古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

2022年06月

 古村治彦です。

 ウクライナ戦争勃発後、中立政策を採用してきたスウェーデンとロシアの隣国でソ連時代からロシアとは微妙な(絶妙な)関係を築き、こちらも西側と東側の間で中立のような状態にあったフィンランドがNATO加盟の意図を表明した。これはロシアからの安全保障上の脅威に対抗するためと見られている。
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ヨーロッパの地図

 ここで、下記の論稿のウォルト教授は、これまで成功してきた中立政策をここにきて放棄する理由、特にスウェーデンはNATOに正式加盟していないがこれまでNATOと緊密な協力関係を持ち、加盟国の責務を果たさずに利益を得てきたが、加盟することで義務が生じるのにどうして加盟するのか、ということを設問として提示している。その前提として、ロシア軍は旧ソ連軍時代よりも弱体化しており、ウクライナ一国を短期間で占領する力はなく、西側の援助があればそれは猶更である。それならば、わざわざNATOに加盟しなくてもよいではないかということになる。

 これについて、ウォルト教授は「脅威(threat)」という言葉で説明している。スウェーデンとフィンランドにとっては、「ロシアがウクライナに侵攻した」という事実が重要ということになる。NATOの加盟国であれば、ロシアが侵攻してくれば、NATO加盟諸国は義務として、侵攻された国を支援して、ロシアと戦うということになる。そうなればロシアは国家体制を変更させられるほどの痛手を被るか、核兵器を使用するかということになるが、そのような状況で核兵器を使用すれば国家体制は崩壊させられることになるだろう。

 スウェーデンとフィンランドはロシアからの「脅威」を感じてNATO加盟の考えを表明した。これによって、ヨーロッパ、特にバルト湾岸地域の状況は大きく変化する。ウクライナ戦争におけるプーティンの誤算はここにあると考えられる。NATOの北方拡大もまたロシアにとっては脅威となる。北極海、バルト海から黒海までの地域はヨーロッパの火薬庫になる可能性がある。

(貼り付けはじめ)

スウェーデンとフィンランドは何を考えているか?(What Are Sweden and Finland Thinking?

-ヨーロッパ諸国の指導者たちはロシアの意図を再評価し、プーティンが領土の現状維持に与えている脅威に対してバランスをとっている。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2022年5月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/05/18/nato-sweden-finland-russia-balance-threat/

優れた理論の長所の一つは、他の方法では意外に思えたり、少なくとも多少不可解に思えたりするような事象を理解できるようにすることである。例えば、スウェーデンとフィンランドが長年にわたる中立の伝統を捨て、NATOへの加盟を申請する決定を下したことがその例となる。

一見したところ、この決断の説明内容は明白である。ロシアは第二次世界大戦以降、ヨーロッパで最も破壊的な戦争を始め、かなりの残虐性をもってその戦争を遂行してきた。ウクライナ戦争が長引き、破壊的な膠着状態に陥る恐れがあるため、スウェーデンとフィンランドは安全保障環境が悪化していると判断し、NATO加盟によってもたらされると思われる、より大きな保護を選択したのである。大学で国際関係論を学んだ人なら、これは力の均衡理論(balance-of-power theory)の典型的な例と見るかもしれない。

それでも、この説明にはいくつかの疑問が残る。長い間成功してきた中立政策を放棄することは大きな一歩であり、将来的に大きなコストとリスクを伴う可能性がある。特にスウェーデンの場合、長年NATOと緊密に協力し、既に加盟国としての責務をほとんど果たすことなしに、多くの利益を受けることができた。この点は特に重要だ。それなのに、何故今になって方針を転換するのか?

もっと重要なことは、ウクライナにおけるロシアの惨めな軍事的パフォーマンスによって、スウェーデンやフィンランドは安全が損なわれるどころか、むしろ向上していると感じたかもしれない点だ。この戦争で、ロシア軍の能力では他国を征服することが難しいということが明らかになった。西側の制裁、戦争自体のコスト、そして人口が減少し高齢化する中で優秀な若いロシア人たちが海外に流出し続けることが重なり、ロシアの持つ潜在能力は今後何年にもわたって低下し続けるだろう。冷戦時代、ソ連の力が絶頂にあった時にスウェーデンは中立を保っていたことを考えると、少なくともスウェーデン(とフィンランド)がこのタイミングでNATOの保護を必要としたことは不可解ということになる。

私が長年主張してきたように、従来の力の均衡理論が不完全であることを認識すれば、このような不可解はなくなる。各国家は力の均衡(パワーバランス)に細心の注意を払っているが、各国家が本当に気にかけているのは脅威についてである。ある国家が他国に与える脅威のレヴェルは、その国家の総合的なパワーだけでなく、特定の軍事能力(特に他国を征服または害する能力)、地理的な近接性、および認識された意図の関数ということになる。

一般に、自国の近くにある国家は、遠くにある国家よりも危険である。同様に、征服に最適化された軍隊を持つ国家は、自国の領土を守ることを主目的とする軍隊を持つ国家よりも危険であるように見える。また、現状に満足しているように見える国家は、現状を修正しようとしているように見える国家よりも警戒心を抱かせない傾向がある。

脅威の均衡理論(balance-of-threat theory)は、1990年にイラクがクウェートを占領した際、崩れた経済基盤と三流の軍事力を持つイラクを凌駕する連合軍が誕生した理由を説明する。また、ヨーロッパがロシアのウクライナ侵攻にあれほど強力に対応しながら、遠く離れた中国の台頭にささやかな対応しかしていない理由もこの理論で説明できる。中国はロシアよりはるかに強く、長期的にはより大きな課題となりそうだが、ユーラシア大陸の反対側にあり、ヨーロッパ自体を脅かすに足る軍事力は持っていない。

スウェーデンとフィンランドの場合、転機となったのは明らかにロシアの意図に対する見方が変わったことだ。スウェーデンのマグダレナ・アンダーソン首相が週末に記者団に語ったように、スウェーデンがNATOへの加盟を決めたのは、ロシアの「暴力を行使する」「多大なリスクを負う」意思に対する見方が変わったからだ。ロシアがウクライナに侵攻した動機は、スウェーデン人にとって中心的な問題ではないことに注意したい。ロシアのプーティン大統領が根っからの拡張主義者であるか、深い不安感に大きく動かされているかは問題ではない。重要なのは、プーティン大統領が戦争に踏み切ったことである。

スウェーデンとフィンランドの反応(そして一般的な西側諸国の反応)は、国家が脅威をどのように認識し、どのように対応するかについて多くのことを教えてくれる。一般に、国家は、自国内の努力によって力を増すが、その力を現状変更のために使ったり、他の国から領土を奪ってより強くなろうとしたりしていない国に対して、どのように対応したらよいかを考えるのに苦労するものである。

この傾向には例外がある。19世紀にアメリカが北米大陸に力を拡大し、メキシコを解体することができたのは、他の大国と巨大な海によって隔てられていたことと、ヨーロッパ諸国が新興のアメリカにではなく、互いに照準を合わせていたことが理由である。しかし、台頭してきた国家が威張り散らさない限り、他の国家は増大する富から利益を得ようとする可能性が高く、それを封じ込めることは比較的少ない。

各国家は台頭する国家に対して疑いの目を向けるだろうが、その国が力を直接的に行使する意思を明確に示さない限り、反応は薄いものとなるだろう。中国が「平和的台頭(peaceful rise)」という戦略で成功を収めたのはそのためであり、結果として習近平がより積極的な行動を取るようになり、各国のより大きな懸念を引き起こしたのである。

プーティンの動機についてどう考えようが、彼がいくつかのレヴェルで大きな誤算を犯したことは、今や極めて明白である。プーティンはウクライナのナショナリズムを過小評価し、ロシアの軍事力を過大評価した。他の失敗した侵略者たちと同様に、彼は外交政策のリアリズムの重要な教訓を理解することができなかった。国家は脅威に対してバランスをとる。現状を打破するために武力を行使することは、一国がなし得る最も脅威を与える行為にほかならない。

