り合う選挙区だ。彼女は「様々な経済指標を見れば、どれも素晴らしい数字を記録していることが分かる」と述べた。

彼女は続けて次のように述べた。「しかし、人々の生活問題について言うと、車を満タンにすれば前よりもお金がかかっている。日用品店に行ってベーコン1ポンドを買えば前よりもお金がかかる。人々はこのことを認識している」。

労働省が発表した消費者物価指数(CPI)によると、10月の消費者物価は、主に食品とエネルギー価格の高騰によって、前年同月比で6.2%上昇した。エコノミストたちは、金曜日に発表される11月の消費者物価指数のデータは、先月の消費者物価の年間上昇率がさらに大きく、6.7%になると予想している。

消費者物価の継続的な上昇は、資金繰りに苦しむ家計を圧迫し、中間選挙まで1年を切ったバイデン大統領と民主党に対する政治的圧力が高まっている。共和党は繰り返しコストの上昇を指摘し、バイデンや民主党が3月に民主党の票だけで可決した19000億ドル規模の「アメリカン・レスキュー・プラン」景気刺激策で経済を過熱させたと非難している。それでも回復の遅れた他の富裕国もインフレで苦しんでいるのが現状だ。

連邦下院財政委員会共和党側最高責任者パトリック・マクヘンリー連邦下院議員(ノースカロライナ州)は木曜日連邦議事堂において、「財政がインフレーションを増進させている。これは深刻な懸念となっている」と発言した。

マクヘンリー議員は「既に物価に関して問題が起きているのに、連邦議会は経済にジェット燃料を加えているようなものだ」と述べた。

アメリカン・レスキュー・プランがアメリカの景気回復に貢献した一方で、それが促進した支出の多くは、過負荷状態にある商品部門に殺到している。新型コロナウイルス感染拡大によって被害を受けた工場、サプライヤー、運送会社、小売業者が急増する需要に追いつくのに苦労しているので、様々な消費財の価格が急騰している。夏にはデルタ型ウイルスが出現し、サプライチェインの混乱はさらに深まり、新型コロナウイルス感染拡大前の状態に戻りつつあるサーヴィス産業からより多くの支出が流出することになった。

バイデン氏がサプライチェインの問題解決に奔走する中、大統領とホワイトハウス関係者は、インフレーションが国民の経済への支持やメディアの報道に与える悪影響について苦言を呈している。しかし、過激な進歩主義者から穏健派まで、様々な議員が、労働者階級が直面している物価の上昇を軽視してはならないと警告している。

木曜日、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は連邦議事堂で本紙の取材に対して、次のように述べた。「私たちが持っている疑問は、“インフレーションは問題なのか、そうではないのか?”というものではない。その答えは既に持っている。疑問に思っているのは、“私たちは本気になって解決しようとしているのか、それともただお喋りの材料にしているのか?”ということだ」。

オカシオ=コルテスや多くの民主党議員は、バイデンの「ビルド・バック・ベター」計画を、特に育児や処方薬など家族のコストを下げるための重要なステップであると評価している。彼女は木曜日に、1兆7500億ドルの社会サーヴィスおよび気候変動法案は、介護責任のためにパンデミックの発症中に去った数千人を含む、より多くの女性を労働力にするのにも役立つと述べた。

オカシオ=コルテスは、「物理的なサプライチェインには、港湾や海運の問題だけでなく、労働力不足という具体的な圧力要因がある。これらの分野に投資することで、ボトルネックを解消することができると考えている」と述べた。

ほとんどのエコノミストは、「ビルド・バック・ベター」計画は短期的には価格上昇にほとんど寄与しないと言っており、デフレーションの影響は数年どころか数ヶ月は発生しないと警告を発している。また、デルタウィルス変種の持続、オミクロン変種の出現、冬の到来なども、来年インフレーションが緩和し始める前に供給ラインを圧迫しそうだと、多くのアナリストは警告している。

オックスフォード大学経済学部のアメリカ経済専門家オレン・クラチキンは月曜日に発表した分析の中で次のように述べている。「バイデン政権は、サプライチェインの問題に取り組むためにビジネスリーダーと協力しているが、構造的なトラックドライヴァー不足と、基本的にフル稼働している倉庫という状況の中で、短期的にどれだけの進展が見られるかは不明だ」。

クラチキンは、港湾のボトルネック、重なり合う海外渡航制限による「頑強な物流課題」、数年来のトラックドライヴァー不足が重なり、価格への圧力がかかり続けていると指摘している。

クラチキンは「オミクロン株の発生によって、サプライチェインの問題解決スピードを低下させ、これまでの成果を台無しにする危険性がある」と書いている。

サプライチェインのより深刻な問題、特に自動車や家電製品から食品やエネルギーに至るまで価格上昇が広がれば、資金繰りに苦しむ家計やその支持を必要とする民主党候補者にとっての課題となる可能性がある。住宅価格や株価の急上昇は、物価上昇を乗り切ることができる裕福なアメリカ人にとっては恩恵だが、市場に資金がない人や、使える現金が十分にない人にとっては、どちらも冷たい慰めにしかならない。

ドン・ベイヤー連邦下院議員(ヴァージニア州選出、民主党)は木曜日、連邦議事堂で本紙の取材に対して次のように語った。「私たちの相手である共和党側にとっては幸先の良いメッセージということになる。特にガソリン価格や食料価格の点で、価格が上昇すれば人々はその上昇を、自分たちの手持ちのお金を数えながら実感することになる」。

ベイヤーは「私が希望しているのは今年の春の終わりまでにこれらの物価上昇の圧力が極力小さくなることだ。10月までに収束させることができれば選挙に間に合うなどとは考えていない」と述べた。

=====

民主党がバイデンの支出法案成立に邁進する中、マンチンはインフレーションに警告を発する(Manchin warns about inflation as Democrats pursue Biden spending bill

ジョーディン・カーニー筆

2021年12月7日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/senate/584830-manchin-warns-about-inflation-as-democrats-pursue-biden-spending-bill?utm_source=thehill&utm_medium=widgets&utm_campaign=es_recommended_content

ジョー・マンチン連邦上院議員(ウエストヴァージニア州選出、民主党)は火曜日、インフレーションに懸念を持っており、バイデン大統領の最重要政策である気候変動と社会に関する支出パッケージに前のめりになっている民主党に対して警告を発した。

マンチンは、『ウォールストリート・ジャーナル』紙CEO会議サミットにおいて、社会支出法案に対してまだ賛否を決めておらず、インフレーションンリスクに対して危険信号を出していると示唆した。

ウエストヴァージニア州選出の連邦上院議員であるマンチンは、インフレーションについて言及しながら、「今日我々が直面している未知の問題は、・・・この支出法案よりもはるかに大きい」と述べた。

マンチンは「私たちは、これを確実に実行しなければならない。このまま市場に資金を氾濫させ続けるわけにはいかない」と述べた。

連邦上院多数党(民主党)院内総務(Senate Majority Leader)のチャールズ・シューマー連邦議員(ニューヨーク州選出、民主党)がクリスマス前に歳出法案を通すという期限を守ろうとして民主党所属議員たちに圧力をかけている中で、マンチンは発言を行った。バイデン政権は、この法案がインフレーション下でのコスト上昇に対抗するのに役立つと主張している。

民主党は、法案が予算規則に適合しているかどうかを提示しているマンチンとの交渉、更には所属議員同士の交渉が続いている。マンチンに加え、カーステン・サイネマ連邦上院議員(アリゾナ州選出、民主党)も法案を支持するかどうか明言しておらず、他の民主党所属議員も州・地方税(SALT)控除の上限など法案の特定の部分について懸念を表明している。

マンチンは、クリスマスまでの期限について、スケジュールをコントロールすることはできないとし、言及を避けた。しかし、彼は今年初めに、『ウォールストリート・ジャーナル』紙の論説で、戦略的な一時停止を呼びかけたことがある。

「その時、私は懸念を持っていた。そこで戦略的に一時停止しようと言った。今でもそのことを強く感じている」とマンチンは語った。

民主党は、気候変動と社会支出に関する合意を成立させるために予算調停を行うため、50人の民主党会派所属議員全員の完全な結束が必要である。また、歳出法案の審議を開始するためには、完全な結束と、ハリス副大統領による賛成が必要である。

マンチンは、法案に有給休暇を含めることに反対し、企業のクリーンエネルギーへの移行を奨励するためのエネルギー条項を計画から削除させ、メタン排出料と労働組合に所属ずる労働者によって製造された自動車に多く適用される電気自動車税額控除について反発している。

