アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今回は習近平国家主席が慣習を破って2022年以降も権力を握り続けるのではないかという内容の記事をご紹介します。この記事を読むと、「習近平が独裁者となるのか」と思わされますが、国際情勢で考えますと、2017年からアメリカはヒラリーが大統領になって2021年までやる訳ですが、その間にどういう「大きな戦争」を東アジアに仕掛けてくるか分かりません。彼女は国務長官時代には「アジアへの回帰(Pivot to Asia)」路線を打ち出したこともありますし、それに対応するための非常的措置ということも考えられるかと思います。また、世界の覇権がアメリカから離れていく時期に、中国国内をしっかり固めておきたいという考えもあるのではないかと思います。

 

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習近平は永遠に(Xi Jinping Forever

―中国の力を増しつつある国家主席・習近平は伝統を破壊し、彼の支配を永続させようとしているのか?

 

ウィリー・ラム(Willy Lam)筆

2015年4月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/04/01/xi-jinping-forever-china-president-term-limits/

 

 外国の専門家、そして中国国内の専門家は、中国の最高指導者習近平(Xi Jinping)の中国共産党にショックを与えて体制を刷新する巧妙な手腕に驚いている。彼は党、国家、軍の権力を自分に集約しているように見えるがこれもまた人々を驚かせているに違いない。彼が最高指導者の地位に就いて2年半経ったが、国家の最高指導者の支配する期間は10年という制限を壊し、ここ最近のどの指導者よりも長い期間中国を支配しようとしているように見受けられる。

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習近平 
 

 中国共産党最高幹部に近い3人の人物に取材をしたところ、習近平と彼の側近たちは、習近平が少なくとも2027年までは中国を支配できるようにするための計画を立てているということだ。2027年の段階では彼はまだ74才であり、健康であると思われる。

 

私が取材した3名は全員が匿名を希望した。それはエリート政治を議論することはとても微妙なことであるからだ。そのうちの1人は次のように語った。「習近平は党・国家・軍を全て一手に支配している。そして、現在のところ、彼の後継者と目される人物は出ていないし、その人物を訓練しているということもない。この事実が示しているのは、彼が2022年に中国共産党中央委員会総書記の地位を退くことに影響されることなく、それ以降も中国の最高指導者の地位に留まり続けるということである」。習近平の計画は、ライヴァルたちからの反撃、国際社会や国内の危機、健康問題などで覆される可能性もあるが、彼が出来るだけ長く権力の座に就こうと計画しているのは明らかである。

 

 習近平は10年を超えて中国を支配したいと望んでいる。彼の願いを如実に表しているのは、彼が公式の場で自分の後継者となりうる人物を明らかにすることを拒んでいることだ。中国では一般的に、指導者たちは世代によってくくられる。習近平は第五世代に属している。この世代は1950年代に生まれた人々である。そして、習近平は第六世代、もしくは第七世代から後継者を選び出していない。

 

 それでは、習近平の前任者であった胡錦濤(Hu Jintao)の行動について考えてみよう。1942年生まれの胡錦濤は、第四世代の中心的な人物で、2002年から2012年まで中国共産党中央委員会総書記を務めた。1992年にエリートである中国共産党中央政治局常務委員に就任してすぐに、胡錦濤は、習近平(当時は浙江省党委書記)と李克強(Li Keqiang、現・国務院総理で当時は遼寧省党委書記)を含む第五世代の人々を25名の最高幹部で構成される、中国の統治機関である中央政治局に昇格させた。胡錦濤はまた下級の幹部たちも昇進させた。1990年代半ばまでに、第五世代に属する20名ほどの若手のスターたちが各省の副部長以上の地位に就いた。

 

 2007年の第17期中国共産党大会(党大会は5年おきに開催される重要な会議)までの時期に、胡錦濤は30名ほどの第六世代の若手のスターたちを選別し、重要な地位に昇進させたことも見逃せない動きであった。

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胡錦濤、江沢民、温家宝

 

 2005年までに、胡錦濤と江沢民(Jiang Zemin)は、習近平と李克強を、胡錦濤と当時の国務院総理である温家宝を後継者として中国共産党中央政治局常務委員会に入れることを決めたのは明らかであった。そして、2005年末までに、第六世代の20名ほどが各省の副部長以上の地位に昇進した。

 

 支配エリートに新しい血を入れるという中国共産党の伝統に習近平が従うならば、2015年末までに、第七世代の20名ほどを各省の部長、副部長級にまで昇進させているはずである。しかしながら、習近平が2012年11月に党総書記に就任して以降、第七世代では1人だけ、上海市副市長の時光輝(Shi Guanghui、1970年生まれ)だけが副部長級の地位に昇進した。習近平が2015年中にこの他の指導者たちを昇進させる可能性は低いと見られている。

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 時光輝
 

 習近平はもう一つの不文律を破ろうともしているようだ。1980年代末から、中国共産党の最高幹部は非公式ではあるが、「七上八下(七は入れて八は出す)」政策に従ってきた。67歳までの最高幹部は中央政治局常務委員会に入ることが出来るが、68歳以上の人物は入ることが出来ない。5年に1度開催される党大会で、その時に68歳以上の中央政治局常務委員は引退すると予想され、68歳以下の人物は地位に留まる。現在の中央政治局常務委員7名のうち、習近平と李克強を除く5名は2017年までに68才を超えるので、その時の党大会で引退することになる。しかし、その5名の代わりに誰が中央政治局常務委員会に入るのだろうか?

