古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

2022年02月

 古村治彦です。

 ロシアによるウクライナ侵攻に対して欧米諸国を中心に様々な制裁措置が実施される。ロシアの国際金融からの締め出しや各国に持つ資産凍結などによって、ロシア経済はダメージを受けるだろうが、多くの人々が予想しているように、制裁が一枚岩ではないので、その効果は限定的になってしまうだろう。中国やインドが反対もしくは慎重姿勢を見せているので、それらの国々が制裁を行わない、もしくは制裁のレヴェルが低いとなると、ロシアにとっては抜け道となる。

 アメリカで実施された世論調査の結果によると、アメリカ国民の圧倒的多数が制裁には賛成している。しかし、昨年からの高いインフレーション率と石油価格の高止まりで生活が苦しくなっている中で、経済制裁によって更なる価格上昇になるのであれば制裁に反対という人の数は増える。また、約半数がウクライナ問題はアメリカにとって関係ないとも答えている。だから、アメリカ軍の派遣や空爆に反対の割灰は過半数を超えている。

 ロシア製品のボイコット、具体的にはアメリカの各州でウォッカの販売中止が続いているが、それがどれほどの効果を持つかと言われると正直それほどのことはないだろうと思われる。象徴的な行動ではあるが、実際の効果は期待できない。イラク戦争の際に、フランスが反対したことを受け、フレンチフライをフリーダムフライに改名したという哀しく滑稽エピソードを思い出す。

 ロシアは憎いが自分たちの生活もあるというアメリカ国民の実感が今回の世論調査の結果に表れている。

(貼り付けはじめ)

ウクライナ危機の中、ロシアに対する否定的な見方は冷戦時代の水準に近づく:世論調査(Negative views of Russia near Cold War levels amid Ukraine crisis: POLL

-エネルギー価格が上昇するなら制裁への支持は半数に減少。

ゲイリー・ランゲ筆

2022年2月26日

ABCニューズ

https://abcnews.go.com/Politics/negative-views-russia-cold-war-levels-amid-ukraine/story?id=83108605

ロシアに対する否定的な見方は、冷戦時代終盤のレヴェルまで高まっており、ロシアのウクライナ攻撃に対する制裁をアメリカ国民の幅広い層が支持している。ただし、この制裁によってアメリカのエネルギー価格が上昇するということになると支持は半数にまで下がる。

一方、ジョー・バイデン大統領は、ABCニューズと『ワシントン・ポスト』紙の世論調査で、この状況への対応について肯定的な評価よりも否定的な評価を得た。33%が支持、47%が不支持で、残りは分からないと答えた。

より広い意味では、バイデン大統領の下で世界におけるアメリカの指導力が弱まったと答えた人の割合は48%と半数近くになった。強くなったと答えた人の2倍になった。また、危機管理に対する信頼度については、43%対52%となり、この1週間の情勢を考えると微妙な結果となった。

アメリカとヨーロッパの同盟諸国がロシアに経済制裁を行うことについて、67%が支持し、20%が反対、残りは分からないと答えた。しかし、バイデンが警告したように、制裁でエネルギー価格が上昇する場合、支持は51%に低下し、33%が反対となった。これは、過去40年近くで最も高いインフレーション率という経済面での不満を反映している。

washingtonpostabcpolls202202504
今回の世論調査は、ロシアがウクライナを威嚇し、木曜日に実際に侵攻した期間を含む、日曜日(2月20日)から木曜日(2月24日)の夜にかけて実施された。危機の進展に伴い、人々の考えや態度も変化していく可能性がある。

最も顕著なのは、ロシアに対する見方である。ロシアが2014年にクリミアに侵攻した数カ月後には77%がロシアを非友好的もしくは敵として見ると答えた。今回もそれとほぼ同程度となり、80%がロシアはアメリカに対して非友好的もしくは敵だと考えており、1983年(当時はソ連として測定)以来最も高い数字となった。

今回の世論調査の結果では、ロシアをアメリカの敵と考える人が41%となっており、2000年代初頭と1990年代初頭の一桁台から同様に上昇している。

ランガー・リサーチ・アソシエイツがABCの依頼を受けて実施した今回の世論調査では、ロシアをアメリカに対して友好的(または同盟国)だと答えたのはわずか12%だった。これは、2002年(911事件後の連帯の時期)の62%や、ソヴィエト連邦崩壊の2年後の1993年の66%から大きく低下している。

washingtonpostabcpolls202202505

●各グループ(Groups

民主党支持者(86%)、無党派層(81%)、共和党(78%)と、大多数がロシアを「非友好国」または「敵国」と回答した。リベラル派、穏健派、保守派のいずれでも80から〜88%がロシアを敵視しており、通常なら意見が分かれる、各グループの間で異例の一致を見せている。

民主党支持者の79%が制裁を支持し、その数字は無党派層で63%、共和党支持者で62%と減少する。制裁がエネルギー価格の上昇をもたらす場合、制裁への支持は、インフレーションのために既に経済的苦境にある人々の間では、苦境にない人々に比べて15ポイント低くなっている。

バイデン個人については、通常通りの深刻な党派による分裂に戻る。国政にとって重要なグループである無党派層はバイデンに対して否定的な見方をしている。民主党支持者の66%がバイデンの現在の状況への対処を支持しているが、無党派層で30%、共和党支持者で8%にとどまっている。その代わり、共和党支持者の75%と無党派層の54%が不支持で、民主党支持者の不支持は13%となった。残りは態度を未決定と答えた。

washingtonpostabcpolls202202506
危機対処に対するバイデンへの信頼や、アメリカの世界規模での指導力についても、同様に意見が分かれている。後者については、共和党支持者の82%がバイデンの下で世界におけるアメリカの指導力が弱くなったと答え、無党派層の53%もそのように答えたのに対し、民主党支持者でそのように答えたのは11%だった。

2017年と2018年に、ドナルド・トランプ大統領の下での米国の指導力について同じ質問をしたところ、こうした分裂は基本的に逆転した。しかし全体としては、トランプ大統領時代に最も良かった数字が30%で、それだけの人々がアメリカの指導力は強くなったと答え、現在のバイデン大統領の23%よりも高い数字となった。

●方法論(Methodology

今回のABCニューズとワシントン・ポスト紙の共同世論調査は、2022年2月20日から24日にかけて、全国の成人1011名の無作為サンプルで選び出し、固定電話および携帯電話を使って、英語とスペイン語で実施された。結果は、デザイン効果を含めて4ポイントの誤差がある。回答者の党派別の割合は、民主党・共和党・無党派がそれぞれ27・26・40となった。

今回の調査は、ニューヨーク州ニューヨーク市のランガー・リサーチ。アソシエイツがABCニューズのために制作し、サンプリングとデータ収集はマサチューセッツ州ロックビル市のアブト・アソシエイツが担当した。

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アメリカ国民の大多数が対ロシア制裁を支持:世論調査(Broad majority of Americans support Russia sanctions – poll

ジェイソン・ランゲ筆       

2022年2月24日

ロイター通信

https://www.reuters.com/world/broad-majority-americans-support-russia-sanctions-poll-2022-02-24/

ワシントン発(2022年2月23日、ロイター通信)。アメリカ国民の3分の2以上が、アメリカは、ロシアがウクライナ国境沿いのロシア軍を増強するならば、追加の制裁を科すべきだと考えている。ロイター通信・イプソスが水曜日に発表した世論調査の結果、明らかになった。

