古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

2022年10月

 古村治彦です。

 私の勝手なイメージであるが、中国の最高指導部を引退した人物たちは長命な人が多いようだ。80代後半、90代、100歳でも元気に何か式典があれば出てくるように思われる。私が物心ついての中国の指導者と言えば、鄧小平だが、鄧小平も92歳まで生きた。今回は105歳になる宋平が出席しており話題となっている。
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宋平
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胡錦涛(真ん中)

 第20回中国共産党大会にも中央政治局常務委員を務めた「長老たち」が数多く出席した。「特別招待代表」という枠での出席ということだ。以下に新聞記事を貼り付ける。

(貼り付けはじめ)

党大会に江沢民氏らは不在 引退幹部の言動監視し、長老たちの影響力低下か

20221016 2031分 東京新聞

https://www.tokyo-np.co.jp/article/208515

 【北京=白山泉】16日開幕の中国共産党大会では胡錦濤(こきんとう)前総書記(79)ら元最高指導者らが「特別招待代表」として出席し、習近平(しゅうきんぺい)総書記(69)とともにひな壇席に並んだ。ただ、江沢民(こうたくみん)元総書記(96)や、改革派として庶民に人気がある朱鎔基(しゅようき)元首相(93)らの姿はなく、長老の影響力低下も印象づけた。

 江氏はたびたび重病説が流れているが、今年10月上旬には夫人と一緒に籐椅子とういすに座って誕生日を祝う写真がネット上に掲載された。15日に発表された、党大会の議事運営を取り仕切る計46人の「主席団常務委員会」には名を連ねている。

 長老とは、主に引退した最高指導部メンバーを指す。1976年に毛沢東(もうたくとう)が死去した後は、政策や指導部人事に影響を行使してきた。存命の長老は20人弱だが、大半は80歳以上と高齢だ。毛沢東への権力集中と個人崇拝が中国を大混乱に陥れた文化大革命(6676年)につながった反省から、習氏への権力集中には慎重な立場とされる。

 一方、習氏はこうした長老の介入を抑え込むため、反腐敗キャンペーンを推進。元政治局常務委員の周永康(しゅうえいこう)氏らが無期懲役の判決を受け服役中のほか、江氏率いる「上海閥」の有力者や胡氏側近の排除を繰り返し長老に圧力を加えてきた。

 最近は共産党の引退幹部らの言動に対する監視も強めている。共産党機関紙・人民日報は今年5月、引退幹部に党の規律を厳守するよう通知したと報じた。党の人事責任者は「党の方針について勝手な発言をしたり、政治的にマイナスな言論を広げてはならない」などと警告。海外への渡航手続きも厳格化している。

(貼り付け終わり)

 こうした長老たちに注目が集まるのは何か大きなことが起きている時だ。1989年の天安門事件で趙紫陽総書記が失脚することになったが、この時も8名の長老たちが集まって、事態収拾にあたった。習近平が3期目も続投するということについて、党長老たちは批判的だと言われているが、党大会に出席しているということはこの路線をある程度受け入れているということになるのだろう。96歳の江沢民元国家主席、93歳の朱鎔基元首相の第3世代の上海閥コンビは党大会を欠席したことで、「無言の抗議ではないか」という憶測が出ている。96歳と93歳であれば健康問題が本当のところだろうというのが私の考えだが、中国共産党は革命戦争を戦い抜き、情報戦に勝つための秘密主義を守っているので、最高指導部層の情報はほぼ出てこないし、ニューズになる場合には党中央の意向を反映した形になる。また、長老たちには影響力が残っているとは言っても、鄧小平のように実権はない。鄧小平は亡くなる数年前まで中国国家中央軍事委員会主席の座からは降りなかった。鄧小平の実権の裏付けは人民解放軍であった。しかし、現在の長老たちにはそのような実権はないし、後ろ盾となる力もない。そのように考えると、江沢民と朱鎔基の欠席は健康問題なのだろうと思われる。

 長老たちが会議の最前列に座ってボーとした姿を見せるのは、習近平体制の正統性を担保するということだ。党の分裂や内部闘争をしている時ではない、という時に長老たちへの注目が集まる。習近平3期目について、3期目に続投することが非常事態ということではなくて、習近平が3期目も続投しなければならない世界情勢、第三次世界大戦一歩前という状況が非常事態であり、「習近平しかこの状況を乗り切れない、だからまとまらねばならない」ということを長老たちの姿は語っているということになる。
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党長老たちが最前列に座る

(貼り付けはじめ)

習近平に挑戦するかもしれない中国共産党の長老たち(The Party Elders Who May Challenge Xi

-後継者問題が常に中国共産党のアキレス腱である。

メリンダ・リウ筆

2022年10月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/10/13/china-xi-jinping-succession-ccp-party-congress-elders/

かつて彼らは「八仙(八大長老、Eight Immortals)」と呼ばれた。彼らは中国共産党の長老たちで、裏で政治的影響力を行使していた人たちだ。1989年春、街頭デモと党内権力闘争に苦しむ鄧小平は、派閥化した指導部をまとめ、感情的になった国民を落ち着かせるため、7人の引退した高官を呼び寄せた。そして、デモ隊に同調した鄧小平の後継者である趙紫陽を粛清し、兵士には民間人への発砲を命じた。当時、中国のテレビを見ていた私は、外国メディアや外交官たちの中に混じって、表舞台から消えて久しい老革命家たちが、突然、全国放送で再び脚光を浴びることになったことを信じられない思いで一杯だった。一緒にいた西側諸国からの記者は「『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(Night of the Living Dead)』を見ているようだ」とつぶやいた。

習近平が直面している課題は、1989年の天安門事件(1989 Tiananmen crisis)の流血とは全く異なる。しかし、古い習慣はなかなか消えない。1989年の事件は、後継者問題が中国共産党のアキレス腱であり、扱いを誤れば、最も尊敬されている指導者の評判さえも傷つけかねないことを改めて証明した。

中国の政治活動が混乱し、特に個人的な変化が起きる場合、これまで、党の長老たちが多くの場合に再登板してきた。習近平が2012年に中国共産党総書記に就任するや否や、電光石火のスピードで権力固めに動き、習近平は引退した老兵を視界から消し、闇に葬ろうと必死になっている。そのために、中国共産党はこの春、より厳格な新指針を発表した。この指針は、党の幹部たちに対して、トップレヴェルの政策議論について沈黙し、政治的に否定的な発言を避け、影響力の行使を控え、「違法な社会組織の活動(the activities of illegal social organizations)」を避け、何よりも「あらゆる誤った考え方に断固反対し抵抗する(resolutely oppose and resist all kinds of wrongful thinking)」ことを求めた。

中国の現在の政治的緊張は10月16日に開幕する第20回中国共産党大会の間に解消されるだろうと予測する人がいる。しかし、それは間違いだ。党大会は1つの問題を解決するかもしれないが、それ以上に多くの問題を引き起こすことになるだろう。習近平は中国共産党の指導者として3期目を務めると広く予想されており、1989年に鄧小平の遺産を曖昧にし、機能不全の意思決定を防ぐために採用された数十年の慣習を一部覆すことになる。習近平は3期目の任期を延長するため、あるいは終身在任の可能性もあるため、論争を呼び、政治的資本(人々からの信認や支持)をリスクに晒すという事実は、彼が政治的頭痛の種というパンドラの箱を開けていることを意味する。

ジュード・ブランシェットとエヴァン・S・メディロスは国際戦略研究所(International Institute for Strategic StudiesIISS)の機関誌『サヴァイヴァル:グローバル・ポリティクス・アンド・ストラテジー』の記事で、「第20回中国共産党大会は、これまでの政治的継承のパターンとは大きく異なるものになるだろう」と書いている。彼らは続けて次のように書いている。「習近平の次の任期は、エリート政治の新しい規範を確立する上で決定的なものになるかもしれない」。習近平は「中央の意思決定の主導権を政府官僚から奪い取った」のであり、政権存続への懸念が高まる中で、次の5年間は「国際的な非難を顧みない厳しい措置」に対するリスク許容度が高くなるだろう。その代表例は、習近平が独自に進める、評判の良くない「ゼロ新型コロナウイルス」への固執だ。