マンチン議員は、両党が自党の最大の優先課題を可決させるために、予算プロセスを利用していることを非難した。

マンチンは「予算プロセスはそのような重大な政策変更のために使われるとは想定されていない」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 アメリカでは現在、インフレーション率の上昇が問題になっている。インフレーションとは簡単に言うと、物価が上昇することだ。物価が上昇するということは、需要が供給を上回っている状態のことだ。好景気となればインフレが進む。経済が激しく動くことで起きる摩擦熱のようなものだ。流通する貨幣量が増えるからインフレになる。

 ジョー・バイデン政権が進めようとしている社会支出法案が可決成立すると、巨大な政府支出によって貨幣量が増大して、インフレになるのではないかと考えてしまう。しかし、以下の記事にあるが、民主党系の経済学者たち、代表としてノーベル賞を受賞したポール・クルーグマンはそんなことはないと述べている。同じ民主党系の経済学者として知られる、こちらもノーベル賞受賞者のラリー・サマーズはインフレーションが信仰する懸念を表明している。

 同じ現象を見てもこのように、ノーベル賞を受賞したような世界的な経済学者たちが意見を異にしているというところに、社会科学の難しさ、社会科学の複雑さがあると思う。社会は非常に複雑であり、それを単純化して、一本貫く法則を見つけようとする営為が社会科学であるが、それはほぼ絶望的に困難、不可能であると思われる。

 インフレーションについて言えば、「政府が大規模支出をすればインフレーションが信仰するのか、しないのか」は極めて重要な問いだが、これに対する答えは確たるものはない。そして、これまでに起きたこととの類似点を探すことになる。以下の記事にあるように、戦後アメリカでインフレーション率が5%を超えた時期は6回ある。クルーグマンは終戦直後のインフレと今回のインフレはよく似ているとしている。これは供給側に問題があり、人々の需要を満たすだけの製品などを供給できないことで起きるインフレだということになる。従って、生産力、供給が調整できればインフレは収まるということになる。クルーグマンはこのように考えているようだ。

 インフレについては「コストプッシュ型」と「デマンド(需要)プル型」がある。コストプッシュ型とは、自然的な要因などで製品の価格が高騰することで起きるインフレであり、デマンドプル型とは、需要が高まることで供給が追い付かずに起きるインフレだ。クルーグマンは現在の状況をデマンドプル型と考えているようだ。しかし、供給サイドが限界に達している場合、それ以上は供給ができないということになる。そうなれば、需要が下がらない限り、物価上昇、インフレは収まらない。海外要因で言えば、中国の存在ということがある。中国の需要は凄まじい。新型コロナウイルス感染拡大を抑え込んだこともある。経済回復をいち早く進めようとしている。

 日本の場合は円安傾向もあり、海外からの食料品や石油、天然ガスの価格が上昇している。それがいろいろな製品の値上げにも結び付いてしまっている。賃金の上昇も見込めない中での物価上昇は最悪のシナリオである。スタグフレーションと言ってもよい。

 アメリカは来年中間選挙を控えている。インフレ退治はバイデン政権の最大の課題となるが、常識的に考えて、大型支出を行うことでインフレが進行するということになる。「現在は調整局面だ」ということで押し通すことになるだろうが、インフレが続けば、民主党にとって2022年の中間選挙は厳しい結果が待っていることになる。

(貼り付けはじめ)

リベラル派の経済学者たちがメモを発表:「ビルド・バック・ベター」法案はインフレーションを悪化させる可能性は小さい(Liberal economists got the memo: Build Back Better couldn't possibly worsen inflation

メリル・マシューズ筆

2021年11月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/finance/582805-liberal-economists-got-the-memo-build-back-better-couldnt-possibly-worsen

民主党は、「ビルド・バック・ベター(Build Back BetterBBB)法案」に盛り込まれた巨額の新たな政府支出が、数十年来の猛烈なインフレを起こさせるのではないかという考えを払拭しようとしている。『ニューヨークタイムズ』紙の寄稿者であるリベラル派の経済学者ポール・クルーグマンが、「歴史が述べているのは、“インフレーションについてパニックになるな”ということだ(History Says Don't Panic About Inflation)」の中で、それを裏付ける意見を述べている。

クルーグマンがつけたタイトルにはそうあるが、実際に歴史はそのようには言っていない。

しかし、これは押し売りだ。クルーグマンは、ホワイトハウス経済諮問委員会(White House Council of Economic Advisors)が2021年7月6日に発表した「今日のインフレに関する物語の歴史的比較(Historical Parallels to Today's Inflationary Episode)」という記事に基づいて主張している。

バイデン政権のホワイトハウスがこの記事を発表したのは4ヶ月以上前であり、当時はまだインフレが現実のものとはなっていなかったが、可能性はあるが統制されているように見えた。しかし、現在インフレ率は着実に上昇し、今後もさらに上昇していくだろう。

しかし、ビルド・バック・ベター法案は上院に送られ、修正されるか、あるいは否決されることになる。クルーグマンを含む大金持ちたちは、猛烈なインフレーションを当然懸念する層の人々、つまり上院議員と一般国民に対して、「獣はすぐに檻に戻される」と説得しようとしている。

しかし、クルーグマンとホワイトハウスが見逃している重要なポイントが少なくとも一つ存在する。

ホワイトハウス経済諮問委員会の報告書によると、第二次世界大戦以降、「消費者物価指数(CPIConsumer Price Index)で測定して、物価上昇率が5%以上を記録した時期が6つ存在している」。ホワイトハウス経済諮問委員会とクルーグマンは、現在のインフレーションと最もよく似ているのは終戦直後の1946年から1948年までのものだと主張している。

その理由は簡単だ。戦時中は配給制(rationing)と価格統制(price controls)で消費が抑制されたため、終戦時に潜在需要(pent-up demand)が高くなった。これは、新型コロナウイルス感染拡大から抜け出しつつある現在、潜在需要が高くなっていることとよく似ている。

しかし、戦後、製造業者たちが戦時中に必要な製品から消費者向けの製品に移行していく途中であったために供給が制限された。これは、現在のサプライチェインの問題が供給を制限しているのと似ている。

クルーグマンは私たちに次のように教えている。「しかし、インフレーションは長くは続かなかった。インフレーションは1948年に最高潮を迎えたが、1949年までにデフレーションに転換した。物価は下落し始めた。インフレーション率の急激な上昇に対して政治家たちが行った最大の過ちはその一過性の性質を評価分析しなかったことだ」。

クルーグマンの助言は以下の通りだ。「現在目撃している物価の急上昇については心配するな」。現在の物価の急上昇は、新型コロナウイルス感染拡大から抜け出しつつある現状の複雑な組み合わせの結果なのであって、バイデン大統領による浪費の結果ではないというものだ。現在のインフレーション問題は1948年の場合がそうだったように、早期に解決されるだろう。

民主党系の著名な経済学者の中にインフレーションについて懸念を表明している人たちがいることに注意する必要がある。ラリー・サマーズ元財務長官は今年2月から、つまりバイデンの1兆9000億ドルのアメリカ救済計画が可決される前から、ホワイトハウスがインフレーション圧力を無視しているとして警告を発してきた。

オバマ政権のエコノミストだったジェイソン・ファーマンは、AP通信とのインタヴューで、より率直な意見を述べた。「彼らは火に灯油を注いだのだ!」

しかし、最近になって、両者とも、ビルド・バック・ベター法案の全支出は今日のインフレーション圧力にほとんど、あるいはまったく影響を与えないと主張している。

クルーグマンの言う当時と現在の比較の違いの一つは、「富の効果(wealth effect)」である。これは、自宅や株価などの資産が上昇すると、人々は経済的な安心感を得て、より多くの支出をしようとするというものだ。

株式市場の下落は逆効果になることもある。ダウ平均株価は1946年4月にピークを迎え、急速に下降を始めた。1948年11月の不況の始まりまでに、ダウ平均株価はその価値の3分の1を失ってしまった。

ダウ平均株価の継続的な下落が、より多くの商品の需要を押し下げ、インフレーションの圧力を弱めたかもしれない。

今日は、その正反対のことが起こっている。株価指数は最高値を更新している。そして、国民の多くが市場に投資している。さらに、個人の貯蓄率はパンデミック中に過去最高を記録した。富の効果は、少なくとも今のところまだ影響を及ぼしており、人々は物価が上がっても、より多くの商品を購入するよう促すことになっているだろう。

バイデン大統領の進めるビルド・バック・ベター法案は巨大なそしてコストのかかる政治的、経済的ギャンブルである。バイデンによる大きな支出はインフレーションの唯一の原因ではないが、ファーマンが言っているように、「火に灯油を注いだ(poured kerosene on the fire)」のである。現在、バイデンはその支出をさらに増やしたいと考えている。