戦争は時に必要であり、時には、戦争を始めた国にとって大きな利益をもたらす。しかし、戦争を始めると、必ず他の国々に警戒心を抱かせ、危険を封じ込めるために協力するようになるのが自然である。プーティンは、ヨーロッパが分裂しており、ロシアの石油とガスに依存しているため、自分の行動に反対することはできないと考えたのだろう。そこで彼は、目的を迅速に達成し、最終的には通常通りのビジネスに戻ることができることに賭けた。しかし、プーティンの得た結果は、ヨーロッパ諸国がロシアの意図に対する評価を改め、古典的なリアリスト的バランス(均衡)をとる行動をとったことだ。ウクライナ国内のネオナチの存在の可能性を過度に非難したこととロシア兵士の残忍な行動は結果として、スウェーデンとフィンランドの決断を容易にしただけのことだった。

ストックホルムとヘルシンキで起こっていることはこれで全てだろうか? おそらくそうではないだろう。NATOがウクライナに最新鋭の軍備を迅速に供給したことは、紛れもなく物流機能の優秀さを示すものであり、加盟することの価値を高めたかもしれない。西側諸国によるウクライナへの支援の高まりに対してロシアがエスカレートしなかったことも、ロシアの反撃についてのスウェーデンやフィンランドの懸念を和らげたと思われる。ロシアが弱体化すると同時に好戦的になっているのを見て、厳格な中立を放棄することがより安全な選択肢に見えたのかもしれない。

理由はどうであれ、世界の指導者の多くにとって、心に刻むべきより大きな教訓がある。国家は権力に敏感であるが、その権力の行使方法には更に敏感である。大きな棒を持つならば、穏やかに話すことが賢明である。ある国がその力を賢く使うことはあまりないのである。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。

(貼り付け終わり)

(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争は「ウクライナ対ロシア」という枠組みを超えて、「西側対それ以外」という構図にもなっている。戦費や武器の支援から見れば、この戦いは「ウクライナ・アメリカ対ロシア」の戦いということになる。アメリカが約6兆円をつぎ込んでいる。

 西側諸国は対ロシア制裁で結束し、ロシアに大打撃を与えようとした。しかし、その効果は限定的だ。ロシア産の石油を西側諸国は禁輸としたが(イギリスは今年いっぱい輸入するとし、ドイツは全面禁輸には踏み切らない)、西側諸国に代わって、中国とインドがロシア産石油を少し安い値段で買い入れを行っており、石油の代金収入が戦費を上回るということが起きている。ロシアは石油の購入をルーブルで行うように要請し、一度大幅に下落したルーブルの価値も上昇した。

 このように、西側諸国の方策は効果を発揮していない。それは、西側以外の、それ以外の国々がロシアに対して積極的に支援をしている訳ではないが、西側の対ロシア制裁に同調しないからだ。その代表格がインド、中国、サウジアラビアといった国々だ。これらの国々が西側に同調しなければ、西側の制裁は効果を持たない。それではこれらの国々を西側の味方に引き入れられるかというと、それは難しい。それぞれの国が自国の国益を守るために行動している。これらの国々にとって西側に同調しないように行動すること、バランスを取ることが国益になるので、そのように行動する。それに対して何からの矯正をすることは難しい。

 下記の論稿にあるドイツとハンガリーはEUNATOの加盟国であり、本来であれば、アメリカとイギリスに同調すべき立場にある。しかし、両国はやはり自国の国益に沿った行動を取っている。ドイツもハンガリーもロシアからのエネルギー資源に依存している。ロシアとは決定的な断絶を避けたいということは当然のことだ。

 ウクライナ戦争が長期化し、「戦争疲れ」「ゼレンスキー疲れ」がたまっていく中で、西側諸国の結束は揺らいでいくことになるだろう。その結果、現在の世界体制の大きな転換、アメリカの終わりの始まりを印象付けることになる。

(貼り付けはじめ)

アメリカがロシアに関して味方にしようと試みている5カ国(Five countries US is trying to sway on Russia

ブレット・サミュエルズ、ロウラ・ケリー筆

2022年4月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/3264413-five-countries-us-is-trying-to-sway-on-russia/

ジョー・バイデン政権は、ロシアに対する圧力キャンペーンを支援するために多くの西側同盟国を集めることに成功したが、モスクワのウクライナ侵攻に反対するために他の多くの同盟諸国や主要な競争相手を味方につけることはより困難であることが判明した。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は「世界の国内総生産50%以上の国々を世界的な同盟に構築したが、失敗とは言えないだろう。誰もそれを失敗とは言わないと思う」と述べた。

それでも米政府関係者は、紛争にほぼ中立の立場を維持しているか、ロシアにさらに圧力をかけるという申し出を断っている世界中の国々と関わってきた。

Still, U.S. officials have engaged with nations around the world that have largely remained neutral in the conflict or declined overtures to further pressure Russia.

これから、ロシアに圧力をかけ、ロシアの侵略による世界的な経済的波及効果を鈍らせるためにバイデン政権が説得を試みている5カ国を紹介する。

(1)インド

バイデン大統領は月曜日、インターネットを通じてインドのナレンドラ・モディ首相と歓談を持った。ダリープ・シン国家安全保障問題担当大統領次席補佐官がインド当局者との会談のためにニューデリーに出張したのは2週間前のことだった。

バイデンは、ロシアの侵攻に反対する民主政治体制諸国の結束をしばしば宣伝してきた。しかし、世界最大の民主政治体制国家であるインドは、ロシアの石油を輸入し続け、ウクライナで行われた人権侵害に関する国連の決議投票では中立を保っている。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、「バイデン大統領はモディ首相との会談で、アメリカと同盟諸国が課す制裁の効果を明らかにしようと努め、アメリカはインドのエネルギー輸入の多様化を喜んで支援すると強調した」と記者団に語った。

サキ報道官は「バイデン大統領はまた、ロシアのエネルギーや他の商品の輸入を加速したり増やしたりすることがインドの利益になるとは考えていないと明言した」と述べた。

インドは、ウクライナのブチャで起きた民間人殺害事件を非難し、戦争犯罪の可能性について独立機関による調査を求め、人道的な救援活動を行ったことを強調した。

サキ報道官は続けて「私たちの目的の一つは、それを基礎にして、さらに多くのことを行うよう奨励することだ。だからこそ、指導者同士の対話が重要なのだ」と述べた。

(2)サウジアラビア・アラブ首長国連邦

石油輸出国機構(OPEC+)の中核メンバーで石油資源の豊富な湾岸諸国は、ロシアの石油・ガス輸出を制裁・抑制する取り組みの中で、上昇した価格を引き下げることを目的としてアメリカが世界市場での石油供給を増やすよう要求していることに抵抗している。

特にサウジアラビアは、OPEC+を通じてロシアと結んだ原油生産と価格に関する協定に大きく依存しており、リヤドはエネルギー依存から脱却した経済の多角化の一環として、将来の国内経済計画にそれを織り込んでいる。

ロシアの戦争はまた、『ワシントン・ポスト』紙の記者ジャマル・カショギの殺害におけるサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子の役割に対するアメリカの非難をめぐり、リヤドとワシントンとの関係全般が冷え込む中で起こったものである。

『ウォールストリート・ジャーナル』紙は先月、ムハンマド王太子が、アメリカがロシアの石油輸入を禁止することについてバイデン大統領と話すのを拒否したと報じた。ホワイトハウスはこの報道を不正確だと述べた。

ワシントンのアラブ湾岸諸国研究所上級研究員フセイン・イビッシュは、サウジアラビアとアラブ首長国連邦のロシアに対する姿勢が失敗であるという考え方に反論し、代わりに「部分的成功」と表現した。

イビッシュは「アラブ首長国連邦とサウジアラビアは曖昧な態度を取っているが、湾岸諸国は、ワシントンや国際社会から突きつけられる厳しい選択に立ち向かう準備を整えている佐中なのだろう」と述べた。

イビッシュは続けて「ウクライナ侵攻はヨーロッパの危機であり、世界の危機ではない、というのが彼らの誤算だったのだろう。彼らは、このような出来事に対して、自分たちはかなり周辺にいると考えていたがそれは間違いだ」と述べた。

イビッシュは、リヤドとアブダビは、バイデン政権からのイランが支援するイエメンのフーシ派反政府勢力からの攻撃に対抗するための安全保障の強化を求めており、アメリカとのそうした取引は、ロシアへのコストを高める行動に彼らを動かす可能性がある、と付け加えた。