習近平が徹底して冷酷に批判者を弾圧するため、公に反対意見を述べることは極めて稀であるが、知られていない訳ではない。10月13日、北京では、大学のキャンパスが集中する海淀区に、驚くべき2つの抗議横断幕が現れた。高速道路の高架橋に掲げられた横断幕は次のように宣言していた。「新型コロナウイルステストにノーと言え、食べ物にイエスと言え。監禁はダメ、自由を。嘘にノー、尊厳にイエス。文化大革命はノー、改革はイエス。偉大な指導者にノー、投票にイエス。奴隷になるな、市民であれ」。もう1つの横断幕にはこう書かれていた。「独裁者で国賊の習近平を追い出せ」。当時記録された写真や映像では、陸橋の上で煙が上がり、音声が録音されているように見えた。横断幕に関するコメントは、警戒する検閲官によってソーシャルメディアからすぐに削除された。一部の人々は、『孤勇者(Lonely Warrior)』というタイトルの中国の歌を共有することで、抗議者(または複数の抗議者)への支持を間接的に示した。

習近平は少なくとも10年前から野心的な権力闘争の下地づくりを始めていた。同時に、習近平の父、習仲勲は有名な党の長老であったため、習近平は早くから党の先輩たち(old guards)に対する理解を深めていたようだ。2015年には早くも、習近平は古い世代からの干渉を望まないことを明らかにした。『人民日報』紙は、江沢民元国家主席を狙ったとみられるヴェイルに包まれた警告で、引退した指導者たちに「人が去るとお茶が冷める(once people leave, the tea cools down)」と助言し、引退した身分に「メンタリティを合わせる(adjust their mentality)」よう促したのである。

それ以来、習近平にはライヴァルを排除し、足を引っ張る仲間を排除する時間がたっぷりあった。習近平が権威を確立するための主な手段は、多くの高官を捕らえた執拗な反腐敗キャンペーン(anti-corruption campaign)だ。習近平の1期目には、全権を握る政治局常務委員会の元メンバー1人と、数十人の小役人や将軍が、リスクの高い反腐敗弾圧の一環として、接待係に取り押さえられた。ブランシェットとメディロスは、この取り締まりは「どう考えても壮大な規模だった」と書いている。

この捜査網(dragnet)は、軍事、治安、諜報部門の重要人物も陥れた。2017年、イスラム教徒が多い新疆ウイグル自治区での強引な政策を撤回するよう北京に提案した後、軍の高官だった劉亜洲は公の場から姿を消し、中国のソーシャルメディアや亡命した元党幹部の蔡霞によると、彼の自宅は家宅捜索された。劉の義父は元八仙の1人である故李先念元国家主席だ。

9月下旬にも、警察幹部の孫力軍が、「複数の重要部門を掌握するための陰謀(cabal to take control over several key departments)」を企て、「邪悪な政治的資質(“evil political qualities)」を持っていたとして、汚職の容疑で起訴され、執行猶予付きの死刑判決を受けた。複数の中国メディアの報道によると、彼の主な罪は江沢民(現在96歳)と結びついた徒党に参加したことだということだ。

江沢民は1989年から2002年まで中国共産党総書記を務め、2004年まで党の強力な機関である中央軍事委員会主席に留まり、権力にしがみついたと見られている。江沢民は中国政治におけるいわゆる「上海閥(Shanghai clique)」のボスとみなされ、中国の引退した最高指導部経験者の中で最も影響力があると考えられるが、体調不良に悩まされているという噂がある。同様に、ぶっきらぼうではあるが広く尊敬されている朱鎔基元首相(93歳)も体調不良と伝えられている。朱鎔基の健康問題は、一部の中国アナリストが、朱鎔基は、習近平の経済的に悲惨で孤立主義的な反新型コロナウイルス政策に愕然としていると主張するのを止めてはいない。匿名希望のある中国側関係者は、「朱鎔基は多くの人が彼に期待を寄せ、適切なタイミングで発言することを期待していることを承知している」と述べている。

しかし、中国共産党の長老たちは、習近平時代になっても糸を引いているのだろうか? 1989年の「八仙」はもういない。当時、鄧小平の後継者である趙紫陽が既に中国共産党総書記になっており、趙が粛清されるまでは、この8人に鄧小平が含まれていた。鄧小平は1997年に死去した。彼らのあだ名は、中国の伝説に登場する超能力を持つ8人の道教の人物を連想させしばらくは定着していた。しかし、習近平政権は、この「8仙」を、党を引退してまだ生きている8人の幹部と呼ぶようになった。現在、習近平が徹底的に政敵を無力化したおかげで、習近平と同世代の潜在的な挑戦者のほとんどは、協力するか、臆病になるか、黙り込むか、牢獄に入れられるかしている。

この事実は、今年105歳になる党の長老である宋平がニューズに出てから、最近飛び交い始めた荒唐無稽な噂の説明に役立つ。9月、宋は慈善基金で演説する姿をビデオに収め、「改革開放(reform and opening up)」について曖昧なことを述べたという。中国のソーシャルメディアは別次元の盛り上がりに突入した。クーデターの噂も流れた。インターネット検閲は、宋の発言に関する報道をサイバースペースから削除しようと躍起になった。宋が発した言葉は、まったく無害なもの、あるいは習近平自身が過去に使ったものであったのならば、気にすることはないはずだ。

宋平は、リスクを冒すような行動派とは見なされていない。彼は保守的と見られており、1989年の八仙には選ばれなかった。なぜなら、彼は当時、党の重要な中央組織部部長という重要な職に就いていたからだ。天安門事件に共鳴した中国共産党員を除名することを発表したのも彼だった。

しかし、宋平の突然の再登場に注目する理由は1つある。宋は三代にわたる政治家であり、健康状態も良好で、20人ほどの党の要である政治局常務委員会の元メンバーの中で最も影響力のある人物である。しかも、中国政治における「中国共産主義青年団派(tuanpaiYouth League faction)」に属する人物だ。中国共産主義青年団は14歳から28歳までの若者の育成を目的とする(10歳代は「少年先鋒(Young Pioneers)」と呼ばれ、赤いハンカチをつけているのがよく見られる)。青年団は、中国の貧しい内陸部の開発を促進し、所得格差に対処しようとすることが多い。上海閥の本拠地である豊かで華やかな東海岸と対照的である。宋は、辺鄙で荒れた甘粛省で出世し、青年団の有力者である胡錦涛元国家主席(宋が鄧に推薦したことでトップへの道筋に乗った可能性がある)と温家宝元首相を指導していた。

習近平時代に共青団派は繁栄していない。首相である李克強は共青団出身と見られているが、習近平が執拗に権力を蓄積し、習近平を頂点とする指導層を確立したため、李の地位と影響力は低下した。習は「万物の主席(chairman of everything)」と呼ばれるようになった。共産主義青年団は官僚的な影響力を失い、主要人物は降格や粛清されている。習近平は共青団幹部を「官僚的でステレオタイプな話ばかりしている」と批判したこともある。李の権限は切り捨てられただけでなく、党の長老と気軽に会うことさえ禁じられたという根拠のない報道もある。

「引退した指導部出身の長老は、習近平を除く最高幹部たちと交際してはいけないことになっている。これは何年も前からそうだった」と、多くの政府高官を知る中国のある情報源は言う。このような背景から、宋平の再登場は、彼の発言ではなく、彼が姿を見せたという事実が、党の共産主義青年団支持者たちが、来るべき人事異動の際に、彼らの候補者をもっと昇進させるよう水面下で働きかけているとの憶測を呼んだのだ。党大会期間中に人事異動が行われる予定だが、政権交代は来年3月の全国人民代表大会(National People’s Congress)で承認される予定だ。

多くのことが危うい。政治局常務委員7名のうち少なくとも2名(習近平を除く)が引退し、政治局委員25名の半数近くが引退すると予想される(現在の年齢基準がそのまま適用されると仮定した場合)。また、中国の最も高位の外交官2名も引退する予定である。そして、李克強は首相を退任する予定であり、その後任が誰になるかが注目される。

習近平は中国政治を未知の領域へと導いている。鄧小平以降の政治に一定の予測可能性をもたらしてきた、任期制限(term limits)やその他の規範を投げ捨てたことで、多くの敵を作ってしまった。逆説的ではあるが、後継者選びを難しくしているのも事実である。ブランシェットとメディロスは、習近平が「明確で信頼できる後継者(clear and credible successor)を指名し、明確で信頼できる権力移譲のスケジュール(clear and credible timeline for the transfer of power)を確立するまで、「後継者に関する不安(succession uncertainty)」の時期が終わらないと予測している。

それは簡単なことではないだろう。シドニーに拠点を置くローウィー研究所のアナリストで、中国共産党の内部構造を解説した『中国共産党:支配者たちの秘密の世界(The Party: The Secret World of China's Communist Rulers)』の著者であるリチャード・マクレガーは次のように述べている。「最も危険なものの1つは、習近平が指名した後継者だ。人々は習近平を攻撃することはできないが、習近平が後継者として推す人物に対しては列をなして攻撃することができる」。

