古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

2022年04月

 古村治彦です。

 このブログで、世界規模で新型コロナウイルス感染の収束傾向が進み、それによって経済活動が活発化していく結果としてインフレーション率が高まっていることを昨年からずっと紹介してきた。アメリカでの物価高騰の記事を何度もご紹介してきた。

 日本に暮らす私たちも物価高騰の影響を感じている。清貧の価格は変わらない久手も内容が減っているということはよく見かけるようになった。飲料で言えば、昔は1リットル、500ミリリットルで売られていたものが同じ値段で900ミリリットル、450ミリリットルになって売られているということもある。英語ではこれを「シュリンクフレーション(shrinkflation)」と言うのだそうだ。「shrink」という単語は「縮む、小さくなる、少なくなる」を意味する。インフレーション(inflation)やデフレーション(deflation)のような、よく使われる言葉ではないが、日本の現状を良く表現している。シュリンクフレーションが進んでいる日本で値上げが続いている。これは一般国民の生活を直撃し、経済状態を悪化させるものだ。

 物価の上昇率よりも賃金の上昇率の方が高ければ、生活は苦しいということはない。しかし、賃金がほとんど上がらない中で物価だけ上がり続ければ、生活はどんどん苦しくなる。スタグフレーションという状態になるのが怖いが日本は既にスタグフレーションなのではないか。物価上昇の原因は世界的な実物資産の価格高騰、具体的には石油価格の高騰や食料価格の高騰がある。これに加えて円安が進行していることも挙げられる。2022年4月28日には1ドル、130円を突破したが以下に掲載したグラフのようにこの円安は非常に急激に起きたものだ。

dollaryenexchangerategraph202104202204511
ドル円チャート(2021年4月から2022年4月)

dollaryenexchangerategraph20022022511
 ドル円チャート(2000年から2022年)

 日本銀行の黒田東彦総裁は就任以来、日本政府の意向もあり、「年率インフレ率2%達成」をお題目のように唱えてきた。しかし、その実現には至っていない。日本の憲政史上最長となった安倍晋三政権下では「アベノミクス」で経済成長を目論んで、異次元の財政支出を行ったがうまくいかなった。「経済成長の結果としてインフレーション」ということを逆転させて「インフレーションを起こせば結果として経済成長(リフレ、インタゲ論)」という大きな間違いを犯した結果と言える。

japaninflationrate20002020511
日本のインフレ率(2000年から2020年) 

 現在、輸入物資の価格高騰(新型コロナウイルス感染拡大からの回復とウクライナ戦争が重なった)と急激な円安で日本国内のインフレ率は2%を軽く達成しそうな勢いである。しかし、これは日本政府や日銀が意図した「インフレ」ではない。インフレーションには需要が高まることで起きる「デマンドプッシュ型」とコストが上昇することで起きる「コストプッシュ型」があり、現状は「コストプッシュ型」だ。経済が好調なので人々の需要が高まってのものではない。

「円安は日本にとって素晴らしい」ということを私も小学生の時に刷り込まれた。先生が黒板に日本で作った自動車が100万円として、それをアメリカで売る場合のドル換算した価格の図を描いて、「円安になればドルでの価格表示が安くなるので売れやすくなって利益が大きい」「海外から資源や材料を買ってきて日本で製品にして売る、これを加工貿易と言う」ということを説明してもらったと思う。しかし、私が小学生だった1980年代から日本経済は大きく変容し、外需頼みの国から内需頼みの国になった。GDPに占める輸出の割合は2018年の段階で18%だった。先進諸国の中でこの割合は低い方だ。

 japangdpexportrate2018rate511

輸出がGDPに占める割合(2018年)
 日本経済の現状は非常に厳しい。急激な円安の進行を止めることだ。そもそも貨幣価値の乱高下は好ましくない。また輸入物資の価格の引き下げは日本一国でできることではない。新型コロナウイルス感染拡大からの回復途上での経済回復のための物価高は仕方がないが、ウクライナ戦争による物価高に関しては一日も早い停戦によって改善が見込まれると思う。しかし、現状はとても厳しいと言わざるを得ない。

(貼り付けはじめ)

日本はようやくインフレーションを達成する-しかしそれは間違った種類のものだ(Japan Finally Gets Inflation—but the Wrong Kind
-数十年にわたりデフレーションとの戦いの後、世界規模の物価上昇は政治的な懸念の原因となっている

ウィリアム・スポサト筆
2022年4月25日
『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/04/25/inflation-japan-deflation-economy/

現在の日本の中央銀行のトップは非常に忍耐強い人物である。黒田東彦は9年前に日本銀行総裁に就任した際、世界第3位の経済大国である日本から、1990年以来ずっと成長を鈍化させてきたデフレーション圧力を取り除くと公約した。日銀の目標は、賃金と消費意欲を高める2%のインフレ率を作り出すために十分な資金を投入することであった。

商品価格のインフレーションが世界的に警鐘を鳴らしている中、ついに目標達成の見通しが立ったようだ。最新のデータは非常に不安定ではあるが、エコノミストたちは、日本が今後数ヶ月のうちにようやく2%のインフレーション率、場合によってはそれ以上のインフレーション率を達成し始めると予測している。

今のところ、この数値は世界的に見ても控えめなものとなっている。アメリカの2022年3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で8.5%上昇し、1981年以来最も高い上昇率となったが、日本の指数はわずか1。2%上昇にとどまった。しかし、これには携帯電話業界を事実上支配している3社のカルテルに対する政府の取り締まり後、携帯電話料金が52.7%下落したことが含まれている。

その他の数字も、日本の基準からすると目を見張らせるものだった。エネルギーコストは20.8%上昇し、1981年以来最も急な上昇となり、食用油は34.7%上昇した。卸売物価の指標である企業物価指数は、ウクライナの悲惨な状況もあって、2022年3月には前年同月比で9.5%上昇した。

全体として、エコノミストたちは、様々な一時的要因を平準化した後の基礎的なインフレーション率は、現在、日銀が設定した目標の2%程度であると見積もっている。しかし、誰も喜んではいないように見える。2022年6月の選挙を控え、政府は最も影響を受ける人々への補助金制度を実施するために奔走しており、日本円は急激に下落している。しかし、黒田総裁は、コスト増は短期的な問題であり、総裁が設定した目標を妨げるものではない、と平然としているように見える。

日本にとって、20年以上にわたるデフレーションのもたらしてきたコストは明らかである。しかし、多くの日本人が気づいていないのは、世界の国々は絶対額で豊かになっているのに、日本だけはほとんど変わらないということだ。OECDのデータによると、過去30年間の年間平均賃金の上昇率はわずか3%であるのに対し、米国では47%も上昇している。物価も同じような軌跡をたどっている。東京は長年、世界で最も物価の高い都市とされてきたが、コスト削減、関税の緩やかな引き下げ、輸入代替品の増加などにより、現在ではほとんどの世界ランキングでトップ10にも入っていない。

この状況を打開するために、中央銀行である日本銀行は過去9年間、市場に現金を流し込んできた。この前代未聞のプログラムにより、中央銀行は事実上全ての新規国債を購入することになった。そして、政府の税収は平均して歳出の60%しか賄っていないが、このことは購入すべき債務が大量に存在することを意味する。

このことは、2つの大きな問題を引き起こしている。日本政府は世界で最も負債を抱えている国であり、負債総額は年間経済生産高の約190%に相当する。このような政府の大盤振る舞いの裏舞台での資金調達によって、日銀のバランスシートは4倍になり、世界銀行のデータによれば、2020年には日銀自身の保有額は年間GDPの92%にまで上昇する。

このように、今の日本は間違ったインフレーションになっているようである。黒田総裁の目標設定の基礎にある考えは、いわゆる需要主導型の好循環を生み出すことであった。これは高い給料の労働者たちが外に出てより多く消費し、需要を押し上げ、それが新たな投資を招来し、それがより高い賃金につながるというものだ。

しかし、海外からのコストアップは物価を押し上げ、消費者たちの購買意欲を低下させ、商品の購入を控えさせることになる。この問題は、資源に乏しい日本では特に深刻で、事実上全ての原材料と商品を輸入している。食料の60%以上とエネルギーの95%(主に石油)を輸入している。過去10年間、世界の商品市場は概ね平穏だったため、これまでは大きな問題にはならなかったが、ロシアのウクライナ侵攻で小麦も天然ガスも十字架の下に置かれ、問題の深刻化が予想される。

このことは、2022年6月の参議院選挙でより強力な支持を得ようとする政府にとって、決して無視できることではない。与党の自民党が政権を失うリスクはないが、参議院選挙の投票結果はしばしば、事態の進展に関する有権者たちの感情を測る指標と見なされる。物価上昇の打撃を和らげるため、政府は消費者と中小企業を支援する480億ドル規模の幅広い補助金パッケージをまとめつつあると報じられている。日本経済新聞によると、この支援はガソリンの追加補助から低金利ローンや現金支援まで多岐にわたるという。

同時に、日本の岸田文雄首相は物価高騰を利用して、彼が提唱している「新しい形の資本主義」を推進しようとしている。これは安倍晋三前首相の下で実施された、過去10年間のアベノミクスで利益あげた大企業や裕福な退職者たちから富を国民全体に広げることを目的としている。

岸田首相は2022年3月の国会で、「物価上昇に対処するため、企業がコストを転嫁できるようにし、労働者の賃金を上げる環境を整えることによって、国民の生活を守るためにあらゆる政策方策を実施する」と述べた。

