古村治彦です。
「オルト・ライト」という言葉がアメリカ大統領選挙のキーワードになってきました。
「オルト・ライト(alt-right)」は、「オルタナティヴ・ライト(alternative right)」の略語です。これは、「主流派とは別の、もう一つのライト(右翼、右派)」という意味になります。アメリカ文化評論家・映画評論家である町山智浩氏は「オルタナ右翼」と訳しておられます。音楽の分野でオルタナティヴ・ロック(オルタナ・ロック)というものがありますが、オルト・ライトというと良く分かりませんが、オルタナ右翼というとイメージしやすい人たちもいると思います。
オルト・ライトにはこれといってひとつの思想はありません。アメリカの右派の特徴である多文化主義と移民に対する反対を標榜していますが、同時に、白人優越ナショナリズム、白人優越主義、人種差別主義、女性蔑視、反ユダヤ主義がそれぞれの場面で出てきます。このアルト・ライトの高まりがドナルド・トランプの台頭を支えたのか、トランプの台頭がアルト・ライトの高まりを支えたのか、どちらが正しいということはありませんが、どちらも正しいということは言えます。
このオルト・ライトの高まりを支えているのが、インターネット上の日本の巨大掲示板「2ちゃんねる」をモデルにした「4chan」(所有者は2チャンネルの創設者である西村博之氏)やブログなど、オルト・メディア(オルタナティヴ・メディア)で特有の言葉遣いで、上記のような反主流の考え方を語り合っている人々だということです。日本で言えば、ネット右翼(ネトウヨ)と呼ばれる人たちに似ていると思います。
オルト・メディアの代表格なのが、トランプ選対の運営責任者となったスティーヴ・バノンが会長をしていたブライトバート・ニュース社です。過激な見出しと差別的な言辞を多用した記事で人気を集めるニュースサイトとなっています。
先週の木曜日、ヒラリー・クリントンは、オルト・ライトの高まりとトランプを結び付け、トランプが人種差別主義者であり、反ユダヤ主義を標榜する団体にも近いという内容の演説を行いました。その根拠として、ブライトバート社の元会長で、現在のブライトバートの路線を作り上げたスティーヴ・バノンを取り上げました。
そして、同じタイミングで、スティーヴ・バノン個人が、妻に家庭内暴力をふるい(女性蔑視)、反ユダヤ主義的な考えを持っているという個人攻撃がメディアで流れました。このタイミングの良さは、メディア側との協力関係がなければできないことです。トランプ側が、メディアはヒラリーを贔屓していると批判していますが、これはあながち間違ってはいないように思われます。
ヒラリー側は、トランプが黒人有権者やヒスパニック有権者に宥和的な態度へと変更し、幅広い有権者層へアピールする戦術に出たことに対して、「トランプとオルト・ライトはつながっている、危険だ」という攻撃に出ました。確かに、これまでのトランプの発言やプライトバート社の記事などはそのような要素が入っていましたから、そのような攻撃をされると弱いということはあります。
ヒラリーのこの攻撃に対して、トランプ側がどのような反撃をしてくるか、注目です。
(貼り付けはじめ)
トランプ選対の運営責任者は空き家に有権者登録をしている(Report: Trump
campaign chief registered to vote at empty house)
ジェシー・ヘルマン筆
2016年8月26日
『ザ・ヒル』誌
http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/293414-trumps-campaign-chief-registered-to-vote-in-state-he
イギリスの「ザ・ガーディアン」紙が金曜日に報じたところによると、ドナルド・トランプが新たに起用した選対運営責任者が空き家に有権者登録をしており、これは明らかな選挙関連法違反である、ということだ。
トランプ選対の運営責任者スティーヴン・バノンは、フロリダ州のマイアミ・デード郡にあるある家に有権者登録をしているが、この家は現在空き家で取り壊しが予定されている、と疑いがかけられている。
バノンは元妻のためにこの家を借りたが、彼自身はこの家に住んだことはなかった。元妻は今年初めにこの家から転居した。
この家の所有者ルイス・ゲヴァラはガーディアン紙の取材に対して次のように答えた。「この物件は現在空き家です。誰も住んでいません。取り壊しする予定もあるんです」。
バノンの有権者登録についてトランプ選対にコメントを求めたが拒絶された。
フロリダ州法では、有権者であるためにはフロリダ州の合法的な住民である必要がある。
ガーディアン紙によると、フロリダ州の有権者登録に際して誤った情報を提出することは、第三級の重罪となり、最大で懲役5年の刑が科せられる。
ヒラリー・クリントン陣営は、バノンがブライトバート・ニュース社と「オルト・ライト」の高まりに関係していると批判をした。バノンが批判されている中で、このニュースが出た。
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取らん選対運営責任者はかつてドメスティック・ヴァイオレンスで逮捕された経歴あり(Trump
campaign CEO once charged with domestic violence: reports)
ジェシー・ヘルマン筆
2016年8月25日
『ザ・ヒル』誌
http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/293409-trumps-campaign-ceo-once-charged-with-domestic-violence