昔なら、中国の最高指導者は党の長老たちに頼み込んで、このような政治的な駆け引きや派閥争いを乗り切った。しかし、現在では、習近平を支持するよりも、習近平を疎ましく思ったり、習近平に怒りを感じたりする人の方が多い。一方、新たに引退する幹部たちが出ることで、新たな党長老を生み出すことになる。古い「仙人」たちのような革命的な資格を欠いていたとしても、新しい長老たちは後輩たちよりも政治に精通し、反撃のエネルギーを持っている可能性がある。中国のことわざには「熟成した生姜はより辛い」というものがある。在任中、解雇や粛清を恐れて、現在の政策を批判するのを思いとどまった人たちもいただろう。引退によって、失うものは何もないと納得する人もいるかもしれない。

※メリンダ・リウ:北京を拠点とする外交政策コメンテイター。『ニューズウィーク』誌北京支局長、共著に『北京の春(Beijing Spring)』がある。

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(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 米中関係は緊張をはらんだものとなっている。特に今年8月下旬にナンシー・ペロシ米連邦下院議長がアジア歴訪の一環で台湾を訪問し、蔡英文相当と会談を持ったことで、中国が反発し、台湾海峡周辺で軍事演習を行った。ウクライナ戦争勃発後、「次は台湾だ(中国が台湾に侵攻する)」という根拠の薄いスローガンもあり、米中間の緊張は高まった。

 アメリカも中国も直接ぶつかって戦闘状態に入る、もしくは大規模な戦争状態に入ることは望んでいない。そんなことになれば世界の成長のエンジンであるアジアに大きな青く影響が出る。その悪影響はウクライナ戦争の比ではない。しかし、「ウクライナの次は台湾だ」「アメリカに協力して日本は中国と戦うべきだ」という空虚ではあるがお勇ましいスローガンを発して、戦争の危機を煽る勢力が世界各国にいる。 日本国内には、「第三次世界大戦の到来を待ち望んでいる」かのように、安全保障に関する話題やテーマを弄ぶ現役の政治家たちが一定数いる。こうした政治家たちの多くは、暗殺された安倍晋三元首相の「遺志」である「日本の核武装」「国民皆兵(徴兵制)」実現を訴えている場合が多い。アメリカが日本の核武装を許すかどうか、少し考えてみれば分かることだ。故安倍元首相を祀り上げる勢力は親米ではあるが、いつ反米に転換するか分からない。なぜなら、彼らは「太平洋戦争で日本は悪くなかった」「日本が太平洋戦争を起こすことでアジア各国の独立が早まった」という歴史修正主義を標榜し、靖国神社・遊就館史観を後生大事に唱えているからだ。これはアメリカにしてみれば全く受け入れられないし、「極東軍事裁判の判決を否定するのですね」ということになる。そうなれば、日本は「敵国」となる。そんな一枚めくれば危うい状況で、日本に核兵器やミサイルの保有を許すことはない。日本の技術力ならば短期間で、アメリカに届く破壊力の大きい核兵器を搭載したミサイルを開発することが出来るのだから。

 話を元に戻すと、バイデン大統領と習近平国家主席の個人的な意思だけでは外交政策は決まらない。中国は独裁体制だが、何でもかんでも習近平が決める訳ではない。アメリカは連邦議会もあり、国務省もあり、ホワイトハウスの中に国家安全保障会議があり、多くのスタッフがいる。そうした人々の影響を受けることになる。国家安全保障会議でアジア太平洋政策を統括するインド太平洋担当調整官カート・キャンベルを始め、中国に対してタカ派的な姿勢を示す政府高官が多い。こうした勢力の声が大きく成れば、バイデンとしても妥協は難しいし、中国の習近平としても、妥協や低姿勢を続けることはできない。そうなれば、緊張関係は高まっていく。

 米中間が緊張をはらむものというのはアジア、太平洋、インド洋といった広範な地域を不安定化させる。これは多くの人々が肯定すると思う。従って、緊張関係を促すような声が大きくなる時にはそれを抑制するというバランスの取り方が重要だ。このバランスが崩れた時に大きな厄災が襲ってくる。

(貼り付けはじめ)

バイデン・習近平のトップ会談でも米中関係の悪化に歯止めをかけられない(Biden-Xi Meeting Unlikely to Halt U.S.-Chinese Slide

-妥協は段々と難しくなりつつある。特に台湾をめぐってはそうだ。

ジェイムズ・クラブトゥリー筆

2022年8月25日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/08/25/biden-xi-pelosi-us-china-taiwan-meeting-g20-summit-indonesia-geopolitics/

ジョー・バイデン米大統領と習近平中国国家主席は仕事をしなければならない。ナンシー・ペロシ米連邦下院議長の台湾訪問とその後の中国の軍事的反応を受け、米中間の二国間関係はここ数十年で最悪の状態にある。バイデンと習近平は、2022年11月にインドネシアで開催されるG20サミットで直接会談する可能性があると考えられている。もし、3カ月後に両者が会談するとしたら、両者は現在事態の収拾について考えているはずである。しかし、そのためには、なぜ台湾の情勢がこれほどまでに不安定なのかを明確に分析し、上からの介入なしには情勢が悪化する可能性が高いことを認識する必要がある。

バイデン大統領は就任以来、習近平と4回、電話やヴィデオを通じて会談している。米中関係が着実に悪化しているにもかかわらず、この2回の通話は実に生産的であった。バイデンは、新たな大国間競争(superpower competition)の時代に向けて「ガードレール(guardrails)」を確立する必要性についてしばしば語っている。一方、習近平は、既存のアジアの地域秩序(regional order)を覆す長期的な目標を抱いている。また、台湾をめぐる中国のレッドライン(red lines)についても、一貫して警告を発している。中国外務省は2022年7月の最後の電話会談での習近平の発言から「火を弄(もてあそ)ぶ者は火によって罰せられることになる」という言葉を引用し、台湾の独立に対する中国の懸念に言及した。しかし、少なくとも短期的には、習近平はアメリカとの関係において安定性と継続性を志向しているようにも見える。

バイデンと習近平の友好的な関係の記録から、両首脳は少なくとも一時的にでも関係悪化に歯止めをかけることができる可能性を示唆している。しかし、そのような期待は、2つの理由から大きく裏切られることになる。

第一に、今回の危機から両者が得た教訓である。簡単に言えば、北京とワシントンの双方は、ペロシの台湾訪問からそれなりに良い結果を得たと考えているのだろう。これでは、今後、妥協したり、同じことを繰り返さないようにしたりするインセンティヴが働かない。

中国には喜ぶべき理由がある。基本的に、北京は戦争によらない手段で、時間をかけて台湾を奪還することを目的としている。しかし、アメリカの無謀な干渉に乗せられて、台湾が正式な独立に向かうことを恐れている。しかし、アメリカの無謀な干渉に乗せられて、台湾が正式に独立するような事態になれば、少なくとも現時点では避けたい戦争に発展する可能性がある。このようなシナリオを避けるためにも、北京はペロシの台湾訪問のような動きに対して極度の不快感を示す必要があると感じている。

しかし、ここ数週間、北京は、初めて弾道ミサイルを台湾の上空に発射するなど、他の重要な目標を達成した。また、今回の軍事演習は、人民解放軍の多くの部門による共同作戦、すなわち将来の封鎖の予行演習を行うという貴重な機会を提供した。その結果、台湾海峡を挟んだ軍事的な現状は、永久に北京に有利に変化する可能性が高い。

重要なことは、中国が地域の多くの国々を味方につけながら、このようなことをやってのけたことである。この危機が勃発した頃、オーストラリアのペニー・ウォン外相は、合理的な国家はミサイルの乱射によって国際紛争を解決することを支持すべきではないとの声明を発表した。その内容は「オーストラリアは、中国が台湾沿岸の海域に弾道ミサイルを発射したことを深く憂慮している。これらの演習は不釣り合いであり、不安定化させるものだ」というものだ。しかし、少なくとも東南アジアの多くは、今回の危機の責任は北京ではなくアメリカにあると考え、ペロシの訪問は不必要な挑発行為であると見ている。

アメリカは、ペロシの台湾訪問をめぐるアジアでの広報戦に負ける危険性があることを、少なくとも認識しているようだ。米国家安全保障会議(the U.S. National Security Council)のカート・キャンベル・インド太平洋担当調整官(Indo-Pacific coordinator)は、2022年8月12日金曜日の午後、異例のオフレコで記者会見を行い、ウォンの批判を事実上繰り返した。「中国の行動は、平和と安定という目標とは根本的に相反するものだ。この作戦の目的は明確で、台湾に対して威嚇し、強要し、その回復力を弱めることだ」と示唆した。