クレディ・スイスのエコノミストで元日銀の白川弘道のように、他のコストが上昇しているにもかかわらず、企業に賃上げを求めるのはかなり無理があると懐疑的な見方をする人々もいる。日本の消費者たちは伝統的に物価が上がると買い控えをする。そのため、小売業者は過去に値上げをするのをためらい、より少ない量でより高い単価を隠す「シュリンクフレーション(shrinkflation)」という概念を生み出した。

日本円が突然急落し、輸入品が更に高くなることも見通しを悪くしている。円は1ドル130円に迫り、年初から10%も下落している。これは、岸田首相が狭めようとしている経済格差を更に拡大させることになる。海外に大きな権益を持つ大企業は、自国にお金を戻すことで急激に高い利益を得るだろう。一方、平均的な労働者たちはレジでより多くの支払いを強いられることになる。

BNPパリバのチーフエコノミストで、日銀ウォッチャーとして知られる河野龍太郎は、「人々の関心が輸入インフレーション率の上昇と円安に向いている。こうした中で、短期的な景気刺激策だけでなく、超金融緩和を固定することによる長期的な悪影響についても、メリットとデメリットを再確認して検討する必要がある」と指摘している。

長期的には、日銀の最大の脅威はインフレーションサイクルが制御不能になることである。ドイツ銀行東京支店チーフエコノミストである小山健太郎は最近のレポートで、「日銀の政策スタンスが円安を悪化させ、物価を上昇させていると国民が確信すれば、日銀は家計の負担増を促す悪役になる可能性が高くなる」と指摘した。しかし、物価上昇に対抗する伝統的な方法である金利の引き上げは、ただでさえ弱い経済にブレーキをかけるだけでなく、日銀が保有する国債に多額の損失を与えることになる。

しかし、黒田総裁は躊躇していない。債務残高と円安への懸念がありながらも、日本銀行はここ数週間、国債買い入れプログラムを継続している。黒田総裁は、自分自身の目標は、日本を「デフレーション・マインド」から脱却させることだと常々主張している。今回の物価上昇で、彼は成功への道を歩み始めているのかもしれない。

問題は、こうした新たな懸念が、日本の高齢化社会、労働力の減少、低成長と一緒になって、長期的かつ不可逆的な景気後退をもたらすかどうかである。見通しには問題があるが、日本は過去に何度も懐疑的な見方を覆してきた。シティグループの当時のチーフエコノミスト、ウィレム・ブイターは、2010年のイヴェントで、「日本は世界で最も理解しにくい経済だ。これが物理学なら、日本において重力は働かないことになるだろう」と述べた。

※ウィリアム・スポサト:東京を拠点とするジャーナリストで2015年から『フォーリン・ポリシー』誌に寄稿している。彼は20年以上にわたり日本の政治と経済をフォローしており、ロイター通信と『ウォールストリート・ジャーナル』紙で働いている。彼は2021年に刊行されたカルロス・ゴーン事件と事件が与えた日本に与えた影響についての著作の共著者である。

(貼り付け終わり)

(終わり)


bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 ウクライナ戦争の影響、対ロシア経済制裁によって世界的にエネルギー価格が高騰している。エネルギー価格高騰に合わせて食料など他の物資の価格の高騰している。アメリカのジョー・バイデン政権はこれまで関係の悪かったヴェネズエラなどとの関係修復で石油輸入の減少を穴埋めしようという動きに出ている。また、国内でも石油増産を行うように業者に促している。増産は実施されているもののそれは期待に沿ったものではない。
usgaspricesgraph202011202104511
 それは、各石油企業が投資家からの圧力を受けているからだという分析がある。石油価格が低迷していた時期に投資家たちが利益分配を要求することで、新規投資や増産に消極的な姿勢を余儀なくされてきたということが挙げられている。増産に向けた新たな投資が実施され、それが実現するのに数カ月を要し、その時に石油価格が現在よりも下がっていれば、リターンは期待よりも少なくなる。そうなればかえって損をするということで、投資が積極的に行われないということもある。また、化石燃料以外のエネルギー源(クリーンエネルギーなど)に対する投資が増えている中で、石油増産への投資が鈍化しているということもあるようだ。

 アメリカのジョー・バイデン政権としては忸怩たる思いだろう。「石油価格が高騰しているのも高いインフレーション率も悪いのは全部プーティンだ」を連呼しているが、アメリカ国民からすれば「それは分かった。それではこれからどうしてくれるのだ」ということになる。これから夏に向かってアメリカ国民は旅行やレジャーを楽しむ。そのためにはガソリン価格は低い方が良い。これが高いままでは不満はバイデン政権と菱化上院で過半数を握っている民主党に向かう。そうなれば今年11月の中間選挙の結果は民主党にとって厳しいものとなる。選挙結果の不振はバイデン政権にも打撃となる。バイデン政権としてはガソリン価格の引き下げは至上命題となる。

 しかし、現状では非常に厳しいと言わざるを得ない。ウクライナ戦争が続く限り、世界経済は不安定であり、実物資産の価格は高値を維持するだろう。石油の国際価格が高値のままならば国内で生産すればとなるがそれもままならない。アメリカ国民がいつまでこうした状況を我慢するかにかかっている。

(貼り付けはじめ)

アメリカの石油生産は増加しているが、ロシアによる戦争によってガソリン価格は高値を維持している(US oil production grows, but Russia’s war keeps gas prices high
レイチェル・フラジン筆

2022年4月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/energy-environment/3466798-us-oil-production-grows-but-russias-war-keeps-gas-prices-high/

アメリカの石油生産量は増加傾向にある。しかし、民主、共和両党が望むようなガソリン価格への直接的な影響はない可能性が高い。

2022年3月中旬に比べ日量30万バレル増産できている。ロシアのウクライナ侵攻によってロシア産原油のボイコットが始まり、他国からの限られた供給に対する需要を高めた。結果として、少なくとも近い将来は価格を高く維持すると予想されている。

原油価格の高騰はジョー・バイデン政権にとって政治的な頭痛の種であり、大統領はこの高騰を「プーチンによって値上げ」と繰り返し言い、同時に石油生産者たちを非難している。共和党は、バイデン大統領を非難し、国内生産の拡大を求めている。

ロシアのウクライナ侵攻後、欧米諸国がロシアの石油を忌避したため、価格が急騰し、初期の推定では日量約300万バレルの供給減となった。

バイデン政権は、原油価格の上昇を緩和するため、国内の戦略的埋蔵量から日量100万バレルを放出すると発表し、石油業界にもさらなる原油の採掘を呼びかけている。

価格高騰を受け、石油活動は活発化しているが、需要増に対して完全に対応できる見込みはない。

「ガスバディ」の石油分析部門の責任者であるパトリック・デハンは「1日30万バレルの増産は悪くはないが、戦略石油備蓄から1日100万バレルが出ているという文脈で考えるとその規模は小さいということになる」と述べた。

デハンは更に、「より大きな文脈で見れば、増産は良い兆候だが、非常に大きな車輪の中の小さな歯車に過ぎない」とも述べた。

アメリカの石油生産量は4月15日現在で日量1190万バレルと、新型コロナウイルス感染拡大前の水準に比べるとまだやや低い。一方、将来の生産量を示すシグナルである石油掘削装置(リグ)の数は、昨年は438基だったのが695基にまで急増している。しかし、デハンはリグ数を「遅行指標(訳者註:景気に対し遅れて動く経済指数)」と表現している。

デハンまた「石油業者がリグを掘削しても、リターンが見つかるまでに3カ月から6カ月かかるかもしれない」と述べた。

エネルギー情報局は、今年、アメリカの原油生産量は平均で日量約1200万バレルに増加し、2019年に記録した1230万バレルにわずかに及ばないと予測している。2023年には、アメリカの生産量は平均で日量1300万バレルの新記録を達成するとエネルギー情報局は予測している。

ダラス連邦準備銀行が2022年3月に石油・ガス企業の経営者を対象に行った調査では、大企業は2021年12月から2022年12月の間に生産量が中央値で6%増加すると予測した。小規模な企業では中央値で15%の伸びを予測している。

ダラス連銀の上級ビジネスエコノミストのクナル・パテルは「これらの企業は生産を伸ばしている。しかし、価格を押し上げる需要が増加していることを忘れてはいけない」と指摘している。

それでも今なお、生産を減速させるハードルは存在する。

ダラス連銀の調査によると、石油・ガス企業の経営者たちの59%が、投資家からの「資本規律の維持」に対する圧力が、生産者が生産を抑制している最大の理由であると回答している。

エネルギー経済・財政分析研究所の石油・ガス業界アナリストであるトレイ・コーワンは、企業の生産への支出について、「過去に原油価格が現在のように本当に急騰した時期の対応に比べるとかなり控えめになっている」と評価している。

コーワンはこれを2016年の石油価格低迷に起因するとし、その後、投資家は気弱になり、生産者たちに対して「いいか、生産と成長に投資する代わりに、我々にもっと還元する方法を考えなければならない」と言い始めたと述べている。

コーワンは、新型コロナウイルス感染拡大時の企業は既に掘削された井戸から多くの石油を生産し、現在は新しい井戸を掘削してから石油を抽出することに力を入れなければならないため、生産が阻害されている可能性があると述べている。