世論調査に回答した人の約半数は、ジョー・バイデン大統領の危機への対処を支持しないと答え、全体的な支持率の低さと同程度の割合、48%がウクライナ問題はアメリカには関係ないと答えた。

バイデン大統領は、ロシアがウクライナへの侵攻を開始した場合、大きな代償を払うことになると宣言しているが、アメリカ軍を紛争に関与させることはないと表明し、約束している。

今回の世論調査は、火曜日と水曜日(2月22日と23日)にオンライン上で実施された。今回の世論調査の結果によると、アメリカ国民の約69%(共和党支持者と民主党支持者の過半数)がロシアへの追加の制裁を支持している。

バイデン大統領は火曜日、ロシアの企業や個人に対する措置を強化し、ロシアの銀行2行を事実上、米国の銀行システムから締め出した。

今回の世論調査の結果によると、ロシアの侵攻からウクライナを守るためにアメリカ軍を派遣することには62%が反対しており、共和党支持者の間で反対が最も強かった。また、空爆についても過半数が反対した。

2022年11月8日の中間選挙で連邦議会の過半数の議席獲得を目指す共和党所属の議員たちは、バイデン大統領のプーティン大統領への対応はあまりにも小規模すぎて、かつ、遅すぎたと批判している。

世論調査では、バイデン大統領の危機対応を支持した共和党支持者はわずか12%だった一方で、民主党支持者は58%に上った。

現在のところ、危機の原因がバイデンだという批判を行っているアメリカ国民は比較的少数にとどまっている。

世論調査によると、民主党支持者の過半数、共和党支持者の約半数を含む、国民の約半数が、火曜日にロシア軍にロシア民族分離主義勢力が独立を宣言下ウクライナ領土への侵攻を命じたプーティン大統領を非難している。バイデンに責任があると答えたのは、共和党支持者の間でも25%に過ぎなかった。

世論調査によると、制裁に対しては幅広い支持がある一方で、燃料やガスの価格を上昇するにしても、制裁は実行する価値があると答えたアメリカ国民は約半数にとどまった。ロシアは主要な石油・天然ガス生産国であり、紛争に対する懸念から、一部の石油契約の価格は2014年以来の高水準に達している。

世論調査は、全米においてオンライン上で、英語を使って実施された。民主党支持者420名、共和党支持者394名、無党派131名を含む成人1004人から回答を得た。結果の信頼性区間(精度の尺度)は4ポイントだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 先ほどの速報で、ウクライナが前提条件なしでロシア側と交渉を行うと発表した。場所はベラルーシで行われるということだ。恐らく停戦交渉ということになるだろう。双方がこれ以上の犠牲者を出さず、かつウクライナ国内でインフラや建物、国民の財産の破壊が行われることなく、避難した人々も何とか自宅で日常に近い形で生活できるようにすることが重要だ。

ロシアがどのような条件を提示するか。それによっては交渉が決裂する可能性もあるが、ウクライナが前提条件をつけずに交渉に臨むということはかなりの譲歩も覚悟の上ということであろう。なんとも残念な結果であり、ウクライナとウクライナ国民には痛ましいことだ。しかし、こうした状況を引き起こしたのは、ロシアと西側諸国双方の勝手気ままな火遊びに原因がある。厳然たる事実はロシアの侵攻に対して、ウクライナに助太刀をする大国は存在しなかったということだ。そこまでの覚悟がなかったとも言えるし、火遊びを本格的な大火事にすることを避けたとも言える。

 ロシアに対しては当然のように各種の制裁が科される。それを積極的に行う国もあるし、そうではない国もある。それぞれに事情がある。アメリカやヨーロッパ諸国につき従わねば国が成り立たないというところもあるし、そうではないというところもある。国際社会の対応は一枚岩とはいかなくなった。それだけロシアに対する制裁の効果も薄くなってしまうということになる。

 アメリカはロシアからの原油の輸入を停止すると発表した。これまでもアメリカ国内の石油価格の高騰により国民生活は圧迫を受けてきた。それに対する無策ぶりでジョー・バイデン大統領の支持率は低迷してきた。今回の対ロシア制裁によってアメリカ国内の石油価格は更に上昇するだろう。しかし、今回は「対ロシア制裁という意義があるので我慢せよ」とアメリカ国民に堂々と自分の無策ぶりを棚に上げて迫ることができる。「世界大戦が始まるよりはずっと良いでしょ」と脅しをかけるような形で、何でもやり放題ということにもなる。更には、アジアやヨーロッパ諸国に対して、「自分たちの防衛費も更に増額してアメリカ製の武器を買えよ」と迫ることもできる。一種の「ショック・ドクトリン」だ。鈍重に構えている国や指導者が賢く、ワーワーとお勇ましいことを言っている国や指導者はアホということになる。日本は残念ながらアホのカテゴリーに入る。

 ウクライナ国内での戦闘が早く集結することを望む。しかし、その終わりが米欧対中露の新たな大きな枠組みでの分裂線と戦いの始まりということになる。

(貼り付けはじめ)

ロシアのウクライナ侵攻について5つの知るべき事柄(5 things to know as Russia presses into Ukraine

レベッカ・べイッツ、ロウラ・ケリー筆

2022年2月24日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/595760-5-things-to-know-as-russia-presses-into-ukraine

木曜日(2022年2月24日)、ロシア軍がウクライナ領土に深く進攻したため、西側諸国はロシアの行動を非難し、新たな制裁措置で対応した。

ジョー・バイデン米大統領は、モスクワによるウクライナ侵攻は、ロシアの影響圏を拡大しようとする明らかな努力であり、これに対峙しなければならないと述べた。

「ロシア軍はウクライナの人々に対して残虐な攻撃を開始した。ウクライナからの挑発(provocation)もなく、正当される理由もなく(justification)、必要性(necessity)もないのに攻撃を開始した。これは計画的な攻撃だ(premeditated attack)」と述べた。

バイデンは更に「今回の行動は決してロシアの真の安全保障上の懸念からではない。それは常にむきだしの侵略のため、どんな手段を使っても帝国の復活を渇望するプーティンの欲望を満たすためなのだ」と述べた。

以下に、今回の事態について知るべき5つの事柄を挙げる。

(1)ロシアは対ウクライナ国境のほぼ全面からウクライナへの侵攻を続けている(Russia continues its invasion of Ukraine from nearly all sides

ロシアはモスクワ時間の木曜日早朝に侵攻を開始した。ウラジミール・プーチン大統領からの命令を受け、すぐにウクライナ国境の複数の地点からウクライナ軍を攻撃する軍事作戦を開始した。

ロシア軍は陸、空、海から侵入し、ウクライナ国内全土で爆発音が鳴り響いた。

ロシアの戦車は、キエフに最も近い侵入口であるベラルーシ国境から南下し、途中、放射能に汚染されたチェルノブイリ立入禁止区域を通過するのが目撃された。ミサイルは首都キエフにあるウクライナ軍のコントロールセンターを標的とした。

西側の情報諜報機関の複数の関係者は、ブルームバーグ・ニュースの取材に対し、キエフは早ければ木曜日の夜にロシア軍の攻撃のために陥落する可能性があり、ウクライナ空軍はほぼ壊滅状態であると語った。

ロシア軍はウクライナ東部でも攻撃を開始した。プーティン大統領は、ウクライナの「政権(regime)」からウクライナ東部地域を守るために介入(intervention)が必要だと主張した。

