ダニエル・シュルマン
講談社
2015-09-09



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 昨日は永田町の自民党本部で様々な「出来事」が起きていたようです。

 

 自民党本部では、「文化芸術懇話会」と「過去を学び『分厚い保守政治』を目指す若手議員の会」の勉強会が開催されることになっていたそうです。「文化芸術懇話会」は初会合で、ベストセラー作家・放送作家の百田尚樹氏を、「過去を学び『分厚い保守政治』を目指す若手議員の会」は、漫画家の小林よしのり氏を講演者として招待していたとのことです。

 

 「文化芸術懇話会」の初会合は無事に開催されましたが、「過去を学び『分厚い保守政治』を目指す若手議員の会」の会合は、「国会空転中」を理由にして中止となりました。どちらにも自民党所属の国会議員が出席しているのに、一方は開催され、もう一方は中止される、となると「おかしい」と思われるのは当然ですし、偶然だった、意図的ではなかったといってもそれは通らないくらいわからないでは政治なんてできませんから、両方開催、両方中止にするのが、木を見るに敏な政治家の皆さんの集まりである自民党なら当然です。自民党は、いつからこんなにアホ(関西弁的な愛らしい、良い意味も含まれるものではなく)と傲慢な、考えの足りない人間の集団になってしまったのでしょうか。

 

 この「文化芸術懇話会」は、“保守系文化人による「政権応援」を展開”してもらい、“憲法改正の国民投票まで見据え「自民党政権応援団」を増やす狙い”だそうです。そして、初会合では、百田尚樹氏を講師に迎えての講演会があったのですが、百田氏は早速、「沖縄の2つの新聞はつぶさないと」と発言しています。また出席者の中からは、

 

“出席議員からは、広告を出す企業やテレビ番組のスポンサーに働きかけて、メディア規制をすべきだとの声が上がった。

 

 出席者によると、議員からは「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番。経団連に働きかけて欲しい」「悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すればいい」など、政権に批判的な報道を規制すべきだという意見が出た”

 

ということです。

 

 この時代錯誤。インターネット上で展開されるネトウヨの与太話が「自由」(嘲笑)「民主」(呆笑)党の本部の一室で、「保守」言論人と「選良」とが「文化芸術懇話会」(何かの悪い冗談でしょうか)で真剣に展開されているというのはもはや喜劇、コント(スケッチ)です。私はこの文化芸術懇話会を「安倍ユーゲント」「安倍SS」と呼びたいと思います。荒っぽく言えば、今の自民党はナチスと同じです。

 

 自民党(の一部)がそのような考えなら、それをやっていただきましょう。その代り、まず芸術文化懇話会という勉強会に参加している、出席している議員たちの名前と選挙区を全て公表してください。「言論統制」「言論破壊」「言論封殺」を志向する議員たちであるという情報は選挙区内に住む有権者の次の選挙での投票行動に重要な判断材料になります。また、比例区のブロックに住む有権者にとっても、「自民党に入れた場合、当該の政治家が比例で通ってしまうこともあるな」という判断材料になりますから、比例区で自民党に投票するかどうかの重要な判断材料になります。

 

 また、情報はすぐに伝達されますから、どの企業がどのテレビ局の番組のスポンサーや新聞広告の出稿を取り止めたかはすぐに分かりますし、その前の番組や新聞記事の内容も分かりますから、是非自民党の要請が正しい思えば、経団連を通じての圧力に屈してください。消費者としてそこを判断して購買行動などに反映させることが出来ます。経団連所属の大企業は板挟みになってしまいますから、そこの点は同情しますが。まぁ経団連としては、企業経営の基本であるリスク分散をきちんとしておくべきでしょう。自民党にだけベットするというのは下策ですね。

 

 自民党の議員たちの劣化は全く止まりません。彼らは安倍晋三首相・自民党総裁にだけ目を向けているので、このような視野狭窄に陥った、とんでもないことを言い出すのです。有権者はこうした人たちに「マスコミを懲らしめる」などという思い上がったことを言ってもらうために議員にした訳ではありません。こうした政治家たちは忘れているのです、「自分たちが有権者に懲らしめられてしまう存在である」ということを。そのことを思い出させてあげないと、お互いの不幸になります。来年には参議院選挙が行われます。この時に是非その冷厳な事実を自民党の皆さんに味わっていただきたいものです。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「百田尚樹氏「沖縄の2つの新聞はつぶさないと」発言」

 

日刊スポーツ 20156252243

http://www.nikkansports.com/general/news/1497679.html

 

 安倍晋三首相に近い自民党の若手議員約40人が25日、憲法改正を推進する勉強会「文化芸術懇話会」の初会合を党本部で開いた。

 

