ダニエル・シュルマン
講談社
2015-09-09



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 2016年の米大統領選挙では今のところ、民主党のヒラリー・クリントン元国務長官が最有力候補です。民主党の指名争いでも断トツのトップで、共和党の候補者との一対一の世論調査(●●対ヒラリー・クリントンになったらあなたはどちらに投票しますか)でも、共和党候補者たちを上回る結果が出ています。

 

 しかし、ヒラリー大統領への道のりは決して安易なものではありません。民主党では今のところ、左派のバーニー・サンダース上院議員が対抗馬として2番手につけています。サンダースが2番手につけているという事実、アメリカの有権者の意識がこれまでの数回の選挙とは違ってきていると言うことが出来ます。

 

 予備選挙での戦い方で、「相手に対して沈黙することが最良の戦略」という場合があり、今回の場合、ヒラリー陣営がその点で間違いを犯したようです。まさに「いつどこで戦うかを知っている方が勝つ」そのものですが、これを知ることが至難の業です。

 

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クリントン陣営がサンダースへの攻撃を激化させている(Clinton camp sharpens attack on Sanders

 

ニオール・スタネイジ筆

2015年6月26日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/246220-clinton-camp-sharpens-attack-on-sanders

 

 ヒラリー・クリントンの支持者たちはリベラル派のライバルであるバーニー・サンダースに対してこれまでになく、より激しく攻撃している。

 

 彼らの採用している戦術に対して、民主党内部にはあまりにひどい攻撃だと呆れている人たちがいる。ヴァーモント州選出の無所属の連邦上院議員サンダースの支持者たちは、これはサンダースが支持を広げていることの証拠であると主張している。

 

 サンダースの上級顧問タッド・デヴァインは次のように語った。「敵と敵を代表する人々が自分たちを批判するようになったら、何かが動き出しているのだと認識するでしょう。何かうまくいっていなくてこちらに害がないと判断する人間を攻撃しないのは政治における基本的な法則ですよ」。

 

 クレイリー・マカスキル連邦上院議員(ミズーリ州選出、民主党)はヒラリーを支持している・マカスキル議員は木曜日の朝にサンダースに対する攻撃を開始した。議員はMSNBCの番組「モーニング・ジョー」に出演し、「サンダース議員は過激なメッセージを発し、極めて非現実的なことを主張している」と批判した。

 

 マカスキル議員はメディアに対しても、「ヒラリー・クリントンやその他の候補者たちに対するのと同じくらいの熱心さでサンダース議員に対して事細かな調査を行っていない」と不満を漏らした。

 

 今月初め、クリントン支持であるルイス・ガイテレス連邦下院議員(イリノイ州選出、民主党)は移民問題についてサンダースを批判した。

 

 ガイテレス議員はラリー・キングの番組「ポリティック・キング」に出演し、キングに対して「サンダースが移民を好きなのかどうか分からない。何故なら彼は移民について何も語らないようであるからだ」と述べた。

 

 最新の世論調査によると、サンダースへの支持は拡大している。特に予備選挙において早い段階で党員習慣と選挙が行われるアイオワ州とニューハンプシャー州で支持が高まっている。

 

 サンダースにとっての最高の結果は木曜日の夜にもたらされた。CNNWMURの共同世論調査の結果によると、ニューハンプシャー州でクリントンとの差を8%に縮めた。

 

 しかし、この結果はたまたま起きた偶然の産物ではない。

 

  差フォーク大学が実施した世論調査によると、ニューハンプシャー州でサンダースはヒラリーに10ポイント差を付けられている。具体的には、サンダースの支持率31%、ヒラリーは41%である。モーニング・コンサルト社の世論調査によると、ニューハンプシャー州におけるヒラリーとサンダースの支持率の差は12ポイントである。ブルームバーグ社がアイオワ州で実施した世論調査の結果は、サンダースの支持率24%、ヒラリーの支持率50%だった。

 