ウクライナ南部では、水陸両用部隊が港湾都市オデッサへの攻撃を開始し、複数のメディアはウクライナ兵18名が死亡したと報じた。

ロシアは大規模な偽情報キャンペーンを展開し、大量虐殺に対抗するために入国しているなどと偽っている。ウクライナ大統領ヴォロディミール・ゼレンスキーをナチズムだと非難している。ゼレンスキーはユダヤ人であり、第二次世界大戦におけるドイツとの戦いで家族を失った人物だ。

バイデン米大統領は木曜日にホワイトハウスで行った演説の中で、「ロシアのプロパガンダ機関は真実を隠し、でっち上げられた脅威(made-up threat)に対する軍事作戦の成功を主張し続けるだろう」と述べた。

(2)ウクライナは大規模な侵略に対してロシアと対決する決意を固めた(Ukraine vows resolve in confronting Russia against large-scale invasion

オクサナ・マルカロワ駐米ウクライナ大使は、ロシアが同国のインフラ、空港、倉庫、施設、市民病院まで爆撃の対象とした13時間にわたる攻撃について説明しながら、ウクライナはロシアと対決する決意を固めたと述べた。

マルカロワ大使は「ウクライナ軍の戦闘精神(combat spirit)は高い。私たちは現在戦っている。勇敢で意欲的な軍隊だけでなく、全ウクライナ人が戦っているのだ」と発言した。

アメリカ軍と情報諜報機関の幹部たちは、ロシアはウクライナへ大規模な侵攻を行い、かなりの領土を制圧するという予測を立てている。

バイデン米大統領は「プーティンはウクライナに対してより大きな野心を抱いている。彼は、事実上、旧ソビエト連邦を再興しようとしている。それが今回の侵攻を引き起こした」と発言した。

報道各社は、ウクライナ、ロシア双方で複数の死傷者が出たと報じている。

キエフに近いウクライナの高速道路の画像では、爆発後に首都を離れる人々が道路にあふれかえっている様子が確認された。キエフ市はその後、夜間外出禁止令を出し、午後10時から午前7時までは自宅にとどまるよう住民に命じた。

複数の報道によると、ウクライナ人たちがATMに殺到し、食料を買い込んだために、食料品店の棚が空っぽになり、ガソリンスタンドには長蛇の列ができているということだ。

また、銀行やウクライナ国防省を含むウクライナの公的や民間の諸機関は複数のサイバー攻撃の対象となった。

バイデン米大統領は、ロシアはウクライナを占領しようとすることで生じる長期的な結果に対する準備ができていないという警告を発した。

バイデン米大統領は、「他国の領土を迅速に獲得したことで、最終的にいかに占領軍を疲弊させ、大規模な市民的不服従が発生し、戦略的行き詰まりに至るか、歴史が何度も示している」と述べた。

(3)次に何が起きるか?(What happens next?

バイデン政権は木曜日、モスクワに対する制裁措置の第二弾として、より多くの金融機関、ロシアのエリート層、その家族、企業を対象にした制裁措置を発表した。バイデン大統領はまた、ロシアの防衛産業にとって重要な技術の輸出を制限し、他の国々がアメリカ製のソフトウェアや機器を含む製品をロシアに輸出することを禁じた。

バイデン大統領は木曜日に、この制裁を「甚大なもの(profound)」と評したが、その影響はクレムリンに真の痛みを与えるまで少なくとも1か月はかかるだろうと警告した。

一方、ロシアからのサイバー攻撃については、ウクライナで既にロシアから攻撃を受けている。今度はアメリカやヨーロッパを標的にする可能性が高いため、バイデン政権はロシアからの報復攻撃に対して準備をしている。

その他の報復攻撃は深刻な影響を与える可能性がある。

アントニー・ブリンケン米国務長官は2022年2月17日、国連安全保障理事会での演説で、ロシアが特定のウクライナ人を標的にして暴力を振るおうとしていることを警告した。アメリカ国連代表部は、プーティンの戦争犯罪の可能性に対する警告として、ロシアの「殺害リスト(kill list)」を国連加盟諸国に対して書簡として送付した。

国務省の報道官は水曜日に本誌の取材に応じ、「私たちがこれまで述べてきたように、もし私たちの書簡に書かれている内容が実現すれば、それらは恐ろしい犯罪、戦争犯罪にさえなりうる。私たちは、ロシアの計画に関しての私たちの理解と知識に基づいて、標的となり得ると思われる個人や団体に警告を発しており、彼らが自らを守り、より安全な場所に移動できるように努めている」と述べた。

ヨーロッパの指導者たちは、大規模な難民の流出(massive exodus of refugees)にも備えている。アメリカの情報諜報機関は、ロシア軍が北、南、東から侵入し、100万から500万人のウクライナ人が避難する可能性があると判断している。

ロイター通信が報じるところでは、国連難民高等弁務官事務所(The office of U.N. High Commissioner of Refugees)の集計によると、数千人のウクライナ人がすでにモルドバやルーマニアなどの国々に渡り、推定10万人が国内で避難生活を送っているということだ。

(4)アメリカの同盟諸国とロシアの同盟諸国との間で分裂した国際的な反応が起きる(A divided global response between U.S. and Russia allies

アメリカ、ヨーロッパ、世界を主導する工業国によるG7は木曜日、ウクライナに対する戦争を開始したとしてプーティンに対して強い内容の非難をそれぞれ発表することで共同歩調を取った。

国際連合事務総長(Secretary-General of the United Nations)のアントニオ・グテーレスはプーティンに対して直接アピールを発表した。その内容は「軍事作戦を停止せよ。群をロシア国内に帰還させよ」というものだった。

しかし、中国はロシアのウクライナに対する攻撃を侵略(invasion)と形容することを拒絶した。これはアメリカの立場から離れた見解だが、これは予測可能なものだった。

複数の中国政府当局者は、モスクワが「特別作戦」を開始したというプーティンの主張を繰り返した。また、「全ての当事者が自制し、状況を緩和するために建設的な措置を取る」ことを求める声明を繰り返した。

イランのホセイン・アミラブドラヒアン外相は木曜日、ウクライナに対するロシアの攻撃について、「今回の危機NATOからの挑発が発端となっている」とロシアの主張を支持するツイートを行った。

同様に、パキスタンのイムラン・カーン首相は、水曜日の夜にプーティンと会談するためにモスクワに飛行機で到着し、2日間の訪問を行った。パキスタンとロシアの当局者はそれぞれ、経済、技術、エネルギー分野の関係を強化するために、より密接な両国間の全般的な関係構築に合意したと述べた。

民主国家であり、アメリカの軍事協力の重要なパートナーであるインドは、木曜日に控えめな反応を示した。それに対して、ウクライナのイゴール・ポリハ駐インド大使は、記者会見でキエフが「インドの支援を求めている、懇願している」と述べ、支援を訴えた。

バイデンは木曜日、ロシアのウクライナに対する侵略への対応について、アメリカはインドと協議中であると述べ、「ワシントンとニューデリーの間では今のところ、対ロシア姿勢について完全な合意に達してはいない」と述べた。

(5)アメリカ国民とヨーロッパの諸国民は経済的な影響を被る(Americans and Europeans brace for economic impact

ロシアのエネルギー部門に対する金融制裁は、ロシアにとって経済的にかつ地政学的に最重要の産業に打撃を与える可能性があるが、アメリカやヨーロッパの消費者たちのガスやエネルギー価格の上昇を招く危険性が高い。

