古村治彦です。

 

 今回は世論調査に関するより細かい数字について書かれた記事をご紹介します。

 

 今回の世論調査の数字でマスコミに大きく取り上げられるのは、全体の支持率で、ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプではどちらが支持率が高いか、その差は何ポイント差かといったことです。この数字の増減で、どちらに勢いがあるとか、巻き返している、突き放しているという言い方をされます。

 

 この数字の裏には様々な調査と答えがあります。現在のところ、各種世論調査(ラスムッセンとLAタイムズ・南カリフォルニア大学共同調査を除く)では、トランプが劣勢です。しかし、下の記事で注目なのは、無党派層で、トランプの方が支持が高い(30%対23%)という結果が出ていることです。

 

 先週からのトランプの態度変更(後悔の念を示す、黒人やヒスパニックに向けてアピールをする)によって、無党派層にも支持が浸透できる可能性が出てきました。共和党予備選挙では過激なことや人種差別的なことを言って、白人男性層の支持を得て勝利を得るというのは正しい選択ですが、本選挙になれば、彼らの支持だけでは勝てません。そこの転換がようやくでき始めました。これまで未開拓の部分が多いのですから、伸びが期待できます。

 

 しかし、トランプが述べていることは、基本的に議会共和党やオバマ大統領、ヒラリー・クリントンと違わなくなってきました。そうなると、「お前は態度を変えた」「結局、取り込まれただけじゃないか」ということになって、批判を受けたり、支持を減らしたりすることも考えられます。

 

 今週と来週の世論調査の結果が出る9月1日(アメリカではレイバーデーで祝日)頃の世論調査の結果に注目です。

 

 

(貼り付けはじめ)

 

今週発表された中で重要な5つの数字(5 numbers that mattered this week

 

スティーヴン・シェパード筆

2016年8月20日

『ポリティコ』誌

http://www.politico.com/blogs/5-political-numbers-to-watch/2016/08/5-numbers-that-mattered-this-week-227220#ixzz4HsLmh3is

 

ポリティコ誌はアメリカ大統領選挙を追いかけ続けている。私たちは最新の世論調査を追いかけ、2016年の大統領選挙についてのストーリーを発表している。今週発表された中で重要な数字についてこれから論じていく。

 

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ドナルド・トランプは勢いが衰えた大統領選挙運動を再び盛り上げようしている。選対幹部の更迭し、演説における言葉遣いで人々を傷つけてきたことを謝罪した。そして、本選挙に向けてのCMを放映し始めた。

 

しかし、共和党大統領選挙候補者トランプが勢いを回復させるには遅すぎるのではないか?

 

近代の大統領選挙になって、党全国大会から3週間たった時点で、支持率でリードされていた候補者が勢いを盛り返して最終的に勝利を収めたというケースはない。

 

しかし、有権者が既に投票する候補者を決めつつあるなかでも、大統領選挙の様相が根本的に変化することは不可能だということを意味するものではない。ピュー・リサーチ・センターが今週発表した最新の世論調査では、ヒラリー・クリントンが4ポイント差をつけてリードしている(ヒラリー:41%、トランプ:・37%)。この数字はこれまでの数字よりも良い数字だ。最新のハフィントン・ポスト紙の最新の世論調査の結果の平均は、7ポイントだった。

 

しかし、ピュー・リサーチ・センターの世論調査の結果は、トランプがまだまだ支持を伸ばせる余地があることを示している。トランプに投票する可能性があると答えた有権者は8%で、彼を支持する有権者は37%である。

 

全体として、有権者の51%が彼らはトランプには投票しないと決心していると答えた。6月末の調査で、トランプを支持することはないと答えたのが52%だったので、この数字はほとんど変わっていない。

 

ヒラリーもまた数字が伸びていない。彼女の支持率は41%に留まっている。ヒラリーに投票する可能性があると答えたのは8%に留まり、48%が彼女を支持することはないと答えた。

 

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トランプは集会における参加者の数と熱心さを挙げて、自分の支持者たちは、ヒラリーの支持者に比べて、より熱心で献身的だと言いたがる。

 

しかし、世論調査の結果は彼の主張を裏付けていない。トランプの支持者の方が、数が少ないだけでなく、「自分はトランプのために投票するというよりも、自分はヒラリーに反対するために投票するのだ」と答える人が多く、熱心なトランプ支持という訳でもないのだ。

 

ピュー・リサーチ・センターは、有権者を「誰を支持したいか」で分類するだけでなく、その理由も質問している。トランプ支持者のうち、44%だけがトランプが好きだから支持をすると答え、 53%がヒラリーに反対だからだと答えた。

 

言い換えると次のようになる。有権者全体の中で、16%がドナルド・トランプに好きだから投票すると答え、20%がヒラリーに反対だからトランプに投票すると答えたのだ。

 

クリントン支持者たちの方がより熱心な支持者である。しかし、それはトランプを大きく引き離すものではない。ヒラリー支持の有権者53%が、ヒラリーが好きだからヒラリーに投票すると答え、46%がトランプに反対だからヒラリーに投票すると答えた。

 

クリントン支持の有権者は有権者全体で22%を占めている。トランプ支持の有権者は16%である。反トランプでヒラリーを支持する有権者は19%を占めていると世論調査の結果が出ている。

 

激戦州での世論調査でも同じ結果が出ている。トランプ支持者たちの方が激しく主張するし、表に出るが、その数はヒラリー支持者に比べて少ない。そして、彼らの支持理由が、ヒラリーに反対するためにトランプを支持するというものだ。トランプに反対するためにヒラリーを支持するという消極的な理由を持つ有権者の数と、消極的な理由でトランプを支持するという有権者の数を比べると、後者の方が多い。