それでも、アメリカには最近の出来事に満足する理由が他にもある。どう考えても、バイデンはペロシの訪台を望んでいなかった。しかし、ペロシが行くことが明らかになると、北京の圧力を前にしても、アメリカは引き下がらなかった。その結果、アメリカは、1997年に当時のニュート・ギングリッチ連邦下院議長が行ったように、米連邦下院議長の訪台を認めるべきという方針を再び確立した。より一般的には、ここ数週間の出来事は、アメリカがオーストラリア、日本、インドといった地域のパートナーに対して、台湾有事のために真剣に計画を立てる必要性を印象付けるのに役立っただろう。

バイデンと習近平が2022年11月の会談で何らかの安定を図るためには、双方の相対的な成功という認識を克服することが第一の関門となるだろう。第二の関門は、どちらかと言えばより複雑なものだ。中国もアメリカも、台湾をめぐる現状を支持すると言っている。しかし、実際には、中国、アメリカ、台湾の三者が何らかの形でその現状を損なっている。

中国は明らかに根本的な事実を変更しようとしている。数十年にわたり軍備増強を行い、必要なら武力で島を奪還できる軍事力を作り上げている。中国はグレーゾーンの軍事戦術と経済的威圧で台湾に対して執拗に圧力をかけている。北京が最近発表した「台湾問題と新時代の中国統一」に関する白書では、台湾に中国軍を駐留させないなど、統一中国における台湾の将来の位置づけに関するこれまでの安心感を取り除く内容になっている。

台湾の国内政治も現状を維持できない方向に進んでいる。各種世論調査によれば、バイデン・習近平会談が予定されている11月26日に行われる台湾の国政選挙では、蔡英文総統率いる民進党(Democratic Progressive Party)が勝利し、北京との関係強化を望む野党国民党(Kuomintang party)が再び敗北することが予想されている。中国の軍事演習後に行われたある世論調査では、台湾国民の5割が独立に賛成しており、台湾国民の独立志向は高まっているようだ。このようなデータは、北京に極度の警戒心を抱かせるだろう。

一方、バイデンは、北京から「サラミ・スライシング(salami-slicing 訳者註:情報や条件を小出しにして時間稼ぎをしたり、相手から譲歩を引き出したりする手法)」と非難されても、ワシントンの「一つの中国(One China)」政策を変えるつもりはないことを強調するのに必死だ。この点については、バイデンのティームも誠実だ。しかし、アメリカのエリートや連邦議会が、台湾を含めて北京に対してより厳しい態度を採る方向に動いており、現状を支える基盤が実際に変化していることは十分に明らかである。

より複雑なことには、様々な危機的状況が現状を更に悪化させる可能性がある。台北には、より多くのハイレヴェルなアメリカからの訪問者が訪れることだろう。2022年11月の中間選挙で共和党が連邦下院を奪還した場合、世論調査の通り、別の米連邦下院議長の訪問が容易に想像される。アメリカはまた、台湾を「主要な非NATO同盟国」のカテゴリーに引き上げ、台湾への武器売却を増加させる超党派の新台湾政策法案を間もなく可決する可能性もある。更に2024年の米大統領選に向けて、共和党の候補者が台湾に対して強硬な姿勢を示す可能性がある。

これらの要素を総合すると、バイデンも習近平も妥協することは難しいということになる。どちらのリーダーも弱腰になる訳にはいかない。2022年11月中旬のG20は、バイデンにとって中間選挙での敗北が痛手となった直後に開催され、バイデンは国内の支持を回復する方法を模索することになる。習近平は、ここ数カ月に習近平ティームが打ち出したような厳しい言葉を撤回することはないだろう。中国の魏鳳和国防相は6月にシンガポールで開かれたシャングリラ・サミットで「歴史の歯車は回っており、誰も中国の統一への道を止めることはできない。もし対立を望むなら、私たちは最後まで戦うだろう」と述べた。

そのような事態を避けるためには、信頼(trust)と妥協(compromise)が必要だが、どちらも危ういほど不足している。台湾をめぐって長期的な安定を得るには、バイデンと習近平が崩れかけた現状を補強するだけでなく、それを再構築することが現実的に必要であるが、現状ではほとんど不可能に見える。より現実的な問題は、両首脳に、少なくとも一時的にでも緊張を緩和させるために、双方の強硬論の主張(hard-line voices)を指導する政治的意志と権限があるかどうかである。そうでなければ、ペロシ訪台をめぐる危機を予見したに過ぎない、より重大な対立への転落は続くと思われる。

※ジェイムズ・クラブトゥリー:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、アジア国際戦略研究所上級部長。著書に『億万長者による支配:インドの新しい黄金時代を通じての旅路(The Billionaire Raj: A Journey Through India’s New Gilded Age)』がある。ツイッターアカウント:@jamescrabtree
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 今回は、副島隆彦先生の最新刊『金融暴落は続く。今すぐ金を買いなさい』(祥伝社)をご紹介します。発売日は2022年11月1日です。
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金融暴落は続く。今すぐ金を買いなさい

 以下に、まえがき、目次、あとがきを掲載します。参考にしていただき、手に取ってお読みください。

(貼り付けはじめ)

まえがき

 この本で書く一番大事なことは、以下の事実である。

 実は金(きん)の価格が、世界値段では、ものすごく値上がりしているという事実である。金は、実はロシアをはじめBRICs(ブリツクス)諸国では、1オ(ウ)ンス( once 31・1グラム)で、2700ドルである。これの日本円での価格は、ちょうど1グラム=1・2万円である。金はもう1グラム=1万円を超えているのだ。

 ところが、私たちが今、日本国内で金(きん)を買おうとすると、1グラム=8600円ぐらい(田中貴金属の小売値段)である。安い。100グラムの金の小さな板だったら86万円である。1グラムあたり、世界値段と3400円の差が出ている。

 いったい何が起きているのか。

 ただし私が「世界値段」と書いたのは、ロシア政府が6月に、「金1グラムを、=5000ロシアルーブルとする」と決めて固定したからである。この固定値段を、フィックスト・プライス fixed price と言う。ロシア中央銀行は、世界に向かって、金の地金(じがね)を持参した人にこの値段で買い取ると発表した。だから前述したように、日本円なら1グラムを1万2000円なのである。現在「1ルーブル=2・4円」である(図表を参照)

 だが日本人は、1キロの金の延()べ板(いた)を(自分の)ポケットに入れて、モスクワに飛行機で飛んでいくわけには、そう簡単にはいかない。

 今、日本の金券ショップ(古物商の認可だけ)では、金(きん)1グラム=8460円とかで買い取っている。いわゆるバッタ屋と呼ばれる「おたからや」や「大(だい)(こく)()」のような業者が、どんどん金を買い取っている。それらの金(きん)は、いったいどこに行くのか。興味津々(しんしん)である。

 まさか日本の暴力団とロシアのマフィアが組んで、北海道の漁民たちの漁船で、いつもはタラバガニやシャケやウニを、半分非合法で買い取っている、その船でロシアに金の地金(ゴールド・インゴット)を持ち出しているか分からない(笑)。

 このように金の値段はどんどん上がっている。アメリカは、自分のドル体制とドル紙幣を守りたいから、憎(にく)き金の価格をニューヨークやシカゴでたたき落している。貴金属の先物(さきもの)の市場で、金ETF(イーティーエフ)という仕掛けを使って、たたき落している。政府自(みずか)ら、こんなみっともないことをしている。

 アメリカ政府(NY連邦銀行が係)は、公表している8300トンの金を、もうほとんど持っていない。すっからかんなのだ。だから金が憎らしくて憎らしくて仕方がない。

だから、この本の読者になってくれる皆さんは、金の価格は、これからもっと2倍、3倍になってゆくのだという私の考え(近未来への予言)を信じてください。

 この本の第1章から、このことをガンガン書いていきます。

 ここまで書いたとおり、金(きん)は次第に世界値段のほうに近寄ってゆく。だから、日本国内でも1グラム=1万2000円になる。わざわざ金の延()べ板(いた)を、暴力団に頼んでロシアに持ち出さなくても(笑)、手持ちの金を黙ってじっと持っていればいいのである。

 だから、まだ金(きん)を買ったことのない人は、今からでもいいから金を買いなさい。あなたの旧(ふる)くからの友だちで、金を1グラム2000円とか、3000円で買った人たちを妬(ねた)んでばかりいないで。決心して買いなさい。もうすぐ買えなくなる。だから私はこの本の表紙に、表題(タイトル)に「今こそ金を買いなさい」と打ち込んだ。

 すでに金(きん)を買ってたくさん持っている人たちは、新たな金融制度の大変動(新円切り替えのリデノミネーション)が起きたときに、さらに金の値段も上がるのだが、そのときどのように売るかは前の本で書いた。「それは何ですか、教えてください」という人は勉強が足りない。人が儲かったことを妬(ねた)んで羨(うらや)んで嫉妬(しっと)してばかりいないで、自分で動きなさい。

副島隆彦

=====

目次

まえがき

1章 金は〝世界値段〟に近づいてゆく

● 金の世界値段は1グラム=1万2000円

● 値段の格差を、どう埋めてゆくか

● 米政策金利はどこまで上げられるのか

● 金利の上げ下げは政府の武器

● 危険な相場と国家自身が張る金融バクチ

● アメリカに迫り来るバブル崩壊

● 危険な債券市場に手を出すな

● 債権()と債券()の違い

● 年金が半分に減らされる!?