ロシアはアメリカにとって重要なエネルギー輸入国であり、ヨーロッパ諸国にとっても重要な供給源である。ヨーロッパ諸国は、ロシアから入手できない燃料を補うために、アメリカへの依存度を高める可能性もある。

米国エネルギー情報局によると、ロシアは2020年において、アメリカにとって3番目に大きな外国石油の供給国であり、アメリカの輸入石油の7パーセントを占めている。

木曜日朝、原油価格は1バレル当たり100ドルを超えた。

バイデン大統領は、火曜日に最新の制裁措置を発表する際、アメリカの消費者が影響を受けると警告した。世界規模の悪童であるプーティンに対峙するためには苦難が必要であると述べた。

バイデンは「これが厳しいことであることは分かっている。アメリカ国民は既に原油高やインフレーションに苦しんでいる。石油価格の高騰でアメリカ国民が感じる痛みを和らげるために、私は与えられた権限においてできることは全て実施する」と述べた。

バイデンは続けて、「しかし、今回の侵略に対して看過することは不可能なのだ。もし見過ごしてしまえば、アメリカにとっての結末はより悪いものとなるだろう」と述べた。

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 古村治彦です。

 今回ご紹介するのは1カ月前の論稿で、「プーティンの行動する理由」についてのものだ。プーティンの行動の理由など今更知ったところで何になるという考えもあるだろう。しかし、彼の行動の理由を知ることで、これからの停戦や講和に関する交渉に役立てることができる。プーティンに条件を飲ませる手助けになるかもしれない。また、今回、なぜこんな時代遅れの侵攻を行ったのかということを西側の「常識」で把握しても難しい。だから、彼の行動の理由がどこにあるのかを知ることはこれからにとって重要だ。

 著者のスネゴヴァヤはその理由について、「(1)プーティンのウクライナを失うことの不安(EUNATOへの接近・米欧による軍事援助の増加)、(2)ウクライナ国内における新ロシア派の人物に対する攻撃(プーティンはこの裏にアメリカがいると考えた)、(3)ウクライナにドンバス地方を返して懐柔しようとして失敗したこと」を挙げている。そして、行動をエスカレートさせている環境として、(1)ヨーロッパ内で対ロシア姿勢で分裂がある(フランスな積極姿勢、ドイツは消極姿勢)、(2)アメリカの国際的な地位の低下によって、ロシアに対する強硬姿勢の範囲が狭まっており、それに対してロシアの行動の枠は広がっているとスネゴヴァヤは指摘している。

 プーティンはウクライナがEUNATOに加盟することを恐れていた、ロシアが直接NATOと国境を接することを恐れていたということになる。NATOは対ソ連防衛のための枠組みである。仮想敵国はソ連であり、今はロシアだ。それがだんだんと自国の境に迫ってくるという恐怖を感じたのだろう。NATOがロシアを攻撃するなんてありえない、と西側諸国は当然のように考えるが、ロシアを攻撃しないという確約ができるのならば、NATOなど必要ではないのだ。お互いに程度の差はあれ、お互いに対する不信、恐怖、不安があり、相互理解ができないまま、ぶつかることになり、ウクライナがその舞台になってしまった。NATOEUもウクライナの加盟申請を長年ほったらかしにしながら、ロシアを挑発するように軍事援助だけはするという、なんとも姑息な手段を取ってきたことも深刻な問題だ。ウクライナを手駒くらいにしか考えてこなかったし、「メンバーに入れていなければいざという時に兵隊を出さないで済む」ということで、加盟申請を受理してこなかったのだ。

お互いに火遊びをし過ぎて、火がついてしまい、それが消せなくなってしまったのだ。何と愚かで馬鹿げたことで、人々が死なねばならないのだろう。

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プーティンが今行動するのはどうしてなのか?(Why Is Putin Acting Now?

―複数の要素が重なってロシアの対ウクライナ行動をエスカレートさせている

マリア・スネゴヴァヤ筆

2022年1月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/01/26/russia-ukraine-invasion-timeline/

ロシアは3か月連続で、ウクライナとの国境に兵力を増強し続けている。現在、10万人以上のロシア軍がウクライナを三方の国境から取り囲んでいる。

しかし、なぜ今このようなことが起こっているのか、その理由は明らかではない。ロシアのウラジミール・プーティン大統領が事態の悪化、エスカレートに踏み切ったのは、何か特別な出来事がきっかけとなったのではないようだ。例えば、ロシアが2008年に行った軍備拡張とその後のグルジアとの戦争は、NATOのブカレスト・サミットでウクライナとグルジアがいつかNATOに加盟することが約束されたことがきっかけだったのとは対照的だ。今、プーティンの策略を後押ししているのは、ある特定の出来事ではなく、最近のいくつかの動きであるように思われる。

プーティンは公の演説やインタヴュー、記事の中で、ウクライナを失うことへの懸念を常に表明してきた。2021年5月の国連安全保障理事会(United Nations Security Council)の会合で、プーティンは、「ウクライナは、ゆっくりと、しかし確実に、ロシアに対するある種の反対姿勢、ある種の反ロシアに変わってきている」と発言した。実際、ロシアのウクライナに対する影響力はここ数年、急速に低下してきた。第一に、アメリカとNATOのウクライナに対する軍事協力(military cooperation)が劇的に増加した。軍事援助パッケージの拡大、より本格的な武器供与とウクライナ軍への訓練、ロシアのサイバー脅威と戦うための支援などが実施されてきた。2016年に可決された「対ウクライナ包括的支援パッケージ(Comprehensive Assistance Package for Ukraine)」の下、NATOはウクライナの防衛と安全保障を強化することを目的とした16種類のプログラムを通じてウクライナを支援してきた。ウクライナ安全保障支援イニシアティヴ(Ukraine Security Assistance Initiative)の下、アメリカは2016年以降、多くの分野でウクライナの陸上部隊と特殊作戦部隊の強化に向けた取り組みを強化してきた。

2018年、アメリカはウクライナにジャベリン対戦車ミサイルやランチャーなどの殺傷能力の高い兵器(lethal weapons)の送付を開始した。2021年秋には、トルコが戦闘用無人機「ベイラクターTB2」をウクライナに売却した。クレムリンの当局者たちは、こうした動きはNATOがウクライナにますます多くの武器を提供し、ロシアの安全保障にとって危険で、地域の安全保障バランスを脅かすと見なす動きだと解釈していると発言した。

しかし、それは軍事的な協力だけではありません。ウクライナ国民が徐々に欧米寄りになり、各種の世論調査ではウクライナのEUNATO加盟賛成が着実に増加傾向にあることから、汚職防止や制度構築の取り組みなど、他の分野でもウクライナと欧米の協力は深まっている。

第二に、さらに追い打ちをかけるように、2021年、ウクライナはロシアの工作員とされる人物に対するキャンペーンを開始した。特に、ウクライナ国家安全保障・防衛評議会(Ukraine’s National Security and Defense Council)は、プーティンの側近でウクライナにおけるロシアの主要な同盟者であるオリガルヒ(oligarch)のヴィクトル・メドベチュクとその妻、その他複数の個人と団体に対する制裁を発表した。メドベチュクは、プーティンとの個人的な関係を強調し(メドベチュクの娘の名付け親がプーティンだ)、個人的な友人だと述べた。また、ユーロマイデン(独立広場)抗議デモ、クリミア、ウクライナの将来について、親ロシアの立場からの意見を表明し、ウクライナの分離主義を煽動したとしてアメリカから制裁を受けたことがあった。更に最近の制裁では、メドベチュクの資産が3年間凍結され、ウクライナでのビジネスができなくなった。同時に、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、親ロシア派のプロパガンダを流しているとして、メドベチュクが所有する3つのテレビ局の閉鎖を命じた。