イビッシュは次のように述べた。「サウジアラビアが原油を増産し、ロシアとのOPEC+合意を破棄しなければならないかもしれない。それは彼らにとって苦痛で不快なことだろうが、もしそうするならば、少なくとも彼らはワシントンとの前向きなリセットのためにそうしていると確信できるだろう」。

(3)中国

バイデン政権は、中国がロシアに軍事装備や資金援助を行うことを阻止するために、多大な時間とエネルギーを費やしてきた。

バイデン大統領は中国の習近平国家主席と直接会談し、アントニー・ブリンケン国務長官は中国の王毅外相と会談し、ジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官は中国のトップ外交官である楊潔篪とそれぞれ会談した。いずれの場合も、米政府要人たちは北京に対し、ロシアが有利となるような介入をしないよう警告を発した。

バイデン政権高官たちは、中国がロシアとウクライナの紛争に関与しないことを明確に決めているかどうかはまだ不明だと述べている。しかし、これまでのところ、北京はモスクワが要求したとされる軍事援助をまだ送っていない。

ロイター通信は、中国はロシアとの石油契約を尊重しているが、新たな契約にはまだサインしていないと報じている。これは北京が、経済的に関係を持っている西側諸国からの反発の可能性を認識していることの表れである。

バイデン政権のある幹部は、侵攻が始まった直後に記者団に対し、北京がロシアを助けに来ることはないだろうと楽観視していると述べ、「中国はアメリカの制裁の効力を尊重する傾向にある」と指摘した。

(4)ドイツ

ロシアのウクライナ侵攻が始まった当初、ドイツのオラフ・ショルツ首相は、キエフへの重要な軍事支援と、ロシアがヨーロッパへの天然ガス供給を計画していたガスパイプライン「ノルドストリーム2」の閉鎖によって、ベルリンの歴史的平和主義姿勢を厳しい行動に転じたとして称賛された。

しかし、戦争が7週目に入るとその勢いは弱まり、ドイツは、アメリカやヨーロッパの他の国々が、1日約10億ドル分入ってくるロシアの石油とガスの世界的な輸入を断ち、ロシアの戦費をさらに圧迫するという要求に加わることに反対を表明している。

ドイツは「ノルドストリーム1」パイプラインを通じてロシアの天然ガス供給に依存し続けており、ドイツ政府高官たちは、ヨーロッパで最も人口の多い国にとって蛇口を止めるという選択肢はないと明言している。

連邦下院多数党(民主党)院内総務捨てに―・ホイヤー連邦下院議員(メリーランド州選出、民主党)を団長とする連邦下院議員訪問団は、今週ベルリンに移動し、ヨーロッパへの複数国訪問の一環としてショルツ氏と会談する予定である。

同盟諸国は、ヨーロッパ、特にドイツをロシアのエネルギーから直ちに切り離すことが困難であることを認識している。

イギリスの対ヨーロッパ・北米外交のトップを務めるジェイムズ・クレヴァリーはあるインタヴューの中で、ドイツがこれまで進んできたステップを称賛し、次のように述べた。「ドイツ政府がこれまでの数十年間に行われたあらゆる決定によって作り出された状況の下で生きていることを批判するのは公正かつ合理的ではないと考える」。

クレバリーは「ショルツ首相は、ウクライナ侵攻の直接的な結果として、この1カ月でドイツの外交政策を再定義した」と述べた。

(5)ハンガリー

ハンガリーはNATO加盟国だが、ロシアの侵攻には慎重に対応しており、現在進行中の紛争において、複雑な国家であることが証明されている。

ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相は2010年から政権を担っている権威主義的指導者で、ロシアの侵攻を非難しているが、ロシアのウラジミール・プーティン大統領個人に対して発言することは避けている。

ヨーロッパ連合(EU)の一員として、ハンガリーは対ロシア制裁措置の発動に協力した国の一部だが、ハンガリー自身はロシア経済を下支えするための措置をとっている。

オルバン大統領は先週、ロシアのガスをルーブルで購入する用意があると述べた。多くの西側諸国がロシアからのエネルギー購入を制限または完全に断ち、ロシアの通貨を孤立させようとしている時に、この発言はロシアの通貨を安定させる一助となるであろう。

先週、対ロシア制裁に関してアメリカはハンガリーと協力するのかと質問され、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は「ハンガリーはNATO加盟国であり、今後もそうあり続ける。私たちは、NATOの防衛や人道支援を含む、様々な二国間および共通の世界的利益について協力を続けている」と答えた。

サキ報道官は続けて「ハンガリーは現在、NATOの戦闘部隊である、アーミー・ストライカー歩兵部隊を駐留させておる。私たちは彼らと定期的に合同訓練を行っており、今後もハンガリーとのパートナーシップを強化するために努力していく」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争が始まって4カ月近くが経過した。ウクライナには欧米諸国から多額の資金援助、物資援助、軍事援助がなされている。武器のグレードが挙がり、ハイエンド(高度)な武器が供給されることで、戦争は停戦には向かわず、ロシアとの全面戦争という様相を強めている。戦争は容易に終了しないということだ。

 アメリカ政府の各機関はウクライナにどのような資金を提供しているのかということを紹介している記事があったので紹介する。ウクライナにはそこまでの資金がないので、欧米諸国の金で戦争を継続しているということになる。その原資は欧米諸国の国民の税金だ。軍事費となると途端に制限なくじゃんじゃん使えるようになるというのがアメリカの特徴だ。税金(と国債で賄っている資金)が湯水のごとくに投入されている。それに対して反対することは難しい。批判をすれば「国防は最重要だ」「アメリカが世界の秩序を守っている」「非国民」と言った悪罵を投げつけられるだろう。

 しかし、一方で、「どこまで続くぬかるみぞ」ということもある。欧米諸国の一般国民の生活は、エネルギー高もあり、高いインフレ率で苦しくなっている。インフレ率よりも高い給与の上昇があればなんということもないが、インフレ下ではそのようなことはない。日本の高度経済成長期のように毎年経済成長率が10%以上ということであれば給料もどんどん上がっていくだろうが、そんな国は今世界には存在しない(中国が新型コロナウイルス感染拡大まではそれに近かった)。「いつまで私たちの税金からウクライナ支援を続けるのか」「私たちの生活への支援はないのか」ということになる。

 最新の調査の結果では、ウクライナ支援が全体で11兆円、その内の上位3カ国は55%がアメリカ(約6兆円)、6%がイギリス(約6600億円)、4%がドイツ(約4400億円)である。アメリカが突出し過ぎている。ヨーロッパの大国だと威張っているイギリスとドイツが合わせてようやく1兆円である。ウクライナ戦争を支えているのはアメリカで、威勢のいいことばかりを言う口先番長はイギリスということになる。大英帝国だと威張ってみてもこの体たらくだ。それでいて、イギリスのボリス・ジョンソン首相は「戦争疲れが起きている」と述べている。

 ドナルド・トランプ政権を誕生させたアメリカ国民は思うだろう。「アフガニスタンからの撤退では混乱があったがまぁ良かった。だけど今度はウクライナかよ。ヨーロッパのことはヨーロッパで解決してくれ。アメリカがそんなに資金を出さなくちゃいかんのか。どこまで続くぬかるみか」。

 ロシアは経済制裁を受けてはいるが、対中、対印の石油輸出増加で、戦費を上回る収入を得ている。西側の対ロシア包囲網は破綻しつつある。これではいつまでウクライナ戦争を「続けさせる」ことができるのかということが焦点になってくる。良い条件の時に停戦しなかったことは何とも悔やまれるが、今からでも遅くはない。

(貼り付けはじめ)

ウクライナ支援額、アメリカが5割超…日本は0・7%で7位

読売新聞

2022/06/20 23:41

https://www.yomiuri.co.jp/world/20220620-OYT1T50018/

 【ロンドン=池田慶太、ワシントン=田島大志】ロシアの軍事侵攻を受けるウクライナに対し、西側諸国が表明した支援額の5割超を米国だけで占めることが、ドイツの調査研究機関「キール世界経済研究所」の集計でわかった。各国が約束した支援が滞っている実態も判明しており、迅速な実行が課題となっている。

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日本は7位

 キール研究所は、先進7か国(G7)や欧州など37か国と欧州連合(EU)を対象に、侵攻開始1か月前の1月24日から6月7日までに表明された軍事・財政・人道分野の支援額を集計、比較した。