 

キュニピアック大学は6つの激戦州で過去数週間にわたり調査を行い、各州で「ヒラリーが好きだからヒラリーに投票すると答えるヒラリー有権者の割合が、トランプが好きだからトランプに投票するというトランプ支持者の割合よりも多い」という結果を得た。

 

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トランプは「アメリカを再び偉大にする」と約束している。このメッセージが彼の支持者に受けている。トランプ支持者たちの大多数は、アメリカは悪い方向に進んでいると考えている。

 

トランプ支持者の80%は、自分たち同じような人々にとって過去50年間で物事はどんどん悪くなっていく一方だと考えている。その逆だと考えている人たちは11%にとどまった。

 

彼らは将来がより良くなるとは考えていない。トランプ支持者の68%が初来のアメリカ人の生活は現在に比べて悪くなるだろうと答え、11%だけがより良くなると答えた。

 

ヒラリーの支持者たちは、過去50年間のアメリカの前進についてより積極的に肯定している。59%の人々が、50年前に比べて、自分たちと同じような人々の生活はより良くなっていると答え、19%が悪くなったと答え、18%がほぼ同じだと答えた。

 

彼らもまたアメリカの未来の世代に関しては楽観的ではない。38%がより良くなると考え、30%が悪くなると考え、28%が同じだと答えた。

 

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トランプはアメリカがこれまでに結んできた自由貿易協定がアメリカに損失を与えてきたと主張し、共和党支持者たちもその考えに納得している。トランプは、共和党を自由貿易に反対する政党に変えた。

 

国全体では、アメリカ人の間は、これらの自由貿易協定がアメリカにとって良いことなのかどうかで考えが分かれている。ピュー・リサーチ・センターの調査では、45%が自由貿易協定はアメリカにとって良いことだと答え、47%が悪いことだと答えた。

 

トランプ、ヒラリー双方共に、TPPに反対している。一方、貿易に関して、有権者の間には分裂が存在する。ヒラリーの支持者たちは自由貿易協定について賛成している。ヒラリー支持者の59%が自由貿易協定を良いことだと答え、32%が悪いことだと答えた。

 

トランプ支持者の68%が自由貿易協定はアメリカにとって悪いことだと答え、26%が良いことだと答えた。

 

これは共和党員や共和党支持者たちに広がっている。共和党は伝統的に自由貿易を支持する政党であったが、共和党支持者たちは自由貿易に反対している。61%の共和党員と共和党支持者たちは自由貿易が悪いことだと考え、良いことだと考えているのは32%に留まった。

 

この動きは流動的だ。2015年5月、トランプが大統領選挙に出馬を表明する1か月前、共和党支持の有権者のうち51%は、自由貿易はアメリカにとって良いことだと答え、39%が悪いことだと答えた。

 

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金曜午後のミシガン州での集会で、トランプはアフリカ系アメリカ人を対象にした演説を行った。4年前の大統領選挙では、ミシガン州の全投票数の中で、アフリカ系アメリカ人の投票数は16%を占めた。

 

トランプは、気宇壮大な主張をする前に、「皆さんは何を失っていますか?」と質問した。そして次のように続けた。「大統領の任期4年が過ぎた後、アフリカ系アメリカ人有権者の95%は私に投票してくれるでしょう。これは間違いありません。約束しますよ。なぜなら、私はインナーシティのために結果を出しますし、アフリカ系アメリカ人のために結果を出すからです」。

 

トランプの前にはやらねばならないことが山積している。ピュー・リサーチ・センターの調査では、全国レヴェルで、アフリカ系アメリカ人の中の支持率では、ヒラリーが85%、トランプが2%となっている。

 

この数字は、異常値ではない。これまでの多くの世論調査の結果では、多くの州で黒人有権者中のトランプ支持の割合は1から2%である。

 

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世論調査:有権者の半数がトランプに投票することを考えないと答える(Poll: Half of all voters won't consider Trump

 

レベッカ・サヴランスキー筆

2016年8月21日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/292157-poll-half-of-all-voters-wont-consider-voting-for-trump

 

モーニング・コンサルトの最新の世論調査によると、有権者全体の半分が共和党大統領選挙候補者ドナルド・トランプに投票することは絶対に考えられないという結果が出た。

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同じ調査では、45%がヒラリー・クリントンに投票することは絶対に考えられないという結果が出た。

 

有権者の約35%がヒラリーに絶対投票すると答え、16%が少なくともヒラリーに投票することを考慮すると答えた。

 

有権者の29%がトランプに絶対に投票すると答え、16%がトランプに投票することを考慮すると答えた。

 

世論調査によると、ヒラリーとトランプの支持者の28%がリバータリアン党の大統領選挙候補ゲーリー・ジョンソンに投票することを考慮すると答えている。

 

ヒラリーに投票すると答えた人々の25%強が緑の党ジル・スタインに投票することを考慮すると答えた。トランプ支持の有権者の14%もスタインに投票することを考慮すると答えた。

 

世論調査によると、有権者の32%がジョンソンに、23%がスタインに投票することを考慮すると答えた。

 

別のモーニング・コンサルトの世論調査によると、ヒラリーがトランプを3ポイントリードしている。

 

選択肢が4人になると、支持率はヒラリーが39%、トランプ36%、ジョンソン8%、スタイン4%となる。

 

無党派の中では、23%がヒラリーを、30%がトランプを支持すると答えた。

 

一対一の選択肢になると、ヒラリー(44%)がトランプ(38%)をリードしている。

 

世論調査は2016年8月16―17日、18-20日にそれぞれ2001名を対象に行われた。誤差はどちらとも2%である。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)