ダニエル・シュルマン
講談社
2015-09-09


アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




 

 古村治彦です。

 

 昨日、衆議院で安保法制が可決されました。安保法制についてアメリカ側でどのように受け止められているかについての記事をご紹介します。一言で言えば、「中国をけん制し、アメリカの防衛産業を潤すものだ」ということです。軍事協力だなんだと言いますが、軍事を通じた貢納であることが分かります。

 

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日本の軍事面での役割が拡大することはペンタゴンとアメリカの防衛産業にとって良いニュースとなった(Japan’s Expanding Military Role Could Be Good News for the Pentagon and Its Contractors

 

デイヴィッド・フランシス筆

2015年7月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/07/16/japans-expanding-military-role-could-be-good-news-for-the-pentagon-and-its-contractors/?utm_content=buffer24684&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

 日本は第二次世界大戦後に時刻から他国を攻撃する戦争をしないで来た。しかし、木曜日に海外での戦闘に参加する力を軍隊に与える法案を国会で可決させたことで、これまでとは全く道筋へと進む第一歩を踏み出した。これはアメリカ国防総省が長年にわたり望んできたことであり、アメリカの防衛産業にとっても良いニュースとなる。

 

 2015年1月、保守派の日本首相である安倍晋三政権は、約5兆円(約420億ドル)の防衛予算を通過させた。日本経済は10年にわたり衰退を続けていたが、防衛予算は3年連続で増加することになった。防衛予算の総額は日本のGDPの中では小さな割合しか占めていない。世界銀行の統計によると、防衛予算はGDPの約1パーセントを占めている。しかし、攻撃的な軍事行動は日本国憲法で禁止されているために、中程度の増加でも議論が起きる。水曜日、国会の外では抗議の意思を表すために人々が集まった。この日、議論を呼んだ11の安全保障関連法案が委員会を通過したが、これらによって日本の軍隊は防衛的な行動以上のことに参加する力を与えられることになる。

 

 今年の防衛予算は、日本の軍事能力を改善させる長期計画の一部である。安倍首相は2014年から2019年にかけて24兆7000億円(約2400億ドル)をかけて、新しい戦闘機、海上艦艇、そしてドローンを整備すると約束している。その中には、アメリカ製のF-22、F―35、グローバル・ホーク(ドローン)が含まれている。安倍首相は、アメリカの国家安全保障会議をモデルにして、諮問委員会を設立した。この委員会の目的は、国家安全保障に関する諸問題について彼に助言を行うことである。

 

アメリカと日本は第二次世界大戦直後から同盟関係になった。今年4月、安倍首相はワシントンを訪問し、両国政府の幹部たちは日米関係の強化を訴えた。

 

 安倍首相は米連邦上下両院の合同の場で議員たちに対して次のように演説した。「歴史における奇跡と呼ぶ以外に私たちはこれを何と呼ぶべきでしょうか?激しく闘った両国が魂でつながった友人同士となったのです」。

 

 安倍首相の訪米中、アメリカと日本は新しい合意を発表した。これは合同防衛ガイドラインと呼ばれるもので、日米両国間の更なる軍事協力を促進するものだ。この合意の一部として、日本は、時刻が攻撃されていない状況で、アメリカの領土に向かうミサイルを撃ち落とすことに同意した。日米両国の防衛関者はより緊密に協力している。

 

 この合意が発表された際、ジョン・ケリー米国務長官とアッシュ・カーター米国防長官、日本側の岸田文雄外務大臣と中谷元防衛大臣は共同声明を発表した。その中で、新ガイドラインは「核兵器と通常兵器を含む、アメリカの持つ軍事能力すべてを使って日本防衛を行うアメリカの責務と決意」を示していると述べた。

 

 日米両政府は現在、アジア地域に対してより多くの軍事的資源を再配分しようとしている。日米両国が軍事協力を増強させようとしている理由、それは中国の存在である。日本政府は現在、東シナ海の尖閣諸島をめぐり、中国と激しく対立している。中国側はこれらの島々を釣魚島と呼んでいる。中国は更に、南シナ海で領有権を争っている海上で戦闘機を利発着させることが出来る滑走路を建設している。日中両国は現在刺々しさを増している激しい非難の応酬を行っている。中国政府は今週の法案可決について激しく反発している。

 

 中国外務省の華春栄報道官は木曜日の衆議院での可決の後に発表した声明の中で次のように書いている。「私たちは日本側に対して歴史から真剣に学び、平和的な発展の道を進み、アジアの近隣諸国の安全保障に関する懸念を理解し、中国の主権と国家安全保障を危うくしないようにし、アジア地域の平和と安定損なわないようにすることを求める」。

 

 現在のところ、日本が中国の主権を今すぐ侵害するなどと言う考えはお笑い草だ。複数の報告書によると、中国の2015年の防衛予算は前年に比べ10パーセント増加し、1450億ドルとなり、アメリカに次いで世界第2位となっている。

 

 しかし、2400億ドルをかけて日本政府は多くの最新の装置を買うことが出来る。それはアメリカの防衛産業にとって良い事である。テキサスに本社を置くロッキード・マーティン社製のF-35とヴァージニア北部に本社を置くBAEシステムズ社製の海兵隊用の水陸両用車両を日本政府は購入する予定だ。

 

 日本政府はまた、アメリカに本社を置くノースロップ・グラマン社製のグローバル・ホークの購入計画を持っている。日本政府は更にアメリカ政府と共同して、2隻のイージスレイダーを備えた駆逐艦とミサイル防衛システムの開発を行っている。これらはロッキード社製だ。

 

 ワシントンにある駐米日本大使館に木曜日の国会での採決についてコメントを求めたが返答はなかった。

 

安倍首相周辺の人間たちは変化を推し進めようとして、中国の軍事力の増強とアメリカ軍が弱体化しているのではないかという認識を前面に押し出している。昨年、安倍首相の安全保障担当補佐官の礒崎陽輔は、「アメリカは世界の警察官としての役割を既に果し得なくなっている」と発言した。

 

 礒崎は続けて次のように語った。「日本が何もせず、アメリカから守ってもらえるのを許されていた時代は既に終わった。私たちはアメリカと一緒になって自分たちの果たすべき役割を果たすことが極めて重要になってきている」。

 

(終わり)