このままインフレーションが続けば、来年の選挙で民主党はさらに厳しい状況に追い込まれるかもしれない。政治家のキャリアにとって、猛烈なインフレーションよりも危険なのは、怒れる有権者たちだからだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 来年の事を言えば鬼が笑う、という言葉があるが2021年も残り10日ほどとなっているので、そろそろ来年の話をしても鬼も笑わずに聞いてくれることと思う。

 来年、アメリカでは中間選挙(Mid-term elections)が実施される。連邦上院の一部議席と連邦下院全議席、州知事選挙の一部などが実施される。大統領選挙と大統領選挙の中間に実施され、現職大統領の「中間試験」という意味合いがある。バイデン大統領の就任後約1年の成績は芳しくない。期待が大きいところもあっただけに、今のところ期待外れ、中間試験では赤点になるのではないかというところだ。

 問題は、バイデン大統領の不人気が自分の選挙の結果に反映されるのではなく、民主党の連邦議員たちの結果に反映されてしまうということだ。簡単に言えば、「自分(バイデン)のせいで落選する議員が多く出てくる」ということだ。これが問題だ。

 バイデン大統領にとっての頭の痛い問題は、新型コロナウイルス感染拡大対策とインフレーション対策だ。アフガニスタンからの撤退は既に行ってしまったことで、これを今更挽回することはできない。それよりも今は国内対策、特に新型コロナウイルス感染拡大とインフレーション対策が重要だ。これは一般国民の生活に直接かかわるために、投票行動に結びつく。しかし、現在のところ、それらはうまくいっていないという評価が多くなっている。

下の記事にあるように、共和党対民主党で、支持率の差が広がっている。共和党43%対民主党33%と二桁の差がついてしまっている。これがそのまま続く訳ではない。しかし、挽回することは極めて困難だ。

 民主党の支持率が不振を極めている理由として、民主党の支持基盤であるマイノリティで大きな勢力を占めるヒスパニック系からの支持が減っていることが挙げられる。ヒスパニックはマイノリティの中でも特に人数が多く、また増加率も高く、重要な有権者集団となっている。アメリカの政治家たちでスペイン語を話す人が多くいるがそれはヒスパニック系の人々にアピールするためだ。

 下の記事によると、ヒスパニック系有権者の民主、共和両党に対する支持率は拮抗しているということだ。ヒスパニック系は非熟練労働者が多く、カソリック教徒が多く宗教上の理由から子沢山ということがある。これは現在の状況では生活が厳しいということを意味する。非熟練労働者の雇用は不安定であるし、新型コロナウイルス感染拡大で経済が停滞していた時期には真っ先に首を切られる対象となった。これでは生活が安定しない。また、現在、経済が回復の方向に進む場合でも、非熟練労働の賃金は低い。それに対して、インフレーション率が高くなれば、生活に直撃して、どちらにしても生活が苦しいままということになる。

 バイデン政権の対策が不十分と感じ、支持をしないヒスパニック系が増えれば、共和党を利することになる。バイデン政権とすれば、来年早い段階で、新型コロナウイルス感染拡大を収束させ、インフレーションを抑えなければならないが、なかなか困難な道筋ということになる。

 

(貼り付けはじめ)

世論調査:包括的な中間選挙に関する世論調査の結果で共和党が10ポイントリード(Republicans hold 10-point advantage on generic midterm ballot: poll

タル・アクセルロッド筆

2021年12月10日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/585337-republicans-hold-10-point-advantage-on-generic-midterm-ballot-poll

来年の中間選挙に向けた包括的な世論調査の結果、共和党が10ポイントリードをしている。CNBC・オールアメリカン・エコノミックの共同世論調査の結果で明らかになった。

世論調査に答えたアメリカ国民の間で、共和党は民主党に支持率で、44%対34%で10ポイントの差をつけている。10月の調査に比べて差が2ポイント広がっている。

本誌の調べでは、CNBCもしくはNBCの世論調査で共和党が二桁のリードを記録したのは今回が初めてだ。その他の中間選挙に関する包括的な世論調査の結果で民主党が支持を失っているという流れに、今回の世論調査の結果も沿っている。しかし、共和党のリードがこれほど大きい結果となったのはほとんどない。

今回の世論調査は、共和党が圧倒的に有利だと予想されている中間選挙に直面している民主党にとって、最新の警鐘である。共和党は、民主党が僅差で過半数を握っている連邦下院をひっくり返し、連邦上院でも過半数を獲得する可能性が高まっていると主張している。

民主党に対する向かい風はバイデン大統領の低支持率によって強められている。バイデンは、新型コロナウイルスの感染拡大、インフレーション、アフガニスタンからの撤退に対する批判が続いている。

今回の世論調査では、バイデンの支持率は41%、不支持率は50%だった。バイデンの新型コロナウイルス感染拡大対策については、支持率46%、不支持率48%となった。今回のCNBCの世論調査で、不支持率が上回ったが、これは初めてのことだった。

民主党系の世論調査専門家ジェイ・キャンベルは今回の世論調査の結果について、CNBCに対して、「もし選挙が明日だったら、民主党にとって深刻な大惨事となるだろう」と述べている。

CNBC・オールアメリカン・エコノミックの世論調査は2021年12月1日から4日にかけて800名を対象に実施された。誤差は3.5ポイントだ。

=====

民主党はヒスパニック系有権者からの支持を失いつつあることに懸念を持っている(Democrats worry their grip on Hispanic vote is loosening

ラファエル・バーナル、アレックス・ガンギターノ筆

2021年12月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/latino/585381-democrats-worry-their-grip-on-hispanic-vote-is-loosening

民主党はヒスパニックからの支持を失いつつあることに懸念を持っている。ヒスパニックは民族で分けると、アメリカで2番目に大きい有権者集団だ。

『ウォールストリート・ジャーナル』紙が先週発表した世論調査の結果によると、ヒスパニック系有権者の支持は民主党と共和党で半々となっている。この世論調査の結果は、調査対象者数の少なさについては疑問の声が上がっているが、この結果は民主党にとっては警告の鐘の音となった。

民主党全国委員会ヒスパニック・リーダーシップ会議で上級部長を務め、現在は民主党系のロビイストを務めるアイヴァン・ザピエンは、「民主、共和両党ともに常にヒスパニック系、ラティーノ系と意思疎通を図ろうという切迫感を持つべきだと考える」と述べた。

「私がこの問題について民主党はもっと真剣に知恵を絞るべきだと考えるかと問われれば、その答えは、その通りだとなる。世論調査の結果がどうであろうと、民主党はこの問題について毎日真剣に頭を悩ますべきだ」。

今回の世論調査は、ヒスパニック系有権者の間で共和党のメッセージに対する共感が高まっていることを示す最新のデータということになる。民主党は2020年の大統領選でフロリダ州とテキサス州を失い、ヒスパニック系有権者からの支持を減らしている結果に失望している。

バイデン大統領は2020年の大統領選挙でラティーノ系有権者の投票の63%を獲得し、トランプ前大統領を30ポイント近く上回った。

しかし、今回の世論調査では、2024年の大統領選挙が今日行われると仮定しての質問に対して、バイデンに投票すると答えたヒスパニック系有権者はわずか44%、トランプに投票すると答えたのは43%だった。この結果はバイデンと民主党にとって厄介な兆候を示している。

ここ最近の大統領選挙では、民主党の候補者たちは2020年のバイデンと同様の好成績を収めてきた。しかし、2004年の大統領選挙ではジョージ・W・ブッシュ元大統領はヒスパニック系有権者からの支持で比較的良い成績を収めた。

ピュー・ヒスパニック・センターによると、2004年の大統領選挙では、ヒスパニック系有権者の40%がブッシュに投票し、民主党候補者ジョン・ケリーに投票したのは58%だった。

各種世論調査の数字の結果から見ると、民主党はヒスパニック系有権者からの支持で共和党に大きな差をつけていることは当然なのだと考えるべきではない。ザピエンは、ヒスパニック系有権者と可能な限り意思疎通を図り、「彼らの心の中を理解できる」政党は、今後ヒスパニック系有権者からの支持を伸ばす可能性が高いと述べている。

民主党は、国内のほとんどのヒスパニック系共同体との意思疎通において、文化的能力でリードしていると主張している。もっとも、フロリダ州南部のキューバ系、ベネズエラ系、コロンビア系は例外になるかもしれない。民主党はヒスパニック系との協力の規模に関する問題に直面している。

ヒスパニック系連邦議員連盟の選挙対策部門である「ボールドPAC」の院長を務めているルーベン・ガレコ連邦下院議員(アリゾナ州選出、民主党)は、「共和党は我々よりずっと簡単な仕事をするだけのことだ。彼らは、民主党から5から7%のヒスパニック票を奪うだけで、選挙に勝利することができる」と語っている。

ガレコ議員は、この目標を達成するために、有権者の投票抑圧策と選挙に関するメッセージの発信策を合わせて、共和党は1000万ドルから3000万ドルの範囲で支出する必要があると述べている。

