ダニエル・シュルマン
講談社
2015-07-29


アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




 

 古村治彦です。

 

 維新の党は分裂状況にあるように見えます。下に貼り付けた朝日新聞と産経新聞の記事は同じことを報道していますが、全く別の向きを向いています。これが示しているのは、維新の党がこの2つの貌を見せて、状況を理解しづらくし、混乱させているということです。

 

 私は維新の党が大阪ウイング、東京ウイング小沢系、東京ウイング非小沢系に分裂しているとこれまで書いてきました。そして、先日の文章では、自民党、特に党中央と官邸の別動隊である大阪ウイングが力を持ちつつあると書きました。

 

 橋下氏は住民投票に敗れ、政治の世界から足を洗うと言いながら、安倍首相と3時間も話をした後になって、露骨に安保法制や憲法改正についてSNSのツイッターを利用して発言するようになりました。まさに安倍首相の別動隊、子飼いの手兵といったところです。

 

 維新の党の幹事長である柿沢未途代議士は、アニメ化もされ、今でも根強いファンを持つ田中芳樹著『銀河英雄伝説(略称:銀英伝)』の大ファンであるようで、SNSのツイッター上で、銀英伝と自分たちの状況を絡めた書き込みを行っています。しかし、それらはどれも我田引水の内容で、銀英伝のファンを怒らせるものです(私を含めて)。

 


 柿沢氏が高揚感と陶酔感から自分を物語の主人公に見立てるのはご自由です。しかし、私が現在の威信の党の動きを見ていると、物語に出てくる、フェザーンという自治領(軍隊は持たないがほぼ国家のような動きをしている)の末路を思い出します。銀英伝は銀河系に帝政を敷く銀河帝国と民主政治体制を採用する自由惑星同盟があり、その間での戦いを描いています。国力の差は銀河帝国の方がやや上です(それを間にあるフェザーンが変えてしまうことで物語が展開します)。フェザーンは帝国と同盟の間にある地域で、その地理的な有利性を利用して、帝国に属しながら自治領となり、商業的に繁栄しています。

 

 まだ銀英伝をお読みになっていない方、アニメをご覧になっていない方は是非銀英伝に触れてみていただきたいと思いますが、フェザーンは帝国に同盟を滅ぼさせようとするのですが、結局帝国によって自分たちの領土を侵され、自治権も喪失してしまいました。

 

 維新の党が「現実的」だの「是々非々」だのと言って、自民党に迎合し続けるならば、結局は自民党に吸い尽くされて、お金のかからない別働隊として利用して、ポイ捨てされるだけのことでしょう。その時、自民党に救ってもらえるとすれば、橋下徹氏と松井一郎氏で、みんなの党や維新の党だけで選挙に通ってきた国会議員たちは弊履のように捨てられておしまいでしょう。

 

 銀河英雄伝説には、自由惑星同盟の急進的な右翼組織「憂国騎士団」というテロ組織が出てきます。この組織は愛国的ではないと彼らが判断する言動や時の政府に反対する人々に対して集団で暴力をふるうグループです。この夕刻騎士団と自由惑星同盟の行政府の長(国家最高評議会議長)ヨブ・トリューニヒトが裏でつながっている様子が描かれているのですが、安倍首相と橋下氏の関係を考えると、維新の党はこの憂国騎士団にも擬せられるような存在になっているように私には思えます。この憂国騎士団も最後には利用されるだけ利用されて壊滅させられました。

 

 

 維新の党が現状のままであれば結局不名誉な結末が待っていると私は考えています。

 

(新聞記事転載貼りつけはじめ)

 

●「橋下氏、野党再編に冷や水 維新、分裂の可能性も」

 

朝日新聞デジタル 616()755分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150616-00000016-asahi-pol

 

 維新の党の橋下徹最高顧問(大阪市長)が安倍晋三首相との会談直後の15日、民主党を痛烈に批判した。維新の松野頼久代表らは民主を相手にする「野党再編」路線だが、橋下氏の発言で急ブレーキがかかる可能性がある。首相も世論の批判が強い安全保障関連法案などを与党だけで採決し、批判を浴びるのを避けたいのが本音。橋下氏にエールを送って維新との連携を探っている。

 

■「宿敵」とは組めない

 

 橋下氏は住民投票後の5月末の記者会見で「次の人たちにバトンタッチして、やってもらっていかないと。個人商店じゃないわけですからね」と述べ、政界から身を引く考えを示していた。しかし、首相との会談から一夜明け、ツイッターで民主批判を発信した。

 

 「維新の党は民主党とは一線を画すべき」「民主党という政党は日本の国にとってよくない」「維新は民主党とは決定的に違う」――。

 

 大阪選出で橋下氏に近い「大阪組」の一人、馬場伸幸国対委員長も、与党の採決に協力する形になった労働者派遣法改正案などを引き合いに、「この進め方は維新らしさを出している。安保法制もそういう対応をすることに大きな変化はない」と述べ、安保関連法案でも安倍政権に協力する可能性に踏み込んだ。

 