 各国の支援総額は783億ユーロ(約11兆円)に上り、国別では米国が427億ユーロ(55%)、英国48億ユーロ(6%)、ドイツ33億ユーロ(4%)などと続いた。日本は6億ユーロ(0・7%)で7位だった。

 米国は射程の長い 榴弾りゅうだん 砲や、高機動ロケット砲システム(HIMARS)など最新兵器の支援を次々と表明している。軍事物資購入に充てる資金援助を含めた軍事分野の支援額(240億ユーロ=約3・4兆円)は、日本の今年度防衛予算(5・4兆円)の半分を超える。

到着遅れ課題

 だが、兵器・弾薬支援の遅れも目立つ。キール研究所が公開情報を分析したところ、ウクライナに実際に届いた米国の兵器・弾薬は、約束した分の48%(金額ベース)にすぎず、ドイツはさらに低い35%だった。37か国全体でも69%にとどまるという。

また、ウクライナ政府に対する財政支援は総額309億ユーロが約束されたものの、支払われたのは2割弱だった。軍事侵攻の長期化はウクライナ財政を圧迫しており、国際通貨基金(IMF)は、兵士の給与や年金の支払いで毎月50億ユーロの外部資金が必要だと指摘する。支援がさらに遅れれば、政府機能がマヒしかねない。

限界指摘も

 国内総生産(GDP)比でみると、支援額では13位(2億ユーロ)のエストニアが0・87%と最も高く、ロシアと地理的に近い東欧、バルト諸国が上位を占めた。特にポーランドは、支援額が米英独に続く4位(GDP比では3位)で、ウクライナから多くの難民も受け入れており、貢献が際立っている。

 対照的に独仏伊は対GDP比では0・1%未満と低い。EUと加盟27か国の支援額を合わせても、米国の7割に届かない。キール研究所は「米国の支援が、激しい戦闘が間近で起きているEU加盟国の総額を上回るのは驚くべきことだ」と指摘する。

 ウクライナ侵攻以来、世界のエネルギー、食糧価格の高騰が各国の財政を直撃する中、支援をいつまで続けられるかも議論され始めた。英国のジョンソン首相は18日、地元メディアに「世界各地で『ウクライナ疲れ』が起き始めていることは懸念だ」と語った。米国でも、国内のインフレを背景に、支援の限界を指摘する声が出ている。

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ウクライナ国内でアメリカからの資金が流れている場所はここだ(Here’s where US money is flowing in Ukraine

ブラッド・ドレス筆

2022年4月28日

『ザ・ヒル』

https://thehill.com/policy/finance/3469118-heres-where-us-money-is-flowing-in-ukraine/

ロシアが2022年2月24日にウクライナへの侵攻を開始して以来、アメリカはいくつかの同盟諸国とともに、ウクライナ国民とウクライナ軍を支援するためにさまざまな形での支援を約束してきた。

アメリカは3月にウクライナへの経済、人道、軍事支援として136億ドルのパッケージを承認した後、ウクライナにとっての最大の支援者となったが、現在ではほぼ使い果たされている。

バイデン大統領は木曜日、9月までのウクライナ支援のため、連邦議会の承認が必要な330億ドルの追加パッケージを要求した。

これまでに承認されて支出されたアメリカ・ドルは、ウクライナの経済と国民を支援し、首都キエフ周辺のロシア軍を食い止める手段をウクライナ軍に与えることで、ウクライナを後押ししている。

これまでに承認された資金の内訳とウクライナ支援のために使われる場所は以下の通りだ。

●軍事・安全保障(Military/Security

ウクライナに提供されたアメリカの資金の大部分は軍事・防衛費に割り当てられている。

ジョー・バイデン政権は大統領就任以来、ウクライナへの安全保障支援に40億ドルを支出したが、この中にはロシアの侵攻以来34億ドルも含まれている。さらに30億ドルがアメリカ軍のヨーロッパ司令部の作戦に承認された。

米国防総省はヘリコプター、対空ミサイル、榴弾砲など、様々な軍備や兵器をウクライナに提供してきた。

■軍事車両(Military vehicles

4月22日現在、ウクライナには155mm榴弾砲を牽引する戦術車72台、Mi-17ヘリコプター16台、装甲多目的車数百台、M113装甲兵員輸送車200台、無人沿岸防衛船などが供給されている。

■装備と武器(Equipment and arms

1400以上の対空システム、2万以上の対装甲システム、700台以上のスイッチブレイド・ドローン、90台の155mm砲榴弾砲が安全保障支援に含まれている。

また、7000丁の小火器と5000万発以上の弾薬、7万5000セットの防護服とヘルメット、レーザー誘導ロケットシステム、レーダー、C-4爆薬も含まれている。

■その他(Other

通信システム、暗視装置、衛星画像サーヴィス、生物・核・放射性物質防護装置が供与されている。

●経済(Economy

これまでに承認された10億ドルの経済安全保障支援は、ウクライナの様々な部門に流れ込んでいる。

バイデンは、資金がウクライナ国内の地元の共同体や労働者に向けられていることを強調している。

バイデン大統領は4月21日、「これはウクライナ政府が経済の安定を助け、ロシアの猛攻撃によって荒廃した地域社会を支援し、ウクライナの人々に不可欠なサーヴィスを提供し続けている勇敢な労働者に支払うために使える資金だ」と述べた。

ジャネット・イエレン米財務長官は、経済援助は従業員の給与や年金を支払い、その他の社会プログラムを支援することで、ウクライナ政府の運営を維持することになると述べた。

3月の支援策には「ウクライナのマクロ経済的ニーズ、エネルギーやサイバー安全保障などの政府の取り組みの継続、または近隣諸国のニーズのいずれか」を支援するために20億ドル近くが含まれていた。

●人道支援(Humanitarian aid

米国国際開発庁(USAID)によると、アメリカはこれまでウクライナに3億100万ドル以上の人道支援を実施してきた。

3月10日、USAIDはウクライナ難民のために約5300万ドルを承認し、戦争中の国から逃れてきた人々のための世界食糧計画(WFP)の活動を支援することを決定した。

別のパッケージには、国連国際子ども緊急基金への680万ドルが含まれていた。

そして、国際移住機関への約610万ドルの援助は、HIVの治療に使われる抗レトロウイルス薬や、HIV移動検査車、薬の宅配などに使われた。

USAIDはこれらに加えて、国際赤十字に2万800ドル、国連食糧農業機関に30万ドル、国連人道問題調整事務所に250万ドルの援助を発表した。

世界保健機関には約96万7280ドル、ウクライナ東部のドネツク、ルハンスク両地域のウクライナのパートナー支援に1160万ドルが支出された。

国務省は更に、国連難民高等弁務官事務所やその他のパートナーのために9300万ドル以上を費やした。

USAIDと国務省の残りの資金は、ハンガリー、ベラルーシ、ルーマニア、モルドバ、ポーランド、スロバキア、その他のヨーロッパにおける関連する人道的対応に使用された。

3月のパッケージでは、紛争を支援するための人道的および対外的な支援ニーズに対して、各機関合計で約50億ドルが承認された。

●その他(Other

3月のパッケージで承認された追加支援には、エネルギーとメディア分野への資金が含まれている。

エネルギー省:ウクライナの電力網を支援するために3000万ドルを拠出する。

農務省海外農務局:ウクライナとウクライナ難民への食糧支援寄付を支援するため、「平和のための食糧」プログラムに1億ドルを拠出する。

商務省:経済・貿易関連の分析、執行、調整のために2210万ドルを拠出する。

司法省:サイバー犯罪の脅威や制裁措置の執行、紛争に関連するその他の事件や捜査に取り組む司法省のウクライナ対策本部とFBIを支援するため、5490万ドルを拠出する。

財務省:ロシアに対する制裁措置の実施、その他の金融措置の実施、情報支援、ウクライナ支援のための対策本部を支援するために3月のパッケージで6100万ドルが承認された。
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※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 日本だけではなく、世界の大多数の人々はヴォロディミール・ゼレンスキーという名前を知らなかったと思う。ヨーロッパ政治に関心がある人たちはそうではなかっただろうが。また、アメリカ政治に関心がある人々であれば、「ドナルド・トランプ前米大統領が、ウクライナ国内でのジョー・バイデンと息子のハンター・バイデンの動きについて圧力をかけた相手」として名前が出てきて覚えていた人も多いだろう。しかし、2022年2月24日のウクライナ戦争勃発以降、今や世界中で知らない人はいないような有名人となった。