ガレコ議員は続けて次のように述べている。「特に人口が増加している現在、非常にコストのかかるヒスパニックとの協力関係を維持するためには、投資を続け、65から70%の範囲でヒットするようにしなければならない」。

共和党は、ヒスパニック系有権者(特にテキサス州とフロリダ州の有権者)が保守的な経済メッセージにますます反応するようになっていると主張している。共和党は、各種世論調査の数字と2020年の大統領選挙と連邦議員選挙の結果に注目している。

ジョン・コーニン連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)は、「先週のウォールストリート・ジャーナルの世論調査の結果は民主党にとって厄介なものだ」と語った。

コーニン議員は水曜日、次のように述べた。「ヒスパニック系有権者の支持は、両党間でより均等に分かれていることが、ウォールストリート・ジャーナルの最新の世論調査で明らかになった。これは民主党にとって不吉な兆候だ」。

ホワイトハウスはヒスパニック系有権者たちに対して「ビルド・バック・ベター」社会支出法案を売り込もうと努力している。この法案については先月、アリゾナ州ツーソンのレジーナ・ロメロ市長、ロサンゼルス市のエリック・ガーセッティ市長、リロイ・ガルシアコロラド州上院議員議長らが声高に引用している。

さらに、バイデンがすでに署名した2つの主要法案、春に署名され、景気刺激策とその他のコロナウイルス救済を提供したアメリカン・レスキュー・プランと、最近承認されたインフラ対策について、ヒスパニック系有権者に売り込んでいる。

バイデンのメッセージを売り込むための政治的非営利団体「ビルディング・バック・ベター」 の最高戦略責任者マイラ・マシアスは 次のように述べている。「失業率は低下し、過去50年間で最も低い水準にある。約600万人分の雇用を創出した。私たちの経済は、世界のどの先進国よりも速く回復している」。

彼女は続けて次のように述べている。「進歩があったと言える。しかし一方で、日常生活において進歩のプラスのインパクトを完全に実感できていない人々がいるのも事実だ。これはむしろ、ビルド・バック・ベター法案を成立させる原動力になっている。それは、この法案が医療、処方薬、住宅、児童教育などのコストを引き下げることになるからだ」。

ホワイトハウスは、9月のヒスパニック・レガシー月間に、「build・バック・ベター」法案がヒスパニック系共同体にもたらす利点を強調するために、ヴァーチャル会議を行い、ラティーノ系の人々の人気を獲得するためのもう一つの努力を行った。

会議には、中小企業庁長官イサベル・グズマン、保健福祉長官ザビエル・ベセラ、教育長官ミゲル・カルドナ、国土安全保障長官アレハンドロ・マヨルカスなど、政権内のラティーノ系の人々が登場した。

民主党全国委員会連携担当部長兼上級報道担当を務めるルーカス・アコスタは、バイデン政権発足以来、ラティーノ系の家族のために尽力してきたと主張し、その例として、子供税額控除の拡大やラテン系中小企業の支援などを挙げた。

アコスタは次のように述べている。「来たるべき年、民主党は、バイデン大統領が彼らの生活向上に力を注ぐ一方で、共和党は一貫してその邪魔をしようとしてきたことを、ラティーノ系住民に訴え続けるだろう」。

多くのラテン系住民に人気のある社会保障制度の延長の他に、現在、法案にはヒスパニック系住民に一般的に人気のある移民に関する文言も含まれている。

ガレゴ議員のような民主党の政治家たちは、移民規定が法制化されれば、最大650万人の移民を救済できる可能性があり、好材料となる。しかし、ラティーノ系住民を投票に向かわせるために必要な特効薬ではないとも言われている。

ザピエンは次のように述べている。「“ヒスパニック系有権者からの投票”を長期的に保証するような魔法の杖や特定の問題があるとは思わない。ヒスパニック系有権者からの投票の一部でさえもそうだ。多くの時間、エネルギー、資源を費やし、彼らがいる場所で彼らと意思疎通を図る政党が、勢いを持つことになるだろう」。

(貼り付け終わり)

(終わり)
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 昨年の大統領選挙前、「アジア諸国はバイデンの対アジア外交に疑念を持っている」という内容の論稿が発表された。ここでは備忘録の意味もあって、それを紹介する。

 内容はいたって簡単で、「オバマ大統領は中国に対して融和的で関与しよう、させようとしてきたために中国を強化させた。一方、トランプ大統領は中国には対決的な姿勢で臨んだ。バイデンが大統領になったら、融和的で関与政策に戻ってしまう。こうしたことをアジア諸国は憂慮している」というものだ。

 バイデン政権のアジア政策に関しては、中国に対して対決姿勢(クアッド)を取る派のカート・キャンベルNSCインド・太平洋調整官(「アジア政策のツァーリ」と呼ばれている)と「中国とは破滅的な結果にならないに様に競争する」派のジェイク・サリヴァン大統領国家安全保障担当補佐官がいる。この2つの流れの中で、後者の流れを主にしながら、前者の対決的な姿勢があることも意識させるという構図になっている。しかし、大きな流れとしてアメリカはアジアから少しずつ引いていく。

 昨日以下のような記事が出た。

(貼り付けはじめ)

●「キャロライン・ケネディ氏、駐豪大使に…岸田氏とも交流」

2021/12/16 10:16

https://www.yomiuri.co.jp/world/20211216-OYT1T50126/

 【ワシントン=田島大志】バイデン米大統領は15日、駐オーストラリア大使にキャロライン・ケネディ元駐日大使(64)を指名すると発表した。

 ケネディ氏はジョン・F・ケネディ元大統領の長女で、オバマ政権下の2013~17年、女性初の駐日大使を務めた。オバマ大統領の広島訪問や安倍首相の米ハワイ・真珠湾訪問の実現に貢献し、当時外相だった岸田首相とも交流を重ねた。

 バイデン政権は中国への対抗を念頭に、米英豪の安全保障協力の枠組み「オーカス」を創設するなど、豪州を重視しており、ケネディ氏にさらなる関係強化を託すとみられる。

 バイデン氏は、フィギュアスケート元世界女王のミシェル・クワン氏(41)を駐ベリーズ大使に充てることも明らかにした。

(貼り付け終わり)

 キャロライン・ケネディは民主党の超名門であるボストン・ケネディ王朝のプリンセスであり、「使い勝手」の良い人物だ。キャロラインの駐豪大使指名は、「オーストラリアをしっかりアメリカ側で確保する」という意思表示であるが、ここに重要な手駒であるキャロラインを持ってこなければならないというのは、その確保が最重要でありながら、とても難しいということを意味している。そして、アメリカはオーストラリアまで「引く」ということを示している。

 上の記事にあるが、民主党のフィギアスケートの元人気選手で世界女王にもなった中国系のミッシェル・クワンは大統領選挙でバイデンを熱心に応援しており、その論功行賞ということもあるが、現在中国が影響力を増しているアフリカに対する攻めの一手の手駒ということになるだろう。政治的な動きができるかは未知数だが、クワンの将来の政界転身に向けた箔つけのための準備ということもあるのかもしれない。

 アジア諸国の意向としては「米中が本格的に対決して、自分たちに迷惑が掛かるのはごめんだ。アメリカが衰退するなら自分たちに迷惑が掛からない形で、引いていって欲しい。中国との関係は自分たちで折り合いをつけるから」ということになる。「中国怖い、アメリカがいなくなるのは嫌だよー」というのはあまりに小児病的で単純過ぎる考えだが、日本はそれが主流になっているというのが、日本外交の弱点ということになる。しかし、その裏では「中国ともきちんとつながらなくては」という「本音」も存在し、それが機能している。

(貼り付けはじめ)

アジア地域においてバイデンは信頼に対して疑問を持たれている(Biden Has a Serious Credibility Problem in Asia

-アメリカの同盟諸国はトランプ大統領とうまくやっており、彼の中国に対する強硬な姿勢に好感を持っている。そして、バイデンの勝利について懸念を持っている。

ジェイムズ・クラブトゥリー筆

2020年9月10日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/09/10/trump-biden-asia-credibility-problem/

ビラヒリ・カウシカンはシンガポールの幹部クラスの外交官を務めた。彼は物事をはっきり述べることで知られている。しかし、オバマ政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたスーザン・ライスに対するカウシカンが最近発したコメントは通常よりもかなりきついものとなった。今年8月、カウシカンはフェイスブックに「ライスが災いの種になるだろう」と書き込んだ。この時に民主党の大統領選挙候補者ジョー・バイデンがスーザン・ライスを副大統領候補者に選ぶことを考慮しているという報道が出ていた。カウシカンは、バイデンが当選して政権を担う場合に国務長官と国防長官に就任する可能性があるライスについて、中国に対して弱腰になるだろうと述べている。カウシカンは「アメリカは、気候変動における中国との協力を得るために競争を強調すべきではない、と考える人々の中に、ライスは含まれている。このような考えは国際関係の本質についての根本的な誤解である」と書いている。カウシカンはバイデンの勝利後の予測を次のように述べている。「私たちはトランプ時代について郷愁をもって振り返ることになるだろう」。

