ダニエル・シュルマン
講談社
2015-12-09



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 以下の記事にあるように、今年の秋の叙勲で、ジョージ・W・ブッシュ大統領時代の副大統領だったディック・チェイニー、国防長官だったドナルド・ラムズフェルドに「旭日大綬章」がそれぞれ与えられました。これは昔で言えば、勲一等という大変な名誉ある勲章だそうです。

 

 外務省は、このネオコン派の頭目2人が日米関係の強化に貢献したという理由で叙勲の推薦を行ったそうです。彼らがやった日米関係の強化とは、日本の自衛隊の下請け化と日本のアメリカ属国化の強化でありました。そのことを賞賛して勲章を与えるというのは、何とも間の抜けた、自虐的な行為であると思います。

 

 日本人以外の人間からすると、神秘の国のエンペラーから貰う勲章、ということで喜びもひとしおでしょうが、税金を支払っている国民からすれば、何とも馬鹿げた話です。彼らの何が「勲功が第一等」なのでしょう。勲章などというのはそれにふさわしい人に、ふさわしいレベルのものが与えられないということの好例でしょう。

 

 日本の外務省が恥をかいてしまったのは、同じ時期に、叙勲を受けたドナルド・ラムズフェルドがジョージ・H・W・ブッシュ(父)元大統領に批判されてしまったことです。父ブッシュとラムズフェルドは政敵同士であったため、仲は良くなかったようです。それでも、自分の息子ジョージ・Wの国防長官を務めた訳ですから、「お世話になった」ということはあるでしょうが、それでも批判されるというのはよほどのことです。

 

 父ブッシュとアホ息子・ブッシュは共にアメリカ大統領を務めましたが、その外交政策は大きく違いました。父は現実主義的で、バカ息子の方はネオコンによる理想主義的な外交政策でした。父の時代にも多くのネオコンが政権に入っていましたが、父ブッシュとジェイムズ・ベイカー国務長官(当時)は彼らを抑え切りました。第一次湾岸戦争の時、父ブッシュ政権内のネオコンたちは、イラク軍をクウェートから追い払った後、イラク国内に進撃、サダム・フセインを倒すことを強硬に主張しましたが、父ブッシュはそれを許可しませんでした。イラクに侵攻し、フセインを倒すことは混乱と無秩序を生み出すだけだということを知っていたからです。

 

 そうした父から見れば、自分のアホ息子が大統領になったのは良かったが、周りのネオコンたちにいいようにやられて、イラクやアフガニスタンに侵攻して、手痛い失敗をしたことは残念でならなかったことでしょう。それが掟破りの批判につながったのだと思います。

 

 そして、現在、ややましな次男ジェブが大統領選挙に出馬しています。父ブッシュとしては、ジェブが勝てるとは思っていないでしょうが、彼に、「バカな兄貴の真似なんかするんじゃないぞ」ということを教えているのだと思います。ジェブの外交政策ティームにはネオコンも入っていますが、リアリストたちも多く入っています。そうしたこともあって、今回、父ブッシュは声を上げたのだと思います。

 

 結局、バカを見たのは外務省であり、日本国民です。そして、日本が世界の大勢に反した、孤立(アメリカ[の一部]とイスラエルしか友人がいない)状態になってしまっているということがまた明らかになりました。これからもこの「世界からの孤立化」はもっと進んでいくものと思われます。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●米国の“戦争屋”2人に旭日大綬章…安倍ポチ政権の恥知らず

 

日刊ゲンダイ 2015年11月5日

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/168651/1

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/168651/2

 

 今年秋の叙勲受章者が3日に発表されたが、かつての勲一等、「旭日大綬章」の名簿に驚いた。受章した19人のうち日本人は7人。半数以上の12人が外国人だった。

 

 外国人の受章者数は過去最多。一番多いのは米国で5人が受章する。その面々にはさらに驚く。大義なきイラク戦争を主導したラムズフェルド元国防長官とアーミテージ元国務副長官にまで、日本は勲章を贈るのだ。

 