 ウクライナ戦争は2022年2月24日に始まったが、ウクライナはロシアをめぐって不安定な状況にあった。2014年にクリミア半島はロシアに併合され(西側諸国はそれを認めていない)、ロシア系住民が多い東部地方では分離主義勢力が自治を行ってきた。ウクライナ軍とアゾフ大隊はこうした状況に対処してきた。

 バイデン大統領になり、アメリカはウクライナ支援を明確化した。昨年は2度の電話会談の後(4月と6月)、9月1日にバイデン大統領とゼレンスキー大統領は直接会談を持った。ホワイトハウスを訪問し、アメリカの大統領と直接会談を持つことは、ゼレンスキーとウクライナ側の「悲願」だった。アフガニスタンからのアメリカ軍撤退とそれをめぐる混乱から、会談の日程が変更されたこともあったが、ゼレンスキーにとっては大きな前進ということになった。この当時から対ロシア侵攻を想定して、軍事支援が行われていた。それ以前に、2014年以降で、ウクライナには合計で46億ドル規模の支援が実施されていた。年で割ればおおよそ6億5000万ドル、だいたい750億円の軍事支援が実施されてきたことになる。ロシアからの観点からすれば、これは大きな脅威だ。国際関係論で言えば「安全保障のジレンマ(security dilemma)」ということになる。

 昨年、アメリカは外交上、パッとしなかった。アフガニスタンからの撤退をめぐってはタリバンが復権する結果になり、「何のために大きな犠牲を払ってアフガニスタンに侵攻し、駐留したのか」ということになった。アメリカへの信頼性を大きく損なうことになった。そうした中で、ウクライナ戦争が起きた上は、ヨーロッパの同盟諸国に対してのアピールもあって、アメリカはウクライナを支援し続けることになる。しかし、アメリカの国力は大きく低下している。そうした中で、いつまで続くのか、続けるのか、ということがアメリカで議論されることになるだろう。そして、「何故早く停戦させなかったのか」という大きな疑問が西側諸国の指導者たちに突きつけられることになるだろう。

(貼り付けはじめ)

ウクライナ大統領はホワイトハウスを訪問しバイデンと会談を持つという数年にわたる追求を達成(Ukrainian President accomplishes years-long quest for a White House visit with Biden meeting

ミーガン・ヴァスケス、ケヴィン・リブタック筆

2021年9月1日

CNN

https://edition.cnn.com/2021/09/01/politics/ukraine-volodymyr-zelensky-biden-white-house/index.html

CNN発。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は水曜日、ワシントンでジョー・バイデン大統領と会談し、一時は米国政治の中心的な話題となった、ゼレンスキーのホワイトハウス訪問を確定させるための数年にわたる闘いを終結させた。

待望されてきた会談は、2019年に就任して以来、アメリカの支持を求めてきたゼレンスキーにとって、大きな意味を持つ可能性がある。ゼレンスキーは大統領就任直後に、当時のドナルド・トランプ大統領から祝福の電話を受け取ったが、トランプはゼレンスキーにバイデンとその息子ハンターを調査するようにと迫った。この電話は、連邦上院が当時の大統領を職権乱用と議会妨害で無罪とする前に、連邦下院によるトランプ大統領の最初の弾劾の核心となった。

ゼレンスキーとバイデンの両者がその歴史的な最初の弾劾に巻き込まれてから約2年後のホワイトハウスでの会談で、東ヨーロッパの指導者ゼレンスキーが新政権との関係について新しいトーンを直接示す機会となった。

水曜日の午後遅く、連邦議会議事堂で、ウクライナ大統領は弾劾について、そしてアメリカ・ウクライナ関係が改善されたかどうかについて質問された。

ゼレンスキーは「ウクライナは悪名ではなく、良いことで知られていて欲しい」と答えた。

水曜日午前にホワイトハウス大統領執務室で、ゼレンスキーは報道陣の前でバイデン政権に大きな要求をした。その中には、ウクライナのNATO加盟の可能性についてアメリカの意見を聞くこと、ウクライナのドンバス地方での和解に向けたアメリカの役割の可能性を高めること、ドンバスで投獄されている数百人を解放するためにアメリカの支援を要請することなどが含まれている。

ゼレンスキーは「私は私たちの関係について非常に大きな議題を持っているが、おそらくこの会談は全ての質問に答えるには短すぎます」と述べ、ウクライナの安全保障問題が会談の優先事項になるだろうと付け加えた。

アメリカの長期的な外交政策のアプローチに関する疑問は依然として宙に浮いている。

トランプは、世界におけるアメリカの長年の外交的役割に挑戦し、「アメリカ・ファースト」を掲げると断言した国家主義的なプラットフォームを構築し、クリミアをめぐるウクライナとの係争で攻撃性をエスカレートさせているにもかかわらずしばしばロシア側についた。バイデンはアメリカの外交が復活したと主張しているが、同盟諸国でさえ、それがいつまで続くのか疑問に思っている。特にアメリカのアフガニスタンからの撤退をきっかけにそのような疑問が募っている。

バイデンは、「アメリカは、ロシアの侵略に直面しているウクライナの主権と領土の保全に引き続きしっかりと関与(コミット)し、ウクライナのヨーロッパ・大西洋への希望を支持する」と述べた。彼はまた、アメリカとウクライナは「同じような価値体系を持っている」と述べた。

バイデンは、アメリカが「ウクライナが民主的な改革課題を進め、ヨーロッパに完全に統合される方向に進んでいるので、引き続き支援する」と示唆した。そして、水曜日の午後に出された両国の共同声明でも、アメリカのウクライナとの連帯が強調された。

共同声明の中では、「21世紀において、国家が力によって国境を引き直すことは許されない。ロシアはウクライナでこの基本ルールを破った。アメリカはロシアのクリミア併合と称するものを認めず、今後も認めない」と強調されている。

●水曜日のホワイトハウス訪問の詳細

バイデン政権高官たちは、ホワイトハウスでの会談は、ウクライナの主権と領土保全に対するアメリカの関与(コミットメント)を示すためのものであると述べ、月曜日の記者との電話会談で、「ウクライナが独立を達成して以来30年間、私たちの戦略的パートナーシップが今ほど強くなったことはない」と述べた。

バイデンは大統領執務室で、6000万ドルの新たな安全保障支援を正式に発表した。電話会談に同席した当局者たちは、この支援には新しいジャベリン対装甲ミサイルが含まれると述べた。バイデンは、ロシアの侵略行為が続く中、地域の安全保障情勢について最新情報を得る見込みだという。また、ゼレンスキー大統領には、汚職をターゲットにした自国の改革を行うよう圧力をかけるだろう。

ウクライナ政府と密接な関係を持つ、あるアメリカ企業の関係者は、NATO加盟と防衛協定が最重要課題だと指摘した。

防衛協力とゼレンスキーの改革アジェンダの他に、エネルギーも大きな話題として浮上するだろう。バイデンは、ロシアのパイプライン「ノードストリーム2」の完成後、ウクライナのエネルギー部門への支援を強化することを期待している。ウクライナの指導者ゼレンスキーは以前、アメリカがノードストリーム2の制裁を緩和することは、ロシアにとって勝利であり、バイデンにとっては個人的な損失であると考えていると発言したことがある。

水曜日午後、連邦議会ウクライナ議連との会談後、ゼレンスキーは通訳を介して記者団に対し、バイデンとロシアのパイプラインであるノードストリーム2の「セーフガード」について議論したと述べ、一方でそのセーフガードの詳細はまだ策定する必要があるとも語った。

アメリカは共同声明で、ウクライナへの新型コロナウイルス感染拡大対策支援を拡大し、「コールドチェーン貯蔵支援と、アメリカ救済計画法から引き出した新型コロナウイルス関連の追加支援1280万ドルを提供する」と発表した。アメリカは既にウクライナに220万本近い新型コロナワクチンを寄贈している。アメリカは今年、ウクライナへの人道支援として4500万ドルを追加で提供し、さらに「民主政治体制、人権、地方統治と地方分権、民営化、司法改革に焦点を当てたプログラムを含む」開発支援に4億6300万ドル以上を割り当てる予定である、と共同声明で述べている。