カウシカンの厳しい見方はアジア地域において知的な人々の間では例外だと考えられるだろうが、バイデン政権の外交に関しては例外ではない。アメリカのアジア地域における友人たちは、バイデンの勝利を静かに心配しており、日本やインドなどの重要な同盟諸国にとってはなおさらだ、という事実はワシントンにいる多くの人々を驚かせている。米国では、左派と右派からトランプ大統領を不快に思い、彼の政治に絶望している人々が出ている。そうした人々は、心ある外国人なら誰でもそのように考えるはずだと確信している。ヨーロッパの多くの地域ではそうかもしれない。しかし、アジアの多くの地域ではそうではない。東京、台北、ニューデリー、シンガポールなどの各国の首都の政府高官たちは、トランプ大統領の中国に対する厳しいアプローチに比較的慣れている。一方、バイデン大統領誕生の可能性が高まる中、アジアの有力者の多くは、北京に対して焦点が合わず、甘い態度をとっていたオバマ時代の不快な記憶を思い出していることだろう。その記憶が正しいかどうかはひとまず置いておいて、バイデンにはアジア地域における信用にかかわる問題があり、それを解決するのは難しいかもしれない。

民主党全国大会における演説の中で、バイデンは自身の政権の重要課題を4点挙げている。それらには新型コロナウイルス感染拡大対策や人種間の正義の促進が含まれている。中国への対処はアジア諸国の外交政策関連エリートたちの重大な懸念となっている。しかし、中国への対処はバイデンの挙げた重要課題の中に入っていなかった。今回バイデンが中国について言及しなかったことについては、東京でも注目されている。例えば4月の『アメリカン・インタレスト』誌の論説記事では、トランプに対する日本の見解がうまくまとめられていた。論説記事のタイトルは「対決的な対中国戦略の諸価値(The Virtues of a Confrontational China Strategy)」であり、日本外務省の官僚が匿名で書いたものだ。論説の中で著者の外務官僚は、オバマ時代の中国政策について、「優先的な使命は常に中国との競争ではなく、中国との関わり合いを持つことだった」と痛烈に批判している。トランプの諸政策は不完全だが、北京に対するより強硬なアプローチは歓迎されると著者は主張している。この官僚は「もし可能だとしても、トランプ大統領出現以前の世界に戻りたいと私は望むだろうか?」と問いかけている。この人物は次のように続けている。「東京にいる意思決定者の多くにとって、その答えはおそらく“ノー”だろう。なぜなら、トランプ政権下で実行が不十分でも基本的には正しい戦略を採用されている方が、オバマ政権下で実行は十分でも曖昧な戦略を採っていたことよりも良いからだ」。

公平に見て、この匿名の著者による論稿記事は日本政府の考えの一つを示している。しかし、論稿の発表には外務省の正式な承認が必要だったことは間違いなく、多くの高官の意見が反映されていると考えられる。また、2019年末に日本を訪問した際に私が聞いた話では、政府高官や外交アナリストたちは、トランプが再選されることについて、驚くほど楽観的な見方をしていた。対照的に、バイデンが当選すると、中国のパワーを管理し、抑制するための政治的意志が欠如していると多くの人が指摘するアプローチが復活するリスクがあると考えていた。

同様の思考はインド政府でも表面化している。インド外相で知性の高さで知られるスブラマニヤム・ジャイシャンカルは昨年、トランプ大統領が米印関係を損なったと考えておる人たちに反撃している。彼は「この23年の間にトランプに見られたのは、伝統的なアメリカのシステムとはまったく違うものだった。実際に、多くの分野で大胆な断固たる措置が実行された」と述べている。急速に悪化する中印関係の中で、インド政府は、トランプ大統領の混沌とした、しかし強引な反中政策を評価するようになっている。少なくとも、バイデンの登場は、インドの戦略的立場を複雑にする可能性がある。外交問題のコメンテーターであるラジャ・モハンは最近、バイデンは中国との対立を減らす一方で、トランプ大統領のロシアへの甘いアプローチを終わらせるだろうと予測している。モハンは「米露関係の新たな緊張とバイデン政権下での米中和解は、インドの諸大国との関係を確実に複雑にする」と書いている。

同様の懸念は台湾にもある。台湾の外交関係の高官たちはアメリカの対中政策の変化に敏感になっているのは当然のことだ。アメリカ合衆国保健福祉省長官アレックス・アザールが最近台湾を訪問したことはアメリカ政府との関係を深化させることになる。ワシントンに本拠を置く政策グループであるグローバル・タイワン・インスティテュートの副所長チィティン・イエは「台湾はトランプ政権第一期で利益を得た」と述べている。彼は台湾の多くの人々は「未検証の選挙公約よりも現在のコース」を支持するだろうとも述べている。

バイデン選対は、トランプの再選に安心感を持っているように見えるアジアの人々と意見が合わないだろう。多くの意味でそうするのが正しいことだ。二期目のトランプ政権は、既存の米国との同盟関係を無視した取引的なアプローチから、小さいながらも中国との軍事衝突のリスクの高まりまで、アジア地域に大きな損害を与える可能性が高い。また、バイデンへの疑念が普遍的なものではないことも事実だ。アジア地域の多くの人々は、米国の外交が対決的でなくなることを歓迎し、新たに融和(accommodation)の時代が到来することを期待している。シンガポールのリー・シェンロン首相は最近、トランプ政権ではなくバイデン政権の下で起きる可能性について次のように書いている。「米中2つの大国は、ある分野では競争をしながら、他の分野では対立が協力を妨げることのないような、共存の道を探らなければならない」と書いている。

更に言えば、バイデンは現在までのところ、オバマに比べてより強硬な対中国政策を主張してきている。今年初めの民主党予備選挙の討論会の席上、バイデンは中国の習近平国家主席を「犯罪者(thug)」と呼んだ。別の討論会では、中国を「権威主義的独裁政治(authoritarian dictatorship)」と形容した。アメリカの政治指導者たちの大多数と同様、バイデンは「中国は改革可能だ」という考えを放棄し、アメリカは、アジアに出現した競争相手である中国を打ち負かさねばならないと主張している。バイデン選対はより微かなシグナルをアジア各国に送っている。バイデンは、東南アジア諸国連合(ASEAN)への働きかけや、トランプが欠席しがちだったアジア地域の会合にバイデンが積極的に出席することを示唆している。バイデンの上級顧問の一人アンソニー・ブリンケンはツイッターに次のように投稿した。「東南アジア諸国連合は、気候変動と世界の医療レヴェルのような重要な諸問題に対処するためには必要不可欠な要素である。バイデン大統領は、重要は諸問題について、東南アジア諸国連合に出席し、関与することになるだろう」。

しかし、バイデンと彼のティームがよりタカ派的な対中国姿勢を推進する一方で、ジレンマに直面している。一つ目は人権に関してである。バイデンは、新疆ウイグル自治区に住む数百万人のイスラム教徒のウイグル族の窮状をしばしば取り上げ、この問題を北京に対する厳しいアプローチの中心に据えている。今月、チベットにも焦点を当てた厳しい言葉で、「私はアメリカの外交政策の中心に価値観を戻すことになる」と述べた。これは米国の進歩主義者にとっては魅力的なことかもしれない。アジア地域では、米国が友人に説教をしたり、民主的な改革を求めたりするという、オバマ時代の幸運とは程遠い色合いを帯びている。

さらに、気候変動問題に代表されるような第二の問題もある。バイデンは最近次のように書いている。「アメリカは中国に対して厳しい姿勢を取る必要がある。この課題に対処する最も効果的な方法は、アメリカの同盟諸国とパートナー諸国が一丸となって、中国の虐待や人権侵害に立ち向かうことである。それでも、気候変動など利害が一致する問題では、中国政府との協力を模索する」。トランプが気候問題に関心を持たないことを考えると、この緊張感がトランプを悩ませることはなかった。バイデンは気候変動問題の中国との協力を望んでおらず、民主党内からも進展を求める大きな圧力を受けています。しかし、それを実現するためには、世界最大の炭素排出国である中国への関与が必要だ。カウシカンのような批判者たちにとって、しかし、このような諸問題のリバランスがあるからこそ、バイデンは、オバマ大統領のように優先順位がバラバラになってしまうのではないかということになる。