● 本当の円とドルの力を「購買力平価」で見る

● 中国人が日本のワンルームマンションを買う理由

● 私たちは、生きてゆく

2章 金融暴落は続く

● 連鎖する大暴落

● 自分で自分に借金をしている

● 2023年末、NY発の大恐慌突入

● ウクライナ開戦と同時期の金融緩和

● 〝日本売りの仕掛人〟は、なぜ負けたのか

● なぜ円安が進んだのか

● ミセス・ワタナベの勝利

● リーマン・ショックの再来

● ドルペグ制の仕組み

● 英ポンドを暴落させたジョージ・ソロス

● 米国債の秘密

● 中国が米国債を売れば、アメリカの金融市場は崩壊する

● 米国債を売らせない法律とは

3章 世界恐慌突入は2024年

● 世界経済体制が変更される

● アメリカを襲う不動産バブル

● ノンバンクがふたたび暴れる

14年前、リーマンは人身御供にされた

● 資本主義の原理を政治力でゆがめた

● 2024年、大恐慌突入の序曲

● 日本の不動産を買う中国人や韓国人たち

4章 賢く金を買う

● 金の値段をどう読むか

● 金の売り方と金券ショップ

● 金券ショップが買い集めた金は、どこへ行くのか

● 自分の金は倉庫業者に預けなさい

● なぜパラジウムは値上がりするのか

● プラチナの可能性

● ソフトバンク、5兆円赤字決算の原因

●「アリババへの投資を5分で決めた」は本当か

● QRコードで成長するPayay

● 新生銀行買収と北尾吉孝

● テレビ朝日買収騒動と孫正義の黒幕

●「評価」と「再評価」は違う

5章 資源〝貧乏〟大国が台頭する

● 仮想通貨を買ってはいけない

● ロシアルーブルは強い

● 金本位制が復活する

●「8515」の時代

● 人民元がルーブルと結合した

● SWIFTからCIPSへ

附章 安倍晋三暗殺の真実

● 統一教会への組織解散命令

● カルトとは何か

● 副島隆彦も命を狙われた

●〝安倍処分〟を世界最高度で決定した者たちの実名

あとがき

=====

あとがき

 この本を書き終えて、つくづく思う。

 私は、この「エコノ・グローバリスト・シリーズ」25冊を毎年1冊、1998年から書いて出版し続けてきた。

 四半世紀が経()って、まさしくエコノ・グローバリスト econo-globalists たち、すなわち「経済面の地球支配者」たちが滅びつつある。彼らの現在の通称(つうしょう)は、 the Deep State(ザ・ディープステイト) である。

 際限なく(リミツトレス)刷って世界中に垂れ流したドル紙幣が、およそ100兆ドル(1・4京[けい]円)ある。それと貸借(たいしゃく)を取っている米国債の無制限の大増刷が、もはやこれ以上は許されない時代になりつつある。

 なぜならロシアのプーチン大統領が、今年の4月から、ロシア産天然ガスはルーブル通貨でしか売らない、と宣言した。それと同じくして、金(きん)を固定価格(フイツクスド・プライス)にして、「金1グラム=5000ルーブルでロシア中央銀行が買い取る」とした。これで実物資産(タンジブル・アセット)に裏打ちされたお金しか通用しなくなる。

 欧米白人文明のG7(ジーセブン)体制に対決して、中国とロシアを先頭にした非白人の貧乏〝資源〟大国による〝新興国(ニユー)G8〟の連合が出来上がりつつある。「15(欧米):85(その他)」の世界である。

 このことを本書でずっと説明した。

 本書も祥伝社(を定年退職した)岡部康彦氏と、熱海の寓居(ぐうきよ)で寝泊まりして完成させた。記して感謝します。

 私たちは四半世紀、幾山河(いくさんが)を渡ってここまで来た。私は自分の命が尽きるときまで、このシリーズを書き続ける。

2022年11月

副島隆彦

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争についてその原因と責任について議論されることがある。その際に注意にしたいのは「時間の長さ」と「考えるもしくは分析するレヴェル」だ。キエフ・ルーシ、モスクワ・ルーシと呼ばれていた時代から考え始めるのか、20世紀から考え始めるのか、それもソヴィエト連邦成立(1917年)から考えるか、それとも、ソヴィエト連邦崩壊(1991年)から考えるのか、2022年2月23日から24日にかけての48時間で考えるのか、だいぶ異なった主張が出てくるだろう。どの時間軸を取るかということだ。

 そして、「分析レヴェル」だ。3つの分析レヴェルというのは、国際関係論の泰斗ケネス・ウォルツが『人間・国家・戦争』という著書の中で示した考え方だ。また、外交政策分析においても個人レヴェル、国内レヴェル、国際システムレヴェルで分析することが出来る。こうした手法を用いると、色々な説明ができる。

個人レヴェルで言えば、ロシアのウラジミール・プーティン大統領やウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領、更には欧米諸国の指導者たちに焦点を当てて、彼の経歴や権力掌握後からこれまでの行動を心理学的、社会学的な手法を用いて分析するということができる。国内レヴェルで言えば、国内の政治体制やどのようなアクター(政治家や政党、団体など)がどのような活動を行っているか、力を持っているかということを分析して説明することができる。国際システムレヴェルは国際関係論のリアリズムとリベラリズムという理論を用いて分析するということになる。

社会における現象の多くは単一の原因で起きることはない。複数、しかもかなり多くの原因で起きる。それら様々な原因の与える影響の度合い、強さ、大きさは異なる。例えば、ある植物(小学校の時に朝顔の観察日記を奴休みの宿題でやった人は多いだろう)の種を地面に埋めてそこから芽が出る、という現象について考えてみると、その原因は多くある。気温、湿度、日光、肥料(その中にもいろいろな成分ある)、水など素人が考えても様々出てくる。

 人間社会の減少もそれと同じで数多くの原因がある。社会科学はそのうちのどれに焦点を当てるか、どこを強調してモデルを作るかということになる。個別の研究から共通点や法則性を見つけ出して抽象度を高めていき、仮説や理論を生み出して、この仮説や理論がどれだけ当てはまるか、説明する力を持っているかを検証し、試していくということになる。

 話がだいぶ逸れてしまったが、「ウクライナ戦争はロシアが悪い」という言葉は非常に粗雑な言葉だということを私は言いたい。戦争開始を決定したのはウラジミール・プーティンで、ウクライナ国内に侵攻したのはロシア軍だ。それは間違いない。この現象がどうして起きたのか、ということを上記のように順序だてて考えていかねばならない。単純にプーティンが独裁者で奇矯な人物だからだ、ロシアという国は昔から好戦的なのだということでは済まない。「ロシア人たちが非合理的に周囲からの攻撃を心配し、自分たちの安全に関して病的になっている」と馬鹿にするのも間違っている。ロシアの不安を煽り続けたことはなかったか、という視点も必要だ。矛盾した言い方になるが、社会科学は法則を見つける作業ではあるのだが、対象の人間や社会があまりにも複雑であり、人間の理性はあまりにも無力であるのでそのような作業はうまくいかない。従って、今できることは、分析の段階を整理して、落ち着いて考え続けることだ。

(貼り付けはじめ)

ロシア・ウクライナ戦争の原因はロシアか、NATOか?(Who caused the Russo-Ukrainian war, NATO or Russia?

