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 古村治彦です。

 

 今回は、2015年5月27日に発売となりました『崩れゆく世界 生き延びる知恵 国家と権力のウソに騙されない21世紀の読み解き方』(副島隆彦・佐藤優著、日本文芸社、2015年)を読みましたので、感想などを書きたいと思います。

 
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 このブログでも目次などは既にご紹介しました。著者2人が話している内容は多岐にわたります。安倍政権、イスラム国、ロシア、アメリカ、ピケティの『新・資本論』などについてです。読者は自分が興味や関心を持つ部分から読んでも良いかと思います。そこには、時間と空間を自由に行き来できる知識人が提供する極上の「世界の見方」が溢れています。

 

 私は本書の特徴を「アナロジー(analogy、類推)」だと考えます。このことは、佐藤優氏が前書きで書いています。アナロジーというのは、あることを理解するために、過去に起きた、似たようなことと比較することです。私が勉強した国際関係論(International Relations)でも良く使われる手法です。国際関係論の有名なアナロジーとしては「朝鮮戦争とヴェトナム戦争のアナロジー」というものがあります。

 

 しかし、このアナロジーはあることを理解しやすくしてくれる面はあるのですが、中途半端なアナロジーをすると害があるというマイナスもあります。私がアメリカ留学中に、アメリカのイラク侵攻がありました。この時、威勢の良い右翼系、ネオコン系メディアは、「この戦争はうまくいく、イラクは1945年以降の日本のようになるのだ。日本のようにアメリカと敵対していた非民主国家が民主国家となるのだ」と喧伝していました。しかし、実際にはうまくいきませんでした。

 

 このアナロジーを使いこなすためには多くの知識と要点や重要な要素を掴む眼力が必要です。これは生半の修行では身につきません。中途半端にやると怪我をする、俗諺に「生兵法は怪我のもと」とありますが、まさにそうなってしまうのです。

 

 著者2人の日本の戦後の過激な学生運動の知識、そこから生み出されたのが「イスラム国は過激派、特に革マル派のようなものだ」というアナロジーは驚かされるばかりの破壊力(人に一瞬にして理解させる力)を持ちます。

 

 この本のサブタイトルは「国家と権力のウソに騙されない21世紀の読み解き方」です。私は、読者がアナロジーの力を手に入れ、「待てよ、今政府がやろうとしていることは昔のあれと同じじゃないか」「今の状況はあの時とよく似ている」と考えることがこのサブタイトルの答えではないかと思います。このようにアナロジーを使って考えれば、「次に来ること」の見当が付けやすくなります。それが完全に当たらなくても、「身構え、準備する」ことが出来るだけも違います。

 

 この本をぜひ多くの方々にお読みいただきたいと思います。

 

※2015年5月31日に開催される副島隆彦を囲む会主催の講演会「副島隆彦が、今の重要な事を洗いざらい語ります」の会場でも本書『崩れゆく世界 生き延びる知恵』が発売される予定です。

 

※講演会の申し込みは、こちらからどうぞ。

 

(終わり)