古村治彦です。

 

 ネオコンの著名な評論家であるロバート・ケーガンが、ヒラリー・クリントンの政治資金集めのイヴェントを開催するという情報が入りました。たったこれだけのことですが、『フォーリン・ポリシー』誌では記事になりました。こんなことは、それだけ、「奇妙なこと、おかしなこと」なのです。

 

 共和党ではドナルド・トランプが大統領選挙候補者に内定していますが、これに対して、共和党内の外交政策専門家たち、特にネオコンに属する人々は、トランプに嫌悪感を示しています。このブログでもご紹介しましたが、共和党内の外交専門家たちは、3月にはトランプに反対する公開書簡を発表しています。

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ロバート・ケーガンとヴィクトリア・ヌーランド 

 

 ですが、ついに、ヒラリーの政治資金集めにまで協力するネオコンが出てきました。それは、ロバート・ケーガンです。ロバート・ケーガンは一家そろって、父親も夫人も、弟夫婦もネオコンという筋金入りです。奥さんのヴィクトリア・ヌーランドについても何度もご紹介していますが、こちらは国務省のキャリア外交官です。ヒラリーが国務長官の時にはヌーランドは国務省報道官を務めていましたし、ロバート・ケーガンは長官直属の超党派の諮問会議のメンバーでした。

 

 個人的には関係が深いというのは分かるのですが、資金集めをやるとなると、これは共和党に対する裏切り行為です。こういう動きが出てきているというのは、共和党内部に相当な亀裂とダメージがあるということの証拠になります。

 

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スクープ:共和党所属でネオコンとして有名な人物がヒラリー・クリントンのために資金集めを行う(Prominent GOP Neoconservative to Fundraise for Hillary Clinton

 

ジョン・ハドソン筆

2016年6月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/06/23/exclusive-prominent-gop-neoconservative-to-fundraise-for-hillary-clinton/

 

 著名なネオコン派の論客にしてイラク戦争を早くから主張していたある人物が、来月、ヒラリー・クリントンの選挙資金集めの集まりを開くことが『フォーリン・ポリシー』誌の取材で明らかになった。この動きはヒラリー・クリントン陣営が著名な共和党員や共和党支持者たちと協力する姿勢になっていること、更には共和党員や支持者の中にドナルド・トランプの大統領選挙当選阻止のためにかなりの禁じ手をやる人たちが出てきていることを示している。

 

 ブルッキングス研究所上級研究員で、シンクタンク「プロジェクト・フォ・ザ・ニュー・アメリカン・センチュリー」の共同設立者であるロバート・ケーガンは、7月21日にワシントン市内のローガン・サークル地区で「ヒラリー・フォ・アメリカ」の資金集めのための集まりを開く予定だ。本誌が入手した招待状には次のような文言が記載されている。「このイヴェントでは、アメリカのNATO、ヨーロッパの主要な同盟国とパートナー、そしてEUに対するこれからも続けられる投資に関してオフレコの会話も行われる予定です」。

 

 本誌はケーガンにコメントを求めたが返答はなかった。

 

 ヒラリー・クリントン陣営では、トランプの高い不人気と彼の攻撃的なコメントのために、伝統的な共和党支持者たちからの得票を期待できると考えている。そして、陣営では共和党支持者たちに積極的に働きかける動きが始まるだろう。

 

 ヒラリー陣営ではしかし、このような動きについては慎重になっていた。それは、民主党左派で予備選で激しく闘ったバーニー・サンダースや彼の支持者からの批判を受けたからだ。サンダースはヒラリーが上院議員時代の2002年にイラク戦争に賛成の投票を行ったこと、ヘンリー・キッシンジャーの様な批判が多い共和党側の人物たちやウォール街とも深い関係を持っていることを批判した。

 

