古村治彦です。

 

 アメリカ大統領選挙ですが、現在、全国世論調査では、ヒラリー・クリントンがドナルド・トランプを平均で5ポイントから6ポイントリードしている状態です。この数字はそんなに大きな差ではないように感じられますが、この数字以上に、トランプは苦戦を強いられています。

 

 アメリカの大統領選挙では各州+ワシントンDCに割り当てられた合計538名の選挙人を取り合う選挙になります。270名を取れば当選ということになります。この選挙人の取り方ですが、各州で投票が多かった候補者がその州の選挙人を総取りするという方式がほとんどです(そうではない州も2州あります)。選挙人は各州の人口を基にして割り当てられています。一番多い州はカリフォルニア州で55名、少ない州は3名というところが複数あります。簡単に言ってしまうと、選挙人が多い州だけを取れれば後の州は取れなくても勝ってしまうということになります。

 

 ここ最近のアメリカ大統領選挙では、レッド・ステイト(赤い州、共和党が強い州)、ブルー・ステイト(青い州、民主党が強い州)がはっきり出てきています。人口が多いアメリカ東部、西部の沿岸部の各州はブルー・ステイト、南部と内陸部の各州はレッド・ステイトとなっています。

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 現在の世論調査の状況では、ヒラリーが地滑り的な勝利を収める可能性が大きいです。いわゆるレッド・ステイトに分類されるアリゾナ州やジョージア州も現在ではヒラリーがリードしている世論調査の結果が出ていますので、これらの州でヒラリーが勝利を収めると、538名の選挙人のうち、400名に近い選挙人をヒラリーが獲得するという可能性も出てきます。

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 トランプ陣営としては、まずはレッド・ステイトを固めつつ、支持率で接戦を演じている激戦州のほぼ全てを獲得するという戦い方をしなくてはなりません。しかし、共和党内部で分裂が起きていますから、各州の共和党組織がトランプのためにどれだけ熱心に動くかは疑問です。一方、ヒラリーは、レッド・ステイトのうちで、トランプが弱いアリゾナ州やジョージア州、ユタ州で支持の拡大とトランプ忌避の雰囲気作りをしながら、ブルー・ステイトを固めていく、それで270名近くは確保していますから、こちらも激戦州の獲得に全力を挙げるということになりますが、資金力の面や党組織の面からもヒラリーが優勢だと考えられます。今のところ、「8対2」でヒラリーが優勢であると言えます。

 

 ただ、ヒラリーにはEメール問題と健康問題がどうしても付きまといます。これらがさく裂した場合には、ヒラリーはすぐに苦戦を強いられることになるでしょう。ところが、相手がトランプであるという点で救われているとも言えます。他の候補者であれば、ヒラリーは現在の時点で既に苦戦を強いられていた可能性があります。

 

 選挙投開票日まで残り80日ほどとなりました。選挙からますます目が離せなくなっています。

 

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これら3つの州の存在がトランプの勝利を不可能にしようとしている(These three states are making a Trump win basically impossible

 

アーロン・ブレイク筆

2016年8月12日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/news/the-fix/wp/2016/08/12/these-three-states-are-making-a-trump-win-basically-impossible/?tid=sm_Fb

 

ドナルド・トランプの世論調査の悪夢が続いている。今週もまた数字がどんどん悪くなっていった。

 

金曜日(2016年8月12日)にNBCとマリスト大学による4つの州での共同世論調査の結果が新たに発表された。民主党大統領選挙候補者ヒラリー・クリントンは、共和党の候補者トランプに対して、フロリダ州では5ポイント、ノースカロライナでは9ポイント、コロラド州では14ポイント、ヴァージニア州では13ポイントのリードを保っている。これら4つの州は、最近の大統領選挙で激戦州であった。

 

実際のところ、コロラド州とヴァージニア州での数字を見る限り、現在のところ、トランプが当選することはかなり困難であると言わざるを得ない。なぜなら、コロラド州とヴァージニア州、更に二桁のポイントをつけられて負けているペンシルヴァニア州を落としてしまえば、選挙に当選することは不可能となるからだ。