 2人への叙勲を推薦したのは外務省儀典官室。授章を決めた内閣府は、「戦後70年の節目ということで、戦後日本の平和と発展の重要な基盤を形成した日米関係の増進に大きな功績のあった方々を特に推薦した、と外務省から説明された」(賞勲局の担当者)と言うのだが、ちっともピンとこない。2人とも「日本の平和と発展の基盤を形成」するどころか、ぶっ壊してきたではないか。

 

 ラムズフェルドはイラク開戦直後から自衛隊に再三「イラクの治安維持」への参加を打診。日本政府に集団的自衛権の行使をたき付けた人物だし、日本を飼い慣らす「ジャパンハンドラー」として知られるアーミテージは、もっと露骨だ。

 

9.11テロ以降、「ショウ・ザ・フラッグ」「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」と恫喝し、日本政府に軍国化を迫ってきただけではない。3年前に公表した「第3次アーミテージ・リポート」では、日本の原発再稼働やTPP参加、特定秘密保護法の制定、武器輸出三原則の撤廃を要求。安倍政権は言われるがまま、実現してきた。

 

「安倍政権が強引に成立させた安保法制も、リポートの中身を実現させたものです。アーミテージは『集団的自衛の禁止が日米間の障害』などと断定的に記しています。今や自衛隊は米軍の下請けとなり、安倍政権も元請けのオバマ政権への従属を隠そうとしない。叙勲制度を利用してまで、米国にゴマをするとは、独立国としての誇りを完全に失っています」(政治評論家・森田実氏)

 

 かつて「集団レイプする人は、まだ元気があるからいい。正常に近い」とホザいた太田誠一元農相まで旭日大綬章を受章するご時世だ。いくら勲章の価値が落ちているとはいえ、戦争屋2人にくれてやる必要はない。

 

●「Former President George H.W. Bush raps Cheney, Rumsfeld in biography: Fox News

 

Reuters

2014/11/15

 

WASHINGTON (Reuters) - Former President George H.W. Bush takes some unexpected swipes at Dick Cheney and Donald Rumsfeld, key members of his son's administration, over their reaction to the Sept. 11 attacks, in a new biography of the 41st president, Fox News reported on Wednesday.

 

In "Destiny and Power: The American Odyssey Of George Herbert Walker Bush," author Jon Meacham quotes Bush as saying that Cheney and Rumsfeld were too hawkish and that their harsh stance damaged the reputation of the United States, the cable news network said.

 

Speaking of Cheney, who was vice president under President George W. Bush, the senior Bush said: "I don't know, he just became very hard-line and very different from the Dick Cheney I knew and worked with," according to the report.

 

Cheney served as defense secretary during George H.W. Bush's 1989-1993 presidency.

 

"The reaction (to Sept. 11), what to do about the Middle East. Just iron-ass. His seeming knuckling under to the real hard-charging guys who want to fight about everything, use force to get our way in the Middle East," Bush told Meacham in the book to be published next Tuesday.

 

Bush believes Cheney acted too independently of his son by creating a national security team in his own office, and may have been influenced to become more conservative by his wife and daughter, Lynne and Liz Cheney, the report cites the biography as saying.

 

View galleryFormer U.S. President George H.W. Bush looks attends …

Former U.S. President George H.W. Bush looks into the audience during the Medal of Freedom ceremony  …

On Rumsfeld, secretary of defense for most of the two terms served by his son, Bush is even more critical. He is quoted as saying: "I don't like what he did, and I think it hurt the President," referring to his son.

 

"I've never been that close to him anyway. There's a lack of humility, a lack of seeing what the other guy thinks. He's more kick ass and take names, take numbers. I think he paid a price for that. Rumsfeld was an arrogant fellow," he was quoted as saying in the biography.

 

Fox News quoted Cheney as denying his family had influenced his views, saying: "It's his view, perhaps, of what happened, but my family was not conspiring to somehow turn me into a tougher, more hardnosed individual. I got there all by myself."

 

Bush's spokesman could not immediately be reached for comment.

 

Rumsfeld declined to comment on the book, Fox News said.

 

(Reporting by Eric Walsh; Editing by Peter Cooney)

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)





野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23