今回の調査では、生産抑制の理由として、環境、社会、ガヴァナンスへの懸念や、使用できる設備の制限、サプライチェーンの問題などが挙げられている。

「ウッド・マッケンジー」の米州上流研究部門長であるマーク・オーバーストーターは、「もし投資家が、もっとたくさん増産に資金を使って良いという許可を出したとしても、それを実行するには物理的な制約がある」と述べている。

オーバーストーターは「油田に代わる労働力、パイプやリグ、トラックの供給、鉄鋼価格の上昇により、実際に井戸を掘るための十分な条件が揃わないなど、様々な点で物理的な制約が発生している」とも述べている。

一方、ジョージ・ワシントン大学ビジネススクールのロバート・ワイナー教授は、世界が化石燃料からクリーンエネルギーへと移行する中で、投資家が「座礁資産(stranded assets)」を恐れる可能性があると警告を発している。

ワイナーは「誰も石油を買わなくなってしまえば、彼らはにっちもさっちも行かなくなる」と述べている。

ワイナーは更に「エネルギー転換に大きなリスクが伴うのに、誰が投資をしたいと思うだろうか」と述べ、石油生産に対して投資はまだ行われているが、それが鈍化しているとを指摘した。

(貼り付け終わり)

(終わり)


bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 少し古い記事でしかも我田引水のような内容になっていることをまずお断りしておく。今回のウクライナ戦争は物理的にも大量の武器が使われ、多くの生命が失われそして傷つき、建物や財産が失われている。この状況は止まる兆候は見いだせていない。これに加えて、サイバー空間での戦争も激化している。こちらもハッキングなどによって相手のインフラを機能できなくしたり、情報を盗み出したりと行ったことが行われている。ウクライナ政府は世界各国の人々に「サイバー義勇兵となってロシア攻撃に参加して欲しい」と呼びかけ、日本を含む数十万人単位でこうした行為に参加しているようだ。ハッキング行為は違法行為となっている国も多いが、「対ロシア」のハッキングであれば思い切りやって下さい、ということになるのだろう。ロシアに制裁を科してロシアの海外資産を没収するということも含めて、ロシアに対してであればどんなに違法なことでもやって良い、というとても21世紀とは思えない状況が続いている。

 さて、アメリカ政府は各大企業に対して、サイバーに関しての「愛国的な」行動を取ることを求めている。ロシアからのサイバー攻撃から自分たちを守るようにと求めている。しかし、こうした行動はこれまでもやって来たことであろうし、何もロシアからだけサイバー攻撃を受けている訳ではない。しかし、下の記事にあるバイデンの発言は「サイバー空間でも既に相当な闘争が繰り広げられている」ということを示している。アメリカ政府も既にロシアに対して相当な攻撃を仕掛けており、それに対する報復に備えよということも示唆しているのだと考えらえる。私は昨年『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)という本を出した。宣伝がしつこくて申し訳ないが是非多くの方々に読んでいただきたい。

 サイバー空間での対ロシア攻撃の尖兵となるのはビッグテック各社である。SNSを運営している各ビッグテックは、情報戦のところで「愛国的な」行動を取っている。フェイスブック上ではこれまでネオナチや過激なテロ組織に対する制限を加えていたのに、「アゾフ大隊だけは別」として、人種差別やネオナチ的な文脈でない場合には称賛しても差し支えない、ということになっている。アゾフ大隊の根本思想やこれまでやって来たことを無視して(臭いものにふたをして)、「素晴らしい愛国的な勢力」ということにしてしまっている。フェイブック公認の「愛国的ネオナチ」ということになった。

 ビッグテック各社の情報に関する独占力の凄まじさは拙訳『ビッグテック5社を解体せよ』(ジョシュ・ホウリー著、徳間書店)でも明らかにされている。私が最近話したある編集者の言葉が印象的だった。それは「古村さん、SNS上にないものはいないのと一緒なんですよ」というものだ。つまり、ビッグテック各社がSNS上で制限したり隠したりして人々の目に触れにくい、もしくは触れない情報は現実世界でも存在しないのと同じということになる、ということだ。それほどの力をビッグテックは持っている。私たちはますます困難な時代をいきることになりそうだ。

(貼り付けはじめ)

ホワイトハウスがロシアはアメリカに対するサイバー攻撃の準備中の可能性があると警告(White House warns Russia prepping possible cyberattacks against US

モーガン・チャルファント筆

2022年3月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/599072-white-house-warns-russia-prepping-possible-cyberattacks-on-us

ホワイトハウスは月曜日、ロシア政府がアメリカ国内の重要インフラを標的とした「潜在的なサイバー攻撃の選択肢」を模索していることを示唆する情報が集まっているとして、民間企業にサイバー防御を強化するよう促した。

ホワイトハウスの国家安全保障問題担当大統領副補佐官(サイバー、新技術担当)アン・ニューバーガー(サイバーおよび新技術担当)は、月曜日の午後のブリーフィングで記者団に対し、「明確に述べておきたいが、重要インフラに対するサイバー事件が確実に起きるかどうかは分からない」と述べた。

「それでは、なぜ私はここにいるのか? これは、私たち全員に対する行動の要請であり、責任の要請があるからだ」と続けて述べた。

バイデン政権はここ数週間、ロシアがアメリカ国内外のインフラをサイバー攻撃で狙う可能性があると警告しているが、当局者はこれまで、アメリカに対する具体的で信頼できる脅威はないと述べていた。

ニューバーガーは月曜日、当局がロシア側によるいくつかの「準備活動」を発見しており、政権は先週、影響を受ける可能性のある企業や部門に機密扱いで説明を行ったと述べた。

ニューバーガーは「私たちが特定のインフラに対するサイバー攻撃を予期しているがそれについての確たる証拠はない。私たちが見ているのはいくつかの準備活動で、それは私たちが影響を受けるかもしれないと考えた企業と機密の文脈で情報を共有した」と語った。

ニューバーガーは、準備活動にはウェブサイトのスキャンや脆弱性の探索が含まれる可能性があると述べたが、具体的な内容は明らかにしなかった。 

その後、ニューバーガーは、アメリカ政府はロシア側の「潜在的な意図の変化」を察知したと述べた。

ホワイトハウスはファクトシートを配布し、各企業に対し、多要素認証の使用義務化、システムのパッチ適用、対応策を準備するための緊急訓練の実施、脅威を探すためのセキュリティツールの導入、データのバックアップ、データの暗号化、その他の情報保護とサイバー脅威から守るためのセキュリティ強化を促している。

バイデン大統領は声明で、「私は以前、同盟国やパートナーとともにロシアに課した前例のない経済的コストへの対応としてなど、ロシアがアメリカに対して悪意のあるサイバー活動を行う可能性について警告した。これはロシアの戦術の一部である。本日、ロシア政府がサイバー攻撃の可能性を探っているという新たな情報に基づいて、私の政権はこれらの警告を再度表明する」と述べた。

バイデンはその後、月曜日の夜にワシントンで開催されたビジネスラウンドテーブルの会議で出席したCEOたちに対してこの警告を再度提示した。

バイデンは「ロシアのサイバー能力の大きさはかなり重大であり、攻撃が私たちに近づいて

バイデン政権は先月、ウクライナの国防省と銀行を標的としたサイバー攻撃をロシアに起因するものとしている。これらの攻撃は、224日にロシアがウクライナに侵攻を開始する前に発生した。

ロシア政府が支援しているアクターたちによるサイバー攻撃は以前にもあり、おそらく最も顕著なのは2016年の大統領選挙への干渉作戦とソーラーウィンズ社に対する大規模なハッキングに関連したものだ。

ロシアのサイバー犯罪者たちは、コロニアル・パイプラインへの攻撃にも関与した。 

バイデン政権は過去1年間、大部分が民間企業によって所有・運営されている重要インフラのサイバーセキュリティを向上させる試みに取り組んできた。

ニューバーガーは、具体的にどの重要インフラ部門が標的にされる可能性があるのか、月曜日には言及しなかった。重要インフラには、水道、エネルギー、医療、金融サーヴィスなど、様々な分野が含まれる。

ニューバーガーはバイデン政権がロシアによるサイバー攻撃に対応すると明言した。

「大統領が述べたように、アメリカはロシアとの対決を求めていないが、ロシアが重要なインフラに対して破壊的なサイバー攻撃を行った場合、対応する用意があるとも明言している」とニューバーガーは述べた。 

バイデン大統領は声明の中で、「バイデン政権は重要インフラに対するサイバー攻撃を抑止し、攻撃を破壊し、必要であれば対応するためにあらゆる手段を使い続ける」と述べた。

=====

バイデンが各大企業のCEOにロシアのサイバー攻撃から守る「愛国的義務」を訴える(Biden tells CEOs they have 'patriotic obligation' to guard against Russian cyberattacks

アレックス・ガンギターノ筆

2022年3月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/599118-biden-asks-top-ceos-to-invest-in-combating-potential-cyberattacks

ジョー・バイデン大統領は月曜日、ウクライナ侵攻のさなか、ロシアのウラジミール・プーチン大統領からのサイバー攻撃(cyberattacks)の可能性に対処するため、企業の能力を高めるよう、企業トップに対して呼びかけた。

バイデンは月曜日の夜、ビジネスラウンドテーブルの四半期会議の席上、次のように発言した。「サイバーセキュリティの潜在的な使用で危機に直面しているのは皆さん方の利益だけではない。国益の危機に直面している。私は、皆さん方がサイバー攻撃に対処するための技術的能力を構築したことを確認するためにできる限り投資することが、愛国的義務であると真剣に提案する。そして私たちはいかなる方法でも支援する」。