究極的には、アジア諸国はどちらの候補者がホワイトハウスに入ろうがそれに適応するだろう。バイデンが勝利すれば、バイデンに疑問を持つ人々の懸念をすぐに和らげることができるだろう。トランプ時代の予測不可能性に郷愁を持つことはほぼないだろう。しかしながら、現在のところ、アジア諸国がバイデンに抱いている疑念は本物である。バイデンにとって最も大事なことはアメリカの有権者たちからの支持を得ることである。しかし、バイデンが今後の外交政策の中心にアジアの米国との同盟諸国との協力を据えていることを考えると、もう少し安心感を与えるべきではないか。

=====

対決的な対中国戦略の諸価値(The Virtues of a Confrontational China Strategy

YA

2020年4月10日

『ジ・アメリカン・インタレスト』誌

https://www.the-american-interest.com/2020/04/10/the-virtues-of-a-confrontational-china-strategy/

ある日本の外交官僚は、トランプ政権の中国に対する対決的な(confrontational)アプローチの一部を批判しているが、バランス的に見て、オバマ大統領の関与と融和(engagement and accommodation)に比べて、ほぼ全ての面で好ましいと考えている。

日本の政策立案と実行に関わるエリートたちの間にある、ドナルド・トランプ大統領に対する見方は複雑だ。外交政策の専門家たちに現在のホワイトハウスの主ジョー・バイデンについて質問すれば、批判すべき多くの点を見つけるだろう。しかし、「オバマ大統領時代が懐かしいか」と質問すれば、同じ人たちのほとんどが否定的な回答をするだろう。いや、それ以上かもしれない。

日本の政策担当者たちは、オバマ大統領のいわゆる「21世紀型アプローチ」と比較して、19世紀型の、中国の「生のパワーで地域の全ての国々を威嚇し、自分たちの勢力範囲を拡大する」というやり方と対比して、絶望した。オバマ大統領が、ライバルではなく責任あるステークホルダー(共通の利害を持つ者)として、国際問題で中国と協力する可能性について話している間、中国政府は尖閣諸島に軍艦を派遣し、スカボロー礁からフィリピンを追い出し、南シナ海に人工島を作ることに邁進した。冷戦終結後、日本はアメリカに対して中国に対する警告を発し続けてきた。トランプ大統領には様々な欠点があるが、日本はついにホワイトハウスに、この課題を正しく認識し、評価してくれる人を得たようになった。

日本はこれまでアメリカの楽観的な中国に対する関与政策に公然と反対したことはないが(最初に関与政策が始まったのはクリントン政権下だった)、日本の中国研究者たちは、それによって中国が自由主義的な民主政治体制国家になるなどとは考えていなかった。日本の中国専門家の多くは、2000年の経験に基づいて、「中国はその文化や性質を変えることはない」と主張している。中国は昔も今も将来も中国なのだ。紀元前5世紀の孔子(Confucius)の時代から、中国人にとって世界には一つの天(heaven)と一つの支配者(ruler)、すなわち中国の皇帝(Emperor of China)しかいない。中国人以外の「野蛮人(barbarians)」は、中国の優位性を認めなければならない。

日本はこのような考え方に従ったことはない。日本のインド太平洋に対する歴史的なアプローチは、自国の主権を維持しつつ、近隣諸国との経済的、文化的、そして政治的な交流を維持することであった。近年の中国の台頭に直面しても、日本は主権と繁栄を維持する決意を変えていない。それを可能にしているのは、日米同盟を中心とした現在の国際秩序と地域のバランス・オブ・パワー(力の均衡)関係だ。日本はこの現状を維持したいと考えている。

中国は、少なくとも1992年に領土法(Territorial Legislation)を制定し、尖閣諸島や南シナ海の島々を「中華人民共和国の陸上の国土」とすることを一方的に宣言して以来、一貫して現状に異議を唱えてきた。クリントン政権下での融和の試みが実施された後、ブッシュは中国からの挑戦を真剣に受け止める覚悟を持って大統領に就任した。2001年9月に発表されたブッシュ政権初の「四年ごとの国防計画見直し(Quadrennial Defense Review)」では、初めて中国の挑戦に言及し、「アジア地域に強大な資源基盤を持つ軍事的競争相手が出現する可能性がある」と述べている。911同時多発テロ事件が発生した2001年9月、日本とアメリカは、国連総会期間中に毎年行われている両国の外相・国務長官と防衛相・国防長官の会談で中国について議論する計画を立てていた。中国はすぐにアメリカの国際規模の反テロリズム活動を支援することに同意し、アメリカが他の場所に集中している間、北京は少なくとも10年間は近代化(modernization)の努力を続けることができた。中国は、老朽化した軍隊の更新と近代的なパワープロジェクション能力の開発に多額の投資を始め、近代の中国では初めてとなる大規模なブルーウォーター・ネイビーを構築した。中国は、時代遅れの軍隊の刷新と近代的な戦力投射(power projection、戦力の準備、輸送、展開)能力の開発に多額の投資を始めた。近代の中国では初めてとなる大規模な外洋海軍(blue water navy、世界的に展開できる海軍)を構築した。そして、中国はその新しい能力を活用することに躊躇しなかった。南シナ海の前哨基地は徐々に建設され、機能が高められ、2008年からは尖閣諸島周辺の日本の領海に巡視船(patrol vessels)を送り込むようになった。

政権の座に就いたオバマ大統領は、ブッシュ大統領と異なり、より強硬な姿勢を取ることはなかった。オバマ政権は、リベラル派の知識人たちが主張していたことをそのまま実行していた。それは、世界規模の諸問題での協力を重視し、中国のいわゆる核心的利益[core interests](台湾、チベットや新疆での人権侵害など)には配慮するというもので、中国をよりリベラルなアクターに育て、既存の国際秩序を支えるアメリカの負担を分かち合うことを期待した。政権最後の日まで、オバマ政権は中国が「変更可能(shapeable)」であると信じていた。

オバマ政権期、政策のコンセンサスは一枚岩ではなかった。ワシントンの中国専門家たちの中には、関与の有効性に警告を発する人たちもいた。例えば、ジェイムズ・マンの2007年の著作『中国ファンタジー:資本主義が中国に民主政治体制をもたらさない理由』では、「関与」の概念から導き出される中心的な問題は次のような疑問だ。「誰が誰に関与するのか?」というものだ。我々は本当に中国と関わっているのか、それとも中国が自らの利益のために国際システムと関わっているのか?また、誰が誰を変えているのか?私たちが中国を変えているのか、それとも中国の行動に合わせて国際システムが変わっているのか?アメリカは、中国が立ち直ることに賭けて、かなりの「防御(ヘッジ、hedge)」を行ったと言える。オバマ政権は、日米同盟を強化し、オーストラリアやフィリピンとの軍事協力を強化し、インドやベトナムを緊密なパートナーとして迎え入れた。これらの取り組みは、東京をはじめとするアジアの首都では歓迎された。

しかし、優先されたのは常に中国への関与だった。2016年のオバマ大統領の中国訪問がその具体例だ。2016年7月、中国政府は、南シナ海におけるフィリピンの主張を圧倒的に支持したハーグの国際法廷の判決を、"単なる紙切れ(just a piece of paper "と述べて無視した。その1カ月後の8月には、中国は尖閣諸島に200300隻の漁船を派遣していた。その直後に杭州を訪れたオバマ大統領は、平和維持、難民、海洋リスクの軽減と協力、イラク、宇宙協力、アフガニスタン、核の安全と責任、野生生物の密輸対策、海洋協力、開発協力の強化、アフリカ、グローバルヘルスなど、米国が北京との間で優先する事項を反映したファクトシートを発表した。中国の強圧的で不安定な行動を検閲することについては言及されなかった。その1カ月後の2021年8月には、中国は尖閣諸島に200から300隻の漁船を派遣していた。その直後に杭州を訪れたオバマ大統領は、平和維持、難民、海洋リスクの軽減と協力、イラク、宇宙協力、アフガニスタン、核の安全と責任、野生生物の密輸対策、海洋協力、開発協力の強化、アフリカ、国際的な医療など、アメリカが中国との間で優先する事項を反映したファクトシートを発表した。中国が強圧的で不安定な行動についての文言を検閲していることについては言及されなかった。

これが、トランプ大統領当選の地域戦略上の背景となった。日本はもちろん、トランプ当選という結果に誰よりも驚いた。しかし、日本政府はすぐに行動を起こした。安倍晋三首相はすぐにニューヨークに飛び、トランプタワーのオフィスでトランプ次期大統領に会った。これは前例のないリスクの高い行動だった。安倍首相は国際問題についてトランプへの対策を講じ、将来のカウンターパートとの関係を構築し、地域の重要性と中国がもたらす課題について明確なメッセージを伝えることができ、日本にとってこの賭けは成功した。2017年2月、大統領就任直後のトランプと会った安倍首相は、その範囲と野心において前例のない共同宣言(joint declaration)に合意しました。そのインパクトは2点あった。

