ダニエル・シュルマン
講談社
2015-11-25



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 今回は、ヒラリーが国務長官当時にオサマ・ビンラディンが潜伏していた邸宅をアメリカ軍の特殊部隊が急襲して、ビンラディンを殺害した事件に関する記事をご紹介します。この記事では「ある元高官」となっていますが、私はこの人物は、ヒラリー派のジェイク・サリヴァンだと思います。この人物はヒラリー派であり、当時は国務省政策企画本部長の要職にありました。

 

 この匿名のオバマ政権元高官は、「アメリカの仇敵」オサマ・ビンラディン殺害に関して、ヒラリーは賛成したが、バイデンは反対したという論を『ザ・ヒル』誌の取材に対して展開しています。これは、バイデンはアメリカの仇敵にも「宥和的」であるという印象付けの内容です。

 

今週木曜日にヒラリーは連邦下院のベンガジ特別委員会で公開証言を行うことになっています。ここが一つの山場になります。その前にこうした記事が出たというのは、バイデンに対する牽制でもありますし、ヒラリーの行うであろう積極的な攻撃的な外交政策が有効であるという印象付けに意図があると思われます。

 

 アメリカの中で、既に共和党のネオコン派と民主党の人道的介入主義派は手を結んで、ヒラリーの勝利のために動いているという印象です。民主、共和両党の現実主義派は敗北しつつあります。兄ジョージ・W・ブッシュよりも父ジョージ・HW・ブッシュに近い政策を行うであろうジェブ・ブッシュは共和党ネオコン派からしてみれば、ヒラリーよりも「大統領にふさわしくない」候補者ということになります。

 

 日米ともに政治の世界は劣化が進み、国際的には孤立しています。中国とイギリスの接近やカナダやオーストラリアの選挙結果を見ると、世界の流れや国際協調の動きに反して、孤立を深めているのは日米だということが分かります。

 

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元高官:バイデンは急襲に反対した(Former official: Biden was against raid

 

エイミー・パーンズ筆

2015年10月20日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/administration/257468-former-official-biden-was-against-raid

 

 オサマ・ビンラディンの殺害にまで発展した急襲計画の議論に参加したオバマ政権の元高官は木曜日、ジョー・バイデン副大統領は急襲計画の実行を支持しなかったと述べた。

 

 この高官はパキスタンでのこの計画の実行を許可するかどうかの議論に参加した。この人物は、当時のヒラリー・クリントン国務長官とレオン・パネッタCIA長官は急襲計画を支持したが、バイデンは支持しなかったと述べた。

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急襲の時の作戦室(左端の青いシャツがバイデン、口を押えているヒラリー)
 

 元高官は『ザ・ヒル』誌の取材に対して次のように語った。「私が言えることは、当時のレオン・パネッタCIA長官とヒラリー・クリントン国務長官は急襲を支持し、シチュエイション・ルームで実行を求めるプレゼンテーションを行ったということです。クリントン長官は彼女の考えを明らかにし、レオンもまた彼自身の立場を明らかにしました。その際、副大統領が彼らと同じ考えを持っていたのか、思い出せないのです」。

 

 この元高官は続けて、「4月28日に大統領が最終決定のための会議を招集したのですが、アドヴァイザーたちは賛成、反対2つのグループに分かれていました」と述べた。

 

 2016年米大統領選挙でヒラリーに対抗しての出馬を検討中であるバイデンは、火曜日、個の元高官の発言とは異なる内容の発言を行った。

 

 バイデンは元副大統領ウォルター・モンデールを賞賛する会合に出席した。その会合の中でバイデンは、「個人的には急襲計画を支持していましたが、2人きりで話ができる機会があるまで、助言をすることを差し控えました」と述べた。

 

 民主党の大統領選挙最有力候補ヒラリー・クリントンが「私は急襲計画を完全に支持していた」と発言したが、バイデンはそれを否定した。

 

 バイデンは「私は大統領に、計画は実行すべきだという意見を言いましたが、あくまでも自分の本能に従って決定してくださいとも言いました」と述べた。

 

バイデンは、ジョージ・ワシントン大学で開かれたパネルディスカッションにモンデールとともに出席した。この席上、バイデンは「この難しい問題について、私は大統領執務室で2人きりになれるまで、大統領に対して私の最終的な判断を伝えることはありませんでした」と述べた。

 

 元高官は、2人きりになった時、バイデンがオバマに何を行ったのかを知る人物はいないと語った。しかし、バイデン副大統領が、ビンラディンに対する特殊部隊による急襲計画についてどのような立場を取っていたかは明白だとも述べた。

 

 パネッタはオバマ政権でCIA長官を務めた日々を回想録にまとめた。この中で、パネッタは、バイデンが急襲計画に反対し、ヒラリーは賛成したと書いた。

 

 パネッタは回想録『価値ある戦い』の中で次のように書いている。「バイデンは、ビンラディンがターゲットの屋敷内にいるという十分な証拠もまだ集まっていないし、更なる情報収集をするために時間を使うべきだと強く主張した」。

 

 パネッタは、同書の中で、「クリントンはさらに時間をかければ、更によい情報が集められるだろうが、今回は千載一遇のチャンスであり、それを掴むべきだと述べた」と書いている。

 

 火曜日にバイデンが行った説明は、2012年に彼自身が行った説明とも違っている。

2012年当時、バイデンは民主党所属の連邦下院議員たちに対して、彼は、オバマ政権下の最も重要な計画の実行に反対したと述べた。

 

 『ニューヨーク・タイムズ』紙の報道によると、バイデンは議員たちに対して、「大統領、私の提案は、実行しないというものです」と述べたということだ。

 

(終わり)





野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23