アレクサンダー・J・モトリル筆

2022年7月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/international/3543012-who-caused-the-russo-ukrainian-war-nato-or-russia/

悪い論調の中にはなくなるべきであるにもかかわらず、なくならないものがある。その1つが、ローマ教皇フランシス、シカゴ大学のジョン・ミアシャイマー、コロンビア大学のジェフリー・サックスらが最近行った、NATOがウクライナの加盟除外を断固拒否したためにロシア・ウクライナ戦争が起こったという主張である。言い換えれば、この戦争はロシアとウクライナの問題ではなく、ロシアに隣国への攻撃と侵略を強要した西側の愚かな政策の問題であると主張する人々がいるのだ。

この主張を、ソヴィエト連邦の人々がかつて「歴史の灰の山(ash heap of history)」と呼んだような場所に捨てる上で、少なくとも9つの説得力のある理由が存在する。そしてそれは早ければ早いほどいい。西側諸国の存続がかかっているのだ。それらについてこれらを考えてみよう。

(1)ウクライナが今後20数年の間にNATOに加盟する可能性がゼロであることは、誰もが知っていた。それは、アメリカ人も、ヨーロッパ人も、ウクライナ人も、ロシア人も含めてそうだった。そして、ウクライナにとってNATO加盟は非現実的であったため、アメリカがウクライナの港に船を停泊させたり、ウクライナの東部国境にミサイルを設置したりする可能性もゼロであった。

(2)1991年にNATOの宿敵であったソ連が崩壊して以来、ほとんど全てのNATO加盟諸国の軍隊が資金不足に陥り、それが無視されてきたことは周知の事実である。そのようなNATOがロシアの安全保障に脅威を与えるという考えは、特にロシアが軍隊の近代化のために何十億ドルも費やしてきたことを考えると、馬鹿げていたということになる。

(3)ヨーロッパを訪問してみると、東ヨーロッパのNATO加盟諸国がロシアから攻撃される場合、他のヨーロッパ諸国が軍隊を派遣してそれらを防衛することは考えられないことが理解できる。2017年に行われたヨーロッパの諸国民を対象とした世論調査で、攻撃された場合に自国のために戦う気があるかどうかを尋ねたところ、この点を立証している。ドイツ人の18%が「はい」と答えた。イタリア人の20%、スペイン人の21%、フランス人の29%が同様に「はい」と答えた。

(4)そして悪名高い第5条(NATO条約の相互防衛条項)が存在する。これは、ある加盟国に対する攻撃には、他の加盟国が軍事的対応をとることを保証するものとされている。しかし、そんなことはない。第5条は明確にこう言っている。「締約国は、一国又は複数の締約国に対する武力攻撃は、全ての締約国に対する攻撃と見なすことに同意し、その結果、かかる武力攻撃が行われた場合には、各締約国は、武力の行使を含む必要と認める行動を直ちにとることにより、攻撃を受けた締約国を支援することに同意する」。言い換えると、攻撃された時にどう対応するかは、個々の国家が必要かどうか考える問題なのである。ポーランドは軍隊を派遣するかもしれないし、ドイツは平和行進を組織し、フランスは会議を開くかもしれない。

(5)より詳しく見てみると、NATO、西側諸国、そしてアメリカがロシアにウクライナとの戦争を強要したという主張は根拠のないロシア人像を前提としている。この主張では、ロシアの指導者たちは悪名高くタフな集団であるが、実際には非常に敏感で、ほとんどヒステリックになっている。NATO拡大に関する約束違反やウクライナのNATO加盟の可能性に関する約束がないことに対して、彼ら独特の効用計算に従ってコストと利益を計算するのではなく、感情的に、ほとんど子供のようにふて腐れることによって反応しているのは確かだ。ロシア人、特にプーティン大統領が、現実の、あるいは想像上の侮辱に対して、西側諸国に仕返しするために戦争を起こし、大量虐殺に乗り出すと、誰が本当に信じるだろうか?

(6)フィンランドとスウェーデンがNATO加盟を目指したのは、プーティンの対ウクライナ戦争がきっかけだった。同じように、ウクライナもロシアの攻撃を恐れてNATO加盟を目指した。現在進行中の戦争が示すように、ウクライナの恐怖は完全に正当化された。このような恐怖は誇大妄想(パラノイア)の産物ではなく、17世紀半ばに始まり今日までほとんど衰えることなく続いてきたロシアの侵略と搾取の長い歴史的経験によるものだった。NATO加盟は、ウクライナの求める安全保障を提供するかどうかは別として、ウクライナが存立の危機に直面しているという信念を示すものであった。

(7)ミアシャイマー、サックス、ローマ法王は主張の中で、ロシアの歴史的・現代的帝国主義、プーティン率いるロシアの政治システムの本質、ロシアの帝国主義・権威主義的政治文化の露骨な現実を無視して議論している。あたかもロシアが反応はするが主導権を持たない受動的な行為者であるかのように語っている。このようにして、彼らはロシアから主体性を奪い、その指導者を非理性的な子供にして、それによって戦争の全ての責任を幼稚なロシアから父権的な西洋に転嫁することに成功したのである。

(8)少なくとも14世紀以降、モスクワ大公国(Muscovy)は帝国主義を実践し、ピョートル大帝(Peter the Great)が生み出したロシア帝国はモスクワ大公国の足跡を引き継いでいる。このような帝国主義が長く続いた背景には、ロシアが歴史的に独裁体制であったことと国内外での攻撃的な行動に価値を置く政治文化を持っていることがある。独裁者は、自らの支配を正当化する手段として、外国に対する拡張と侵略を行う。この点で、プーティンはピョートル大帝やイワン雷帝(Ivan the Terrible)と何ら変わるところはない。帝国主義的な政治文化は、拡張と侵略を正常で望ましいこと、ロシアの歴史的運命の一部であるかのように思わせることによって、拡張と侵略を促進させるのである。

(9)ウクライナは確かにロシアに対して脅威を与える。それは、ウクライナが理論上2050年にはNATO加盟国になっている可能性があるからではない。そうではなくて、ロシアとその神話から独立しようとする民主政体国家としてのウクライナの存在自体が、ロシアの帝国主義、ロシアの権威主義、ロシアの政治文化を脅かすからである。プーティンとそのプロパガンダ担当者はそのように言っており、それを信じない理由はない。現在進行中の戦争における彼らの大量虐殺行為は、この点を強調しているに過ぎない。

これらのことは政策にとってどのような意味を持つのだろうか?

第一に、一部の人々が喧伝する単純化された世界観は危険なほど間違っており、脇に置くべきだということである。第二に、ロシアは子供ではなく、領土の拡大、政治的独裁、社会的支配に深くコミットする冷静な計算高い大人である。そして第三に、もしロシアがウクライナの占領に成功すれば、ロシアは拡大を続けるだろう。なぜなら、その帝国主義的プログラム、ファシスト的政治体制、帝国主義的政治文化は、拡大を必要とし、促進するからである。エルミタージュ美術館の館長が簡潔に述べたように、「私たちは皆、軍国主義者であり、帝国建設者である」ということだ。

もしくは、ウクライナが陥落するならば、次はヨーロッパだ。

※アレクサンダー・J・モトリル:ラトガース大学ニューアーク校政治学教授。ウクライナ、ロシア、ソヴィエト連邦、ナショナリズム、革命、帝国、政治理論の専門家。ノンフィクション10冊の著書。著書は『帝国の終焉:諸帝国の衰退、崩壊、復活』と『諸帝国の再現の理由:帝国の崩壊と帝国の復活の比較視点』がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 本日、第20回中国共産党大会が開会される。今回の党大会は、習近平国家主席(中国共産党中央委員会総書記・中国国家中央軍事委員会主席・中国共産党中央軍事委員会主席)が3期目も続投し、中国共産党中央委員会、中国共産党中央政治局、中国共産党駐政治局常務委員会、国務院、国家中央軍事委員会(党中央軍事委員会と顔ぶれが一緒)などの人事が新たに決まるということで注目される。

 このブログでも既にご紹介しているように、習近平政権の3期目、更にその先の4期目も合わせた、5年間もしくは10年間は、「世界の大動乱に備えた準戦時体制」であり、この世界史の転換点とも言える時期を乗り切り、2032年からは、1840年から42年に起きた、中国にとっての屈辱のアヘン戦争200周年で、中国が「中華王国(Middle Kingdom)」に返り咲くという目標を達成する仕上げの時期ということになる。