第一に、この共同宣言は中国に対して強力な警告シグナルを発した。両首脳は、日本政府が考えていた、アジア地域の平和と安定の基盤となる基本原則全てを確認した。米国は、インド太平洋地域への新たな深い関与、領土侵略に対する核抑止力(nuclear deterrence)、そして朝鮮半島の非核化(denuclearization of the Korean Peninsula)の追求に再び取り組むことを表明した。両首脳が発表したコミュニケ(communiqué)の中には、「アメリカはアジア地域でのアメリカ軍の存在を強化し、日本は日米同盟におけるより大きな役割と責任を担うことになる」と書かれており、さらに両国の外務大臣・国務長官、防衛大臣。国防長官に「両国のそれぞれの役割、任務、能力を見直す」よう指示した。大きな構図では、トランプ自身が合意し、それ以外の「詳細」はすべて上級閣僚が担当することになった。この最初の宣言は、日本だけでなく、アジア地域全体の同盟国やパートナーを安心させた。

第二に、二国間同盟の運営に関する意思決定を変えたことだ。宣言は共同で作成されたが、その内容は日本側が同等かそれ以上に貢献した。北朝鮮への最大限の圧力、自由で開かれたインド太平洋、東南アジアの重要性など、これらの概念は全て、ある程度日本側からの提案であった。アメリカ人の中には、日本にとってのこの転換期の意義を見落としがちな人もいるかもしれない。第二次世界大戦終結以降、日本の外交政策は多かれ少なかれ米国の意向と影響力に左右されてきた。日本の官僚や政治家たちは、日本の意思決定に国際的な圧力を利用することに慣れており、「外圧(Gai-atsu)」という言葉が存在する。今回の転換は心理的にも重要な突破口となった。日本の政府関係者は、これまでのように意見を求めたり批判したりするのではなく、インド太平洋における地政学的課題に対する戦略的方向性やアプローチを、アメリカの政府関係者たちと共同で策定するという初めての試みを行ったということになる。

それ以来、トランプは、習近平との会談の前後や、北朝鮮への対話を開くことを計画する際など、重要な場面で安倍に電話をかけている。メディアの報道によると、2019年5月時点で、安倍首相とトランプ大統領は、10回会談を持ち、30回電話で話し、4回ゴルフをしているということだ。電話での会話を基に測定した、両者の関係の量は、安倍首相がオバマ大統領との関係の数の4倍になっている。これは、トランプ大統領が外国の指導者の間で築いた最も親密な関係であることは間違いない。

しかし、トランプ政権による対中対決政策の実施は、多くのアメリカ人の中で大きな混乱を引き起こしている。ジョー・バイデン元副大統領が最近の『フォーリン・アフェアーズ』誌に掲載した論稿の中で主張したように、「その課題(中国)に対処する最も効果的な方法は、アメリカの同盟諸国とパートナーと共に団結して統一戦線(united front)を構築して、中国の人権を無視し、攻撃的な行動に対峙することだ」ということになる。トランプ大統領は、中国に対してだけでなく、同盟諸国やパートナーに対しても経済的な影響力を行使したことで、アメリカの安全保障の保証や約束の信頼性について、アジア地域全体の多くの人々の間で疑念が生じた。日本も例外ではない。2020年1月に実施された日本経済新聞の最新の世論調査では、日本人の72%が、まさにこの不確実性のために、トランプ大統領の再選を望んでいないことが明らかになった。

それでは、可能ならば、トランプ出現以前の世界に私たちは戻りたいのか?東京の多くの政府関係者にとって、その答えはおそらく「ノー」だろう。その理由は、実行されていないが基本的に正しい戦略は、実行されているが曖昧な戦略よりも優れているからだ。私たちは、アメリカが再び融和政策に戻ることを望んでいない。アメリカの融和政策は疑いなく、日本や他のアジア諸国の犠牲の上に成り立つものだ。

私たちは、日米同盟が取引の上に成り立っているものだとは考えていない。つまり、私たちは、日米の国益によりよく応えると同時に、米国のより広い利益にも資するような同盟関係を望んでいる。より平易な言葉を使えば、中国に明確に焦点を当てた同盟は、曖昧で焦点の定まらない同盟よりも、あるいは最悪の場合、最大の課題に立ち向かうことを恐れている同盟よりも、優れている。その負担をどう分担するかは、同目に関するマネジメントの問題だ。言い換えれば、プロセスの問題ということになる。同盟は、共通の国益を実現するための手段であり、目的ではないことを再確認することが重要だ。

特に西ヨーロッパ諸国は、このような計算に戸惑うかもしれないが、これはヨーロッパが中国との関係において、経済的な取引を優先させ、中国が近隣に力を行使しても指導者が見て見ぬふりをしてきた結果に過ぎない。中国の威圧を受ける側の国にとって、アメリカの対中強硬路線は、米国の政策のどの側面よりも重要だ。台北、マニラ、ハノイ、ニューデリーなどにいるアジア各国のエリートたちは、トランプ大統領の予測不可能な取引を重視する方法は、米国が「責任あるステークホルダー(responsible stakeholder)」になるように中国をおだてることに戻る危険性に比べれば、より小さな悪であると計算している。ある高名な研究者は、「アジア各国のエリートたちは、奇妙なことに、トランプの2期目について悲観的になっている(トランプが当選できないと考えて残念がっている)」と主張している。

実際には、中国からの継続的な圧力に直面しているアジア諸国は、この地域における米国の深い関与とアメリカ軍の存在の継続を切望しており、日米同盟はその重要な構成要素となっている。トランプ大統領が同盟国からどれだけ搾り取れるかを自慢することについては、静かな憤りを感じつつも、ほとんどの国は、米国の深い関与が堅固であることを条件に、負担の分担の見直しを検討する用意があるとしている。ここには、何世代にもわたって安定性を保証できるような、アジア地域の健全な新しい活力を生み出すための真のチャンスが存在している。

もちろん、中国に対してバランスを取りながら対峙する戦略のより洗練された実行は大いに歓迎されるべきだ。それは日本のような考えを同じくする同盟諸国それぞれの強みと支援を活用することだ。2021年1月に誰がホワイトハウスの主になろうとも、日本政府はアメリカと対等な立場で二国間の戦略的議論を継続し、インド太平洋における米国の優位性とアメリカ軍の存在を維持し、我々全員が大きな恩恵を受けている既存のルールを基盤とする国際システムを支持するという現在の戦略目標を賢明に実行することに、共通の努力を傾けることができるように期待している。

(貼り付け終わり)

(終わり)
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 アメリカ民主党にはケネディ家という超名門の家系がある。格差縮小や福祉を訴える民主党内に「王朝」のような、「貴族」のような存在があるのは甚だおかしいことだが、日本でも世襲で100年にわたってずっと代議士を出しているような家もある。政治が一種「家業」「稼業」となることはある。

 ニューヨーク民主党の名門と言えばクオモ家だ。そのクオモ家にスキャンダルの連鎖が襲い、その権威が失墜してしまった。今年8月、第56代ニューヨーク州知事を務めていたアンドリュー・クオモ(Andrew Cuomo、1957年-、64歳)が、性的スキャンダルで辞任した。そして、12月上旬、弟で、CNNのニューズ番組のアンカー(ニューズキャスター)を務めていたクリス・クオモ(Chris Cuomo、1970年-、51歳で死)がCNNから解雇された。こちらは兄の性的スキャンダルに関して、兄を守ろうとして、メディア各社に探りの電話をしたり、兄の補佐官に連絡を取り、「手助けをさせて欲しい」と申し出たりしていたことが明らかになったための解雇だ。また、弟クリス自身にも性的スキャンダルが浮上している。

chriscuomoandrewcuomo501 

クリス・クオモ(左)とアンドリュー・クオモ

アンドリュー・クオモは、ニューヨーク州知事として、新型コロナウイルス感染拡大で名前を上げた。ドナルド・トランプ大統領との舌戦も記憶に新しいところだ。クリス・クオモはハンサムなニューズキャスターとして脚光を浴び、2013年からはCNNで自分の名前を冠した報道番組を持ち、その番組の視聴率が高いことで、更に注目を浴び、人気が上がっていた。兄アンドリューに11名の女性に対する性的スキャンダルが浮上し、アドリューは8月に知事を辞任した。このスキャンダルをめぐり、クリスは兄を助けようとして、介入をしたために、こちらもCNNから解雇となった。

