アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 古村治彦です。

 今回から中国国家主席・中国共産党総書記・中国共産党中央軍事委員会主席である習近平に近い人々の顔ぶれを取り上げた論文をご紹介します。


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習近平派の人々を明らかにする(
Members of the Xi Jinping Clique Revealed

 

Publication: China Brief Volume: 14 Issue: 3

 

February 7, 2014 03:43 PM Age: 61 days

ウィリー・ラム(Willy Lam)筆

 

http://www.jamestown.org/programs/chinabrief/single/?tx_ttnews%5Btt_news%5D=41933&tx_ttnews%5BbackPid%5D=25&cHash=c97424fda6de2f64e09ee0e2456c6bb3#.U0VpZH-KBjo

 

 分水嶺となった第18期中国共産党大会から14カ月が過ぎた。習近平(Xi Jinping、1953年~、しゅうきんぺい)国家主席は実力者への道を順調に進んでいる。習近平は、前任者の江沢民元国家主席と胡錦濤前国家主席よりも自身の持つ権力の範囲を拡げ、深化させている。2014年1月、習近平は「国家安全保障委員会(National Security Commission)」の主席に就任した。この国家安全保障委員会は、国家警察、情報機関、司法機関を統制する機能を持つ。それから1カ月前の2013年12月、習近平はもう一つの上位統合機関である「中央全面深化改革領導小組(Leading Group on the Comprehensive Deepening of ReformLGCDR)」の主席に就任した。この機関は、2013年11月に開催された第18期中国共産党中央委員会三中全会(Third Plenum of the 18th Central Committee)の気施錠で設立が決定された。(新華社通信、2014年1月24日;人民日報、2014年1月24日;中国日報、2014年1月22日)習近平は、党、外交問題、軍事問題に加えて、複雑な国家安全保障と法執行にも取り組むことになった。中央全面深化改革領導小組の主要な機能は、経済改革手法をデザインし、実行することである。習近平は、李克強(Li Keqiang、1955年~、りこくきょう)国務院総理から経済政策の最終監督者としての役割を剥奪したように見える。(民報[香港]、2014年1月25日;大公報[香港]、2014年1月25日;“Xi’s Power Grab Towers over Market Reforms,” China Brief, November 20, 2013も参照のこと)習近平は習近平派(Xi Jinping Clique)を形成しつつあるように見える。習近平派のメンバーたちは、党、政府、人民解放軍の重要な地位に就いている。

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習近平             江沢民(左)と胡錦濤        習仲勲

 

 習近平と江沢民、胡錦濤を比較して良く書かれているのは、2人はそれぞれ上海閥と中国共産主義青年団(Communist Youth LeagueCYL)派という2つの派閥のトップであった。習近平は前任者たちのような良く組織化された忠実な追随者を持っていないように見えるということだ。60歳になる習近平は、党の長老で国務院副総理を務めた習仲勲(Xi Zhongxun、1913~2002年、しゅうちょうくん)の息子であり、彼自身は太子党(Gang of Princelings)のトップに君臨していると考えられる場合もある。太子とは党の最高幹部たちの子供たちのことを意味する。しかし、太子党は、関係が緊密な団派に比べて緩やかなグループなのである。通常の派閥であれば、明確な命令系統があり、信条や魅力でつながっている。一方、太子党は「革命の血統(revolutionary bloodline)」を共通点として持つ排他的なクラブに入っている有力な人々の集まり、ということになる。太子党の人々全員が「赤い貴族(red aristocracy)」の特権を維持するという目的を共有してはいるが、それぞれは個別のイデオロギーや野心を持っているので、太子党は一人の指導者に依存するという構造になっていない。中国の最高機関である中国共産党中央政治局常務委員会(Politburo Standing Committee)の2人のメンバーである兪正声(Yu Zhengsheng、1945年~、ゆせいせい)王岐山(Wang Qishan、1948年~、おうきざん)は太子党であるが、中国共産党の指導者第6世代のメンバーたちの多くが高級幹部の子弟たちではないという事実は重要だ。第6世代の人々は1960年代生まれで、現在急速に台頭している。(香港経済報、2013年6月28日;BBC中国語放送、2013年3月14日)

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兪正声                王岐山
            

 現在の中国の太子党の主要な構成要素となっているのは、中国人民解放軍(People’s Liberation ArmyPLA)である。「革命の血統」に連なる将軍たちには、中国人民解放軍総装備部長の張又侠(Zhang Youxia、1950年~、ちょうようきょう)、中国人民解放軍空軍司令員馬曉天(Ma Xiaotian、1949年~、ばぎょうてん)、中国人民解放軍総後勤部政治委員(Political Commissar)の劉源(Liu Yuan、1951年~、りゅうげん)、中国人民解放軍海軍政治委員の劉暁江(Liu Xiaoqiang、1949年~、りゅうぎょうこう)である。

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張又侠            馬曉天

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劉源                  
劉暁江

 

従って、軍人太子党は結成されたばかりの習近平派(Xi Jinping Clique)の主要な構成要素となっている。最高司令官でもある習近平は、軍人太子党からの忠誠心の見返りとして、前任者たちに比べて、将軍たちにより配慮している。習近平は、2012年末に中国共産党総書記と中央軍事委員会(Central Military CommissionCMC)主席になって以来、人民解放軍の全ての軍管区の部隊を訪問している。2014年の旧正月の前、人民解放軍内蒙古軍管区内にある高地に置かれた部隊の将兵を訪問した時、習近平は野戦用の迷彩服を着用していた。より重要なことは、習近平は、人民解放軍の将軍たちが外交や国家安全保障の分野で声高に発言することを許していることである。(人民日報、2014年1月29日;Huaxia.com[北京]、2013年12月27日;新華社通信、2013年12月26日)

 

 習近平派のより重要な人材供給源となっているのが、習近平が福建省(1985~2002年)、浙江省(2002~2007年)、そして上海市(2007年)で勤務していた時の同僚や部下たちである。57歳の黄坤明(Huang Kunming、1956年~)は、1977年から1999年まで福建省で勤務し、その間に順調に昇進していった。1999年に福建省から浙江省に移動してまもなく、黄坤明は浙江省党委書記を務めていた習近平と直接やり取りをするようになった。黄坤明は浙江省の湖州市と嘉興市の党委書記を務めた。昨年末、黄坤明は中国共産党中央宣伝部副部長に任命された。(光明日報[北京]、2013年10月24日;大公報[香港]、2013年10月3日)貴州省長の陳敏汝(Chen Min'er、1960年~)は、習近平が浙江省党委書記を務めていた時、浙江省政府宣伝部長を務めていた。50歳の陳敏汝は、第18期中国共産党大会で中央委員に選出された指導者第6世代の9名のうちの1人だ。(人民日報、2013年10月31日;貴州日報、2013年8月22日)

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黄坤明        陳敏汝 


(続く)