 橋下氏の発信について、党内では、代表の松野氏が民主を念頭に野党再編を探る中、「民主党と組むのはダメだという牽制(けんせい)球」(党幹部)との見方がもっぱらだ。橋下氏は民主を支持する公務員労組と数々の改革を巡って対決。「大阪都構想」では民主大阪府連や連合大阪が反対に回り、結果的に反対多数となった。その「宿敵」と組むわけにはいかない。

 

 維新の大阪組にしても、現職や公認候補で選挙区が埋まっている自民との選挙協力は難しいが、かと言って、これまでさんざん批判してきた連合に頭を下げて選挙をするわけにもいかない。当面は、橋下氏の旗のもとで選挙に臨むしかないという事情もある。

 

■松野氏「民主と合流とは言ってない」と説明

 

 松野氏ら野党再編派は、こうした橋下氏の動きを警戒する。

 

 「安倍総理に大阪都構想のお礼をするのは構わないが、国会運営や法案でお返しすることは考えないで下さいね」。松野氏は橋下氏と首相の会談直前、橋下氏にこう念押しした。

 

 松野氏は15日、記者団に「集団的自衛権(の行使容認)の閣議決定をしたところに、憲法学者が唱えているように無理があったのではないか、とおっしゃっていた」と橋下氏の発言を紹介し、安保関連法案で政権と接近しようという党内の動きを牽制。江田憲司前代表も15日、「安保法制は派遣法のやり方を踏襲することはない」と明言した。

 

 ただ、橋下氏はツイッターで「内閣における憲法の有権解釈者は内閣総理大臣。憲法解釈が時代とともに変遷するのは当然のこと」とも述べている。また、橋下氏と首相の会談をどちらが持ちかけたかでも、江田氏が「安倍官邸の強い要請があった。橋下さんが申し入れた会談ではない」と言えば、菅義偉官房長官は15日の記者会見で「橋下氏があいさつに来たいということだった」。党内の疑心暗鬼は膨らみ続けている。

 

 党内の大阪選出議員を中心に影響を持つ橋下氏が浴びせた野党再編への冷や水。松野氏らが念頭に置く民主との野党再編路線に急ブレーキがかかり、安保関連法案をめぐる与党との修正協議論が台頭すれば、党の分裂につながる可能性もある。

 

 松野氏は橋下氏の民主批判を受け、「僕は、民主党と(維新という)二つの政党が合流すると言ったことは一度もない」と記者団に説明せざるをえなかった。

 

 橋下氏の民主批判に端を発した維新の動揺に、民主の枝野幸男幹事長は15日「コメントする立場にない」と述べた。その心を民主幹部はこう解説する。「そのうち『大阪組』と松野氏らは離別してすっきりする。松野氏らが最後まで橋下さんに乗っかると思ったら大間違いだ」(藤原慎一、河口健太郎)

 

●「橋下氏、民主に三行半 ツイッターで「日本の国にとってよくない政党」」

 

産経新聞 615()2228分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150615-00000565-san-pol

 

 「民主党という政党は日本の国にとってよくない」-。安倍晋三首相との会談を受け、維新の党最高顧問の橋下徹大阪市長は15日、自身のツイッターで、民主党を激しく糾弾するメッセージを連発した。松井一郎顧問(大阪府知事)も橋下氏に呼応して民主党批判を展開。維新の「民主離れ」に拍車がかかっている。

 

 「(民主党は)政党の方向性が全く見えない。維新の党は一線を画すべき」

 

 橋下氏はツイッターにこうつぶやき、同じ野党の民主党に三行半(みくだりはん)を突きつけた。松井氏も都内で記者団に「(民主と)組んだところで単なる野合、談合、数合わせだ」と述べ、橋下氏と足並みをそろえた。

 

 5月の住民投票で「大阪都構想」が否決されて以降、維新内では橋下氏に近い大阪選出議員を中心に民主叩(たた)きが強まっている。首相や菅氏が都構想に一定の理解を示したのに対し、民主党が反対姿勢を崩さなかったことへの遺恨も残る。

 

 一方で維新は労働者派遣法改正案の早期採決に応じるなど、与党との接近も図る。今回の会談が実現したのも、都構想のねぎらいを込めた菅(すが)義偉(よしひで)官房長官の誘いだった。橋下氏の上京を機に大阪系は改めて「与党寄り」も辞さない「是々非々」路線を確認した形だ。

 

 ただ、是々非々ゆえの路線対立が深まっていることも事実だ。松井氏は15日に国会内で大阪系議員と昼食をとった際、11日の代議士会で派遣法改正案の採決に応じる党方針を批判した民主党出身の初鹿明博、太田和美両氏を名指しし、「なんやねん」と嫌悪感を示した。一方、江田憲司前代表は15日の講演で「維新は民主党であれ、自民党であれ、連携していかない」と独自路線を強調。安全保障関連法案に関する修正協議を否定し、法案に「反対する」と明言した。(内藤慎二)

 

(新聞記事転載貼りつけ終わり)


(終わり)








野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23