アンドリュー・クオモとクリス・クオモの父は、第52代ニューヨーク州知事を務めたマリオ・クオモ(Mario Cuomo、1932-2015年、82歳で死)だ。父マリオ、息子アンドリューと父子でニューヨーク州知事を務めた。父マリオ・クオモと言えば、1984年の民主党全国大会で行った演説が名演説として、今でも語り草になっている。このブログでも以下のように紹介している。演説の映像とその訳文を掲載している。興味がある方は是非お読みいただきたい。

mariocuomoandrewcuomo501

マリオ・クオモ(左)とアンドリュー・クオモ

※2015年1月3日付記事「元ニューヨーク州知事マリオ・クオモが亡くなりました。彼の1984年の演説は今の日本の状況を話しているかのようです」↓

http://suinikki.blog.jp/archives/19838549.html

 ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモの新型コロナ感染拡大対策は評価が高く、リベラルな人々からの支持も高かった。日本でも、日本政府の無能ブリとの対象で良く取り上げていた人々がいた。しかし、そうした人々の期待を裏切り、そうした人々を沈黙させることになってしまった。弟クリスも兄を守ろうと不適切な行動をし、自身にも性的スキャンダルが浮上するということになった。ニューヨークの名門クオモ家の権威は失墜した。この裏には、民主党内の激しい権力争いがあるだろうと推測されるが、全貌が明らかになるかは分からない。

(貼り付けはじめ)

●「CNNスター司会者に無期限の停職 兄のクオモ前知事をセクハラ問題で支援」

2021121

BBC

https://www.bbc.com/japanese/59486985

CNNのスター司会者クリス・クオモ氏が、性的虐待を告発された兄で前ニューヨーク州知事のアンドリュー・クオモ氏を支援したとして、無期限の停職処分を受けた。CNN30日、発表した。

クリス氏による兄に対する支援をめぐっては、ニューヨーク州のレティシア・ジェイムズ司法長官が29日に新たな文書を公表していた。

CNNはその文書によって、「彼が兄の対応において、私たちが知っていたよりも多大な関与をしていた」ことが判明したと説明した。

アンドリュー氏は、部下に性的嫌がらせをしたと検察当局に指摘され、8月に州知事を辞任した。

クリス氏が政治家の兄を陰で支援していたことは、ジャーナリストの倫理に反する行為だと、メディア界で広く考えられている。

■より大きな役割求める

州司法長官が公表した数千ページに及ぶ文書によると、クリス氏はアンドリュー氏の弁護で自分がより大きな役割を果たすのを認めるよう、アンドリュー氏のスタッフに繰り返し求めた。

クリス氏は3月、アンドリュー氏の秘書官だったメリッサ・デローザ氏に、「私のことを信頼してほしい」、「私たちは取り返しのつかない間違いを犯している」などとメッセージを送ったという。

CNNはもともと、クリス氏がアンドリュー氏について報じることを禁止していた。しかし昨年、ニューヨーク州で新型コロナウイルスが大流行したのを受け、一時的にその禁止を解いた。

クリス氏は自らの番組でアンドリュー氏にインタビューし、知事のリーダーシップをたたえるようになった。

■「深刻な疑問生じた」

CNNは当初、こうしたやりとりを擁護していた。しかし30日になり、「(司法長官が公表した)文書については知らなかったが、その内容から深刻な疑問が生じた」とする声明を出した。

「クリスは兄のスタッフに助言をしたと認めた。彼はCNNのルールを破ったし、私たちはそのことを公表した」

「しかし、私たちは彼の独特の立場と、仕事より家族を優先することに理解を示した」

「だが、今回の文書は、彼が兄の対応において、私たちが知っていたよりも多大な関与をしていたと指摘している」

■兄側とのやりとり

クリス氏がアンドリュー氏のスタッフと関わりを持っていたことは、多数のメールやメッセージから明らかになっている。

クリス氏はアンドリュー氏の上級補佐官に、「私に準備の手助けをさせてください」とメッセージを送っていた。また、今後どのような疑惑が出てくるのか、他の米メディアに連絡を取って探ると約束していた。

アンドリュー氏の秘書官だったデローザ氏がクリス氏に対し、同氏の「情報源」を使って調べるよう依頼していたこともあった。

これに対しクリス氏は、「了解」と返事をしていた。

■セクハラ疑惑

州司法当局は3月、アンドリュー氏が部下の女性11人に対してセクハラをしたり体をまさぐったりしていたと、捜査で結論づけた。

アンドリュー氏は昨年、州知事として新型ウイルス関連の記者会見を連日開き、米メディアで称賛された。しかしセクハラ疑惑が浮上すると、ジョー・バイデン大統領を含め、所属する民主党の関係者たちから辞任を求める声が高まった。

クリス氏は5月、アンドリュー氏側と話し合いをしていたことについて謝罪。性的虐待の被害者を全面的に擁護する立場だと強調した。

クリス氏はCNN2013年に入社した。同氏とアンドリュー氏の父親もかつて、ニューヨーク州知事(民主党)を務めた。

====

報告:CNNによるクオモの解雇は性的ハラスメント告発の中で実施された(Cuomo's firing from CNN came amid allegation of sexual misconduct: report

ドミニク・マストランゲロ筆

2021年12月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/media/584401-cuomos-firing-from-cnn-came-amid-allegations-of-sexual-misconduct-report?rl=1

CNNがクリス・クオモを解雇した。今回の解雇は、クリス・クオモに関連する性的スキャンダルについて申し立てをCNNが認識してわずか数日後のことだった。

クオモは土曜日午後にケーブルニューズ・ネットワークであるCNNから解雇された。火曜日から出演見合わせとなっていた。その前日の月曜日に、クリス・クオモの兄である前ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモの性的スキャンダルに関する州当局の捜査の一環として文書が発表された。その文書によって、クリス・クオモが兄である知事の側近たちと協力して性的スキャンダルの疑惑から守ろうとしたことが明らかになった。そのために火曜日に出演見合わせ処分を受けた。

『ニューヨーク・タイムズ』紙は水曜日、弁護士のデブラ・S・カッツは、前ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモを違法行為で訴えた女性の代理人を務めているが、カッツがクリス・クオモに対する性的な違法行為について訴える準備をしている別の依頼人がいることをCNNに告知した、と報じた。

カッツはニューヨーク・タイムズの取材に対して、CNNではないあるニューズネットワークの下級スタッフによって訴えが準備されており、「この件はアンドリュー・クオモ前知事の件とは無関係だ」と述べた。

日曜日、CNNの広報担当者は、本誌に出した声明の中で次のように述べている。「クリス・クオモが兄を守るために行った行動に関して私たちが受け取った報告書に基づいて、私たちは契約を廃棄するための理由を得た。今週、クリスに関する新たな疑惑が寄せられ、私たちはそれを真摯に受け止め、直ちに行動を起こすことを遅らせる理由はないと考えた」。

カッツは日曜日に発表した声明の中で次のように述べている。「金曜日までに、私はCNNと私の依頼人の準備中の訴訟についての文書による証拠を与えることに関して、そして、依頼人をCNNの社外弁護士とのインタヴューに応じられるようにすることについて議論を行った」。

カッツは次のように述べている。「私の依頼人が今回訴訟準備を行いそれを公表したのは、彼女が自分の経験と関連書類を共有することで、他の女性を守ることができると考えたからだ。彼女は今後もCNNの調査に協力する。事件の性質上、彼女は匿名を希望している。この決定を尊重していただきたい」。

CNNは、土曜日午後にクリス・クオモを解雇した時、同社はクリス・クオモの行動に関して「尊敬を集めるある法律事務所が検証を行って」、その報告書を受け取っていた、と述べた。

「検証の過程で、新たな情報も明らかになった。今回の解雇で終わりにせず、私たちは適切な調査をこれからも行っていく」とCNNは述べた。

クリス・クオモの広報担当者は、ニューヨーク・タイムズに宛てた声明の中で、性的な違法行為について否定した。

クリス・クオモの広報担当スティーヴン・ゴールドバーグは、「これら匿名の告発の内容は真実ではない」と述べた。

土曜日に解雇処分となった後、クリス・クオモは「これは私が望むCNNでの時間の終わり方ではない」と述べた。

彼は声明の中で次のように述べている。「しかし、私がなぜ、どのようにして兄を助けたのかは、すでにお話した通りだ。このようなことになって残念であるが、クオモ・プライムタイムのティームと、最も競争の激しい時間帯にCNNのナンバーワン番組として行った仕事を、これ以上ないほど誇りに思っている。私はティームの皆さんとおかげだったと深く感謝している。そして、本当に重要な仕事をしてくれた特別な人々のティームから離れることを寂しく思う」。

クリス・クオモが解雇されたのは、ゴールデンタイムのケーブルニューズ司会者として、8月に州知事を辞任した兄の疑惑について、当初はメディア各社に「電話をかけたことなどない」と視聴者に語っていたクオモに対して、それが嘘だと分かり、社内外からの圧力が高まったことが原因となった。

(貼り付け終わり)

(終わり)
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