 安全保障関連法案に対する国民の理解が広がらない現状を踏まえ、報道機関を批判する意見が噴出した。講師として招いた作家の百田尚樹氏に助言を求める場面も目立った。

 

 出席者によると、百田氏は集団的自衛権の行使容認に賛成の立場を表明した上で、政府の対応について「国民に対するアピールが下手だ。気持ちにいかに訴えるかが大事だ」と指摘した。

 

 出席議員からは、安保法案を批判する報道に関し「マスコミをこらしめるには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働き掛けてほしい」との声が上がった。

 

 沖縄県の地元紙が政府に批判的だとの意見が出たのに対し、百田氏は「沖縄の2つの新聞はつぶさないといけない。あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」と主張した。

 

 懇話会は木原稔青年局長が代表で、首相側近の加藤勝信官房副長官や萩生田光一・党総裁特別補佐も参加した。

 

 出席者の一連の発言について、自民党中堅は「自分たちの言動が国民からどのような目で見られるか理解していない。安保法案の審議にマイナスだ」と指摘。公明党幹部は「気に入らない報道を圧力でつぶそうとするのは情けない。言葉を尽くして理解を求めるのが基本だ」と苦言を呈した。(共同)

 

●「「経団連に働きかけ、マスコミ懲らしめを」 自民勉強会」

 

朝日新聞電子版 20156252256

http://www.asahi.com/articles/ASH6T5W6FH6TUTFK00X.html

 

 安倍政権と考え方が近い文化人を通し、発信力の強化を目指そうと、安倍晋三首相に近い若手議員が立ち上げた勉強会「文化芸術懇話会」(代表=木原稔・党青年局長)の初会合が25日、自民党本部であった。出席議員からは、広告を出す企業やテレビ番組のスポンサーに働きかけて、メディア規制をすべきだとの声が上がった。

 

 出席者によると、議員からは「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番。経団連に働きかけて欲しい」「悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すればいい」など、政権に批判的な報道を規制すべきだという意見が出た。

 

 初会合には37人が参加した。官邸からは加藤勝信官房副長官が出席し、講師役に首相と親しい作家の百田尚樹氏が招かれた。同会は作家の大江健三郎氏が呼びかけ人に名を連ねる「九条の会」などリベラル派に対抗するのが狙い。憲法改正の国民投票まで活動を続けたい考えだという。

 

●「保守系文化人「発信力を強化」 自民若手が勉強会発足へ」

 

朝日新聞電子版 20155290854

http://www.asahi.com/articles/ASH5X566JH5XUTFK00T.html

 

 安倍晋三首相に近い中堅・若手自民党議員が6月に勉強会を立ち上げ、保守系文化人による「政権応援」を展開する。作家の大江健三郎氏が呼びかけ人に名を連ねる「九条の会」などリベラル派に対抗し、政権寄りの文化人や芸術家を講師に招いて、発信力を強化するのが狙いだ。

 

 勉強会「文化芸術懇話会」(仮称)の呼びかけ人は、自民党青年局長の木原稔衆院議員。東京都内で27日夜に開いた準備会合には、首相に近い加藤勝信官房副長官や萩生田光一・自民党総裁特別補佐を含む20人ほどが参加した。

 

 6月以降、党本部で定期的に会合を開く予定で、参加予定者の一人は「有名人に『首相のやっていることは正しい』と発信してもらえば、一気に広まる」と期待している。憲法改正の国民投票まで見据え「自民党政権応援団」を増やす狙いだという。(二階堂友紀)

 

●「小林よしのり氏「ああ、負けたんだなと」 勉強会中止」

 

朝日新聞 20156260506

http://www.asahi.com/articles/ASH6T4RNHH6TUTFK00F.html

 

 25日の「過去を学び『分厚い保守政治』を目指す若手議員の会」で講演予定だった小林よしのり氏が、朝日新聞の取材に語った内容は以下の通り。

 

 勉強会の中止については「国会が空転しているから」という説明があっただけだ。その理由ならば、なぜ安倍首相シンパの会合は(同じ日に)できて、リベラル派の会合は開けないのか。「ああ、負けたんだな」と思う。小選挙区制によって、執行部の抵抗勢力になるのが怖くなったのでしょう。自民は全体主義になっている。

 

 安全保障法制をみても、安保環境の変化というのは、中国が怖いから対米追随を強めるんだ、と。つまり、安倍政権は、中国へのおびえから、立憲主義が崩壊するほど切迫した事態があるのだと言っているわけで、そんなのは強迫神経症だ。

 

 憲法を変えずにやって、さらに憲法を改正しようとしたら、国民は「まだ足らんのか」となり、国民投票で負けてしまう。改憲派のわしには、それじゃあ困る。安倍政権は取り返しのつかないことをやっているのだ。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)





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オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23