バイデンはこのような攻撃に対抗するための技術に投資することは、企業を保護し、重要なサーヴィスを提供し続け、アメリカ人のプライバシーを保護することにつながると述べた。

バイデンは、サイバー攻撃はプーティンが「最も使いそうな手段」の1つであると述べた。ホワイトハウスは月曜日、ロシア政府がサイバー攻撃の可能性を探っていることを示唆する情報が集まっているとして、民間企業にサイバー防御を強化するよう促した。

バイデンはビジネスラウンドテーブルでの発言で、「プーティンはサイバー攻撃能力を保持しており、まだ使用してはいないが、プーティンのプレイブックの一部だ」と述べた。

バイデン大統領は、例えば、銀行が全ての顧客に対して追加のサイバーセキュリティ対策をデフォルトで実施にすることで支援できることを示唆した。

バイデンは「どのようなステップを踏むか、その責任は皆さん方にあり、私たちの責任ではない」と述べた。

大統領の四半期総会への出席は金曜日に発表された。ビジネスラウンドテーブルのCEOであり、ジョージ・W・ブッシュ大統領の前チーフスタッフであるジョシュ・ボルテンがバイデン大統領を紹介し、ビジネスラウンドテーブルの議長であり、ゼネラルモーターズのCEOであるメアリー・バーラがCEOと大統領との非公開質疑応答セッションの進行役を務めた。

バイデンはまた、プーティンがヨーロッパで生物兵器や化学兵器を使用することについて、出席したCEOたちに警告を発した。

また、バイデンは、プーティンがヨーロッパで生物兵器や化学兵器を使用することについて、CEOグループに警告を発した。「プーティンの背中が壁にぶつかっているほど、彼が用いる戦術の厳しさは大きくなる」と述べた。

また、バイデンはアメリカがウクライナの反撃を支援するために十分な軍備を提供していないという批判に反論した。

バイデンは次のように発言した。「洗練された装備が十分でないというのは単純に正確ではない。ここで詳細に説明する時間を取るつもりはないが、私たちの軍隊とNATOの軍隊に基づいた合理的な意味を持つ全てのあらゆる装備を彼らは持っているということだ」。

バイデンは続けて、ウクライナ軍はロシア軍に「大混乱を引き起こしている」とも述べた。

バイデン大統領は加えて、アメリカと同盟諸国がロシアに対する制裁を科すのを支援してくれた企業に対して感謝の意を表した。アメリカは最近、モスクワとの貿易関係の正常化を終了した。

バイデン大統領は次のように述べた。「私たちがロシア経済に制裁を科し、コスト、実質的な費用を負担するのを助けるために、皆さんは大変なことをして下さった。そして今、私たちは、皆さんがして下さったことが重要で、本当に大切なことだと理解している。皆さん全員がそうしなければならないとは言わないが、立ち上がってくれた人たちは、大きな影響を及ぼした」と述べた。

アップル、ヴィザ、マクドナルド、ディズニー、コカ・コーラなど、アメリカを拠点とする何百もの企業がロシアでの業務の一部または全部を停止している。

ビジネスラウンドテーブルは月曜日の会合への出席者リストを公表していないが、理事会にはアップルCEOのティム・クック、JPモルガン・チェイスCEOのジェイミー・ディモンド、シティCEOのジェーン・フレーザーなどが出席した。

バイデンは次のように述べた。「私たちが世界の舞台でリードしているのは皆さん方のおかげだ。アメリカ企業が立ち上がり、それぞれの役割を果たし、ウクライナへの寄付や、誰の要請もなく事業を縮小するという点で、皆さんがやっていることを嬉しく思う。このことを明確にしておきたい。ロシアでの事業を自ら縮小している。全てではないが、多くの企業が、皆さん方だけでなく世界中の企業を縮小している」。

月曜日午前、バイデン大統領と政権幹部たちは、石油、クリーンエネルギー、銀行といった様々な産業分野の16の大企業の経営陣と面会し、ロシアに関する情勢について意見交換を行った。

(貼り付け終わり)

(終わり)


bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 今回はアメリカとサウジアラビアの関係、更にウクライナ戦争開始以降の両国関係に関する記事を紹介する。長くなってしまって読みにくくなってしまっていることをお詫び申し上げる。ご紹介したい関連記事が複数あってこのように長くなってしまった。
 現在、世界の石油価格は高騰している。新型コロナウイルス感染拡大で石油価格が下落していたが、その騒ぎも収まりつつある中で石油価格が上昇していった。それに加えて2月末からのウクライナ戦争で対ロシア経済制裁と先行き不安のために石油価格は高騰している。

oilpricesgraph202111202204511
石油価格の推移(2021年11月から) 

 アメリカはロシアからの石油が輸入の7%を占めていたがそれが入らなくなったために、これまでさんざん虐めてきたヴェネズエラとの関係修復を試みている。しかし、世界全体では増産まで時間がかかる上に、何より最大の産油国であるサウジアラビアがアメリカに非協力的であるために、石油価格が上昇している。

 サウジアラビアのアメリカに対する非協力的な態度はサウジアラビアの実質的な支配者であるサルマン王太子のバイデン政権に対する怒りが源泉となっている。ジョー・バイデン米大統領は大統領選挙期間中からサウジアラビアとサルマン王太子に対して批判的であり、『ワシントン・ポスト』紙記者だったジャマル・カショギ殺害にサルマン王太子が関与しているというインテリジェンスレポートを公表するということを約束しており、就任後に実際に公表した。また、バイデン政権は、ドナルド・トランプ前政権との違いを強調するためもあり、サウジアラビアの人権状況に批判的となっている。更には、サウジアラビアが関与しているイエメンの内戦でサウジアラビアの立場を支持してこなかった。こうしたことはサルマン王太子とサウジアラビア政府を苛立たせてきた。そして、サルマン王太子の中国とロシアへの接近ということになった。

vladimirputincrownprincealsalman511
プーティンとサルマン王太子
 今回のウクライナ戦争で、アメリカは慌ててサウジアラビアとの関係を改善しようとしている。サルマン王太子とジョー・バイデン米大統領との直接の電話会談を実現させようとしたが、サウジアラビア側から拒否された。バイデン政権はサウジアラビアからしっぺ返しをされている。また、イエメン内戦でイランから支援を受けているフーシ派武装勢力がサウジアラビアの石油関連施設に攻撃を加えていることで、「石油の増産したいのだが、フーシ派が邪魔をしてうまくいかない」という大義名分も手に入れた。
 アメリカは理想主義的な建前外交をやって、アメリカ国民と世界の人々の生活を苦境に陥れている。実物を握っている国々はいざとなったら強い。だから、理想主義でどちらか一方に偏っていざとなったらしっぺ返しを食ってしまうという外交は結果としてよくない。汚い、裏がある、両天秤をかけて卑怯だ、そんな人々から嫌われるような外交がいざとなったら強い。「敵とも裏でつながっておく」ことが基本だ。

 

(貼り付けはじめ)

フーシ派からの攻撃の後、サウジアラビアは石油不足について「責任を持たない」と発表(Saudi Arabia says it 'won't bear any responsibility' for oil shortages after Houthi attack

クロエ・フォルマー筆

2022年3月21日

『ザ・ヒル』

https://thehill.com/policy/international/middle-east-north-africa/599014-saudi-arabia-says-it-wont-bear-any

サウジアラビアは、イランに支援されたフーシ派の反政府勢力が国営石油施設を最近攻撃したことによる流通への影響について、イエメンの内戦に対処するアメリカを明らかに非難し、石油増産に対して責任を取らないことを明らかにした。

国営サウジアラビア通信は、世界最大の石油輸出国サウジアラビアは、「石油施設へ攻撃を受けたこともあり、世界市場への石油供給が不足しても、いかなる責任も負わないことを宣言する」と報じている。

サウジアラビア外務省は、「イランに支援されたテロリストのフーシ派民兵から我が国の石油施設が攻撃されたこと」を受けて声明を発表した。

サウジアラビアの指導者たちは、エネルギー市場を安定させ、禁輸されているロシアの石油を相殺するために供給を増やして欲しいというアメリカらの要請に抵抗しているため、ロシアのウクライナ侵攻でアメリカ・サウジ間の緊張は既に高まっている。

サウジアラビアのエネルギー省は日曜日、国営石油大手アラムコが所有する石油製品流通ターミナル、天然ガスプラント、製油所などがドローンとミサイルによる攻撃を受けたと発表した。

サウジアラビアのエネルギー省は、この攻撃により「製油所の生産が一時的に減少したが、これは在庫から補填される」と述べた。

サウジアラビア外務省は、西側諸国がサウジアラビアと共にイランとフーシを非難し、「世界のエネルギー市場が目撃している、この極めて微妙な状況において、石油供給の安全に対する直接的な脅威となる彼らの悪意ある攻撃を抑止する」よう呼びかけた。

2018年にイスタンブールのサウジアラビア領事館に誘い込まれて殺害された『ワシントン・ポスト』紙のジャーナリスト、ジャマル・カショギの殺害以来、アメリカ政府はサウジアラビアへの批判を強めている。

サウジアラビアの人権記録やイエメン内戦をめぐる緊張が、アメリカ連邦議会において超党派の議員たちからの批判を招き、それがまた両国間の争いに拍車をかけている。

しかし、アメリカのジョー・バイデン政権は、ロシアのウラジミール・プーティン大統領に最大限の圧力をかけるために外交政策を立て直し、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子との関係を再構築しようとしていると複数のメディアが報じている。