「ヒラリー・クリントンが民主党の大統領候補最有力である」という事実を覆す数字は出ていない。

 

 しかし、これらの世論調査が示しているのはサンダースの支持率の急激な伸びである。1カ月前にサンダースが正式に選挙運動を開始してから、ニューハンプシャー州での彼の支持率は2倍になった。サンダースの選挙運動には多くの人々が集まるようになっている。先週の土曜日、デンヴァー大学で行われたサンダースの演説にはおよそ5000名の人々が集まった。

 

 ヒラリーを支持している人々の中には、サンダースを攻撃することで、かえってサンダースのアピールを人々に浸透させてしまうのではないかと恐れを抱いる人たちも出てきている。

 

 クリントン政権下のホワイトハウスで働き、2000年の大統領選挙では当時の副大統領アル・ゴア陣営で働いたクリス・リーへインは「世論調査で支持率を伸ばしている候補者たちは、弱点探しのための精査の対象となる」と述べた。しかし、彼は同時に、「クリントン支持者には新たな争いを作ることに関しては慎重になって欲しい。争いによってサンダースは益々勢いづく」とも述べた。

 

 別の民主党所属のストラティジストは匿名を条件にして、クリントン陣営からの反撃によってサンダース陣営が活気づくことを恐れていると述べた。

 

 このストラティジストは次のように語った。「クレイリー・マカスキルがサンダースを名指しで批判したのは失敗だ。全くもって戦略的は動きではない。サンダースに対する最良の反応は沈黙だ。彼の支持者たちをこれ以上活気づけ、声高にする理由を与えないようにしなくては。反撃するというのはクリントン陣営の選挙戦にとってマイナスだ」。

 

 クリントン陣営の選挙運動がまだ正式な形で整っていない段階で、マカスキルがサンダースを厳しく批判したことは、民主党内部の疑念の的になっている。

 

 前述の匿名のストラティジストは、「マカスキルは、クリントン陣営に対する彼女の忠誠心を証明するために、自分の考えに基づいて、自発的に激しい批判をすべきであった」と述べた。マカスキルは、2008年の厳しかった米大統領選挙において、ヒラリーではなく、当時上院議員であったバラク・オバマを支持した。

 

 デヴァインは、「通常、このような人々は一定の方向に誘導されなければ、つまり道筋を他人から示してもらわねば、こうしたことを続けることはない野田」と述べた。デヴァインはそのような戦術とサンダースの選挙運動の違いを際立たせようとしている。彼は次のように述べた。「私たちはヒラリー陣営とは別のゲームをやろうとしている。私たちは有権者たちに直接訴える。相手を誹謗中傷するような政治を拒絶する。諸問題と現実に向き合う」。

 

 ヒラリー・クリントンの広報担当者はこの件についてのコメントを拒否した。

 

 今回2016年の大統領選挙におけるヒラリーの選挙運動は、2008年の時の失敗を避けようと躍起になっているというのが支持者、批判者双方の一致した見方である。この時は、オバマが最終的に民主党の米大統領選挙候補指名をもぎ取った。

 

 2008年の米大統領選挙について考えてみよう。クリントン支持者の中には、出来るだけ早くオバマに対して厳しい批判を行うようにすべきだったのだ、と主張している人々がいる。しかし、2007年の段階で既に、オバマは現在のサンダースよりも、手ごわい競争相手の位置に既についていた。今回の選挙において、クリントン陣営は、意図とは全く逆の結果を生み出すことになる激しい攻撃をサンダースに対して可能であろうか?