ポリティコ誌が木曜日に次のように報じた。ドナルド・トランプが新たに選対運営責任者に起用したスティーヴ・バノンは1990年代に犯罪容疑で逮捕されたことがある。犯罪容疑は、妻と口論になってそれが暴力事件にまで発展したというものだ。これらの事件の裁判は不成立となった。
1996年1月、バノンの妻(当時)はカリフォルニア州サンタ二カ警察に「夫が自分の首と手首に手をかけて引っ張り回した」と通報した。駆けつけた警察官は報告書の中で、「彼女の首と手首は赤く腫れ上がっており、彼女の説明と一致する」と書いた。この報告書の中には、「バノンは妻が911(日本の110番)に電話しようとすると電話を取り上げて、叩き壊した」とも書かれている。
バノンは、家庭内暴力、殴打、証拠隠滅の容疑で逮捕された。
バノンは、報道担当を通じてポリティコ誌に、「私は警察から事情聴取されなかった。また、こうした容疑に関しては無罪だ」と述べた。
数カ月後に開かれた裁判に元妻は出廷しなかったために、裁判は不成立となった。
ニューヨーク・ポスト紙は、元妻は離婚合意書の中で、裁判を成立させないためにサンタモニカから転居するようにとバノンに説得されたと書いている、と報じた。
元妻は、裁判を成立させるならば、お金は一銭も持たせずに、双子の幼い娘たちの養育費も支払わないとバノンに脅されたと主張した。
ニューヨーク・ポスト紙は、「バノンはまた、裁判所に出廷したら、彼と彼の弁護士が私も」“He also told me that if I went to court he and his attorney would
make sure that I would be the one who was guilty. I was told that I could go
anywhere in the world," she claimed in the papers, according to The Post.
元妻は更に「私が裁判に出席しなかったので、裁判は不成立となった」と書いている。
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バノンの元妻:「彼は娘たちがユダヤ人の同級生のいる学校に行かせたがらなかった」(Bannon's
ex-wife: 'He didn’t want the girls going to school with Jews')
エヴェレン・ルパート筆
2016年8月26日
『ザ・ヒル』誌
http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/293532-bannons-ex-wife-he-didnt-want-the-girls-going-to-school
ドナルド・トランプの選対運営責任者スティーヴ・バノンの元妻が、離婚手続きの過程の中で、バノンが娘たちに「たくさんのユダヤ人がいる」ので、通学していたロサンゼルスにある学校に行かせたくないに行かせたくないと言っていたと語った。
ニューヨーク・デイリー・ニューズ紙は次のように報じた。ブライトバート・ニュース社元会長スティーヴ・バノンの元妻は、2007年に裁判調停の過程である文書に署名して裁判所に提出した。その中で、バノンは双子の娘たちが在学していたアーチャー・スクール・フォ・ガールズにユダヤ人の生徒たちがいることを懸念していたと書いている。
2007年6月に元妻が出した裁判所に提出した文書の中には、「アーチャー校の最大の問題は在学しているユダヤ人の生徒の数だ」と書かれている。
この文書の中には「バノンは、学校の教育方針が気に入らず、生徒たちを“口うるさい金髪バカ女”にしようとしていると言っていた。そして、ユダヤ人がいる学校には行かせたくないとも言っていた」という記述もある。
元妻は、バノンが別の私立学校のユダヤ人生徒の数をその学校に尋ねたとも述べている。
バズフィード・ニュースに対する声明の中で、バノンの報道担当アレクサンドラ・プリーテは、バノンがそのようなツ言をしたこと自体を否定し、娘たちは学校に在学し続けたと述べた。
プリーテは、「バノン氏はそのような発言をしたことはなく、アーチャー校の中等教育に関して不満はなく、娘たちが在学していたことを誇りに思っている」と述べている。
新たに発見された法廷文書は、バノンにとっては今週に入って2発目の攻撃となった。離婚合意文書と警察の報告書からの抜粋が木曜日に報じられたが、これらを総合して、バノンは家庭内暴力をふるっていたという疑いが浮上している。
1996年に起きた口論で、バノンは当時の妻の首と腕を強くつかんだという疑いが浮上している。バノンは家庭内暴力、殴打、証拠隠滅の容疑で逮捕されたが、元妻が裁判所に出廷しなかったために裁判は不成立となった。
バノンは先週、トランプ選対の運営責任者に就任した。同時に、ケリアン・コンウェイが選対委員長に就任した。
民主党大統領選挙候補者ヒラリー・クリントンは木曜日に行った演説で、バノンとブライトバート・ニュースを攻撃した。この演説で、ヒラリーは、トランプと「オルト・ライト」の高まりを結び付け、トランプを人種差別主義と反ユダヤ主義の諸グループと親和性があると訴えた。
民主党は今週、トランプ批判のヴィデオを後悔した。それは、ブライトバートが掲載した、多くの批判を受けた見出しを集めたものだ。その中には、「ネヴァー・トランプ」運動を主導している、『ウィークリー・スタンダード』誌編集人のビル・クリストルについてのものも含まれている。ブライトバートは、見出しで、クリストルを「共和党をダメにする人物、裏切り者のユダヤ人」と呼んだ。
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