『ウォールストリート・ジャーナル』紙は日曜日、ここ数週間にわたり、アメリカはサウジアラビアに「相当数」のパトリオット迎撃ミサイルを送り込んだと報じた。サウジアラビア政府はアメリカ政府に対してフーシ派からの攻撃に対処するための防衛的な武器を送るように求めていた。

=====

フーシ派勢力がサウジアラビアのエネルギー施設に複数のミサイルを発射(Houthi's fire missiles at Saudi energy facility

オラミフィハーン・オシン筆

2022年3月20日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/middle-east-north-africa/598959-houthis-fire-missiles-at-saudi-energy-facility?utm_source=thehill&utm_medium=widgets&utm_campaign=es_recommended_content

ロイター通信は、サウジアラビア政府は、イエメンのイランから支援を受けているフーシ派が土曜日の夜から日曜日の朝にかけて、様々なエネルギー施設や淡水化施設に向けて複数のミサイルを発射したと発表したと報じた。

サウジアラビアのエネルギー省は日曜日に発表した声明で、ジザン地方の石油製品流通ターミナル、天然ガスプラント、紅海のヤンブ港にあるヤスレフ製油所がドローンとミサイルによる攻撃を受けたと発表した。

サウジアラビアのエネルギー省からの声明には、「ヤスレフ製油所への攻撃により、製油所の生産が一時的に減少したが、これは在庫から補填される」と書かれている。

サウジアラビアのエネルギー省はまた、多くの石油物流工場が攻撃され、ある工場で火災が発生したと付け加えた。サウジアラビア政府のある高官によると、火災は制御され、死傷者は報告されていないということだ。

フーシ派のスポークスマンであるヤシャ・サレアは、過激派グループがサウジアラビアで多くの施設を攻撃したことを認めた。

サウジアラビア主導の軍事連合によると、武装勢力フーシ派はこの他、アル・シャキークの海水淡水化プラント、ダーラン・アル・ジャヌブの発電所、カミス・ムシャイトのガス施設などを攻撃対象として攻撃を加えてきた。ロイター通信によると、サウジアラビア国防軍は弾道ミサイル1発とドローン9機を迎撃したと報じている。

ハンス・グルンドベルグ国連特使は、数万人が死亡し、数百万人が飢餓に直面している7年間の戦闘を終わらせるための条約の可能性について、双方が協議したと述べたとロイター通信は報じている。

ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は日曜日の声明の中で、フーシ派からの攻撃を非難した。

サリヴァン補佐官は声明の中で、「アメリカは内戦終結に向けた取り組みを全面的に支持し、フーシ派の攻撃から自国の領土を守るパートナーを今後も全面的に支援していく。国際社会にも同じことをするよう求める」と述べた。

=====

ムハンマド・ビン・サルマンはバイデンに対して影響力を持ち、それを利用している(Mohammed bin Salman Has Leverage on Biden—and Is Using It

-サウジアラビアの原油価格引き下げへの協力は欧米諸国の価値観の犠牲の上に成り立つ。

アンチャル・ヴォウラ筆

2022年3月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/03/24/mohammed-bin-salman-saudi-ukraine-oil-biden-opec/?tpcc=recirc_trending062921

ウクライナ侵攻後にロシアへ科された制裁によって、世界のエネルギー市場には大混乱がもたらされた。西側諸国は、1バレル140ドル近くまで高騰した原油価格をどう抑制するか、ロシアのエネルギー供給への依存からどのように脱するかでパニックに陥った。アメリカとイギリスはロシアの石油購入の禁止を発表し、伝統的な同盟国であるサウジアラビアに対して石油の供給を開始し、世界の石油価格を下げるように説得することに躍起となっている。

しかし、最大の産油国であるサウジアラビアとアラブ首長国連邦は、この危機を自分たちの好機と捉えて、それに応じようとはしなかった。アメリカと欧米諸国へのメッセージは明白である。サウジアラビアは、人権侵害で批判され続ける対象として扱われるには、あまりにも大きな影響力を地政学的に持っている、ということである。

サウジアラビアはアラブ首長国連邦以上に油田の鍵を握っており、油田を開放し、親ロシアの石油政策を転換する前に、アメリカから大きな譲歩を得ることを期待している。エネルギー安全保障のために人権が再び犠牲になることを、活動家たちは恐れている。アメリカもイギリスも、サウジアラビアが3月中旬に行った81人の大量処刑を公然と批判していない。欧米諸国の対サウジアラビア政策は、消費者の財布への圧力を緩和するためのおだてが中心となっている。

サウジアラビアとアラブ首長国連邦は日量300万バレル以上の余力を持ち、その一部を放出することで原油価格を下げることができる。さらに、ロシアは日量約500万バレル、その8割近くを欧州に輸出しているため、リヤドとアブダビが支援を確約すれば、欧州諸国の懸念を払拭し、ロシアへの依存を減らすよう促すことができる。

しかし、湾岸諸国は、ロシアを含む石油カルテルの拡大版である「OPEC+1」への参加を理由に、これを控えている。その理由は、ウクライナ戦争は今のところ石油の供給に大きな支障をきたしていないため、生産量を増やす必要がないためだとしている。しかし、専門家たちは、これは世界政治の大きな変化を反映した政治的決断であると見ている。ロシアの戦争マシーンをも利する価格を維持する選択は、湾岸諸国の独裁者たちがもはやアメリカの緊密な同盟諸国の地位にいる必要性を感じず、同じような権威主義者たちとの新たな同盟を受け入れていることを示すものである。過去に何度か、サウジアラビアの支配者はアメリカの同盟諸国を喜ばせるために増産や減産を行ったことがある。

しかし今回、サウジアラビアの事実上の支配者であるムハンマド・ビン・サルマン王太子は、ジョー・バイデン米大統領に復讐をするチャンスが到来したと見ているようだ。サルマンはこれまでバイデンから数々の侮辱を受け、優遇されてこなかったと考えているようだ。バイデンはまだ大統領選挙の候補者だった時期に、サウジアラビアをパーリア国家(pariah state 訳者註:国際社会から疎外される国家)と評し、大統領就任後にサウジアラビアの反体制派でワシントン・ポスト紙の記者ジャマル・カショギの暗殺に王太子が関与したとする情報報告書を公開した。さらに、サウジアラビアもアラブ首長国連邦も、イラン核合意の再開の可能性についての懸念を持っているがこれは無視され、イエメンのフーシ派が自国の船や都市を攻撃したことに対してアメリカが行動を起こさないことには、軍事同盟国としての義務を果たさなかったと感じたという。最近では、フーシ派を指定テロリストのリストに入れ続けて欲しいという嘆願さえもワシントンによって無視された。

ロシアのプーティン大統領の戦争をきっかけに燃料価格が上昇したため、ホワイトハウスはバイデンと不貞腐れた王太子の電話会談を実現しようと奔走したが拒否された。しかし、サウジアラビアの後継者サルマンはカショギ殺害を命じたという疑惑を通してプーティンの側に立ち、女性人権活動家が逮捕され囚人が大量に処刑されても非難を囁くこともなかった。サルマンはプーティンの緊密な同盟者と見られることに全く不安を感じていないのである。

サウジアラビアが同じ権威主義者プーティンに近づいたのは、当時のバラク・オバマ米大統領との関係が悪化した2015年に遡る。その1年後、ロシアがOPECに加盟した。リヤドはその後、モスクワとの関係を強化する一方、アメリカとの関係は、オバマ時代のイランとの核合意から離脱したドナルド・トランプ米大統領の在任中に改善し、バイデンが指揮を執って合意復活のための協議を再開すると再び悪化するなど、一進一退を繰り返している。トランプ政権時代、ムハンマド・ビン・サルマンは改革者として描かれていたが、バイデン政権下では、サウジアラビアのイエメン攻撃で民間人が死亡したことや、自国内の人権侵害で再び厳しく批判されるようになった。

クインシー・インスティテュート・フォ・レスポンシブル・ステイトクラフトの共同設立者であり上級副会長を務めるトリタ・パルシは、サウジアラビアがロシアを支持している理由は、サルマン王太子がロシア大統領の地位をプーティンが継続し、アメリカで政権交代が起きることを確信しているからだと述べている。

パルシは次のように発言している。「サウジアラビアの王太子サルマンはプーティンに賭けている。サルマンはプーティンを信じているだけでなく、共和党が中間選挙で勝利し、バイデンがレイムダックになることを望んでいる。2025年までに、バイデンと民主党は政権を失い、プーティンはロシアの大統領に留まるとモハメド・ビン・サルマン王太子は信じているようだ」。

今回の危機は、アメリカが主張するエネルギーの独立性を改めて認識し評価することを余儀なくさせた。新型コロナウイルス感染拡大によって大きな損失を被った国内のエネルギー産業をよりよく管理するために、より首尾一貫した長期計画を打ち出すか、口を閉じて権威主義者たちを容認するかのどちらかでなければならない。

