古村治彦です。

 

 ここ数日、アメリカ大統領選挙関連では、ドナルド・トランプに対する集中攻撃が激しさを増しています。このブログでもご紹介しましたが、発端は、民主党全国大会に登場したカーン夫妻の演説とそれに対するトランプの批判です。イスラム教徒であったカーン大尉はイラクで基地警備中に自動車によるテロで戦死しました。両親はトランプのイスラム教徒入国禁止を批判し、「アメリカ合衆国憲法を読んだことがあるのか、読んだことがなければ私が持っているものを貸しても良い」「あなたは何も自分の関するものを犠牲にしていない」と述べました。

 

 これに対して、トランプは「夫人からも話を聞きたかった(夫人は大会に登場したが何も発言しなかった)、彼女が発言しなかったのは恐らく宗教上の理由からだろう」「私は多くを犠牲にしている」と述べました。これに対して、民主党から、更には共和党内部からも激しい批判が出ています。

 

 また、トランプの報道担当が「カーン大尉の死は、公選規定を変更したバラク・オバマ大統領とヒラリー・クリトン国務長官(当時)のせいだ」とテレビで発言し、失笑を買いました。カーン大尉が戦死したのは2004年で、その当時は共和党のジョージ・W・ブッシュ政権だったからです。

 

 また、トランプ陣営では幹部が解雇されるなど、内部対立があるというような報道もなされています。トランプの支持率は急落しています。共和党全国大会後に支持率は伸びて、ヒラリーを逆転しましたが、民主党全国大会後のヒラリーの伸びに加えて、彼自身の失速も重なってトランプの凋落が際立っています。

 

 これに対して、共和党の幹部たちは、トランプ陣営の立て直しに動き出しています。共和党全国大会でトランプを熱烈に支持する演説を行ったニュート・ギングリッジ連邦下院元議長とルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長がトランプに建て直し案を提案するようです。

 

 具体的には、トランプ陣営でもっと子供たちに選挙運動に参加させて、トランプにどんどん助言をさせて、陣営を引き締める、分裂を防ぐというものです。一部メディアでは、トランプが立候補を取り止める、共和党全国委員会が立候補を取り止めるように圧力をかけているという報道がなされています。

 

 敵は味方の側を分裂させようとします。一部が崩れたら、そこを突破口にして攻め込むことが出来るからです。今、トランプは四面楚歌の状況ですから、どこかに穴が開いてしまうとそこから攻め込まれてしまいます。ですから、その穴が出来てしまうことを防ぐことが重要で、政治のヴェテランであるギングリッジとジュリアーニにはそれが分かっているので、引き締め、建て直しのために忠告をすることになりました。

 

 トランプは現在の危機を乗り越えて9月からのヒラリーとの直接対決を迎えるためには、彼らの意見を素直に聞くべきでしょうし、彼はそうするでしょう。

 

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プリーバス、ジュリアーニ、ギングリッジがトランプに対する仲介案を提案(Priebus, Giuliani, Gingrich plot Trump 'intervention': report

 

ジェシー・バイルネス筆

2016年8月3日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/290247-priebus-giuliani-gingrich-plot-trump-intervention-report

 

共和党の幹部でドナルド・トランプの政治的な協力者たちが、共和党大統領選挙候補者ドナルド・トランプに対する「仲介案」を提案しようとしている。ここ数日、トランプに対する政治的な大嵐が吹きつけている。この事実は水曜日に報道された。

 

共和党全国委員会委員長レインス・プリーバス、ニューヨーク元市長ルディ・ジュリアーニ、連邦下院元議長ニュート・ギングリッジは、ドナルド・トランプと話したいと考えているとNBCニュースが報じた。

 

プリーバス、ジュリアーニ、ギングリッジをはじめとするグループは、トランプの子供たちに「協力して戦いに参加してもらう(enlist)」ことを希望している。トランプの子供たちは、トランプに対する助言役として重要であることが証明されている。彼らは、亡くなった米軍将校の両親に対する批判をしてから数日、トランプに対する攻撃から抜け出させようと努力している。この騒動に対しては、ニュージャージー州知事クリス・クリスティのようなトランプの政治的協力者たちも不適切だとトランプを批判している。

 

トランプは水曜日の朝、自分の陣営は「固く団結している」とツイートとした。しかし、マスコミによる否定的な関心を集め、トランプ陣営の内部分裂が頻繁に報道されている。

 

不動産業界の大立者トランプは、先週の民主党全国大会に登場して彼を批判した米軍将校の両親を攻撃した。その後、先週末にロシアのヨーロッパ進攻についてのコメントをし、それが激しい批判に晒された。

 

火曜日、『ワシントン・ポスト』紙の取材に対して、連邦下院議長ポール・ライアン(ウィスコンシン州選出、共和党)と連邦上院議員ジョン・マケイン(アリゾナ州選出、共和党)の予備選挙で支持できないと述べた。彼らはトランプを支持しているが、トランプは支持しないと述べたのだ。また、連邦上院議員ケリー・アヨッテ(ニューハンプシャー州選出、共和党)を激しく非難している。

 

(終わり)