 

 政治におけるコミュニケイションが専門のボストン大学教授トービー・バーコヴィッツは次のように語っている。「クリントン陣営は、サンダースは脅威ではないと明言すべきだったと思うが、彼は既に地歩を固めつつある。バーニー・サンダースを標的にして攻撃を行うことは最良の戦略ではないと思う。それは、そんなことをすれば彼に酸素ボンベを与えるようなものだからだ。一方で、もし彼を無視したら、彼はより大きな騒音を出して、クリントン陣営を悩ませるだろう」。

 

 クリントン陣営のサンダースに対する反攻を難しくしているもう1つの大きな変化は、民主党の予備選挙に参加する有権者たちが政治的に左に移動しているということだ。

数回前の選挙においては、 2000年のゴア、2004年のジョン・ケリー上院議員(当時、マサチューセッツ州選出、民主党)のようなエリート層を代表する候補者は、主流派から外れている左派系の候補者を激しく批判して、打撃を与えることが出来た。

 

 サンダースが国民皆保険や教育予算の大幅な増額のためにウォール街の大企業に新たに税金をかけることを支持していることを批判することは、逆効果になる可能性が高い。また、クリントン陣営が本選挙において進歩的な有権者が自分に投票してくれるように努力しているがそれを台無しにしてしまうだろう。

 

デヴァインは最近のクリントン陣営からの攻撃は「全く影響をあたえていない」と述べ、続けて「バーニー・サンダースは彼の政治的な志向を隠したりしない。国民皆保険のような彼の考えについて、議論をすることを私たちは望んでいる」。

 

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アル・ゴア:「ヒラリーが勝つというには早すぎる」(Al Gore: 'Too early' to pick Hillary

 

マーク・ヘンシュ筆

2015年6月26日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/246299-al-gore-too-early-to-pick-hillary

 

アル・ゴア元副大統領は金曜日、ヒラリー・クリントンが大統領選挙に勝利して大統領としてホワイトハウス入りすると考えるかどうかについて発言を否定した。

 

 ヒラリーがファーストレイディーだった当時、身近な場所で副大統領を務めていたゴアは、フランス滞在中に、誰が次の大統領になるかと質問された。

 

 『ニューヨーク・ポスト』紙によると、「私はその質問に答えるのを拒絶できないだろうが、それでもなんとかその質問に答えないようにしたいね」とゴアは語ったということである。

 

 彼はフランスのカンヌで開催されているカンヌ・ライオンズ・フェスティヴァル・オブ・クリエイティヴィティに出席し、WPPの会長マーティン・ソレル卿に「誰が勝つかなんて言うのはまだ早すぎると思う」と述べた。

 

 ソレル卿は「私はヒラリーが勝つと思う。地上で最も力を持つ国の大統領に女性が就任するなんて素晴らしいことじゃないか」と応じた。

 

 ニューヨーク・ポスト紙によると、ゴアは笑顔を見せたが、それ以上は何も発言しなかったということだ。

 

 彼はそれ以降もカンヌに滞在したが、2016年の米大統領選挙については沈黙を守った。それでもゴアは、議会を支配していると彼が主張する特殊利益を持つ富裕層を攻撃することは忘れなかった。

 

 ゴアは「アメリカの民主政治体制で最も機能不全を起こしているのは連邦議会、立法機関だ。なぜなら連邦議員たちは金持ちや特殊利益を持つ人々からお金を貰おうと汲々としているからだ」と述べた。

 

 ゴアは、ロビイストとロビー活動を通じて流れ込む政治資金が、気候変動に対する行動を止めてしまうことで、結果的にアメリカの安全を脅かしていると主張している。

 

 彼は「アメリカの民主政体は乗っ取られている」と述べた。

 

 ゴアは「特殊利益を持つ人々から流れ込む巨額の政治資金によって、公共の利益に資する意義深い改革がことごとく頓挫させられている。こんなことを言わねばならないのは本当に残念だ」と語った。

 

彼は続けて「特殊利益を持つ人々は、アメリカが思慮深く世界をリードしていくことに対して永続的な影響力を持っている」とも述べた。

 

 ゴアは長年にわたり、気候変動に対して積極的な行動を取るように主張してきた。気候変動に対する彼の活動が、2006年に発表されたドキュメンタリー映画「不都合な真実」の主題となった。

 

(終わり)





野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23