エネルギー分野の専門家たちによれば、いずれにせよ、米国のフラッキング企業(訳者註:シェールガス採掘を行う企業)が新たな井戸を掘るには数カ月かかるという。イランやヴェネズエラに対する制裁が解除されたとしても、その石油を世界市場に供給できるようになるにはまだ時間がかかるだろう。先週末、ドイツはカタールと液化天然ガス(LNG)輸入の長期契約に調印した。カタールはロシア、イランに次いで3番目に大きなガス埋蔵量を持つ国であり、この契約によりドイツは液化天然ガスを迅速に輸入することができる。この協定により、ドイツはカタールのガスを輸入できるように2つの液化天然ガス基地の建設を急ぐが、それでもそのガスがドイツの家庭に供給されるまでには何年もかかるだろう。これまでドイツは、パイプラインで輸送される安価なロシアのガスに頼っていた。

現在世界最大の産油企業であるサウジアラムコは、2021年に過去最高益となる1100億ドルを稼ぎ出し、前年の490億ドルから124%増の純利益を記録した。サウジアラムコは石油の増産に向けた一般的な投資を発表したが、短期的に供給を増やすことは何もしていない。サウジアラムコのアミン・ナセルCEO(最高経営責任者)は、「私たちは、エネルギー安全保障が世界中の何十億人もの人々にとって最も重要であると認識しており、そのために原油生産能力の増強に引き続き取り組んでいる」と述べた。

国際エネルギー機関(IEA)は、今年末までにロシアから少なくとも日量150万バレルの原油が失われる可能性があると発表している。それが更なる価格高騰につながることは間違いない。OPEC+は次回今月末に会合を開き、状況を把握して原油の生産量を決めると見られている。しかし、サウジアラビアとアラブ首長国連邦の要求についてアメリカに耳を傾けてもらえたとどれだけ感じられるかに大きく左右される。

彼らは、アメリカが核取引に関する立場を変えないことを確信しているが、イエメンのフーシ派との戦いにおいて湾岸諸国を支援し、人権侵害に対する批判を減らすことができるだろうか? 厳しい国益の世界で最も低い位置にあるのは、個人の自由である。サウジアラビアの活動家たちは、世界の石油の安定と価格の引き下げのために、再び代償を払うことになるかもしれない。しかし、ムハンマド・ビン・サルマン王太子は、バイデンからそれ以上のものを求めるかもしれない。

=====

バイデンはロシアを支持するサウジアラビアを罰するべきだ(Biden Should Punish Saudi Arabia for Backing Russia

-リヤドは石油市場に変化をもたらすことができたが、アメリカではなく、権威主義者の仲間に味方することを選択した。

ハリド・アル・ジャブリ、アニール・シーライン筆

2022年3月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/03/22/biden-mbs-oil-saudi-arabia-russia-ukraine/

アメリカとその同盟諸国が一致団結してロシアのウクライナ侵攻に反対している中、サウジアラビアはロシアに味方している。侵略を公に非難せず、OPEC+協定へのコミットメントを繰り返したことで、サウジアラビア政府はアメリカとの長年のパートナーシップに亀裂が入っていることを露呈した。

原油増産の懇願にもかかわらず、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子は、ロシアのプーティン大統領と会談した1週間後に、ジョー・バイデン米大統領との会談を拒否したとされる。ロシアの石油の補償を拒否することで、王太子は国際社会が科す制裁に直面してエネルギーを武器として、エネルギーに依存するヨーロッパ諸国をロシアの石油とガスの人質にすることを許可し、プーティンの侵略を助長している。

月曜日になっても、サウジアラビア政府はロシアの行動を非難することを拒否している。その代わりに、サウジアラビアの外務大臣はロシア側と会談し、両国の二国間関係とそれを「強化・統合する方策」を確認した。

サウジアラビアの強硬姿勢にもかかわらず、バイデン政権は最近、フーシ派がサウジアラビアの水とエネルギー施設を攻撃したため、パトリオット対ミサイルシステムをサウジアラビアに追加配置した。サウジアラビアは、アメリカの保護が必要であることを表明し、これらの攻撃による石油供給不足の責任を否定する声明を出した。米国は、アラムコによる投資拡大の約束にもかかわらず、リヤドによる増産の保証を報告することなく防衛策を送ったのである。

バイデン米大統領から要求を受けてもサウジアラビアが石油の増産に消極的なのは、忠誠心が変化していることを示す最新の兆候である。70年にわたるパートナーシップを通じて、ワシントンはリヤドの主要な安全保障の保証人として機能し、その見返りとして、サウジアラビアの歴代国王はエネルギー問題でアメリカと緊密に協調してきた。しかし、ムハンマド・ビン・サルマン王太子が権力を掌握して以降、二国間関係は、7年間続くイエメン戦争などサウジアラビアの無謀な外交政策の決定や、ジャーナリストのジャマル・カショギの殺害で最も顕著に表れた人権状況の悪化によってますます緊迫してきた。

複雑な関係にもかかわらず、バイデン政権関係者の多くは、サウジアラビアの安全保障に対するアメリカのコミットメントを繰り返し表明し続けた。このような発言は、フーシの越境ミサイルやドローンによる攻撃からサウジを防衛するために最近6億5000万ドルの武器売却を行うなど、サウジアラビア主導のイエメン戦争に対するアメリカの継続的支援に裏打ちされたものである。

更に言えば、アメリカは最近、カタールを重要な非NATO加盟国に指定し、1月にアブダビで起きたフーシ派の無人機攻撃を受けてアラブ首長国連邦に追加の軍事資産を動員するなど、他の湾岸諸国のパートナーの安全確保に献身的であることを示している。このような安心感を持ちながらも、サウジアラビアは石油の増産と引き換えにイエメンでの戦争に対するアメリカの支持をもっと強要しようとしている。

現実には、サウジアラビアはアメリカの安全保障に関する保証を疑っていない。王太子が望んでいるのは、自らの支配を確実にすることである。アメリカは、湾岸諸国のパートナー諸国の物理的な安全を支援するために行動することはあっても、権威主義的なアラブの指導者が行うように、自分たちの好む体制を守るために民間人を攻撃することはないことを示してきた。湾岸諸国の支配者たちは、「アラブの春」におけるアメリカの中立的な姿勢が、エジプトにおけるワシントンの長年にわたるパートナー、ホスニー・ムバラクの失脚を許したと考えている

サウジアラビアの王室は、2011年にサウジアラビアが直接軍事介入したことでバーレーンのアル・ハリファ王家を救うことができた、マナーマの港に米海軍の第5艦隊がいたにもかかわらず、アメリカは役に立たなかったと考えている。それ以来、サウジアラビアの対米不信と国内の異論に対するパラノイア(被害者意識)は高まる一方である。サウジアラビアはサルマン国王とムハンマド・ビン・サルマン王太子の統治下で、ロシアや中国との密接な関係の育成を加速させている。

アメリカと異なり、ロシアと中国にはサウジアラビアを保護した歴史も、湾岸における意味のある軍事的プレゼンスもない。

プーティンや中国の習近平のように、サウジアラビアの歴代の支配者たちは資本主義における独裁的モデルを好み、権威主義体制の生存と国家間関係からの人権の排除に基づいた代替的な世界秩序を構築しているのである。

中国やロシアが両国内のイスラム系少数民族を虐待していることに対してサウジアラビアや他の主要イスラム国家が無関心であることは、これらの政府が人権に反対していることの相性の良さを示している。中国とロシアがイスラム主義運動を政権の不安定要因と考えて偏執狂的に恐れているが、サウジアラビアとアラブ首長国連邦はこうした考えを共有している。

サウジアラビアの国王と王太子は、イスラム教の重要性をサウジアラビアの国家戦略から切り離し、王室の役割を中心に据えることで、イスラム教徒を積極的に疎外しようとしてきた。例えば、2022年2月22日、サウジアラビアは初めて建国記念日を祝った。この新しい祝日は、サウジアラビアがワッハーブ派の創始者であるムハンマド・イブン・アル・ワッハーブと提携し、それによってサウジアラビアの宗教的正当性を高め、領土拡大を開始した1744年ではなく、ムハンマド・ビン・サウドが支配権を得た1727年を起源とするものであった。

西側諸国の多くは、サウジアラビア政府が宗教警察のようなアクターを無力化し、厳しい男女分離を若干緩和する決定を歓迎したが、これらの変化はまた、前例のないレヴェルの内部抑圧に対応している。人権活動家の投獄、海外での反体制派に対する弾圧、そして最近の81名の囚人の大量処刑は、ムハンマド・ビン・サルマン王太子の意図の本質を明らかにしている。それは、かつて国家権力を握っていた聖職者や保守派エリートを含む全ての反対意見を、より西側の社会規範の皮をかぶって黙らせることだ。

カショギの殺害をめぐる長引く憤慨と政治的疎外は、王太子に、欧米諸国から見たサウジアラビアのブランドを再構築する努力は失敗したと確信させたのかもしれない。その代わりに、中国とロシアは、ジャーナリストを殺害した皇太子を決して非難しないパートナーである。ロシアの場合、最近の歴史では、その行為すらも支持する可能性さえある。

しかし、中国とロシアに安全保障の保証に賭けるのはギャンブルである。アメリカと異なり、ロシアと中国にはサウジアラビアを保護した歴史もなければ、湾岸地域における軍事的なプレゼンスもない。仮にサウジアラビアが米国製の軍備から移行する場合、そのプロセスには数十年と数千億ドルを要するだろう。