火曜日には、エネルギー省のジェニファー・グランホルム長官とウクライナのエネルギー大臣ヘルマン・ガルシチェンコが、ゼレンスキーと並んで、エネルギーと気候に関する戦略的対話に署名した。ゼレンスキーとアンドレイ・タラント国防相も火曜日にペンタゴンを訪問し、アメリカとウクライナは戦略的防衛枠組みに署名した。

●長年にわたり待ち焦がれられていた会談

この夏初め、ゼレンスキーはバイデンに、アメリカ大統領がスイスのジュネーブでロシアのプーティン大統領と会談する前に、直接会談を行うよう懇願した。結局、ホワイトハウスはこの要求を拒否し、代わりにワシントンで夏の会合を開くことを選んだ。

バイデンはジュネーブでプーティンと会談した際、ウクライナを最重要視することを示唆し、「ウクライナの主権と領土の一体性に対するアメリカの揺るぎない関与を伝えた」と後に述べた。

ゼレンスキーとバイデンの会談は、当初火曜日に行われる予定だったが、8月31日がアフガニスタン戦争の最終日となることが明らかになったため、日程が変更された。

アメリカ企業の関係者たちは、当初7月下旬を目処に予定されていた訪問の日程がずれたことについてキエフは不満を持ち、また、ノルドストリーム2に関する動きやバイデンがゼレンスキーとの会談前にプーティンと会談したことから、ウクライナに対するアメリカの支援の強さを懸念する声が上がっていたと述べた。

バイデン政権のある高官は月曜日の電話会談について「二人の国家元首を引き合わせることは複雑で動きの速いプロセスの結果だ」と語った。そして、「私たちは、この会談がそれに値する注目を浴びることを望んでいる。双方が議論すべき問題は多岐にわたるので、水曜日にそのための時間と空間を持てることを本当に楽しみにしている」と述べた。"

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ゼレンスキー氏が(ついに)ワシトンを訪問(Mr Zelensky (finally) goes to Washington

アンソニー・ザーチャー筆

2021年9月1日

BBC

https://www.bbc.com/news/world-us-canada-58414184

政治の世界では、1年とは一生に相当する。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領と聞いてピンと来ない読者も多いだろうが、この2年はおそらく1世代分の寿命に相当する。

ゼレンスキーは2年前、ドナルド・トランプ大統領(当時)から「頼みごと」をされた。それは、ホワイトハウスへの立候補を表明したばかりのジョー・バイデンについて、ウクライナ政府が調査していると発表するというものだった。その見返りは、ゼレンスキーのワシントン訪問と軍事援助を得ることだった。

トランプは望んでいた発表を得られず(彼の要求は代わりに彼の弾劾を引き起こした)、ゼレンスキーは今日までワシントン訪問ができなかった。大統領執務室でバイデン現大統領とともに写真撮影をするということができていない。ゼレンスキーにしてみれば、バイデンは自分が攻撃して撃沈するように頼まれた、トランプ前大統領の選挙運動の相手ということになる

会談の公開部分は、通訳が必要だったこともあり、入念に台本が作られたように感じられ、バイデン大統領の厳格な管理体制を反映するものだった。アメリカの国家元首としてのトランプ大統領の自由奔放な日々は明らかに終わっている。

バイデンは、ウクライナのソ連からの独立30周年に言及し、アメリカは「ロシアの侵略に直面しても、ウクライナの主権と領土の完全性にしっかりと関与し続ける」と付け加えた。また、米国は昨年の4億ドルに加え、6000万ドルの援助をウクライナに送る予定であることを改めて強調した。

ウクライナ大統領側は、バイデンが「世界とアメリカにとって困難な時期」に面会することに同意したことに感謝の意を表した。実際、会談は当初月曜日に予定されていたが、バイデンがアメリカのアフガニスタン撤退の最後の時間に集中できるようにと、2度延期された。

今回が初めての直接会談であるが、バイデンとゼレンスキーは今年に入って2度、4月と6月(ロシアのウラジミール・プーティン大統領とバイデンの米露首脳会談の直前)に電話会談を持っている。

しかし、ゼレンスキーのホワイトハウス訪問は、単なる社交辞令にとどまらない。多くの外国人指導者と同様に、ウクライナ大統領も、アフガニスタン撤退がアメリカの国際公約にとって何を意味するのか、アメリカが同盟国を守るという前提をまだ信頼できるのか、懸念を持っている。

バイデンは、火曜日の午後に行われた演説で、アメリカはアフガニスタンに「重要な国益」を持っていないと述べた。ゼレンスキーは、バイデン大統領がウクライナについて同じように感じているのかどうか、疑問に思っているかもしれない。

ロシアが旧ソ連の旧共和国に圧力をかけるキャンペーンの一環として、この疑問を際立たせた。

ロシア安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記は2週間前にロシアの『イズベスチヤ』紙の取材に対して次のように答えた。「アフガニスタンがNATO以外のアメリカの主要な同盟国という地位にあるということであったが、カブールから追放された親米政権の意図人はそれで救われただろうか? ウクライナでアメリカに賭けている人たちにも、同じような状況が待っている」。

バイデンが副大統領時代、ウクライナの独立を声高に擁護していた。例えば、ロシアがウクライナを迂回して天然ガスを直接ヨーロッパに輸出するためのガスパイプライン「ノルドストリーム2」がほぼ完成しているが、これに対する制裁を断念したことである。

ゼレンスキーは今日、パイプラインと、ロシアが支援するウクライナ領土への継続的な軍事侵攻、そして自国のNATO加盟の(一見おぼつかない)見込みを持ち出すと述べた。

バイデンは、火曜日の演説の後半で、アメリカがアフガニスタンから撤退することで、20年前の脅威ではなく、将来の脅威に外交政策の焦点を合わせることができるようになると強調した。そして、彼は特にロシアを挙げ、喫緊の懸念事項の一つだと述べた。

しかし、ウクライナの指導者は、その言葉が継続的な行動を伴うものであることの証拠を待っている。

その一方で、大統領に当選して2年後に、自分の名前がアメリカ国内の新聞の一面トップで見出しに載るよりも、より大きな政治的な脚光を浴びるようになったことで、ゼレンスキーはホッとしているだろう。たとえウクライナ大統領が、アメリカ人に自国の問題を完全に忘れてほしいとは思っていなくても、それはおそらく、より快適な場所ということになる。

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ゼレンスキーの訪問を前にしてアメリカはウクライナに対して6000万ドルの軍事支援を約束(US pledges $60M in military aid to Ukraine ahead of Zelensky visit

ロウラ・ケリー筆

2021年8月31日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/570194-us-pledges-60m-in-military-aid-to-ukraine-ahead-of-zelensky-visit/

ジョー・バイデン大統領は、水曜日に行われるウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領との初の直接会談を前に、ウクライナに6000万ドルの軍事援助を行うことを約束した。

バイデンは連邦議会に送った通知でこの発表を公式に行い、軍事支援パッケージは「重要な国境警備と自衛のニーズ」のためであり、増大するロシアの侵略からウクライナが自らを守るのを助けるものであると述べた。

通知の中には「ロシアのウクライナ国境沿いの軍事増強は、ウクライナ軍のロシアの侵略に対するウクライナ軍の防衛能力の不足を浮き彫りにしている」と書かれている。

通知には続けて「現在のロシアの脅威を考慮し、抑止力を強化するために、ウクライナの著しい能力不足に緊急に対処しなければならない」とも書かれている。

ホワイトハウスからの通達はまた、9月中旬に予定されているロシアとベラルーシの軍事演習についても懸念を示している。同通知は、「ロシアはこのような演習を隠れ蓑にして、近隣諸国に対して攻撃的な行動をとってきた歴史がある」と指摘している。

ホワイトハウスが提案した援助パッケージには、対装甲ミサイルシステム「ジャベリン」、救急キット、小火器・弾薬などが含まれることになっている。また、「対無人航空機システムや対モルタルレーダーなどの能力も、間接火や空中からの脅威から重要な早期警告を提供することができる」と書かれている。