 これからの10年間の準戦時体制では、航空・宇宙関係出身者の政治への登用が進む。更に、「中国史上最も恵まれた世代」と呼ばれる「第7世代」、1970年代生まれが指導部に多数登用されることにもなる。鄧小平が決めて、江沢民時代から始まった10年おきに同年代で構成される指導部交代という慣例が、習近平によって覆されることになるが、これは、第二次世界大戦中にアメリカのフランクリン・D・ルーズヴェルト大統領が、2選までという慣例を覆し、4選を果たしたことと同様だ。ウクライナ戦争が深刻化し、世界大戦になる可能性が高まっている中で、新しい指導部では乗り切れないという判断もあっただろう。本来であれば、最高指導者を出すはずだった第6世代(1960年代生まれ)がパッとしないということもあったかもしれない。

 不安な点も指摘されている。指導部内の派閥争いだ。中国国内政治には、太子党(有力政治家たちの子女)、中国共産主義青年団派(若手エリート党員の組織、共青団、団派とも呼ばれる)、上海閥(江沢民とその子分たちで構成される派閥)などの派閥がある。習近平は太子党に分類される。上海閥でもあったが、権力を掌握した後に上海閥系を追い出した。現在の李克強国務院総理は共青団系だ。胡錦涛前国家主席は共青団系だ。25名で構成される中国共産党中央政治局、その内の7名で構成される中国共産党中央政治局常務委員会(チャイナ・セヴンと呼ばれる)の人事での比率がどのようになるかが注目される。

 中国はこれからアメリカを追い抜き、世界の覇権国となる。その時期は2040年代ということになる。これからの20年はそのための最後の基礎工事、足場固めということになる。第20回中国共産党大会はその点で大変重要な政治的意味を持つことになる。

(貼り付けはじめ)

中国共産党第20回大会と中国におけるエリート政治の将来:ウィリー・ウー=ラップ・ラムとのインタヴュー(The 20th Party Congress and the Future of Elite Politics in China: An Interview with Willy Wo-Lap Lam

ウィリー・ウー=ラップ・ラム筆

2022年9月20日

『チャイナ・ブリーフ』誌

https://jamestown.org/program/the-20th-party-congress-and-the-future-of-elite-politics-in-china-an-interview-with-willy-wo-lap-lam/

●質問:中国の習近平国家主席は、中国が権威主義的な諸大国の枢軸と、アメリカおよびその同盟諸国(主に自由主義的民主制自体国家の連合)との間のより広い闘争に巻き込まれていると考えていることが広く認識されている。習近平が前任者以上にアメリカとの地政学的な競合を受け入れている理由は何だろうか? 第20回党大会後も習近平は同じ道のりを歩むと考えるか?

■ラム:習近平の最も有名なスローガンである「中国の夢(the Chinese Dream)」の実現と「中華民族の偉大な復興(great renaissance of the Chinese nation)」は、「東洋が台頭し、西洋が衰退する(the East is rising while the West is declining)」という確信に裏打ちされている。この考え方は、かつて改革の最高責任者である鄧小平が「アメリカと仲の良い国は全部栄えている(countries that get on well with the U.S. have all prospered)」と述べた倫理観とは大きく異なる(Guancha.cn:2019年6月10日;フェニックス・テレビ:2015年12月25日)。しかし、中華人民共和国とアメリカが主導する各国の「民主」同盟との間の経済的、技術的、地政学的な争いが大きな原因で、一方では中国、他方ではアメリカとヨーロッパ・アジアの同盟諸国の間で正に新冷戦(new cold war)が勃発している(Project Syndicate:2022年6月17日;サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙:2022年4月20日)。

習近平政権がウラジミール・プーティン率いるロシアを「無制限(ノーリミット、no limits)」で支持し、北京が台湾海峡、日本海、南シナ海で強硬なパワーを発揮していることもあり、北京は世界の舞台で相対的に孤立している。中国はまた、輸出や投資誘致、技術分野に不可欠な重要部品へのアクセスなどにも厳しい制裁が課せられている。

これに対して習近平は、ロシアやパキスタン、カザフスタンなどの中央アジア諸国を含む上海協力機構(Shanghai Cooperation OrganizationSCO)と共に、権威主義諸国家の枢軸(axis of authoritarian states)を形成し、アメリカ主導の同盟に対する中国の対抗能力を強化しようとしている(ザ・ディプロマット:2022年8月22日;Moderndiplomacy.eu:2022年7月30日)。この枢軸の潜在的なメンバーには、イラン、北朝鮮、ミャンマーも含まれる。9月15日にウズベキスタンでプーティン大統領と会談した際、習近平は「中国はロシアと共に大国の役割を担う努力をし、社会の混乱に揺れる世界に安定と前向きなエネルギーを注入する指導的な役割を果たすことを望んでいる」と述べた。プーティンはウクライナ問題で中国に「疑問と懸念(questions and concerns)」があることを認めたものの、モスクワと北京は「公正で民主的で多極化した世界(a just, democratic and multipolar world)」を形成するために協力すると述べた(『ザ・モスクワ・タイムズ』:9月15日;Globalnews.ca:9月15日September 15)。

第20回中国共産党大会の後、アメリカ主導のブロックと中国主導のブロックとの間の全面的な闘争が激化することが予想される。中国とアメリカは、両者の全面的な争いを存在を賭けたゼロサムゲームとみなしている。そして、対立関係に一定の安定を与えていた共生的な経済・気候関連協力が縮小していることから、関係改善の見込みは低い(Cn.nytimes:9月14日;『フォーリン・ポリシー』:6月27日誌)。

●質問:中国は現在、新型コロナウイルスの脅威が続き、経済が低迷しているという、いくつかの厳しい課題に直面している。これらの問題は、習近平が3期目の任期中に一部の政策領域で方針転換を余儀なくされる可能性があるのだろうか?

中国共産党が投票所での正統性を欠いていることを考えれば、経済成長と国民全体の支持、少なくとも納得が中国共産党の正統性の重要な要素である。いわゆる「紅五毛(hongwumaored 50 cents)」(ソーシャルメディア上で党を褒め称えてお金をもらうネットユーザーの通称)を除けば、相当数の国民が、新型コロナウイルス感染拡大による検疫、失業率の上昇、消費財への支出減、不動産・銀行危機などの問題に苛立っている(VOAChinese:9月15日;Cn.wsj.com:9月14日)。第20回中国共産党大会後、習近平は李克強首相をはじめとする国務院テクノクラートが採用した相当数の措置、特に積極的に成長を促進するための経済への流動性注入を継続し、「世界の工場(world’s factory)」から撤退しないよう西側諸国やアジア諸国の投資家たちを説得するとみられる(チャイナ・ブリーフ:9月9日)。

しかし、国務院(state council)は、政府各レベルと国有企業、民間コングロマリットが抱える膨大な債務の原因であるインフラストラクチャ整備支出を強化するという数十年来の方式を、望ましい改善策として挙げている(Gov.cn:7月6日;新華社通信:5月6日)。習近平は、技術革新などの重点分野において、党国家当局が資源を「集中的かつ重点的に」使用する「国体制、juguotizhiwhole country systemic approach)を好むと宣言した(人民日報:9月7日;Qstheory.cn:6月10日)。また、「内部循環(internal circulation)」の重要性についても言及している。これは、中国の広大な国内市場に経済成長を依存するという半閉鎖的な(semi-autarkist)政策の略語である。こうした動きは、鄧小平の市場開放政策への回帰を予感させない。

習近平国家主席や李克強い首相を含む最高指導者たちは、北京が新型コロナウイルスの患者数をコントロールし、感染拡大による死亡を防ぐことができるのは、中国と西洋の統治システムの優劣を示すものであると主張している。また、幹部たちは、徹底的かつ効率的な検疫(quarantine)作業を行うことで、最高指導者である習近平への忠誠心を示すよう奨励されている(Chinesenewsgroup.com:9月7日;Radio French International:6月28日)。

このような強硬な封鎖措置は、経済を停滞させ、一般市民を遠ざけるだけでなく、中国製ワクチンの有効性や、検査、ワクチン製造、検疫の仕組み全体に関わる大規模な腐敗についても疑問を呈した。新型コロナウイルス感染拡大に関連する措置が経済に正面から打撃を与えたため、第20回中国共産党大会後に構成される指導部は検疫措置の範囲と実施に現実的な変更を加えるかもしれない。しかし、「動的なゼロ新型コロナウイルス政策(dynamic zero-Covid policy)」の主要な要素は2023年まで十分に維持される可能性がある。

●質問:中国共産党中央政治局(CCP Politburo)は9月9日、第20回中国共産党大会で採択される予定の中国共産党綱領(CCP Constitution)の改正について検討会を開催した。中国国家憲法(PRC Constitution)と中国共産党綱領は、1980年代初頭から数回にわたって改正されている。今回の改正は何を目指しているのだろうか?