この動きは、アントニー・ブリンケン米国務長官とウクライナのドミトロ・クレバ外相との電話会談の後に行われ、クレムリンはテレビ局閉鎖において、アメリカがテコ入れの役割を果たしたのではないかと疑ったのだ。2021年5月以降、メドベチュクは反逆罪(treason)の疑いでウクライナに自宅軟禁されている。プーティンの怒りを示すように、ウクライナのメドベチュク弾圧に続いて、2021年4月にはロシアが初めてウクライナ国境に軍備を増強した。

2014年以降、プーティンはドンバス共和国をウクライナに戻すことでウクライナへの影響力を保持しようとしたが、これも失敗したように見られる。キエフは、ロシアの条件に従ってこれらの地域をウクライナに戻すことに消極的であることが明らかになった。2021年7月の記事で、プーティンは敗北を公然と認めている。プーティンは記事の中で次のように書いている。「私はますますこう確信するようになっている。キエフはドンバスを必要としていないのだ、と」。プーティンはまた、ウクライナ国内に、悪質な、西側とつながりのある反ロシア勢力が存在し、「外部からの侵略の犠牲者(victim of external aggression)」とウクライナ国内の「ロシア恐怖症宣伝(peddle Russophobia)」を利用し、ウクライナ政府の反ロシア姿勢を促進しているのだと考えている、とも書いている。

これら3つの要因が複合的に起こり、プーティンはウクライナが自分の支配から急速に遠ざかりつつあると判断した。今後20年の間に経済的、世界的影響力が低下すると予測される、衰退する修正主義的大国(declining revisionist power)の指導者として、プーティンには早急に行動を起こすインセンティブ(誘因)が存在したのである。現在の地政学的状況は、チャンスと見れば素早く動くプーティンに、ウクライナに対する影響力を強化しようとする理想的な機会が与えられているのだ「。

第一に、ロシアをめぐるヨーロッパ連合(EU)の意見が分かれている。東ヨーロッパのEUの新規加盟諸国はロシアに対する行動強化を支持する傾向にあるが、EUの二大勢力であるドイツとフランスは、ロシア問題で対立している。フランスは2022年4月に行われる大統領選挙に気を取られている。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、EUがアメリカとは別に独自にクレムリンとの協議を進める必要性を(おそらく選挙戦の一環として)主張し続けている。欧米のクレムリンへの対応に分裂が深まる懸念がある。ドイツは、ノルドストリーム2(Nord Stream 2)の完成後、ロシアからのガスのヨーロッパにおけるハブ拠点となることを切望している。ウクライナへの供給を可能にするためにエストニアへの武器供与許可を最近拒否したことからもわかるように、クレムリンに更に譲歩する用意があるようだ。

更に言えば、2021年4月以降、クレムリンはいくつかの、おそらく意図的な措置を講じて、ヨーロッパへのロシアからのガス供給を減らし、現在のEU域内の前代未聞のエネルギー価格高騰とガス不足を招いた。ヨーロッパはガス輸入の約40%をロシアからのガスに依存し続けているため、ウクライナにおけるロシアの行動への対抗能力がさらに制限されている。

第二に、昨年来のアフガニスタン撤退の混乱に見られるように、アメリカの国際的地位の相対的低下がより鮮明になってきたことである。クレムリンの発表によれば、これはアメリカの国際的影響力の低下を示すものであった。バイデン政権のロシア政策は、ノルドストリーム2に対する制裁解除、アレクセイ・ナワリヌイの毒殺事件に対する象徴的な制裁、中国を重視した「ロシア阻止(Park Russia)」の継続などがあるが、かなり弱い印象だ。更に重要なのは、クレムリンにはアメリカの中間選挙まで行動の枠が存在する。中間選挙後、共和党が連邦議会において重要な外交委員会を掌握し、ロシアをめぐる政権への圧力が強まれば、状況は一変するかもしれない。

EU同様、ウクライナの更なるエスカレートに対して、バイデン政権がロシアに強力な制裁を加えることは、現状では制約される可能性がある。深刻な複数の分野別制裁によって、原油や金属(銅、ニッケル、鉄、パラジウム)価格が再び高騰し、アメリカでインフレーションが急拡大する、あるいはスタグフレーションに陥る危険性をはらんでいる。これはプーティンの行動の枠をさらに広げることになる。

第三に、原油・ガス価格の高騰は、EUや米国を制約する一方で、プーティンに余裕を与えている。ロシアは国際舞台で、原油やガスの実質的な収入が蓄積されると、攻撃的で野心的になる典型的な石油国家(petrostate)として行動する傾向がある。大きな収入が得られると、社会問題やインフラ整備に手を付けず、軍事費を優先させることができるようになる。

このような背景から、プーティンはこのタイミングで西側への最後通告を提起したのだ。このチャンスは、アメリカの中間選挙が近づくにつれて閉じていく可能性が高い。しかし、現時点では、プーティンがEUとアメリカの弱点を利用してウクライナに関して譲歩を迫るには絶好のタイミングである。クレムリンが深刻な時間的制約に直面していることを理解することで、欧米の政策立案者たちはより効果的な政策対応をとることができるだろう。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 アメリカのジョー・バイデン大統領の支持率の低迷は継続中だ。今回ご紹介するピュー・リサーチセンターの世論調査の結果では支持率は41%となって、いよいよ30%台が目に見えるところまで来ている。新型コロナウイルス感染拡大、深刻なインフレーション、アフガニスタンからの撤退をめぐる混乱、主要政策が連邦議会でことごとく否決(上下両院ともに民主党が過半数を握っているのに)ということが原因で、全てがバイデンのせいではないとは言いながら、やはり矢面に立たされるのは大統領だ。もちろん政治家たち全体の支持率が低いということにもなっている。

 今回の調査では「バイデンが大統領として成功するか」という設問があり、それに対して20%の人がそのように思うと答え、43%がそうはならないだろうと答え、37%は今判断するのは時期尚早だと答えたということだ。

 成功・不成功は政権が終わってから判断されるべきもので、今のこの時期に将来のことを言い立てるのは時期尚早だというのが当然の回答だと私は考える。しかし、既に43%の人たちがバイデンを見限っているというのはバイデン政権と民主党にとっては深刻な事態だ。今年の中間選挙で民主党の敗北、連邦議会上下両院で過半数を失うという予測が出ている中、2024年の大統領選挙でホワイトハウスも失ってしまう可能性が高まっていることを示している。それよりも何よりも、ドナルド・トランプ前大統領の低い支持率をあざ笑っていた民主党のバイデン大統領がトランプ前大統領とあまり変わらない支持率に喘いでいるというのは何とも皮肉な事態であり、高齢のバイデンの健康を蝕んでいることだろう。彼が2025年1月まで大統領として職務を全うできるのかどうか、私は関心を持っている。

 もしかすると、バイデンは途中で職を辞さねばならないような事態に追い込まれるのではないか、それでカマラ・ハリスが昇格して、女性初の大統領になって、2024年の大統領選挙に出馬する可能性も出てくるのではないかとも考えている。なかなか厳しい状況である。