 2月に行われた討論会で、サンダースは「ヒラリー・クリントン氏は著書と今回の討論において、ヘンリー・キッシンジャーからの推薦、もしくは支持をとりつけようとしている。私は驚き以上のものを感じている。それは、ヘンリー・キッシンジャーがアメリカ史上最もアメリカを破壊した国務長官であると私は考えるからだ」と述べた。

 

 共和党内の外交政策の専門家たちの多くがトランプを非難しているが、ヒラリーを支持すると公言している人の数はもっと少ない。しかし、亀裂は表に出始めている。

 

 6月22日、ヒラリーは共和党のブレント・スコウクロフトの推薦を取り付けた。スコウクロフトは、ジョージ・HW・ブッシュ(父ブッシュ)、ジェラルド・フォード両大統領の大統領国家安全保障担当補佐官を務めた。また、リチャード・ニクソン、ジョージ・W・ブッシュ両大統領には助言者として仕えた。

 

スコウクロフトは声明の中で、「ヒラリー・クリントン氏は国際問題の分野の経験が豊富で、世界に対する理解も深い。これらの要素はアメリカ大統領に不可欠だと私は考えている」と述べている。

 

 しかし、スコウクロフトは共和党内のリアリストに属している。彼はリベラル派の中のグループと同じく、「アメリカはあまり外国に介入すべきでない」という世界観を持っている。一方、ケーガンはネオコンに属している。ネオコン派、軍事力の行使、独裁者の軍事力を使った排除、民主政治体制の世界への拡散を中心に据えたイデオロギーだ。

 

 民主党の大統領選挙予備選が熱を帯びていく過程で、サンダースを支持する有名人たちは、ヒラリーとケーガンやネオコンのよりタカ派的な政策を結び付けようとした。彼らはそのために、ケーガンのヒラリーに対する好意的な発言を引っ張り出してきた。

 

 2014年、『ニューヨーク・タイムズ』紙の取材に対して、ケーガンは次のように述べている。「外交政策の面で、ヒラリー・クリントンと一致する点は多い。彼女がやりたいだろうなと私たちが考える政策を彼女がやったら、それはネオコン的な政策と呼ばれるものになるだろう。しかし、彼女の支持者たちはそれをネオコン的とは呼ばないだろう。何か他の言葉を付けるだろう」。

 

 ここ数年、ケーガンは、シリアにおける5年にわたる内戦にアメリカが介入していないことと、ウクライナ紛争においてロシアに対してより強硬な姿勢を取らないことに関し、オバマ政権を厳しく批判してきた。ケーガンはまた、連邦予算において国防予算の増額を求めている。ケーガンの考えは、彼が最近『ニュー・リパブリック』誌に掲載した論稿のタイトル「超大国は引退などできないのだ」に要約される。彼は論稿の中で、世界においてアメリカは更に外交的、軍事的存在感を増すようにすべきだと主張している。

 

 ケーガンはNATOの熱心な支持者であり、擁護者である。そのため、トランプの考えとは真っ向から対立する。トランプは軍事同盟を「時代遅れ」なものであり、ヨーロッパに同盟諸国には、自国のGDPの2%以上を防衛費として支出しないのなら、制裁を加えるべきだと考えている。NATOに加盟している28カ国でこの基準を満たしている国はほとんどない。ヒラリー・クリントンは最近の複数の演説でNATOを擁護している。

 

 ケーガンはヒラリー・クリントンが国務長官を務めていた時期に国務省報道官を務めたヴィクトリア・ヌーランドの夫である。ヌーランドは現在、ヨーロッパ・ユーラシア担当国務次官補を務めている。ヌーランドは、オバマ政権に対して、ウクライナでの紛争でアメリカはより積極的な役割を果たすように強く主張したことで知られる。

 

 カンブリアホテルで開催されるイヴェントの入場券の値段は1枚100ドルだ。イヴェントのスピーカーと主催者と話が出来るパーティーに出席できるVIPチケットは1枚250ドルだ。「主催者」の待遇を得るためのチケットは500ドルである。

 

(終わり)