更に言えば、中国とロシアはイランと緊密な互恵関係にあり、サウジアラビアの顔色をうかがってこの関係を犠牲にすることはないだろう。サウジアラビアは、アメリカと対話する際、イランやイランが支援する集団に対するアメリカの保護をこれまで以上に保証するよう主張してきた。リヤドが北京やモスクワとの提携のためにそうした懸念を払拭したいと望んでいるとすれば、こうした姿勢はテヘランに対するアメリカの不信感を煽ることが主な目的であることが明らかになるであろう。

サルマン王太子のイランへの不安は本物だとしても、それ以上に国内状況への不安もまた大きい。そのためには、民間人に多大な犠牲を強いてでもシリアのアサド政権を維持しようとする姿勢を示したプーティンのようなパートナーが望ましい。今のうちにロシアと手を組んでおけば、サウジアラビア市民の大規模な抗議行動など、いざというときにクレムリンが助けてくれるだろうと期待しているのだ。

現在の米国のサウジアラビア宥和政策は、リヤドがワシントンを必要としている以上にバイデンが自分を必要としているという王太子の認識を強めているだけのことだ。

ムハンマド・ビン・サルマン王太子は、任期付きで選出された欧米諸国の政府高官たちのためにプーティンと敵対するリスクを冒すよりも、むしろプーティン支持という長期的なギャンブルに出るだろう。ボリス・ジョンソン英首相やジェイク・サリヴァン米国家安全保障問題担当大統領補佐官、ブレット・マクガーク米国家安全保障会議中東担当調整官らアメリカ政府高官たちによる最近の直接の懇請の失敗や、アントニー・ブリンケン米国務長官との面会を拒否したことは、サウジアラビア王太子が心を決めていることの証拠である。プーティンのエネルギー力を弱め、ロシアの石油ダラーの生命線を断つような石油政策を採用することはないだろう。彼は、ワシントンよりモスクワを選んだのだ。

同様に、バイデン政権がヨーロッパの同盟諸国にロシアの化石燃料を手放すよう圧力をかけているこの時期に、アメリカ政府がサウジアラビアに石油を懇願するのは止めるべきだ。アメリカの民主政治体制とサウジアラビアの権威主義体制は相容れず、長い間その関係を緊張させてきた。アメリカがサウジアラビアに石油をねだるのを止めるのは、もう過去のことだ。もう一つの残忍な炭化水素を基盤としている独裁国家に力を与えている場合ではないのだ。

ロシアの石油をサウジアラビア、イラン、ヴェネズエラの石油に置き換えるという不愉快な見通しに直面したとき、イラン核取引に再び参加し、イランの化石燃料を世界市場に戻すことは、最近の価格上昇に対処するためという理由はあるにしても、最悪の選択だ。イラン産原油の購入は、再交渉された核取引の条件によって制約されたままである。一方、サウジアラビア(またはヴェネズエラ)の要求に応じれば、アメリカが懸念する分野に対処するための追加の安全措置はないことになる。長期的には、バイデンは化石燃料への依存を減らし、それによって避けることができない石油価格ショックからアメリカ経済を守るよう努力しなければならない。そうしてこそ、アメリカ政府は石油を保有する権威主義者たちとの偽善的な取引を止めることができる。

リヤドは、最近の関係の冷え込みにもかかわらず、依然としてワシントンの保護を当然と考えているようだ。その理由の一つは、カショギの殺害とイエメンの荒廃についてサルマン王太子の責任を追及するというバイデン大統領の約束が守られなかったことが挙げられる。

現在のアメリカのサウジアラビアに対する宥和政策は、リヤドがワシントンを必要としている以上にバイデンが自分を必要としているというムハンマド・ビン・サルマン王太子の認識を強めるだけであり、この見解は、アメリカ政府が自分を支援し続ける以外に選択肢がないと考えて、ロシアや中国とより緊密に提携することを促すだろう。

その代わり、バイデンはこの機会に、全ての武器売却を中止し、サウジアラビア軍への保守(メンテナンス)契約を停止するなど、アメリカとサウジアラビア王国の関係を根本的に見直すべきだ。そうすることで、リヤドに対して唯一の安定した安全保障上のパートナーを失う危険性があることを示すことができる。

もし、サルマン王太子が独裁者たちへの支援を強化するならば、アメリカにとって大きな損失にはならないだろう。

※ハリド・アル・ジャブリは、医療技術の起業家であり、心臓専門医でもある。サウジアラビアから追放され、兄弟2人が政治犯となっている。ツイッターアカウント:@JabriMD

※アニール・シーラインはクインシー・インスティテュート・フォ・レスポンシブル・ステイトクラフト研究員である。ツイッターアカウント:@AnnelleSheline

(貼り付け終わり)

(終わり)


bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 ウクライナ戦争はウクライナ東部にロシア軍が注力する中、ウクライナ軍の抵抗も激化している。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は重要拠点マリウポリが陥落すれば、ロシア側とは交渉しないと発言している。マリウポリ死守命令であり、ゼレンスキー大統領は戦争を停止することはないと宣言したようなものだ。そうした中で、ウクライナは国家を挙げて西側諸国により効果の高い武器の供与を求めている。NATO加盟の国々の中には、戦車や重火器支援を行おうとしている国も出ている。こうした支援はただ武器そのものを与えるのではなく、交換用のパーツや整備員(メカニック)も支援することであり、その輸送運搬、資金まで提供することである。
 こうした支援の程度を引き上げることで、ロシアから見れば実質的にこれらの国々はウクライナの共闘者(co-combatant)ということになる。具体的にはヨーロッパ諸国ということになるが、これらの国々は非常に危険な火遊びをしているということになる。「ロシアが攻撃してくるなんてありえない」と甘く考えて後で痛い目に遭うということはあり得る。また、こうした支援をいつまで続けられるのかということもある。武器商人たちは武器が売れて結構なことだが、売り買いということは現金が必要となる。その現金はどうやって調達するのかということになる。ウクライナに支払わせるということは無理だろうから、自国民の血税ということになる。日本でもそうだが戦争によって、一般国民の生活は苦しくなっている。エネルギー価格の高騰によって、新型コロナウイルス感染拡大で傷んだ経済に更なる打撃が加えられている。そこに戦争に巻き込まれる(自分たちが攻撃される、家族に死傷者が出る、自分の親族が所属する軍隊が派遣されるなど)ことまで加わってくる。

 日本は安全で、口先で「どんどんやれ」「いいぞいいぞ」と勇ましく述べるのは簡単だが卑怯だ。そして現実が見えていない。日本はロシアと国境を接している。日本も気を付けて対応しなければどんな事態に巻き込まれるかもわからない。ロシアも「日本はアメリカの属国で色々と大変だ、独自の行動は難しいんだろう」と忖度してくれることもあるだろうが、それは最大限善意で解釈すればの話だ。現状で日本にまで戦争を仕掛けるということはロシアの国力から考えて無理だし、アジアの平和と安定を望む中国(それによって経済成長という利益を得ている)が許さないだろう。しかし、戦争以外の方策で日本にダメージを与えようとしてくるだろう。だから日本は気を付けて行動しなければならない。

 ヨーロッパ諸国はハイエンドな(高度な)武器をウクライナに供与しようとしている。そうなれば戦争はより大規模に、より深刻に、より泥沼になっていく。ヨーロッパ諸国がウクライナ戦争のエスカレーションに踏み切れば、それはもう第三次世界大戦ということになる。

(貼り付けはじめ)

西側諸国は最終的にウクライナにとっての重要な武器を本格展開し始める(The West Finally Starts Rolling Out the Big Guns for Ukraine

-ウクライナ人の中には、これはあまりにも小さ過ぎ、かつ遅過ぎるのではないかと懸念する人もいる。

ロビー・グラマー、ジャック・デッチ、アイミー・マキノン筆

2022年4月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/04/15/tanks-heavy-weapons-ukraine-russia-nato-putin-offensive/?tpcc=recirc_latest062921

アメリカとNATOの同盟諸国は、ウクライナ軍がウクライナ東部のドンバス地方でロシア軍との大規模な戦闘に備えるため、戦車、ヘリコプター、重火器の提供を強化した。

この新しい武器供与は、戦争初期における西側のウクライナ支援からの著しい転換を意味する。当時、欧米諸国の当局者たちは、ウクライナがロシアの大規模な侵攻に対してどの程度持ちこたえられるかを確信できず、ロシアの手に落ちる可能性のある重火器を提供することに慎重になっていた。また、今回の武器供与は、対戦車ロケットなどの防御的なシステムから、戦争の重要な局面でウクライナが必要としているより攻撃的な兵器へのシフトを意味している。

チェコ共和国は今月初め思い切って水門を解放した。2月24日にロシアが侵攻を開始して以来、NATO諸国としては初めて戦車をウクライナに提供した。チェコ共和国はその他にも、ウクライナに装甲戦闘車輛と大砲システムも送った。

NATOの他の国々も、NATOの国境を越えてウクライナに高度な軍用機器を送り、チェコの動きに追随している。スロヴァキアはウクライナにS-300防空システムを送り、アメリカは水曜日に、ウクライナに8億ドル相当の軍需品を追加で供給すると発表した。その中には、MI-17ヘリコプター11機、M113装甲兵員輸送車200台、四輪駆動車ハンヴィー100台、スイッチブレード「カミカゼ」ドローン300機、重榴弾砲、数千発の砲弾、その他の軍需品が含まれている。

戦争の最初の段階では、西側諸国の政府関係者の多くが、キエフは数日のうちにロシア軍の攻撃によって陥落すると考え、生き残れるかどうか分からない政府に重火器を送ることに躊躇していた。