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世論調査:アメリカ国民の5分の1がバイデンは大統領として成功すると確信している(One-fifth of Americans believe Biden will be a successful president: poll

キャロライン・ヴァキル筆

2022年2月11日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/593922-one-fifth-of-americans-believe-biden-will-be-a-successful-president

アメリカ人の5分の1は長期的に見て、バイデンが大統領として成功を収めるだろうと確信していると答えた。木曜日に発表された最新の世論調査の結果で明らかとなった。

今回の世論調査はピュー・リサーチセンターに実施されたが、調査に答えたアメリカ人の20%が長期的に見て、バイデンが大統領として成功を収めるだろうと確信しているということであった。一方、43%は大統領として成功を収めないだろうと答え、37%がそれを判断するのは時期尚早だと答えた。

今回の世論調査は2022年1月10日から17日にかけて実施された。昨年のこの時期にアメリカ人が大統領をどう見ているかについての数字も残っている、今回はその成功すると見ている人の割合が減り、成功しないと見ている人の割合が増加していることが示された。

昨年のこの時期、29%がバイデンは長期的に見て大統領として成功を収めるだろうと答えた。一方、26%が成功しないと答えた。この時の世論調査では44%が判断するのは時期尚早だと答えた。

今回の世論調査によると、大統領の支持率は現在41%で、前回ピュー・リサーチセンターが調査を行った2021年9月中旬の調査での支持率(44%)からやや低下していることが分かった。

ピュー・リサーチセンターの今回の調査ではまた、バイデンの支持率が、民主党に忠実な2つのグループ、すなわち宗教に無関心なグループとアフリカ系アメリカ人人プロテスタントの間で低下したことを指摘した。宗教に無関心なアメリカ人の間では、2021年4月に71%がバイデンの職務遂行を支持したのに対し、今回の支持率は47%に留まった。

また、ピュー・リサーチセンターの調査では、2021年3月の時点にではアフリカ系アメリカ人プロテスタントの92%がバイデンの仕事ぶりを支持していたが、今回の世論調査ではその支持率が65%に落ち込んだ。

今回の世論調査は、バイデンが、新型コロナウイルス感染拡大、ウクライナとロシアとの間の緊張悪化、主要政策の連邦議会における採決での民主党内部からの妨害、2021年8月のアフガニスタンでのアメリカ軍の混乱した撤退から続く余波など、いくつかの国内および国際的課題をこなす中で実施された。

今回の世論調査は5128名を対象に実施された。誤差は2ポイントだ。

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 今回はハーヴァード大学のスティーヴン・M・ウォルト教授による現在のウクライナ危機の原因を分析した論稿をご紹介する。この論稿を読むと、国際関係論の2つの潮流(リアリズムとリベラリズム)の違いと、リアリズムの大家であるウォルト教授がウクライナ危機をどのように分析しているかがよく分かる。

  リアリズムは国家を守ってくれる上位機関が存在しないこと(アナーキー[anarchy]と呼ぶ)、国家の目的は生存すること(国家体制の違いは考慮しない)、などの前提から施行を組み立てる。リベラリズムについて、ウォルトは「国家の行動は、主にその内部の特性と国家間のつながりの性質によって推進されると主張する。世界を「良い国家」(リベラルな価値観を体現する国家)と「悪い国家」(それ以外の多くの国家)に分け、紛争は主に独裁者や独裁者などの非自由主義的な指導者の攻撃的衝動から生じると主張する。リベラル派の解決策は、専制君主を倒し、民主政治体制、市場、制度を世界規模で拡大すること」と述べている。そして、リベラリズムを信奉する人々が欧米諸国の外交政策を担ったために、今回のウクライナの危機的な状況が生み出されたと主張している。

 EUNATOの東漸によって、ロシアは圧迫を感じていた。冷戦終結とはロシアから見れば、自分たちの敗北であった。国力も衰え、ソ連邦時代にロシアを取り囲んでソ連邦を形成していた各国が独立を果たした。東ヨーロッパでソ連の衛星国(satellite states)だった国々は次々とEUNATOに加盟していった。ロシアの行動原理は「不安感」と「被害者意識」だ。NATOの設立の経緯を考えれば、「NATOは自分たちを敵として見なしている国々の集まりだ、将来攻めてくるかもしれない」ということになる。それがどんどん自分たちの国境に近づいてくる。自分たちを包囲するかのように拡大してくる。冷戦が終わって、ソ連の脅威がなくなってもNATOが残り続けたのも良くなかったかもしれない。

 西側諸国にしてみれば、冷戦が終わって、デモクラシー、人権、法の支配など西洋的な価値観が勝利を収めて、それが世界中に拡大するのは素晴らしいこと、アメリカはそのために活動している素晴らしい国という単純思考で動いていた。しかし、一点矛盾点を挙げるならば、自分たちにとって重要なエネルギー源である石油を算出する国々がデモクラシーでなくても、人権が認められていなくても何も言わない。こうした国々でデモクラシーになれば、石油精製施設の国有化やアメリカへの輸出制限などが起きてしまう可能性がある。アメリカにとって西洋近代の価値観の押しつけはあくまで自分たちの気に入らない国々をひなするための道具に堕している。

 何とか火の手が上がらないように、戦争にならないように、人死にが出ないようにするためには、実質的にウクライナを中立国にするということで交渉をまとめるべきだった。しかし、もう手遅れだ。ウクライナはロシアの属国ということになる。そうならないために交渉することも出来たがそれはもう手遅れだ。今はまず戦争が早く集結すること、戦後処理で犠牲者が多く出ないこと、ウクライナが国として立ちゆくことが優先されるべきことだ。

 今回、西側諸国は言葉だけは激しく、立派なことばかりだったが、ウクライナを実質的に助けるために、何もしていない。簡単に言えば、見捨て只の。「EUNATOに入れてなくて良かったなぁ、もしメンバー国だったら助けに行かなくてはいけないところだった」が、本音であろう。何と冷たくて嫌らしいということになるが、それが国際政治、大国間政治ということになる。人間とは愚かな生き物だ。

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リベラル派の幻想がウクライナ危機を引き起こした(Illusions Caused the Ukraine Crisis

-ロシアによる侵略の最大の悲劇はそれを避けることがいかに容易であったかである。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2022年1月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/01/19/ukraine-russia-nato-crisis-liberal-illusions/

ウクライナ国内の状況は悪い。更に悪化している。ロシアは侵略の構えを見せており、NATOが決して東方へ拡大しないという厳格な保証を要求している。交渉はうまくいっていないようで、アメリカとNATOの同盟諸国は、ロシアが侵攻に踏み切った場合、どのように代償を払わせるかを考え始めている。戦争になれば、ウクライナ市民をはじめ、関係者に多大な影響を与えることになる。

大きな悲劇は、この事件全体が回避可能であったことだ。アメリカとヨーロッパの同盟諸国が傲慢、希望的観測、リベラルな理想主義(idealism)に屈せず、リアリズム(realism)の核心的な洞察に依拠していれば、現在の危機は発生しなかったであろう。実際、ロシアがクリミアを占領することはなかっただろうし、ウクライナは今日、より安全な場所になっていたはずだ。世界は、欠陥のある世界政治に関する理論に依存したために高い代償を払っているのだ。