■ラム:中国共産党または中国共産党憲法は、中国または中国国家憲法と区別するために、既に2017年の第19回中国共産党大会で改正され、「新時代の中国の特色ある社会主義に関する習近平思想(Xi Jinping Thought on Socialism with Chinese Characteristics for a New Era)」が党の指針として明記された。今回の改正案では、最高綱領に「2つの確立两个确立、liang ge quelitwo establishes)原則を挿入し、習近平の地位を更に高める可能性がある。習近平同志を党中央の核心(core of the dangzhongyang [central party authorities])、全党の核心(core of the whole party)とし、習近平思想を新時代の中国の特色ある社会主義(Socialism with Chinese Characteristics for a New Era)に優先させる」(中国日報:9月10日;サウス・チャイナ・モーニング・ポスト:9月10日)のだ。また、中国共産党総書記と中国共産党中央軍事委員会主席の任期を廃止するために、中国共産党憲章が改正されるかもしれない(Radio Free Asia:9月11日;VOAChinese:9月10日)。現在の中国共産党綱領では、この2つのトップ地位の在任期間について明確な規定がない。しかし、2018年に国家憲法が改正され、これまで各5年の2期までとされていた国家主席のポストの任期制限が廃止された。

●質問:今回の第20回中国共産党大会は、ポスト毛沢東時代の他の大会とどのように似ていて、どのように違うのか? サプライズはあるのだろうか?

権力者はサプライズを嫌い、そのような出来事が事前に周到に準備されていることを確認するために、あらゆる手段を講じる。だからこそ、最高指導者である習近平は、中国政治に「ブラックスワン(black swans)」が出現しないよう繰り返し警告している(Beijing Daily:8月20日;China.com:5月9日)。21世紀の毛沢東と言われる習近平は、人工知能(artificial intelligenceAI)を活用した大規模な監視体制に確固たる自信を持っており、銀行や不動産のデフォルトや関連スキャンダルをめぐっていくつかの地方で勃発したデモにも動じていない(チャイナ・ブリーフ:7月18日)。習近平のエネルギーのほとんどは、第20回中国共産党大会に向けた人事の最終調整に費やされている。それは、自派の支配を強固にすると同時に、習近平の明らかな毛沢東回帰と反米・反西側の姿勢に心を痛めている党の長老や反対派の多くを宥めるだけの余地を生み出すためだ(Deutsche Welle Chinese:9月9日;Asia Society:8月4日)。

改革開放時代(Era of Reform and Opening Up)においても、党指導部は約2300人の全人代代議員と新任の中央委員会委員の意向を最終的に掌握してきたが、後者は5年に1度の大会を利用して、公共政策について時に異質な意見を述べることがある。今回の党大会は、1人の人間の知恵と功績を称えることが中心で、経済の活性化、新型コロナウイルス感染拡大への対応、対米関係の改善など、新しいアイディアが出てくるかどうかは大いに疑問だ。

●質問:十年前、中国の指導者たちの地位は「同輩中の首席primus inter pares)」、つまり 「first among equals」と表現されることがあった。また、習近平時代におけるエリート政治や派閥抗争をどのように考えるべきか?

■ラム:鄧小平は、「改革時代」において、1人の権力者に対する、個人崇拝(personality cults)や過度な権力集中(over-concentration of powers)を防ぐために、数々の重要な制度改革を断行した。そのひとつが、単独の人物による支配から集団指導体制(collective leadership)への移行であり、政治局常務委員会(Politburo Standing CommitteePBSC)の各メンバーが権力を大きく共有し、総書記は「同輩中の首席(first among equals)」に過ぎないというものであった。中国の幹部はこのモデルを「九龍(責任を分担して、nine dragons)河を飼いならす(九治水、Jiulong zhishui)」と称したHK01.com:2019年8月11日;Yazhou Zhoukan:2019年7月15日)。しかし、習近平は2012年末の政権獲得当初から、全ての意思決定権を自らの手に集中させることに成功した。それでも、李克強首相が率いる共青団派(Communist Youth League Faction)と江沢民元主席が率いていた上海派(Shanghai Faction)の2つの強力な党派の残党は、政治局や政治局常務委員会に少数派として残っている(チャイナ・ブリーフ:2021年10月14日)。第20回中国共産党大会以降、思想・人事から財政・外交に至るまで、習近平と習近平派の権力支配が強まる(チャイナ・ブリーフ:8月12日)。これは、「偉大なる舵とり(Great Helmsman 訳者註:毛沢東の別称)」がほぼ絶対的な権力を握っていた1960年代から70年代の毛沢東時代に一部回帰することになる。

●質問:中国共産党内では習近平の後継者争いが起きているのか? もし、明日、習近平が突然死んだらどうだろうか? 体制は大混乱に陥るだろうか?

■ラム:2032年の第22回中国共産党大会まで習近平が統治するとすれば、後継者を探すのに10年間の猶予がある。この後継者問題は、最高指導者の突然の失脚という不測の事態に中国共産党が対処できるかどうかということと同様に、公式メディアや検閲の厳しいソーシャルメディアにとってタブーである。長年にわたる「七上八下(68歳定年、67歳以下はもう1期、retirement at 68, possibly one more term for cadres aged 67 or under)の規定により、1960年代生まれの第6世代の新星たちは、第20回中国共産党大会または2027年の第21回党大会で中国共産党中央政治局常務委員となるが、それは一時的な措置に過ぎないかもしれない(チャイナ・ブリーフ:2021年11月12日)。その有力候補は、習近平の愛弟子で最高顧問の丁学祥(Ding Xuexiang、1962年生まれ)と重慶市党委書記の陳敏爾(Chen Min’er、1960年生まれ)である。しかし、第22回党大会で丁は70歳、陳は72歳になる(Chinafocus.com:4月7日;Cn.nytimes214日)。年齢条件を満たせるのは第7世代のメンバーか1970年代生まれの幹部だけであるため、習近平の後継者候補はまだ政治の舞台で強いイメージを打ち出していない(チャイナ・ブリーフ:2019年4月9日)。これらの幹部はいずれも次官以上の地位に到達してはいない。更に、新星たちが、国家的に重要な業績を上げ、最高幹部への昇進を勝ち取るまで数年しかない(サウス・チャイナ・モーニング・ポスト:8月29日;Thinkchina.sg:2021年12月6日)。

●質問:中国共産党総書記には国民による投票がないが、習近平が「終身指導者(leader for life)」として一般人や下級党員、仲間であるエリートたちに訴えていることは何か? 基本的に、習近平の「切り札(stump speech)」は何か?

■ラム:多くの中国人は、1978年末に鄧小平が「改革の時代(Era for Reform)」を始めてから30から40年の間に生まれたか、あるいは働き始めた。習近平は、「思想の解放(thought liberation)」や集団指導(collective leadership)から、民間企業の権限強化、西側資本の誘致に至るまで、鄧小平の教えのほとんどを覆した。中国共産党は国民の脱政治化(depoliticized)に成功し、多くの人々の関心とエネルギーを政治から純粋な経済的追求へと移行させた。しかし、習近平は反改革主義的な施策、とりわけ習近平自身の終身在職を含む個人崇拝(personality cults)の復活に対して、大多数の国民と幹部から真の支持を得たことはない。失業率の上昇と株式・不動産市場における中産階級の大きな損失は、習近平にとって、「中華民族の偉大な復興(the great renaissance of the Chinese nation)」などの聞こえが良いが空虚なスローガンの正当化を二重に難しくしている。台湾統一(reunification of Taiwan)や中国が新たな中央の王国(emergence of China as the new Middle Kingdom)となることを含む「中国の夢(Chinese dream)」は、習近平が「終身支配者(ruler for life)」になることを目指す根拠となっている(Indianexpress.com:2021年11月16日;Asia.nikkei.com:2021年10月21日)。しかし、中国とアメリカの経済力、技術力、軍事力の間には依然として強大な差があり、東洋が西洋に取って代わるとは限らない。この画期的な目標を達成できない習近平は、中国の「第2の毛沢東(Second Mao Zedong)」であるという主張の正統性を損なう恐れがある。

※ウィリー・ウー=ラップ・リン(Willy Wo-Lap Lam、林和立)博士:ジェイムズタウン財団上級研究員、『チャイナ・ブリーフ』誌定期寄稿者。香港中文大学歴史学部・国際政治経済修士プログラム非常勤講師。6冊の中国に関する著作を持ち、代表作に『中国政治と習近平時代(Chinese Politics in the Era of Xi Jinping)』(2015年)がある。2020年に最新作『中国の将来のための戦い(The Fight for China’s Future)』(ルートレッジ・パブリッシング)が刊行された。

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