AP通信がバイデンの連邦議会への通知について最初に報じた。

バイデンは当初、先週ホワイトハウスでゼレンスキーと会う予定だったが、アフガニスタンからのアメリカ軍撤退が混乱する中、会談は延期された。

この軍事パッケージを発表するメモが金曜日にホワイトハウスによって初めて公表され、バイデン大統領は「ウクライナへの支援を行うために国防総省の防衛用品やサーヴィス、軍事教育や訓練において最大6000万ドルの引き揚げを指示し、そのような引き揚げを指示するために当該条項に基づいて必要な決定を行う」と連邦議会に通告している。

ウクライナへの軍事支援は、ロシアの侵略、特にロシアに支援された分離主義勢力に対するウクライナ東部での進行中の戦闘に対抗するためのアメリカの努力の重要な側面と考えられている。ロシアは2014年からウクライナのクリミア半島を占領しているが、国際社会はこれを違法な併合と非難している。

バイデン政権はウクライナとの連帯をアピールしようとしているが、ウクライナが地政学的脅威とみなすロシアの天然ガスパイプラインの使用を認めるドイツとの合意をめぐって、ワシントンとキエフの間に亀裂が走っている。

バイデンは就任以来、6月にジュネーブで行われたロシアのプーティン大統領との注目の会談を前に、ゼレンスキーと2回電話で会談している。

アメリカによるウクライナに対する軍事支援は、トランプ政権時代、前大統領が2019年に、当時民主党の有力大統領候補だったバイデンとその息子ハンター・バイデンが、ジョー・バイデンが副大統領だったオバマ政権時代にウクライナでのビジネス取引について調査を開始するようウクライナに圧力をかけたという容疑で弾劾され、政治の大嵐の中心となっていた。

その推定4億ドル規模の軍事支援パッケージは、結局、期限を前倒しして交付された。トランプは連邦上院の弾劾裁判で無罪となった。

アメリカは2014年以降、ウクライナに安全保障分野と非安全保障分野を合わせて46億ドルを援助している。

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バイデンがウクライナ大統領をホワイトハウスに招待(Biden invites Ukraine’s president to the White House

モーガン・チャルファント筆

2021年6月7日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/557172-biden-invites-ukraines-president-to-the-white-house/

ジョー・バイデン大統領は月曜日、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領と話し、この夏にゼレンスキー大統領をホワイトハウスに招待し、ロシアのウラジミール・プーティン大統領との重要な会談を前に、ウクライナへの支援を表明した。

ホワイトハウスの国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンは月曜日、記者団に対して「バイデン大統領とゼレンスキー大統領は長時間にわたって話す機会を持ち、アメリカ・ウクライナ関係における問題全てについて話した。バイデン大統領はゼレンスキー大統領に対し、バイデン大統領はウクライナの主権と領土の保全、そして今後の希望についてしっかりと立ち向かうと伝えることができた」と述べた。

サリヴァンは続けて「バイデン大統領はまた、バイデン大統領がヨーロッパからアメリカに戻った後、この夏にワシントンのホワイトハウスに彼を迎えることを楽しみにしていると伝えた」とも語った

バイデンは水曜日、大統領として初の外遊先としてヨーロッパに向かう予定だ。イギリスでG7Group of Seven)諸国と会談し、ブリュッセルでNATO首脳会議に出席して欧州の指導者たちと会い、最後にジュネーブに移動して6月16日にプーティンと直接会談する予定である。

週末に公開された『アクシオス』誌とのインタヴューで、ゼレンスキー大統領はバイデンに来週のプーティンとの会談の前に自分に会うように促した。

バイデンがヨーロッパ訪問前にゼレンスキーに電話したのは、ホワイトハウスがウクライナへの支持を示すための努力であり、バイデンがプーティンとの会談でウクライナを擁護し、ロシアによるクリミア半島の占領継続について懸念を示すことを示唆するものであった。

バイデンは4月に一度ゼレンスキーと話し、特に今年初めにロシア軍がウクライナの国境に集結したことから、ロシアのウクライナにおける侵略についてプーティンに懸念を表明している。

ゼレンスキーが会談を訴えたにもかかわらず、サリヴァンはプーティンとの首脳会談の前にバイデンが会談するとは述べなかった。

両首脳の話し合いの内容について更に詳細を求められたサリヴァンは、バイデンとゼレンスキーはウクライナの安全保障を含む「アメリカ・ウクライナ関係の重要な側面について基本的に全て」話したと述べたが、それ以上の具体的な説明は避けた。

ゼレンスキーは2019年の当選以来、まだホワイトハウスを訪れていないため、夏の間のバイデンとの会談が初めてとなる。

ゼレンスキーは、トランプ大統領が当時の大統領選挙候補者バイデンと息子ハンターのウクライナでの取引を調査するようウクライナ大統領に迫ったことが内部告発で明らかになり、トランプ前大統領の初の弾劾捜査に巻き込まれた。

連邦下院民主党は弾劾裁判の中で、トランプがホワイトハウスでの会談を武器代わりにしてゼレンスキーにバイデン親子を調査するよう迫ったと主張した。

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 古村治彦です。

 今回は少し難しい話になる。と言っても、「そんなことは当たり前ではないか」ということでもある。そして、「学者たちは物事をどんどん細かくしていって、かえって物事が見えなくなり、大きな理解ができなくなっているんだ」ということが分かってもらえる話になると思う。

 政治学という学問は大きなくくりであり、その中に様々な学問分野がある。方法論、比較政治、政治思想、日本政治やアメリカ政治など一国の国内政治、国際関係論といった分野が存在する。そして、それぞれの中でまた細分化がなされている。政治学の教授もしくは研究者というのは政治学全体の大隊の知識は持っているが、当然のことながら自分の専門を深く研究することになる。そうなると、たこつぼ的な状況が出てきてしまうのは仕方がない。医学を例にして考えてみても、内科から外科、泌尿器科、産婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科などなど多岐にわたる。それぞれを全て極めた医師は存在しなのではないかと思う。

 政治学に統合されたアプローチが必要という議論がある。これは理解できることであるが、これは非常に難しいことだ。政治学を含む社会科学の目的とは、社会で起きる様々な現象を分析し説明することから最終的には法則の発見であるが、これは大変に難しい。法則とは全ての環境で機能するもので、これが分かれば「予測」ができるということになるが、人間が絡む社会においてはそのような予測は難しい。統合されたアプローチは今のところ不可能である。

 ただ、政治という人間の営為ということになればそうも言ってはいられない。国家を運営する、政策を立案し、実行するということになれば、諸理論に経験や知識をプラスして、「大戦略」を作らねばならない。専門家のような狭く深い見方ではなく、深さは少なくても広さは気宇壮大なものであるべきだ。

 アメリカの外交政策や安全保障政策分野で考えてみると、弁護士や外交官として経験を積み、もしくは研究者として研究をしながら、抜擢されて国務次官補代理や国防次官補代理になって外交や安全保障の分野で経験と専門性を高め、評価を高めていくパターンが多い。そうした中で、専門性と知識と経験を高め、より多くの材料や要素を取り入れながら、また時には多くの材料を取捨選択しながら、政策を立案し、政策判断を下すということになる。

 日本に「大戦略」があるだろうか? 残念ながら見当たらない。場当たり的でかつアメリカの言いなりになっておけばよいということが大戦略の代わりになっている。しかし、それではアメリカの衰退が進む中で、羅針盤がない中で公開をする船と同じになってしまう。つまり、どこの港にも着けないということになる。

(貼り付けはじめ)

大戦略は十分に壮大ではない(Grand Strategy Isn’t Grand Enough

―世界最高の国家安全保障の専門家たちは、外交政策のあらゆる側面を研究することを知っている。しかし、それだけでは十分ではない。

アラスディア・ロバーツ筆

2018年2月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2018/02/20/grand-strategy-isnt-grand-enough/?utm_content=bufferf8a38&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

大戦略(Grand Strategy)は、外交政策と国家安全保障の専門家たちにとってよく知られている概念だ。大戦略の意味は長年にわたり膨張してきた。専門家の中には、肥大化しすぎてもはや役に立たないと考える人もいる。しかし、それは間違いである。大戦略の本当の問題は、それが十分に壮大でない(not grand enough)ということだ。