最も基本的なレベルでは、戦争が起こるのは、国家を保護し、国家がそうすることを選択した場合に戦いを止めることのできる機構や中央機関が存在しないからだという認識から始まる。戦争が常に起こりうるものである以上、国家は力を競い合い、時には武力を行使して自らをより安全に、あるいは他国に対して優位に立とうとする。国家は、他国が将来何をするか確実に知ることはできない。そのため、国家は互いに信用することに躊躇し、将来、他の強力な国家が自分たちに危害を加えようとする可能性を弱めることを促すのだ。

リベラリズム(liberalism)は世界政治を違った角度から見ている。リベラリズムは、全ての大国が多かれ少なかれ同じ問題、つまり、戦争が常に起こりうる世界で安全を確保する必要性に直面していると考える代わりに、国家の行動は、主にその内部の特性と国家間のつながりの性質によって推進されると主張する。世界を「良い国家」(リベラルな価値観を体現する国家)と「悪い国家」(それ以外の多くの国家)に分け、紛争は主に独裁者や独裁者などの非自由主義的な指導者の攻撃的衝動から生じると主張する。リベラル派の解決策は、専制君主を倒し、民主政治体制、市場、制度を世界規模で拡大することだ。民主体制国家は、特に貿易、投資、合意された一連のルールによって結びついている場合は、互いに争わないという信念に基づいている。

冷戦後、西側諸国のエリートたちは、リアリズムはもはや無意味であり、リベラリズムの理想が外交政策の指針となるべきであると結論づけた。ハーヴァード大学のスタンリー・ホフマン教授が1993年に『ニューヨーク・タイムズ』紙のトーマス・フリードマンに語ったように、リアリズムは「今日ではまったくナンセンス」なのだ。アメリカとヨーロッパの政府当局者たちは、自由民主政治体制、開放市場、法の支配、その他の自由主義的価値が急速に拡大し、世界的な自由主義的秩序が手の届くところにあると信じていた。1992年に当時の大統領選挙候補者であったビル・クリントンが語ったように、「純粋なパワー・ポリティクスのシニカルな計算」は現代世界には存在せず、出現しつつある自由主義秩序は何十年にもわたって民主的平和をもたらすとリベラル派は考えていた。世界の国々は、権力と安全保障を競い合う代わりに、ますます開かれた、調和のとれたルールに基づく自由主義秩序、すなわち米国の慈悲深い力によって形成され守られた秩序の中で、豊かになることに集中するだろうということであった。

もしこのバラ色のビジョンが正確であれば、ロシアの伝統的な影響圏(sphere of influence)に民主政治体制を拡散し、アメリカの安全保障を拡大することは、ほとんどリスクを伴わないものとなっただろう。しかし、優れたリアリストなら誰でも言うことだが、そのような結果などはありえないのだ。実際、拡大反対派は、ロシアがNATO拡大を脅威とみなすことは必至であり、拡大が進めばモスクワとの関係が悪化すると警告していた。だから、外交官のジョージ・ケナン、作家のマイケル・マンデルバウム、ウィリアム・ペリー元国防長官など、米国の著名な専門家たちは、最初から拡大に反対していた。ストローブ・タルボット国務副長官やキッシンジャー元国務長官も当初は同じ理由で反対していたが、後に立場を変えて拡大派に転じた。

拡大賛成派は、東ヨーロッパや中央ヨーロッパの新しい民主政治体制国家群の民主政体を確立する(consolidate)こと、そして全ヨーロッパに「広大な平和地帯」を作ることができると主張し、議論に勝利した。彼らの考えでは、NATOの新規加盟国が同盟にとってほとんど、あるいはまったく軍事的価値がなく、防衛が困難であろうとも問題ではなく、平和は非常に強固で永続的であり、それらの新規加盟国を守るという誓約は口先だけのことで、守る必要などないと考えられた。

モスクワはポーランド、ハンガリー、チェコのNATO加盟を容認せざるを得なかった。しかし、NTOの拡大が推進される間に、ロシアの懸念は高まっていった。1990年2月、当時のジェイムズ・ベイカー米国務長官がソ連のゴルバチョフ書記長に対して、もしドイツがNATO内で統一することを許されるなら、同盟は「1インチも東進しない」と口約束した。ゴルバチョフがこの口約束を文書化しなかったことは愚かなことだった。ベイカーと関係者たちはこうした主張に異議を唱え、ベイカーは正式に約束をしたことはないと否定している。2003年にアメリカが国際法を無視した形でイラクに侵攻し、2011年にオバマ政権が国連安保理決議1973号で与えられた権限を大きく逸脱して、リビアの指導者ムアンマル・カダフィを追放したことで、ロシアの疑念はさらに強まった。ロシアはこの決議の採決で棄権したため、ロバート・ゲイツ元米国防長官は後に「ロシアは自分たちがコケにされたと感じた(the Russians felt they had been played for suckers)」とコメントしている。このような経緯から、モスクワが文書による保証にこだわるようになったのである。

アメリカの政策立案者たちがアメリカの歴史と地理的な感覚を振り返ったならば、拡大がロシアのカウンターパートたちにどのように映ってきたかを理解できたはずである。ジャーナリストのピーター・ベイナートが最近指摘したように、アメリカは西半球を他の大国が立ち入れないようにすると繰り返し宣言し、その宣言を実現するために何度も武力で脅し、実際に武力を行使してきた。例えば、冷戦時代、レーガン政権はニカラグア(ニューヨーク市より人口の少ない国)の革命に危機感を抱き、反政府軍を組織して社会主義のサンディニスタ政権を打倒しようとした。アメリカ人がニカラグアのような小さな国をそこまで心配するのなら、なぜロシアが世界最強の同盟であるNATOのロシア国境への着実な進行に対して深刻な懸念を抱くのか、理解するのはそれほど難しいことだったのだろうか? 大国が自国周辺の安全保障環境に極めて敏感であることは、リアリズムによって説明されるが、リベラルな拡大政策の立案者たちは、このことを理解できなかったのである。これは、戦略的に重大な結果をもたらす、共感(empathy)を欠いたことによる重大な失敗であった。

NATOは、「拡大は自由で強制などされないプロセスであり、加盟基準を満たした国であればどの国でも加盟できる」と繰り返し主張していることがこの誤りをさらに大きくしている。ところで、この主張はNATO条約に書かれていることとは全く異なる。NATO条約第10条には次のように書かれているだけだ。「締約国は、全会一致の合意により、この条約の原則を推進し、北大西洋地域の安全保障に貢献する立場にある他のヨーロッパ諸国に対し、この条約に加盟するよう要請することができる」。ここで書かれているキーワードは「できる」である。NATOに加盟する権利を持つ国はなく、加盟することで他の加盟国の安全が損なわれる場合はなおさらである。詳細は置いておいて、この目標を屋上から叫ぶのは無謀であり、不必要なことであった。どんな軍事同盟も、既存の締約国が同意すれば、新しい加盟国を組み込むことは可能であり、NATOは何度かそうしてきた。しかし、東方拡大への積極的かつ無制限の関与を公然と宣言することは、ロシアの恐怖をさらに増幅させるに違いないのである。