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栗戦書

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王滬寧

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趙楽際

 

 取材に答えてくれた3名の匿名の中国共産党関係者たちは、習近平の信頼の厚い第五世代に属する3名の人物が2017年に中央政治局常務委員に昇格するだろうと語った。その3名は、栗戦書(Li Zhanshu、1950年生まれ)、王滬寧(Wang Huning、1955年生まれ)、趙楽際(Zhao Leji、1957年生まれ)である。更に重要なことは、現在の常務委員であり、腐敗根絶の責任者である王岐山(Wang Qishan、1948年)はそのまま地位に留まる可能性が高いことだ。王岐山は習近平と同じ太子党であり、2人は1950年代からの友人であるが、2017年の第19期中国共産党大会の段階で王岐山は69歳となっている。取材に答えてくれたある人物は、2022年の第20期党大会まで第五世代は党指導部の防波堤として留まる可能性が高く、そうなると、習近平は少なくとも2027年の党大会までは現在の地位に留まろうとしているということになる。

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王岐山

 最高指導者は10年間しかその地位に留まれないという不文律がある中で、習近平はこの確立された伝統をどのように避けようとしているのか?

 

 中華人民共和国憲法は、国務院総理を含む、各省の部長が10年以上地位に留まることを禁止している。しかし、中国共産党の憲法である党憲章には、各省の部長級以上に相当する党の役職の就任期間の制限について明文化された規定は存在しない。その代り、1980年代から90年代にかけて中国の最高指導者であった鄧小平(Deng Xiaoping)が確立した不文律があり、それによると、中央政治局常務委員は10年以上その地位に留まれないことになっている。

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鄧小平

 

 しかし、習近平は国家主席の座を降りてもなお国のトップであり続けることは可能なのである。中国では、中国共産党と政府の組織は並行して存在しているが、実質的には、党が政府に対して優越し、コントロールしている。例えば、湖北省の最高責任者は党委書記である。省長は2番目にランクされる。国政レヴェルでもこれは同じだ。習近平が持つ3つの肩書、国家主席、中国共産党中央委員会総書記、中国人民解放軍を統括する中国中央軍事委員会主席のうち、中国共産党中央委員会総書記の地位が最も重要なのである。

 

 中国共産党中央委員会総書記の地位に留まる以外にも、習近平には他の選択肢がある。1つのシナリオとしては、毛沢東の遺風を弱める一環として鄧小平が1982年に廃止した、中国共産党中央委員会主席の地位を復活させ、自分が主席に就任することがある。これが実現すると、未来の総書記は主席である習近平に従わねばならなくなる。

 

 もう1つのシナリオとしては、中国共産党中央委員会総書記と国家主席を退任しても、中央軍事委員会主席には留まるということが考えられる。これにはいくつかの前例がある。1980年代、鄧小平は中央軍事委員会主席の地位に就いて、中国を支配した。また、江沢民は国家主席を退いてからの2年間、中央軍事委員会主席の地位に留まって影響力を保持し続けた。

 

 2013年末、権力を掌握してから1年後、習近平は党の最高指導部の中に2つの大きな力を持つ組織、中央国家安全委員会と中央全面深化改革領導小組を作った。この2つの組織はそれぞれ、半警察国家と経済政策を一手にコントロールしている。習近平が中央軍事委員会とこの新たに創設された2つの組織の主席に留まるならば、誰が中国共産党中央委員会総書記になろうとも、習近平に従属しなければならない。

 

 もちろん、習近平の権力掌握と彼の徹底した反腐敗キャンペーンは、党内のライヴァルたちの反撃を呼び込む可能性も高い。また、彼が国内政策と外交政策を全てコントロールするとなると、国内や国際社会で予期できない危機が起きた際に、スケープゴートにされることもあるだろう。

 

 習近平の前には困難な仕事が一つ待っている。2022年を越えても権力を保持できるだけの権力基盤の構築に彼が失敗してしまうことも十分にありうる。しかし、習近平が定まった期間に縛られないで最高権力を持つ指導者だけが中国と共産党を版得させることが出来ると考えたらどうだろうか。彼は自分こそそれをやる男とだと考えるだろう。

 

(終わり)