19世紀、大戦略とは実際に戦争をすることであった。一つの作戦地域にいる司令官は、敵を倒すための戦略を持っており、最高司令官は、多くの作戦地域に軍隊を展開するための大規模な計画を持っていた。ある文筆家は、1904年に、大戦略とは「陸上と水上にある国家の全武力」のことだと説明した。

総力戦の到来で、その概念は拡大した。エーリッヒ・ルーデンドルフ元帥が主張したように、戦争の勝利が国家の物理的、精神的な力の総動員に依存するならば、戦時計画も同様の大規模な範囲を持つべきであると考えたのである。BH・リデル・ハートは、大戦略を「社会・経済活動のあらゆる側面を戦争目的の達成に向けて指導する国家政策」と定義した。他の専門家も1942年に、「大戦略の基本は戦争と戦争が起こる社会との相互関係である」 ということに同意している。

冷戦が始まると、その概念は再び拡大した。大戦略は、依然として社会のあらゆる資源を動員することに関係していた。しかし、その目的はより曖昧になった。2度の世界大戦期間中、各国首脳は実際の戦争に関心を寄せていた。対照的に、第二次世界大戦後、各大国は数十年にわたる地位の優位をめぐる争いに巻き込まれた。このように、今日の大戦略は、トーマス・クリステンセンが定義するように、平時においても戦時においても「力と国家の安全を高めるために設計された国内および国際政策のフルパッケージ」である。

大戦略の理論化は、実際の意思決定のあり方とほとんど関係がない、と批判する人々もいる。現実の世界では、国内政策と国際政策の適切な調整はほぼ不可能であるという議論もある。指導者たちは先見性を備えていないし、明確に定義された目標に向かって安定したコースを維持することはない。むしろ、現状維持(status quo)を変化させ、実験をし、危機から危機へ移らせることが多い。

このような批判は、ほとんど見当違いである。漸進主義(incrementalism)や実験主義(experimentalism)は、不確実性(uncertainty)や政治的党派性(political polarization)がある状況では、多くは妥当な反応ということになる。更に重要なのは、実際の政策の方向性が不規則であったり、効果がなかったりするからといって、指導者たちが戦略を軽視していることにはならないことである。戦略的に振る舞おうとしても、それがあまり得意でない指導者もいる。しかし、下手な作家がやはり作家であるように、無能な戦略家もやはり戦略家である。また、どんなに綿密な計画を立てていても、出来事によって混乱に陥ることがある。

指導者たちは状況に応じて戦略を立てなければならない。世界は激動する危険な場所であり、指導者たちは重要な利益を損なわないようにするために、外交領域を無視することはできない。指導者たちは外交に携わらなければならない。それぞれの決断は、目的と手段、そして他の決断への影響について、何らかの計算(some calculation)によってなされなければならない。これらは、大戦略の基本である。専門家は戦略の質を高めようとするが、指導者たちが戦略的に行動しようとする衝動は既に存在している。

しかし、ここに難しさがある。国内政治の世界もまた同様に裏切りの世界だ。現実主義の大御所マキャベリは、君主は二つの恐怖を持たねばならないと警告した。「一つは臣下に由来する内なる恐怖、もう一つは外国の権力に由来する外なる恐怖」である。民主政治体制国家では、内政に不手際を起こした指導者たちは次の選挙で放り出される。独裁国家では、クーデター(coups)で倒される。また、不器用な指導者は、突然、国家が崩壊していることに気がつくこともある。外交の危機が指導者たちを戦略に向かわせるのなら、内政もまたその通りである。

これは容易に想像がつく。指導者たちは、秩序、繁栄、正義、そして自らの任期中の生存といった、国内の重要な利益に対する脅威を管理するための政治プログラムを常に洗練させている。彼らは、これらの利益を確保するために、社会的資源を動員し、政策手段を調整しようとする。言い換えれば、彼らは国内大戦略(domestic grand strategy)を策定する。指導者の中には、これをうまくこなす者もいるが、全ての指導者が大戦略策定を行うよう駆り立てられる。

これら2つの大戦略、外交分野の大戦略と国内分野の大戦略は、相互に密接に関係している。国内の平穏(tranquility at home)は経済成長に依存しており、国家の指導者たちは資源と市場を海外に求める。国内世論が揺れ動く中で、対外戦争は開始され、もしくは中止される。選挙権の拡大、福祉国家の建設、公民権の保護など、指導者たちは国内で譲歩を行い、海外でのキャンペーンへの支持を高める。主要な同盟諸国との貿易協定を強化するために、国内の規制権限が削減されるなどなどが行われる。この2つの大戦略の絡まり方のスタイルは無限大に存在する。

しかしながら、ここで私たちは概念的な問題に直面する。もし、外交と国内の二つの大戦略があるとすれば、どちらか一方が本当の大戦略ということになるのだろうか。また、指導者たちは本当にこのように考えているのだろうか。私たちはこれらの問いに対する答えを知っている。指導者たちはマキアヴェッリの言う2つの恐怖を別々の箱に入れてはいない。彼らは両方を同時に管理し、国内と海外の圧力を同時に調整する首尾一貫したアプローチ、すなわち統治のための単一の戦略(single strategy for governing)を探し求めている。

レーガン主義(Reaganism)は、国内と国外を切り離すことができない単一のドクトリンであった。クリントン主義(Clintonism)もそうだった。トランプ主義(Trumpism)、プーティン主義(Putinism)、「習近平思想(Xi Jinping thought)」も同様だ。

従来の大戦略は、決して大戦略ではない。より大きなものの一面であり、統治するための全体的な戦略である。このことを認識し、大戦略の概念をそれなりに拡張している専門家もいる。ピーター・トルボウィッツは、大戦略を「国家指導者たちが行政権力を維持・強化しようとする手段」であり、単に外交政策上の目標を追求するための手段ではないと定義している。また、アンドリュー・モナハンは最近の著書で、大戦略を「国家の利益を促進するために国家のあらゆる資源を用いることであり、認識されている敵や現実の敵から国家を守ることも含まれる」と定義している。これらの定義は、国家戦略をより広く、より統合的に見るために、分析を一段階上に進めようとするものである。しかし、結局のところ、大戦略の研究は、国家安全保障と外交政策の問題に留まっているのが通常の姿だ。

これはある程度、学問的な便宜の問題だ。学界には、国内政策と外交政策を二分する長い伝統がある。しかし、このような概念的な区分は、指導者が実際に考える方法とは関係がない。リアリズムでは、統治のための戦略についてより広い視野が求められる。

より広範な視点を持つことには3つの利点がある。1990年代に予測された市場民主主義(market democracy)が世界的に拡大し、それに収れんする(convergence)という予測は実現されていない。大国の統治戦略が再び大きく相違する時代に突入している。今後数十年間、競合する各国家戦略の利点をめぐる議論が展開されるであろう。20世紀初頭、1930年代、そして冷戦期、私たちはこれらの時代にそうした議論を経験している。どの国の改革者も、ライヴァル国のパフォーマンスに対する判断に影響を受けるだろう。その際、改革派は内政と外交を切り離して考えることはない。その際、改革派は内政と外交を分けて考えるのではなく、他国の実績を総合的に判断する。学者の役割は、このような世界的な議論を構成する手助けをすることである。私たちの理論的ツールキットが現実の会話を反映したものであれば、より効果的にこれを行うことができる。

国策に関する従来の常識が崩れた瞬間に、戦略を大きく把握することは有効だ。アメリカは今、このような瞬間に苦しんでいる。国内政策と外交政策についての古い共通理解(consensus)が崩れ、その断片を新しい構成に組み直すのに苦労している。国家政策の全体的なデザインについて話し合う必要がある。内政や外交の部分を切り離して考えるべきではない。そのためには、大戦略よりも大きな器が必要である。

広範な視野が持つ3つ目の利点は何だろうか?それは「真実性(Verisimilitude[ヴェリシミリチュード]、訳者註:英語ではtruthlikeliness)」だ。近代大戦略の父と呼ばれるマキャベリは、外交政策や内政の指針として『君主論』を書いたという訳ではない。この本は国家戦略全般の指南書(guide to statecraft in toto)だったのだ。しかし、現実主義者にとっては、この課題から逃れることはできない。指導者に区分けは許されないし、学者もそうであってはならない。

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