次の誤りは、2008年のブカレスト首脳会議で、ブッシュ政権がグルジアとウクライナをNATO加盟国に推薦したことである。元国安全保障会議スタッフのフィオナ・ヒルは最近になって、アメリカの情報機関がこの措置に反対していたにもかかわらず、当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領がその反対意見を無視した理由を明らかにした。ウクライナもグルジアも2008年の時点で加盟基準を満たすには程遠く、他のNATO加盟国も加盟に反対していたため、このタイミングは特におかしかった。その結果、NATOは両国の加盟を宣言したものの、その時期については明言しないという、イギリスが仲介した不明瞭な妥協案の通りとなった。政治学者のサミュエル・チャラップは次のように述べている。「この宣言は最悪のものだった。ウクライナとグルジアの安全保障を高めることはなかった上に、NATOが両国の加入を決めているというモスクワの見方が強まった。イヴォ・ダールダー元NATO担当米国大使が、2008年の決定をNATOの 「大罪(cardinal sin)」と評したのも当然のことだろう。

次に誤りが起きたのは2013年と2014年だった。ウクライナ経済が低迷する中、当時のヤヌコビッチ大統領は、経済支援を求めてEUとロシアの間で経済分野での綱引きを行うよう働きかけた。その後、ヤヌコビッチ大統領は、EUと交渉した加盟協定を拒否し、ロシアからのより有利な提案を受け入れたため、ユーロマイダン抗議運動が起こり、最終的に大統領は失脚することとなった。アメリカは、ヤヌコビッチの後継者選びに積極的に関与し、デモ隊を支持する姿勢を露骨に打ち出し、「西側が全面支援したカラー革命(Western-sponsored color revolution)」というロシアの懸念を一蹴した。しかし、欧米諸国の関係者は、ロシアがこの事態に異を唱えることはないのか、それを阻止するために何をするのか、全く考えなかったようだ。その結果、プーティン大統領はクリミアの占領を命じ、ウクライナ東部のロシア語圏の分離主義勢力を支援し、ロシアとウクライナ両国は凍結された紛争(frozen conflict)状態に陥り、現在に至っている。

西側世界では、NATOの拡大を支持し、ウクライナ危機についてプーティンだけに責任を負わせることが当然となっている。ロシアの指導者プーティンは同情に値しない。彼の抑圧的な国内政策、明白な腐敗、これまでつかれてきた多くの嘘、政権に危険を及ぼさないロシア人亡命者たちに対する複数の殺人が明白であり、プーティンは同情に値しない。また、ロシアは、ウクライナがソ連から引き継いだ核兵器を放棄する代わりに安全保障を提供するという1994年のブダペスト・メモを踏みにじっている。クリミアの不法占拠によって、ウクライナやヨーロッパの世論はモスクワに対して大きな反感を持つようになった。ロシアがNATOの拡大を懸念するのは当然として、近隣諸国がロシアを懸念する理由も十分に存在するのである。

しかし、ウクライナ危機はプーティンだけの責任ではないし、プーティンの行動や性格に対する道徳的な怒りは戦略にはなり得ない。また、制裁を強化しても、プーティンが欧米諸国の要求に屈することはないだろう。しかし、プーティンが旧ソ連を懐かしむ冷酷な独裁者だからウクライナを確保したいと考えているのではなく、ウクライナの地政学的配置はロシアにとって重要な利益であり、それを守るために武力行使も辞さないということをアメリカと同盟諸国は認識しなければならない。大国は国境に接する地政学上の勢力に無関心ではいられないし、ロシアは仮に別の人物が政権を取ったとしてもウクライナをめぐる情勢に大きな関心を持つはずだ。この基本的な現実を欧米諸国が受け入れないことが、今日の世界を混乱に陥れた大きな原因なのだ。

言い換えるならば、プーティンは銃口を突きつけて大きな譲歩を引き出そうとして、この問題をより難しいものにしている。たとえプーティンの要求が完全に合理的であったとしても(合理的でないものもあるが)、アメリカと他のNATO諸国には、彼の脅迫的な試みに抵抗する正当な理由が存在する。繰り返しになるが、リアリズムがその理由を理解する助けになる。全ての国家が最終的に独立している世界では、脅迫される余地があることを示すと、脅迫者は新たな要求をするようになるかもしれないのだ。

この問題を回避するためには、この交渉を「恫喝(blackmail)」から「相互牽制(mutual backscratching)」に変えていかなければならない。論理は簡潔だ。あなたが私を脅すなら、私はあなたの望むものを与えたくない。なぜなら、それは不安な前例となり、あなたが同様の要求を繰り返したり、エスカレートさせたりするよう誘惑するかもしれないからだ。しかし、もしあなたが私に同じように欲しいものをくれるなら、私はあなたが欲しいものをあげるかもしれない。あなたが私の背中を掻くなら、私もあなたの背中を掻く。このような前例を作ることは何も悪いことではない。実際、これは全ての自発的な経済交換の基礎となっている。

バイデン政権は、ミサイル配備などの二次的な問題について互恵的な合意を提案し、将来のNATO拡大の問題をテーブルから取り除こうとしているように見える。私はウェンディ・シャーマン米国務副長官の粘り強さ、洞察力、交渉力には敬意を表するが、このアプローチはうまくいかないと私は考える。その理由は何か? なぜなら、最終的にはウクライナの地政学的な配置がクレムリンにとって重要な利益であり、ロシアは具体的な何かを得ることにこだわるだろうからだ。バイデン米大統領はすでに、アメリカはウクライナを守るために戦争はしないと明言している。ロシアのすぐ隣にあるこの地域で戦争ができる、あるいはすべきだと考えている人々は、私たちがまだ1990年代のアメリカ一極の世界にいて、魅力的な軍事オプションをたくさん持っていると考えているようだ。

しかし、選択肢の少ないアメリカの交渉団は、ウクライナが将来的にNATOに加盟するオプションを保持することに固執しているようで、これこそモスクワがアメリカに放棄させたがっているものだ。アメリカとNATOが外交で解決しようとするならば、ロシアに対して本格的に譲歩しなければならないだろうし、望むようなものがすべて手に入るとは限らない。私は読者であるあなた方以上にこの状況を好まない。しかし、それがNATOを合理的な範囲を超えて不用意に拡大したことの代償なのだ。

この不幸な混乱を平和的に解決するための最善の方法は、ロシアと西側が最終的にキエフの忠誠を得るために争うことは、ウクライナにとって厄災であることをウクライナ国民とその指導者たちが認識することである。ウクライナは率先して、いかなる軍事同盟にも参加しない中立国(neutral state)として活動する意向を表明すべきなのだ。NATOに加盟せず、ロシア主導の集団安全保障条約機構にも参加しないことを正式に誓うべきだ。その場合でも、どの国とも自由に貿易を行い、どの国からの投資も歓迎し、外部からの干渉を受けずに自国の指導者を選ぶ自由があるはずだ。キエフが自らそのような行動を取れば、アメリカやNATOの同盟諸国はロシアの恫喝に屈したと非難されることはないだろう。

ウクライナ人にとって、ロシアの隣で中立国として生きることは、理想的な状況とは言い難い。しかし、その地理的位置からして、ウクライナにとっては現実的に期待できる最良の結果である。現状よりもはるかに優れていることは間違いない。1992年からNATOがウクライナの加盟を発表した2008年まで、ウクライナは事実上中立国であった。この間、ウクライナが深刻な侵略の危機に直面したことは一度もなかった。しかし、現在、ウクライナの大部分では反ロシア感情が高まっており、このような出口が見つかる可能性は低くなっている。

この全体として不幸な物語におけるもっとも悲劇的な要素はそれが回避可能だったということだ。しかし、アメリカの政策立案者たちがリベラルな傲慢さを抑え、リアリズムの不快ではあるが重要な教訓を十分に理解するまでは、今後も同様の危機につまずく可能性が高いだろう。

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