 

全国世論調査の数字は上がったり下がったりが激しい。今週行われたいくつかの全国世論調査の数字では、トランプはヒラリーに対して逆転可能な数字でリードされているだけのことだ。しかし、全国世論調査の数字は問題ではないのだ。大事なのは選挙人なのだ。コロラド州、ヴァージニア州、ペンシルヴァニア州の世論調査の数字では、トランプの勝利はほぼ不可能なのだ。

 

ウェブサイト『リアル・クリア・ポリティックス』によると、ペンシルヴァニア州で行われた最新の4回の世論調査では、トランプは10から11ポイントの差をつけられて負けている。コロラド州での最新の3回の世論調査では、10から14ポントの差をつけられている。ヴァージニア州では、最新の2回の世論調査では二桁の差をつけられており、その前の2回の世論調査ではそれぞれ7ポイント、9ポイントをつけられていた。

 

ヒラリー選対とヒラリーを支持するスーパーPACは、コロラド州とヴァージニア州で大胆な宣伝を行っている。

 

しかし大事なことは、これら3つだけが重要な激戦州ではないということだ。トランプは勝利を得るためには、これら3つの州全てを勝たねばならない。最悪でも、2つを落としてしまってはダメなのだ。

 

民主党側は選挙人の数で既に優位に立っている。本紙のクリス・シリーザが書いているように、ヒラリーは勝利に必要な270名のうち、既に242名を固めている。これまでの6回の大統領選挙それぞれで民主党が勝利を収めた州のうち、19州を押さえたらと仮定すると、242という数字になる。この州の中にはペンシルヴァニア州も含まれている。 ヒラリーがこれら19州すべてで勝利し、更にフロリダ州で勝利を収めたら、当選、トランプは落選ということになる。

 

このシナリオでは、いつも激戦となるコロラド州とヴァージニア州、更にはニューメキシコ州を落としてもヒラリーの当選ということになる。ニューメキシコ州は今回の選挙では民主党がリードを保っているが、ここ20年ほどの間の大統領選挙では共和党が勝利を収めた。これら3つを全部落としてもヒラリーは勝ってしまうのだ。

 

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現在、トランプはフロリダ州では接戦に持ち込んでいる。最新の世論調査では引き分けとなっている。しかし、たとえフロリダ州で勝利を収めても、数字を落としているコロラド州、ペンシルヴァニア州、ヴァージニア州で勝利を収めることはできない。これら3つの州とニューメキシコ州を落としたら、ヒラリーが獲得する選挙人は269名となり、勝利のためにはあと1名の獲得ということになる。

 

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そうなると、ヒラリーが勝利を収めるためには次の各州のうちの1つの州を獲得しなければならない。ネヴァダ州(選挙人6名)、アイオワ州(6名)、オハイオ州(18名)、ニューハンプシャー州(4名)、ノースカロライナ州(15名)だ。更に忘れてはならないのは、最新のNBCとマリスト大学の共同世論調査では、ノースカロライナ州ではヒラリーが9ポイントもリードしており、また、今週発表された別の世論調査によると、ニューハンプシャー州ではヒラリーが17(!)ポイントもリードしている。

 

ニューハンプシャー州をヒラリーが獲得し、更には、最新の世論調査で二桁の差をつけてリードしている激戦州全てでヒラリーが勝利をすると仮定すると、獲得する選挙人は273名となる。

 

繰り返しになるが、トランプが現在一桁のリードで負けている各州を全部獲得したとしても、彼は当選できないということは付け加えておく。

 
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選挙戦が進んでいく中で、フロリダ州での世論調査の数字は重要になっていく。そのように取り扱われるだろう。フロリダ州はトランプが勝利するためには絶対に落とせない州だ。

 

しかし、トランプがコロラド州、ペンシルヴァニア州、ヴァージニア州で二桁の差やそれに近い大差をつけられたままであれば、フロリダ州を獲得しても意味はなくなってしまうのだ。

 

(終わり)