しかし、欧米諸国からの対戦車兵器や小火器に支えられたウクライナの強固な抵抗と、装備の不十分なロシア軍の不手際により、ウクライナ北部でのロシアの大規模な攻勢が停滞したことで状況が大きく変化した。

ウクライナへの重火器の移送は単純な話ではない。重車両や武器そのものの提供以外にも、ウクライナへの重火器の移送は、紛争地域で車両を稼働させ続けるための訓練、交換用部品、整備士など、バックアップのための大規模な物流が必要になる可能性がある。ロシアは、アメリカやNATO諸国の兵器がウクライナに輸送されるのを攻撃すると脅している。

元在ヨーロッパ米軍司令官ベン・ホッジスは次のように述べている。「戦車はただのレンタカーではない。機械化された車両や装甲車の譲渡について話すときはいつでも、交換用部品、メンテナンスパッケージ、訓練、燃料、弾薬など、彼らが作戦を継続できるようにすることも考えなければならない」。

それでも、あるアメリカ国防省高官は月曜日、複数の同盟諸国がウクライナに戦車を提供することをまだ検討中だと語った。提供する戦車のほとんどは、キエフの部隊がすでに訓練を受けているソヴィエト時代のものである。ホッジスは、「これはおそらくウクライナ人が既に慣れ親しんでいる装備なので、訓練にかかる時間は比較的短くてすむだろう」と述べた。

ウクライナの高官は、兵力も人員も不足している軍隊への更なる支援を求めている。しかし、物流の複雑さから、西側諸国の政府の中には、ウクライナへの大型重車両の移送を差し控える動きもある。

また、特にドイツの一部の政治家たちは、ウクライナ軍を重火器で強化することで、西側諸国がロシアの更なる侵略の標的になるのではないかと懸念している。この議論は、ドイツの連立与党内に亀裂を生じさせたとも報じられている。

ドイツの大手兵器メーカーであるラインメタル社は今週初め、中古のレオパード1戦車を最大50台、ウクライナに供給する用意があると語ったが、ドイツ政府はまだこの兵器移送を承認していない。ドイツ政府関係者の中には、東ヨーロッパで一般的なソヴィエト連邦後の兵器システムに精通しているウクライナ人に、西洋製の戦車を訓練するには時間がかかり過ぎると考えて、この案に難色を示す者もいる。ラインメタル社の最高経営責任者であるアルミン・パッパーガー氏は、この議論に反論し、数日で訓練が可能であると述べた。

ウクライナ側からすれば、西側諸国による新たな武器供与は歓迎すべき変化であるが、まだ十分ではないと映る。ウクライナの新旧の政府関係者たちは、戦争の決定的な新段階になると予想される事態を目前に控える状況下で、西側諸国はウクライナをより武装させるためにもっとできることがまだあると口を揃えて訴えている。

ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は水曜日、「武器を追加しなければ、この戦争は終わりのない血の海になり、悲惨さと苦しみと破壊を広げるだろう」とツィートし、ロシア軍が軍事攻撃中に民間人に残虐行為を行った都市を列挙した。ゼレンスキーは「マリウポリ、ブチャ、クラマトルスク・・・、リストは続くだろう。ウクライナの重火器以外、誰もロシアを止めることはできない」とツィートした。

ウクライナ政府関係者や政府アカウントは、重火器のさらなる提供を訴えて、ソーシャルメディア上でハッシュタグ「#ArmUkraineNow」を使い始めている。

ウクライナの独立反腐敗防衛委員会の委員長であるオレナ・トレグブは、今回実施される西側からの新たな重火器提供は、数的に優勢なロシア軍との戦いでウクライナを優位に立たせるのに十分ではないと述べた。トレグブは「ウクライナは点滴を打たれて、ゆっくりと死んでいくようなものだ」と述べた。

しかし、米欧の当局者は、今回の新たな重火器提供は、ワシントンと他のヨーロッパの同盟諸国が、ウクライナがロシアの猛攻を生き残るだけでなく、攻勢に転じるのを支援する準備を始めたことを意味する、と述べている。たとえウクライナが不十分だと考えていても、重火器の供与はウクライナの軍事的成功に不可欠であることが証明されるだろうというのがその主張だ。

リトアニアのアルビダス・アヌサウスカス国防相は、「西ヨーロッパ諸国は、この戦争に勝つためにウクライナを支援するためにできる限りのことをしており、この支援は量的にも質的にも増大する一方だ」と、本紙『フォーリン・ポリシー』誌に語っている。

ウクライナからは戦車に対する欲求が高まっており、そして西側諸国が戦車をもっと送るよう圧力をかけている。それは、ウクライナ東部のドンバス地方が平坦な戦場で、戦車の操縦がしやすいことも要因となっている。

ロンドンにあるシンクタンク、国際戦略研究所のフランツ・ステファン・ガディ研究員は次のように語っている。「ウクライナ東部の大部分は、いわゆる“戦車の国”で、機械化戦争に理想的な平らなオープングラウンドだ。そのため、ウクライナはこの戦いにとどまり、ロシア軍を足止めし、最終的に機会を捉えて反撃するために、主力戦車、歩兵戦闘車、中距離防空システム、徘徊型兵器(訳者註:攻撃型無人航空機)などを必要としている。ウクライナ軍の重要な課題は、優れたロシア軍の火力を前にして、いかに大規模な複合武器作戦を行うかである」。

アメリカは、ウクライナへの最新の武器提供について、ウクライナの広範な希望リストのいくつかのボックスにチェックをつけ始めている。米国防総省の高官は、国防総省が定めた基本規則に基づき匿名を条件に取材に応じ、ウクライナの訓練生たちが東ヨーロッパのNATO加盟諸国で榴弾砲や対砲台レーダーなどの新システムの使い方の訓練を受ける計画が進行中であると述べた。

また、ヨーロッパのNATO諸国がウクライナに軍備を移転する際にも、アメリカは重要な後ろ盾となっている。スロヴァキアがS-300防空システムをウクライナに送った後、アメリカはスロヴァキアにパトリオットミサイル防衛システムの1つを配備し、空白を埋めた。また、アメリカは今月初めにポーランドと大規模な武器取引に調印し、ポーランド軍に250台のエイブラムス戦車を供給することになった。

専門家の中には、米国はさらに踏み込んで、ポーランドなどのNATO加盟諸国がウクライナにミグ戦闘機を譲渡する際に、旧式のF16戦闘機の空軍への補充を提案することで支援すべきだと主張する者もいる。一部の同盟諸国はこの旧式のミグ戦闘機の譲渡に難色を示しており、訓練や兵站を考慮すると複雑化する可能性がある。スロヴァキアはミグ戦闘機のウクライナへの移送を検討していると言われている。

前述の元在ヨーロッパ米軍司令官ホッジスは、こうした軍事支援がロシアとNATO諸国との間の紛争の引き金になるという西側諸国の懸念は誇張されすぎており、ワシントンはウクライナへの武器供与をさらに強化する必要があると主張した。

ホッジスは「私たちはリスクを誇張してきたし、ロシアもそれを知っている。世界史上最も強力な同盟が命がけで戦っている国に25年前の旧式の航空機を提供することにロシア派怯えているのである」と述べている。

ホッジスは更に「もし我々が民主政治体制にとっての兵器庫(the arsenal of democracy)であるならば、民主政治体制にとっての兵器庫として、ドアを開け、ウクライナ人が必要とするものをすべて持ち出そう」と述べた。

この議論は、ロシアがキエフ郊外から撤退した後に再編成し、ウクライナ軍がウクライナ東部の支配をめぐる新たな戦いに直面するためにできる限りの火力を結集している、戦争の重大な局面で行われている。米国防総省当局によると、ロシアはウクライナ東部のドネツク市の南に大砲部隊を配置している。今週初めに公開されたイギリスの国防情報報告書は、クレムリンがドンバスの主要人口拠点に対する空爆を強化すると予測しており、主要鉄道拠点であり、先週のロシアの弾道ミサイル攻撃で59人が亡くなったクラマトスクなどにも空爆を行うと分析している。

セントアンドリュース大学のフィリップス・オブライエン教授(戦略研究専攻)は、「ウクライナはドンバス地方においてロシア軍の重火砲に対してより脆弱となる可能性がある。ウクライナ軍がロシア軍に対して町や都市での戦いを強いるのではなく、より広い場所で争おうとすればロシア軍の重火砲の攻撃に晒されることになる」と指摘した。オブライエンは更に「個人的には、ウクライナに航空戦力を与えるために、防空システムとUAV‘(訳者註:ドローン)から始めるのが良いと考える。長距離砲も非常に有効となるだろう」と述べた。

西側諸国からの武器提供が増大すれば、ロシアがウクライナ東部で攻勢を維持することが難しくなる可能性がある。西側諸国は、クレムリンが5月9日のナチス・ドイツに対するロシアの第二次世界大戦の勝利を記念する祝日に向け、自軍に大きな戦果を挙げることを切望していると考えている。専門家たちは、ロシアは戦争開始後1カ月で大きな損失を被った後、支援歩兵の不足とドンバスでの前進の鈍化によってロシアは困難に直面するだろうと見ている。

前述の国際戦略研究所のフランツ・ステファン・ガディ研究員は、「確かに、攻勢が永遠に続くことはない。私の推測では、ロシアにはこの戦いを6月まで続ける力はないだろう。だから、ウクライナに対してそれまでに何かを与えなければならないということになる」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)


bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